(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240430BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240430BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240430BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240430BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240430BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2018224003
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】半田 優介
(72)【発明者】
【氏名】北村 英夫
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-168262(JP,A)
【文献】特開2002-126439(JP,A)
【文献】特開2018-1086(JP,A)
【文献】特開平7-155536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/14-53/18
B01D53/34-53/85
B01D53/92
B01D53/96
B01D46/00-46/90
B01D47/00-47/18
B01D1/00-8/00
B01B1/00-1/08
C01B32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄部を備え、二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を排出し、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスを前記洗浄部を介して排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを排出する再生塔と、
を備え、
前記洗浄部は、前記吸収塔排出ガスの旋回流を発生させる旋回流発生部と、前記吸収塔排出ガスの前記旋回流に洗浄液を噴射することで、前記吸収塔排出ガスを前記洗浄液により洗浄する噴射部と、を備え、
前記旋回流発生部は、前記洗浄部の内壁に沿って流れる前記旋回流を発生させ、
前記噴射部は、前記洗浄部の前記内壁から離れる方向または前記洗浄部の前記内壁に向かう方向に前記洗浄液を噴射することで、前記洗浄部の内壁に沿って流れる前記旋回流に前記洗浄液を噴射し、
前記旋回流発生部は、
前記洗浄部の前記内壁に沿う方向に前記吸収塔排出ガスが流れるように前記洗浄部内に前記吸収塔排出ガスを導入するガス導入口の位置で
、前記旋回流を発生させる、または、前記吸収塔排出ガスが衝突
して前記洗浄部の前記内壁に沿う方向に前記吸収塔排出ガスが配向するように設けられた衝突部材の位置で
、前記旋回流を発生させる、
二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記噴射部は、前記吸収塔排出ガスに前記洗浄液をミスト状に噴射する複数のスプレーを備える、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記複数のスプレーは、管形状のアレイ状に配置されている、請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記複数のスプレーは、前記管形状の内周側または外周側を旋回中の前記吸収塔排出ガスに前記洗浄液を噴射する、請求項3に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記噴射部は、前記洗浄部の前記内壁に前記洗浄液が衝突する位置に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記吸収塔排出ガスおよび洗浄液が通過する充填層を備え、前記吸収塔排出ガスを前記充填層内で前記洗浄液により洗浄する第2洗浄部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを吸収塔内で接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を前記吸収塔から排出し、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスを前記吸収塔内の洗浄部を介して前記吸収塔から排出し、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を再生塔内で放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを前記再生塔から排出し、
