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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】物標検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20240430BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20240430BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/42
G01V3/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020157384
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051107
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】米谷 凜太郎
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108957444(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108508427(CN,A)
【文献】国際公開第2017/051647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 3/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコー強度の分布が整理される領域の一部分として設定される小エリアごとに、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度のうち所定の強度閾値を超えるエコー強度の個数(「閾値超え点数」と呼ぶ)と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の平均値と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の標準偏差と、のうちの少なくとも2つを算出する指標算出部と、
前記小エリアごとに、前記閾値超え点数と前記平均値と前記標準偏差とのうちの前記少なくとも2つを用いて氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterを算出するとともに、前記3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値に基づいて前記小エリアの領域の種類を判別する種類判別部と、を有する、
ことを特徴とする物標検出装置。
【請求項2】
前記エコー強度の分布が整理される前記領域に分布する前記エコー強度のうち所定の反射強度閾値を超えるエコー強度を選定する反射強度閾値処理部と、
選定された前記エコー強度の分布に対してクラスタリング処理を施してクラスタを生成するクラスタリング処理部と、
生成された前記クラスタのうち所定のサイズ閾値以上の大きさのクラスタを選定するサイズ閾値処理部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項3】
XY直交座標系に従って各データ要素の位置が特定されるとともに前記データ要素としてのエコー強度の分布が整理されるXY矩形領域の一部分として設定される小エリアごとに、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度のうち所定の強度閾値を超えるエコー強度の個数(「閾値超え点数」と呼ぶ)と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の平均値と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の標準偏差と、のうちの少なくとも2つを算出する指標算出部と、
前記小エリアごとに、前記閾値超え点数と前記平均値と前記標準偏差とのうちの前記少なくとも2つを用いて氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterを算出するとともに、前記3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値に基づいて前記小エリアの領域の種類を判別する種類判別部と、を有する、
ことを特徴とする物標検出装置。
【請求項4】
前記XY矩形領域の前記エコー強度のうち所定の反射強度閾値を超えるエコー強度を選定する反射強度閾値処理部と、
選定された前記エコー強度の分布に対してクラスタリング処理を施してクラスタを生成するクラスタリング処理部と、
生成された前記クラスタのうち所定のサイズ閾値以上の大きさのクラスタを選定するサイズ閾値処理部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の物標検出装置。
【請求項5】
前記氷域評価値Ficeの算出式が、Fice=a11(Nover/Nall-N1)+a12((Pmean-Pmthr)/Pmax)+a13(Pstd/Pmax) であり、
前記中間領域評価値Fintの算出式が、Fint=a21│Nover/Nall-N2│+a22│(Pmean-Pmthr)/Pmax│+a23(Pstd/Pmax) であり、
前記水面領域評価値Fwaterの算出式が、Fwater=a31(Nover/Nall-N3)+a32((Pmean-Pmthr)/Pmax)+a33(Pstd/Pmax) である
(但し、Nover:小エリアにおけるエコー強度の閾値超え点数、Nall:小エリアの総点数、Pmean:小エリアについてのエコー強度の平均値、Pmthr:強度平均値閾値、Pmax:小エリアにおけるエコー強度の最大値、Pstd:小エリアについてのエコー強度の標準偏差、a11,a21,a31:エコー強度の閾値超え点数に係る重み係数、a12,a22,a32:エコー強度の平均値に係る重み係数、a13,a23,a33:エコー強度の標準偏差に係る重み係数、N1,N2,N3:閾値通過点数係数)、
ことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の物標検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物標検出装置に関し、特に、レーダ信号を送信するとともに前記レーダ信号の反射信号であるレーダエコーを受信して前記レーダエコーに基づいて自機の周囲の物標を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載されて、レーダアンテナから放射された電波のエコー信号に基づいて自船の周囲の物標の像を写し出すレーダ映像を表示するレーダ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-014874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、北極海航路などの氷海域での安全航行において、氷が存在する氷域と存在しない水面領域とを見分けることは重要である。