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  • 特許-変速機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240430BHJP
【FI】
F16H57/04 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020036563
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021139421
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
(72)【発明者】
【氏名】三森 拓
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-074194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を形成するケースと、
前記ケースに下側から取り付けられ、オイルを受けるオイルパンと、
前記オイルパンの底面の上方に設けられて、前記オイルパンに受けられているオイルを吸込口から吸い込み、その吸い込んだオイルを濾過するストレーナと、
前記オイルパンの前記底面の上方に設けられて、前記ストレーナにより濾過されたオイルが供給されるバルブボディと、を含み、
前記オイルパンの変形からの保護を要する保護対象物が前記吸込口を含めて3個以上設定されており、
前記保護対象物のうちの一の保護対象物のみに対応づけて、当該一の保護対象物よりも下方に突出する1個の突起と、前記一の保護対象物以外の前記保護対象物のうちの少なくとも2個以上の保護対象物に対応づけて、当該2個以上の保護対象物よりも下方に突出する1個の突起とが、少なくとも設けられて、すべての前記保護対象物が対応する前記突起よりも上方に配置されている、変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)などの変速機では、外殻をなすケースの底部に、各部へのオイルの供給を制御するためのバルブボディが配置され、ケースには、オイルを受けるオイルパンがバルブボディの下側からボルトで固定されている。バルブボディとオイルパンとの間には、オイルパンから吸い上げられるオイルを濾過するためのストレーナが配置される。
【0003】
変速機が搭載された車両の旋回や発進、停止によるオイルの挙動、つまりオイルパンに貯留されているオイルの油面位置の変化を考慮して、オイルパンの中央部からストレーナにオイルを吸い上げる必要がある。そのため、ストレーナは、バルブボディの下側に配置され、ストレーナにオイルを吸い込む吸込口は、オイルパンの中央部に対向する位置に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-180711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部からの衝撃によりオイルパンが変形すると、たとえば、その変形したオイルパンでストレーナの吸込口が閉塞されるおそれがある。そのため、従来は、オイルパンを保護するためのオイルパンガードが設定されて、道路上の落下物などの物体がオイルパンに衝突することによるオイルパンの変形が防止されている。
【0006】
ところが、オイルパンガードは、金属製であって外部からの衝撃に対する強度を確保可能な厚みを必要とし、重量が大きく、コストも嵩むことから、本願発明者らは、オイルパンガードを廃止できないかと考えた。
本発明の目的は、オイルパンガードを廃止しても、オイルパンの変形による不具合の発生を抑制できる、変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る変速機は、外殻を形成するケースと、ケースに下側から取り付けられ、オイルを受けるオイルパンと、オイルパンの底面の上方に設けられて、オイルパンに受けられているオイルを吸込口から吸い込み、その吸い込んだオイルを濾過するストレーナと、オイルパンの底面の上方に設けられて、ストレーナにより濾過されたオイルが供給されるバルブボディとを含み、バルブボディの下端よりも上方に、吸込口が配置されている。
【0008】
この構成によれば、オイルパンの底面の上方に、ストレーナおよびバルブボディが設けられている。ストレーナの吸込口は、バルブボディの下端よりも上方に配置されている。そのため、オイルパンが外部からの衝撃で変形しても、その変形をバルブボディの下端で食い止めることができる。その結果、変形したオイルパンによりストレーナの吸込口が閉塞されることを抑制できる。
【0009】
よって、オイルパンガードを廃止しても、ストレーナの吸込口が閉塞されるという不具合の発生を抑制できる。そして、オイルパンガードを廃止することにより、車両の重量およびコストの低減を図ることができる。
【0010】
オイルパンの変形からの保護を要する保護対象物が設定されて、吸込口を含む保護対象物に対応づけて、その対応する保護対象物よりも下方に突出する突起が設けられて、当該突起がバルブボディの下端を構成していることが好ましい。
この構成により、外部からの衝撃によるオイルパンの変形から保護対象物を効果的に保護することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オイルパンガードを廃止しても、オイルパンの変形による不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】変速ユニットのユニットケース内を下側から見た図である。
図2図1に示される切断面線A-Aにおける変速ユニットの断面図である。
図3図1に示される切断面線B-Bにおける変速ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は、変速ユニット1のユニットケース2内を下側から見た図である。図2は、図1に示される切断面線A-Aにおける変速ユニット1の断面図である。また、図3は、図1に示される切断面線B-Bにおける変速ユニット1の断面図である。
【0015】
変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジンが発生する動力を変速するユニットである。変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース2内に、たとえば、トルクコンバータおよびベルト式のCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)などを備えている。
なお、以下の説明で使用する、前後左右の方向は、変速ユニット1が車両に搭載された状態を基準とする。
【0016】
ユニットケース2の底部には、バルブボディ3が設けられている。バルブボディ3には、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するための各種のバルブを含む油圧回路が形成されている。各種のバルブには、第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12、第3ソレノイドバルブ13、第4ソレノイドバルブ14および第5ソレノイドバルブ15が含まれる。第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13は、ユニットケース2内を下側から見て、ユニットケース2の右前端部に、左右方向に右側からこの順で横並びに配置されている。第4ソレノイドバルブ14は、ユニットケース2内を下側から見て、ユニットケース2の左前端部に配置されている。第5ソレノイドバルブ15は、第3ソレノイドバルブ13と第4ソレノイドバルブ15との間に配置されている。
