(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】調整可能な多面X線センサーアレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 23/203 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01N23/203
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019199981
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ・サファイ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017684(US,A1)
【文献】国際公開第2017/202738(WO,A1)
【文献】特表2017-532540(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105424596(CN,A)
【文献】特開2008-232765(JP,A)
【文献】特開2001-305116(JP,A)
【文献】特開平11-305116(JP,A)
【文献】特開平09-318564(JP,A)
【文献】特開2016-200578(JP,A)
【文献】特開平09-304303(JP,A)
【文献】特開2015-114276(JP,A)
【文献】特表2012-518782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01T 1/00-G01T 1/40
G01T 7/00-G01T 7/12
G01N 19/00-G01N 19/10
G01B 15/00-G01B 15/08
G01B 17/00-G01B 17/08
G01N 29/00-G01N 29/52
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検査のためのシステム(10)であって、
X線放射体(12)と、
X線センサーアレイ(26)であって、
第1のX線センサー(27)と、
前記第1のX線センサー(27)に隣接する第2のX線センサー(28)と、
前記第1のX線センサー(27)を前記第2のX線センサー(28)
に結合する
ボールカプラー(302/304)であって、前記第1のX線センサー(27)が前記
ボールカプラー(302/304)を介して前記第2のX線センサー(28)に対
する相対的な向きが調整可能である、
ボールカプラー(302/304)と
を含む、X線センサーアレイ(26)と、
前記X線センサーアレイ(26)からの情報に基づいて検査画像を生成する画像化デバイス(40)と、
を含むシステム(10)。
【請求項2】
前記X線センサーアレイ(26)が、後方散乱X線(32)を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記X線センサーアレイ(26)が、通過X線(34)を検出するように構成されている、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記第2のX線センサー(28)が、前記
ボールカプラー(302/304)を介して、第1の次元(102)に沿って前記第1のX線センサー(27)に対して調整可能であり、前記X線センサーアレイ(26)が、前記第1のX線センサー(27)と第3のX線センサー(25)とを移動可能に結合する第2の
ボールカプラー(304)を介して、前記第1の次元(102)からある角度をなした第2の次元(104)に沿って前記第1のX線センサー(27)に対して調整可能な前記第3のX線センサー(25)をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記X線センサーアレイ(26)
の位置が
空間的に3次元で調整可能
に構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記第1のX線センサー(27)または前記第2のX線センサー(28)の少なくとも一方が、超伝導転移端センサーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記
ボールカプラー(302/304)が、ターゲット構造(30)の幾何形状に
対応するように自動的に調整可能
に構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
X線検査の方法であって、
ターゲット構造(30)に対してX線放射体(12)を位置決めするステップと、
X線センサー(25、27、28)
の互いの相対的な向きをボールカプラーを介して調整可能に相互接続された複数
のX線センサー(25、27、28)を含むX線センサーアレイ(26)
を、前記ターゲット構造(30)の
表面形状に
適合するように調整するステップと、