しかしながら、利用者が生のレーダ画像を見て瞬時に領域区分(言い換えると、海氷状況を判断)することは実際には困難である、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、レーダ画像データに基づいて領域区分を自動的に行って海氷状況を一目で把握することが可能な、物標検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エコー強度の分布が整理される領域の一部分として設定される小エリアごとに、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度のうち所定の強度閾値を超えるエコー強度の個数(「閾値超え点数」と呼ぶ)と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の平均値と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の標準偏差と、のうちの少なくとも2つを算出する指標算出部と、前記小エリアごとに、前記閾値超え点数と前記平均値と前記標準偏差とのうちの前記少なくとも2つを用いて氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterを算出するとともに、前記3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値に基づいて前記小エリアの領域の種類を判別する種類判別部と、を有する、ことを特徴とする物標検出装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の物標検出装置において、前記エコー強度の分布が整理される前記領域に分布する前記エコー強度のうち所定の反射強度閾値を超えるエコー強度を選定する反射強度閾値処理部と、選定された前記エコー強度の分布に対してクラスタリング処理を施してクラスタを生成するクラスタリング処理部と、生成された前記クラスタのうち所定のサイズ閾値以上の大きさのクラスタを選定するサイズ閾値処理部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、XY直交座標系に従って各データ要素の位置が特定されるとともに前記データ要素としてのエコー強度の分布が整理されるXY矩形領域の一部分として設定される小エリアごとに、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度のうち所定の強度閾値を超えるエコー強度の個数(「閾値超え点数」と呼ぶ)と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の平均値と、当該の小エリアに含まれる前記エコー強度の標準偏差と、のうちの少なくとも2つを算出する指標算出部と、前記小エリアごとに、前記閾値超え点数と前記平均値と前記標準偏差とのうちの前記少なくとも2つを用いて氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterを算出するとともに、前記3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値に基づいて前記小エリアの領域の種類を判別する種類判別部と、を有する、ことを特徴とする物標検出装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の物標検出装置において、前記XY矩形領域の前記エコー強度のうち所定の反射強度閾値を超えるエコー強度を選定する反射強度閾値処理部と、選定された前記エコー強度の分布に対してクラスタリング処理を施してクラスタを生成するクラスタリング処理部と、生成された前記クラスタのうち所定のサイズ閾値以上の大きさのクラスタを選定するサイズ閾値処理部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の物標検出装置において、前記氷域評価値Ficeの算出式が、Fice=a11(Nover/Nall-N1)+a12((Pmean-Pmthr)/Pmax)+a13(Pstd/Pmax) であり、前記中間領域評価値Fintの算出式が、Fint=a21│Nover/Nall-N2│+a22│(Pmean-Pmthr)/Pmax│+a23(Pstd/Pmax) であり、前記水面領域評価値Fwaterの算出式が、Fwater=a31(Nover/Nall-N3)+a32((Pmean-Pmthr)/Pmax)+a33(Pstd/Pmax) である(但し、Nover:小エリアにおけるエコー強度の閾値超え点数、Nall:小エリアの総点数、Pmean:小エリアについてのエコー強度の平均値、Pmthr:強度平均値閾値、Pmax:小エリアにおけるエコー強度の最大値、Pstd:小エリアについてのエコー強度の標準偏差、a11,a21,a31:エコー強度の閾値超え点数に係る重み係数、a12,a22,a32:エコー強度の平均値に係る重み係数、a13,a23,a33:エコー強度の標準偏差に係る重み係数、N1,N2,N3:閾値通過点数係数)、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1や請求項3に記載の発明によれば、エコー強度の閾値超え点数と平均値と標準偏差とのうちの少なくとも2つを用いて算出される氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterのうちの最大値に基づいて小エリアの領域の種類を判別するようにしているので、レーダ画像データに基づいて領域区分を自動的に行って海氷状況を一目で把握することが可能となる。
【0012】
請求項2や請求項4に記載の発明によれば、反射強度閾値処理、クラスタリング処理、およびサイズ閾値処理を実行するようにしているので、単独で存在する物標のうち船舶の安全航行の障害となり得る物標(具体的には例えば、氷/氷山)を抽出することができ、例えば北極海航路のような氷海域における危険領域の把握に際して有用な情報を提供して船舶の安全航行を確保することが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterのそれぞれを適切に算出することができ、レーダ画像データに基づいて領域区分を自動的に一層確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態に係る物標検出装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図1の物標検出装置における処理手順を示すフローチャートである。
図3】XY矩形領域における小エリアの結果割当部分の設定の仕方を説明する図である。(A)はXY矩形領域の左上端の小エリアについて説明する図である。(B)はXY矩形領域の左端(但し、左上端および左下端を除く)の小エリアについて説明する図である。(C)はXY矩形領域の左下端の小エリアについて説明する図である。
図4】XY矩形領域における小エリアの結果割当部分の設定の仕方を説明する図である。(A)はXY矩形領域の上端(但し、左上端および右上端を除く)の小エリアについて説明する図である。(B)はXY矩形領域の内側(但し、上端、下端、左端、および右端を除く)の小エリアについて説明する図である。(C)はXY矩形領域の下端(但し、左下端および右下端を除く)の小エリアについて説明する図である。
図5】XY矩形領域における小エリアの結果割当部分の設定の仕方を説明する図である。(A)はXY矩形領域の右上端の小エリアについて説明する図である。(B)はXY矩形領域の右端(但し、右上端および右下端を除く)の小エリアについて説明する図である。(C)はXY矩形領域の右下端の小エリアについて説明する図である。
図6】XY矩形領域における小エリアの移動の仕方を説明する図である。(A)は小エリアがXY矩形領域の左上端にある状態を示す図である。(B)は小エリアを(A)の位置からY軸方向減少向きにずらし幅分移動させた状態を示す図である。(C)は小エリアを(B)の位置からY軸方向減少向きにさらにずらし幅分移動させた状態を示す図である。
