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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】可撓性ホースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/24 20060101AFI20240430BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20240430BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16L11/24
F16L11/10 B
F16L11/08 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020132110
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029019
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佑一
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-194980(JP,U)
【文献】米国特許第02763292(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、隣接する前記可撓性条帯の側縁部を互いに重ね合わせ、
金属製条帯を折り曲げて形成した螺旋状補強体によって、前記重ね合わせ部分をかしめ接合した可撓性ホースであって、
前記螺旋状補強体は、ホース中心軸を含む面における断面が、Ω状断面であり、
前記Ω状断面は、ホース外周側に位置する中空部と、前記中空部の内周側端縁に接続する絞り部と、ホース内周側に位置し前記絞り部の内周側端縁に接続する内周部とを有しており、
前記絞り部は、前記中空部および前記内周部よりも、ホース中心軸方向の幅が小さく、
前記内周部は、前記絞り部の内周側端縁からホース中心軸に沿う方向に延在し、
前記中空部は、ホース内周側が解放されホース外周側が閉じた中空形状とされていて、
可撓性ホースにおいて、螺旋状補強体の前記中空部の内側に、前記重ね合わせ部分と線材とが収容されており、
前記線材を包み込むように前記重ね合わせ部分が配置された状態で、螺旋状補強体の前記中空部がかしめられており、
前記線材を略ホース中心軸方向に沿って挟み込む部位の両側において、前記線材と前記螺旋状補強体との間に、可撓性条帯の前記重ね合わせ部分が密着するように挟持されており、
前記絞り部と前記中空部が並ぶ方向が、ホース半径方向に対し斜めに傾斜している、
可撓性ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の可撓性ホースを製造する方法であって、
金属製条帯を折り曲げて前記Ω状断面としつつ、可撓性条帯の前記重ね合わせ部分と線材を、形成されつつある中空部に収容しながら、可撓性条帯と螺旋状補強体と線材を螺旋状に捲回していく工程を有し、
前記工程の最終段階に、もしくは、前記工程に引き続いて、
前記線材を略ホース中心軸に沿って挟み込む方向に、前記中空部を圧縮してかしめる工程を有する、
可撓性ホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性ホースに関する。特に、本発明は、可撓性条帯を螺旋状に捲回し、条帯側縁部を金属製の補強体でかしめて接合した可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性条帯を螺旋状に捲回し、条帯側縁部を金属製の補強部材でかしめて円筒状のホース壁とした可撓性ホースは、軽量であり、例えば空調用の空気を送風する用途等、多彩な用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属箔層と合成樹脂層とを備える可撓性条帯を螺旋状に捲回して、かかる可撓性条帯の側縁部同士を螺旋状の不燃性補強部材でかしめて接合し、円筒状のダクトとした空調用伸縮性フレキシブルダクトの技術が開示されている。当該フレキシブルダクトは、伸縮性や取り扱い性に優れ、良好な耐熱性を有することが、特許文献1には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-234188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような、可撓性条帯を螺旋状に巻いて、金属製補強部材でかしめて接合した可撓性ホースは、軽量で柔軟なものとなる。