(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】弁および建設機械
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
F16K17/04 A
F16K17/04 D
(21)【出願番号】P 2019170054
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】三上 晃右
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0114203(US,A1)
【文献】実開平07-004968(JP,U)
【文献】実開昭56-151726(JP,U)
【文献】特開昭57-065465(JP,A)
【文献】特開2012-137171(JP,A)
【文献】特開2004-036852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿う筒状の胴および前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部を有する弁体と、
流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記胴をガイドするハウジングと、を備え、
前記弁体は、前記胴の前記軸線方向の一端に設けられた第1受圧面から突出する突起を更に備え
、
前記突起は、前記胴と同軸かつ前記胴よりも小径の円筒状を有する弁。
【請求項2】
前記弁体は、
前記胴の前記軸線方向の一端に設けられ前記流体の圧力を受ける第1受圧面と、
前記胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面と、を有する請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記弁体は、
前記第1受圧面を有する弁本体と、
前記第2受圧面を有するピストンと、を備える請求項2に記載の弁。
【請求項4】
前記ピストンは、前記弁本体の前記軸線方向の一端に湾曲面を有する請求項3に記載の弁。
【請求項5】
前記弁本体は、前記軸線方向の前記第1受圧面とは反対側に凹みを有し、
前記ピストンは、前記凹みに対向して前記弁本体の前記軸線方向の一方に凸の湾曲面を有する請求項3に記載の弁。
【請求項6】
軸線に沿う筒状の第1胴、前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部及び前記第1胴の前記軸線方向の一端に設けられ流体の圧力を受ける第1受圧面を有する弁本体と、前記軸線に沿い前記第1胴よりも小さい筒状の第2胴、前記第2胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面および前記第2胴の前記軸線方向の一端に設けられた湾曲面を有するピストンと、を備える弁体と、
流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記第1胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記第1胴をガイドするハウジングと、を備える弁。
【請求項7】
軸線に沿う筒状の第1胴、前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部、前記第1胴の前記軸線方向の一端に設けられ流体の圧力を受ける第1受圧面および前記軸線方向の前記第1受圧面とは反対側に設けられた凹みを有する弁本体と、前記軸線に沿い前記第1胴よりも小さい筒状の第2胴、前記第2胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面および前記凹みに対向して前記弁本体の前記軸線方向の一方に設けられた凸の湾曲面を有するピストンと、を備える弁体と、
流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記第1胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記第1胴をガイドするハウジングと、を備える弁。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の弁を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の一種として油圧クレーンが知られている。油圧クレーンは、油圧シリンダで動作するブーム、ワイヤーロープおよびフック等を備える。油圧クレーンは、油圧シリンダに対する作動油の供給・排出等により過大圧力が発生したときに、圧力を自動的に開放するリリーフ弁(過負荷防止弁)を備える(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1では、中空のねじ部と、ねじ部に嵌め合わされガイド孔を有する筒体と、筒体の先端に嵌め合わされたシート部材と、筒体のガイド孔に挿入されたガイド部と、シート部材に圧接するポペット部と、を有するポペット部材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筒体とシート部材とが別体である場合、筒体とシート部材との間の隙間から作動油が漏れる可能性がある。