図7】XY矩形領域における小エリアの移動の仕方を説明する図である。(A)は小エリアがXY矩形領域の左上端にある状態を示す図である。(B)は小エリアを(A)の位置からX軸方向増加向きにずらし幅分移動させた状態を示す図である。(C)は小エリアを(B)の位置からY軸方向減少向きにさらにずらし幅分移動させた状態を示す図である。
図8】レーダ画像の例を示す図である。
図9図8のレーダ画像についてのエコー強度の閾値超え点比率の分布を示す図である。
図10図8のレーダ画像についてのエコー強度の平均値の分布を示す図である。
図11図8のレーダ画像についてのエコー強度の標準偏差の分布を示す図である。
図12図8のレーダ画像についての領域区分の結果を示す図である。
図13図12の領域区分の結果について面積が小さい物標の例を示す図である。
図14】距離と反射強度閾値との間の関係を示す図である。
図15】強反射物標の抽出処理の例を示す図である。(A)はレーダ画像の例を示す図である。(B)は(A)のレーダ画像についての強反射物標の抽出結果を示す図である。
図16】強反射物標の抽出処理の他の例を示す図である。(A)はレーダ画像の他の例を示す図である。(B)は(A)のレーダ画像についての強反射物標の抽出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態に係る物標検出装置の概略構成を示す機能ブロック図である。図2は、実施の形態に係る物標検出装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0017】
この物標検出装置は、例えば船舶に搭載されてレーダ信号を送信するとともに前記レーダ信号の反射信号であるレーダエコーを受信して前記レーダエコーに基づいて自機の周囲の物標を検出する機序であり、延いては自機の周囲の海氷状況を判断する機序であり、主として、アンテナユニット1と、強度計算部2と、座標変換部3と、記憶部4と、領域区分部5と、強反射物標抽出部6と、表示部7と、を有する。
【0018】
そして、実施の形態に係る物標検出装置は、XY直交座標系に従って各データ要素の位置が特定されるとともにデータ要素としてのエコー強度の分布が整理されるXY矩形領域の一部分として設定される小エリアごとに、当該の小エリアに含まれるエコー強度のうち所定の強度閾値を超えるエコー強度の個数(「閾値超え点数」と呼ぶ)と、当該の小エリアに含まれるエコー強度の平均値と、当該の小エリアに含まれるエコー強度の標準偏差と、を算出する指標算出部51と、小エリアごとに、閾値超え点数と平均値と標準偏差とを用いて氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterを算出するとともに、3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値に基づいて小エリアの領域の種類を判別する種類判別部52と、XY矩形領域のエコー強度のうち所定の反射強度閾値を超えるエコー強度を選定する反射強度閾値処理部61と、選定された前記エコー強度の分布に対してクラスタリング処理を施してクラスタを生成するクラスタリング処理部62と、生成された前記クラスタのうち所定のサイズ閾値以上の大きさのクラスタを選定するサイズ閾値処理部63と、を有する、ようにしている。
【0019】
アンテナユニット1は、レーダ信号の送信およびエコーデータの生成を行うための仕組みであり、レーダアンテナ11、送受信部12、およびA/D変換部13を備える。
【0020】
レーダアンテナ11は、パルス状の電波としてレーダ信号を無線送信(言い換えると、放射)するとともに、前記電波の物標での反射波であるレーダエコー(具体的には、前記レーダ信号の反射信号)を捕捉する機能を備える送受信器である。レーダアンテナ11は、水平方向に回転しながら電波を送信/放射するとともに反射信号を捕捉する動作をアンテナ正面の向きを変えて繰り返し行うことにより、自機の周囲を360°にわたってスキャンする(ステップS1)。
【0021】
送受信部12は、レーダ信号を生成するとともに生成した前記レーダ信号をレーダアンテナ11を介して送信し、また、送信した前記レーダ信号の反射信号であるレーダエコーをレーダアンテナ11を介して受信する機能を備える通信回路である。送受信部12は、所定の時間間隔(具体的には、レーダアンテナ11の水平回転周期よりも短い時間間隔)でレーダ信号を送信するとともにレーダエコーを受信して出力する(ステップS2)。
【0022】
A/D変換部13は、受信したアナログ信号であるレーダエコーをデジタル信号に変換する機能を備える変換器である。A/D変換部13は、前記所定の時間間隔で送受信部12から供給されるレーダエコーをデジタル信号に逐次変換してエコー信号を出力する(ステップS3)。
【0023】
ここで、レーダ信号(電波)を送信してから次のレーダ信号(電波)を送信するまでのアンテナユニット1の一連の動作のことを「スイープ」と呼び、レーダ信号を送信してから次のレーダ信号を送信するまでの期間に受信したデータのことを「1スイープ分のデータ」と呼ぶと、A/D変換部13は、1スイープ分のデータとしてエコー信号(「1スイープ分のエコーデータ」と呼ぶ)を逐次出力する。
【0024】
1スイープ分のエコーデータは、レーダアンテナ11を起点として当該レーダアンテナ11の方位上(言い換えると、レーダアンテナ11の正面向きの直線上)における状況を表す。また、レーダアンテナ11がレーダ信号を送信したとき、送信された前記レーダ信号が反射した位置がレーダアンテナ11から遠いほど、レーダエコーが捕捉されるタイミングが遅くなる。したがって、1スイープ分のエコーデータには、レーダアンテナ11を起点とする当該レーダアンテナ11の方位上(言い換えると、レーダアンテナ11の正面向きの直線上)に物標があるか否かの情報、および、レーダアンテナ11からレーダ信号を反射させた物標までの距離を特定する情報が含まれている。
【0025】
強度計算部2は、A/D変換部13から逐次出力される1スイープ分のエコーデータのそれぞれについて振幅を計算することにより、エコー強度(具体的には、受信電力;別言すると、電波強度レベル,信号強度,信号レベル)を算出する(ステップS4)。
【0026】
強度計算部2によって計算されるエコー強度は、水平な平面内でレーダアンテナ11を原点とする極座標系に従う位置情報と対応づけられ、具体的には、レーダアンテナ11とレーダ信号が反射した位置との間の距離r[NM]、および、レーダ信号を送信した時のレーダアンテナ11の角度θ[°]と対応づけられる(尚、NM:海里)。
【0027】
レーダアンテナ11の角度θは、例えば、北向きを基準方位(即ち、0°)とするとともにレーダアンテナ11が水平回転する向きを正とする方位角として定められる。レーダアンテナ11の角度θは、スイープごとに所定の角度だけ変化する。
【0028】
また、レーダアンテナ11を介してレーダ信号(電波)を送信してから時間tが経過した時点におけるエコー強度に対応する位置までの距離r(言い換えると、アンテナとレーダ信号が反射した位置との間の距離;尚、電波は時間tの間に距離rを往復している)は、以下の数式1に従って算出される。
(数1) r=c×t/2
ここに、r:エコー強度に対応する位置までの距離[m]
c:光速[m/s]
t:レーダ信号を送信してからレーダエコーを捕捉するまでの時間[s]
(言い換えると、レーダ信号を送信してからの経過時間[s])
【0029】
強度計算部2は、つまり、極座標系における位置(r,θ)とエコー強度との組み合わせデータを生成して出力する。
【0030】
