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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】嗜好性が向上した紅参濃縮液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240430BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 13/06 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/258
A61P25/22
A61P25/20
A61P25/04
A61P29/00
A61P3/04
A61P13/06
A61P5/38
A61P3/06
A61P37/04
A61P7/02
A61P25/28
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P35/04
A61P35/00
A61P9/00
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022156441
(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公開番号】P2023074467
(43)【公開日】2023-05-29
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158501
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ボ・キョン・ス
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0050726(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0854685(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1691334(KR,B1)
【文献】特開2010-246470(JP,A)
【文献】特開2016-098229(JP,A)
【文献】特表2012-527233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として50~70支である紅参根を含む紅参を選別する段階と、
前記選別された紅参に精製水を混合して80~95℃で抽出する段階と、
前記抽出物を1次濃縮させる段階と、
前記1次濃縮液を65~85℃で1~5時間熱処理する段階と、
前記熱処理された濃縮液を2次濃縮させる段階と、
前記2次濃縮液を50~60℃の範囲で2~5日間熟成させる段階と、
を含む、紅参濃縮液の製造方法。
【請求項2】
前記50~70支である紅参根を含む紅参は、1斤(600g)あたり紅参本参根が58~78個である紅参根を含む、請求項1に記載の紅参濃縮液の製造方法。
【請求項3】
前記の原料紅参は、紅参根と紅尾参を70~75:30~25の配合割合で含む、請求項1に記載の紅参濃縮液の製造方法。
【請求項4】
前記精製水は、紅参重量の4~7倍である、請求項1に記載の紅参濃縮液の製造方法。
【請求項5】
前記抽出は6~24時間2回以上繰り返し行う、請求項1に記載の紅参濃縮液の製造方法。
【請求項6】
50支~70支の紅参根に由来する、紅参濃縮液の苦味を減らし、紅参濃縮液の甘味を高めて嗜好性向上させる、請求項に記載の紅参濃縮液の製造方法
【請求項7】
請求項1に記載の方法で紅参濃縮液を製造し、前記紅参濃縮液を健康機能食品に添加する工程を含む、健康機能食品の製造方法
【請求項8】
請求項1に記載の方法で紅参濃縮液を製造し、前記紅参濃縮液を食品組成物に添加する工程を含む、食品組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗜好性が向上した紅参濃縮液の製造方法、それにより製造された紅参濃縮液及びそれを用いた健康機能食品に関する。
【背景技術】
【0002】
人参(Panax ginseng C.A.Meyer)は、ウコギ科トチバニンジン属に属する多年生草本類であって、漢方ではその根を人参とし、薬用として使用する。特に人参を網状組織である皮を剥がさず蒸気で蒸して乾燥させて淡黄褐色または淡赤褐色になったものを紅参と言うが、前記蒸気で蒸す過程で熱による加水分解が起こり、人参には含まれていなかったサポニン成分が多くなり、生体活動に有効に作用する効果があることが報告されてきた。韓国内の健康機能食品紅参規格は、ジンセノサイドRb1、Rg1、及びRg3の和を特定の基準値以上と定めている。
【0003】
