(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240430BHJP
A61B 8/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2018125780
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2021-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2017131831
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 幸治
(72)【発明者】
【氏名】福田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】深澤 雄志
(72)【発明者】
【氏名】望月 史生
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-66027(JP,A)
【文献】特開2007-44231(JP,A)
【文献】特開2009-291295(JP,A)
【文献】特開2006-218210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0008482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の診断対象に関し、Bモード画像に関するBモードボリュームデータである第1のボリュームデータ及びカラードプラ画像に関する血流ボリュームデータである第2のボリュームデータを取得する取得部と、
前記第1のボリュームデータに対して、第1の深度に対応する第1のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第1の空間領域を第1の関心領域として設定し、前記第2のボリュームデータに対して、前記第1の関心領域の設定とは独立に、前記第1の深度よりも浅い第2の深度に対応する第2のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第2の空間領域であって、前記第1のクロップ面と前記第2のクロップ面との間で血液の逆流が発生している空間領域を含む前記第2の空間領域を第2の関心領域として設定する設定部と、
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域を表す情報に基づいて、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータに対してそれぞれクロップ処理を施し、前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータに基づいて表示用画像データを生成する生成部と、
を備え、
前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータは、前記第1の関心領域が重複し、
前記クロップ処理は、前記第1の関心領域と、前記第1の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理、及
び、前記第2の関心領域と、前記第2の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理である、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記第1のボリュームデータ、及び、前記第2のボリュームデータのうち少なくともいずれかを用いた解析により、前記第2の関心領域を設定する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータは、超音波走査により収集された超音波ボリュームデータであり、
前記設定部は、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータそれぞれにおける深度を指定することにより、前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域を設定する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータを合成することにより、第3のボリュームデータを生成し、前記第3のボリュームデータに対してレンダリング処理を施すことにより前記表示用画像データを生成する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記第2の関心領域を、前記診断対象の所定位置を基準として設定する請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記クロップ処理は、前記第1の関心領域以外の領域の画素値をゼロとする処理、及び、前記第2の関心領域以外の領域の画素値をゼロとする処理のうち少なくともいずれかである請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記クロップ処理は、クロップ処理の対象となるボリュームデータから前記第1の関心領域、及び/又は、前記第2の関心領域を切り出す処理である請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記第1のボリュームデータに対するクロップ処理の後、前記第2のボリュームデータに対してクロップ処理を施すことを促す報知部をさらに具備する請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記第1の関心領域と前記第2の関心領域とは、同一の領域ではない、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
同一の診断対象に関し、Bモード画像に関するBモードボリュームデータである第1のボリュームデータ及びカラードプラ画像に関する血流ボリュームデータである第2のボリュームデータを取得する取得部と、
前記第1のボリュームデータに対して、第1の深度に対応する第1のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第1の空間領域を第1の関心領域として設定し、前記第2のボリュームデータに対して、前記第1の関心領域の設定とは独立に、前記第1の深度よりも浅い第2の深度に対応する第2のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第2の空間領域であって、前記第1のクロップ面と前記第2のクロップ面との間で血液の逆流が発生している空間領域を含む前記第2の空間領域を第2の関心領域として設定する設定部と、
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域を表す情報に基づいて、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータに対してそれぞれクロップ処理を施し、前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータに基づいて表示用画像に係る表示用画像データを生成する生成部と、
を備え、
前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータは、前記第1の関心領域が重複し、
前記クロップ処理は、前記第1の関心領域と、前記第1の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理、及
び、前記第2の関心領域と、前記第2の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理である、医用画像処理装置。