座標変換部3は、極座標系を直交座標系に変換する機能を備える変換回路である。座標変換部3は、強度計算部2から出力される極座標系のエコー強度を直交座標系のエコー強度に変換して出力する(ステップS5)。
【0031】
直交座標系は、格子状/マトリクス状に縦横に配列される多数のデータ要素の位置を表す座標系として設定される。この実施の形態では、自機の位置を原点とするとともに横軸(X軸)を横方向における位置座標(x座標;尚、横方向における自機からの距離に相当する)とし且つ縦軸(Y軸)を縦方向における位置座標(y座標;尚、縦方向における自機からの距離に相当する)とするXY直交座標系が用いられる。なお、例えば、Y軸方向が南北方向に沿う(この場合、X軸,Y軸は緯度,経度に対応する)ようにしたり、Y軸方向が船首方向に沿うようにしたりすることが考えられる。
【0032】
直交座標系のX軸方向における値の範囲やY軸方向における値の範囲は、例えば、レーダレンジやレーダの分解能などが考慮されて定められる。予め定められるX軸方向における値の範囲とY軸方向における値の範囲とによって画定されて、データ要素としてのエコー強度の分布が整理される直交座標系の領域のことを「XY矩形領域」と呼ぶ。
【0033】
座標変換部3は、つまり、強度計算部2から出力されるエコー強度に関する組み合わせデータについて、極座標で表される位置(r,θ)をXY直交座標系での位置(x,y)に変換して、XY直交座標系における位置(x,y)とエコー強度との組み合わせデータを生成して出力する。
【0034】
レーダアンテナ11が電波を送信/放射するとともに反射信号を捕捉する動作をアンテナ正面の向きを変えて繰り返し行いながら360°水平回転する間に取得される、極座標系における位置(r,θ)とエコー強度との組み合わせデータの集合に含まれる組み合わせデータのそれぞれについて処理が行われることにより、XY矩形領域についての、XY直交座標系における位置(x,y)とエコー強度との組み合わせデータの集合が生成される。
【0035】
レーダアンテナ11が360°水平回転するたびに生成される、XY矩形領域についての、XY直交座標系における位置(x,y)とエコー強度との組み合わせデータの集合のことを「XY矩形領域の強度データ」と呼ぶ。
【0036】
記憶部4は、物標検出に纏わる処理を実行する際に用いられるプログラムやデータなどを記憶する機能を備える記憶素子/記憶回路であり、例えば揮発性メモリやハードディスクによって構成される。
【0037】
記憶部4は、座標変換部3から出力されるXY矩形領域の強度データを記憶する。
【0038】
領域区分部5は、小エリアの種類を判別して周囲の領域を区分するための仕組みであり、指標算出部51および種類判別部52を備える。領域区分部5は、記憶部4に記憶されているXY矩形領域の強度データを用いて算出される各種指標の値に基づいて小エリアの種類を判別して海面の状況(特に、海氷状況)に関して領域を区分する(ステップS6)。
【0039】
指標算出部51はXY矩形領域の強度データを用いて各種指標を算出する機能を備える処理回路であり、種類判別部52は指標算出部51によって算出される各種指標の値に基づいて小エリアの種類を判別する機能を備える処理回路である。
【0040】
ステップS6の処理およびステップS7の処理ではエコー強度(具体的には、受信電力;別言すると、電波強度レベル,信号強度,信号レベル)に基づいて各種指標を算出するなどして処理を実行するところ、この実施の形態では、アンテナユニット1の仕様なども踏まえたうえで強度計算部2から出力され得るエコー強度の値を0から255までの256階調に変換した値を用いて種々の処理を実行する。ただし、強度計算部2から出力されるエコー強度の値を256階調の値に変換する操作はこの発明において必須の操作ではなく任意の操作であり、また、強度計算部2から出力されるエコー強度の値を他の仕法によって変換した値を用いて種々の処理が実行されるようにしてもよい。
【0041】
指標算出部51はXY矩形領域を所定の大きさに区分する小エリアに含まれるデータを用いて各種指標を算出し(ステップS6-1)、種類判別部52は、算出された前記各種指標の値に基づいて小エリアの特徴を評価して領域の種類を判別し、判別された前記領域の種類を当該の小エリア内の所定の結果割当部分に割り当てる(ステップS6-2)。指標算出部51および種類判別部52は、小エリアをX軸方向やY軸方向に沿って所定のずらし幅ずつ移動させるたびに小エリアについての各種指標の算出および結果割当部分への領域の種類の割り当てを行い、XY矩形領域の全体(別言すると、全面)についての、XY直交座標系における位置(x,y)と領域の種類との組み合わせデータを生成する。
【0042】
具体的には、図3乃至図5に示す仕法により、指標算出部51はXY矩形領域に対して小エリアを設定し、種類判別部52は小エリアの結果割当部分を設定する。
【0043】
ここで、図3乃至図7において、破線によって規定されるマス目のそれぞれが、格子状/マトリクス状に縦横に配列されて各々の位置がXY直交座標系における位置(x,y)によって表される各データ要素(具体的には例えば、XY矩形領域の強度データにおけるエコー強度)に対応する。なお、図3乃至図7において、「X(+)」はX軸方向における増加の向きを表し、「Y(+)」はY軸方向における増加の向きを表す。また、この発明の説明において、X軸方向に沿う方向を左右方向として扱い、Y軸方向に沿う方向を上下方向として扱う場合がある。
【0044】
図3乃至図7において、また、実線で囲まれる薄い網掛け部分が小エリアを表し、小エリア内の、実線で囲まれる濃い網掛け部分が結果割当部分を表す。
【0045】
図に示す例では、小エリアの1辺の長さを、X軸方向に沿う長さとY軸方向に沿う長さとのどちらも、データ要素16個分とし、すなわち、破線によって規定されるマス目で16マスとする。図に示す例では、また、小エリアのずらし幅を、小エリアをY軸方向に沿って移動させる場合とX軸方向に沿って移動させる場合とのどちらについても、データ要素2個分とし、すなわち、破線によって規定されるマス目で2マスとする。
【0046】
XY矩形領域の左上端については、図3(A)に示すように、XY矩形領域の左端境界および上端境界と2辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左側半分+データ要素1個分]且つ[上側半分+データ要素1個分]の正方形部分を結果割当部分とする。
【0047】
XY矩形領域の左端(但し、左上端および左下端を除く)については、図3(B)に示すように、XY矩形領域の左端境界と1辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左側半分+データ要素1個分]且つ[上下方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]の長方形部分を結果割当部分とする。
【0048】
XY矩形領域の左下端については、図3(C)に示すように、XY矩形領域の左端境界および下端境界と2辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左側半分+データ要素1個分]且つ[下側半分+データ要素1個分]の正方形部分を結果割当部分とする。
【0049】
XY矩形領域の上端(但し、左上端および右上端を除く)については、図4(A)に示すように、XY矩形領域の上端境界と1辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左右方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]且つ[上側半分+データ要素1個分]の長方形部分を結果割当部分とする。
【0050】
