(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】半導体装置および機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240430BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240430BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240430BHJP
H04N 25/705 20230101ALI20240430BHJP
H04N 25/706 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L21/02 B
H01L27/146 D
H04N25/70
H04N25/705
H04N25/706
(21)【出願番号】P 2019221442
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】荻野 拓海
(72)【発明者】
【氏名】廣田 克範
(72)【発明者】
【氏名】小林 広明
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004007(JP,A)
【文献】特開2019-140237(JP,A)
【文献】特開2014-123771(JP,A)
【文献】特開2012-216776(JP,A)
【文献】特開2008-166647(JP,A)
【文献】特開2015-216172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0252443(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248544(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 21/02
H04N 25/70
H04N 25/705
H04N 25/706
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、
前記第1半導体層に重なる第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に配された配線構造と、
を備える半導体装置であって、
前記第2半導体層にはP型MISトランジスタが設けられており、
前記第1半導体層の主面に沿った方向において、前記第1半導体層の結晶構造は第1結晶方位および第2結晶方位を有し、前記第1結晶方位に沿った方向における前記第1半導体層のヤング率が、前記第2結晶方位に沿った方向における前記第1半導体層のヤング率よりも高く、
前記第1結晶方位と、前記P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さく、
前記第2結晶方位と、前記P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、0度以上かつ30度以下である、ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体層の主面に沿った方向において、前記第2半導体層の結晶構造は第3結晶方位および第4結晶方位を有し、前記第3結晶方位に沿った方向における前記第2半導体層のヤング率が、前記第4結晶方位に沿った方向における前記第2半導体層のヤング率よりも高く、
前記第1結晶方位と、前記第3結晶方位と、が成す角度は、0度以上かつ30度以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層の結晶構造は、第1劈開方位と、前記第1劈開方位に交差する第2劈開方位とを有し、前記第1劈開方位と前記第2劈開方位とが成す角度は、60度以上かつ90度以下である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2半導体層の主成分はシリコンであり、
前記第2半導体層の表面にはコバルトシリサイド領域および/またはニッケルシリサイド領域が設けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2半導体層の主成分はシリコンであり、
前記第2半導体層はゲルマニウムおよび/またはインジウムを含有する領域を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2半導体層にはN型MISトランジスタが設けられており、
前記P型MISトランジスタのチャネル幅は、前記N型MISトランジスタのチャネル幅よりも大きい、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体層には第1P型MISトランジスタおよび第2P型MISトランジスタが設けられており、
前記第1P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、前記第2P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、60度以上かつ90度以下であり、
前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、前記第1P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さく、
前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、前記第2P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記配線構造は、前記第1半導体層と前記第2半導体層の間の第1配線構造と、前記第1配線構造と前記第2半導体層との間の第2配線構造と、を含み、