【請求項11】
前記第1の関心領域と前記第2の関心領域とは、同一の領域ではない、
請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
同一の診断対象に関し、Bモード画像に関するBモードボリュームデータである第1のボリュームデータ及びカラードプラ画像に関する血流ボリュームデータである第2のボリュームデータを取得させる機能と、
前記第1のボリュームデータに対して、第1の深度に対応する第1のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第1の空間領域を第1の関心領域として設定させ、前記第2のボリュームデータに対して、前記第1の関心領域の設定とは独立に、前記第1の深度よりも浅い第2の深度に対応する第2のクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる第2の空間領域であって、前記第1のクロップ面と前記第2のクロップ面との間で血液の逆流が発生している空間領域を含む前記第2の空間領域を第2の関心領域として設定させる機能と、
前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域を表す情報に基づいて、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータに対してそれぞれクロップ処理を施させ、前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータに基づいて表示用画像に係る表示用画像データを生成させる機能と
を実現させ、
前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び前記クロップ処理が施された第2のボリュームデータは、前記第1の関心領域が重複し、
前記クロップ処理は、前記第1の関心領域と、前記第1の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理、及
び、前記第2の関心領域と、前記第2の関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理である、医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、例えばMatrix-TEE(TransEsophageal Echocardiography: 経食道心エコー検査)プローブ等を用いることにより、形態情報を表すBモード画像に係るボリュームデータ(3次元画像データ)、及び、血流情報を表す血流(カラードプラ)画像に係るボリュームデータを取得することが可能である。超音波診断では、取得した各種ボリュームデータを用いて立体的に観察することにより、確認すべき複数の2次元画像を一度に確認することができる。例えば、Bモード画像に係るボリュームデータを解析することにより、2次元超音波画像データに比して、検査部位の形態情報を視覚的、かつ、定量的に把握することができる。また、血流画像に係るボリュームデータを解析することにより、例えば心臓の弁からの逆流を立体的に可視化できる。
【0003】
ところで、超音波診断装置は、例えばボリュームデータから任意の3次元領域のボリュームデータを切り出して表示するクロップ機能を備えている。このクロップ機能は、例えばBモード画像に係るボリュームデータ及び血流画像に係るボリュームデータが重畳表示されるボリュームデータから任意の断面画像に係る断面画像データを切り出す際に実行される。このような場合、クロップ機能に対しては、Bモード画像に係るボリュームデータは弁付近の領域、血流画像に係るボリュームデータは弁付近から逆流の分かる位置までの領域といったように、Bモード画像に係るボリュームデータと、血流画像に係るボリュームデータとでそれぞれ異なる領域を抽出したいというニーズがある。
【0004】
しかしながら、従来のクロップ機能では、例えばBモード画像に係るボリュームデータと、血流画像に係るボリュームデータとで、共通に指定された関心領域に基づいて同じ領域を抽出することしかできない。すなわち、Bモード画像に係るボリュームデータ及び血流画像に係るボリュームデータをそれぞれ独立に抽出することができない。このため、例えば、Bモード画像に係るボリュームデータ及び血流画像に係るボリュームデータが重畳されたボリュームデータにクロップ処理を施し、弁付近の領域の外側から当該弁における血液の逆流の分かる位置までの領域について血流情報のみ表示したい場合等に対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、心臓検査等において、血流の状態をより診断しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、医用画像診断装置は、取得部、設定部、及び生成部を備える。取得部は、被検体に関する第1のボリュームデータ及び第2のボリュームデータを取得する。設定部は、前記第1のボリュームデータに対して第1の関心領域を設定し、前記第2のボリュームデータに対して、前記第1の関心領域の設定とは独立に、第2の関心領域を設定する。生成部は、前記第1の関心領域及び前記第2の関心領域を表す情報に基づいて、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータに対してクロップ処理を施し、前記クロップ処理が施された前記第1のボリュームデータ及び第2のボリュームデータに基づいて表示用画像に係る表示用画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る超音波診断装置がボリュームデータに対してクロップ処理を施す際の制御回路の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る表示機器に表示されるクロップ処理前の表示用画像を表す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る表示機器に表示されるBモードボリュームデータに対するクロップ処理の後に、血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施すことを促す通知画面の例を表す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るクロップ処理後のBモードボリュームデータを説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るクロップ処理後の血流ボリュームデータを説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る超音波診断装置が生成する合成ボリュームデータを説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る表示機器に表示されるクロップ処理後の表示用画像を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る超音波診断装置1を
図1のブロック図を参照して説明する。
【0011】
図1に示されるように、超音波診断装置1は、装置本体10、超音波プローブ70、表示機器50、及び入力装置60を備える。装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置40と接続される。また、装置本体10は、表示機器50、及び入力装置60と接続される。
【0012】