XY矩形領域の内側(但し、上端、下端、左端、および右端を除く)については、図4(B)に示すように、上下方向・左右方向に四辺のそれぞれが沿う正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左右方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]且つ[上下方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]の正方形部分を結果割当部分とする。
【0051】
XY矩形領域の下端(但し、左下端および右下端を除く)については、図4(C)に示すように、XY矩形領域の下端境界と1辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[左右方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]且つ[下側半分+データ要素1個分]の長方形部分を結果割当部分とする。
【0052】
XY矩形領域の右上端については、図5(A)に示すように、XY矩形領域の右端境界および上端境界と2辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[右側半分+データ要素1個分]且つ[上側半分+データ要素1個分]の正方形部分を結果割当部分とする。
【0053】
XY矩形領域の右端(但し、右上端および右下端を除く)については、図5(B)に示すように、XY矩形領域の右端境界と1辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[右側半分+データ要素1個分]且つ[上下方向中央のずらし幅分(即ち、データ要素2個分)]の長方形部分を結果割当部分とする。
【0054】
XY矩形領域の右下端については、図5(C)に示すように、XY矩形領域の右端境界および下端境界と2辺が重なる正方形を小エリアとし、当該小エリアのうちの[右側半分+データ要素1個分]且つ[下側半分+データ要素1個分]の正方形部分を結果割当部分とする。
【0055】
図に示す例では、小エリアの1辺の長さをデータ要素16個分とするとともに、小エリアのずらし幅をデータ要素2個分としている。しかしながら、小エリアの1辺の長さやずらし幅は図に示す例におけるデータ要素の個数に限定されるものではなく、小エリアの1辺の長さはデータ要素3個以上であればいずれの個数でもよく、また、小エリアのずらし幅はデータ要素1個以上且つ小エリアの1辺の長さ未満であればいずれの個数でもよい。また、小エリアの1辺の長さと小エリアのずらし幅とを前提としてXY矩形領域の全体(別言すると、全面)をカバーし得るように、結果割当部分の形状や大きさが設定される。
【0056】
指標算出部51および種類判別部52は、また、具体的には例えば図6および図7に示す仕法によって小エリアを移動させながら所定の処理を行う。
【0057】
すなわち、図6(A)に示すように小エリアがXY矩形領域の左上端にある状態で各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行い、同図(B)に示すように小エリアをY軸方向減少向きにデータ要素2個分移動させて各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行い、同図(C)に示すように小エリアをY軸方向減少向きにデータ要素2個分さらに移動させて各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを繰り返して行い、図3(C)に示すように小エリアがXY矩形領域の左下端に到達した状態で各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行う。
【0058】
次に、図7(A)に示すように小エリアがXY矩形領域の左上端にある状態から同図(B)に示すように小エリアをX軸方向増加向きにデータ要素2個分移動させて各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行い、同図(C)に示すように小エリアをY軸方向減少向きにデータ要素2個分さらに移動させて各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを繰り返して行い、図4(C)に示すように小エリアがXY矩形領域の下端に到達した状態で各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行う。
【0059】
そして、図7に示すように小エリアをX軸方向増加向きに移動させてからY軸方向減少向きに下端まで移動させながら各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを繰り返して行い、図5(A)に示すように小エリアをXY矩形領域の右上端へと到達させた状態で各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行い、小エリアをY軸方向減少向きにデータ要素2個分移動させて各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを繰り返して行い、図5(C)に示すように小エリアがXY矩形領域の右下端に到達した状態で各種指標の算出および各種指標に基づく領域の種類の結果割当部分への割り当てを行う。
【0060】
上記により、XY矩形領域の全体(言い換えると、XY矩形領域を構成するすべてのデータ要素のそれぞれ)に対して領域の種類が割り当てられる。なお、図に示す例のように結果割当部分が複数のデータ要素(言い換えると、マス目)からなる場合は、小エリアに含まれるデータ要素としてのエコー強度が用いられて算出される各種指標に基づいて判別された領域の種類が当該の小エリアの結果割当部分を構成する複数のデータ要素のそれぞれに対して割り当てられる。つまり、当該の小エリアの結果割当部分を構成する複数のデータ要素のそれぞれに対して同じ領域の種類が割り当てられる。
【0061】
指標算出部51は、小エリアごとに、各種指標として具体的には、当該の小エリアに含まれるデータ要素としての、XY矩形領域の強度データにおけるエコー強度の閾値超え点数、平均値、および標準偏差を算出する(ステップS6-1)。
【0062】
エコー強度の閾値超え点数は、小エリアに含まれるデータ要素としてのエコー強度のうち、所定の閾値(「強度閾値」と呼ぶ)を超えるデータ要素/エコー強度の個数である。
【0063】
エコー強度の閾値超え点数を計数する際の強度閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えばアンテナユニット1の仕様なども踏まえたうえで強度計算部2から出力されるエコー強度の値に基づいて氷域と中間領域と水面領域とを相互に区別するのに適当な値であることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。なお、この実施の形態では強度計算部2から出力されるエコー強度の値を0から255までの256階調に変換した値を用いて各種指標を算出するようにしているので、エコー強度の閾値超え点数を計数する際の強度閾値は強度計算部2から出力されるエコー強度の値に対応する256階調のうちのいずれかの値として設定される。
【0064】
エコー強度の平均値は小エリアに含まれるデータ要素としてのエコー強度の平均値であり、エコー強度の標準偏差は小エリアに含まれるデータ要素としてのエコー強度の標準偏差である。
【0065】
種類判別部52は、指標算出部51によって算出される各種指標を用いて小エリアそれぞれの種類を判別し、海面の状況が、氷が存在する氷域、氷が存在しない水面領域、および氷域と水面領域との間の領域(「中間領域」と呼ぶ)のうちのいずれであるかを判別する(ステップS6-2)。