前記第1配線構造は、絶縁体部材と、前記第1配線構造の前記絶縁体部材に設けられた凹部の中に配された金属パッドと、を含み、
前記第2配線構造は、絶縁体部材と、前記第2配線構造の前記絶縁体部材に設けられた凹部の中に配された金属パッドと、を含み、
前記第1配線構造の前記絶縁体部材と前記第2配線構造の絶縁体部材とが共有結合し、前記第1配線構造の前記金属パッドと前記第2配線構造の前記金属パッドとが金属結合している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1半導体層の結晶構造は、第1劈開方位と、前記第1劈開方位に交差する第2劈開方位とを有し、
前記配線構造は、
前記第1配線構造の第1金属パッドと前記第2配線構造の第1金属パッドとが接合した第1接合部と、
前記第1配線構造の第2金属パッドと前記第2配線構造の第2金属パッドとが接合した第2接合部と、
前記第1配線構造の第3金属パッドと前記第2配線構造の第3金属パッドとが接合した第3接合部と、
前記第1配線構造の第
4金属パッドと前記第2配線構造の第
4金属パッドとが接合した第4接合部と、
を含み、
前記第1接合部と前記第2接合部は前記第1劈開方位に沿って並び、
前記第3接合部と前記第4接合部は前記第2劈開方位に沿って並び、
前記第3接合部と前記第4接合部とを結ぶ直線が、前記第1接合部と前記第2
接合部との間を通る、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1半導体層にはN型MISトランジスタが設けられており、
前記第1半導体層にはP型MISトランジスタが設けられていない、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1半導体層にはN型MISトランジスタである第1トランジスタが設けられており、
前記第1トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1半導体層にはN型MISトランジスタである第2トランジスタが設けられており、
前記第2トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さく、
前記第1トランジスタのソースとドレインが並ぶ前記方向と、前記第2トランジスタのソースとドレインが並ぶ前記方向と、が成す角度は、60度以上かつ90度以下である、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1半導体層にはN型MISトランジスタである第3トランジスタが設けられており、
前記第3トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、が成す角度は、60度以上かつ90度以下である、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1半導体層の素子領域は、単位パターンが周期的に繰り返されたパターンを有する絶縁体からなる素子分離部によって画定されており、前記単位パターンにおける前記素子分離部の輪郭の75%以上の部分が前記第1半導体層の前記第1結晶方位に対して成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1半導体層の前記第1結晶方位と、前記第1半導体層の4辺とが成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1半導体層の少なくとも1辺の長さは10mm以上である、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第2半導体層の厚さは700μm以上かつ800μm以下である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第1半導体層は化合物半導体層である、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記化合物半導体層はInGaAs領域およびInP領域を含む、請求
項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1結晶方位は<110>方位であり、前記第2結晶方位は<100>方位である、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に対応する光学装置、
前記半導体装置を制御する制御装置、
前記半導体装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記半導体装置から得られた情報を表示する表示装置、
前記半導体装置から得られた情報を記憶する記憶装置、および
前記半導体装置から得られた情報に基づいて動作する機械装置、
の6つのうちの少なくともいずれかと、を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
別々の機能を有する複数の半導体層を重ね合わせた半導体装置がある。特許文献1には、複数の光電変換部が二次元状に設けられた第1半導体層と、複数の光電変換部から出力された信号を処理する信号処理回路が設けられた第2半導体層とを有する光電変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、半導体層にPMOSトランジスタを設けることが開示されている。本発明者が検討したところ、特許文献1の技術では、PMOSトランジスタの特性が良好でない場合があり、半導体装置の性能に改善の余地があることを見出した。そこで本発明は良好な性能を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層に重なる第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に配された配線構造と、
を備える半導体装置であって、
前記第2半導体層にはP型MISトランジスタが設けられており、