サポニンの薬理作用について多くの研究結果があり、代表的なサポニンのうちジンセノサイドRb1は、中枢神経抑制及び精神安定作用、中枢性摂食抑制作用、攻撃性行動抑制、鎮痛作用、抗けいれん作用、副腎皮質刺激ホルモン及びコルチコステロン分泌促進作用、抗不安作用、コレステロール生合成促進作用、高コレステロールと中性脂肪及び遊離脂肪酸の低下作用などの薬理作用が報告されている。
【0004】
さらに他の代表的なサポニンであるジンセノサイドRg1は、免疫機能増強作用、血小板凝集抑制、抗トロンビン、記憶及び学習機能増進作用、抗疲労作用、抗ストレス作用、抗炎症作用、肝細胞増殖及びDNA合成促進などの薬理作用が報告されている。
【0005】
さらに他の代表的なサポニンであるジンセノサイドRg3は、がん細胞転移抑制作用、血小板凝集抑制及び抗血栓作用、実験的肝障害抑制作用、血管弛緩作用、抗がん剤の耐性抑制作用などの薬理作用が報告されている。
【0006】
近年、人参の効能を極大化させた形態の紅参が様々な剤形として利用されており、ジンセノサイド成分を増加させる加工方法も多く紹介されている。
【0007】
紅参は、胴体のサイズと重量によって包装単位である「支数」に区分し、10~70支及び小支で表現する。包装単位は、通常、1斤(600g)と定められており、30支は、1斤に約30根(おまけで根の数が多い場合もある)が入っていることを意味する。より具体的には、人参産業法施行規則[別表3の2]検査の基準・方法にしたがって、1斤(600g)当たり紅参本参38根が含まれている場合、30支に区分し、個体当たり重量は、13g以上である。また、1斤(600g)当たり紅参本参58根が入っている場合は、個体当たり重量が10g以上の本参を50支に区分し、1斤(600g)当たり紅参本参78根が入っており、個体当たり重量が7g以上の本参を70支に区分できる。支数が小さいほどサイズが大きい紅参が使用されるものである。
【0008】
市販の紅参濃縮液に使用される原料用紅参は、ほとんど30~50支が占めていることが知られている。
【0009】
紅参を有効成分とする製品は、ほとんどが濃縮液の形態で紅参製品の製造に用いられるが、このような濃縮液の形態の紅参製造の際、支数が小さいほど(サイズが大きいほど)、参の品質がよいと認識されており、支数の大きい紅参を忌避する傾向がある。また、支数が大きい紅参は、苦味が強く、嗜好性に劣る面もある。
【0010】
しかし、有効成分であるジンセノサイドの含量(単位重量基準)は、小さい根を持つか、または支数の大きい紅参においてより高くなっており、紅参の消費の増加に伴い、支数の大きい紅参を活用できるように、苦味は下げつつ比較的摂取が容易な物性を具現できる解決方案が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】KR登録特許第10-0854685号
【文献】KR公開特許第10-2015-0050726号
【文献】KR登録特許第10-1691334号
【非特許文献】
【0012】
【文献】パク・チェギュ他(2003)、高麗人参の化学成分、食品産業と栄養、8(2)、10~23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
紅参内のジンセノサイドは、内部よりは外皮に含量が多く、支数が大きいほど(紅参のサイズが小さいほど)ジンセノサイド含量が増加する傾向がある。しかし、ジンセノサイドは、苦味に影響を与える因子としても知られているため、支数の大きい紅参(サイズの小さい紅参、小さい根の多い紅参)を過量投入時に紅参濃縮液のジンセノサイド含量が高くなりうるが、苦味が際立つことがある。
【0014】
デンプンも内部よりは外部に多く含まれており、支数が大きいほど(紅参のサイズが小さいほど)デンプンの溶出量が多いと言える。支数の大きい紅参(サイズの小さい紅参)を使用すると、デンプンの溶出量が増加し、紅参濃縮液の粘性が増加することがある。このように紅参濃縮液の粘性が増加すると、製造工程中において攪拌が容易ではなく、堅い感じが強くなり、摂取が容易でないという問題がある。
【0015】
ジンセノサイドの免疫増強効果がよく知られるようになり、韓国内の健康機能食品市場のうち紅参及び関連製品が占める割合が最も高い。紅参製品の効果は、通常の製品内に含まれたジンセノサイドの含量に比例することが知られているが、ジンセノサイドに起因する紅参特有の苦味により嗜好性が劣ることも事実である。
【0016】
これにより、サイズが小さいか、または小い根を持つ支数の大きい紅参を使用しつつ、温和段階を経て苦味を減らしながらデンプンが低分子化され、粘度の減少により摂取便宜性を増大させ、物性及び嗜好性を向上させた紅参濃縮液の製造方法を開発することにより本発明を完成させた。
【0017】