超音波プローブ70は、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、及び圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ70は、装置本体10と着脱自在に接続される。複数の圧電振動子は、装置本体10が有する超音波送信回路11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ70には、後述するオフセット処理や、超音波画像のフリーズなどの際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0013】
超音波プローブ70から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号(エコー信号)として超音波プローブ70が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移を受ける。超音波プローブ70は、被検体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。本実施形態においては、超音波プローブ70は、ボリュームデータ(3次元画像データ)を取得可能なプローブであるものとする。具体的には、複数の圧電振動子が二次元マトリックス状に配列された2Dアレイプローブ、又は圧電振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なメカニカル4Dプローブ等である。
【0014】
図1に示される装置本体10は、超音波プローブ70が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、
図1に示すように、超音波送信回路11、超音波受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14、3次元処理回路15、表示処理回路16、内部記憶回路17、画像メモリ18(シネメモリ)、画像データベース19、入力インタフェース回路20、通信インタフェース回路21及び制御回路22を含む。
【0015】
超音波送信回路11は、超音波プローブ70に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路11は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、及びパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、制御回路22の制御の下、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ70から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、制御回路22の制御の下、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ70に駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0016】
超音波受信回路12は、超音波プローブ70が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路12は、例えば、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、及び加算器等により実現される。アンプ回路は、超音波プローブ70が受信した反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた複数のデジタル信号を加算する。加算器の加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0017】
Bモード処理回路13は、超音波受信回路12から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成するプロセッサである。Bモード処理回路13は、超音波受信回路12から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数増幅処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0018】
ドプラ処理回路14は、超音波受信回路12から受け取った受信信号に基づき、ドプラ波形、及びドプラデータを生成するプロセッサである。ドプラ処理回路14は、受信信号から血流信号を抽出し、抽出した血流信号からドプラ波形を生成すると共に、血流信号から平均速度、分散、及びパワー等の情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。生成されたドプラデータは、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0019】
3次元処理回路15は、Bモード処理回路13、及びドプラ処理回路14により生成されたデータに基づき、各種ボリュームデータを生成可能なプロセッサである。
【0020】
例えば、3次元処理回路15は、RAWデータメモリに記憶されたBモードデータに対し、空間的な位置情報を加味した補間処理を含むRAW-ボクセル変換を実行することにより、形態情報を表すBモードボリュームデータを生成する。また、3次元処理回路15は、RAWデータメモリに記憶されたドプラデータに対し、空間的な位置情報を加味した補間処理を含むRAW-ボクセル変換を実行することにより、血流情報を表す血流ボリュームデータを生成する。Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータは、所望の範囲のボクセルから構成される。Bモードボリュームデータの各ボクセルには、反射波信号の信号強度に応じて所定の画素値(ボクセル値)が割り当てられている。血流ボリュームデータの各ボクセルには、例えば血流の方向及び血流の速度の大きさに応じて所定の画素値が割り当てられている。
【0021】
また、3次元処理回路15は、発生した各種ボリュームデータに対してレンダリング処理を施し、レンダリング画像データを生成する。また、3次元処理回路15は、発生した各種ボリュームデータに対してMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施し、ボリュームデータにおける所定の断面画像(MPR画像)を表すMPR画像データを生成する。また、3次元処理回路15は、発生した各種ボリュームデータに対してCurved
MPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施し、ボリュームデータにおける所定の曲断面画像を表す曲断面画像データを生成する。また、3次元処理回路15は、生成したBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータを合成し、合成ボリュームデータを生成する。合成の方法としては、例えば、Bモードボリュームデータの各ボクセルの画素値に対し、対応する血流ボリュームデータの各ボクセルの画素値に所定の重み係数をそれぞれ乗じた結果の値を加算する等が挙げられる。
【0022】
表示処理回路16は、各種画像を表示機器50に表示するプロセッサである。表示処理回路16は、座標変換処理等により、表示画像としての超音波画像データを生成する。座標変換処理とは、例えば、Bモードデータ、及びドプラデータからなる超音波走査の走査線の信号列を、テレビ等に代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列であるビデオ信号に変換する処理である。生成された超音波画像データは、例えばDICOM(digital imaging and communication in medicine)規格に準拠したフォーマットに変換され、例えば画像データベース19に記憶される。
