IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7479816化合物、インク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、及びトナー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】化合物、インク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、及びトナー
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/18 20060101AFI20240430BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240430BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240430BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240430BHJP
   B41M 5/385 20060101ALI20240430BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240430BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C09B11/18 CSP
C09B67/20 F
C09D11/037
G03F7/004 505
B41M5/385 300
G02B5/20 101
G03G9/09
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019188540
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2020105488
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018199119
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】早川 愛
(72)【発明者】
【氏名】城田 衣
(72)【発明者】
【氏名】新藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】三東 剛
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104508(JP,A)
【文献】特開2017-155216(JP,A)
【文献】特開2006-257410(JP,A)
【文献】特開平02-026781(JP,A)
【文献】特開2018-099880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 11/18
C09B 67/20
C09D 11/037
G03F 7/004
B41M 5/385
G02B 5/20
G03G 9/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする化合物。
【化1】

[式(1)中、
及びRは、各々独立して、置換基を有するフェニル基を表し、該置換基が、ハロゲン原子であり、
及びRは、各々独立して、以下の(i)~(v):
(i)炭素数2~12のアルキル基であって、置換基を有しており、該置換基が、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基又はトリフルオロメチル基、
(ii)炭素数2~12の無置換のアルキル基、
(iii)シアノ基、
(iv)トリフルオロメチル基、
(v)ハロゲン原子、
からなる群より選択される官能基であり、
及びRは、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、
は、下記式(2)または(3)で示される構造を表し、
【化2】

式(2)中、Rは、-SO 基、アルコキシスルホニル基、スルホン酸アミド基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、又はニトロ基を表し、Rは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
式(3)中、R10~R12は、各々独立して、水素原子、アルキル基、又は置換基を有するアリール基若しくは無置換のアリール基を表し、
は、陰イオンを表し、分子内に少なくとも1つのアニオン性置換基を持つ場合はなくてもよい。]
【請求項2】
前記式(1)において、RとRとが同一の置換基を有するフェニル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(2)が、下記式(4)で示される構造である請求項1又は2に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
前記R 及びR が、2,6-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロ-4-ブチルフェニル基又は2,6-ジクロロ-4-ブトキシフェニル基である請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、下記(A19)、(A24)、(A40)、(A94)、(A98)~(A102)からなる群より選択される化合物である請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項6】
媒体と、該媒体中に溶解または分散した状態で存在する化合物とを含有するインクであって、
該化合物が請求項1~のいずれか一項に記載の化合物であることを特徴とするインク。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とするカラーフィルター用レジスト組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とするカラーフィルター。
【請求項9】
基材と、該基材上に形成された色材層とを有する感熱転写記録用シートであって、
該色材層が請求項1~のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とする感熱転写記録用シート。
【請求項10】
結着樹脂と着色剤とを含有するトナーであって、
該着色剤が請求項1~のいずれか一項に記載の化合物を含有することを特徴とするトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、並びに該化合物を用いたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶を使用したカラーディスプレイには、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、液晶ディスプレイのカラー表示するためには必要不可欠なものであり、液晶ディスプレイの性能を左右する重要な部品である。従来のカラーフィルターの製造方法としては、染色法、印刷法、インクジェット法、及び、フォトレジスト法が知られている。これらの中でも、分光特性及び色再現性の制御が容易であること、また、解像度が高く、より高精細なパターニングが可能であることから、フォトレジスト法が主流となっている。
【0003】
フォトレジスト法によるカラーフィルターの製造においては、着色剤として一般的に顔料が用いられてきた。しかし、顔料を用いたカラーフィルターは、消偏作用(偏光が崩されること)や、液晶ディスプレイのカラー表示のコントラスト比の低下、カラーフィルターの明度の低下、有機溶剤やポリマーに対する保存安定性の低下等、課題が多かった。そこで、着色剤として染料を用いた製造方法が着目されている。特許文献1には、着色剤としてトリフェニルメタン系色素を用いたカラーフィルターが開示されている。
【0004】
また、近年、携帯式カラーディスプレイデバイスの普及に伴い、これらのデバイスを用いて撮影した写真、加工した写真、さらには作成した書類を、手軽にカラープリントする需要が急激に高まっている。
【0005】
カラープリント方式としては、電子写真方式、インクジェット方式、感熱転写記録方式等が知られている。これらの中でも、感熱転写記録方式は、ドライプロセスによってプリントできること、小型でプリンターの携帯性に優れることから、周囲の環境によらず、手軽にプリントできる方法として優れている。感熱転写記録方式において、転写シート及び転写シート用のインク組成物に含有される染料は、転写記録のスピード、記録物の画質、及び、保存安定性に影響を与えるため、非常に重要な材料である。特許文献2には、感熱転写記録方式に用いられる色素として、トリフェニルメタン系色素を用いて高明度な感熱転写記録物を得られる例が開示されている。
【0006】
また、電子写真方式において用いられるカラートナーの分野において、感光体表面の酸化に起因する画像濃度ムラと、感光体表面の残留電位によるキャリアの付着に起因する感光体表面傷による画像欠陥とを抑制する必要がある。かかる抑制のための酸化防止剤としてトリフェニルメタン系色素を用いた例が開示されている(特許文献3参照)。