したがって、本発明の目的は、小さい根を持つ紅参を用いた紅参濃縮液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、従来の紅参濃縮液の製造工程において、小さい根を持つ紅参を用いて苦味を下げながら比較的摂取しやすい物性及び嗜好性を向上させた紅参濃縮液を製造する方法に関する。
【0019】
具体的に、本発明は、
原料として小さい根を持つ紅参を含んで選別する段階(第1の段階)と、
前記選別された紅参に精製水を混合して高温で抽出する段階(第2段階)と、
前記抽出物を1次濃縮させる段階(第3段階)と、
前記1次濃縮液を65~85℃で1~5時間熱処理する段階(第4段階)と、
前記熱処理された濃縮液を2次濃縮させる段階(第5の段階)と、
前記2次濃縮液を熟成させる段階(第6段階)と、
を含む紅参濃縮液の製造方法を含む。
【0020】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0021】
本発明において、前記第1の段階において、原料紅参は小さい根を持つ紅参を用いることが好ましい。
【0022】
市販されている紅参濃縮液は、一般的に良い紅参として知られている30~50支の紅参根を使用したが、本願では、従来紅参濃縮液として使用しなかった50支以上の紅参根を使用する。
【0023】
本願において「小さい根を持つ紅参」とは、50支以上の紅参根を含むか、または1斤(600g)当たり紅参本参根が58個以上を含んでもよい。また、前記50支以上の紅参根は、好ましくは、重量や個数基準で90%以上が50支以上であってもよく、より好ましくは、重量や個数基準で95%以上が50支以上であってもよく、さらに好ましくは、重量や個数基準で99%以上が50支以上であってもよく、最も好ましくは、重量や個数基準で100%が50支以上であってもよい。
【0024】
また、「小さい根を持つ紅参」とは、好ましくは、50支~70支の紅参根、または1斤(600g)当たり紅参本参の根が58個~78個を含んでもよい。前記50支~70支の紅参根は、好ましくは、重量や個数基準で90%以上が50支~70支であってもよく、より好ましくは、重量や個数基準で95%以上が50支~70支であってもよく、さらに好ましくは、重量や個数基準で99%以上が50支~70支であってもよく、最も好ましくは、重量や個数基準で100%が50支~70支であってもよい。
【0025】
また、より好ましくは、前記原料の紅参は、紅参根と紅尾参を70~75:30~25の配合割合で使用してもよい。
【0026】
本発明において、前記第2段階で、前記選別された紅参に精製水を紅参重量の4~7倍混合して高温で抽出する。
【0027】
このとき、前記抽出は、80~95℃で6~24時間2回以上繰り返して行う。前記抽出は、バッチ式タンクで2~5回行うことが好ましい。
【0028】
本発明において、前記第3段階は、前記抽出物を1次濃縮させる段階で、糖度濃度を60~70brixレベルで調節するため、40~60℃で減圧下で4~8時間濃縮させる。1次濃縮時に一般的に自然循環濃縮機を使用するが、前記自然循環濃縮機は、減圧状態で瞬間的に蒸気(steam)を噴射して水分をすぐに飛ばしてしまう機器であり、ある程度流れ性のある状態で行わなければならないので、適正brix(60~70brix)以上になると粘度が高くなり、攪拌濃縮機を使用する2次濃縮段階に移動しなければならない。特に、50~70支の紅参根を使用すると、粘度が高すぎる紅参濃縮液が製造され、2次濃縮段階が容易でない工程上の不便さと摂取便宜性の低下のため、従来では、50~70支の紅参根を用いた紅参濃縮液が使用されなかった。
【0029】
本発明において、前記第4の段階は、本願において温和段階とも称し、前記温和段階は、1次濃縮後に適用されることが好ましい。特に、前記温和段階は、前記1次濃縮段階後、2次濃縮段階前、すなわち、糖度濃度が60~70brixレベルになる時点で、温和段階を経ることにより、サイズが小さいか、または小さい根を持つ支数の大きい紅参の苦味を減らすとともに、デンプンの分解によって粘度を減らすことができる。
【0030】
前記温和段階は、1次濃縮後に適用されることが好ましい。もし、温和段階より以前の工程である抽出段階に温和段階を行うことになると、紅参の1回抽出物の量は、紅参の5~6倍数であり、抽出回数が2回以上繰り返されることを勘案して、保管タンクが複数台必要であるので、大型タンクを1~2台程度のみ保有しているほとんどの製造ラインに適用しにくいだけでなく、製造設備の投資に高いコストが発生し、経済的な面で非効率的である。また、2次濃縮(>75brix)後に温和段階を行うと、紅参濃縮液の粘性が強くなり流れ性が低下するので扱いにくく、同じ温度でも炭化する可能性が非常に高い。したがって、濃縮(1次)から濃縮(2次)に進む時期の糖度濃度が60~70brix状態であるとき、好ましい粘性と流れ性を有するので、温和段階を行うのに適している。特に、攪拌濃縮機で温和段階を行うと、別途の設備投資をしなくても前記問題を解決できるので好ましい。