前記X線センサーアレイ(26)において前記ターゲット構造(30)からのX線を検出するステップと、
前記X線センサーアレイ(26)からの情報に基づいて前記ターゲット構造(30)の検査画像を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記ターゲット構造(30)の形状の変化に応じて前記X線センサーアレイ(26)
の位置を
再調整するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記X線センサーアレイ(26)を成形することが、前記複数のX線センサー(25、27、28)を第1の次元(102)および第2の次元(104)で方向付けることを含む、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、X線検査に関し、より詳細には、X線を調整可能に検出するための装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象部品の破壊が望ましくない場合、非破壊試験、異物検出、非見通し試験などのいくつかの検査技術が用いられる。特定のX線検査技術は部品の貫通スキャンまたは検査を提供する。そのようなX線検査技術は、特に、国土安全保障、石油およびガスの採掘および精製、パイプライン検査、輸送、自動車、航空宇宙、海洋、採鉱、配送、貯蔵などの様々な用途で使用される。
【0003】
X線検査技術の中には、部品の片側から部品の反対側へ部品を通過するX線の検出を利用するものがある。X線後方散乱技術などの他の検査技術では、部品から反射されたX線(後方散乱X線など)が検出され、次いで部品の画像または分析の生成に使用される。X線のパターンおよび強度は部品の材料および機構に依存する。したがって、検出されたX線のパターンおよび強度を使用して画像を生成することができ、この画像は部品の品質、特性、または異常を判断するために利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願の主題は、最新技術に対応して、特に、現在利用可能な技術によってまだ完全に解決されていない、従来のX線検査装置の欠点に対応して開発された。したがって、本出願の主題は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを克服する、調整可能な多面X線センサーアレイ、ならびに関連付けられる装置、システム、および方法を提供するために開発された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるのはX線検査のためのシステムである。本システムはX線放射体を含む。本システムは、第1のX線センサーと、第1のX線センサーに隣接する第2のX線センサーと、第1のX線センサーを第2のX線センサーに移動可能に結合するカプラーとを含むX線センサーアレイも含む。第1のX線センサーは、カプラーを介して第2のX線センサーに対して複数の向きに移動可能である。本システムは、X線センサーアレイからの情報に基づいて検査画像を生成する画像化デバイスをさらに含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例1を特徴付けるものである。
【0006】
X線センサーアレイは、後方散乱X線を検出するように構成されている。この段落の前述の主題は本開示の実施例2を特徴付けるものであり、実施例2は上記の実施例1による主題も含む。
【0007】
X線センサーアレイは、通過X線を検出するように構成されている。この段落の前述の主題は本開示の実施例3を特徴付けるものであり、実施例3は上記の実施例1~2のいずれか1つによる主題も含む。
【0008】
第2のX線センサーは、カプラーを介して、第1の次元に沿って第1のX線センサーに対して調整可能である。X線センサーアレイは、第1のX線センサーと第3のX線センサーとを移動可能に結合する第2のカプラーを介して、第1の次元からある角度をなした第2の次元に沿って第1のX線センサーに対して調整可能な第3のX線センサーをさらに含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例4を特徴付けるものであり、実施例4は上記の実施例1~3のいずれか1つによる主題も含む。
【0009】
X線センサーアレイは3次元で調整可能である。この段落の前述の主題は本開示の実施例5を特徴付けるものであり、実施例5は上記の実施例4による主題も含む。
【0010】
第1のX線センサーまたは第2のX線センサーの少なくとも一方は、超伝導転移端センサーを含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例6を特徴付けるものであり、実施例6は上記の実施例1~5のいずれか1つによる主題も含む。
【0011】
