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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】UI付エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023150654
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523207663
【氏名又は名称】ARMA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴士
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018106812(DE,A1)
【文献】特開2021-171840(JP,A)
【文献】国際公開第2023/052484(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0104822(US,A1)
【文献】特許第7084135(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に接続可能なUI付エンドエフェクタであって、作業部と、該作業部を駆動させるための作業駆動部と、ユーザーインターフェース(UI)と、前記作業駆動部および前記ユーザーインターフェース(UI)を自立して制御可能な制御部を有し、
前記制御部は、前記ユーザーインターフェース(UI)を介して前記作業部のグリッパを開閉制御可能に構成されていることを特徴とするUI付エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユーザーインターフェース(UI)を介して前記グリッパのトルク制御、速度制御および位置決め制御が可能に構成されている請求項1に記載のUI付エンドエフェクタ。
【請求項3】
前記ユーザーインターフェース(UI)は、タッチパネルディスプレイである請求項に記載のUI付エンドエフェクタ。
【請求項4】
前記UI付エンドエフェクタはマイクおよびスピーカーを有し、前記マイクおよび前記スピーカーは前記制御部により自立して制御可能に構成されている請求項に記載のUI付エンドエフェクタ。
【請求項5】
前記UI付エンドエフェクタは通信装置を有し、前記通信装置は前記制御部により自立して制御可能に構成されている請求項に記載のUI付エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端に接続可能なUI付エンドエフェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボットアームの先端に接続可能なエンドエフェクタが種々提案されている。例えばそのようなものとして、特許第7084135号公報のエンドエフェクタ等がある。これら従来のエンドエフェクタはロボットアームと共にロボットシステムの制御盤で制御され動作するように構成されていた。また、従来のエンドエフェクタは、UI(ユーザーインターフェース)を備えておらず、ユーザーインターフェースからの入力等に基づいてエンドエフェクタを自立制御できるものが存在しなかった。
【0003】
具体的には、例えばロボットのダイレクトティーチングでは、ロボットの動作とエンドエフェクタの動作を教示するが、エンドエフェクタの作業部が例えば対象ワークを掴むグリッパの場合、把持力(トルク)と掴むスピードは予め設定しておかなければならなかった。すなわち、従来のダイレクトティーチングでは、ティーチングペンダントで把持力やスピードの設定をエンドエフェクタ用に割り付けられたI/Oで直接コントロールしており、グリッパでインチング動作をしながら、把持力(トルク)やスピードを調整することはできなかった。
【0004】
また、ロボットに取り付けられたエンドエフェクタはロボット側の指令で動作するため、エンドエフェクタが教示中に作業部を独立して動作(例えばグリッパの開閉動作)させることはできなかった。
【0005】
さらに、オンオフ制御以外の高機能制御を持ったエンドエフェクタの場合、ロボットに割り付けるかロボットシステムの制御盤に接続しなければならなかった。
【0006】
さらに、複数のロボットおよび作業者で作業する場合でも、複数のロボットはロボットシステムの制御盤でコントロールされ、操作盤は基本的に一つで構成されていた。そのため、エラー発生時の生産状況等はロボットシステムの操作盤の表示器でのみしか確認できないという問題があった。
【0007】