そのため、作動油の漏れを抑制する上で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、流体の漏れを抑制することができる弁および建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る弁は、軸線に沿う筒状の胴および前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部を有する弁体と、流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記胴をガイドするハウジングと、を備え、前記弁体は、前記胴の前記軸線方向の一端に設けられた第1受圧面から突出する突起を更に備え、前記突起は、前記胴と同軸かつ前記胴よりも小径の円筒状を有する。
【0007】
この構成によれば、流路の遮断機能および胴のガイド機能を同一の部材(ハウジング)が持つため、筒体とシート部材とが別体である場合のように流体が漏れる隙間はハウジングに形成されない。したがって、流体の漏れを抑制することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、ハウジングを弁体と同軸に配置しやすい。そのため、ハウジングに対する弁体の摩擦抵抗を小さくし、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。すなわち、流体の流量が増加しても設定圧力(例えば、弁体が流路を開くときの圧力)を一定に維持することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
加えて、弁体は軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部を有するため、先細り部が胴の外周よりも外側に位置する場合(弁体がキノコ状を有する場合)と比較して、複雑な加工が不要となる。すなわち、胴と先細り部とを単純に一体化しやすく、加工性に優れる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の弁では、前記弁体は、前記胴の前記軸線方向の一端に設けられ前記流体の圧力を受ける第1受圧面と、前記胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面と、を有してもよい。
【0009】
(3)上記(2)に記載の弁では、前記弁体は、前記第1受圧面を有する弁本体と、前記第2受圧面を有するピストンと、を備えてもよい。
【0010】
(4)上記(3)に記載の弁では、前記ピストンは、前記弁本体の前記軸線方向の一端に湾曲面を有してもよい。
【0011】
(5)上記(3)に記載の弁では、前記弁本体は、前記軸線方向の前記第1受圧面とは反対側に凹みを有し、前記ピストンは、前記凹みに対向して前記弁本体の前記軸線方向の一方に凸の湾曲面を有してもよい。
【0012】
(6)本発明の態様に係る弁は、軸線に沿う筒状の第1胴、前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部及び前記第1胴の前記軸線方向の一端に設けられ流体の圧力を受ける第1受圧面を有する弁本体と、前記軸線に沿い前記第1胴よりも小さい筒状の第2胴、前記第2胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面および前記第2胴の前記軸線方向の一端に設けられた湾曲面を有するピストンと、を備える弁体と、流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記第1胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記第1胴をガイドするハウジングと、を備える。
【0013】
この構成によれば、流路の遮断機能および第1胴のガイド機能を同一の部材(ハウジング)が持つため、筒体とシート部材とが別体である場合のように流体が漏れる隙間はハウジングに形成されない。したがって、流体の漏れを抑制することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、ハウジングを弁体と同軸に配置しやすい。そのため、ハウジングに対する弁体の摩擦抵抗を小さくし、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。すなわち、流体の流量が増加しても設定圧力(例えば、弁体が流路を開くときの圧力)を一定に維持することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
加えて、弁体は軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部を有するため、先細り部が第1胴の外周よりも外側に位置する場合(弁体がキノコ状を有する場合)と比較して、複雑な加工が不要となる。すなわち、第1胴と先細り部とを単純に一体化しやすく、加工性に優れる。
加えて、第2受圧面に流体の圧力が作用することにより、弁体が流路を閉じる方向(以下「閉弁方向」ともいう。)に力が作用する。そのため、閉弁方向の力を発生させるためのバネを設ける場合、バネを小さくすることができる。