その一方で、可撓性ホースの気密性をより向上させることが期待されている。従来技術の可撓性ホースでは、可撓性条帯の側縁部を金属製条帯でかしめて接合していたため、かしめ接合した部分の気密性が不十分になりやすかった。特に可撓性条帯の耐火性や不燃性を高めようとすると、可撓性条帯の材質が伸縮性に乏しいものとなりやすいこともあり、可撓性ホースの気密性が損なわれやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、可撓性条帯を螺旋状補強体で螺旋状にかしめ接合した可撓性ホースの、気密性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、可撓性条帯をかしめ接合する螺旋状補強体を特定の断面形状の補強体にするとともに、螺旋状補強体の内側に収容される線材を略ホース中心軸方向に挟み込む部位の両側で、線材と螺旋状補強体との間に、可撓性条帯の重ね合わせ部分を密着するように挟持すると、可撓性ホースの気密性を高めうることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、所定幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、隣接する前記可撓性条帯の側縁部を互いに重ね合わせ、金属製条帯を折り曲げて形成した螺旋状補強体によって、前記重ね合わせ部分をかしめ接合した可撓性ホースであって、前記螺旋状補強体は、ホース中心軸を含む面における断面が、Ω状断面であり、前記Ω状断面は、ホース外周側に位置する中空部と、前記中空部の内周側端縁に接続する絞り部と、ホース内周側に位置し前記絞り部の内周側端縁に接続する内周部とを有しており、前記絞り部は、前記中空部および前記内周部よりも、ホース中心軸方向の幅が小さく、前記内周部は、前記絞り部の内周側端縁からホース中心軸に沿う方向に延在し、前記中空部は、ホース内周側が解放されホース外周側が閉じた中空形状とされていて、可撓性ホースにおいて、螺旋状補強体の前記中空部の内側に、前記重ね合わせ部分と線材とが収容されており、前記線材を包み込むように前記重ね合わせ部分が配置された状態で、螺旋状補強体の前記中空部がかしめられており、前記線材を略ホース中心軸方向に沿って挟み込む部位の両側において、前記線材と前記螺旋状補強体との間に、可撓性条帯の前記重ね合わせ部分が密着するように挟持されている、可撓性ホースである(第1発明)。
【0009】
そして、第1発明において、前記絞り部と前記中空部が並ぶ方向が、ホース半径方向に対し斜めに傾斜している
【0010】
また、本発明は、第1発明の可撓性ホースを製造する方法であって、金属製条帯を折り曲げて前記Ω状断面としつつ、可撓性条帯の前記重ね合わせ部分と線材を、形成されつつある中空部に収容しながら、可撓性条帯と螺旋状補強体と線材を螺旋状に捲回していく工程を有し、前記工程の最終段階に、もしくは、前記工程に引き続いて、前記線材を略ホース中心軸に沿って挟み込む方向に、前記中空部を圧縮してかしめる工程を有する、可撓性ホースの製造方法である(第発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可撓性ホース(第1発明)および本発明の可撓性ホースの製造方法(第発明)によれば、可撓性ホースの気密性が向上する
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の可撓性ホースの一部断面図である。
図2】第1実施形態の可撓性ホースの螺旋状補強体の周囲の断面図である。
図3】第1実施形態の可撓性ホースの螺旋状補強体の断面図である。
図4】第1実施形態の可撓性ホースの製造工程を模式的に示す断面図である。
図5】補強体が曲げ変形を受けた際に生ずる断面の変化を模式的に示す図である。
図6】螺旋状補強体の変形例を示す断面図である。
図7】第2実施形態の可撓性ホースを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、住宅等の空調システムに使用される空調用ダクトを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。また、下記可撓性ホースの具体的用途は限定されず、他の用途、例えば、オフィス空調用の空調用ダクトや、換気用のダクト、産業用の送風ダクト、液体を移送する可撓性ホースにも使用できる。
【0014】
図1に、第1実施形態の可撓性ホース1の一部断面図を示す。ホースの中心軸mよりも上側半分を断面図として示し、下側半分を外観図として示している。可撓性ホース1は、ホース壁11と螺旋状補強体12を有する。ホース壁11と螺旋状補強体12は互いに一体化されている。