前記第1半導体層の主面に沿った方向において、前記第1半導体層の結晶構造は第1結晶方位および第2結晶方位を有し、前記第1結晶方位に沿った方向における前記第1半導体層のヤング率が、前記第2結晶方位に沿った方向における前記第1半導体層のヤング率よりも高く、
前記第1結晶方位と、前記P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さく、
前記第2結晶方位と、前記P型MISトランジスタのソースとドレインとが並ぶ方向と、が成す角度は、0度以上かつ30度以下である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、良好な性能を有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0009】
<第1実施形態>
図1(a)は、半導体装置APRを示している。半導体装置APRの全部または一部が、チップ1とチップ2の積層体である半導体デバイスICである。本例の半導体装置APRは、例えば、イメージセンサーやAF(Auto Focus)センサー、測光センサー、測距センサーとして用いることができる光電変換装置である。半導体装置APRにおいて、複数の電気回路10が行列状に配されたチップ1と、複数の電気回路20が配されたチップ2と、が積層されている。
【0010】
チップ1は、複数の電気回路10を構成する複数の半導体素子(不図示)が設けられた半導体層11と、複数の電気回路10を構成するM層の配線層(不図示)を含む配線構造12と、を含む。チップ2は、複数の電気回路20を構成する複数の半導体素子(不図示)が設けられた半導体層21と、複数の電気回路20を構成するN層の配線層(不図示)を含む配線構造22と、を含む。
【0011】
半導体層21は半導体層11に重なる。配線構造12および配線構造22が半導体層11と半導体層21との間に配されている。
【0012】
配線構造12が半導体層11と半導体層21との間に配されている。配線構造22が配線構造12と半導体層21との間に配されている。
【0013】
詳細は後述するが、電気回路10は光電変換素子を含み、典型的には増幅素子を更に含む画素回路でありうる。電気回路20は、電気回路10を駆動したり、電気回路10からの信号を処理したりする電気回路である。
【0014】
本実施形態が適用可能な半導体装置APRは、光電変換装置に限らない。例えば、チップ1およびチップ2の一方が演算回路を有し、チップ1およびチップ2の他方が記憶回路を有するような半導体装置APRに適用してもよい。半導体装置APRは、チップ1およびチップ2の一方が、チップ1およびチップ2の他方を制御するための制御回路を備えた半導体装置APRであってもよい。半導体装置APRは、チップ1およびチップ2の一方が、チップ1およびチップ2の他方から出力された信号を処理するための処理回路を備えた半導体装置APRであってもよい。
【0015】
図1(b)は、半導体装置APRを備える機器EQPを示している。半導体デバイスICは電気回路10を含む画素PXCが行列状に配列された画素エリアPXを有する。画素PXCは電気回路10に含まれる光電変換素子に加えてマイクロレンズやカラーフィルタを含むことができる。半導体デバイスICは画素エリアPXの周囲に周辺エリアPRを有することができる。周辺エリアPRには電気回路10以外の回路を配置することができる。半導体装置APRは半導体デバイスICに加えて、半導体デバイスICを格納するパッケージPKGを含むことができる。機器EQPは、光学系OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYおよび機械装置MCHNの少なくともいずれかを更に備え得る。機器EQPの詳細は後述する。
【0016】
図2は半導体装置APRの断面図である。半導体層11は2つの主面の一方である表面115と、表面115の反対側の主面である裏面116と、側面と、を有する。半導体層21は2つの主面の一方である表面215と、表面215の反対側の主面である裏面216と、側面と、を有する。半導体層11の厚さは表面115と裏面116との間の距離であり、半導体層21の厚さは表面215と裏面216との間の距離である。半導体層11の厚さは半導体層21の厚さの厚さよりも小さい。半導体層11の厚さは、例えば1~10μmであり、例えば、2~5μmである。半導体層21の厚さは、例えば10~1000μmであり、例えば50~500μmあるいは700~800μmである。半導体層21を200~300mmウエハを用いて形成する場合、ウエハを極端に薄くする加工をすると、半導体層11や半導体層21にダメージが生じうる。そのため、半導体層21の厚さは700μm以上かつ800μm以上であることが好ましい。表面115の上にはN型MISトランジスタのゲート電極111が設けられている。本例では半導体層11にはP型MISトランジスタが設けられていないが、表面115の上にはP型MISトランジスタのゲート電極が設けられていてもよい。表面215の上にはP型MISトランジスタのゲート電極212が設けられている。本例では表面215の上にはN型MISトランジスタのゲート電極211が設けられているが、半導体層21にはN型MISトランジスタが設けられていなくてもよい。本実施形態では、とりわけ、P型MISトランジスタに注目すべきである。なお、MISトランジスタのゲート電極は典型的には酸化物であるため、MISトランジスタをMOSトランジスタと称してもよい。N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタを用いた回路を慣用的にCMOS回路と称するが、CMOS回路においても用いられるMISトランジスタのゲート絶縁膜は酸化物に限定されずに、窒化物や炭化物であってもよい。
【0017】
半導体層11と配線構造12との間にはゲート電極111を覆う絶縁膜110が設けられている。半導体層21と配線構造22との間にはゲート電極211、212を覆う絶縁膜210が設けられている。