【0023】
表示処理回路16は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに基づいてBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、音波の集束などの超音波プローブの特性や超音波ビーム(例えば、送受信ビーム)の音場特性などが反映された画素値(輝度値)を有する。例えば、Bモード画像データにおいて、被走査領域において超音波のフォーカス付近では、非フォーカス部分よりも相対的に高輝度となる。表示処理回路16は、生成したBモード画像データを表示機器50に超音波画像として表示させる。
【0024】
また、表示処理回路16は、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに基づいて、平均速度画像、分散画像、パワー画像等に係るドプラ画像データを生成する。表示処理回路16は、生成したドプラ画像データを表示機器50に超音波画像として表示させる。
【0025】
また、表示処理回路16は、3次元処理回路15において生成された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、及びRGB変換などの各種処理を実行することで、画像データをビデオ信号に変換する。表示処理回路16は、ビデオ信号を表示機器50に超音波画像として表示させる。
【0026】
なお、表示処理回路16は、操作者(例えば、術者)が入力インタフェース回路20により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIを表示機器50に表示させてもよい。表示機器50としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器50は、例えば報知部の機能を有する。
【0027】
内部記憶回路17は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。内部記憶回路17は、超音波送受信を実現するための制御プログラム、画像処理を行うための制御プログラム、及び表示処理を行なうための制御プログラム等を記憶している。また、内部記憶回路17は、本実施形態に係る各種機能を実現するための制御プログラムを記憶している。また、内部記憶回路17は、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、ボディマーク生成プログラム、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位ごとに予め設定する変換テーブルなどのデータ群を記憶している。また、内部記憶回路17は、生体内の臓器の構造に関する解剖学図譜、例えば、アトラスを記憶してもよい。
【0028】
また、内部記憶回路17は、入力インタフェース回路20を介して入力される記憶操作に従い、3次元処理回路15で生成されたボリュームデータ、及びレンダリング画像データを記憶する。なお、内部記憶回路17は、入力インタフェース回路20を介して入力される記憶操作に従い、3次元処理回路15で生成したボリュームデータ、及びレンダリング画像データを、操作順番及び操作時間を含めて記憶してもよい。内部記憶回路17は、記憶しているデータを、通信インタフェース回路21を介して外部装置へ転送することも可能である。
【0029】
画像メモリ18は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。画像メモリ18は、入力インタフェース回路20を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ18に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0030】
画像データベース19は、外部装置40から転送される画像データを記憶する。例えば、画像データベース19は、過去の診察において取得された同一患者に関する過去画像データを、外部装置40から取得して記憶する。過去画像データには、超音波画像データ、CT(Computed Tomography)画像データ、MR(Magnetic Resonance)画像データ、PET(Positron Emission Tomography)-CT画像データ、PET-MR画像データ及びX線画像データが含まれる。また、過去画像データは、例えば3次元ボリュームデータ、及びレンダリング画像データとして記憶されている。
【0031】
なお、画像データベース19は、MO、CD-R、DVDなどの記録媒体(メディア)に記録された画像データを読み込むことで、所望の画像データを格納してもよい。
【0032】
入力インタフェース回路20は、入力装置60を介して、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置60には、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、ダイヤルスイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル及びタッチコマンドスクリーン(TCS)等が含まれる。また、入力装置60には、Bモードボリュームデータに対しクロップ処理を施すための機械的なスイッチ群61と、血流ボリュームデータに対しクロップ処理を施すための機械的なスイッチ群62とが含まれる。クロップ処理とは、3次元構造を有するボリュームデータの内部を可視化するためにボリュームデータを編集する処理である。クロップ処理の具体的な態様については後述する。
【0033】
スイッチ群61及びスイッチ群62には、クロップ処理を開始するための開始指示を受け付ける開始ボタンがそれぞれ含まれる。操作者は、例えば、スイッチ群61に含まれる開始ボタンを押下した後、ダイヤルスイッチ、及び/又はトラックボール等を操作することにより、Bモードボリュームデータにおけるクロップ処理に関する関心領域を設定することができる。また、操作者は、例えば、スイッチ群62に含まれる開始ボタンを押下した後、ダイヤルスイッチ、及び/又はトラックボール等を操作することにより、血流ボリュームデータにおけるクロップ処理に関する関心領域を設定することができる。
【0034】
本実施形態では、スイッチ群61によりBモードボリュームデータに関する操作が行われ、スイッチ群62により血流ボリュームデータに関する操作が行われる例を示すが、これに限らない。例えば、クロップ処理のタイミングを分けることで、1つのスイッチ群により、Bモードボリュームデータ及び血流ボリュームデータのそれぞれについて操作が行えるようにしてもよい。
【0035】
なお、関心領域の設定は、ダイヤルスイッチ、及び/又はトラックボール等の機械的なデバイスのみならず、TCS上に表示される操作パネル画像、又は、外部装置40におけるセカンドコンソール上に表示される操作パネル画像等を操作させることにより行われてもよい。
【0036】
入力インタフェース回路20は、例えばバスを介して制御回路22に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路22へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース回路20は、マウス及びキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を無線信号として受け取り、この電気信号を制御回路22へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路20の例に含まれる。