加えて、第1受圧面と第2受圧面とが同一の部材(弁体)に設けられる場合と比較して、ガイド部材(軸線に沿って弁体をガイドする部材)に対する弁体の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがって、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。
加えて、ピストンが弁本体の側の端縁外周に鋭利なエッジ部を有する場合と比較して、ピストンが軸線に沿って移動する際に軸線に対して多少傾いたとしても、ピストンの軸線に沿う移動に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0014】
(7)本発明の態様に係る弁は、軸線に沿う筒状の第1胴、前記軸線方向の一端で前記軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部、前記第1胴の前記軸線方向の一端に設けられ流体の圧力を受ける第1受圧面および前記軸線方向の前記第1受圧面とは反対側に設けられた凹みを有する弁本体と、前記軸線に沿い前記第1胴よりも小さい筒状の第2胴、前記第2胴の前記軸線方向の他端に設けられ前記軸線方向から見て前記第1受圧面よりも外形が小さい第2受圧面および前記凹みに対向して前記弁本体の前記軸線方向の一方に設けられた凸の湾曲面を有するピストンと、を備える弁体と、流体の流路を有し、前記先細り部と接触することで前記流路を遮断し、前記第1胴の外周面と接触することで前記軸線に沿って前記第1胴をガイドするハウジングと、を備える。
【0015】
この構成によれば、流路の遮断機能および第1胴のガイド機能を同一の部材(ハウジング)が持つため、筒体とシート部材とが別体である場合のように流体が漏れる隙間はハウジングに形成されない。したがって、流体の漏れを抑制することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、ハウジングを弁体と同軸に配置しやすい。そのため、ハウジングに対する弁体の摩擦抵抗を小さくし、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。すなわち、流体の流量が増加しても設定圧力(例えば、弁体が流路を開くときの圧力)を一定に維持することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
加えて、弁体は軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部を有するため、先細り部が第1胴の外周よりも外側に位置する場合(弁体がキノコ状を有する場合)と比較して、複雑な加工が不要となる。すなわち、第1胴と先細り部とを単純に一体化しやすく、加工性に優れる。
加えて、第2受圧面に流体の圧力が作用することにより、弁体が流路を閉じる方向(以下「閉弁方向」ともいう。)に力が作用する。そのため、閉弁方向の力を発生させるためのバネを設ける場合、バネを小さくすることができる。
加えて、第1受圧面と第2受圧面とが同一の部材(弁体)に設けられる場合と比較して、ガイド部材(軸線に沿って弁体をガイドする部材)に対する弁体の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがって、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。
加えて、ピストンが弁本体の側の端縁外周に鋭利なエッジ部を有する場合と比較して、ピストンが軸線に沿って移動する際に軸線に対して多少傾いたとしても、ピストンの軸線に沿う移動に影響を及ぼすことを抑制することができる。
加えて、ピストンが軸線に沿って移動する際に軸線に対して多少傾いたとしても、凹みと凸の湾曲面とが互いに擦れ合うことによりピストンの傾動が吸収される。そのため、ピストンの軸線に沿う移動に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0016】
(8)本発明の態様に係る建設機械は、上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の弁を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体の漏れを抑制することができる弁および建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1実施形態の弁の取付状態の一例の断面図である。
【
図5】第1実施形態の弁の動作の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、建設機械としてリリーフ弁(過負荷防止弁)の機能を有する弁を備えた油圧クレーンを例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
[第1実施形態]
[建設機械]
図1は、第1実施形態の建設機械1の模式図である。
例えば、建設機械1はラフテレーンクレーン(油圧クレーン)である。建設機械1は、旋回体2および走行体3を備える。旋回体2は、走行体3の上に旋回可能に設けられている。旋回体2は、作動油(流体)を供給する不図示の油圧ポンプ(流体供給源)を備える。
【0021】