さらに、複数のロボットによる高度な連携作業を行うために、複数の操作盤を用意するとコストが嵩むという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第7084135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本願発明者は上記問題を一挙に解決することができる発明を想起したものであり、すなわち、本発明の課題は、ロボットのダイレクトティーチング等に際して、エンドエフェクタが自立して作業部の動作等を制御し効率性および正確性をより向上させることができ、ロボットシステムの状態や状況をロボットシステムの操作盤の表示器で確認することなくエンドエフェクタで確認でき、ロボットシステムの操作盤や制御盤を介さずエンドエフェクタから情報を得て作業者が対応およびロボットシステムとの連携が可能となり、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現可能なUI付エンドエフェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するものは、ロボットアームの先端に接続可能なUI付エンドエフェクタであって、作業部と、該作業部を駆動させるための作業駆動部と、ユーザーインターフェース(UI)と、前記作業駆動部および前記ユーザーインターフェース(UI)を自立して制御可能な制御部を有し、前記制御部は、前記ユーザーインターフェース(UI)を介して前記作業部のグリッパを開閉制御可能に構成されていることを特徴とするUI付エンドエフェクタである(請求項1)。前記制御部は、前記ユーザーインターフェース(UI)を介して前記グリッパのトルク制御、速度制御および位置決め制御が可能に構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0011】
前記ユーザーインターフェース(UI)は、タッチパネルディスプレイであることが好ましい(請求項3)。前記UI付エンドエフェクタはマイクおよびスピーカーを有し、前記マイクおよび前記スピーカーは前記制御部により自立して制御可能に構成されていることが好ましい(請求項4)。前記UI付エンドエフェクタは通信装置を有し、前記通信装置は前記制御部により自立して制御可能に構成されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2に記載したUI付エンドエフェクタによれば、ロボットのダイレクトティーチング等に際して、エンドエフェクタが自立して作業部の動作等を制御し効率性および正確性をより向上させることができ、ロボットシステムの状態や状況をロボットシステムの操作盤の表示器で確認することなくエンドエフェクタで確認でき、ロボットシステムの操作盤や制御盤を介さずエンドエフェクタから情報を得て作業者が対応およびロボットシステムとの連携が可能となり、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現可能となる。特に動作教示(ティーチング)を行う作業者が、直接、UI付エンドエフェクタ1を手で動かすことで動作を覚えさせる中で、グリッパ(作業部)の開閉を行うことができ、より的確かつより容易にティーチングを行うことができる。
請求項に記載したUI付エンドエフェクタによれば、前記請求項の効果を奏するUI付エンドエフェクタを簡素かつ低廉に構成できる。
請求項に記載したUI付エンドエフェクタによれば、音声制御により作業者とコミュニケーションが可能となり、作業性、生産性がより向上する。
請求項に記載したUI付エンドエフェクタによれば、外部機器やインターネット等のネットワークを介する連携が可能となり、より付加価値の高い作業がより容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のUI付エンドエフェクタの一実施例の外観図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
図2図1に示したUI付エンドエフェクタを使用したロボットシステムの構成例である。
図3図2に示したロボットシステムにおけるUI付エンドエフェクタの接続図である。
図4図1に示したUI付エンドエフェクタの機能ブロック図である。