【0037】
通信インタフェース回路21は、位置センサシステム30と例えば無線により接続し、位置検出装置32から送信される位置情報を受信する。また、通信インタフェース回路21は、ネットワーク100等を介して外部装置40と接続され、外部装置40との間でデータ通信を行う。外部装置40は、例えば、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベース、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等である。また、外部装置40は、例えば、X線CT装置、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置、及びX線診断装置等、本実施形態に係る超音波診断装置1以外の各種医用画像診断装置である。なお、外部装置40との通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、DICOMが挙げられる。
【0038】
制御回路22は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路22は、内部記憶回路17に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路22は、ボリュームデータ取得機能221、関心領域設定機能223、クロップ機能225、表示制御機能227、及びシステム制御機能229を有する。
【0039】
ボリュームデータ取得機能221は、各種ボリュームデータを取得する機能である。ボリュームデータ取得機能221が実行されると、制御回路22は、例えば、超音波送信回路11、超音波受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14、及び3次元処理回路15を制御し、Bモードボリュームデータ、及び/又は、血流ボリュームデータを取得する。なお、制御回路22は、予め画像データベース19に記憶されたボリュームデータを読み出すことにより、Bモードボリュームデータ、及び/又は、血流ボリュームデータを取得してもよい。
【0040】
関心領域設定機能223は、ボリュームデータ取得機能221により取得された各種ボリュームデータに対し、関心領域(ROI:Region of Interest)を設定する機能である。関心領域設定機能223が実行されると、制御回路22は、例えば入力インタフェース回路20を介して操作者により入力された入力情報に従い、Bモードボリュームデータ、又は/及び、血流ボリュームデータに対して関心領域を設定する。入力情報には、各ボリュームデータにおける位置、角度、大きさ(幅、奥行き、深さ等)等が含まれる。入力情報は、予め設定されたものであってもよい。
【0041】
クロップ機能225は、関心領域設定機能223により関心領域が設定された各種ボリュームデータに対してクロップ処理を施し、クロップ処理後の各種ボリュームデータに基づいて表示用画像データを生成する機能である。クロップ機能225が実行されると、制御回路22は、関心領域が設定されたBモードボリュームデータ、及び/又は、血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施す。クロップ処理の態様としては、例えばクロップ処理の対象となるボリュームデータのうち、関心領域以外の領域の画素値をゼロとする処理が挙げられる。また、クロップ処理の態様としては、例えばクロップ処理の対象となるボリュームデータのうち、設定された関心領域のみを切り出す処理が挙げられる。また、クロップ処理の態様としては、関心領域は透過度を0%とし、当該関心領域以外は透過度を50%にする等、設定された関心領域と、当該関心領域以外の領域とで、レンダリング処理時の透過度に差を設ける処理が挙げられる。制御回路22は、クロップ処理後のBモードボリュームデータ、及び/又は、血流ボリュームデータに基づいて表示用画像データを生成する。表示用画像データには、レンダリング画像を表すレンダリング画像データ、及びMPR画像を表すMPR画像データが含まれる。
【0042】
表示制御機能227は、各種ボリュームデータを表示する機能である。表示制御機能227が実行されると、制御回路22は、ボリュームデータ取得機能221により取得されたBモードボリュームデータ、又は/及び、血流ボリュームデータを表示機器50に表示する。また、制御回路22は、クロップ機能225により生成された表示用画像データを表示機器50に表示する。
【0043】
システム制御機能229は、超音波診断装置1の入出力等の基本動作を制御する機能である。システム制御機能229が実行されると、制御回路22は、例えば入力インタフェース回路20を介し、各種ボリュームデータに対する関心領域の設定をボリュームデータ毎に受け付ける。また、制御回路22は、例えば入力インタフェース回路20を介し、各種ボリュームデータに対するクロップ処理の開始をボリュームデータ毎に受け付ける。
【0044】
ボリュームデータ取得機能221、関心領域設定機能223、クロップ機能225、表示制御機能227、及びシステム制御機能229は、制御プログラムとして組み込まれていてもよいし、制御回路22自体または装置本体10に制御回路22が参照可能な回路として、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
【0045】
次に、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
図2は、実施形態に係る超音波診断装置がボリュームデータに対してクロップ処理を施す際の制御回路の動作の例を示すフローチャートである。以下の説明では、Bモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータに対する関心領域の設定は、入力インタフェース回路20を介して操作者により行われるものとする。また、Bモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータの順にクロップ処理を行うものとする。なお、血流ボリュームデータ、及びBモードボリュームデータの順にクロップ処理が行われてもよい。また、診断対象は心臓であるものとし、各ボリュームデータを取得する際には、Matrix-TEE(TransEsophageal Echocardiography: 経食道心エコー検査)プローブを、超音波プローブ70として用いるものとする。また、血液の逆流の発生を確認する箇所は、大動脈弁であるとする。なお、Matrix-TTE(TransThoracic Echocardiography: 経胸壁心エコー検査)プローブを、超音波プローブ70として用いてもよい。また、血液の逆流の発生を確認する箇所は、僧帽弁、三尖弁、又は肺動脈弁であってもよい。また、診断対象は、例えば、肝臓等の血管を含む臓器であれば何であってもよい。
【0047】
制御回路22は、ボリュームデータ取得機能221を実行し、入力インタフェース回路20を介した操作者からの所定の指示に応答し、診断対象である心臓に関するBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータを取得する(ステップSA1)。例えば、制御回路22は、超音波送信回路11、超音波受信回路12、Bモード処理回路13、及び3次元処理回路15を制御し、超音波プローブ70を介してリアルタイムに受信される反射波信号に基づいて、Bモードボリュームデータを生成する。また、制御回路22は、超音波送信回路11、超音波受信回路12、ドプラ処理回路14、及び3次元処理回路15を制御し、超音波プローブ70を介してリアルタイムに受信される反射波信号に基づいて、血流ボリュームデータを生成する。これにより、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータが取得される。