第1のX線センサーおよび第2のX線センサーの少なくとも一方は、超伝導体材料を含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例7を特徴付けるものであり、実施例7は上記の実施例6による主題も含む。
【0012】
第1のX線センサーまたは第2のX線センサーの少なくとも一方は、シンチレーター層を含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例8を特徴付けるものであり、実施例8は上記の実施例1~7のいずれか1つによる主題も含む。
【0013】
X線放射体は、放射されたX線をラスターするように構成されている。この段落の前述の主題は本開示の実施例9を特徴付けるものであり、実施例9は上記の実施例1~8のいずれか1つによる主題も含む。
【0014】
カプラーは手動で調整可能である。この段落の前述の主題は本開示の実施例10を特徴付けるものであり、実施例10は上記の実施例1~9のいずれか1つによる主題も含む。
【0015】
カプラーは、ターゲット構造の幾何形状に応じて自動的に調整可能である。この段落の前述の主題は本開示の実施例11を特徴付けるものであり、実施例11は上記の実施例1~9のいずれか1つによる主題も含む。
【0016】
本明細書でさらに開示されるのはX線検査の方法である。本方法は、ターゲット構造に対してX線放射体を位置決めするステップを含む。本方法は、複数の移動可能に相互接続されたX線センサーを含むX線センサーアレイを成形して、ターゲット構造の形状に合わせるステップをさらに含む。本方法は、X線センサーアレイでターゲット構造からのX線を検出するステップをさらに含む。本方法は、X線センサーアレイからの情報に基づいてターゲット構造の検査画像を生成するステップも含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例12を特徴付けるものである。
【0017】
本方法は、ターゲット構造の形状の変化に応じてX線センサーアレイを再成形するステップをさらに含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例13を特徴付けるものであり、実施例13は上記の実施例12による主題も含む。
【0018】
本方法は、ターゲット構造の形状を検出するステップも含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例14を特徴付けるものであり、実施例14は上記の実施例12~13のいずれか1つによる主題も含む。
【0019】
本方法は、検査画像に基づいてターゲット構造の状態を識別するステップをさらに含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例15を特徴付けるものであり、実施例15は上記の実施例12~14のいずれか1つによる主題も含む。
【0020】
X線センサーアレイを成形することは、複数のX線センサーを第1の次元で方向付けることを含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例16を特徴付けるものであり、実施例16は上記の実施例12~15のいずれか1つによる主題も含む。
【0021】
X線センサーアレイを成形することは、複数のX線センサーを第1の次元および第2の次元で方向付けることを含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例17を特徴付けるものであり、実施例17は上記の実施例12~16のいずれか1つによる主題も含む。
【0022】
本明細書でさらに開示されるのはX線センサーアレイである。本X線センサーアレイは、第1のX線センサーと、第1のX線センサーに隣接する第2のX線センサーと、第1のX線センサーを第2のX線センサーに移動可能に結合するカプラーとを含む。第1のX線センサーは、カプラーを介して第2のX線センサーに対して複数の向きに移動可能である。この段落の前述の主題は本開示の実施例18を特徴付けるものである。
【0023】
X線センサーアレイは、X線がX線センサーアレイを通ってターゲット構造の方へ放射されることを可能にする開口部をさらに含む。この段落の前述の主題は本開示の実施例19を特徴付けるものであり、実施例19は上記の実施例18による主題も含む。
【0024】
第1のX線センサーおよび第2のX線センサーは、超伝導転移端センサーである。この段落の前述の主題は本開示の実施例20を特徴付けるものであり、実施例20は上記の実施例18~19のいずれか1つによる主題も含む。
【0025】