【0031】
50~70支紅参根を使用した結果、粘度が高すぎる紅参濃縮液が作られると、2次濃縮段階を行うことが難しくなるが、温和段階を経て攪拌濃縮機の使用が容易になり、50~70支紅参根を用いた紅参濃縮液の製造が可能になる。
【0032】
特に、紅参のジンセノサイドRb1は、紅参特有の苦味と最も関係の深い物質であり、熱処理時に他のジンセノサイドに分解(低配糖体化または脱糖化)される特徴がある。通常の紅参濃縮液の最後の段階である熟成段階では、より低い温度である50~60℃で2~5日間行われるが、この段階では、ジンセノサイド含量の低下が多くないため、官能が変わらない。また、紅参濃縮液の殺菌(微生物基準値に合わせるためである)過程は、60~65℃で0.5~2時間ほど行われるが、苦味を示すジンセノサイドの低配糖化が行われないか、または極微量で行われるため、本願で目的とする物性と嗜好性の向上効果が発生しない。さらに、熱処理温度をより高く設定すると、より効率的な低配糖化が起こるが、85℃超過時に紅参濃縮液が炭化され得るという問題があるため、適切な熱処理工程、すなわち、温和段階をさらに行うことが好ましい。
【0033】
したがって、前記温和段階は、65~85℃で1~5時間熱処理することが好ましい。より好ましくは、65~80℃で1~5時間、より好ましくは、68~78℃で1.5~4.5時間、最も好ましくは、69~75℃で2~4時間熱処理してもよい。
【0034】
このように温和段階を経ると、苦味を示す4倍糖体のジンセノサイドRb1は、熱分解されて他のジンセノサイドに変換され、デンプンも熱分解により粘度を下げることができる。
【0035】
本発明において、前記第5段階は、攪拌濃縮機で行われており、摂取するのに適した70~75brixの糖度レベルになるまで2次濃縮を行う。
【0036】
本発明において、前記第6段階は、前記2次濃縮段階で濃縮された濃縮物を熟成させる段階で、前記濃縮段階で濃縮された濃縮物を50~60℃の範囲で2~5日間処理することにより行われてもよい。このような濃縮物の熟成過程は、紅参の風味を上げるために必要な過程である。
【0037】
また、本発明は、前記製造方法で製造された紅参濃縮液を提供する。
【0038】
本発明の製造方法で製造された紅参濃縮液は、サイズが小さいか、または小さい根を持つ支数の大きい紅参の苦味とデンプンを減らすことができ、物性と嗜好性の面で向上した。
【0039】
本発明において製造された紅参濃縮液の好ましい糖分濃度は、70~75ブリックス(Brix)の範囲である。
【0040】
また、本発明は、前記製造方法で製造された紅参濃縮液を含む健康機能食品を提供する。
【0041】
前記用語の「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの形態で製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、または生理学的作用などのような健康用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0042】
カプセル状の健康機能食品の場合、硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルに紅参濃縮液と賦形剤などの添加剤の混合物またはその粒状物または製皮した粒状物を充填して製造してもよく、軟質カプセル剤は、紅参濃縮液と賦形剤などの添加剤の混合物をゼラチンなどのカプセル基剤に充填して製造してもよい。前記軟質カプセル剤は、必要に応じてグリセリンやソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有してもよい。
【0043】
顆粒状の健康機能食品は、前記紅参濃縮液に賦形剤、結合剤、崩壊剤などの混合物を適当な方法で粒状に製造してもよく、必要に応じて着香剤、苦味剤などを含有してもよい。本発明の前記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、苦味剤、着香剤などの用語の定義は、当業界で公知の文献に記載されたもので、その機能などが同一ないし類似したものを含む(大韓薬典解説編、文星社、韓国薬学大学協議会、第5改訂版、p33-48、1989)。
【0044】
液状の健康機能食品の場合、必要に応じて食品添加物に含まれる保存剤、安定剤、乳化剤、分散剤、着香料、着色剤などを含有してもよい。
【0045】
丸剤の健康機能食品は、紅参濃縮液に賦形剤、結合剤、崩壊剤などの混合物を適当な方法で成形して調製してもよく、必要に応じて白糖や他の適当な製皮剤で製皮を、またはデンプン、タルクまたは適切な物質で丸衣をまぶしてもよい。
【0046】
また、本発明は、前記製造方法で製造された紅参濃縮液を含む食品組成物を提供する。
【0047】