前記洗浄部内で前記吸収塔排出ガスの旋回流を前記洗浄部内の旋回流発生部により発生させ、前記洗浄部内で前記吸収塔排出ガスの前記旋回流に噴射部から洗浄液を噴射することで、前記吸収塔排出ガスを前記洗浄液により洗浄する、
ことを含み、
前記旋回流発生部は、前記洗浄部の内壁に沿って流れる前記旋回流を発生させ、
前記噴射部は、前記洗浄部の前記内壁から離れる方向または前記洗浄部の前記内壁に向かう方向に前記洗浄液を噴射することで、前記洗浄部の内壁に沿って流れる前記旋回流に前記洗浄液を噴射し、
前記旋回流発生部は、
前記洗浄部の前記内壁に沿う方向に前記吸収塔排出ガスが流れるように前記洗浄部内に前記吸収塔排出ガスを導入するガス導入口の位置で
、前記旋回流を発生させる、または、前記吸収塔排出ガスが衝突
して前記洗浄部の前記内壁に沿う方向に前記吸収塔排出ガスが配向するように設けられた衝突部材の位置で
、前記旋回流を発生させる、
二酸化炭素回収システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)技術が注目されている。例えば、火力発電所、製鉄所、ごみ焼却所、製造設備などの排ガス排出設備から発生するプロセス排ガス(処理対象ガス)中の二酸化炭素を、吸収液により回収する二酸化炭素回収システムが検討されている。
二酸化炭素回収システムでは、処理対象ガス中の二酸化炭素を吸収塔内で吸収液に吸収させる。しかしながら、二酸化炭素が除去された処理対象ガスが吸収塔から放出される際に、処理対象ガスが吸収液成分を同伴することが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の実施形態は、吸収塔により二酸化炭素が除去された処理対象ガスに同伴する吸収液成分を低減することが可能な二酸化炭素回収システムおよびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を含む処理対象ガスと吸収液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液と、前記二酸化炭素が除去された前記処理対象ガスを含む吸収塔排出ガスとを排出する吸収塔を備える。さらに、前記システムは、前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放散させ、前記二酸化炭素を放散した前記吸収液と、前記二酸化炭素を含む再生塔排出ガスとを排出する再生塔を備える。さらに、前記システムは、前記吸収塔排出ガスの旋回流を発生させる旋回流発生部と、前記吸収塔排出ガスの前記旋回流に洗浄液を噴射することで、前記吸収塔排出ガスを前記洗浄液により洗浄する噴射部と、を備える洗浄部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の洗浄部の構成を説明するための断面図である。
【
図3】第1実施形態の洗浄部の第1および第2の例を示した断面図である。
【
図4】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図5】第2実施形態の洗浄部の構成を説明するための断面図である。
【
図6】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図7】第3実施形態の洗浄部の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図7において、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0009】
図1の二酸化炭素回収システムは、排ガス排出設備1と、吸収塔2と、洗浄部3と、リッチ液ポンプ4と、再生熱交換器5と、再生塔6と、リーン液ポンプ7と、リーン液冷却器8と、制御部9と、第2洗浄部10とを備えている。吸収塔2は、充填層2aと、デミスタ2bと、第2デミスタ2cとを備えている。洗浄部3は、洗浄液ポンプ3aと、洗浄液冷却器3bと、1つ以上のスプレー3cとを備えている。これらのスプレー3cは、噴射部の例である。再生塔6は、充填層6aを備えている。第2洗浄部10は、洗浄液ポンプ10aと、洗浄液冷却器10bと、充填層10cとを備えている。なお、洗浄部3は適宜「第1洗浄部3」とも呼び、デミスタ2bは適宜「第1デミスタ2b」とも呼ぶ。