【0018】
配線構造12は複数レベルの配線層121、122、123と、配線層123の上の電極パッド31と、配線層121、122、123および電極パッド31の周りの絶縁体部材120と、を含む。電極パッド31は、絶縁体部材120に設けられた凹部(トレンチ)の中に配されている。つまり、電極パッド31はダマシン構造を有する。本例では電極パッド31はデュアルダマシン構造を有するが、シングルダマシン構造を有していてもよい。配線層121、122、123および電極パッド31の主成分は銅である。
【0019】
配線構造22は複数レベルの配線層221、222、223、224と、配線層224の上の電極パッド32と、配線層221、222、223、224および電極パッド32の周りの絶縁体部材220と、を含む。電極パッド32は、絶縁体部材220に設けられた凹部(トレンチ)の中に配されている。つまり、電極パッド32はダマシン構造を有する。本例では電極パッド32はデュアルダマシン構造を有するが、シングルダマシン構造を有していてもよい。配線層221、222、223および電極パッド32の主成分は銅である。配線層224の主成分はアルミニウムである。
【0020】
配線構造30は、配線構造12と配線構造22が接合面33で接合した構造を有する。接合面33では、配線構造12の絶縁体部材120と配線構造22の絶縁体部材220とが共有結合している。また、接合面33では、配線構造12の金属パッド31と配線構造22の金属パッド32とが金属結合している。このように、接合面33に絶縁体同士の結合(共有結合)と、導電体同士の結合(金属結合)が共存する接合を、ハイブリッド接合と称する。なお、配線構造12と配線構造22の接合の形態はハイブリッド接合に限らず、接合面を絶縁体部材のみで構成して、絶縁体部材同士の結合(共有結合)によってなしてもよい。あるいは、配線構造12と配線構造22とを接着剤で接合してもよい。あるいは、配線構造12、22の絶縁体部材同士は直接接合せずに、金属パッド31と金属パッド32との間に設けられたバンプによって接合してもよい。バンプを用いる場合には、配線構造12の絶縁体部材と配線構造22の絶縁体部材との間に樹脂からなるアンダーフィル材を設けてもよい。上述したハイブリッド接合やバンプを用いた接合では、チップ1とチップ2との間の電気的な接続は金属パッド31と金属パッド32とでなされ得る。接合面を絶縁体部材のみで構成する場合には、配線構造12の配線層と配線構造22の配線層とを、半導体層11または半導体層21を貫通する貫通電極(TSV)によって接続することができる。
【0021】
半導体層11の裏面116の上には必要に応じて光学構造40が設けられる。光学構造40は、マイクロレンズアレイ、カラーフィルタアレイ、層内レンズアレイ、遮光壁や遮光膜などの遮光体、誘電体膜を含みうる。カラーフィルタアレイはマイクロレンズアレイと半導体層11との間に配されうる。カラーフィルタアレイはマイクロレンズアレイと半導体層11との間に配されうる。層内レンズアレイはカラーフィルタアレイと半導体層11との間に配されうる。光学構造40の遮光壁は層内レンズアレイの層内レンズ間に設けられうる。光学構造40の遮光膜は受光領域の周囲を遮光するために設けられうる。光学構造40の誘電体膜は、反射防止層や電荷固定層を含む複層膜であり、金属酸化物層やシリコン化合物層を含みうる。
【0022】
以下、半導体層11がシリコン層である場合について、シリコンの結晶構造と半導体層11との関係を
図2、
図3を用いて、説明する。
図2には半導体層11の結晶構造における結晶方位HKa、HKbおよび結晶方位LKa、LKbを示している。結晶方位HKa、HKbおよび結晶方位LKa、LKbは、半導体層11の主面(表面115および裏面116)に平行であるがこれに限らない。本例では、半導体層11の主面(表面115および裏面116)は、ミラー指数の面指数における(100)面に平行である。単結晶構造を有する半導体層11にはヤング率の異方性がある。ヤング率は結晶の原子間距離の変化に対する抵抗と考えることができ、原子間距離は結晶方位に依存するからである。結晶方位HKa、HKbに沿った方向における半導体層11のヤング率は、結晶方位LKa、LKbに沿った方向における半導体層11のヤング率よりも高い。つまり、結晶方位HKa、HKbに沿った方向よりも結晶方位LKa、LKbに沿った方向において、半導体層11は変形しやすい。
【0023】
図3には、半導体層11を表面115および裏面116に垂直な方向から視た場合の、結晶方位HKa、HKbおよび結晶方位LKa、LKbを示している。結晶方位HKaと結晶方位HKbとが成す角度は60度以上かつ90度以下である。結晶方位LKaと結晶方位LKbとが成す角度は60度以上かつ90度以下である。結晶方位HKa、HKbと結晶方位LKa、LKbとが成す角度は30度より小さく60度より小さい。シリコン層である半導体層11において、結晶方位HKa、HKbは、例えばミラー指数の方位指数における<110>方位である。シリコン層である半導体層11には<110>方位が少なくとも2つ(例えば6つ)あり、2つの<110>方位の一方が結晶方位HKaであり、2つの<110>方位の他方が結晶方位HKbである。2つの<110>方位は互いに直交する。すなわち、それぞれが<110>方位でありうる結晶方位HKaと結晶方位HKbとが成す角度は90度である。
【0024】
シリコン層である半導体層11には<100>方位が少なくとも2つ(例えば6つ)あり、2つの<100>方位の一方が結晶方位LKaであり、2つの<110>方位の他方が結晶方位LKbである。2つの<100>方位は互いに直交する。すなわち、結晶方位LKaと結晶方位LKbとが成す角度は90度である。それぞれが結晶方位LKa、LKbでありうる2つの<100>方位の各々と、それぞれが結晶方位HKa、HKbでありうる2つの<110>方位の各々とが成す角度は45度である。
【0025】