旋回体2は、操作者が搭乗可能なキャブ5と、走行体3の上部に一端が揺動自在に連結されたブーム6と、ブーム6の走行体3とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されたジブ7と、ジブ7のブーム6とは反対側の他端(先端)にワイヤーロープ8を介して取り付けられたフック(不図示)と、を備える。例えば、油圧ポンプ(不図示)は、キャブ5内に配置されている。油圧ポンプから供給される作動油によって、キャブ5、ブーム6、ジブ7およびフックが駆動される。
【0022】
[弁]
図2は、第1実施形態の弁20の取付状態の一例の断面図である。
図3は、第1実施形態の弁20の断面図である。
図2に示すように、弁20は、弁体21、ハウジング22、ケース23、スプリング24(弾性部材)およびアジャスタ25を備える。例えば、弁20は、複数の通路11~13を有するバルブボディ10に接続される。
【0023】
[弁体]
図3に示すように、弁体21は、弁本体30と、弁本体30に隣接するピストン40と、を備える。
弁本体30は、軸線C1に沿う筒状の第1胴31と、第1胴31の軸線方向(軸線Cに沿う方向)の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部32と、第1胴31の軸線方向の一端に設けられた第1受圧面33と、第1受圧面33から突出する突起34と、を備える。
【0024】
第1胴31は、軸線C1を中心軸とする円筒状を有する。第1胴31は、軸線C1に沿う第1連通孔35と、第1連通孔35よりも小さいオリフィス36と、を有する。第1連通孔35とオリフィス36とは、互いに連通している。第1連通孔35は、第1胴31の第1受圧面33とは反対側の他端面の中央部に開口している。オリフィス36は、第1胴31の突起34の中央部に開口している。
【0025】
先細り部32は、第1胴31の外周上に最外端を有し、かつ、第1胴31の外周よりも径方向内側に最内端を有するように突起34に向かって徐々に傾斜している。軸線方向から見て、先細り部32は、第1胴31の外周を最外径とし、かつ、第1受圧面33上の周縁を最内径とする円環状を有する。
【0026】
第1受圧面33は、作動油の圧力を受ける面である。図中符号11は、バルブボディ10に設けられた一次側通路を示す(
図1参照)。第1受圧面33は、一次側通路11を矢印K1方向に流れる作動油によって一次圧力を受ける(
図5参照)。
【0027】
突起34は、第1受圧面33の中央部から軸線方向の一方(一次側通路11の内方)に向かって突出している。突起34は、第1胴31と同軸かつ第1胴31よりも小径の円筒状を有する。例えば、突起34は、第1胴31と同一の部材で一体に形成されている。
【0028】
ピストン40は、第1胴31と別体に設けられた第2胴41と、第2胴41の軸線方向の他端(第2胴41の第1受圧面33とは反対側の他端)に設けられた第2受圧面42と、第2胴41の軸線方向の一端の外周に設けられた湾曲角43(
図4参照)と、第2胴41の軸線方向の一端面に設けられた収容凹み44と、第2胴41の軸線方向の他端の外周に設けられたフランジ45と、を備える。
【0029】
第2胴41は、軸線C1を中心軸とする円筒状を有する。第2胴41は、第1胴31よりも小径の円筒状を有する。第2胴41は、第1胴31と同軸に配置されている。第2胴41は、軸線C1に沿う第2連通孔46を有する。第2連通孔46は、第2胴41における収容凹み44の中央部、および第2胴41の他端面の中央部のそれぞれに開口している。
【0030】
第2受圧面42は、軸線方向から見て第1受圧面33より外形が小さい。第2受圧面42は、第1受圧面33よりも小さい面積を有する。図中において、第1受圧面33の面積をA1、第2受圧面42の面積をA2で示す(A2<A1)。第2受圧面42は、作動油の圧力およびスプリング24のバネ力を受ける面である。第2受圧面42は、第2連通孔46を矢印K2方向に流れる作動油によって圧力を受ける(
図5参照)。
【0031】
図4は、
図3の要部拡大図である。
図4に示すように、湾曲角43は、第2胴41の弁本体30の側の端縁外周に設けられた湾曲状の角である。湾曲角43は、第2胴41の外周上に最外端を有し、かつ、第2胴41の外周よりも径方向内側に最内端を有するように外方に凸をなして湾曲している。軸線方向から見て、湾曲角43は、第2胴41の外周を最外径とし、かつ、第2胴41の一端面周縁を最内径とする円環状を有する。
【0032】
図3に示すように、収容凹み44は、第2胴41の一端面の中央部に窪んだ凹みである。収容凹み44には、環状のシール部材28が収容されている。シール部材28は、第1胴31の他端面と第2胴41の一端面との間に配置されている。第2胴41の一端面は、シール部材28が圧縮された状態で第1胴31の他端面に接触している。
【0033】
フランジ45は、第2胴41の他端縁外周から径方向外方に突出している。軸線方向から見て、フランジ45は、第2胴41の外径よりも大きい円環状を有する。フランジ45は、第2胴41と同一の部材で一体に形成されている。
【0034】
[ハウジング]
ハウジング22は、軸線C1を中心軸とする円筒状を有する。ハウジング22は、弁本体30を径方向外側から覆っている。ハウジング22は、弁本体30を収容する収容空間50を有する。ハウジング22は、作動油の流路51,52を有する。ハウジング22は、先細り部32と接触することで流路51,52を遮断する。ハウジング22は、第1胴31の外周面と接触することで軸線C1に沿って第1胴31をガイドする。