【0010】
図1は、吸収塔2や再生塔6の設置面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、吸収塔2や再生塔6の設置面に垂直なZ方向とを示している。本明細書においては、例えば吸収塔2や再生塔6の構成を説明する際に、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。なお、-Z方向は、重力方向と一致していても一致していなくてもよい。
【0011】
排ガス排出設備1は、燃焼排ガスなどのプロセス排ガスを排出する設備である。排ガス排出設備1から排出されたプロセス排ガスは、プロセス排ガスラインを介して吸収塔2に導入される。排ガス排出設備1は例えば、火力発電所などの発電所や、製鉄所や清掃工場などの工場や、ごみ焼却所や製造設備などの燃焼設備である。プロセス排ガスは例えば、火力発電所内のボイラーから排出される。プロセス排ガスは、二酸化炭素回収システムによって処理される処理対象ガスの例である。排ガス排出設備1は、本実施形態では二酸化炭素回収システム内に設けられているが、二酸化炭素回収システム外に設けられていてもよい。
【0012】
吸収塔2は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。吸収塔2は、プロセス排ガスを導入するためのガス導入口を充填層2aの下方に備え、吸収液(リーン液)を導入するための吸収液導入口を充填層2aの上方に備えている。吸収液導入口から導入された吸収液は、充填層2aへと落下する。一方、ガス導入口から導入されたプロセス排ガスは、充填層2aへと上昇する。
【0013】
吸収塔2は、プロセス排ガスと吸収液とを充填層2a内で気液接触させて、プロセス排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。その結果、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が、充填層2aから落下して吸収塔2の底部に溜まる。このリッチ液は、吸収塔2の底部に設けられた吸収液排出口から外部に排出される。一方、二酸化炭素が除去されたプロセス排ガスを含有する吸収塔排出ガスは、充填層2aから上昇して吸収塔2の頂部に向かう。ただし、この吸収塔排出ガスは、吸収塔2の頂部に設けられたガス排出口から外部に排出(放出)される前に、吸収塔2内に設けられた、詳細は後述する洗浄部3および第2洗浄部10に順番に流入する。
【0014】
なお、吸収塔2は、1つの充填層2aを備えているが、これに限定されず、複数の充填層を備えていてもよいし、1つ以上のその他の反応部(例えばトレイ)を備えていてもよい。また、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、吸収塔排出ガスを冷却する冷却塔を備えていてもよい。また、洗浄部3および第2洗浄部10は、本実施形態では吸収塔2内に設けられているが、吸収塔2外に設けられていてもよい。
【0015】
吸収液の例は、1種類以上のアミンを含有するアミン系水溶液である。アミンの例は、モノエタノールアミン(monoethanolamin)や、ジエタノールアミン(diethanolamin)である。吸収液は、その他のアミンを含有していてもよい。
【0016】
洗浄部3は、吸収塔排出ガスを洗浄液により洗浄して、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を除去するために設けられている。洗浄部3はおおむね、Z方向に平行に延びる筒形状を有しており、吸収塔排出ガスは、洗浄部3の底部から洗浄部3内に導入され、洗浄部3内を上昇していき、洗浄部3の頂部から洗浄部3外に排出される。本実施形態の洗浄部3は、洗浄部3内で吸収塔排出ガスの旋回流を発生させるように吸収塔排出ガスを洗浄部3内に導入する。よって、本実施形態の吸収塔排出ガスは、洗浄部3内を旋回しながら上昇していく、すなわち、+Z方向に向かって螺旋状に進行する。
【0017】