さらに、インクジェット方式や電子写真方式を用いたデジタル捺染は、低エネルギーかつ低コストで捺染製品を提供できる方法として、市場に普及しつつある。しかし、トリフェニルメタン系色素としてC.I.Acid Blue 7やC.I.Acid Blue 9がデジタル捺染に使用されているが、耐光性が不十分であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-81210号公報
【文献】特開昭61-141593号公報
【文献】特開2011-133805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した文献に記載されたトリフェニルメタン系染料では、耐光性が低く、凝集しやすく保存安定性が悪いという課題があった。
そこで、本発明は、耐光性が高く、かつ保存安定性に優れる化合物を提供することを目的とする。また本発明は、該化合物を用いることによって、耐光性が高くかつ保存安定性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート、及びトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下記式(1)で表される構造を有する化合物が提供される。
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、
及びRは、各々独立して、置換基を有するフェニル基を表し、該置換基が、ハロゲン原子であり、
及びRは、各々独立して、以下の(i)~(v):
(i)炭素数2~12のアルキル基であって、置換基を有しており、該置換基が、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基又はトリフルオロメチル基、
(ii)炭素数2~12の無置換のアルキル基、
(iii)シアノ基、
(iv)トリフルオロメチル基、
(v)ハロゲン原子
からなる群より選択される官能基であり、
及びRは、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、
は、下記式(2)または(3)で示される構造を表し、
【化2】
【0012】
式(2)中、Rは、-SO 基、アルコキシスルホニル基、スルホン酸アミド基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、又はニトロ基を表し、Rは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
式(3)中、R10~R12は、各々独立して、水素原子、アルキル基、又は置換基を有するアリール基若しくは無置換のアリール基を表し、
は、陰イオンを表し、分子内に少なくとも1つのアニオン性置換基を持つ場合はなくてもよい。]
【0013】
また、本発明によれば、媒体と、該媒体中に溶解または分散した状態で存在する化合物とを含有するインクであって、該化合物が上記化合物であるインクが提供される。
また、本発明によれば、上記化合物を含有するカラーフィルター用レジスト組成物が提供される。
また、本発明によれば、基材と、該基材上に形成された色材層とを有する感熱転写記録用シートであって、該色材層が上記化合物を含有する感熱転写記録用シートが提供される。
また、本発明によれば、結着樹脂と着色剤とを含有するトナーであって、該着色剤が、上記化合物を含有するトナーが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高耐光性、かつ保存安定性に優れた化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、高耐光性、かつ保存安定性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、カラーフィルター、感熱転写記録用シート、及びトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記式(1)で表される構造を有する化合物が、耐光性が高く、かつ保存安定性に優れることを見出した。
【0016】
【化3】
【0017】
[式(1)中、
及びRは、各々独立して、置換基を有するフェニル基又は無置換のフェニル基を表し、
及びRは、各々独立して、炭素数2~12の置換基を有するアルキル基若しくは無置換のアルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、又はハロゲン原子を表し、
及びRは、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、
は、下記式(2)または(3)で示される構造を表し、
【化4】
【0018】
式(2)中、Rは、-SO 基、アルコキシスルホニル基、スルホン酸アミド基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、又はニトロ基を表し、Rは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
式(3)中、R10~R12は、各々独立して、水素原子、アルキル基、又は置換基を有するアリール基若しくは無置換のアリール基を表し、
は、陰イオンを表し、分子内に少なくとも1つのアニオン性置換基を持つ場合はなくてもよい。]
【0019】
前記式(1)と同様な基本構造を有していても、前記式(1)中のR~Rが、前記のR~R以外の置換基である場合は、化合物の溶媒に対する溶解度が落ち、凝縮しやすいばかりでなく、耐光性が低いことが後述する比較例によって判明した。
これに対し、本発明の化合物の場合は、R~Rが、各々独立して、置換基を有するフェニル基又は無置換のフェニル基を表す。
~Rが、各々独立して、炭素数2~12の置換基を有するアルキル基若しくは無置換のアルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、又はハロゲン原子を表す。窒素原子とRとの間には1つのメチレン基が存在し、窒素原子とRとの間にも1つのメチレン基が存在している。
とR及びRとRがそれぞれ非対称でかさ高い構造となるため、N位に置換する3つの置換基が立体的なねじれ構造を形成する。そのため、分子内または分子間における化合物同士の相互作用が抑制され、凝集を制御することができたものと考えられる。また、R~Rとして置換基を有するフェニル基又は無置換のフェニル基が窒素原子に直接結合すると、電荷が非局在化することで安定になり、高耐光性を有する化合物となったものと考えている。
【0020】
また、式(1)で表される化合物を用いることによって、高耐光性、かつ保存安定性に優れたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、カラーフィルター、感熱転写記録用シート、及びトナーが得られることを見出した。
まず、上記式(1)で表される化合物について説明する。
【0021】
式(1)中、R~Rにおける「置換基を有するフェニル基」の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられる。直鎖状、分岐状、若しくは、環状の炭素数1~20個のアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホ基(-SOH)、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、スルホン酸塩基、ベンゼンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等。
【0022】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等。
中でも、メチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基であることが耐光性、保存安定性に優れることから好ましい。
【0023】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等。
中でも、n-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基であることが耐光性、保存安定性に優れることから好ましい。
【0024】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したハロゲン原子としては、特に限定されるものではないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でもフッ素原子、塩素原子であることが耐光性、保存安定性に優れることから好ましい。
【0025】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したスルホン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる。スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸プロピル基、スルホン酸ブチル基、スルホン酸ヘキシル基、スルホン酸オクチル基等。中でもスルホン酸ブチル基、スルホン酸ヘキシル基であることが耐光性、保存安定性に優れることから好ましい。