図中において、符号53はハウジング22が流路51,52を遮断するときに先細り部32と接触する部分(以下「保持壁」ともいう。)、符号54はハウジング22が第1胴31をガイドする部分(以下「ガイド壁」ともいう。)、符号55はハウジング22外周の溝内に設けられたOリングをそれぞれ示す。
【0035】
流路51,52は、ハウジング22内(収容空間50)とハウジング22外とを連通可能である。流路51,52は、軸線C1と直交する方向(以下「径方向」ともいう。)においてハウジング22の両側部を開口している。流路51,52は、複数設けられている。複数の流路51,52は、ハウジング22の一側部を開口する第1流路51と、ハウジング22の他側部を開口する第2流路52と、である。図中符号12,13は、バルブボディ10に設けられた二次側通路を示す(
図2参照)。各流路51,52は、一次側通路11の圧力が閾値(設定圧)を超えたとき、一次側通路11と二次側通路12,13とを連通させる(
図5参照)。
【0036】
保持壁53は、ハウジング22において一次側通路11寄りの部分である。保持壁53の内径は、第1胴31の外径よりも小さい。保持壁53は、先細り部32に接触するシート縁53aを有する。シート縁53aは、保持壁53の内周において一次側通路11とは反対側の端縁に位置する角である。シート縁53aは、先細り部32の傾斜方向中央部に対向している。
【0037】
ガイド壁54は、ハウジング22において一次側通路11とは反対側の部分である。ガイド壁54の内径は、第1胴31の外径と実質的に同じ大きさを有する。ガイド壁54の軸線方向の長さは、保持壁53よりも長い。ガイド壁54は、弁本体30の軸線方向への移動を許容する長さを有する。ガイド壁54および保持壁53は、同一の部材で一体に形成されている。
【0038】
[ケース]
ケース23は、軸線C1を中心軸とする筒状を有する。ケース23は、バルブボディ10(
図2参照)に取り付けられるネジ60と、スプリング24を収容するケース本体61と、を有する。ネジ60およびケース本体61は、同一の部材で一体に形成されている。図中において、符号62はネジ60外周の溝内に設けられたOリングを示す。
【0039】
ネジ60は、ケース本体61の軸線方向の一端面から軸線方向の一方に突出する筒状を有する。ネジ60は、ハウジング22のガイド壁54を径方向外側から覆っている。ガイド壁54は、ネジ60の内周に取り付けられている。図中符号63は、ガイド壁54とネジ60との間に流れた作動油をケース23外へ排出させるための排出孔を示す。
【0040】
軸線方向から見て、ケース本体61は、ネジ60よりも大きい外径を有する。ケース本体61は、スプリング24を収容するスプリング収容室65と、軸線C1に沿ってピストン40をガイドする第2ガイド壁66と、を有する。
【0041】
スプリング収容室65は、オリフィス36、第1連通孔35および第2連通孔46を介して一次側通路11と連通している。軸線方向から見て、スプリング収容室65は、ピストン40の外径(フランジ45の外径)よりも大きい。
【0042】
第2ガイド壁66は、ケース本体61においてネジ60寄りの部分である。第2ガイド壁66の内径は、第2胴41の外径と実質的に同じ大きさを有する。第2ガイド壁66の軸線方向の長さは、第2胴41よりも短い。第2ガイド壁66は、第2胴41の軸線方向への移動を許容する長さを有する。
【0043】
[スプリング]
スプリング24は、弁体21を弾性的に支持している。スプリング24は、スプリング収容室65に収容されている。スプリング24は、弁体21と同軸に配置されている。スプリング24は、軸線方向に弾性変形可能である。スプリング24は、ピストン40の第2受圧面42とアジャスタ25の内底面との間に配置されている。スプリング24は、先細り部32と保持壁53とが接触することで一次側通路11と流路(二次側通路12,13側)とを遮断するように弁体21を一次側通路11へ向けて常時押している。以下、スプリング24が弁体21を一次側通路11へ向けて押す力を「バネ力」ともいう。
【0044】
[アジャスタ]
アジャスタ25は、ケース本体61の軸線方向の他端面に取り付けられている。アジャスタ25は、スプリング24のバネ力(リリーフ弁の設定圧)を調整するための部材である。アジャスタ25は、ケース23と同軸の有底筒状を有する。アジャスタ25は、アジャスタ25自体を軸線C1回りに回転させることにより、ケース本体61内周のネジ60と噛み合いつつ軸線方向に移動可能である。図中において符号70は、アジャスタ25の外周に設けられたネジ、符号71はアジャスタ25をケース本体61の他側面に固定するためのナットをそれぞれ示す。
【0045】
[弁の動作]
図5は、第1実施形態の弁20の動作の一例の説明図である。
図5は、一次側通路11から作動油が供給されたときを示す。
図5においては、弁体21が一次側通路11と二次側通路12,13とを接続している状態を実線で示し、弁体21が一次側通路11と二次側通路12,13とを遮断している状態を二点鎖線で示している。
【0046】