本実施形態の洗浄部3は、洗浄部3の内壁に沿って流れる旋回流を発生させると共に、洗浄部3の内壁付近に配置された1つ以上のスプレー3cを備えている。これらのスプレー3cは、吸収塔排出ガスの旋回流に洗浄液を噴射することで、吸収塔排出ガスを洗浄液により洗浄する。これにより、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分が除去される。洗浄液は例えば水や酸性水であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0018】
洗浄部3を通過した吸収塔排出ガスは、デミスタ2bを通過した後、第2洗浄部10に流入する。デミスタ2bは、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を捕捉して、吸収液成分をさらに除去する。一方、スプレー3cから噴射された洗浄液は、洗浄部3の底部に溜まった後、洗浄液ポンプ3aにより移送され、洗浄液冷却器3bにより冷却される。冷却された洗浄液は、スプレー3cに供給され、スプレー3cから吸収塔排出ガスに再び噴射される。
【0019】
なお、本実施形態の洗浄部3のさらなる詳細については後述する。
【0020】
デミスタ2bを通過した吸収塔排出ガスは、第2洗浄部10に流入する。第2洗浄部10は、充填層10c内を上昇する吸収塔排出ガスと、充填層10c内を落下する洗浄液とを気液接触させ、吸収塔排出ガスを洗浄液により洗浄する。これにより、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分が除去される。この洗浄液は例えば水や酸性水であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0021】
充填層10cを通過した吸収塔排出ガスは、第2デミスタ2cを通過した後、吸収塔2の頂部に設けられたガス排出口から外部に排出(放出)される。第2デミスタ2cは、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を捕捉して、吸収液成分をさらに除去する。一方、充填層10cを通過した洗浄液は、洗浄液ポンプ10aにより移送され、洗浄液冷却器10bにより冷却される。冷却された洗浄液は、充填層10cに再び供給される。
【0022】
このように、本実施形態の吸収塔2は、スプレー3cによる第1洗浄部3に加えて、充填層10cによる第2洗浄部10を備えている。この場合、ミスト状の吸収液成分を主に第1洗浄部3で除去し、ガス状の吸収液成分を主に第2洗浄部10で除去するという構成を実現することが可能となる。なお、第1および第2洗浄部3、10は、本実施形態では吸収塔2内に設けられているが、吸収塔2外に設けられていてもよい。
【0023】
吸収塔2の吸収塔排出口から排出された吸収液は、リッチ液ポンプ4により、再生熱交換器5を介して再生塔6へ移送される。この際、吸収塔2から再生塔6へ向かう吸収液は、再生熱交換器5における熱交換により加熱される。
【0024】
再生塔6は、例えば向流型気液接触装置により構成されている。再生塔6は、吸収塔2から排出された吸収液(リッチ液)を導入するための吸収液導入口を、充填層6aの上方に備えている。
【0025】
再生塔6は、導入された吸収液を加熱することにより、吸収液から大部分の二酸化炭素を蒸気と共に放散させて、吸収液から二酸化炭素を分離する。再生塔6は、図示しないリボイラを備えており、このリボイラに供給された高温蒸気と吸収液との熱交換を行うことにより吸収液を加熱する。再生塔6に導入された吸収液は、充填層6aを通過して、再生塔6の底部に落下する。
【0026】
その結果、二酸化炭素を放散した吸収液(リーン液)が再生塔6の底部にに溜まり、再生塔6の底部に設けられた吸収液排出口から外部に排出される。一方、放散された二酸化炭素と蒸気とを含有する再生塔排出ガスは、再生塔6の頂部に設けられたガス排出口から外部に排出される。再生塔排出ガスはその後、図示しないガス冷却器により冷却される。これにより、再生塔排出ガス中の蒸気が凝縮し、二酸化炭素と凝縮水とに分離される。凝縮水は、吸収液成分を含有しているため、再生塔6へ戻される。一方、分離された二酸化炭素は例えば、圧縮ポンプにより超臨界状態や液体状態など目的に応じた状態に転移され、タンク、ローリー、パイプラインなどにより保管または輸送される。
【0027】