図5図1に示したUI付エンドエフェクタの作用(ダイレクトティーチング時の作用)を説明するための説明図であり、タッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図6図1に示したUI付エンドエフェクタの作用(ダイレクトティーチング時の作用)を説明するための説明図であり、タッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図7図1に示したUI付エンドエフェクタの作用(ダイレクトティーチング時の作用)を説明するための説明図であり、タッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図8図1に示したUI付エンドエフェクタの他の作用(作業者Aによる確認検査における作用)を説明するための説明図であり、(a)は一検査状態を説明するための説明図であり、(b)はタッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図9図1に示したUI付エンドエフェクタの他の作用(作業者Bによる確認検査における作用)を説明するための説明図であり、(a)は一検査状態を説明するための説明図であり、(b)はタッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図10図1に示したUI付エンドエフェクタの他の作用(作業者Cによる確認検査における作用)を説明するための説明図であり、(a)は一検査状態を説明するための説明図であり、(b)はタッチパネルディスプレイの表示画面を示した図である。
図11図1に示したUI付エンドエフェクタの他の作用(製品確認検査における作用)を説明するための説明図である。
図12】本発明のUI付エンドエフェクタの他の実施例の外観図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、作業部2と、作業部2を駆動させるための作業駆動部3と、ディスプレイを備えたユーザーインターフェース4と、作業駆動部3およびディスプレイを備えたユーザーインターフェース4を自立して制御可能な制御部5を有することで、ロボットのダイレクトティーチング等に際して、エンドエフェクタが自立して作業部の動作等を制御し効率性および正確性をより向上させることができ、ロボットシステムの状態や状況をロボットシステムの操作盤の表示器で確認することなくエンドエフェクタで確認でき、ロボットシステムの操作盤や制御盤を介さずエンドエフェクタから情報を得て作業者が対応およびロボットシステムとの連携が可能となり、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に行うことができるUI付エンドエフェクタ1を実現した。
【実施例1】
【0015】
本発明のUI付エンドエフェクタを図1ないし図11に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、図1または図2に示すように、ロボットアーム80の先端に接続可能なUI付エンドエフェクタであって、作業部2と、作業部2を駆動させるための作業駆動部3と、ディスプレイを備えたユーザーインターフェース4と、作業駆動部3およびディスプレイを備えたユーザーインターフェース4を自立して制御可能な制御部5を有している。以下、各構成について順次詳述する。
【0016】
この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、例えば図2に示したロボットシステム70において、ロボットアーム80の先端にそれぞれ接続されてロボットハンドとして使用される。
【0017】
ロボットシステム70は、機台71上に設けられたワーク台72と、表示器73を備えた操作盤74と、ロボットティーチングペンダント75と、ロボットアーム80と、ロボットアーム80の先端にそれぞれ接続されたUI付エンドエフェクタ1と、それら(操作盤74、ロボットティーチングペンダント75、ロボットアーム80およびUI付エンドエフェクタ1)を制御可能な制御盤76を有している。そして、この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、図3に示すように、操作盤74、ロボットアーム80と共に制御盤76に接続されており、操作盤74の操作によって制御可能に構成されている。
【0018】
作業部2は、対象ワークと接して様々な作業を行う部位であり、この実施例の作業部2は、図1に示すように、一対の把持ハンド2a,2bを有したグリッパにて構成されている。具体的には、この実施例の作業部2は、対向配置された把持ハンド2a,2bの平板状内面2c,2dが接近または離隔することにより、把持ハンド2a,2bの平板状内側面2c,2dにて対象ワークを挟持或いは挟持解除して作業を行う形態の作業部である。
【0019】
ただし、本発明のUI付エンドエフェクタにおける作業部は、このような把持用グリッパに限定されるものではなく、例えば吸着ハンド、磁力ハンドなど作業内容に応じた様々な形態の作業部が広く包含される。また、UI付エンドエフェクタにおける作業部が行う作業としては、例えばネジ締め作業、組立て作業、部品の仕分け作業、整列作業、箱詰め作業、ピッキング作業、搬送作業、塗布作業、検査作業、測定作業等が挙げられる。
【0020】
