(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】コンデンサケース及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20240430BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20240430BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240430BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G2/02 101D
H01G2/02 101E
H01G2/10 C
H01G2/10 K
H01G4/224 200
H01G4/32 301F
(21)【出願番号】P 2020009440
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】岡部 勇太
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181109(WO,A1)
【文献】特開2020-009985(JP,A)
【文献】特開2016-207534(JP,A)
【文献】特開2014-120636(JP,A)
【文献】特開2003-153415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 2/10
H01G 4/224
H01G 4/32
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、ケース本体の壁部の外面に設けられた取付脚と、壁部の内面に設けられ、壁部を介して取付脚の基端部と対向するリブとを備え、リブが互いに隣り合う2つの壁部の内面に跨っており、取付脚の基端部の長さの半分以上、取付脚の基端部とリブとが対向している、コンデンサケース
と、
このコンデンサケースに収容された、曲面部を有する複数のコンデンサ素子とを備え、
リブが、2つのコンデンサ素子の曲面部間に配置されている、コンデンサ。
【請求項2】
リブが取付脚の基端部の長手方向と略平行に設けられており、
取付脚の基端部の長手方向の長さの半分以上、取付脚の基端部とリブとが対向している、
請求項1記載のコンデン
サ。
【請求項3】
コンデンサケース
に樹脂を充填した
、請求項1又は2記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取付脚を備えたコンデンサケース及びこのコンデンサケースを用いたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子を収容するケースとして樹脂製のケースを使用する場合がある。樹脂ケースはその材質の特性上、壁面がケースの内側に向かって反ってしまうことがある。そこで特許文献1では、壁面の反りを抑制するためにリブを設けている。また、特許文献2には、ケース内側にリブ状の位置決め部を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-153415号公報
【文献】特開2002-367857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでケースの壁面には、外部機器へケースを固定するための取付脚を設ける場合がある。取付脚は壁面から外側に向かって突出しており、例えば貫通孔を備えている。そしてこの貫通孔と、外部機器に設けられている孔とに跨ってボルト等の固定具を挿通させることで、外部機器に対してケースを取り付けられるようになっている。
【0005】
ただ、壁面が反ってしまうと、取付脚の向きや位置にずれが生じ、取付精度が悪くなったり、そもそも取り付けができなくなるといった不具合を生じる。リブを設ければ、リブを設けない場合と比べて壁面の反りを抑制することができるが、取付脚とリブとの位置関係によっては取付脚のずれを十分に抑制することができない場合もある。
【0006】
そこで本発明は、取付脚による外部機器へのコンデンサの取付精度を確保することができるコンデンサケース及びコンデンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンデンサケース7は、ケース本体71と、ケース本体71の壁部71aの外面に設けられた取付脚72と、壁部71aの内面に設けられ、壁部71aを介して取付脚72の基端部72bと対向するリブ73とを備え、リブ73が互いに隣り合う2つの壁部71aの内面に跨っており、取付脚72の基端部72bの長さ(L1、L3)の半分以上、取付脚72の基端部72bとリブ73とが対向していることを特徴としている。