シリコン層である半導体層11において、<100>方位に平行な方向におけるヤング率は約130GPa(125~135GPa)である。シリコン層である半導体層11において、<110>方位に平行な方向におけるヤング率は約170GPa(165~175GPa)である。<100>方位と<110>方位との間の方向におけるヤング率は、<110>方位に平行な方向におけるヤング率と<110>方位に平行な方向におけるヤング率との間の値(130~170GPa)である。すなわち、半導体層11の主面(表面115および裏面116)に沿った方向において、半導体層11のヤング率は結晶方位HKa、HKbに平行な方向において相対的に高くなりうる。また、半導体層11の主面(表面115および裏面116)に沿った方向において、半導体層11のヤング率は結晶方位LKa、LKbに平行な方向において相対的に低くなりうる。シリコン層である半導体層11には<111>方位が少なくとも2つ(例えば6つ)あり、<111>方位に平行な方向におけるヤング率は約185GPa(180~190GPa)である。
【0026】
シリコン層である半導体層11において、劈開が生じる方位(劈開方位)は<110>方位である。劈開方位において劈開が生じる場合、劈開によって形成される劈開面は、ミラー指数の面指数における(110)面である。劈開面は劈開方位に垂直である。劈開面は(100)面に垂直になり、半導体層11の主面に垂直になりうる。上述の説明から理解されるように、結晶方位HKa、HKbは、例えば<110>方位であるので、劈開方位でありうる。より詳細に説明すると、劈開方位である結晶方位HKaに沿って劈開することによって生じる劈開面は、劈開方位である結晶方位HKbに垂直になる。劈開方位である結晶方位HKbに沿って劈開することによって生じる劈開面は、劈開方位である結晶方位HKaに垂直になる。
【0027】
図3には、半導体層21を表面215および裏面216に垂直な方向から視た場合の、結晶方位HKc、HKdおよび結晶方位LKc、LKdを示している。結晶方位HKcと結晶方位HKdとが成す角度は60度以上かつ90度以下である。結晶方位LKcと結晶方位LKdとが成す角度は60度以上かつ90度以下である。結晶方位HKc、HKdと結晶方位LKc、LKdとが成す角度は30度より小さく60度より小さい。シリコン層である半導体層21において、結晶方位HKc、HKdは、例えばミラー指数の方位指数における<110>方位である。シリコン層である半導体層21には<110>方位が少なくとも2つ(6つ)あり、2つの<110>方位の一方が結晶方位HKcであり、2つの<110>方位の他方が結晶方位HKdである。2つの<110>方位は互いに直交する。すなわち、それぞれが<110>方位である結晶方位HKcと結晶方位HKdとが成す角度は90度である。
【0028】
シリコン層である半導体層21には<100>方位が少なくとも2つ(例えば6つ)あり、2つの<100>方位の一方が結晶方位LKcであり、2つの<110>方位の他方が結晶方位LKdである。2つの<100>方位は互いに直交する。すなわち、結晶方位LKcと結晶方位LKdとが成す角度は90度である。それぞれが結晶方位HKc、HKdでありうる2つの<100>方位の各々と、それぞれが結晶方位HKc、HKdでありうる2つの<110>方位の各々とが成す角度は45度である。
【0029】
シリコン層である半導体層21において、<100>方位に平行な方向におけるヤング率は約130GPa(125~135GPa)である。シリコン層である半導体層11において、<110>方位に平行な方向におけるヤング率は約170GPa(165~175GPa)である。<100>方位と<110>方位との間の方向におけるヤング率は、<110>方位に平行な方向におけるヤング率と<110>方位に平行な方向におけるヤング率との間の値(130~170GPa)である。すなわち、半導体層21の主面(表面215および裏面216)に沿った方向において、半導体層21のヤング率は結晶方位HKc、HKdに平行な方向において相対的に高くなりうる。また、半導体層21の主面(表面215および裏面216)に沿った方向において、半導体層21のヤング率は結晶方位LKc、LKdに平行な方向において相対的に低くなりうる。なお、シリコン層である半導体層11には<111>方位が少なくとも2つ(例えば6つ)あり、<111>方位に平行な方向におけるヤング率は約185GPa(180~190GPa)である。
【0030】
シリコン層である半導体層21において、劈開が生じる方位(劈開方位)は<110>方位である。劈開方位において劈開が生じる場合、劈開によって形成される劈開面は、ミラー指数の面指数における(110)面である。劈開面は劈開方位に垂直である。劈開面は(100)面に垂直になり、半導体層21の主面に垂直になりうる。上述の説明から理解されるように、結晶方位HKc、HKdは、例えば<110>方位であるので、劈開方位でありうる。より詳細に説明すると、劈開方位である結晶方位HKcに沿って劈開することによって生じる劈開面は、劈開方位である結晶方位HKdに垂直になる。劈開方位である結晶方位HKdに沿って劈開することによって生じる劈開面は、劈開方位である結晶方位HKcに垂直になる。
【0031】
なお、ヤング率が相対的に高くになる方位と相対的に低く結晶方位は、シリコン層に限らず、種々の結晶構造に対して定義される。劈開方位についても、シリコン層に限らず、種々の結晶構造に対して定義される。結晶構造が、その主面に沿って複数の劈開方位を有する場合、複数の劈開方位が成す角度は、60度以上かつ90度以下でありうる。結晶構造が、その主面に沿って2つのみの劈開方位を有する場合、複数の劈開方位が成す角度は、90度でありうる。結晶構造が、その主面に沿って3つのみの劈開方位を有する場合、複数の劈開方位が成す角度は、60度でありうる。
【0032】