【0015】
ホース壁11は、所定幅の可撓性条帯T1が螺旋状に捲回されて、隣接する可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bが互いに重ね合わせられて、筒状に構成されている。可撓性条帯T1は、例えば、織布材料の少なくとも片面を樹脂材料によりコーティングし、所定の幅に裁断した可撓性条帯が使用できる。可撓性条帯T1には、ポリエチレン樹脂やポリウレタン樹脂などの合成樹脂からなるシート状素材を所定の幅に裁断した可撓性条帯を使用することもできる。可撓性条帯T1は積層構造を有していてもよい。
【0016】
可撓性条帯T1を構成する織布材料は特に限定されないが、ホースの耐熱性や耐火性、不燃性を高める観点からは、織布材料が不燃材料からなる繊維で構成されたものであることが好ましい。不燃材料からなる繊維としては、ガラス繊維やシリカ繊維、金属繊維などが例示される。また、織布材料をコーティングする樹脂材料は、可撓性条帯の気密性を適度に維持できるものであれば特に限定されないが、ホースの耐熱性や耐火性を高める観点からは、シリコーン樹脂(特にシリコーンゴム)やフッ素樹脂(特にフッ素ゴム)であることが好ましい。ホースの耐熱性や耐火性を高める観点からは、可撓性条帯T1が、不燃材料からなる繊維で構成された織布材料を、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂でコーティングした難燃性の可撓性条帯であることが特に好ましい。
【0017】
螺旋状補強体12は、金属製の条帯T2が所定の断面形状に折り曲げられつつ、螺旋状に捲回されて構成される。金属製条帯T2を構成する金属材料は、鉄製やアルミニウム製の薄板や、メッキ亜鉛鋼板、ステンレス板、銅板、真鍮板などが例示されるが、これらに限定されない。
螺旋状補強体12の内部に、隣接する可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bを互いに重ね合わせた部分(以下「重ね合わせ部」とも記載する)が入り込むようにして、その状態で金属製の螺旋状補強体12をかしめて、可撓性条帯T1の側縁部同士T1A、T1Bを接合し、筒状のホース壁11が構成されている。
【0018】
図2に、第1実施形態の可撓性ホース1の螺旋状補強体12の周囲の断面図を示し、詳細な構造を以下説明する。図3には、螺旋状補強体12の断面形状を示す。これら断面は、ホース中心軸mを含む面における断面である。これらの図において、図の下側がホース内周側に対応し、図の上側がホース外周側に対応する。また、これらの図の左右方向が、ホース中心軸方向に対応するが、便宜上、以下の説明において、図の左側をホース中心軸の一端側、図の右側をホース中心軸の他端側、と呼ぶ。図3ないし図7においても同様とする。また、図2では、断面を見やすくするために、可撓性条帯T1のホース中心軸の他端側の側縁部T1Aと、可撓性条帯T1のホース中心軸の一端側の側縁部T1Bとで、ハッチングを異なるものとしている。図7でも同様である。
【0019】
螺旋状補強体12は、ホース中心軸mを含む面における断面で、Ω(オーム)状断面となるように、所定幅の金属製条帯T2が折り曲げられて形成されたものである(図3)。ここで、Ω状断面とは、ホース外周側に位置する中空部121と、ホース内周側に位置する内周部123、および、中空部121と内周部123の間に設けられた絞り部122とを有しており、かつ、ホース中心軸方向の幅に関し、絞り部122の幅W2が、中空部121の幅(もっとも広い部分の幅)W1、および、内周部123の幅(もっとも広い部分の幅)W3よりも小さくされている断面のことである。
【0020】
中空部121は、ホース内周側が解放されホース外周側が閉じた中空形状とされている。可撓性ホース1において、螺旋状補強体12の中空部121の内側に、可撓性条帯T1の重ね合わせ部分と線材13とが収容されている。
【0021】
線材13を包み込むように可撓性条帯T1の重ね合わせ部分が中空部121の内側に配置された状態で、螺旋状補強体12の中空部121がかしめられている。かしめにより、可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bが、中空部121から抜け出しにくくなり、筒状のホース壁11の形態が維持される。また、絞り部122の幅(W2)は、中空部121のホース軸方向の幅W1よりも小さくされていて、かかる構成により、可撓性条帯T1の重ね合わせ部分が中空部121から抜け出してしまうことが確実に予防される。
【0022】