【0048】
制御回路22は、表示制御機能227を実行し、取得したBモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータに基づいて表示用画像データを生成する(ステップSA2)。具体的には、制御回路22は、例えば、クロップ処理前のBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータを合成し、合成ボリュームデータを生成する。そして、制御回路22は、生成した合成ボリュームデータに対し、MPR処理、及びレンダリング処理等を施すことにより表示用画像データを生成する。
【0049】
制御回路22は、生成した表示用画像データを表示機器50に表示する(ステップSA3)。
図3は、本実施形態に係る表示機器50に表示されるクロップ処理前の表示用画像の例を表す図である。
図3に示される表示領域F1には、クロップ処理前の合成ボリュームデータのA面のMPR画像データに基づくMPR画像が表示されている。A面とは、例えば、超音波プローブ70における圧電振動子群の配列方向と、超音波ビームの送信方向とで形成される断面である。また、
図3に示される表示領域F2には、クロップ処理前の合成ボリュームデータのB面のMPR画像データに基づくMPR画像が表示されている。B面とは、例えば、超音波プローブ70の当接面に直交する断面であり、かつ、A面に直交する断面である。なお、A面及びB面に直交する断面、すなわち、超音波ビームの送信方向に対して垂直方向にある断面は、C面と称される。C面は、当接面に平行な断面である。なお、制御回路22は、クロップ処理前のBモードボリュームデータに基づくBモードボリューム画像、及びクロップ処理前の血流ボリュームデータに基づく血流ボリューム画像を表示機器50に重畳表示してもよい。
【0050】
また、
図3に示される表示領域F3には、クロップ処理前のレンダリング画像データに基づくレンダリング画像が表示されている。このとき、被検体Pの心臓弁において血液の逆流が起きていたとしても、血流ボリュームデータとBモードボリュームデータとが重畳表示されているため、明確に血液の逆流を視認することはできない。
【0051】
制御回路22は、システム制御機能229を実行し、Bモードボリュームデータに対するクロップ処理の開始指示を受け付ける(ステップSA4)。Bモードボリュームデータに対するクロップ処理の開始指示は、例えば、スイッチ群61に含まれる開始ボタンが押下されることにより受け付けられる。このとき、開始指示に併せて診断対象である心臓をどの部位(view)から観察するか特定するために、入力インタフェース回路20を介し、所定の観察方向(視線及び視線位置)が設定されてもよい。
【0052】
制御回路22は、スイッチ群61に含まれる開始ボタンが押下されると、関心領域設定機能223を実行し、例えば入力インタフェース回路20を介して操作者により指定された入力情報に従い、ステップSA1において取得されたBモードボリュームデータに対して関心領域を設定する(ステップSA5)。関心領域は、例えば、入力インタフェース回路20を介し、当該Bモードボリュームデータにおける深度が指定されることにより設定される。深度は、例えば、超音波撮影時等に被検体Pに配置される超音波プローブ70の位置を基準として、当該超音波プローブ70から送信される超音波の送信方向の深さを表す。
【0053】
具体的には、制御回路22は、クロップ処理の対象となるBモードボリュームデータに対し指定された深度に基づき、当該ボリュームデータを分断する境界面であるクロップ面を算出する。深度は、例えば、大動脈弁が存在する位置に基づいて決定される。制御回路22は、クロップ対象となるボリュームデータのうち、算出したクロップ面より深度が大きくなる方向に含まれる空間領域を関心領域として設定する。クロップ面は、例えば診断対象である心臓を流れる血管の短軸方向に沿った断面である。なお、クロップ面は、心臓を流れる血管の長軸方向に沿った断面であってもよい。また、クロップ面は、平面に限定されず、例えば「Curved MPR」処理により算出される曲面であってもよい。また、設定される関心領域の形状は、操作者の目的用途に応じ、例えば、任意の多面体、円柱、球、楕円球等であってもよい。なお、設定された関心領域に関する情報は、例えば内部記憶回路17に記憶される。
【0054】
制御回路22は、Bモードボリュームデータに対して関心領域が設定されると、クロップ機能225を実行し、関心領域が設定されたBモードボリュームデータに対してクロップ処理を施す(ステップSA6)。
図5は、本実施形態に係るクロップ処理後のBモードボリュームデータの例を説明するための模式図である。
図5によれば、クロップ面C1を境界面として、実線で囲まれた領域がクロップ処理後のBモードボリュームデータV1として切り取られている。
【0055】
制御回路22は、Bモードボリュームデータに対してクロップ処理を施すと、システム制御機能229を実行し、血流ボリュームデータに対するクロップ処理の開始指示を受け付ける(ステップSA7)。血流ボリュームデータに対するクロップ処理の開始指示は、例えば、スイッチ群62に含まれる開始ボタンが押下されることにより受け付けられる。なお、制御回路22は、Bモードボリュームデータに対してクロップ処理を施した後、血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施すよう促してもよい。操作者にクロップ処理を促すための手段には、例えばポップアップの表示がある。
図4は、本実施形態に係る表示機器50に表示されるBモードボリュームデータに対するクロップ処理の後に、血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施すことを促す通知画面の例を表す図である。
図4に示される表示機器50には、ポップアップ画像P1が表示されている。ポップアップ画像P1には、文字列「Bモードボリュームデータに対するクロップ処理が終了しました。血流ボリュームデータに対するクロップ処理を実行して下さい。」が含まれている。これにより、操作者は、血流ボリュームデータに対するクロップ処理を確実に実施することができる。なお、ポップアップ画像P1に含まれている「閉じる」ボタンが指定されることにより、当該ポップアップ画像P1は表示されなくなる。
【0056】
制御回路22は、スイッチ群62に含まれる開始ボタンが押下されると、関心領域設定機能223を実行し、例えば入力インタフェース回路20を介して操作者により指定された入力情報に従い、ステップSA1において取得された血流ボリュームデータに対して関心領域を設定する(ステップSA8)。制御回路22は、例えば、血流ボリュームデータ上において、血流の方向及び血流の速度の大きさに応じて割り当てられた画素値に基づいて関心領域を設定する。具体的には、制御回路22は、血流の方向が正の向きを表す領域、又は、血流の方向が負の向きを表す領域を検知し、検知した領域に基づいて関心領域を設定する。血流の方向が正の向きとは、例えば超音波プローブ70に向かう血流の向きである。血流の方向が負の向きとは、例えば超音波プローブ70に向かう血流の向きである。
【0057】
制御回路22は、例えば血流の方向が負の向きである領域、すなわち、血液の逆流が発生している領域を関心領域として設定する。制御回路22は、血流ボリュームデータの各ボクセルの画素値に対し所定の閾値を設定することにより関心領域の大きさを決定する。このとき、制御回路22は、例えば大動脈弁から血液の逆流が発生している領域の一端までの距離を算出することが可能である。これにより、操作者等の技能や経験による血流ボリュームデータに対する関心領域決定に関する精度のばらつきを低減させることができる。また、3次元スキャン中又は解析中の操作性を向上させることができる。