【0026】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したスルホンアミド基としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる。N-メチルスルホンアミド基、N,N-ジメチルスルホンアミド基、N-エチルスルホンアミド基、N,N-ジエチルスルホンアミド基、N-プロピルスルホンアミド基、N,N-ジプロピルスルホンアミド基、N-ブチルスルホンアミド基、N,N-ジブチルスルホンアミド基、N-ペンチルスルホンアミド基、N,N-ジペンチルスルホンアミド基、N-ヘキシルスルホンアミド基、N,N-ジヘキシルスルホンアミド基、N-オクチルスルホンアミド基、N,N-ジオクチルスルホンアミド基、N-(2-エチルヘキシル)スルホンアミド基、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)スルホンアミド基、N-(1-メチルヘキシル)スルホンアミド基、N-(1-メチルヘプチル)スルホンアミド基、N-メチル-N-ブチルスルホンアミド基、N-メチル-N-ペンチルスルホンアミド基、N-メチル-N-ヘキシルスルホンアミド基、N-メチル-N-オクチルスルホンアミド基、N-フェニルスルホンアミド基、N-(p-メチルフェニル)スルホンアミド基、N-ピロリジルスルホニル基、N-ピペリジルスルホニル基等。
【0027】
中でも、以下のものが耐光性、保存安定性に優れることから好ましい。N,N-ジブチルスルホンアミド基、N,N-ジペンチルスルホンアミド基、N,N-ジヘキシルスルホンアミド基、N,N-ジオクチルスルホンアミド基、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)スルホンアミド基。
【0028】
式(1)中、R~Rにおけるフェニル基に置換したスルホン酸塩基としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸リチウム塩、スルホン酸ナトリウム塩、スルホン酸カリウム塩等が挙げられる。
【0029】
式(1)中、R及びRの無置換のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、以下のものが耐光性、保存安定性に優れた化合物となることから好ましい。エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等。
【0030】
式(1)中、R及びRの置換基を有するアルキル基の置換基としては、特に限定されるものではないが、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基等が耐光性、保存安定性に優れた化合物となることから好ましい。
【0031】
式(1)中、R及びRのハロゲン原子としては、特に限定されるものではないが、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、中でも塩素原子、フッ素原子が耐光性、保存安定性に優れた化合物となることから好ましい。
式(1)中、R及びRのアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基であることが耐光性、保存安定性に優れた化合物となることから好ましい。
【0032】
式(1)中、Rは、下記式(2)または(3)で示される構造を有する。これらの構造を有すると、耐光性、保存安定性に優れる。
【化5】
【0033】
式(2)中、Rは、-SO 基、アルコキシスルホニル基(-SOR基)、スルホン酸アミド基(-SONRR基)、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、又はニトロ基を表し、Rは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【0034】
式(2)中、R及びRにおけるハロゲン原子としては、特に限定されるものではないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Rにおけるパーフルオロアルキル基としては、特に限定されるものではないが、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基などが挙げられる。
式(3)中、R10~R12は、各々独立して、水素原子、アルキル基、又は置換基を有するアリール基若しくは無置換のアリール基を表す。
【0035】
式(3)中、R10~R12におけるアルキル基としては、上記式(1)のR、Rにおけるアルキル基として例示したものと同様の置換基が挙げられる。
式(3)中、R10~R12における置換基を有するアリール基若しくは無置換のアリール基としては、特に限定されるものではないが、フェニル基が挙げられる。アリール基の置換基としては、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、メトキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0036】
式(1)中、Xのアニオンとしては、特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、しゅう酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、ピコリン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素二リン酸イオン、ペンタフルオロプロピオン酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、過塩素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホニルアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ナフタレンスルホニルイオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラアリールボレートアニオン、硫酸アニオン等。
式(1)中、Rとしては、特に好ましくは下記式(4)に示す基である。
【0037】
【化6】
【0038】
式(1)で表される化合物の好ましい例として、化合物(A1)~(A102)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
【化15】
【0048】
【化16】
【0049】
【化17】
【0050】
これらの中で、以下の化合物が耐光性、かつ保存安定性に優れるため好ましい。化合物(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、(A9)、(A10)、(A18)、(A19)、(A22)、(A23)、(A24)、(A25)、(A26)、(A27)、(A28)、(A29)、(A30)、(A31)、(A40)、(A41)、(A42)、(A43)、(A44)、(A45)、(A46)、(A47)、(A48)、(A49)、(A59)、(A60)、(A64)、(A65)、(A66)、(A67)、(A68)、(A76)、(A77)、(A78)、(A79)、(A80)、(A91)、(A92)、(A93)、(A94)、(A95)、(A96)、(A97)、(A98)、(A99)、(A100)、(A101)、(A102)で示される化合物。
中でも特に、(A2)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、(A18)、(A19)、(A24)、(A25)、(A26)、(A27)、(A28)、(A40)、(A45)、(A46)、(A64)、(A65)、(A98)、(A100)、(A101)、(A102)が耐光性、かつ保存安定性により一層優れるため、より好ましい。
【0051】
式(1)で表される化合物は、カチオンが非局在化して存在し、カチオン部位は、分子中のどの位置に存在していても良く、いずれも本発明の技術的範囲内である。例えば、分子内にアニオン性置換基を持つ化合物(A1)の場合は、式(1)中のXは存在せず、以下のように構造が変化する。
【0052】
【化18】
【0053】
一方、分子内にアニオン性置換基を持たない化合物(A74)の場合には、下記のように構造が変化する。
【0054】
【化19】
【0055】
式(1)で表される化合物は、公知の方法に基づいて合成することができる。すなわち、式(1)で表される化合物は、下記の化合物(A)、(B)、及び(C)を縮合して化合物(D)を得る縮合工程、次いで化合物(D)を酸化する酸化工程を経て合成することができる。縮合工程及び酸化工程は、必要に応じて、液媒体、縮合剤、酸化剤などの存在下で行うことができる。
【0056】
合成スキームの一例を以下に示すが本合成法に限定されるわけではない。合成スキーム中の化合物(A)~(D)におけるR~Rは、式(1)におけるR~Rと同義である。式(1)で表される化合物は、置換基の種類やその数、位置が異なる複数の異性体の混合物として合成され得るが、便宜上、本発明においては混合物である場合も含め、「化合物」と記載する。各合成スキームで使用する化合物は遊離酸型として示したが、塩型の化合物を用いてもよい。