また、中空部121が、線材13を略ホース中心軸方向に挟み込む部位の両側において、線材13と螺旋状補強体12との間に、可撓性条帯T1の前記重ね合わせ部分が密着するように挟持されている。かかる構成により、可撓性条帯T1の前記重ね合わせ部分が線状に押圧され密着することになって、ホースの気密性が高められる。
【0023】
ここで、線材13は、金属線(アルミニウム線や真鍮線、銅線、鋼線、鉄線、等)や、樹脂被覆金属線(硬質塩化ビニル樹脂で被覆した鋼線等)、樹脂線(ポリプロピレン樹脂線、PET樹脂線、塩化ビニル樹脂線等)などにより構成することができるが、これらに限定されない。中空部121の内側で、可撓性条帯T1の重ね合わせ部分が絞り部122よりも膨らんだ形状を維持でき、重ね合わせ部分の抜け出しが阻止できるものであれば、線材13は、紙紐やより糸、ひも、編組線等であってもよい。
【0024】
必須ではないが、本実施形態では、中空部121は矩形状の断面形状に形成されている。本実施形態における中空部は、ホースの外周側に位置しホース軸方向に沿って延在する部分と、ホース半径方向と略平行な直線状に延在する部分とを有する。後述する変形例のように、中空部121は開環状もしくは長円状であってもよい。
【0025】
必須ではないが、好ましくは、本実施形態のように、中空部121が、ホース外周側がより幅広くなるように形成されるなどして、少なくとも、中空部121で最も幅の広い部分よりもホース半径方向内側の部分において、可撓性条帯の側縁部T1A、T1Bの重ね合わせ部分が密着するように挟持されていることが好ましい。
【0026】
絞り部122は、互いに対向する1対の部分により構成されている。当該部分は略ホース半径方向に延在することが好ましい。絞り部122は、前記中空部121のホース内周側の末端から、ホースの半径方向内側に向かって延在している。なお、絞り部122の延在方向は、厳密にホースの半径方向に一致しなければならないわけではなく、後述する実施形態のように、絞り部122の延在方向が、ホースの半径方向に対し傾いていてもよい。
【0027】
絞り部122の幅W2が、中空部121の幅W1よりも小さいことにより、中空部121のホース内周側の部分には、好ましくは、ホース内周側に向かうにつれて幅が徐々に狭くなるような傾斜部分が設けられる。
【0028】
また、螺旋状補強体12には、さらに、前記絞り部122の内周側端縁からホース中心軸mに沿う方向に延在する内周部123,123が設けられる。必須ではないが、本実施形態のように内周部が1対設けられていてもよい。すなわち、螺旋状補強体12のΩ状断面において、ホース外周側には中空部121が、ホース内周側には内周部123が設けられ、中空部121と内周部123をつなぐように、絞り部122が設けられる。そして、Ω状断面は、絞り部122の部分で、ホース中心軸方向の幅が最も小さくされている。
なお、内周部123は、対をなす絞り部122に対し、それぞれ1つずつ設けられてもよいが、対をなす絞り部122のうち、一方のみに設けられてもよい。
【0029】
上記実施形態の可撓性ホース1は、特許文献1に記載されたフレキシブルホースと同様に、公知のホース製造方法により製造できる。
【0030】
可撓性条帯T1や金属製条帯T2、線材13等をそれぞれ準備する。
また、ホース製造装置を準備する。ホース製造装置は、金属製条帯T2を所定の断面となるように折り曲げながら、螺旋状の曲げ形状を与えて螺旋状補強体12を形成しつつ、可撓性条帯T1の側縁部と線材13を螺旋状補強体12の所定の位置に入り込ませ、螺旋状補強体12をかしめることができる。かかるホース製造装置は公知である。
【0031】
ホース製造装置に、金属製条帯T2、可撓性条帯T1、線材13を供給し、各部材が所定の位置に配置された状態で、螺旋状補強体12が形成され、かしめられて、上記実施形態の可撓性ホース1が連続して製造される。かかる製造工程には、以下の2つの工程が含まれる。
【0032】
第1の工程では、金属製条帯T2を折り曲げて前記Ω状断面としつつ、可撓性条帯T1の前記重ね合わせ部分と線材13を、形成されつつある中空部121に収容しながら、可撓性条帯T1と螺旋状補強体12と線材13を螺旋状に捲回していく。かかる工程において、金属製条帯T2は、金型や成型ローラの間を通過しながら徐々に螺旋状補強体12のΩ状断面となるように変形していく。そして、金属製条帯T2の変形と同期するように、螺旋状に巻かれた可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bの重ね合わせ部分が、線材13とともに、螺旋状補強体の中空部121の内側へ収容されていく。この過程が図4(a)、図4(b)に示されている。