本開示の主題の記載された形態、構造、利点、および/または特性は、1つまたは複数の実施例および/または実施態様において、任意の適切な方法で組み合わされ得る。以下の説明では、本開示の主題の実施例の十分な理解が得られるように、多数の具体的詳細が与えられている。本開示の主題は、特定の実施例または実施態様の特定の形態、詳細、構成要素、材料、および/または方法のうちの1つまたは複数がなくても実施され得ることを当分野の技術者は理解するであろう。他の例では、ある特定の実施例および/または実施態様において、すべての実施例または実施態様に存在するとは限らない追加的な形態および利点が認められる場合もある。さらに、いくつかの例では、本開示の主題の態様を不明瞭にすることのないように、周知の構造、材料、または動作が詳細に図示または記載されない場合もある。本開示の主題の形態および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を読めばより完全に明らかになり、または、以下に記載される主題の実施によって知ることができよう。
【0026】
本主題の利点がより容易に理解され得るように、添付の図面に例示されている具体的な実施例を参照して、上記で簡単に説明した本主題をさらに詳細に説明する。これらの図面は本主題の典型的な実施例のみを図示しており、したがって本主題の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解した上で、図面を使用して、本主題をさらに具体的かつ詳細に記述し、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本開示の1つまたは複数の実施例による、X線検査のためのシステムの立面図である。
【
図1B】本開示の1つまたは複数の実施例による、凹形のターゲット構造のX線検査のための
図1Aのシステムの立面図である。
【
図1C】本開示の1つまたは複数の実施例による、通過X線を用いたX線検査のための
図1Aのシステムの立面図である。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実施例による、X線検出のための装置の斜視図である。
【
図3A】本開示の1つまたは複数の実施例による、ピン留めカプラーを有する
図2の装置の側面図である。
【
図3B】本開示の1つまたは複数の実施例による、ボールカプラーを有する
図2の装置の正面図である。
【
図4】本開示の1つまたは複数の実施例による、X線検査の方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書全体において、「1つの実施例(one example)」、「一実施例(an example)」または同様の言い回しは、当該実施例に関連して記載されている特定の形態、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。本明細書全体において、「1つの実施例において(in one example)」、「一実施例において(in an example)」および同様の言い回しが使用されている場合、それは、必ずしもそうではないが、すべて同じ実施例を指し得る。同様に、「実施態様(implementation)」という用語の使用も、本開示の1つまたは複数の実施例に関連して記載されている特定の形態、構造、または特性を有する実施態様を意味するが、そうではないことを指示する明らかな相関関係がない場合には、一実施態様は、1つまたは複数の実施例と関連付けられ得る。
【0029】
図1Aを参照すると、X線検査のためのシステム10が示されている。システム10は、X線放射体12と、X線センサーアレイ26(位置26aおよび26bに示されている)と、画像化デバイス40を含む。図示の例では、X線放射体12は基部22に結合されている。X線放射体12は、入射X線放射14を生成し、入射X線放射14を、検査フィルター16のフィルター開口部18に近接した検査フィルター16上に投影する。入射X線放射14の一部分(すなわち、フィルタリングされたX線放射20)がフィルター開口部18を通過する。フィルタリングされたX線放射20はターゲット構造30に衝突する。フィルター16が回転する際に、フィルタリングされたX線放射20はターゲット構造30に沿ってラスターされ得る。
【0030】
図示のように、システム10は、後方散乱配置でX線を検出するように構成され得る。この配置では、フィルタリングされたX線放射20は、X線センサーアレイ26と並行に進むかまたはX線センサーアレイ26を通過し得る。例えば、X線センサーアレイ26は、フィルタリングされたX線放射20にX線センサーアレイ26を通過させるアレイ開口部29を含み得る。フィルタリングされたX線放射20は次いで、X線センサーアレイ26の方へターゲット構造30によって少なくとも部分的に反射される(反射されたX線32)。反射されたX線32は、X線センサーアレイ26で検出される。X線センサーアレイ26は、各々が対応する向きまたは対面方向を有する複数の個別のX線センサー(例えば、第1のX線センサー27および第2のX線センサー28を含む)を有するという点で多面アレイである。第2のX線センサー28は、第1のX線センサー27に対して移動可能(例えば向き変更可能)である。X線センサーアレイ26は、第1のX線センサー27と第2のX線センサー28とを連結してX線センサーアレイ26を形成するための結合部(