【0008】
上記コンデンサケース7では、リブ73が取付脚72の基端部72bの長手方向と略平行に設けられており、取付脚72の基端部72bの長手方向の長さL1の半分以上、取付脚72の基端部72bとリブ73とが対向していることが好ましい。
【0009】
また、本発明のコンデンサは、上記コンデンサケース7にコンデンサ素子2を収容し、樹脂を充填したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンデンサケースは、壁部を介して取付脚の基端部と対向するリブを備えているため、取付脚が設けられている部分の壁部の反りを効果的に抑制することができる。特に、取付脚の基端部の長さの半分以上、取付脚の基端部とリブとが対向しているため、反りによる取付脚のずれを抑え、取付脚による外部機器へのコンデンサの取付精度を確保することができる。
【0011】
リブが取付脚の基端部の長手方向と略平行に設けられており、取付脚の基端部の長手方向の長さの半分以上、取付脚の基端部とリブとが対向している場合、取付脚の基端部とリブとが対向する長さを十分に確保することができ、反りによる取付脚のずれを一層抑え、取付脚による外部機器へのコンデンサの取付精度をより確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態に係るコンデンサを示す分解斜視図である。
【
図5】
図5aが他の実施形態に係るコンデンサケースを示す断面図、
図5bがそのコンデンサケースの平面図である。
【
図6】別の実施形態に係るコンデンサケースを示す断面図である。
【
図7】さらに別の実施形態に係るコンデンサケースを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明のコンデンサ1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明のコンデンサ1は、
図1に示すように、複数のコンデンサ素子2と、コンデンサ素子2に接続されるバスバー3(
図2参照)と、コンデンサ素子2を収容するコンデンサケース7と、コンデンサケース7内に充填される樹脂(図示しない)とを備えている。以下、上記の各部品について説明していくが、説明における「上下」の概念は、製造時、より具体的には樹脂充填時におけるものであって、必ずしも使用時の上下を規定するものではない。
【0014】
コンデンサ素子2は、絶縁性のフィルムの表面に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回することでなるフィルムコンデンサであって、軸方向両端面に金属を溶射してなる電極部2a、2bがそれぞれ形成されている。このコンデンサ素子2は、軸方向から見ると俵状、具体的には4つのコーナー部にR(アール)が設けられており、軸方向外周に平坦部2cと曲面部2dとを有している。
【0015】
上記構成のコンデンサ素子2は、電極部2a、2bを上下に向けた状態で4つ並べられてコンデンサ素子群21を形成している。なお、コンデンサ素子群21におけるコンデンサ素子2の数は、必要な静電容量に合わせて適宜変更可能である。
【0016】
バスバー3は、コンデンサ素子2の上側の電極部2aに接続される第1バスバー4と、下側の電極部2bに接続される第2バスバー5とを備えている。
【0017】
第1バスバー4は、基部41と、基部41から延出された外部接続部42と、基部41から延出された素子接続部43とを備えている。基部41の平面形状は略L字状である。この基部41は、コンデンサ素子群21を構成する4つのコンデンサ素子2の全ての電極部2aと少なくとも一部が重なり合うよう、その大きさが定められている。外部接続部42は、基部41の一辺から上方に向かって延出されている。この外部接続部42には、外部機器との接続に供する接続孔42aが設けられている。素子接続部43は舌状であって、基部41の外周から延出されている。
【0018】
第2バスバー5についても、基部51と、基部51から延出された外部接続部52と、基部51から延出された素子接続部53とを備えている。第2バスバー5の基部51は、間にコンデンサ素子2や第1バスバー4を配置させることができるように、側面視略コ字状とされており、上側水平部51aと、上側水平部51aの長辺から下方に延びる垂直部51bと、垂直部51bの下端から水平方向へ延びる下側水平部51cとに大別される。外部接続部52は、上側水平部51aの、垂直部51bとは反対の辺から上方に向かって延出されている。この外部接続部52には、外部機器との接続に供する接続孔52aが設けられている。素子接続部53は舌状であって、下側水平部51cの一辺から延出されている。
【0019】