ここで、上記重ね合わせ部分の長さおよび位置を調整して、重ね合わせ部分と線材13が、螺旋状補強体の中空部121の内側へ収容される際に、線材13を略ホース中心軸方向に挟み込む部位13A、13Bの両側ともに、重ね合わせ部分が位置するようにする。
【0033】
上記実施形態の可撓性ホースの製造工程には、第1工程の最終段階に、もしくは、第1工程に引き続いて、第2工程が含まれる。第2工程では、線材13を略ホース中心軸方向に挟み込む方向に、中空部121を圧縮して、かしめる(図4(c))。かかるかしめ工程を経ることにより、可撓性ホース1では、線材13を略ホース中心軸方向に挟み込む部位の両側において、線材13と螺旋状補強体12との間に、可撓性条帯T1の側縁部T1A、T2Bの前記重ね合わせ部分が密着するように挟持されることになる。なお、螺旋状補強体12の中空部をかしめる方向は、厳密にホース中心軸mの方向に一致しなければならないわけではなく、両者は互いに傾いていてもよい。
【0034】
上記実施形態の可撓性ホース1の作用および効果について説明する。
可撓性ホース1では、螺旋状補強体12の断面が、Ω状断面であり、前記Ω状断面は、ホース外周側に位置する中空部121と、ホース内周側に位置する絞り部122とを有し、前記絞り部122は、中空部121よりも、ホース中心軸方向の幅が小さい。そして、中空部121に、可撓性条帯T1の側縁部T1A,T1Bの重ね合わせ部分と線材13とが収容されてかしめ接合される。かかる構成により、可撓性条帯T1の側縁部の接合が確実なものとなり、ホースの強度や耐久性が向上する。
【0035】
また、上記実施形態の可撓性ホース1では、螺旋状補強体12の前記Ω状断面は、さらに、ホース内周側に位置し前記絞り部の内周側端縁に接続する内周部123を有し、内周部123は、前記絞り部の内周側端縁からホース中心軸に沿う方向に延在している。また、線材13を略ホース中心軸方向に沿って挟み込む部位(13A,13B)の両側において、線材13と螺旋状補強体12との間に、可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bの重ね合わせ部分が密着するように挟持されている。かかる構成により、可撓性条帯の重ね合わせ部分が、線材13と螺旋状補強体の中空部121とによってしっかりと加圧されることになり、重ね合わせ部分が密着し、可撓性ホースのシール性(気密性)が向上する。
【0036】
上記実施形態のようなΩ状断面の螺旋状補強体を有する可撓性ホースにおいて、線材13を略ホース中心軸方向に沿って挟み込む部位の両側(13A,13B)で、線材13と螺旋状補強体12との間に、可撓性条帯T1の側縁部T1A、T1Bの重ね合わせ部分が密着するように挟持させることにより、シール性が顕著に向上する理由は、以下のように説明される。
【0037】
螺旋状補強体12となるべき金属製条帯T2は、もともとはコイル状に巻かれて供給される平板状の部材であり、長手方向の長さは、幅方向のどの位置で測っても同じ長さである。かかる金属製条帯T2を折り曲げてΩ状断面に形成する場合、単に折り曲げるだけであれば、形成される補強体は直線状のものとなる。可撓性ホースの製造プロセスにおいては、この補強体が、ホースに一体化すべく、螺旋状の形状に変形させられる。その際、補強体が配置される形態では、ホースの外周側では周長が相対的に長く、ホースの内周側では周長が相対的に短い。補強体が螺旋状に配置されるためには、この内外の周長のギャップを解消すべく、補強体が変形することが必要である。
【0038】
そのため、補強体12には、内周側と外周側との周長のギャップが小さくなるよう、補強体のホース半径方向の高さが小さくなるような、断面の変形が生ずる。この様子を図5に示す。上記実施形態のように、幅広に形成された中空部121に、幅が狭い絞り部122と、内周部123とが一体化されたような補強体(図5(a))を、螺旋状となるように曲げると、図5(b)のように、補強体の高さが小さくなるような断面変化が生ずるのである。
【0039】
そして、この断面変化に伴い、絞り部122は、互いに対向する距離d(ホース中心軸方向の絞り部同士の間隔)が小さくなる。また、そのような変形に連携して、中空部121も、ホース軸方向の幅が小さくなるように変形する。その結果、可撓性条帯T1の側縁部の重ね合わせ部分や線材13を、ホース中心軸方向にしっかりと挟み込むよう、中空部121が付勢されることになる。
【0040】