図3には、半導体層11を表面115および裏面116に垂直な方向から視た場合の、半導体層11の輪郭の形状、セルである電気回路10の配置方向を示している。半導体層11の輪郭は、略四辺形である。この半導体層11の輪郭の四辺は右辺SRa,左辺LSa、上辺TSa、下辺BSaを含む。左辺LSaは右辺SRaに略平行であり、右辺SRaおよび左辺LSaは方向LRに沿って伸びる。上辺TSaは下辺BSaに略平行であり、上辺TSaおよび下辺BSaは方向TBに沿って伸びる。複数のセル(電気回路10)が行列状に構成されたセルアレイは、行方向RWに沿って並ぶ2つ以上のセル(電気回路10)で構成されたセル行と、列方向CLに沿って並ぶ2つ以上のセル(電気回路10)で構成されたセル列と、を含む。複数のセル行が列方向CLに並び、複数のセル列が行方向RWに並ぶ。
【0033】
図3には、半導体層21を表面215および裏面216に垂直な方向から視た場合の、半導体層21の輪郭の形状を示している。半導体層21の輪郭は、略四辺形である。この半導体層21の輪郭の四辺は右辺SRb,左辺LSb、上辺TSb、下辺BSbを含む。左辺LSbは右辺SRbに略平行であり、右辺SRbおよび左辺LSbは方向LRに沿って伸びる。上辺TSbは下辺BSbに略平行であり、上辺TSbおよび下辺BSbは方向TBに沿って伸びる。
【0034】
本例では、半導体層11の輪郭と半導体層21の輪郭はほぼ合同である。上辺TSaの長さは上辺TSbの長さと略等しく、下辺BSaの長さは下辺BSbの長さと略等しく、左辺LSaの長さは左辺LSbの長さと略等しく、右辺SRaの長さは右辺SRbの長さと略等しい。ここで、略等しいとは、互いに対応する2つの辺の一方の辺の長さが他方の辺の長さの90%以上かつ110%以下であることを意味する。
【0035】
半導体層11の少なくとも1辺の長さが長いほど、半導体層11の応力が半導体層21へ与える影響は大きくなる。そのため、本実施形態は、半導体層11の少なくとも1辺の長さは10mm以上である場合に好適である。対角が約1インチであるフォーマットのイメージセンサーの撮像エリアは、13±1mm×9±1mmであるため、半導体層11の少なくとも1辺の長さは10mm以上である必要がある。本実施形態は、半導体層11の少なくとも1辺の長さが20mm以上である場合により好適である。APS-Cフォーマットのイメージセンサーの撮像エリアは、23±1mm×15±1mmであるため、半導体層11の少なくとも1辺の長さは20mm以上である必要がある。本実施形態は、半導体層11の少なくとも1辺の長さが30mm以上である場合により好適である。35mmフォーマットのイメージセンサーの撮像エリアは、36±1mm×24±1mmであるため、半導体層11の少なくとも1辺の長さは20mm以上である必要がある。
図3には、半導体層21を表面215および裏面216に垂直な方向から視た場合の、半導体層21に設けられたP型MISトランジスタPMa、PMbのレイアウトを記載している。
【0036】
P型MISトランジスタPMaは、ソースSaおよびドレインDaを有する。P型MISトランジスタPMaは、ソースSaとドレインDaとの間のチャネルCaを有する。チャネルCaの上にはP型MISトランジスタPMaのゲート電極Gaの少なくとも一部が位置する。P型MISトランジスタPMaのソースとドレインとが方向SDaにおいて並ぶ。
【0037】
P型MISトランジスタPMbは、ソースSbおよびドレインDbを有する。P型MISトランジスタPMbは、ソースSbとドレインDbとの間のチャネルCbを有する。チャネルCbの上にはP型MISトランジスタPMbのゲート電極Gbの少なくとも一部が位置する。P型MISトランジスタPMaのソースとドレインとが方向SDbにおいて並ぶ。
【0038】
ここで、方向SDaと方向SDbは互いに交差する。つまり、方向SDaと方向SDbの成す角度は0度よりも大きい。ソースSaとドレインDaとが並ぶ方向SDaと、ソースSbとドレインDbとが並ぶ方向SDbと、が成す角度は、60度以上かつ90度以下でありうる。方向SDaと方向SDbとが成す角度は、80度以上かつ90度以下であり、本例では90度である。なお、半導体層21には、型MISトランジスタPMa、PMbの両方が設けられてもよいし、一方のみが設けられてもよい。
【0039】
図3には、各方向が成す角度をα、βまたはγで示している。角度αとは、0度以上かつ30度以下の範囲の任意の角度であり、好ましくは、0度以上かつ10度以下の範囲の任意の角度であり、典型的には0度である。角度βとは、60度以上かつ90度以下の範囲の任意の角度であり、好ましくは、80度以上かつ90度以下の範囲の任意の角度であり、典型的には90度である。角度γとは、30度より大きく60度より小さい範囲の任意の角度であり、好ましくは、40度以上かつ50度以下の範囲の任意の角度であり、典型的には45度である。
【0040】
ここで、2つの方向が成す角度が0度でも90度でもない場合には、鋭角を成す角度と鈍角を成す角度がありうるが、本明細書では常に鋭角の方に注目するものとする。すなわち、2つの方向が成す角度は、0度以上90度以下の範囲で定義される。
【0041】
半導体層11の結晶構造の結晶方位HKaと、P型MISトランジスタPMaのソースSaとドレインDbとが並ぶ方向SDaと、が成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。同様に、半導体層11の結晶構造の結晶方位HKbと、P型MISトランジスタPMaのソースSaとドレインDbとが並ぶ方向SDaと、が成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。半導体層11の結晶構造の結晶方位HKa、HKbと、P型MISトランジスタPMbのソースSbとドレインDbとが並ぶ方向SDbと、が成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。
【0042】
半導体層11の結晶構造の結晶方位LKaと、P型MISトランジスタPMaのソースSaとドレインDbとが並ぶ方向SDaと、が成す角度は、