【0066】
種類判別部52は、具体的には、下記の数式2-1乃至2-3に従って小エリアごとに氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterをそれぞれ算出する。
【0067】
(数2-1)氷域評価値Ficeの算出式
Fice = a11(Nover/Nall-N1)
+a12((Pmean-Pmthr)/Pmax)
+a13(Pstd/Pmax)
(数2-2)中間領域評価値Fintの算出式
Fint = a21│Nover/Nall-N2
+a22│(Pmean-Pmthr)/Pmax│
+a23(Pstd/Pmax)
(数2-3)水面領域評価値Fwaterの算出式
Fwater = a31(Nover/Nall-N3)
+a32((Pmean-Pmthr)/Pmax)
+a33(Pstd/Pmax)
ここに、 Nover:小エリアにおけるエコー強度の閾値超え点数
Nall :小エリアの総点数
Pmean:小エリアについてのエコー強度の平均値
Pmthr:強度平均値閾値
Pmax :小エリアにおけるエコー強度の最大値
Pstd :小エリアについてのエコー強度の標準偏差
11,a21,a31:エコー強度の閾値超え点数に係る重み係数
12,a22,a32:エコー強度の平均値に係る重み係数
13,a23,a33:エコー強度の標準偏差に係る重み係数
1,N2,N3:閾値通過点数係数(すべて0.4に設定)
【0068】
数式2-1乃至2-3は、いずれも、第1項がエコー強度の閾値超え点数に関する項であり、第2項がエコー強度の平均値に関する項であり、第3項がエコー強度の標準偏差に関する項である。
【0069】
数式2-1乃至2-3における、小エリアにおけるエコー強度の閾値超え点数Nover、小エリアについてのエコー強度の平均値Pmean、および小エリアについてのエコー強度の標準偏差Pstdは、ステップS6-1の処理において計数/算出される値が用いられる。
【0070】
数式2-1乃至2-3における小エリアの総点数Nallは、小エリアに含まれるデータ要素の個数であり、図に示す例では256(=16×16)個である。また、小エリアにおけるエコー強度の最大値Pmaxは、小エリアに含まれるデータ要素としてのエコー強度のうちの最大値である。
【0071】
数式2-1乃至2-3における強度平均値閾値Pmthrは、特定の値に限定されるものではなく、例えばアンテナユニット1の仕様なども踏まえたうえで強度計算部2から出力されるエコー強度の値に基づいて氷域と中間領域と水面領域との各々の特徴を相互に区別するのに適当な値であることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。なお、この実施の形態では強度計算部2から出力されるエコー強度の値を0から255までの256階調に変換した値を用いて各種指標を算出するようにしているので、強度平均値閾値Pmthrは強度計算部2から出力されるエコー強度の値に対応する256階調のうちのいずれかの値として設定される。なお、ステップS6-1の処理において用いられる強度閾値と強度平均値閾値Pmthrとは、特に海氷エコーを識別するという点において共通する働きを有する閾値であるとも言え、同じ値に設定されるようにしてもよい。
【0072】
ここで、発明者の知見によると、氷域と中間領域と水面領域とのそれぞれにおけるエコー強度の閾値超え点数を比較すると、氷域では相対的に大きく、中間領域では相対的に中程度であり、水面領域では相対的に小さい。また、氷域と中間領域と水面領域とのそれぞれにおけるエコー強度の平均値を比較すると、氷域では相対的に大きく、中間領域では相対的に中程度であり、水面領域では相対的に小さい。さらに、氷域と中間領域と水面領域とのそれぞれにおけるエコー強度の標準偏差を比較すると、氷域では相対的に中程度であり、中間領域では相対的に大きく、水面領域では相対的に小さい。
【0073】
上記を踏まえ、数式2-1乃至2-3における、エコー強度の閾値超え点数に係る重み係数a11は正、a21は負、およびa31は負とし、エコー強度の平均値に係る重み係数a12は正、a22は負、およびa32は負とし、さらに、エコー強度の標準偏差に係る重み係数a13は負、a23は正、およびa33は負とする。
【0074】
また、エコー強度の標準偏差はエコー強度の平均値よりも小さいので、エコー強度の標準偏差に係る重み係数a13,a23,a33の絶対値はエコー強度の平均値に係る重み係数a12,a22,a32の絶対値よりも大きくする。
【0075】
以上より、この実施の形態では、評価値Fice,Fint,Fwaterの算出式それぞれの各重み係数を下記のように設定する。
氷域評価値Ficeの算出式の重み係数 :a11=1,a12=1,a13=-3
中間領域評価値Fintの算出式の重み係数 :a21=-1,a22=-1,a23=3
水面領域評価値Fwaterの算出式の重み係数:a31=-1,a32=-1,a33=-2
【0076】
なお、重み係数a11~a33各々の設定値は、上記の値に限定されるものではなく、例えば上述の発明者の知見や各種指標それぞれの値自体の大小関係が考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定されるようにしてよい。
【0077】
また、数式2-1乃至2-3における閾値通過点数係数N1~N3は、この実施の形態ではすべて0.4に設定されるようにしているが、0.4に限定されるものではなく、評価値Fice,Fint,Fwaterの算出式それぞれのエコー強度の閾値超え点数に関する第1項を適切な感度を発揮する項とすることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定されるようにしてよい。なお、数式2-1乃至2-3における閾値通過点数係数N1~N3は、すべて同じ値に設定されるようにしてもよく、相互に異なる値に設定されるようにしてもよい。
【0078】
種類判別部52は、上記の数式2-1乃至2-3に従って小エリアごとに氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterをそれぞれ算出し、前記3つの評価値Fice,Fint,Fwaterのうちの最大値の評価値に対応する領域の種類を当該の小エリアの結果割当部分に割り当てる。結果割当部分には、具体的には例えば、領域種類フラグとして、氷域の場合は1、中間領域の場合は2、および水面領域の場合は3の値がそれぞれ割り当てられるようにすることが考えられる。
【0079】
そして、種類判別部52は、XY直交座標系における位置(x,y)と領域の種類(具体的には例えば、領域種類フラグ)との組み合わせデータの集合を記憶部4に記憶させる。
【0080】
領域区分部5による処理の一例として、図8に示すレーダ画像の一例に対する処理の例を図8乃至図12に示す。なお、図8乃至図12に示す例では、小エリアの一辺の長さが実際の長さで0.05[NM]に設定されるとともに小エリアのY軸方向のずらし幅およびX軸方向のずらし幅が実際の長さで0.0067[NM]に設定され、また、エコー強度の閾値超え点数を計数する際の強度閾値が256階調における30に設定される。また、図8乃至図12では、X軸方向の目盛とY軸方向の目盛とのどちらも実際の距離[NM]としている。
【0081】