【0058】
なお、クロップ処理の対象となる関心領域と関心領域以外の境界を決定するための閾値は、例えば入力インタフェース回路20を介して入力される速度表示スケールの最大値、最小値、又は表示させるレンジ幅等に基づいて設定されてもよい。
【0059】
また、拡張末期時相、及び他の各時相に応じて、各ボリュームデータに対し設定される関心領域に関する入力情報を適応的に変化させるようにしてもよい。これにより、血流ではないノイズに起因する領域が表示されることを回避することができ、血流を表す成分のみを表示することが可能となる。
【0060】
また、血流ボリュームデータに対する関心領域は、入力インタフェース回路20を介し、当該血流ボリュームデータに対する深度が指定されることにより設定されてもよい。
【0061】
なお、設定された関心領域に関する情報は、例えば内部記憶回路17に記憶される。
【0062】
制御回路22は、血流ボリュームデータに対して関心領域が設定されると、クロップ機能225を実行し、関心領域が設定された血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施す(ステップSA9)。
図6は、本実施形態に係るクロップ処理後の血流ボリュームデータの例を説明するための模式図である。
図6によれば、クロップ面C2を境界面として、実線で囲まれた領域がクロップ処理後の血流ボリュームデータV2として切り取られている。
【0063】
制御回路22は、血流ボリュームデータに対してクロップ処理を施した後、クロップ処理後のBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータに基づいて、表示用画像データを生成する(ステップSA10)。具体的には、制御回路22は、例えば、クロップ処理後のBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータを合成し、合成ボリュームデータを生成する。
【0064】
図7は、実施形態に係る超音波診断装置が生成する合成ボリュームデータの例を説明するための模式図である。
図7では、クロップ処理後のBモードボリュームデータV1及び血流ボリュームデータV2に基づいて生成された合成ボリュームデータV3が実線で表されている。合成ボリュームデータV3のうち、空間領域R1は、血流ボリュームデータV2のみが表示される領域である。合成ボリュームデータV3のうち、空間領域R1は、大動脈弁が正しく機能していない場合に、血液の逆流が発生し得る領域である。合成ボリュームデータV3のうち、空間領域R2は、BモードボリュームデータV1と血流ボリュームデータV2とが重畳表示される領域である。
【0065】
そして、制御回路22は、生成した合成ボリュームデータV3に対し、MPR処理、及びレンダリング処理等を施すことにより表示用画像データを生成する。
【0066】
制御回路22は、生成した表示用画像データに基づく表示用画像を表示する(ステップSA11)。
図8は、本実施形態に係る表示機器50に表示されるクロップ処理後の表示用画像を表す図である。
図8に示される表示領域F1には、クロップ処理後の合成ボリュームデータのA面のMPR画像データに基づくMPR画像が表示されている。また、
図8に示される表示領域F2には、クロップ処理後の合成ボリュームデータのB面のMPR画像データに基づくMPR画像が表示されている。
【0067】
また、
図8に示される表示領域F3には、クロップ処理後のレンダリング画像データに基づくレンダリング画像が表示されている。
図8に示される表示領域F3のうち、表示領域F31は、例えば大動脈弁付近から心尖部までの間の血流ボリュームデータのみが表示される領域の一部である。表示領域F31は、いわゆる弁逆流ジェットが生じている領域である。表示領域F31は、赤系色(赤から黄)の色相で立体的に表示されている。表示領域F31は、大動脈弁を流れる血液が超音波プローブ70に近付く方向に流れていることを表している。大動脈弁を流れる血液は、通常心尖部から大動脈弁に向かう方向に流れるため、表示領域F31が表示されることにより大動脈弁付近において血液の逆流が発生していることを確認できる。
図8のように表示用画像が表示されることにより、Bモードボリュームデータを取り除いた状態で、心臓の弁において血液の逆流が発生していることを明確に視認することができる。
【0068】
なお、制御回路22は、クロップ処理後のBモードボリュームデータに基づくBモードボリューム画像、及びクロップ処理後の血流ボリュームデータに基づく血流ボリューム画像を表示機器50に重畳表示してもよい。
【0069】
本実施形態によれば、制御回路22は、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータを取得する。制御回路22は、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータに対し、独立に関心領域をそれぞれ設定する。制御回路22は、Bモードボリュームデータに設定された関心領域を表す情報に基づいて、当該Bモードボリュームデータに対しクロップ処理を施す。制御回路22は、血流ボリュームデータに設定された関心領域を表す情報に基づいて、当該血流ボリュームデータに対しクロップ処理を施す。制御回路22は、クロップ処理が施されたBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータに基づいて表示用画像データを生成する。
【0070】
これにより、Bモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータを重畳させた場合に、血流ボリュームデータに係る血液の逆流を表す領域を遮るBモードボリュームデータに係る不要領域を独立に取り除くことができる。そして、心臓弁において血液が逆流している状態を観察することができる。
【0071】
したがって、本実施形態に係る超音波診断装置によれば、心臓検査等において、血流の状態をより診断しやすくすることが可能となる。
【0072】
[その他の変形例]
上記実施形態では、Bモードボリュームデータ以外のボリュームデータは、血流ボリュームデータとしていたがこれに限られない。例えば、超音波造影剤からの高調波成分を選択的に表示するためにコントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)法を実行して取得されたボリュームデータ等であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、制御回路22は、Bモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータの2つの異なる種類のボリュームデータに対し、それぞれ独立にクロップ処理を施していたがこれに限定されない。例えば、制御回路22は、3以上の異なる種類のボリュームデータに対し、それぞれ独立にクロップ処理を施すようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、制御回路22は、超音波走査により収集されたBモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータ等の超音波ボリュームデータをクロップ処理の対象としていたがこれに限定されない。例えば、制御回路22は、CT画像データ、MR画像データ、X線画像データ、PET画像データ等の他のモダリティにより取得された医用画像データに係るボリュームデータをクロップ処理の対象としてもよい。このとき、制御回路22は、例えばクロップ処理の対象となる複数の異なる種類のボリュームデータが同時に撮影されたものでない場合、当該複数の異なる種類のボリュームデータに対して所定のレジストレーション処理を実行した後、それぞれ独立にクロップ処理を施すようにする。