式(1)中におけるRとR、RとR、RとRが、それぞれ同一の置換基である化合物を合成する場合には、化合物(A)、及び(B)として同じものを用いればよい。
[合成スキーム1]
【0057】
【化20】
【0058】
(縮合工程)
まず、縮合工程について説明する。縮合工程は、必要に応じて、媒体、縮合剤、酸化剤などの存在下で行うことができる。
縮合工程は、無溶媒で行うこともできるが、媒体を使用することが好ましい。
【0059】
縮合工程で用いることができる媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる。以下のものは単独又は任意の混合比で混合して用いることができる。水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、酢酸エチルなど。
特に好ましくは、水、メタノール、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミドなどである。上記反応溶媒の使用量は、アルデヒド化合物(C)に対し、0.1~1000質量%であることが好ましく、1.0~150質量%であることがより好ましい。
【0060】
縮合工程で用いることができる縮合剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましくは硫酸、塩酸、酢酸である。上記縮合剤の使用量は、アルデヒド化合物(C)に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0061】
また、縮合工程における反応温度は0~160℃の範囲で行うことができる。特に50℃~140℃が好ましく、より好ましくは60℃~120℃である。本縮合反応は、通常、24時間以内に終了し、反応終了後、カラム精製や晶析による精製を行うことができる。
【0062】
(酸化工程)
次に、酸化工程について説明する。酸化工程は、必要に応じて、媒体、酸化剤などの存在下で行うことができる。
酸化工程は、無溶媒で行うこともできるが、媒体を使用することが好ましい。
【0063】
酸化工程で用いることができる媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる。以下のものは単独又は任意の混合比で混合して用いることができる。水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、酢酸エチル、クロロホルムなど。
【0064】
特に好ましくは、1,2-ジクロロベンゼン、酢酸エチル、クロロホルムなどである。上記反応溶媒の使用量は、アルデヒド化合物(C)に対し、0.1~1000質量%であることが好ましく、1.0~200質量%であることがより好ましい。
【0065】
酸化工程で用いることができる酸化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、過酸化水素、クロラニル、酸素などが挙げられる。
好ましくは酸化マンガン、クロラニルである。上記酸化剤の使用量は、アルデヒド化合物(C)に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0066】
酸化工程における媒体のpHは、pH1~9が好ましく、より好ましくは、pH2~8であり、特にpH3~7がよい。
酸化工程における反応温度は0~150℃の範囲で行うことができる。10℃~100℃が好ましく、特に20℃~80℃で行うことが好ましい。本酸化反応は、通常、18時間以内に終了し、反応終了後、カラム精製や晶析による精製を行うことができる。
【0067】
上記式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、また、用途に応じて、色調等を調整するために、2種以上を併用してもよい。さらに、公知の顔料や染料と組み合わせて用いることもできる。組み合わせる公知の顔料や染料は、2種以上であってもよい。
以下、上記式(1)で表される化合物を用いたインク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート及びトナーについて、順に説明する。
【0068】
<インク>
まず、本発明に係るインクについて説明する。式(1)で表される化合物は、耐光性および保存安定性に優れるため、インクの着色剤として好適である。本発明のインクは、媒体と、着色剤として式(1)で表される化合物を含有する。該化合物は、媒体中に溶解または分散した状態で存在する。本発明のインクにおいて、上記式(1)で表される化合物以外の構成成分は、インクの用途に応じて適宜選択される。また、各種用途における特性を阻害しない範囲において、添加剤等を適宜添加してもよい。
【0069】
本発明のインクは、感熱転写記録方式プリンター用の転写シート用インク、印刷用インク、塗料、筆記具用インク、捺染用インクとしても好適である。
【0070】
本発明のインクを捺染用インクとして用いる場合、捺染を行うことができる布帛は、染色されるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、アセテート、トリアセテートを含有する繊維からなる布帛が挙げられる。布帛は、織物、編物、不織布等いずれの形態であってもよい。また、綿、絹、麻、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及びレーヨン繊維からなる布帛、または、これらの繊維を2種以上組み合わせた布帛を用いることもできる。
【0071】
布帛を構成する糸の太さは、10~100デニールの範囲であることが好ましい。またその糸を構成する繊維の太さは、特に限定されるものではないが、1デニール以下であることが好ましい。
【0072】
本発明のインクは、以下のようにして調製することができる。
本発明の化合物と、必要に応じて他の着色剤、乳化剤、樹脂等とを、媒体中に、撹拌しながら徐々に加えて、十分に媒体になじませる。さらに、分散機を用いて機械的剪断力を加え、安定に溶解または微分散させることによって、本発明のインクを得ることができる。
【0073】
[媒体]
本発明において、「媒体」とは、水または有機溶剤を意味する。媒体として有機溶剤を用いる場合、該有機溶剤の種類は、インクの目的や用途に応じて選択されるものであり、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール、変性エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄または窒素含有有機化合物類等。
【0074】
また、有機溶剤としては、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体としては、付加重合性単量体または縮重合性単量体が挙げられ、付加重合性単量体であることが好ましい。重合性単量体としては、具体的に、以下のものが挙げられる。スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体等。これらは1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
[分散剤]
本発明に係るインクの媒体として水を用いる場合、着色剤の良好な保存安定性を得るために、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されるものではないが、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0076】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等。
【0077】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ナフタレン、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等。
【0078】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等。
【0079】
[着色剤]
本発明のインクを構成する着色剤としては、式(1)で表される化合物を用いるが、該化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該化合物の媒体への溶解性または分散性を阻害しない範囲で、公知の染料等の他の着色剤を併用してもよい。併用することができる他の着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物等が挙げられる。
【0080】
上記着色剤の含有量は、媒体1000質量部に対して1.0~30質量部であることが好ましく、2.0~20質量部であることがより好ましく、3.0~15質量部であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、十分な着色力が得られ、かつ、着色剤の分散性も良好となる。
【0081】
[樹脂]