図8のレーダ画像についてのエコー強度の閾値超え点比率(即ち、Nover/Nall)の分布を図9に示し(尚、0~1の値をとる比率の分布を、値が大きいほど明るくなる明暗で表している)、図8のレーダ画像についてのエコー強度の平均値の分布を図10に示し(尚、0~255の値をとる平均値の分布を、値が大きいほど明るくなる明暗で表している)、さらに、図8のレーダ画像についてのエコー強度の標準偏差の分布を図11に示す(尚、標準偏差の分布を、0~30の範囲で、値が大きいほど明るくなる明暗で表している)。
【0082】
図9乃至図11に示す結果に基づく、図8のレーダ画像についての領域区分の結果を図12に示す。図12に示す結果から、エコー強度の分布が斑な個所や氷域と水面領域との境界箇所が中間領域になっていることが確認でき、領域区分部5による領域の区分の処理が適切に行われていることが確認される。
【0083】
強反射物標抽出部6は、エコー強度が大きい所定の単独物標を抽出/検出するための仕組みであり、反射強度閾値処理部61、クラスタリング処理部62、およびサイズ閾値処理部63を備える。強反射物標抽出部6は、記憶部4に記憶されているXY矩形領域の強度データを用いてエコー強度が大きく且つ所定の条件を満たす物標を抽出/検出する(ステップS7)。
【0084】
ステップS6の処理である領域区分処理では、強反射電力の物標(例えば、氷山など)が単独で存在して小エリアより面積が小さい場合は見落とすおそれがある。例えば、図13に示すように、図12に示す領域区分の結果のうち、白矢印で指し示す、中間領域と判別された物標は、面積が小さいために氷域として判別されていないものの、実際には単独で存在する氷/氷山である可能性がある。
【0085】
そこで、ステップS7の処理では、反射電力(別言すると、受信電力,エコー強度)が大きい点をエコー強度閾値処理によって残したうえでクラスタリング処理を施し、また、サイズ閾値処理を施して雑音を除去することにより、単独で存在して船舶の安全航行の障害となり得る物標を抽出する。
【0086】
反射強度閾値処理部61は、XY矩形領域の強度データを用いて所定の反射強度を有する物標を選定する機能を備える処理回路である。反射強度閾値処理部61は、反射電力が大きい点(別言すると、データ要素)を残すことによって面積の小さい氷などを検出するため、記憶部4に記憶されているXY矩形領域の強度データ(即ち、XY直交座標系における位置(x,y)とエコー強度との組み合わせデータの集合)のそれぞれについて、エコー強度が所定の閾値(「反射強度閾値Prthr」と呼ぶ)を超えるか否かを判断してエコー強度閾値処理を施す(ステップS7-1)。
【0087】
強反射物標を抽出する際の反射強度閾値Prthrは、特定の値に限定されるものではなく、例えばアンテナユニット1の仕様なども踏まえたうえで強度計算部2から出力されるエコー強度の値に基づいて強反射物標を抽出するのに適当な値であることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。なお、この実施の形態では強度計算部2から出力されるエコー強度の値を0から255までの256階調に変換した値を用いて各種指標を算出するようにしているので、強反射物標を抽出する際の反射強度閾値Prthrは強度計算部2から出力されるエコー強度の値に対応する256階調のうちのいずれかの値として設定される。なお、反射強度閾値Prthrは、海氷エコーよりも大きな反射電力を識別するための閾値として設定されることが好ましく、ステップS6の処理において用いられる強度閾値や強度平均値閾値Pmthrよりも大きい値に設定されることが好ましい。
【0088】
強反射物標を抽出する際の反射強度閾値Prthrは、自機からの距離にかかわらず一定の値として設定されるようにしてもよいものの、距離の増加に伴う反射電力の低減に鑑みて、自機からデータ要素それぞれまでの距離に応じて例えば図14に示すように変化する(具体的には、減少する)値として設定されることが好ましい。図14に示す例では、以下の数式3に従って自機からデータ要素までの距離に応じて反射強度閾値Prthrを変化させる(具体的には、減少させる)ようにしている。ただし、反射強度閾値Prthrの変化のさせ方は、図14や数式3には限定されない。
(数3) Prthr = 255-65d0.15
ここに、d:自機からデータ要素までの距離[m]
【0089】
なお、この実施の形態では、XY矩形領域は自機の位置を原点とする直交座標系であるので、距離dは、原点(0,0)からデータ要素それぞれの位置(x,y)までの距離である。
【0090】
反射強度閾値処理部61は、エコー強度が反射強度閾値Prthrを超えるデータについての、XY直交座標系における位置(x,y)データの集合を生成して出力する。
【0091】
クラスタリング処理部62は、データ点どうしの距離に基づいてデータ点を物標ごとの塊(即ち、クラスタ)としてまとめるクラスタリング処理を施す機能を備える処理回路である。クラスタリング処理部62は、反射強度閾値処理部61から出力されるデータに対してクラスタリング処理を施す(ステップS7-2)。
【0092】
ステップS7-2の処理におけるクラスタリング処理は、特定の手法に限定されるものではなく、単独で存在する氷/氷山が適切に抽出され得ることが考慮されるなどしたうえで適当なクラスタリング手法が適宜選択されるとともに前記クラスタリング手法における具体的な設定(例えば、クラスタとしてまとめる距離の範囲など)が適宜定められる。
【0093】
クラスタリング処理部62は、例えば、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise の略)を用いてクラスタリング処理を施すようにしてもよい。DBSCAN自体は周知の技術であるのでここでは詳細の説明は省略するが、概略としては、各データ点から所定の設定距離内に在る他のデータ点の個数が求められるとともに前記個数に応じて各データ点の種類が決定される。具体的には、前記設定距離内に在る他のデータ点の個数が所定の閾値を超えるデータ点はコア点とされ、前記設定距離内にコア点が存在するデータ点(但し、コア点を除く)は境界点とされ、前記設定距離内にコア点が存在しないデータ点はノイズ点とされる。そのうえで、コア点どうしがつながれてクラスタが構成され、さらに、境界点が前記クラスタに接続されることにより、クラスタリング処理が行われる。
【0094】
クラスタリング処理部62は、生成されるクラスタごとの、XY直交座標系における位置(x,y)データの集合を生成して出力する。
【0095】
サイズ閾値処理部63は、クラスタの大きさに基づいて所定の大きさを有するクラスタを選定する機能を備える処理回路である。サイズ閾値処理部63は、レーダエコーサイズ未満のエコー(雑音など)を除去するため、クラスタリング処理部62から出力されるクラスタのそれぞれについて、クラスタの大きさが所定の閾値(「サイズ閾値」と呼ぶ)以上か否かを判断してサイズ閾値処理を施す(ステップS7-3)。
【0096】
サイズ閾値処理部63は、例えば、面積による閾値処理と長さによる閾値処理とのうちの少なくとも一方を実行することが考えられる。
【0097】
面積による閾値処理は、具体的には、レーダのレンジ距離をR、レンジ分解能をΔRr、さらにアジマス分解能をΔθrとして、クラスタ面積がサイズ閾値としてのR×Δθr×ΔRr未満の場合に当該クラスタを除去するようにすることが考えられる。
【0098】
長さによる閾値処理は、クラスタ内最遠点距離を用いる閾値処理であり、具体的には、クラスタ内最遠点距離がサイズ閾値としての√[(R×Δθr)2+(ΔRr)2]未満の場合に当該クラスタを除去するようにすることが考えられる。
【0099】