第1バスバー4と第2バスバー5は、例えばアルミニウムや銅などの金属板を適宜打ち抜き加工や折り曲げ加工することで形成されている。
【0020】
ところで、第1バスバー4と第2バスバー5とは、
図2に示すように一部が重なり合っている。具体的には、第1バスバー4の基部41と第2バスバー5の上側水平部51aとが、第2バスバー5が上になるようにして重なり合っている。そして第1バスバー4の基部41と第2バスバー5の上側水平部51aとの間には、絶縁部材6が介在している。
【0021】
絶縁部材6は、第2バスバー5の上側水平部51aよりも大きく、平面視で第2バスバー5の上側水平部51aの周囲からはみ出している。また絶縁部材6は、側面視略L字状であって、第2バスバー5の垂直部51bの一部までカバーしている。これより、第2バスバー5とコンデンサ素子2の上側の電極部2aとの絶縁、第2バスバー5と第1バスバー4との絶縁が確保されている。この絶縁部材6は例えば絶縁紙からなる。ただ、絶縁部材6を設けることなく、絶縁距離を確保できる空間を設けるだけでも良い。
【0022】
コンデンサケース7は合成樹脂製であって、ケース本体71と、取付脚72と、リブ73とが一体成型されている。
【0023】
ケース本体71は5つの壁部71aを備えている。具体的には、平面視略矩形状の底壁部71a1と、底壁部71a1の4辺からそれぞれ上方に向かって立ち上がる側壁部71a2とを備えている。ケース本体71の上端(底壁部71a1と向かい合う面)は開口しており、内部には、コンデンサ素子2とバスバー3とを収容可能な収容空間が形成されている。
【0024】
取付脚72は、底壁部71a1と、底壁部71a1の短辺から立ち上がる2つの側壁部71a2とにそれぞれ設けられている。底壁部71a1の取付脚72は、底壁部71a1の外面から下方に向かって突出している。また、側壁部71a2の取付脚72は、側壁部71a2の外面から水平方向に向かって突出している。これら取付脚72は、図示しない外部機器にコンデンサケース7を取り付けるためのものであって、取付孔72aを備えている。取付脚72の壁部71a(底壁部71a1、側壁部71a2)側の部分を基端部72bとすると、基端部72bの形状は、壁部71aと平行な面において略長方形とされている。
図3及び
図4に示すように、側壁部71a2の取付脚72は、基端部72bの長手方向が上下方向に向いており、短手方向は水平方向に向いている。そして取付孔72aは水平方向に開口している。すなわち、取付孔72aとケース本体71の開口部71bとは互いに略直交する方向に開口しているといえる。符号72cは、取付孔72aの開口方向と平行に設けられた補強板であって、取付孔72aの開口方向と同じ方向の剛性を高めている。
【0025】
リブ73は、厚みが例えば3mm程度、高さ(壁部71aからの突出長さ)が例えば10mm程度とされた板状であって、壁部71aを介して取付脚72の基端部72bと対向するようにして壁部71aの内面に設けられている。すなわち、
図4に示すように、平面視、取付脚72の基端部72bの短手方向の幅W1内(補強版を除く)にリブ73が位置している。このリブ73は、互いに隣り合う底壁部71a1と側壁部71a2との2面に跨っている。この状態は、リブ73が、底壁部71a1から側壁部71a2に沿いながら上方(取付脚72)に向かって延出しているともいえる。リブ73と取付脚72の基端部72bとは、取付脚72の基端部72bの長さの半分以上対向している。より具体的には、リブ73の延出方向と、取付脚72の基端部72bの長手方向とが略平行であって、リブ73と取付脚72の基端部72bとが、取付脚72の基端部72bの長手方向の長さの半分以上対向している。従って、取付脚72の基端部72bの長手方向の長さをL1、リブ73と取付脚72の基端部72bとの重なり長さをL2とすると、以下の式が成り立っている。
【0026】
L1/2≦L2
【0027】
このように、リブ73と取付脚72とが互いに対向することで、取付脚72が設けられている部分の壁部71aの反りを効果的に抑制することができる。そして壁部71aが反ることによる取付脚72の向きや位置のずれが抑制される結果、取付脚72による外部機器へのコンデンサケース7の取り付けを精度良く行うことができる。また、リブ73により取付脚72や壁部71aが補強されるため、振動条件が厳しく取付脚72や壁部71aに大きな応力が加わる場合にも安定した取り付けになる。
【0028】
ところで、
図3に示すように、リブ73はその上角部が斜めに切り欠かれている。具体的には、側壁部71a2との接点から底壁部71a1に向かって三角形状に切り込まれている。これは、ケース本体71内に収容されるコンデンサ素子2やバスバー3等の収容物を上角部によって傷付けないようにするためである。また、リブ73は、