本発明のインクは、さらに樹脂を含んでいてもよい。樹脂の種類は、インクの目的や用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。例えば、以下のものが挙げられる。スチレン系重合体、アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂等。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
分散機としては、特に限定されるものではないが、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることができる。
以上のように、本発明のインクは、式(1)で表される化合物を含有するため、高耐光性、かつ保存安定性に優れたインクを提供できる。
【0083】
<感熱転写記録用シート>
次に、本発明に係る感熱転写記録用シートについて説明する。本発明の化合物は、高耐光性、かつ保存安定性に優れているため、感熱転写記録用シートに好適に用いることができる。
本発明に係る感熱転写記録用シートは、基材と、本発明の化合物を含む組成物を該基材上に膜形成してなる色材層とを有する。色材層は、少なくともイエロー層とマゼンタ層とシアン層とを有している。
【0084】
感熱転写記録法においては、感熱転写記録用シートの色材層と色材受容層を表面に設けた受像シートとを重ね合わせた状態で、感熱転写記録用シートをサーマルヘッド等の加熱手段を用いて加熱する。このようにすることによって、感熱転写記録用シート中の色材を受像シートに転写させ、画像形成が行われる。
上記色材層のシアン層は、基本的に、前述の本発明のインクを基材シートに塗布、乾燥して形成されるものである。以下に、さらに詳しく説明する。
【0085】
式(1)で表される化合物を含む色材、結着樹脂、必要に応じて界面活性剤及びワックスを、媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。続いて、分散機を用いて機械的剪断力を加えることによって、上記組成物を安定に溶解または微粒子状に分散させて、インクを調製する。該インクを、基材であるベースフィルムに塗布、乾燥することによって、色材層を形成する。さらに、必要に応じて、後述の転写性保護層、耐熱滑性層等を形成することによって、本発明の感熱転写記録用シートが得られる。なお、本発明の感熱転写記録用シートは、上記製造方法で作製された感熱転写記録用シートに限定されるものではない。以下、色材層に用いられる各成分について詳細に説明する。
【0086】
[色材]
色材としては、式(1)で表される化合物を用いるが、該化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、従来、熱転写用に用いられている色材を併用することもできる。併用する色材に関しては、色相、印画感度、耐光性、保存性及び結着樹脂への溶解性等を考慮する必要がある。色材の使用量は、色材層に含まれる結着樹脂100質量部に対して、1~150質量部であり、分散液中における色材の分散性の観点から、50~120質量部であることが好ましい。なお、色材を2種以上混合して用いる場合、その総量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0087】
[結着樹脂]
結着樹脂としては、特に限定されるものではないが、以下の樹脂が好ましい。セルロース樹脂、ポリアクリル酸樹脂、澱粉樹脂、及び、エポキシ樹脂等の水溶性樹脂;ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂、及び、フェノキシ樹脂等の有機溶剤可溶性の樹脂。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
[界面活性剤]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド加熱時(印画時)に十分な滑性を持たせるために、界面活性剤を添加してもよい。
【0089】
[ワックス]
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド非加熱時に十分な滑性を持たせるために、ワックスを添加してもよい。添加することができるワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の感熱転写記録用シートには、上記添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、帯電防止剤、粘度調整剤等を添加してもよい。
【0090】
[媒体]
色材層を形成する際に、分散体の調製に用いる媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、水または有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、以下のものが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン。上記有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
[基材]
次いで、感熱転写記録用シートを構成する基材について説明する。基材は、上記色材層を支持するものであり、ある程度の耐熱性と強度を有するフィルムであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、以下のものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、ポリスチレンフィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、セルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等。これらの中でも、機械的強度、耐溶剤性及び経済性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0092】
上記基材の厚さは、0.5~50μmであり、転写性の観点から、3~10μmであることが好ましい。
基材上に、色材層を形成するために染料インキを塗布する場合、塗工液の濡れ性、接着性等が不足しやすい。そのため、基材の、上記色材層を形成する面(形成面)には、必要に応じて、接着処理を行うことが好ましい。色材層の形成面は、基板の一方の面でも、両面でもよい。接着処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、オゾン処理、コロナ放電処理、紫外線処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、化学薬品処理等を挙げることができる。また、これらの処理を複数組み合わせて行ってもよい。
【0093】
上記基材の接着処理として、基材上に接着層を塗工してもよい。接着層としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものを用いることができる。ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の有機材料の微粒子や、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機材料の微粒子等。
本発明の感熱転写記録用シートは、式(1)で表される化合物を含有するため、高耐光性、かつ保存安定性に優れた感熱転写記録用シートを提供することができる。
【0094】
<カラーフィルター用レジスト組成物及びカラーフィルター>
次に、本発明に係るカラーフィルター用レジスト組成物(以下、「本発明のレジスト組成物」とも称する。)について説明する。式(1)で表される化合物は、高耐光性、かつ保存安定性に優れているため、カラーフィルター用レジスト組成物の調色用として好ましい。また、本発明のレジスト組成物を用いることによって、高耐光性、かつ保存安定性に優れたカラーフィルターを得ることができる。
【0095】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、結着樹脂、媒体、及び、着色剤として本発明の化合物を含有する。本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、以下のようにして得られる。本発明の化合物及び結着樹脂を、媒体中に、撹拌しながら加える。このとき、必要に応じて重合性単量体、重合開始剤、光酸発生剤等を加えてもよい。その後、分散機を用いて機械的剪断力を加え、媒体中で上記材料を安定に溶解または微分散させることによって、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物を得ることができる。
【0096】
[結着樹脂]
本発明のレジスト組成物に用いることができる結着樹脂としては、画素形成時の露光工程における光照射部及び遮光部のいずれか一方が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、または、市販の現像液によって溶解可能なものであればよい。その中でも、作業性及びレジスト作製後の処理のしやすさの観点から、水またはアルカリ水溶液によって現像可能な組成を有する結着樹脂が好ましい。
【0097】