図5に示すように、一次側通路11から作動油が供給されると、弁体21(弁本体30)の第1受圧面33は軸線方向において一次側通路11の側から押される(図中矢印K1参照)。このとき、作動油の一部は、オリフィス36、第1連通孔35および第2連通孔46を通り、弁体21(ピストン40)の第2受圧面42に作用する(図中矢印K2参照)。作動油の一部が第2受圧面42に作用すると、ピストン40を所定の圧力で第1受圧面33が受ける圧力方向とは反対方向(閉弁方向)へ押す。
【0047】
このとき、弁体21(先細り部32)は、作動油の一部が第2受圧面42に作用する力と、スプリング24のバネ力との和(以下「合力」ともいう。)で、シート縁53aに押し付けられている(二点鎖線の弁体21参照)。弁体21が軸線方向において第1受圧面33の側から前記合力よりも強く押されると、弁体21はスプリング24に抗してアジャスタ25の側に変位する。すなわち、一次側通路11から作動油が供給されたとき、第1受圧面33に作用する圧力が設定圧を超えると、弁体21はスプリング24に抗して移動し、一次側通路11と二次側通路12,13とを連通させる(実線の弁体21参照)。これにより、一次側通路11から二次側通路12,13に向けて作動油が流れる(図の矢印W1参照)。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る弁20は、軸線C1に沿う筒状の第1胴31、第1胴31の軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部32及び第1胴31の軸線方向の一端面に設けられ作動油の圧力を受ける第1受圧面33を有する弁本体30と、軸線C1に沿い第1胴31よりも小さい筒状の第2胴41、第2胴41の軸線方向の他端に設けられ軸線方向から見て第1受圧面33よりも外形が小さい第2受圧面42および第2胴41の軸線方向の一端に設けられた湾曲角43と、を有するピストン40と、を備える弁体21と、作動油の流路51,52を有し、先細り部32と接触することで流路51,52を遮断し、第1胴31の外周面と接触することで軸線C1に沿って第1胴31をガイドするハウジング22と、を備える。
【0049】
この構成によれば、流路51,52の遮断機能および第1胴31のガイド機能を同一の部材(ハウジング22)が持つため、筒体とシート部材とが別体である場合のように作動油が漏れる隙間はハウジング22に形成されない。したがって、作動油の漏れを抑制することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、ハウジング22を弁体21と同軸に配置しやすい。そのため、ハウジング22に対する弁体21の摩擦抵抗を小さくし、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。すなわち、作動油の流量が増加しても設定圧力(例えば、弁体21が流路を開くときの圧力)を一定に維持することができる。
加えて、筒体とシート部材とが別体である場合と比較して、部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
加えて、弁体21は軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部32を有するため、先細り部32が第1胴31の外周よりも外側に位置する場合(弁体21がキノコ状を有する場合)と比較して、複雑な加工が不要となる。すなわち、第1胴31と先細り部32とを単純に一体化しやすく、加工性に優れる。
加えて、弁体21は、第1胴31の軸線方向の一端に設けられ作動油の圧力を受ける第1受圧面33と、第2胴41の軸線方向の他端に設けられ第1受圧面33よりも外形が小さい第2受圧面42と、を有することで、以下の効果を奏する。
第2受圧面42に作動油の圧力が作用することにより、閉弁方向に力が作用する。そのため、閉弁方向の力を発生させるためのスプリング24を小さくすることができる。
加えて、弁体21は、第1受圧面33を有する弁本体30と、第2受圧面42を有するピストン40と、を備えることで、以下の効果を奏する。
第1受圧面33と第2受圧面42とが同一の部材(弁体21)に設けられる場合と比較して、ガイド部材(軸線C1に沿って弁体21をガイドする部材)に対する弁体21の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがって、オーバーライド特性のヒステリシスを低減することができる。
加えて、ピストン40は、弁本体30の側の端縁外周に設けられた湾曲角43を有することで、以下の効果を奏する。
ピストン40が弁本体30の側の端縁外周に鋭利なエッジ部を有する場合と比較して、ピストン40が軸線C1に沿って移動する際に軸線C1に対して多少傾いたとしても、ピストン40の軸線C1に沿う移動に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係る建設機械1は、上記の弁20を備える。
【0051】
この構成によれば、作動油の漏れを抑制することができる建設機械1を提供することができる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、建設機械1は油圧クレーンである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、油圧ショベル等、油圧クレーン以外の建設機械に本発明を適用してもよい。