なお、再生塔6は、1つの充填層6aを備えているが、これに限定されず、複数の充填層を備えていてもよいし、1つ以上のその他の反応部(例えばトレイ)を備えていてもよい。また、再生塔6は、タンク内で吸収液を加熱して二酸化炭素を放散させるフラッシュドラム(フラッシュタンク)を備えていてもよい。また、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、再生塔排出ガスを洗浄する洗浄塔、再生塔排出ガスを冷却する冷却塔、再生塔排出ガスから得られた二酸化炭素を圧縮する圧縮設備などを備えていてもよい。
【0028】
再生塔6から排出された吸収液は、リーン液ポンプ7により、再生熱交換器5とリーン冷却器8とを介して吸収塔2へ戻される。この際、再生塔6から吸収塔2へ向かう吸収液は、再生熱交換器5における熱交換と、リーン冷却器8における冷却作用により冷却される。再生熱交換器5は、吸収塔2から再生塔6へ向かう吸収液と、再生塔6から吸収塔2へ向かう吸収液との間で熱交換を行う。
【0029】
制御部9は、二酸化炭素回収システムの種々の動作を制御する。制御部9の例は、プロセッサ、電気回路、コンピュータなどである。制御部9は例えば、洗浄液ポンプ3a、10aやリーン液ポンプ7の回転数や、洗浄液冷却器3b、10bやリーン液冷却器8の冷却動作や、スプレー3cの噴射動作などを制御する。
【0030】
以下、本実施形態の洗浄部3のさらなる詳細について説明する。
【0031】
上述のように、洗浄部3は、吸収塔排出ガスを洗浄液により洗浄して、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を除去する。吸収液成分の例は、吸収液の主成分(例えばアミン)や、吸収液の添加成分や、吸収液の劣化等により生じた副次成分などである。本実施形態の洗浄部3は、これらの吸収液成分を洗浄液により除去する。
【0032】
本実施形態の洗浄部3は、洗浄部3内を旋回中の吸収塔排出ガスに洗浄液を噴霧する、すなわち、吸収塔排出ガスに洗浄液をミスト状に噴射する。これにより、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を効率的に除去することが可能となる。このようなスプレー3cによる洗浄は例えば、ミスト状で飛散する吸収液成分を含む吸収塔排出ガスから吸収液成分を除去する際に効果的である。洗浄液は例えば水や酸性水であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0033】
図2は、第1実施形態の洗浄部3の構成を説明するための断面図である。
【0034】
図2(a)は、洗浄部3の縦断面(XZ断面)を示しており、
図2(b)は、洗浄部3の横断面(XY断面)を示している。符号Sは、洗浄部3の内壁(壁面)を表す。
図2(c)と
図2(d)は、
図2(a)と
図2(b)に対応しており、洗浄部3内の吸収塔排出ガスの旋回流Gを示している。
【0035】
図2(a)~
図2(d)は、洗浄部3に設けられた複数のスプレー3cを示している。本実施形態では、これらのスプレー3cが、洗浄部3の内壁Sの付近で管形状のアレイ状に配置されており、管形状の内周側を旋回流Gが通過する(一方、後述する第2および第3実施形態では、管形状の外周側を旋回流Gが通過する)。そのため、これらのスプレー3cは、管形状の内周側(洗浄部3の中心軸側)を向くように配置されており、洗浄部3の内壁Sから離れる方向に洗浄液を噴射する。よって、管形状の内周側を旋回中の吸収塔排出ガスに洗浄液が噴射され、吸収塔排出ガスが洗浄液により洗浄される。
【0036】
吸収塔排出ガスが洗浄部3内で旋回流Gとして流れると、吸収塔排出ガス中の吸収液ミストの密度分布が、遠心力により内壁S付近で高くなる。そのため、内壁S付近から洗浄液を噴霧することで、効率的に吸収液ミストを除去することが可能となる。旋回流Gの遠心力を高めるために、洗浄部3の内径を吸収塔2全体の内径よりも部分的に小さく設定してもよい。これにより、より効率的なミスト除去が可能となる。
【0037】
なお、
図2(a)や
図2(c)は、7周分のスプレー3cを示しているが、スプレー3cの周の数は、7周以外でもよい。また、
図2(b)や
図2(d)は、24列分のスプレー3cの一部を示しているが、スプレー3cの列の数は、24列以外でもよい。これらのスプレー3cは、
図2(b)や
図2(d)に示すように洗浄部3の内壁Sの全周に配置されることが望ましいが、十分なミスト除去が可能であれば全周に配置されなくてもよい。例えば、これらのスプレー3cは、旋回流Gの流れに沿って螺旋状に配置されていてもよい。
【0038】
図3は、第1実施形態の洗浄部3の第1および第2の例を示した断面図である。
【0039】