上記結着樹脂としては、下記の親水性の重合性単量体と、下記の親油性の重合性単量体とを、適切な混合比で、既知の手法によって共重合化した結着樹脂を用いることができる。
親水性の重合性単量体:アクリル酸、メタクリル酸、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アンモニウム塩を有する重合性単量体等
親油性の重合性単量体:アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N-ビニルカルバゾール等
【0098】
これらの結着樹脂は、エチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性単量体、オキシラン環、オキセタン環を有するカチオン重合性単量体、ラジカル発生剤、酸発生剤、並びに、塩基発生剤との組み合わせによって用いられる。この種の結着樹脂は、露光によって、露光部分における材料の現像液への溶解性が低下するため、遮光部分のみが現像によって除去される、ネガ型のレジスト組成物として用いることができる。
【0099】
また、光によって開裂し、カルボン酸を生成するキノンジアジド基を有する樹脂を用いることができる。さらに、ポリヒドロキシスチレンのtert-ブチル炭酸エステル、テトラヒドロピラニルエーテル等の、酸によって開裂する基を有する樹脂と、露光によって酸を発生する酸発生剤とを組み合わせて用いることもできる。この種の樹脂は、露光によって露光部分における材料の現像液への溶解性が向上するため、露光部分のみが現像によって除去される、ポジ型のレジスト組成物として用いることができる。
【0100】
本発明のレジスト組成物が、上記ネガ型のレジスト組成物である場合、結着樹脂として、露光によって付加重合する重合性単量体(以下、「光重合性単量体」とも称する。)を用いることが好ましい。光重合性単量体としては、分子中に少なくとも1個以上の付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物であることが好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の単官能アクリレート及びメタクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレート等の多官能アクリレート及びメタクリレート;並びに、トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールに、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した後、アクリレート化またはメタクリレート化することによって得られる多官能アクリレート及び多官能メタクリレート。さらに、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸との反応生成物である多官能のエポキシアクリレート類またはエポキシメタクリレート類も用いることができる。
【0101】
上記光重合性単量体の中でも、以下のものを用いることが好ましい。トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート。上記光重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
上記光重合性単量体の含有量としては、本発明に係るレジスト組成物の質量(全固形分)に対し、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。上記含有量が5~50質量%であることによって、露光に対する感度をさらに向上させることができ、かつ、レジスト組成物の粘着性も良好となる。
【0103】
本発明のレジスト組成物が上記ネガ型のレジスト組成物である場合、光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤としては、ビシナールポリケトアルドール化合物、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ、トリオキサジアゾール化合物等が挙げられる。これらの中でも、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン(商品名:イルガキュア369、BASF社製)が好ましい。なお、本発明のレジスト組成物による画素の形成に際し、電子線を用いる場合には、上記光重合開始剤は必須ではない。
【0104】
また、本発明のレジスト組成物が上記ポジ型のレジスト組成物である場合、必要に応じて光酸発生剤を添加してもよい。光酸発生剤としては、スルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム及びホスホニウム等のオニウムイオンと、アニオンとの塩等の公知の光酸発生剤を用いることができる。
【0105】
上記スルホニウムイオンとしては、以下のものが挙げられる。トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム等。
【0106】
上記ヨードニウムイオンとしては、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0107】
上記セレニウムイオンとしては、以下のものが挙げられる。トリフェニルセレニウム、トリ-p-トリルセレニウム、トリ-o-トリルセレニウム、トリス(4-メトキシフェニル)セレニウム、1-ナフチルジフェニルセレニウム、トリス(4-フルオロフェニル)セレニウム、トリ-1-ナフチルセレニウム、トリ-2-ナフチルセレニウム等のトリアリールセレニウム。
【0108】
上記アンモニウムイオンとしては、以下のものが挙げられる。テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチル-n-プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル-n-ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム。
【0109】
上記ホスホニウムイオンとしては、以下のものが挙げられる。テトラフェニルホスホニウム、テトラ-p-トリルホスホニウム、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等。
【0110】
上記アニオンとしては、以下のものが挙げられる。ClO 、BrO 等の過ハロゲン酸イオン;FSO 、ClSO 等のハロゲン化スルホン酸イオン;CHSO 、CFSO 、HSO 等の硫酸イオン;HCO 、CHCO 等の炭酸イオン;AlCl 、AlF 等のアルミン酸イオン;ヘキサフルオロビスマス酸イオン、CHCOO、CFCOO、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等のカルボン酸イオン;B(C 、CHCHCHCHB(C 等のアリールホウ酸イオン;チオシアン酸イオン、及び硝酸イオン等。しかし、これらに限定されるものではない。
【0111】
[媒体]
本発明のレジスト組成物において、本発明の化合物、結着樹脂、また、必要に応じて添加される光重合性単量体、光重合開始剤、光酸発生剤を溶解または分散させるための媒体としては、水または有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、以下のものが挙げられる。シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-n-アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、石油系溶剤等。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
[着色剤]
本発明のレジスト組成物を構成する着色剤としては、式(1)で表される化合物を用いるが、該化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望の分光特性を得るため、調色用途として、他の染料を併用してもよい。併用することができる染料としては、特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物、塩基染料レーキ化合物等。
【0113】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物には、上記添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤や、フィルター作製時にガラス基板との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤を添加してもよい。
分散機としては、特に限定されるものではないが、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、及び、高圧対向衝突式の分散機を用いることができる。
【0114】