作業駆動部3は、作業部2を駆動させるためのものであり、この実施例の作業駆動部3は、図4に示すように、モータドライバ3aとモータ(トルク検知可能なサーボモータ)3bを有している。また、この実施例では、より複雑な作業部の動作を可能とするためモータドライバ3aを複数有している。ただし、本発明のUI付エンドエフェクタにおける作業駆動部は、この実施例のような電動式モータを有するものに限定されるものではなく、作業部の種類に応じて例えば油圧式、空圧式等の駆動装置の他、電磁石、ばね、リンク機構、カム機構等の機械的要素により作業部を動作させるものを広く包含する。
【0021】
なお、UI付エンドエフェクタ1の作業部2や作業駆動部3等の外装部6を3Dプリンタにて作製してもよく、これにより、量産品では対応できない対象ワークに合わせた自由度の高い作業部や外装部を構成できる。また、作業部や外装部の形成材料としては樹脂材料が軽量化できる点で好ましいが、金属材料にて形成されていてもよい。さらに、外装部6の他端側には、ロボットアーム80の先端に接続するための取り付け部7が設けられている。
【0022】
ディスプレイを備えたユーザーインターフェース(UI:User Iterface)4は、本発明のUI付エンドエフェクタの特徴的な構成であり、この実施例では、タッチパネルディスプレイが使用されている。ただし、本発明のUI付エンドエフェクタにおけるディスプレイを備えたユーザーインターフェース(UI)は、タッチパネルディスプレイに限定されるものではなく、ディスプレイ(表示器)とユーザーが情報を入力する入力装置(例えば選択可能なボタンを備えた装置)とを組み合わせたものでもよく、また、タッチパネルディスプレイのような接触型の入力部を有するものに限定されるものではなく、例えばセンサや音声などによりユーザー側からの情報を入力する非接触型の入力部を有するものであってもよい。なお、本願においてユーザーインターフェースとは、ユーザー(使用者、例えば作業者)が制御部との間で情報をやり取りするためのインタフェースを言う。
【0023】
この実施例のUI付エンドエフェクタ1では、ディスプレイを備えたユーザーインターフェースであるタッチパネルディスプレイ4を介して、ユーザー(例えば作業者)からの情報をUI付エンドエフェクタ1の制御部(コントローラ)5に入力でき、また、ユーザー(例えば作業者)に各種情報を出力でき、さらに、タッチパネルディスプレイ4からのユーザー(例えば作業者)の入力に基づいて、制御部(コントローラ)5がUI付エンドエフェクタ1の各部(例えば作業部2、作業駆動部3、タッチパネルディスプレイ4)の動作等、または、UI付エンドエフェクタ1に接続された各部(例えば、マイク8、スピーカー9、ジャイロセンサ10、カメラ11、通信装置12、温度センサ13)の動作等を自立制御できるように構成されている。
【0024】
なお、この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、図4に示すように、タッチパネルとして機能するLCD(液晶ディスプレイ)4と、LCD4の画面に表示されるボタンA、ボタンB、ボタンCとを有し、これらにより、ユーザー(例えば作業者)に入出力可能なUI(ユーザーインターフェース)が構成されている。
【0025】
ただし、本発明のUI付エンドエフェクタにおけるUI(ユーザーインターフェース)は、タッチパネルディスプレイ4に限定されるものではなく、タッチパネルディスプレイ4やディスプレイ(表示器)に加え、それ以外(例えば、キーボード、マウス、マイク8、スピーカー9等)で提供されるユーザーインターフェースを含んだUI付エンドエフェクタも広く本発明の範疇に包含される。
【0026】
制御部5は、作業駆動部3およびタッチパネルディスプレイ4等を、ロボットシステム70の制御盤76から自立して制御可能とするコントローラであり、UI付エンドエフェクタ1内に設けられている。これにより、ロボットシステム70の制御盤76では、例えばワークを把持する程度の制御でも、UI付エンドエフェクタ側でより詳細な把持制御(例えば柔らかいワークの把持制御)を追加設定したり、詳細な制御に特化したUI付エンドエフェクタに取り換えたりして、接続されたロボットシステムの制御盤による制御では複雑かつ困難な制御でも、UI付エンドエフェクタ側で簡単かつ低廉に行うことができるよう設定することができる。
【0027】
具体的には、この実施例の制御部5は、図1に示すように、タッチパネルディスプレイ4の背面側の外装部6内に内蔵されている。なお、この実施例では、タッチパネルディスプレイ4等のユーザーインターフェースにおいて入出力される情報の制御、その他UI付エンドエフェクタ1の制御はロボットシステム70の制御盤76においても可能に構成されている。
【0028】