図3に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。同様に、半導体層11の結晶構造の結晶方位LKbと、P型MISトランジスタPMaのソースSaとドレインDbとが並ぶ方向SDaと、が成す角度は、
図3に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。半導体層11の結晶構造の結晶方位LKa、LKbと、P型MISトランジスタPMbのソースSbとドレインDbとが並ぶ方向SDbと、が成す角度は、
図3に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。
【0043】
本実施形態では、半導体層11に生じる応力が、半導体層21に応力を与えることに注目している。半導体層11においてヤング率が高い方向ほど、半導体層11に生じる応力が大きくなる。半導体層11に起因して半導体層21に与えられる応力は、半導体層11においてヤング率が高い方向に平行な方向において、他の方向よりも大きくなる。半導体層21において生じる応力は、P型MISトランジスタPMa、PMbのチャネルの結晶構造に歪みを生じさせる。P型MISトランジスタPMa、PMbのチャネルCa,Cbの結晶構造の歪みがP型MISトランジスタPMa、PMbの特性を変化させる。そこで、半導体層11においてヤング率が高い方向HKa、HKbを、半導体層21においてソースSa、SbとドレインDa、Dbが並ぶ方向と非平行かつ非垂直(角度γ)にしている。また、半導体層11においてヤング率が低い方向LKa、LKbを、半導体層21においてソースSa、SbとドレインDa、Dbが並ぶ方向と略平行(角度α)または略垂直(角度β)にしている。これにより、半導体層11に応力が生じても、P型MISトランジスタPMa、PMbの特性を変化させにくくする。
【0044】
半導体層11の結晶方位HKaと、半導体層21の結晶方位HKcとが成す角度は、
図3に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。半導体層11の結晶方位HKbと、半導体層21の結晶方位HKdとが成す角度は、
図3に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。半導体層11の結晶方位HKaと、半導体層21の結晶方位HKdとが成す角度は、
図3に「β」で記載されているように、60度以上かつ90度以下である。半導体層11の結晶方位HKbと、半導体層21の結晶方位HKcとが成す角度は、
図3に「β」で記載されているように、60度以上かつ90度以下である。
【0045】
このように、半導体層11においてヤング率が相対的に高い方向と、半導体層21においてヤング率が相対的に高い方向と、を略平行にしている。また、半導体層11においてヤング率が相対的に低い方向と、半導体層21においてヤング率が相対的に低い方向と、を略平行にしている。このようにすることで、半導体層11と半導体層21との間に生じうる応力の方向依存性を低減することができる。これにより、半導体層11および/または半導体層21のトランジスタの特性を改善できる。また、製造時における半導体層11および/または半導体層21の歪みを低減して、歩留まりを向上できる。製造時における半導体層11および/または半導体層21の歪みを低減して、例えば、ハイブリッド接合を行う際に、電極パッド31と電極パッド32のアライメントズレを低減することができるので、歩留まり向上に有利である。またに、マイクロレンズアレイ、カラーフィルタアレイ、層内レンズアレイなどで構成される光学構造40と半導体層11の表面にあるフォトダイオードの光軸ズレを低減することができるので、歩留まり向上に有利である。
【0046】
半導体層11の結晶方位HKaと、半導体層11の四辺(右辺SR,左辺LS、上辺TS、下辺BS)とが成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。半導体層11の結晶方位HKbと、半導体層11の四辺(右辺SR,左辺LS、上辺TS、下辺BS)とが成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。すなわち、半導体層11の結晶方位HKbと、半導体層11の四辺が延びる方向TB、LRとが成す角度は、
図3に「γ」で記載されているように、30度より大きく60度よりも小さい。
【0047】
このように、結晶方位HKa、HKb、HKc、HKdの少なくともいずれか(本例では全て)を四辺の少なくともいずれか(本例では全て)と非平行にすることにより、半導体層11、21の四辺からチッピングやクラッキングを抑制できる。ウエハからダイシングで切り出してチップ化する際に、レーザーを用いたダイシング(レーザーダイシング)を使用することが好ましい。ブレードを用いたダイシング(ブレードダイシング)では、四辺の形状はチッピングによって凹凸が大きくなりがちである。レーザーダイシングでは、四辺の形状はチッピングが生じにくいため、凹凸を小さくすることができる。例えば、半導体層11、21の1辺に沿った100μmの範囲における凹凸の振幅は、ブレードダイシングでは例えば10μm以上でありうるが、レーザーダイシングでは例えば10μm未満を実現できうる。
【0048】
表1に記載したマトリックスは、2つの方向が成す角度を分類して示している。例えば半導体層11の結晶構造の結晶方位Hkaが、他の方向となす角度は表1の上から4行目(Hkaの行)に記載されており、当該他の方向は、各列に分けて記載している。例えば、他の方向が、P型MISトランジスタPMaのソースSaとドレインDaとが並ぶ方向SDaであれば、右から2列目(SDaの列)に記載されている。表1の上から4行目(Hkaの行)と右から2列目(SDaの列)の交点に記載されたギリシャ文字が2つの方向が成す角度を示している。αは0度以上かつ30度以下の角度であり、βは60度以上かつ90度以下の角度であり、γは30度より大きく60度よりも小さい角度である。