図3Aおよび3Bに示される)も含む。第2のX線センサー28は、第1のX線センサー27およびX線センサーアレイ26の他のX線センサーに対して調整可能な向きを有する。この調整性により、X線センサーアレイ26を、ターゲット構造30の形状または他の特性と一致するように空間的に構成(例えば再成形)することが可能になる。例えば、
図1Aのターゲット構造30は凸形状を有する。
【0031】
X線センサーアレイ26を、平面位置26a(または凸位置)からターゲット構造30に対応する凹位置26bに空間的に構成することにより、X線センサーアレイ27は反射されたX線32を、アレイがターゲット構造30に対して相補的に成形されなかった場合よりも効率的に検出することができる。より具体的には、X線センサーアレイ26を様々な形状のいずれかに再成形して、ターゲット構造の様々な形状に合わせることができるので、システム10はより少ないエネルギーを使用し、より高い解像度およびコントラストの画像化を生成し、信号対雑音比の低減を促し、システム10のサイズ、重量、およびコストが低減され、システム10が広範な検査用途で使用されることを可能にする。いくつかの例では、X線センサーアレイ26の調整は、ツールを使用して手動で、または手で行われる。他の例では、システム10は、X線センサーアレイ26の幾何形状を変更する駆動システム(図示されない)を含み得る。いくつかの例では、駆動システムは、スキャナ、位置ベースのセンサーなどと通信して、システム10がターゲット構造30を検査することになるターゲット構造30の構造特性を決定し得る。構造特性には、ターゲット構造の構造的形状、ターゲット構造の向き、予測される腐食、層間剥離、劣化、堆積など、ターゲット構造の材料組成、X線放射体12もしくはシステム10の他の構成要素のセッティング、または別の変数が含まれ得る。いくつかの例では、システム10を用いてターゲット構造30から第1の画像が撮られ、第1の画像に基づいてX線センサーアレイ26の空間構成の調整が決定され得る。X線センサーアレイ26を調整するための他の基準も使用され得る。
【0032】
システム10は、X線センサーアレイ26からの情報に基づいて検査画像を生成する画像化デバイス40も含む。いくつかの例では、画像化デバイス40は情報を解釈して画像または他の検査結果を生成する。いくつかの例では、画像化デバイス40は、X線放射体12によるX線の生成、検査フィルター16の移動、ターゲット構造30に対する基部22の移動、X線センサーアレイ26の移動、冷却システムもしくは電源の制御、またはセンサーもしくは他のデバイスを介したシステムもしくは個々の構成要素の状態の監視を制御する信号も提供する。画像化デバイス40は、情報を搬送する接続42を含む。接続42は、有線または無線接続であり得る。図示の実施態様では、画像化デバイス40は別個の構成要素である。あるいは、画像化デバイス40は、基部22またはシステム10の別の部分と一体化されている。
【0033】
図1Bを参照すると、X線センサーアレイ26は、凹形状を有するターゲット構造30に対応する凸形の空間構成に構成され得る。
図1Cに、X線センサーアレイ26が、通過X線34を受け取るためにX線放射体12とは反対のターゲット構造30の側に位置決めされている別の例を示す。この例では、X線がターゲット構造30に到達するためにX線センサーアレイ26を通過する必要がないので、アレイ開口部29は省略され得る。
【0034】
図2に示されるように、X線センサーアレイ26は、複数のX線センサー(第1のX線センサー27、第2のX線センサー28、および第3のX線センサー25)を含む。X線センサーアレイ26内の複数のセンサーの各々は、複数のセンサーの別のものの向きに対して調整可能な向きを有し得る。例えば、第2のX線センサー28は、第1のX線センサー27の向きに対して調整可能な相対的な向きを有し得る。この調整性は、第1の次元102または第2の次元104の少なくとも一方に沿ったものであり得る。第1の次元102と第2の次元104とは互いにある角度をなしている。例えば、第1の次元102と第2の次元104とは互いに対して垂直に方向付けられ得る。第1の次元102および第2の次元104のうちの1つまたは複数が、凹形状、凸形状、または他の複合形状を形成する調整性を可能にし得る。図示の例では、第2のX線センサー28は第1の次元102に沿って第1のX線センサー27に対して調整され、第3のX線センサー25は第2の次元104に沿って第1のX線センサー27に対して調整された相対的な向きを有し得る。
【0035】
図2には9個のセンサーが示されているが、使用されるセンサーの数は2から数百または数千以上まで様々であり得る。加えて、X線センサーアレイ26のサイズおよび形状も異なり得る。さらに、個々のセンサーのサイズおよび形状も異なり得る。例えば、第1のX線センサー27および第2のX線センサーの1つまたは複数のサイズは、約100ミクロン×100ミクロンであり得る。別の例では、センサーは350ミクロン平方であり得る。