より具体的には、この実施例の制御部5(コントローラ)は、図4に示すように、MCU(マイクロコントローラユニット)にて構成されており、CPU(Central Processing Unit)、RAM、フラッシュメモリ、SDカード等を内蔵し、各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの計算処理およびデータもしくは情報の記憶処理、各種プログラムの書き込み処理を行い、作業駆動部3、タッチパネルディスプレイ(LCD)4、マイク8、スピーカー9、ジャイロセンサ10、カメラ11、通信装置12または温度センサ13等の各部の動作を各種プログラム(OS、アプリケーションソフト)等に基づいて全体的に制御統括することができるように構成されている。なお、図4に示した制御部5(コントローラ)の上記構成は一例であり、必ずしも上記構成要素を全て備えていなくともよく、また、追加の構成要素をさらに備えていてもよい。
【0029】
マイク8およびスピーカー9は、作業者からの情報を音声にて制御部5に伝達し、制御部5からの情報を作業者に音声で伝達するためのものであり、UI(ユーザーインターフェース)の一種(第2のユーザーインターフェース)として機能する部位である。これらマイク8およびスピーカー9を入出力部として構成される音声制御により、作業者と制御部5の間でコミュニケーションが可能となり、作業性、生産性をより向上させることができる。
【0030】
ジャイロセンサ10は、作業部2の姿勢確認が行えることで位置合わせをより容易にすることができ、ロボットの衝突検知よりさらに高い検知を可能とするために機能する部位である。
【0031】
カメラ11は、遠隔地からの監視、動作録画、例えば対象ワーク、バーコード、文字等の画像認識を的確に行うための部位である。
【0032】
通信装置12は、外部機器やインターネット等のネットワークと通信し、UI付エンドエフェクタと連携させるための部位であり、有線通信装置でもよく、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)を使用した無線通信装置であってもよい。これにより、外部機器やネットワークを介する連携が可能となり、より付加価値の高い作業をより容易に実現できる。
【0033】
温度センサ13は、温度制御が必要な作業をより的確に行うことができるようにするためのものである。なお、上記実施例の制御部5が制御する各部は一例であり、本発明のUI付エンドエフェクタの制御部は、必ずしも上記各部を全て制御するものに限定されず、また、追加の構成をさらに制御するものであってもよい。
【0034】
つぎに、本発明のUI付エンドエフェクタ1の作用例を順次説明する。
この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、ダイレクトティーチング時における作用として、作業者がタッチパネルディスプレイ(UI)4を使用してダイレクトティーチングを行うことができるように構成されている。
【0035】
なお、ダイレクトティーチングとは、産業用ロボットに動作教示(ティーチング)を行う際、作業者が直接、UI付エンドエフェクタ1を手で動かすことで動作を覚えさせる方法である。この実施例のUI付エンドエフェクタ1はトルク検知可能なサーボモータ3bやジャイロセンサ10を有しており、作業者によるタッチパネルディスプレイ4からの入力やUI付エンドエフェクタ1に対する直接的な動作教示に基づいて、トルク、速度、回転角度等を演算しロボットプログラミングとして記憶する。そして、記憶させた動きや制御(トルク制御、速度制御、位置決め制御等)が繰り返しフィードバックされて各種作業が実行されるように構成されている。従って、予めパソコンにて条件設定を行うことが不要となり、ダイレクトティーチングを極めて容易に行うことができる。
【0036】
具体的には、この実施例のUI付エンドエフェクタ1は、図5に示すように、タッチパネルディスプレイ4上の初期画面25において、作業者によってボタンBが押されると、制御部5が一対の把持ハンド2a,2bを有したグリッパ(作業部)2を開き、他方、ボタンCが押されると、制御部5がグリッパ(作業部)2を閉じるように制御する。これにより、動作教示(ティーチング)を行う作業者は、直接、UI付エンドエフェクタ1を手で動かすことで動作を覚えさせる中で、グリッパ(作業部)2の開閉を行うことができ、より的確かつより容易にティーチングを行うことができる。
【0037】
また、タッチパネルディスプレイ4上の初期画面25には、トルク表示30、ジャイロセンサによる位置表示31、モータ駆動量から計算された移動距離32、角度33が表示されるように構成されている。さらに、作業者に対するメッセージを受信すると、図5右図のようにメッセージ表示(ポップアップ)画面26に自動的に切り替わり、タッチパネルディスプレイ4上にメッセージ内容27が表示されるように構成されている。そして、作業者がそのメッセージ内容を確認し、ボタンBを押すとOK(作業者がメーセージ内容を了解したこと)となり、初期画面25に戻るように構成されている。これらにより、作業者に対してタッチパネルディスプレイ4を介して情報等を伝達でき、作業性または生産性を向上させることができるように機能する。