図3(a)に示す第1の例では、洗浄部3は、洗浄部3の底部から洗浄部3内に吸収塔排出ガスを導入するガス導入口11を備えている。ガス導入口11は、矢印G1で示すように、洗浄部3の内壁Sに沿う方向に吸収塔排出ガスが流れるように、洗浄部3内に吸収塔排出ガスを導入する。この際、吸収塔排出ガスは、真横ではなく斜上を向けられてガス導入口11から導入される。その結果、ガス導入口11から導入された吸収塔排出ガスは、洗浄部3内で旋回流Gとして流れることとなる。ガス導入口11は、旋回流発生部の例である。第1の例では、ガス導入口11の位置で旋回流Gが発生する。
【0040】
図3(b)に示す第2の例では、洗浄部3は、洗浄部3の底部から洗浄部3内に吸収塔排出ガスを導入するガス導入口12と、ガス導入口12からの吸収塔排出ガスが衝突するように設けられた邪魔板13とを備えている。邪魔板13は、衝突部材の例である。邪魔板13は、矢印G2で示すように、洗浄部3の内壁Sに沿う方向に吸収塔排出ガスを配向するように設けられている。この際、吸収塔排出ガスは、真横ではなく斜上を向くように配向される。その結果、邪魔板13に衝突した吸収塔排出ガスは、洗浄部3内で旋回流Gとして流れることとなる。ガス導入口12および邪魔板13も、旋回流発生部の例である。第2の例では、邪魔板13の位置で旋回流Gが発生する。
【0041】
なお、旋回流Gは、第1および第2の例以外の方法で発生させてもよい。本実施形態の旋回流Gの発生方法は、これらの例に限定されるものではない。
図3(a)や
図3(b)を参照して説明した内容は、後述する第2および第3実施形態にも適用可能である。
【0042】
以上のように、本実施形態の洗浄部3は、洗浄部3内で吸収塔排出ガスの旋回流Gを発生させ、洗浄部3内で吸収塔排出ガスの旋回流Gに洗浄液を噴射することで、吸収塔排出ガスを洗浄液により洗浄する。よって、本実施形態によれば、洗浄液による洗浄効果を旋回流Gにより向上させることで、吸収塔排出ガスが吸収塔2から放出される際に吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を低減することが可能となる。
【0043】
なお、スプレー3cは、洗浄液を噴射するその他の機器に置き換えてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0045】
本実施形態の二酸化炭素回収システムは、第1実施形態の二酸化炭素回収システムと同様の構成機器を備えている。ただし、
図4に示すように、本実施形態のスプレー3cの配置は、第1実施形態のスプレー3cの配置と異なっている。以下、本実施形態のスプレー3cの配置を、
図5を参照して説明する。
【0046】
図5は、第2実施形態の洗浄部3の構成を説明するための断面図である。
図5(a)~
図5(d)はそれぞれ、
図2(a)~
図2(d)に対応している。
【0047】
図5(a)~
図5(d)は、洗浄部3に設けられた複数のスプレー3cを示している。本実施形態では、これらのスプレー3cが、洗浄部3の内壁Sから離れて管形状のアレイ状に配置されており、管形状の外周側を旋回流Gが通過する。そのため、これらのスプレー3cは、管形状の外周側(洗浄部3の内壁S側)を向くように配置されており、洗浄部3の内壁Sに向かう方向に洗浄液を噴射する。よって、管形状の外周側を旋回中の吸収塔排出ガスに洗浄液が噴射され、吸収塔排出ガスが洗浄液により洗浄される。
【0048】
吸収塔排出ガスが洗浄部3内で旋回流Gとして流れると、吸収塔排出ガス中の吸収液ミストの密度分布が、遠心力により内壁S付近で高くなる。そのため、内壁Sに向けて洗浄液を噴霧することで、効率的に吸収液ミストを除去することが可能となる。旋回流Gの遠心力を高めるために、洗浄部3の内径を吸収塔2全体の内径よりも部分的に小さく設定してもよい。これにより、より効率的なミスト除去が可能となる。
【0049】
本実施形態のスプレー3cは、洗浄効果を高くするために、液滴径が小さい洗浄液を噴射可能なスプレーノズルを備えていてもよい。この場合、洗浄液の液滴が吸収塔排出ガスによる巻き上げられる可能性が高くなる。しかしながら、本実施形態のスプレー3cは内壁Sの近くに配置されているため、スプレー3cからの洗浄液が内壁Sに衝突し、洗浄液が内壁Sを流れ落ちる。よって、液滴径が小さい洗浄液をスプレー3から噴射しても、吸収塔排出ガスによる洗浄液の液滴の巻き上げを抑制することが可能となる。
【0050】
なお、
図5(a)や
図5(c)は、7周分のスプレー3cを示しているが、スプレー3cの周の数は、7周以外でもよい。また、