長さ(具体的には、クラスタ内最遠点距離)による閾値処理について、サイズ閾値処理部63は、クラスタ内のいずれの2点が最遠点の組み合わせであるのか不明であるので、網羅的な処理を実行するため、例えば、クラスタ内の2点の組み合わせのすべてについて2点間の距離を求めるとともに前記2点間の距離と閾値との比較を順次行い、閾値以上の2点間の距離が出現した場合には当該のクラスタは所定の大きさの要件を満たしていると判断して当該のクラスタに関する処理を終了し、一方、閾値以上の2点間の距離が出願しない場合には当該のクラスタは所定の大きさの要件を満たしておらずレーダエコーよりも小さいと判断して当該のクラスタを除去する、ようにすることが考えられる。
【0100】
サイズ閾値処理部63は、クラスタの大きさがサイズ閾値以上のクラスタごとの、XY直交座標系における位置(x,y)データの集合を生成して出力する。サイズ閾値処理部63から出力されるクラスタの情報がすなわち、単独で存在して船舶の安全航行の障害となり得る物標の位置に関する情報である。
【0101】
強反射物標抽出部6による強反射物標抽出の結果の例を図15および図16に示す。
【0102】
図15に示す例では、同図(A)に示すレーダ画像に対して強反射物標抽出部6による処理が施されることにより、物標サイズ/スケールが小さく単独で存在する例えば氷/氷山などの物標が同図(B)のように抽出されることが確認される。付け加えると、図12に示す領域区分の結果のうち図13において白矢印で指し示す中間領域と判別された物標は、面積が小さいために領域区分部5による領域区分処理(ステップS6)では氷域として判別されていないが、強反射物標抽出部6による強反射物標抽出処理では単独で存在する物標として抽出される。一方、図16に示す例では、同図(A)に示すレーダ画像に対して強反射物標抽出部6による処理が施され、同図(B)に示すように物標は抽出されないことが確認される。図15図16とに示す結果から、強反射物標抽出処理により、強反射物標のみを的確に抽出することができ、物標サイズ/スケールが小さく単独で存在する例えば氷/氷山などの物標の抽出の処理が適切に行われることが確認される。
【0103】
表示部7は、領域区分部5において判別された領域の種類/区分に関する画像(具体的には例えば、図12に示すような画像)や強反射物標抽出部6において抽出された強反射物標に関する画像(具体的には例えば、図15(B)や図16(B)に示すような画像)などを表示する機能を備える表示器であり、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0104】
上記のような物標検出装置によれば、エコー強度の閾値超え点数と平均値と標準偏差とを用いて算出される氷域評価値Fice、中間領域評価値Fint、および水面領域評価値Fwaterのうちの最大値に基づいて小エリアの領域の種類を判別するようにしているので、レーダ画像データに基づいて領域区分を自動的に行って海氷状況を一目で把握することが可能となる。
【0105】
上記のような物標検出装置によれば、また、反射強度閾値処理、クラスタリング処理、およびサイズ閾値処理を実行するようにしているので、領域区分処理(ステップS6)による或る程度の広がりをもつ領域に係る海氷状況の判別に加えて、強反射物標抽出処理(ステップS7)により、単独で存在する物標のうち船舶の安全航行の障害となり得る物標(具体的には例えば、氷/氷山)を抽出することができ、例えば北極海航路のような氷海域における危険領域の把握に際して有用な情報を提供して船舶の安全航行を確保することが可能となる。
【0106】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0107】
例えば、上記の実施の形態ではエコー強度の閾値超え点数、平均値、および標準偏差の3つの指標を用いるようにしているが、前記3つの指標のうちのいずれか2つのみを用いるようにしてもよい。すなわち、この発明は、エコー強度の閾値超え点数、平均値、および標準偏差の3つの指標のうちの少なくとも2つを用いるようにすればよい。なお、前記3つの指標のうちの2つを用いる場合には、エコー強度の平均値と標準偏差との2つを用いることが好ましい。
【0108】
また、上記の実施の形態では領域区分処理(ステップS6)に加えて強反射物標抽出処理(ステップS7)を実行するようにしているが、領域区分処理(ステップS6)のみを実行するようにしてもよい。すなわち、海氷状況を氷域、中間領域、および水面領域の3種類に区分するだけでも船舶の安全航行には有用な情報であって領域区分処理(ステップS6)だけでもこの発明に係る物標検出装置の構成となり、強反射物標抽出処理(ステップS7)をさらに実行することによって特に危険領域の検知に有用な情報を追加的に提供することができるようになる。
【0109】
また、上記の実施の形態では、極座標系に従う位置情報を有するデータ要素としてのエコー強度を、自機の位置を原点とするとともに横軸(X軸)を横方向における位置座標(x座標;尚、横方向における自機からの距離に相当する)とし且つ縦軸(Y軸)を縦方向における位置座標(y座標;尚、縦方向における自機からの距離に相当する)とするXY直交座標系に従って各データ要素の位置が特定されるXY矩形領域に分布させるとともに、前記XY矩形領域に対して小エリアを設定して、領域の区分や強反射物標の抽出に関する処理を行うようにしている。しかしながら、データ要素としてのエコー強度を分布させるとともに小エリアを設定する際の平面領域は、上記の実施の形態のようなXY直交座標系に従って各データ要素の位置が特定されるXY矩形領域には限定されない。具体的には、自機の位置を原点とするとともに横軸を方位角とし且つ縦軸を自機からの距離とする方位距離直交座標系に従って各データ要素の位置が特定される方位距離矩形領域に前記データ要素としてのエコー強度を分布させるとともに、前記方位距離矩形領域に対して小エリアを設定して、領域の区分や強反射物標の抽出に関する処理を行うようにしてもよい。この場合は、上記の実施の形態における、極座標系のエコー強度を直交座標系のエコー強度に変換する処理(ステップS5)は不要であり、極座標のまま領域の区分や強反射物標の抽出に関する処理を行う。この場合は、また、例えば、図8乃至13ならびに図15および図16に示すようなデータについて、横軸のX[NM]はレーダアンテナの角度θ[°]となり、縦軸のY[NM]は自機からの距離[NM]になる。データ要素としてのエコー強度を分布させるとともに小エリアを設定する際の平面領域に関連しては、あるいは、方位角および距離を変数とする極座標系に従って各データ要素の位置が特定される極座標領域に前記データ要素としてのエコー強度を分布させるとともに、前記極座標領域に対して小エリアを設定して、領域の区分や強反射物標の抽出に関する処理を行うようにしてもよい。この場合は、上記の実施の形態における、極座標系のエコー強度を直交座標系のエコー強度に変換する処理(ステップS5)は不要であり、極座標系のまま領域の区分や強反射物標の抽出に関する処理を行う。なお、この場合の小エリアは、例えば、四角形に設定されたり、環状扇形(「annular sector」とも呼ばれる)に設定されたりすることが考えられる。データ要素としてのエコー強度を分布させるとともに小エリアを設定する際の平面領域は、さらに言えば、上記の実施の形態におけるXY矩形領域や上記の平面領域の例も含め、データ要素/エコー強度の平面位置を表す変数によって規定される領域であればどのような領域であっても構わない。
【符号の説明】
【0110】
1 アンテナユニット
11 レーダアンテナ
12 送受信部
13 A/D変換部
2 強度計算部
3 座標変換部
4 記憶部
5 領域区分部
51 指標算出部
52 種類判別部
6 強反射物標抽出部
61 反射強度閾値処理部
62 クラスタリング処理部
63 サイズ閾値処理部
7 表示部
図1
図2
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