【0038】
さらに、作業者がグリッパ(作業部)2のトルクを設定したい時は、図5に示した初期画面25においてボタンAを押すと、図6に示したように、タッチパネルディスプレイ4上に設定画面28が表示され、この設定画面28でトルク設定29を押してボタンB(セット)を押すことにより、図6中右図のトルク設定画面34が表示され、ボタンBにてトルクを増加、或いはボタンCにてトルクを減少させてトルクを決定した後、ボタンAを押すことで設定画面28に戻ると共にトルクが設定されるように構成されている。これにより、グリッパ(作業部)2でインチング動作をしながらでも、作業部2の把持力(トルク)を設定することができるよう構成されている。
【0039】
他方、作業者がグリッパ(作業部)2のスピードを設定したい時は、図5に示したディスプレイ4上の設定画面28で、ボタンCを押してスピード設定35にした状態(図7左図)でボタンB(セット)を押すと、図7中右図のスピード設定画面36が表示され、ボタンBにてスピードを増加、或いはボタンCにてスピードを減少させてスピードを決定した後、ボタンAを押すと設定画面28に戻ると共にスピードが設定されるように構成されている。これにより、グリッパ(作業部)2でインチング動作をしながらでも、作業部2のスピードを設定することができるように構成されている。
【0040】
さらに、作業者は、図6に示した設定画面28で、音声認識設定37、スピーカー設定38、カメラON/OFの設定39等ができるように構成されており、UI付エンドエフェクタ1は、作業部2、作業駆動部3およびタッチパネルディスプレイ4以外の制御も独自で行うことができるように構成されている。
【0041】
つぎに、図8ないし図10に示した本発明のUI付エンドエフェクタ1の他の作用例について説明する。
図8ないし図10に示したUI付エンドエフェクタ1の作用は、作業部(グリッパ)2が把持した対象ワーク(図示せず)を、異なる位置に配された作業者A,B,Cが目視して正常・異常を検査する作業における作用である。
【0042】
具体的には、図8(a)に示すように、ロボットシステム70がロボットアーム80を動作させ、対象ワークを把持した作業部(グリッパ)2を作業者A側に移動させ、作業者Aが対象ワークを目視して確認し正常と判断すると、図8(b)に示すように、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンBを押す。これにより、作業者AとしてはOKとなり、次の作業者Bによる検査に移行させるため、図9(a)に示すように、ロボットシステム70がロボットアーム80を動作させ、対象ワークを把持した作業部(グリッパ)2を作業者B側に移動させる。他方、作業者Aが対象ワークを目視して異常と判断し、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンCを押すとNGとなり、不良品として対象ワークを機外排出させるように構成されている。
【0043】
つぎに、作業者Bが対象ワークを目視して確認し正常と判断すると、図9(b)に示すように、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンBを押す。これにより、作業者BとしてもOKとなり、次の作業者Cによる検査に移行させるため、図10(a)に示すように、ロボットシステム70がロボットアーム80を動作させ、対象ワークを把持した作業部(グリッパ)2を作業者C側に移動させる。他方、作業者Bが対象ワークを目視して異常と判断し、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンCを押すとNGとなり、不良品として対象ワークを機外排出させるように構成されている。
【0044】
さらに、作業者Cが対象ワークを目視して確認し正常と判断すると、図10(b)に示すように、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンBを押す。これにより、作業者CとしてもOKとなり、良品として製品排出工程に移行する。他方、作業者Cが対象ワークを目視して異常と判断し、タッチパネルディスプレイ4上の検査判定画面40のボタンCを押すとNGとなり、不良品として対象ワークを機外排出させるように構成されている。
【0045】
このように、本発明のUI付エンドエフェクタ1は、タッチパネルディスプレイ4(UI)を使用すると共にロボットシステム70と連携して、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現することが可能となる。