【0036】
第1のX線センサー27、第2のX線センサー28、またはX線センサーアレイ26の任意の他のセンサーのうちの少なくとも1つは微小電気機械(MEM)センサー、いくつかの例では超伝導転移端センサー(TES)である。TES技術は、eVスケール技術と同様の改善された解像度を組み込むと同時に、固体検出器と同様の改善された効率と帯域幅を提供し得る。TES技術は、化学シフトを検出し、入射エネルギーが比較的弱い状況で検出を提供するのに有用であり得る。TESセンサーの比較的広いスペクトル範囲により、複数の放射Kラインの同時サンプリングが可能になる。TES技術は、複数のセンサーのX線センサーアレイ26へのグループ化も可能にする。TESセンサーをX線センサーアレイ26の形状の構成性と組み合わせることにより、非平坦構造の画像化が容易になり、低解像度、ピンクッション型ひずみ、シャドーイング、収差などの画像化の問題が軽減される。
【0037】
加えて、第1のX線センサー27、第2のX線センサー28、またはX線センサーアレイ26の任意の他のセンサーのうちの1つまたは複数は、いくつかの例では1つまたは複数の超伝導体材料を組み込んでいる。さらに、図示の例では、各センサーは、センサー本体108に塗布されたシンチレーター層106を含む。シンチレーター層106は含まれていても省かれていてもよい。シンチレーター層106は、いくつかの例では有機または無機シンチレーター材料である。X線センサーアレイ26の各センサーは長方形として示されているが、他の形状および幾何形状が使用されてもよい。加えて、X線センサーのうちの1つまたは複数は、いくつかの例ではX線センサーアレイ26の別のものと異なる。
【0038】
次に
図3Aを参照すると、X線センサーアレイ26の第1のX線センサー27および第2のX線センサー28は、カプラー302によって連結されている。図示の例では、カプラー302はピン留めカプラーである。ピン留めカプラー302は、1つまたは複数の次元での第2のX線センサー28に対する第1のX線センサー27の相対的な向き調整を可能にし得る。例えば、カプラー302のピン留め形態は、X線センサーアレイ26によって単一の湾曲が形成されることを可能にする。別の例では、ピン留めカプラー302は、X線センサーアレイ26によって1つまたは複数の異なる領域が形成された、皿形、ドーム形、鞍形、またはより複雑な幾何形状をもたらし得る複合曲線が形成されることを可能にする。いくつかの例では、カプラー302は、個々のセンサーの追加または除去によるX線センサーアレイ26のサイズの拡大または縮小を可能にする。加えて、特定の例では異なるタイプ(例えば、異なるシンチレーター、被覆、層など)のセンサーがX線センサーアレイ26の異なる領域または位置で使用される。
【0039】
図3Bを参照すると、ボールカプラー304が示されている。ボールカプラー304は、第1のX線センサー27と第2のX線センサー28との相対的な向き調整を可能にする。ボールカプラー304は、剛性もしくは可撓性であってもよく、または剛性部分と可撓性部分の両方を含んでいてもよい。いくつかの例では、ボールカプラー304は剛性のボールソケット型運動を可能にすると同時に、1つまたは複数の追加の自由度を可能にするようにボールカプラー304の一部分が可撓性である。いくつかの例では、カプラー304(または302)は、輸送または保管のサイズを縮小するか、またはX線センサーアレイ26を保護するために、X線センサーアレイ26の折り畳みを容易にする。
【0040】
図4を参照すると、X線検査の方法400が示されている。方法400は、402で、ターゲット構造に対してX線放射体を位置決めするステップを含む。加えて、方法400は、404で、複数のX線センサーを含むX線センサーアレイを成形して、ターゲット構造の形状(例えば、構造的構成)に合わせる(例えば空間的に構成する)ステップを含む。方法400は、406で、X線センサーアレイにおいてターゲット構造からのX線を検出するステップも含む。方法400は、408で、X線センサーアレイからの情報に基づいてターゲット構造の検査画像を生成するステップをさらに含む。
【0041】
上記説明においては、「up」、「down」、「upper」、「lower」、「horizontal」、「vertical」、「left」、「right」、「over」、「under」などといった特定の用語が使用される場合がある。これらの用語は、該当する場合には、相対的関係を扱う際の何らかの記述の明確さを提供するために使用される。しかし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、および/または向きを示すためのものではない。例えば、物体に関して、「upper(上)」面は、単にその物体を裏返すことによって、「lower(下)」面になり得る。それでもやはり、それは同じ物体である。さらに、「including(含む)」、「comprising(含む)」、「having(有する)」という用語、およびこれらの用語の変形は、特に明示しない限り、「including but not limited to(~を含むがそれだけに限らない)」を意味する。項目の列挙型のリストは、特に明示しない限り、それらの項目のうちのいずれかまたは全部が相互排他的であり、かつ/または相互包括的であることを意味しない。「a」、「an」、および「the」という用語は、特に明示しない限り、「one or more(1つまたは複数)」も指す。さらに、「plurality(複数)」という用語は、「at least two(少なくとも2つ)」として定義することができる。