【0017】
また、ユニットケース2の底部には、ストレーナ4が設けられている。ストレーナ4は、濾過材を収容する濾過部21と、濾過部21から左側に延出する管部22とを備えている。管部22は、中空の管状に形成され、その内部は、濾過部21の内部と連通している。管部22の先端部の下面には、オイルを吸い込むための吸込口23として開口している。
【0018】
ユニットケース2には、図2に示されるように、オイルパン5が下側から複数のボルトで固定されている。図2では、オイルパン5の底面が右下がりに傾斜しているが、変速ユニット1が車両に搭載された状態では、そのオイルパン5の底面が路面とほぼ平行に延びる。
【0019】
オイルポンプ(図示せず)による吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン5に溜まったオイルが吸込口23から管部22内に吸い込まれる。管部22内に吸い込まれたオイルは、管部22内を濾過部21に向けて流れ、濾過部21内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、バルブボディ3に供給される。そして、バルブボディ3からトルクコンバータおよび無段変速機などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
【0020】
第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13は、図1に示されるように、それぞれオイルが通過するポートを有するバルブ部16と、ポートの開度を変更するためのコイルおよびプランジャを収容するコイル部17とを備えている。バルブ部16は、バルブボディ3内に配置され、コイル部17は、バルブボディ3から前側に突出している。バルブボディ3には、第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13のバルブ部16とコイル部17との各間を延びるように、薄板状のリブ31が設定されている。リブ31の下端は、図3に示されるように、第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13よりも下方に突出している。
【0021】
これにより、第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13は、バルブボディ3の下端をなすリブ31の下端よりも上方に配置されている。そのため、オイルパン5が第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12または第3ソレノイドバルブ13の近傍で外部からの衝撃で変形しても、その変形をリブ31の下端で食い止めることができる。その結果、変形したオイルパン5により第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13が損傷を受けることを抑制できる。
【0022】
また、リブ31の左右方向の中間より左側に偏った位置、言い換えれば、左右方向において第2ソレノイドバルブ12と第3ソレノイドバルブ13との間の位置には、切欠32が形成されている。この切欠32を第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12および第3ソレノイドバルブ13のハーネス33が通されることにより、リブ31は、ハーネス33の配策を案内するガイドを兼ねている。
【0023】
第4ソレノイドバルブ14の左側の位置には、第4ソレノイドバルブ14を位置決めして固定するための円柱状のボス34がバルブボディ3から下方に突出して設けられている。ボス34の下端は、第4ソレノイドバルブ14よりも下方に突出している。
【0024】
これにより、第4ソレノイドバルブ14は、バルブボディ3の下端をなすボス34の下端よりも上方に配置されている。そのため、オイルパン5が第4ソレノイドバルブ14の近傍で外部からの衝撃で変形しても、その変形をボス34の下端で食い止めることができる。その結果、変形したオイルパン5により第4ソレノイドバルブ14が損傷を受けることを抑制できる。
【0025】
第5ソレノイドバルブ15の右側の位置には、第5ソレノイドバルブ15を固定するボルト35がねじ込まれるボルト固定ボス36がバルブボディ3から下方に突出して設けられている。ボルト固定ボス36の下端は、第5ソレノイドバルブ15よりも下方に突出している。
【0026】
これにより、第5ソレノイドバルブ15は、バルブボディ3の下端をなすボルト固定ボス36の下端よりも上方に配置されている。そのため、オイルパン5が第5ソレノイドバルブ15の近傍で外部からの衝撃で変形しても、その変形をボルト固定ボス36の下端で食い止めることができる。その結果、変形したオイルパン5により第5ソレノイドバルブ15が損傷を受けることを抑制できる。
【0027】
また、第5ソレノイドバルブの後側であって、ストレーナ4の吸込口23の左側には、バルブボディ3で調圧されるライン圧の油振を防止するための空間を区画する油振対策リブ37がバルブボディ3の下面から下方に膨出する膨出部として形成されている。油振対策リブ37の下端は、図2に示されるように、吸込口23よりも下方に位置している。
【0028】
これにより、ストレーナ4の吸込口23は、バルブボディ3の下端をなす油振対策リブ37の下端よりも上方に配置されている。そのため、オイルパン5が吸込口23の近傍で外部からの衝撃で変形しても、その変形を油振対策リブ37の下端で食い止めることができる。その結果、変形したオイルパン5によりストレーナ4の吸込口23が閉塞されることを抑制できる。
【0029】
よって、外部からの衝撃によるオイルパン5の変形からの保護を要する第1ソレノイドバルブ11、第2ソレノイドバルブ12、第3ソレノイドバルブ13、第4ソレノイドバルブ14、第5ソレノイドバルブ15およびストレーナ4の吸込口23を効果的に保護することができる。そのため、オイルパンガードを廃止しても、オイルパン5の変形による不具合の発生を抑制することができる。オイルパンガードを廃止することにより、車両の重量およびコストの低減を図ることができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもでき、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:変速ユニット(変速機)
2:ユニットケース(ケース)
3:バルブボディ
4:ストレーナ
5:オイルパン
11:第1ソレノイドバルブ(保護対象物)
12:第2ソレノイドバルブ(保護対象物)
13:第3ソレノイドバルブ(保護対象物)
14:第4ソレノイドバルブ(保護対象物)
15:第5ソレノイドバルブ(保護対象物)
23:吸込口(保護対象物)
31:リブ(突起)
34:ボス(突起)
36:ボルト固定ボス(突起)
37:油振対策リブ(突起)
図1
図2
図3