【0046】
さらに、図11に示した本発明のUI付エンドエフェクタ1の他の作用例について説明する。
図11に示したUI付エンドエフェクタ1の作用は、作業部(グリッパ)2が対象ワーク50の欠陥部を示してタッチパネルディスプレイ4上の欠陥表示画面51に欠陥内容を表示する欠陥確認検査に際する作用である。
【0047】
具体的には、カメラ11が対象ワーク50の欠陥部を発見すると、ロボットシステム70がロボットアーム80を動作させ、図11に示すように、作業部(グリッパ)2により欠陥部を指し示す。そして、その欠陥部が傷であるか、凹凸であるか、色味が悪いのか、いずれであるかをUI付エンドエフェクタ1の制御部5が判定して、その判定結果の内容(欠陥内容)をタッチパネルディスプレイ4上の欠陥表示画面51に表示するように制御する。これにより、作業者は対象ワーク50毎に欠陥の有無および欠陥内容を容易に検査確認することができるように構成されている。
【0048】
このように、本発明のUI付エンドエフェクタは、欠陥確認検査において、作業者にタッチパネルディスプレイ4(UI)を介して欠陥部毎に欠陥内容を示すことができ、ロボットシステム70と連携して、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現することが可能となる。
【0049】
なお、図5ないし図11に示した本発明のUI付エンドエフェクタ1の作用はあくまで例示であり、本発明のUI付エンドエフェクタは、ディスプレイを備えたユーザーインターフェース(例えばタッチパネルディスプレイ:UI)、またはディスプレイを備えたユーザーインターフェース(例えばタッチパネルディスプレイ:UI)とその他のUIをエンドエフェクタ自身が有し、それらをエンドエフェクタが有する制御部にて自立制御できることによる実現される作用、およびそれらの制御とロボットシステムとの連携により実現される作用によって、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現可能なUI付エンドエフェクタを広く包含するものである。
【0050】
さらに、図12に示した本発明のUI付エンドエフェクタの他の実施例について説明する。
この実施例のUI付エンドエフェクタ20と前述したUI付エンドエフェクタ1との基本的な相違は、作業部の形態のみであり他は同様である。UI付エンドエフェクタ1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0051】
この実施例の作業部21も、一対の把持ハンド21a,21bを有したグリッパにて構成されている。具体的には、この実施例の作業部21は、対向配置された把持ハンド21a,21bの正面視略半円状内面21c,21dが接近または離隔することにより、把持ハンド21a,21bの正面視略半円状内面21c,21dにて円柱状または円筒状の対象ワークを挟持または挟持解除して作業を行う形態に構成されている。このように、本発明のUI付エンドエフェクタにおける作業部の形態は、作業内容や対象ワークの形態に応じて様々な形態のものが広く包含される。
【符号の説明】
【0052】
1 UI付エンドエフェクタ
2 作業部
3 作業駆動部
4 ディスプレイを備えたユーザーインターフェース(タッチパネルディスプレイ)
5 制御部
6 外装部
7 取り付け部
8 マイク
9 スピーカー
10 ジャイロセンサ
11 カメラ
12 通信装置
13 温度センサ
20 UI付エンドエフェクタ
21 作業部
70 ロボットシステム
71 機台
72 ワーク台
73 表示器
74 操作盤
75 ロボットティーチングペンダント
76 制御盤
80 ロボットアーム
【要約】
【課題】ロボットのダイレクトティーチング等に際して、エンドエフェクタが自立して作業部の動作等を制御し効率性および正確性をより向上させることができ、ロボットシステムの状態や状況をロボットシステムの操作盤の表示器で確認することなくエンドエフェクタで確認でき、ロボットシステムの操作盤や制御盤を介さずエンドエフェクタから情報を得て作業者が対応およびロボットシステムとの連携が可能となり、より付加価値の高い作業をより容易かつ低廉に実現可能なUI付エンドエフェクタを提供する。
【解決手段】本発明のUI付エンドエフェクタ1は、ロボットアーム80の先端に接続可能なUI付エンドエフェクタであって、作業部2と、作業部2を駆動させるための作業駆動部3と、ディスプレイを備えたユーザーインターフェース4と、作業駆動部3およびユーザーインターフェース4を自立して制御可能な制御部5を有している。
【選択図】図1
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