図4に示すように、ケース本体71内に生じるデッドスペースDに配置されている。なお、デッドスペースDとは、例えばコンデンサ素子2の曲面部2d、2d間、コンデンサ素子2と側壁部71a2との間、コンデンサ素子2と図示しない他の電子部品との間、電子部品と側壁部71a2との間等である。なお、本実施形態では、コンデンサ素子2の曲面部2d、2d間にリブ73が位置している。このように、リブ73をデッドスペースDに位置させることで、コンデンサ全体の小型化に寄与することができる。
【0029】
リブ73の厚みは、取付脚72の厚み(短手方向の長さ)より大であってもよい。ただ、厚みが大きいと壁部71aにひけが生じる可能性があるため、例えばケース本体の壁部71aと同程度の厚みに留めることが好ましい。
【0030】
ケース本体71内に充填される樹脂は例えばエポキシ樹脂である。ただこれに限らず、ウレタン樹脂など種々の公知の樹脂を使用可能である。
【0031】
次に、コンデンサ1の製造方法について説明する。まず、コンデンサ素子2の上側の電極部2aに第1バスバー4の基部41を重ね合わせて、コンデンサ素子2の上側の電極部2aと第1バスバー4とを電気的に接続する。次に、第1バスバー4の基部41に絶縁部材6を重ね合わせる。そして、これらコンデンサ素子2、第1バスバー4、絶縁部材6を、略コ字状とされた第2バスバー5内に入れ込むとともに、コンデンサ素子2の下側の電極部2bと第2バスバー5とを電気的に接続する。このようにして一体となったコンデンサ素子2、バスバー3、絶縁部材6を、外部接続部42、52がケース本体71の開口部71bから上方に突出するようにして、ケース本体71内に収容し、ケース本体71内に樹脂を充填することでコンデンサ1の製造を完了する。
【0032】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、リブ73の延出方向と、取付脚72の基端部72bの長手方向とが略平行である必要はなく、例えば
図5a、
図5bに示すように、リブ73の延出方向と取付脚72の基端部72bの長手方向とが略直交していてもよい。この場合であっても、取付脚72の基端部72bの長手方向の幅W2内にリブ73が位置し、且つリブ73と取付脚72の基端部72bとが、取付脚72の基端部72bの短手方向の長さの半分以上対向していれば、すなわち、取付脚72の基端部72bの短手方向の長さをL3、リブ73と取付脚72の基端部72bとの重なり長さをL2としたときにL3/2≦L2が成り立つようにすれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0033】
また、
図6に示すように、底壁部71a1に設けられた取付脚72とリブ73とを対向させてもよい。さらに
図7に示すように、互いに隣り合う2つの壁面(底壁部71a1と側壁部71a2)にそれぞれ取付脚72が設けられており、それら取付脚72の基端部72bにそれぞれ跨るように1つのリブ73を設けてもよい。また、取付脚72とリブ73を設ける位置は、壁部71aの水平方向中央付近である必要はなく、左右にずらした位置やケース本体71の端に設けてもよい。また、リブ73が、底壁部71a1と側壁部71a2とに跨る他、側壁部71a1と側壁部71a1とに跨っていてもよい。要は、底壁部71a1であるか側壁部71a2であるかを問わず、互いに隣り合う2つの壁部71aの内面に跨ってリブ73が設けられていればよい。
【0034】
また、コンデンサ素子2を4つ用いていたが、これに限らず適宜個数を変えてもよい。また、コンデンサ素子2としてはフィルムコンデンサに限らず、セラミックコンデンサなど種々のコンデンサ素子を用いても良いし、複数種類のコンデンサ素子を組み合わせてもよい。コンデンサ素子の形状についても、円柱状や角柱状など種々の形状を採用し得る。
【符号の説明】
【0035】
1 コンデンサ
2 コンデンサ素子
2a 一方(上側)の電極部
2b 他方(下側)の電極部
2c 平坦部
2d 曲面部
21 コンデンサ素子群
3 バスバー
4 第1バスバー
41 基部
42 外部接続部
42a 接続孔
43 素子接続部
5 第2バスバー
51 基部
51a 上側水平部
51b 垂直部
51c 下側水平部
52 外部接続部
52a 接続孔
53 素子接続部
6 絶縁部材
7 コンデンサケース
71 ケース本体
71a 壁部
71a1 底壁部
71a2 側壁部
71b 開口部
72 取付脚
72a 取付孔
72b 基端部
72c 補強板
73 リブ
L1 取付脚の基端部の長手方向の長さ
L2 取付脚の基端部とリブとが重なり合う部分の長さ
L3 取付脚の基端部の短手方向の長さ
W1 取付脚の基端部の短手方向の幅
W2 取付脚の基端部の長手方向の幅
D デッドスペース