以上のように、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、式(1)で表される化合物を含有するため、高耐光性、かつ保存安定性に優れたカラーフィルター用レジスト組成物となる。なお、異なる分光特性を有する2種類以上の画素が隣接して配列されたカラーフィルターにおいて、その複数の画素の色(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1色を構成する画素に、本発明のレジスト組成物を用いる。そのようにすることによって、耐光性が高く、かつ保存安定性に優れたカラーフィルターを得ることができる。
【0115】
<トナー>
次に、本発明に係るトナーについて説明する。本発明の化合物は、高耐光性、かつ保存安定性に優れているため、トナーに好適に用いることができる。
【0116】
本発明のトナーは、着色剤として式(1)で表される化合物と、結着樹脂と、必要に応じて従来使用されているトナー用顔料、磁性体やワックス、電荷制御剤、その他の添加剤等を含有する。本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法、乳化凝集法等が挙げられる。また、液体現像法に用いられる現像剤としても用いることができる。これらの中でも、式(1)で表される化合物を着色剤として用いる本発明のトナーは、粉砕法によって製造された粉砕トナーであることが好ましい。
【0117】
なお、着色剤としては、式(1)で表される化合物を用いるが、該化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、トナーの製造方法に応じて、色調等を調整するために、公知の顔料または染料と併用することもできる。
以下、粉砕トナーの製造方法の一例を説明する。
【0118】
[粉砕トナーの製造方法]
粉砕トナーは、結着樹脂中に着色剤等を溶融混練し、均一に分散した後、溶融混練物を冷却固化させ、混練物を微粉砕装置によって微粉砕し、微粉砕物を分級機によって分級して所望の粒径のトナー粒子を得ることによって製造される。具体的には、まず、着色剤として式(1)で表される化合物と、結着樹脂と、必要に応じて従来使用されているトナー用顔料、磁性体やワックス、電荷制御剤、その他の添加剤等の材料を、ヘンシェルミキサー又はボールミル等の混合機を用いて十分に混合する。次に、ロール、ニーダー及びエクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融させる。さらに、捏和及び混練することによって、樹脂類を互いに相溶させた後、必要に応じてワックスや磁性体を加えて分散させる。そして、冷却固化させた後、粉砕及び分級を行うことによって、粉砕トナーを得ることができる。粉砕トナーの製造には、混合機、熱混練機、分級機等の公知の製造装置を用いることができる。以下、トナーを構成する各成分について説明する。
【0119】
[着色剤]
着色剤としては、従来使用されているトナー用顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 15:3等)と式(1)で表される化合物を用いる。上記のとおり、該化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、公知の染料または顔料等の着色剤を併用することもできる。
顔料を併用する場合、式(1)で表される化合物は、併用される顔料に対して、0.01~1.0倍重量、好ましくは0.03~0.5倍重量、特に、0.05~0.2倍重量の範囲で用いることができる。
【0120】
併用することができる着色剤としては、特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物、塩基染料レーキ化合物等。
【0121】
[結着樹脂]
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系または脂環族炭化水素系樹脂、芳香族系石油系樹脂、さらにロジン、変性ロジン等。これらの中でも、帯電性や定着性の観点から、ビニル系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂を用いた場合、帯電性や定着性の効果がさらに大きくなるため、より好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の樹脂を混合して用いる場合、トナーの粘弾性特性を制御するために、分子量の異なる樹脂を混合することが好ましい。
【0122】
上記結着樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、45~80℃であるものが好ましく、55~70℃であるものがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、1,500~50,000であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は6,000~1,000,000であることが好ましい。
【0123】
結着樹脂として、ポリエステル系樹脂を用いる場合は、特に限定されるものではないが、全成分中における、アルコール成分/酸成分のモル比が、45/55~55/45であるものが好ましい。ポリエステル系樹脂は、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる。そのため、酸価は、90mgKOH/g以下であることが好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、水酸基価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0124】
[ワックス]
本発明のトナーにおいては、必要に応じてワックスを添加してもよい。ワックスとしては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
[電荷制御剤]
本発明のトナーにおいては、必要に応じて電荷制御剤を混合してもよい。電荷制御剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トナーを負帯電に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。スルホン酸基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体。サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類。ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系電荷制御剤。
【0126】
また、トナーを正帯電に制御するものとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系電荷制御剤。
これらの電荷制御剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0127】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」を表す。また、得られた化合物の同定は、H核磁気共鳴分光分析(H-NMR)装置(AVANCE-600 NMR spectrometer、BRUKER社製)、及び、MALDI-TOF/MS(MALDI-TOF/MS ultraFleXtreme、BRUKER社製)装置を用いて行った。
【0128】
[製造例1:化合物(A2)の製造]
N-ブチル-N-フェニルアニリン(2.23g)の氷酢酸(20mL)溶液に、2-スルホベンズアルデヒドナトリウム(0.98g)を加え、100℃で5時間加熱した。反応終了後、室温まで冷却し、水(50mL)で希釈し、クロロホルム(50mL)で抽出した。減圧濃縮後、酢酸エチル(20mL)に溶解し、クロラニル(2.33g)を添加し、80℃、4時間加熱した。反応終了後、ろ過し、得られたろ液を水で3回洗浄した。カラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物(A2)1.82gを得た。
化合物の同定は、〔1〕H-NMR分析、及び〔2〕MALDI-TOF/MS分析によって行った。分析結果を以下に示す。
〔1〕H-NMR(600MHz、溶媒CDCl、室温25℃)の結果:
δ(ppm)=8.47(1H、d)、7.65(1H、dd)、7.58(8H、m)、7.52(2H、dd)、7.46(1H、dd)、7.33(4H、d)、7.03(1H、d)、6.77(4H、d)、3.88(4H、m)、1.78(8H、m)、1.02(6H、m)
〔2〕MALDI-TOF/MS分析結果: m/z=617.62(M+H)
【0129】
(製造例2~15:その他の化合物の製造)
製造例1と同様の方法で表1に示す化合物を製造し、同定した。
【0130】
<インクの製造>
以下に記載する方法で、本発明のインク及び比較用インクを製造した。
【0131】
[実施例1:インク(1)の製造]
メチルエチルケトン45部/トルエン45部の混合溶液にポリビニルブチラール樹脂(デンカ3000-K;デンカ株式会社製)5部を少しずつ添加して溶解させた。ここに、製造例1で合成した化合物(A2)5部を添加して溶解させることで、インク(1)を得た。
【0132】
[実施例2~13:インク(2)~(13)の製造]