【0075】
また、他のモダリティ、例えばX線CT装置、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置、及びX線診断装置等の各種医用画像診断装置が上記実施形態に係る制御回路が実現する各機能を実行するようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、医用画像診断装置である超音波診断装置を前提に説明したがこれに限定されない。例えば、各種医用画像診断装置により取得された複数の異なる種類のボリュームデータを、PC(personal computer)及びワークステーション等に転送し、医用画像処理装置として上記実施形態に係る制御回路が実現する各機能を実行するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、制御回路22は、血流ボリュームデータにおいて、血流の方向が正の向きを表す領域、又は、血流の方向が負の向きを表す領域を検知し、検知した領域に基づいて関心領域を設定していたがこれに限定されない。例えば、制御回路22は、MPR画像を用いて、血流ボリュームデータに対する関心領域の位置を自動で合わせるようにしてもよい。また、制御回路22は、クロップ処理後のBモードボリュームデータの所定位置、例えば心臓弁の位置から一定の距離離れた面を算出し、算出された面に基づいて血流ボリュームデータに対する関心領域を設定するようにしてもよい。また、制御回路22は、Bモードボリュームデータから心臓の弁の位置を抽出し、抽出した弁の位置から所定の距離だけ離れた位置までの領域を関心領域として設定するようにしてもよい。
【0078】
また、制御回路22は、心尖の位置を基準として、血流ボリュームデータに対する関心領域を設定してもよい。例えば、制御回路22は、心臓の弁の弁輪の中心位置から左心室の心尖の位置までの距離に対し所定の割合を乗じ、弁輪の中心位置からクロップ処理の対象となる関心領域の一端まで距離を算出する。これにより、血流ボリュームデータに対する関心領域が設定される。
【0079】
また、制御回路22は、予め設定された関心領域に関する設定情報に基づいて、各種ボリュームデータに対する関心領域を設定してもよい。このとき、設定情報は、例えば予め内部記憶回路17に記憶されている。
【0080】
また、制御回路22は、クロップ処理後の血流ボリュームデータをクロップ処理前のBモードボリュームデータに重畳させて3次元の心臓弁の位置を解析し、Bモードボリュームデータに対する関心領域を設定するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、制御回路22は、血流ボリュームデータを分析することにより、血流ボリュームデータに対する関心領域を設定するようにしていたがこれに限定されない。例えば、制御回路22は、Bモードボリュームデータを分析することにより、血流ボリュームデータに対する関心領域を設定してもよい。また、制御回路22は、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータの両方を分析することにより、血流ボリュームデータに対する関心領域を設定してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、Bモードボリュームデータ、及び血流ボリュームデータに対するクロップ処理の開始指示をそれぞれ別個に受け付けていたがこれに限定されない。制御回路22は、例えば、Bモードボリュームデータに対して関心領域が設定されると、続けて血流ボリュームデータに対する関心領域を設定する。そして、制御回路22は、関心領域が設定されたBモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータに対してそれぞれクロップ処理を施すようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、制御回路22は、例えば
図7に示される合成ボリュームデータV3の空間領域R2において、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータを重畳させていたがこれに限定されない。例えば、制御回路22は、
図7に示される空間領域R2においてBモードボリュームデータのみ抽出されるようにし、空間領域R1において血流ボリュームデータのみ抽出されるようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、制御回路22は、2種類のボリュームデータ、例えば、Bモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータを別々に取得し、取得したBモードボリュームデータ、及び、血流ボリュームデータを別々に、例えば内部記憶回路17に記憶していたがこれに限定されない。制御回路22は、例えば、Bモードデータ、及びドプラデータを含む1つのボリュームデータを取得し、取得した1つのボリュームデータを、例えば内部記憶回路17に記憶するようにしてもよい。このとき、制御回路22は、例えば、ボリュームデータ取得機能221を実行し、入力インタフェース回路20を介した操作者からの所定の指示に応答し、診断対象である心臓に関するボリュームデータを取得する。このボリュームデータは、例えば、Bモード画像に関するBモードデータ、及びカラードプラ画像に関するドプラデータに基づく。具体的には、制御回路22は、例えば、超音波送信回路11、超音波受信回路12、Bモード処理回路13、及びドプラ処理回路14を制御し、3次元Bモードスキャン、及び、3次元ドプラスキャンを組み合わせて行い、超音波プローブ70を介してリアルタイムに受信される反射波信号に基づいて、Bモードデータ、及びドプラデータを生成する。制御回路22は、3次元処理回路15を制御し、生成したBモードデータ、及びドプラデータに基づいて、ボリュームデータを生成する。これにより、Bモードデータ、及びドプラデータに基づく1つのボリュームデータが取得される。制御回路22は、取得した1つのボリュームデータを、例えば内部記憶回路17に記憶する。
【0085】
そして、制御回路22は、取得したボリュームデータのうち第1領域データに対して第1の関心領域を設定し、第1領域データとは異なる第2領域データに対して第2の関心領域を設定する。第1領域データは、例えば、Bモードデータに基づく。第2領域データは、例えば、ドプラデータに基づく。制御回路22は、設定した第1の関心領域及び第2の関心領域を表す情報に基づいて、第1領域データ及び第2領域データに対してクロップ処理を施す。制御回路22は、クロップ処理が施された第1領域データ及び第2領域データに基づいて表示用画像データを生成する。
【0086】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…超音波診断装置、3…ドプラ処理回路、10…装置本体、11…超音波送信回路、12…超音波受信回路、13…モード処理回路、14…ドプラ処理回路、15…次元処理回路、16…表示処理回路、17…内部記憶回路、18…画像メモリ、19…画像データベース、20…入力インタフェース回路、21…通信インタフェース回路、22…制御回路、40…外部装置、50…表示機器、60…入力装置、61、62…スイッチ群、70…超音波プローブ、221…ボリュームデータ取得機能、223…関心領域設定機能、225…クロップ機能、227…表示制御機能、229…システム制御機能。