このように、螺旋状補強体12の中空部121が付勢されると、線材13と螺旋状補強体12との間で挟持された、可撓性条帯の重ね合わせ部分が互いにしっかり密着するようになって、可撓性条帯T1の側縁部の重ね合わせ部分が線材13に沿ったシールラインを形成し、当該部分のシール性が向上する。これにより、螺旋状に捲回された可撓性条帯T1は、接合部が線状にシールされた円筒状のホース壁11となって、可撓性ホース1のシール性が向上する。また、線材13を略ホース中心軸方向に沿って挟み込む部位の両側において、可撓性条帯の重ね合わせ部分が、線材13と螺旋状補強体12との間に挟持されているので、シールが2か所で、2重に行われることになって、シールの確実さが向上する。
【0041】
また、上記実施形態のようなホース製造方法をとれば、上記第1実施形態のような可撓性ホースが効率的に得られる。
【0042】
ホースのシール性をより向上させる観点からは、螺旋状補強体12のΩ状断面の中空部121が矩形状であり、中空部がホース軸方向に沿って線材13や可撓性条帯の重ね合わせ部を挟持する部分から、中空部の外周部に向かうにしたがって、中空部の幅が拡幅していくように形成されていることが好ましい。
【0043】
また、必須ではないが、本実施形態のように、少なくとも、中空部121で最も幅の広い部分よりもホース半径方向内側の部分において、前記重ね合わせ部分が密着するように挟持した場合には、上記した作用による、中空部121の付勢がより強く働き、よりシール性が向上する。
【0044】
また、必須ではないが、可撓性条帯T1が、不燃材料からなる繊維で構成された織布材料を、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂でコーティングした難燃性の可撓性条帯であることが好ましい。上記実施形態の可撓性ホースをそのような可撓性条帯を用いて構成すれば、耐熱性に優れるとともに、シール性を向上させた可撓性ホースが得られる。
【0045】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0046】
上記第1実施形態の説明では、螺旋状補強体のΩ状断面の内周部123が対をなすように、ほぼ同じ長さで設けられた例を説明したが、内周部123は、片側のみに設けてもよく、ホースの中心軸方向の一端側のみ、もしくは他端側のみに設けられてもよい。このような螺旋状補強体22の例を図6に示す。図6の螺旋状補強体22は、中空部221が長円状である点や、絞り部222の内周側端縁に接続される内周部223の一方が他方よりも長い点が、第1実施形態と異なるが、他の点は同様である。
このような螺旋状補強体22を用いても、同様に、ホースのシール性を向上できる。
【0047】
また、図6の第2実施形態の螺旋状補強体22のような非対称形状の断面を螺旋状補強体に与えるようにすると、図7に示すように、絞り部222と中空部221が並ぶ方向X-Xが、ホース半径方向(図7の上下方向)に対し斜めに傾斜するようにしやすくなる。そして、可撓性ホースにおいて、絞り部222と中空部221が並ぶ方向X-Xが、ホース半径方向に対し斜めに傾斜していると、螺旋状補強体の中空部をかしめた方向(Y-Y)に中空部をより狭くなるよう変形させようとする付勢がより強く働くことになる。したがって、ホースのシール性がより向上する。
【0048】
螺旋状補強体を形成する金型の向きを傾けるようにして、絞り部222と中空部221が並ぶ方向X-Xが、ホース半径方向に対し斜めに傾斜するようにしてもよいが、内周部223を片側のみに設けたり、内周部223の一方を他方よりも長くしたりすることにより、内周部が短い側、もしくは、内周部が存在しない側に、中空部221が倒れこむように螺旋状補強体を傾けることができる。
【0049】
上記実施形態の可撓性ホース1は、他の部材や層、例えば、断熱層や保護層などを備えていてもよい。また、上記実施形態の可撓性ホース1の内側に他のホースやチューブを配置し、上記実施形態の可撓性ホース1をシース部材、保護部材のように使用することもできる。
【0050】
上記実施形態の可撓性ホース1は、例えば空調ダクトや、耐熱性が要求される送風ダクトなどに利用できる。また、上記実施形態の可撓性ホース1を、液体を搬送する用途に使用してもよい。また、上記実施形態の可撓性ホース1を、管路や配線等の耐熱カバーとして使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上記実施形態の可撓性ホース1は空調用ダクトに使用でき、シール性が良好であり、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0052】
1 可撓性ホース
11 ホース壁
T1 可撓性条帯
T1A,T1B 側縁部
12 螺旋状補強体
T2 金属製条帯
121 中空部
122 絞り部
123 内周部
13 線材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7