実施例1において、化合物(A2)を、それぞれ表1に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、インク(2)~(13)を製造した。
なお、実施例1、4、及び7は、参考例として記載するものである。
【0133】
[比較例1~4:比較用インク(1)~(4)の製造]
実施例1において、化合物(A2)を、それぞれ下記比較化合物(B1)~(B4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較用インク(1)~(4)を製造した。
【0134】
【化21】
【0135】
[感熱転写記録用シートおよび画像サンプルの作製]
厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー(登録商標);東レ株式会社製)に乾燥後の厚さが1μmになるように上記シアンインク(1)を塗布し、乾燥して、本発明のインクを用いた感熱転写記録シートを作製した。
こうして形成した感熱転写記録シートを、キヤノン株式会社製のコンパクトフォトプリンター、Selphyの改造機を用いて印画紙に転写して、画像サンプル(1)を作製した。
【0136】
[耐光性評価]
上記画像サンプルをキセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、(照度:340nmで0.28W/m2、ブラックパネル温度:40℃、相対湿度:50%)の条件下、20時間曝露した。初期の光学濃度をODとし、20時間曝露後のO.D.をOD20としたとき、O.D.残存率を以下のように定義した。
O.D.残存率(%)=(OD20/OD)×100
【0137】
評価基準は以下のとおりである。
A:70≦O.D.残存率(%)
B:60≦O.D.残存率(%)<70
C:O.D.残存率(%)<60
得られた結果を表1に示した。O.D.残存率が60以上の場合、本発明の効果が得られているレベルと判断した。
【0138】
[インクの保存安定性評価]
実施例のインクを密栓して温度10℃で一か月間保存し、保存後の凝集物の有無を目視で確認した。確認結果を表1に示す。
なお、評価基準は、以下のとおりである。
A:化合物の凝集物がほとんど確認されない(保存安定性が非常に優れている)
B:化合物の凝集物が少し確認される(保存安定性が優れている)
C:化合物の凝集物がかなり確認される(保存安定性に劣る)
【0139】
【表1】
【0140】
表1に示すように、式(1)で表される化合物を含有する実施例のインクは、比較用インクに比べ、耐光性が高く、かつ保存安定性が優れていることが分かった。
【0141】
<カラーフィルターの製造>
以下に記載する方法で、カラーフィルター用レジスト組成物及びカラーフィルターを製造した。
【0142】
[実施例14]
製造例1で合成した化合物(A2)12部に、シクロヘキサノン120部を混合し、アトライター(三井鉱山株式会社製)を用いて1時間分散させることによって、レジスト組成物用インク(1)を得た。
続いて、下記材料の混合溶液に、上記レジスト組成物用インク(1)22部をゆっくり加え、室温で3時間攪拌した。
・n-ブチルメタクリレート40質量%、アクリル酸30質量%、ヒドロキシエチルメタクリレート30質量%のモノマー比率で合成したアクリル共重合体(重量平均分子量Mw:10,000) 6.7部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 1.3部
・2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン(光重合開始剤) 0.4部
・シクロヘキサノン 96部
これを孔径1.5μmのフィルターを用いて濾過することによって、カラーフィルター用レジスト組成物(1)を得た。
上記カラーフィルター用レジスト組成物(1)をガラス基板上にスピンコートして、温度90℃で3分間乾燥させた後に全面露光し、温度180℃でポストキュアすることによって、カラーフィルター(1)を作製した。
【0143】
[実施例15~18]
化合物(A2)を、それぞれ表2に示す化合物に変更した以外は実施例14と同様にして、カラーフィルター用レジスト組成物(2)~(5)を得た。また、得られたカラーフィルター用レジスト組成物(2)~(5)をカラーフィルター用レジスト組成物(1)の代わりにそれぞれ用いたこと以外は、実施例14と同様の操作で、カラーフィルター(2)~(5)を作製した。
【0144】
[比較例5~8]
化合物(A2)を比較化合物(B1)~(B4)にそれぞれ変更した以外は実施例14と同様にして、比較用カラーフィルター用レジスト組成物(1)~(4)を得た。また、得られた比較用カラーフィルター用レジスト組成物(1)~(4)をカラーフィルター用レジスト組成物(1)の代わりに用いたこと以外は、実施例14と同様の操作で、比較用カラーフィルター(1)~(4)を作製した。
【0145】
[耐光性評価]
上記画像サンプルをキセノン試験装置(アトラス ウエザオメータCi4000、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、(照度:340nmで0.36W/m2、ブラックパネル温度:50℃、相対湿度:50%)の条件下、70時間曝露した。初期の光学濃度をODとし、70時間曝露後のO.D.をOD70としたとき、O.D.残存率を以下のように定義した。
O.D.残存率(%)=(OD70/OD)×100
【0146】
評価基準は以下のとおりである。
A:50<O.D.残存率(%)
B:35<O.D.残存率(%)≦50
C:O.D.残存率(%)≦35
得られた結果を表2に示した。O.D.残存率が35を超える場合、本発明の効果が得られているレベルと判断した。
【0147】
[カラーフィルターの保存安定性評価]
各カラーフィルターを温度40℃/相対湿度80%にて7日間静置後、温度10℃/相対湿度30%にて一か月間保存し、位相差顕微鏡(商品名:BX53、OLYMPUS株式会社製)を用いて20倍に拡大して表面状態を観察した。観察結果を表2に示す。
なお、評価基準は、以下のとおりである。
A:化合物の凝集物がほとんど確認されない(保存安定性が非常に優れている)
B:化合物の凝集物が少し確認される(保存安定性が優れている)
C:化合物の凝集物がかなり確認される(保存安定性が劣る)
【0148】
【表2】
【0149】
<トナーの製造>
以下に記載する方法で、トナーを製造した。
【0150】
[実施例19]
・結着樹脂(ポリエステル樹脂): 100質量部
(Tg:55℃、酸価:20mgKOH/g、水酸基価:16mgKOH/g、メインピーク分子量Mp4,500、数平均分子量Mn2,300、重量平均分子量Mw38,000)
・C.I.Pigment Blue 15:3 5質量部
・化合物(A40): 0.5質量部
・1,4-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物: 0.5質量部
・パラフィンワックス(最大吸熱ピーク温度78℃): 5質量部
【0151】
上記の材料を、ヘンシェルミキサー(商品名:FM-75J型、三井鉱山株式会社製)を用いてよく混合した。その後、温度130℃に設定した2軸混練機(商品名:PCM-45型、池貝鉄工株式会社製)にて60kg/hrのFeed量で混練した。吐出時の混練物温度は約150℃であった。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗砕した後、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業株式会社製)にて20kg/hrのFeed量で微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級することによって、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に、ヘンシェルミキサーを用いてシリカ微粒子を2質量部外添し、トナー(1)を得た。得られたトナーは、重量平均粒径(D4)が約6.0μmであり、粒径4.1μm以下の粒子が31.0個数%、かつ、粒径10.1μm以上の粒子が0.7体積%であった。
【0152】
上記トナーをLBP-5300(商品名、キヤノン株式会社製)の改造機を用いてCLCカラーコピー用紙(キヤノン株式会社製)上に、載り量0.45mg/cmの定着画像を作製した。
得られた画像に対し、実施例1~10と同様の耐光性試験を実施したところ、O.D.残存率(%)は80%以上であった。
さらに上記トナー1gを10cc樹脂製カップに取り、温度40℃/相対湿度80%にて7日間静置後、温度10℃/相対湿度30%にて一か月静置した。その後の凝集物の有無を調べたところ、凝集物はほとんど観察されず保存安定性が非常に優れていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の化合物は、高耐光性、かつ保存安定性に優れる化合物となることを特徴とする。本発明の化合物は、インク、カラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録シート、及びトナーの着色剤として、好適に使用することができる。
【0154】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。