【0042】
加えて、ある要素が別の要素に「coupled(結合されている)」本明細書における例は、直接結合および間接結合を含むことができる。直接結合は、ある要素が別の要素に結合されており、何らかの接触状態にあることとして定義することができる。間接結合は、相互に直接接触しておらず、結合された要素間に1つまたは複数のさらなる要素を有する2つの要素間の結合として定義することができる。さらに、本明細書で使用される場合、ある要素を別の要素に固定することは、直接固定することおよび間接的に固定することを含み得る。加えて、本明細書で使用される場合、「adjacent(隣接する)」は、必ずしも接触を表すとは限らない。例えば、ある要素は、別の要素と接触せずにその別の要素と隣接することができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「at least one of(~のうちの少なくとも1つ)」という句は、項目のリストと併用される場合、リストに記載された項目のうちの1つまたは複数の異なる組み合わせが使用される場合もあり、リスト中の項目のうちの1つだけが必要とされる場合もあることを意味する。項目は、特定の物体、物事、またはカテゴリであり得る。言い換えれば、「at least one of」は、リストの中から項目の任意の組み合わせまたは任意の数の項目が使用され得るが、リスト中のすべての項目が必要とされるとは限らないことを意味する。例えば、「at least one of item A, item B, and item C(項目A、項目B、および項目Cのうちの少なくとも1つ)」は、項目A;項目Aおよび項目B;項目A、項目B、および項目C;または項目Bおよび項目Cを意味し得る。場合によっては、「at least one of item A, item B, and item C」は、例えば、2つの項目A、1つの項目B、および10の項目C;4つの項目Bおよび7つの項目C;またはある他の適切な組み合わせを意味し得るがこれに限定されない。
【0044】
特に指示しない限り、「first(第1の)」、「second(第2の)」などという用語は、本明細書においては、単にラベルとして使用され、これらの用語が指す項目に対して順序要件、位置要件、または階層要件を課すためのものではない。さらに、例えば、「second(第2の)」項目という場合、それは、例えば、「first(第1の)」もしくは下位の番号の項目、および/または、例えば、「third(第3の)」もしくは上位の番号の項目の存在を必要とするものでも排除するものでもない。
【0045】
本明細書で使用される場合、指定の機能を果たす「configured to(ように構成された)」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、単にさらなる改変後に指定の機能を果たす可能性を有するのではなく、いかなる変更もなしで指定の機能を実際に果たすことができる。言い換えると、指定の機能を果たす「ように構成された」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、指定の機能を果たすために特に選択、作成、実施、利用、プログラム、および/または設計される。本明細書で使用される場合、「configured to(ように構成された)」とは、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアがさらなる改変なしで指定の機能を果たすことを可能にするシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアの既存の特性を表す。本開示では、特定の機能を果たす「ように構成された」と記載されるシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、加えてまたは代替として、当該機能を果たす「adapted to(ように適合された)」および/または「operative to(ように動作する)」とも記載され得る。
【0046】
条項1:X線検査のためのシステムであって、
X線放射体と、
X線センサーアレイであって、
第1のX線センサーと、
第1のX線センサーに隣接する第2のX線センサーと、
第1のX線センサーを第2のX線センサーに移動可能に結合するカプラーであって、第1のX線センサーがカプラーを介して第2のX線センサーに対して複数の向きに移動可能である、カプラーと、