図5(b)や
図5(d)は、8列分のスプレー3cの一部を示しているが、スプレー3cの列の数は、8列以外でもよい。これらのスプレー3cは、
図5(b)や
図5(d)に示すように洗浄部3の内壁Sの全面に対向して配置されることが望ましいが、十分なミスト除去が可能であればそれの限りではない。
【0051】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、洗浄液による洗浄効果を旋回流Gにより向上させることで、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を低減することが可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0053】
本実施形態の二酸化炭素回収システムは、第1および第2実施形態の二酸化炭素回収システムと同様の構成機器を備えている。ただし、
図6に示すように、本実施形態のスプレー3cの配置は、第1および第2実施形態のスプレー3cの配置と異なっている。以下、本実施形態のスプレー3cの配置を、
図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、第3実施形態の洗浄部3の構成を説明するための断面図である。
図7(a)~
図7(d)はそれぞれ、
図2(a)~
図2(d)や
図5(a)~
図5(d)に対応している。
【0055】
図7(a)~
図7(d)は、洗浄部3に設けられた複数のスプレー3cを示している。本実施形態では、これらのスプレー3cが、洗浄部3の内壁Sから離れて管形状のアレイ状に配置されており、管形状の外周側を旋回流Gが通過する。そのため、これらのスプレー3cは、管形状の外周側(洗浄部3の内壁S側)を向くように配置されており、洗浄部3の内壁Sに向かう方向に洗浄液を噴射する。よって、管形状の外周側を旋回中の吸収塔排出ガスに洗浄液が噴射され、吸収塔排出ガスが洗浄液により洗浄される。
【0056】
ただし、第2実施形態のスプレー3cが内壁Sの近くに配置されているのに対し、本実施形態のスプレー3cは内壁Sから遠くに配置されており、具体的には、洗浄部3の中心軸付近に配置されている。本実施形態のスプレー3cからの洗浄液は、内壁Sに衝突しても衝突しなくてもよい。
【0057】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、洗浄部3の内壁Sに向かう方向に洗浄液を噴射する。よって、本実施形態によれば、第2実施形態と同様に、吸収塔排出ガスによる洗浄液の液滴の巻き上げを抑制することが可能となる。だだし、第2実施形態には、本実施形態に比べて、吸収塔排出ガスによる洗浄液の液滴の巻き上げを抑制しやすいという利点がある。一方、本実施形態には、第2実施形態に比べて、スプレー3cが旋回流Gの流れの抵抗となることを抑制できるという利点がある。理由は、スプレー3cが内壁S付近に設けられていると、スプレー3cが旋回流Gの流れの妨げになり得るからである。そのため、本実施形態によれば、第2実施形態に比べて、洗浄部3の底部から頂部まで旋回流Gを維持しやすくなる。
【0058】
なお、
図7(a)や
図7(c)は、7周分のスプレー3cを示しているが、スプレー3cの周の数は、7周以外でもよい。また、
図7(b)や
図7(d)は、8列分のスプレー3cの一部を示しているが、スプレー3cの列の数は、8列以外でもよい。これらのスプレー3cは、
図7(b)や
図7(d)に示すように洗浄部3の内壁Sの全面に対向して配置されることが望ましいが、十分なミスト除去が可能であればそれの限りではない。
【0059】
本実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様に、洗浄液による洗浄効果を旋回流Gにより向上させることで、吸収塔排出ガスに同伴する吸収液成分を低減することが可能となる。
【0060】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0061】
1:排ガス排出設備、2:吸収塔、2a:充填層、
2b:デミスタ、2c:第2デミスタ、3:洗浄部、
3a:洗浄液ポンプ、3b:洗浄液冷却器、3c:スプレー、
4:リッチ液ポンプ、5:再生熱交換器、6:再生塔、6a:充填層、
7:リーン液ポンプ、8:リーン液冷却器、9:制御部、10:第2洗浄部、
10a:洗浄液ポンプ、10b:洗浄液冷却器、10c:充填層、
11:ガス導入口、12:ガス導入口、13:邪魔板