【0054】
上述した実施形態では、弁本体30が第1受圧面33から突出する突起34を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、弁本体30は、突起34を有しなくてもよい。すなわち、第1受圧面33は、平坦面であってもよい。
【0055】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の弁220の断面図である。
上述した第1実施形態では、弁体21は、第1受圧面33を有する弁本体30と、第2受圧面42を有するピストン40と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図11に示すように、弁体221は、第1受圧面33を有する第1弁筒体230と、第1弁筒体230と一体に形成され、第2受圧面42を有する第2弁筒体240と、を備えていてもよい。すなわち、弁体221は、単一の部材で形成されていてもよい。言い換えると、第1弁筒体230と第2弁筒体240とは、同一の部材で一体に形成されていてもよい。
図6において、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
弁220は、軸線C1に沿う筒状の単一の胴231および軸線方向の一端で軸線方向の一方に向けて径が小さくなる先細り部32を有する単一の弁体221を備える。弁体221は、オリフィス36と、オリフィス36に連通する連通孔235と、を有する。第2弁筒体240は、軸線C1に沿う円柱状を有する。第2弁筒体240は、フランジ45を有しない。
【0057】
本実施形態では、弁体221は、第1受圧面33を有する第1弁筒体230と、第1弁筒体230と一体に形成され第2受圧面42を有する第2弁筒体240と、を備える。
【0058】
この構成によれば、弁体221がガイド壁54と第2ガイド壁66とに跨って配置されるため、弁体221にハウジング22を組み付けた状態で弁体221とガイド壁54との同軸を確保することが困難となる。そのため、第1受圧面33と第2受圧面42とが別の部材に設けられる場合と比較して、ガイド部材(軸線C1に沿って弁体221をガイドする部材)に対する弁体221の摩擦抵抗が大きくなる。したがって、オーバーライド特性を悪くするとともに、そのヒステリシスを大きくすることができる。ところで、特定の操作(例えば、クレーンにおける起伏・伏せ操作)においては、オーバーライド特性をあえて悪くしたリリーフ弁を採用する場合がある。そのため、本実施形態の構成は、このような特定の操作に用いるリリーフ弁に好適である。
【0059】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の弁320の断面図である。
上述した第1実施形態では、弁20は、第1胴31の他端面と第2胴41の一端面との間に配置されたシール部材28を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図7に示すように、弁320は、シール部材28を有していなくてもよい。
図7において、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
弁本体330は、軸線方向の第1受圧面33とは反対側の部分に設けられた凹み338を有する。凹み338は、半球状の球状底面338aを有する。球状底面338aの中央部には、第1連通孔335が開口している。
【0061】
ピストン340は、凹み338に対向して弁本体330の軸線方向の一方に凸の凸面348を有する。凸面348は、凹み338の球状底面338aに対向する半球状の球状端面348a(湾曲面)を有する。球状端面348aの中央部には、第2連通孔346が開口している。凸面348の外周面と凹み338の内周面との間には、隙間349が形成されている。隙間349は、軸線C1に対するピストン340の傾動を許容する大きさを有する。ピストン340は、フランジ45を有しない。
【0062】
本実施形態では、弁本体330は、軸線方向の第1受圧面33とは反対側に球状底面338aを含む凹み338を有し、ピストン340は、凹み338に対向して弁本体330の軸線方向の一方に凸の球状端面348aを含む凸面348を有する。
【0063】
この構成によれば、ピストン340が軸線C1に沿って移動する際に軸線C1に対して多少傾いたとしても、凹み338の球状底面338aと凸面348の球状端面348aとが互いに擦れ合うことによりピストン340の傾動が吸収される。そのため、ピストン340の軸線C1に沿う移動に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1…油圧クレーン(建設機械)
20…弁
21…弁体
22…ハウジング
30…弁本体
31…第1胴(胴)
32…先細り部
33…第1受圧面
40…ピストン
41…第2胴(胴)
42…第2受圧面
43…湾曲角
51…第1流路(流路)
52…第2流路(流路)
53…保持壁
54…ガイド壁
220…弁
221…単一の弁体(弁体)
231…単一の胴(胴)
320…弁
330…弁本体
338…凹み
338a…球状底面
340…ピストン
348…凸面
348a…球状端面
C1…軸線