を含むX線センサーアレイと、
X線センサーアレイからの情報に基づいて検査画像を生成する画像化デバイスと、
を含むシステム。
【0047】
条項2:X線センサーアレイが、後方散乱X線を検出するように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0048】
条項3:X線センサーアレイが、通過X線を検出するように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0049】
条項4:第2のX線センサーが、カプラーを介して、第1の次元に沿って第1のX線センサーに対して調整可能であり、X線センサーアレイが、第1のX線センサーと第3のX線センサーとを移動可能に結合する第2のカプラーを介して、第1の次元からある角度をなした第2の次元に沿って第1のX線センサーに対して調整可能な第3のX線センサーをさらに含む、条項1に記載のシステム。
【0050】
条項5:X線センサーアレイが3次元で調整可能である、条項4に記載のシステム。
【0051】
条項6:第1のX線センサーまたは第2のX線センサーの少なくとも一方が、超伝導転移端センサーを含む、条項1に記載のシステム。
【0052】
条項7:第1のX線センサーおよび第2のX線センサーの少なくとも一方が、超伝導体材料を含む、条項6に記載のシステム。
【0053】
条項8:第1のX線センサーまたは第2のX線センサーの少なくとも一方が、シンチレーター層を含む、条項1に記載のシステム。
【0054】
条項9:X線放射体が、放射されたX線をラスターするように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0055】
条項10:カプラーが手動で調整可能である、条項1に記載のシステム。
【0056】
条項11:カプラーが、ターゲット構造の幾何形状に応じて自動的に調整可能である、条項1に記載のシステム。
【0057】
条項12:X線検査の方法であって、
ターゲット構造に対してX線放射体を位置決めするステップと、
複数の移動可能に相互接続されたX線センサーを含むX線センサーアレイを成形して、ターゲット構造の形状に合わせるステップと、
X線センサーアレイでターゲット構造からのX線を検出するステップと、
X線センサーアレイからの情報に基づいてターゲット構造の検査画像を生成するステップと、
を含む方法。
【0058】
条項13:ターゲット構造の形状の変化に応じてX線センサーアレイを再成形するステップをさらに含む、条項8に記載の方法。
【0059】
条項14:ターゲット構造の形状を検出するステップをさらに含む、条項8に記載の方法。
【0060】
条項15:検査画像に基づいてターゲット構造の状態を識別するステップをさらに含む、条項8に記載の方法。
【0061】
条項16:X線センサーアレイを成形することが、複数のX線センサーを第1の次元で方向付けることを含む、条項8に記載の方法。
【0062】
条項17:X線センサーアレイを成形することが、複数のX線センサーを第1の次元および第2の次元で方向付けることを含む、条項8に記載の方法。
【0063】
条項18:X線センサーアレイであって、
第1のX線センサーと、
第1のX線センサーに隣接する第2のX線センサーと、
第1のX線センサーを第2のX線センサーに移動可能に結合するカプラーであって、第1のX線センサーがカプラーを介して第2のX線センサーに対して複数の向きに移動可能である、カプラーと、
を含むX線センサーアレイ。
【0064】
条項19:X線がX線センサーアレイを通ってターゲット構造の方へ放射されることを可能にする開口部をさらに含む、条項18に記載のX線センサーアレイ。
【0065】
条項20:第1のX線センサーおよび第2のX線センサーが、超伝導転移端センサーである、条項18に記載のX線センサーアレイ。
【0066】
本開示の主題は、本開示の趣旨または基本特性を逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。記載の実施例は、あらゆる点において、限定ではなく例示としてのみ考慮されるべきである。特許請求の範囲と均等な意味および範囲内であるあらゆる変更は、特許請求の範囲内に包含されるべきものである。
【符号の説明】
【0067】
10 システム
12 X線放射体
14 入射X線放射
16 検査フィルター
18 フィルター開口部
20 フィルタリングされたX線放射
22 基部
25 第3のX線センサー
26 X線センサーアレイ
26a 平面位置
26b 凹位置
27 第1のX線センサー
28 第2のX線センサー
29 アレイ開口部
30 ターゲット構造
32 反射されたX線
34 通過X線
40 画像化デバイス
42 接続
102 第1の次元
104 第2の次元
106 シンチレーター層
108 センサー本体
302 ピン留めカプラー
304 ボールカプラー