本発明において「食品」とは、栄養素を1つまたはそれ以上を含有している天然物または加工品を意味し、好ましくは、ある程度の加工工程を経て直接食べられる状態となったものを意味し、通常の意味として、各種食品、健康補助食品、飲料、食品添加剤及び飲料添加剤をすべて含む意味として使用される。前記食品の例として、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、機能性食品などがある。さらに、本発明において食品には、特殊栄養食品(例えば、調理油類、乳幼児食など)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、ムク類、麺類(例えば、ラーメン類、麺類など)、健康補助食品、調味食品(例えば、醤油、味噌、コチュジャン、ミックス醤など)、ソース類、菓子類(例えば、スナック類)、乳加工品(例えば、発酵乳、チーズなど)、その他の加工食品、キムチ、漬物食品(各種キムチ類、漬物など)、飲料(例えば、果実、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類、アイスクリーム類など)、天然調味料(例えば、ラーメンスープなど)、ビタミン複合剤、アルコール飲料、酒類及びその他の健康補助食品類を含むが、これに限定されるものではない。前記健康機能食品、飲料、食品添加剤または飲料添加剤は、通常の製造方法で製造されてもよい。
【0048】
前記食品組成物は、食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含んでもよく、機能性食品の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含んでもよい。
【0049】
また、前記食品において、前記紅参濃縮液の量は、全体の食品重量の0.001重量%~50重量%で含まれてもよく、前記食品が飲料である場合には、食品全体の体積100mlを基準として0.001g~50g、好ましくは、0.01g~10gの割合で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明の紅参濃縮液を含む食品組成物は、錠剤状、カプセル状、真液状、粉末状、飲料状、スティック状など本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に広く知られている様々な剤形として製造可能である。
【発明の効果】
【0051】
本発明は、小さい根を持つ紅参根を使用しつつ、特定条件の温和段階を経て濃縮させることにより、物性及び嗜好性が向上した紅参濃縮液を提供しうる。
【発明を行うための形態】
【0052】
以下、本発明を下記実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例]
比較例1:従来の紅参濃縮液の製造
6年根紅参の紅参根及び紅尾参を75~70:25~30配合比で洗浄して準備した。このとき、紅参は30支~50支の小さい根を持つものを使用した。1回抽出量250~450kgずつ抽出タンク別に精密に小分作業した。次に、前記紅参原料を抽出タンクに投入し、5~6倍の精製水を混合して抽出タンク温度を80℃~95℃に維持し、7~9時間抽出した。前記抽出を(3~7回)繰り返し行った。
【0054】
前記抽出が完了した後、冷却タンクで13~19℃に冷却し、前記冷却された抽出液を遠心分離して不純物(デンプン、残渣など)を分離除去した。
【0055】
次に、前記純粋な紅参抽出液を紅参錠または紅参製品の製造に適するように減圧濃縮した。各抽出が終了すると同時に冷却~1次濃縮が行われ、1次濃縮が完了すると、全ての濃縮物を攪拌濃縮機に移した。
【0056】
1次濃縮は、自然循環濃縮機(減圧条件下)で50℃で6時間濃縮を行い、糖度が65brixになるまで濃縮を行った。
【0057】
2次濃縮は、攪拌濃縮機で60℃で3日間糖度が72brixになるまで濃縮を行った。
【0058】
熟成は、55℃で3日間保管して行った。
【0059】
実施例1:嗜好性が向上した紅参濃縮液の調製
6年根紅参の紅参根及び紅尾参を75~70:25~30配合比で清潔に洗浄して準備した。このとき、参は50支~70支の小さい根を持つものを使用した。
【0060】
1回抽出量250~450kgずつ抽出タンク別に精密に小分作業した。次に、前記紅参原料を抽出タンクに投入し、5~6倍の精製水を混合して抽出タンク温度を80℃~95℃に維持し、7~9時間抽出した。前記抽出を(3~7回)繰り返し行った。
【0061】
前記抽出が完了した後、冷却タンクで13~19℃に冷却し、前記冷却された抽出液を遠心分離して不純物(デンプン、残渣など)を分離除去した。
【0062】
次に、前記純粋な紅参抽出液を紅参錠または紅参製品の製造に適するように減圧濃縮した。各抽出が終了すると同時に冷却~1次濃縮が行われ、1次濃縮が完了すると、全ての濃縮液を攪拌濃縮機に移した。
【0063】
1次濃縮は、自然循環濃縮機(減圧条件下)で50℃で6時間濃縮を行い、糖度が65brixになるまで濃縮を行った。次に、攪拌濃縮機に移し、70℃で3時間熱処理した(温和段階)。
【0064】
2次濃縮は、攪拌濃縮機で60℃で3日間糖度が72brixになるまで濃縮を行った。
【0065】
熟成は、55℃で3日程度保管して行った。
【0066】
比較例2:温和段階を経ていない場合
比較例1で30支~50支の小さい根を持つ紅参の代わりに50~70支の小さい根を持つ紅参を使用する以外は、比較例1と同様に行った。
【0067】
このように温和段階を経ていない場合、2次濃縮段階で攪拌しにくく、工程上の困難性があり、摂取が不便なので、伝統的な紅参濃縮液とはかけ離れているように見えた。
【0068】
実験例1:ジンセノサイド含量の比較
前記実施例1の紅参濃縮液製造時の温和段階前/後のジンセノサイド含量を比較評価した。
【0069】
[ジンセノサイド含量測定]
前記実施例1で製造した紅参濃縮液温和段階前/後に含まれるジンセノサイド成分の含量を調査するため、HPLC/UVD(High-performance liquid chromatography-Ultraviolet Detectors)を用いた。ジンセノサイドの測定のための過程は、次の通りである。
【0070】
実施例1で製造した紅参濃縮液の温和段階前/後のサンプルは、Rg1、Rb1及びRg3の標準物質範囲に該当するように組成物を0.2g、50mL体積のフラスコに移した。70%メタノールを用いて組成物を完全に溶解し、50mLまで70%メタノールで満たした後、メンブレンフィルター(0.45μm)で濾過したものを試験溶液とした。ジンセノサイドは、すべてSigma-aldrich社の標準物質を用いており、標準物質もすべて70%メタノールで溶解させて50ppm標準物質溶液を製造した。分析時に使用されたカラムは、Cosmosil packed column 5C18-PAQ 4.6IDx250mmであり、分析機器は、Agilent HPLC 1260 systemを用いて分析した。分析条件は、20μLを注入量とし、検出器の波長は、203nmとし、カラムの温度は、30℃に維持した。分析時間は、計75分で流速は1.0mL/minに維持するが、移動相は、gradientを与えて変化させた。移動相としては蒸留水とアセトニトリルが使用され、カラム洗浄時にメタノールがさらに使用された。
【0071】
詳しいジンセノサイド分析条件は、下記表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
前記表2に示すように、苦味と最も関連が深いジンセノサイドRb1含量が13%減少したことを確認した。これは製造された紅参濃縮液の苦味が減少したことを意味する。
【0075】
実験例2:粘度比較
前記実施例1の紅参濃縮液の製造時に温和工程前/後の粘度を測定した。
【0076】
粘度は予め水浴の温度を25℃に合わせた後、検体10gを15mLファルコンチューブに入れた後、実験30分前に水浴に浸けておいた。粘度は、BROOKFIELD DV-I+VISCOMETER(Model LVDV-I+、BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORIES、U.S.A)を用いて測定し、スピンドルは、S64を使用した。2rpmでcP値を2回測定した結果、粘度が平均的に55.5%減少することが確認できた。このとき、測定値は試料を5分間維持した後に現れる値とした。
【0077】
2回測定がすべて温和前に比べて温和後の粘度値が減少したことから、紅参濃縮液の温和段階でデンプンが分解されて粘度が低下したとみられる。
【0078】
実験例3:嗜好性官能評価
前記実施例1の紅参濃縮液製造時、温和段階前/後の味嗜好性を次のように評価した。
【0079】
評価団は、紅参濃縮液の官能検査経験のある現職従事者10人で構成した。官能検査方法は、紅参濃縮液を一定量摂取後に感じられる5つの味に対して味の強度を点数で評価した。味の項目は酸味、甘味、塩味、苦味、苦味の後味で、非常に強く感じられる場合は9点、非常に弱く感じられる場合は1点で評価した。また、各紅参濃縮液の総合嗜好度を官能検査と同様に9点尺度法で評価し、点数を記載した。
【0080】
【表3】
【0081】
前記表3に示すように、温和後には温和前に比べて紅参濃縮液の甘味が強くなり、苦味と苦味の後味が弱くなった。これは温和段階によるジンセノサイドRb1の脱糖化工程によるものとみられ、紅参固有の苦味が弱くなるにつれて官能嗜好度が増加したものとみられる。また、温和段階を適用することにより、従来製品(比較例1)と類似した程度の官能を有する紅参濃縮液が製造可能であった。