【0049】
【0050】
半導体層11の結晶方位LKaと、半導体層21の結晶方位LKcとが成す角度は、表1に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。半導体層11の結晶方位LKbと、半導体層21の結晶方位LKdとが成す角度は、表1に「α」で記載されているように、0度以上かつ30度以下である。半導体層11の結晶方位LKaと、半導体層21の結晶方位LKdとが成す角度は、表1に「β」で記載されているように、60度以上かつ90度以下である。半導体層11の結晶方位LKbと、半導体層21の結晶方位LKcとが成す角度は、表1に「β」で記載されているように、60度以上かつ90度以下である。
【0051】
配線構造30は、配線構造12の金属パッド31と配線構造22の金属パッドとが接合した接合部として、接合部31a、31b、31c、31dを含みうる。接合部31aと接合部31bは互いに隣接し、接合部31aと接合部31bとの間には接合部や金属パッド31、32は位置しない。接合部31cと接合部31dは互いに隣接し、接合部31cと接合部31dとの間には接合部や金属パッド31、32は位置しない。接合部31aと接合部31bは結晶方位HKaに沿って並ぶ。接合部31cと接合部31dは劈開方位HKbに沿って並ぶ。接合部31cと接合部31dとを結ぶ直線が、接合部31aと接合部31bとの間を通る。このように、結晶方位HKa、HKbに対して接合部を配置すると、接合部の間において劈開が生じる可能性が低減できるため、半導体装置APRの強度を向上できる。
【0052】
同様に、配線構造30は、配線構造12の金属パッド31と配線構造22の金属パッドとが接合した接合部として、接合部32a、32b、32c、32dを含みうる。接合部32aと接合部32bは互いに隣接し、接合部32aと接合部32bとの間には接合部や金属パッド31、32は位置しない。接合部32cと接合部32dは互いに隣接し、接合部32cと接合部32dとの間には接合部や金属パッド31、32は位置しない。接合部32aと接合部32bは結晶方位HKcに沿って並ぶ。接合部32cと接合部32dは結晶方位HKdに沿って並ぶ。接合部32cと接合部32dとを結ぶ直線が、接合部32aと接合部32bとの間を通る。このように、結晶方位HKc、HKdに対して接合部を配置すると、接合部の間において劈開が生じる可能性が低減できるため、半導体装置APRの強度を向上できる。
【0053】
チップ1とチップ2を備える半導体装置APRを製造する方法としては、主に3つある。第1の方法は、チップ1を含むウエハと、チップ2を含むウエハとを接合し、チップ1を含むウエハとチップ2を含むウエハとの接合体をダイシングする方法である。第2の方法は、チップ1およびチップ2の一方を含むウエハをダイシングしてチップ1およびチップ2の一方を作製し、そのチップ1およびチップ2の一方を、チップ1およびチップ2の他方を含むウエハに接合する。その後に、チップ1およびチップ2の他方を含むウエハをダイシングする方法である。第3の方法は、チップ1を含むウエハをダイシングしてチップ1を作製し、チップ2を含むウエハをダイシングしてチップ2を作成する。その後に、チップ1とチップ2とを接合する方法である。第1の方法では半導体層11の輪郭と半導体層21の輪郭はほぼ合同になる。第2、第3の方法では、半導体層11の輪郭と半導体層21の輪郭はほぼ合同にすることが出きるが、半導体層11の輪郭と半導体層21の輪郭を異ならせることも容易であり、例えば、半導体層11の輪郭を半導体層21の輪郭よりも小さくすることができる。第2の方法あるいは第3の方法は、チップ1を含むウエハと、チップ2を含むウエハの大きさが異なる場合に有利である。例えばチップ2を含むウエハは直径が200~300mmであってよく、チップ1を含むウエハは、チップ2を含むウエハよりも小さくてもよく、例えば、直径が50~200mmであってもよい。勿論、チップ1を含むウエハの直径が200mmであって、チップ2を含むウエハの直径が300mmであってもよい。
【0054】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態に適用可能な第2実施形態を説明する。第2実施形態において第1実施形態と同様であってよい事項については説明を省略する。
図4(a)にはチップ1のより具体的な構造を示している。チップ1には、セル(電界回路10)に相当する画素回路PXCが配列された画素領域PXが設けられている。画素領域PXの外側には、ボンディングワイヤをボンディングパッドに接続するためのパッド開口19が設けられている。
図4には、第1実施形態において説明した結晶方位HKa、HKb(例えば<110>方位)を示している。第1実施形態において説明した結晶方位LKa(例えば<100>方位)は
図4においてX方向に平行であり、第1実施形態において説明した結晶方位LKb(例えば<100>方位)は
図4においてY方向に平行である。
【0055】
図4(b)は、半導体層11の表面115側のレイアウトを示している。
図4(b)は
図4(a)の半導体層11を左右が入れ替わるように裏返して示している。
図4(b)には各々が、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタの4つのトランジスタを含む、2つの画素回路(電気回路10)を記載している。なお、複数の画素で画素回路の構成素子を共有した画素共有構造を採用することができる。
【0056】
半導体層11にはN型MISトランジスタである2つの転送トランジスタが設けられている。2つの転送トランジスタはそれぞれゲート電極TXa、TXbを有する。ゲート電極TXaを有する転送トランジスタのソースがフォトダイオードPDaであり、ゲート電極TXaを有する転送トランジスタのドレインがフローティングディフュージョンFDである。ゲート電極TXbを有する転送トランジスタのソースがフォトダイオードPDbであり、ゲート電極TXbを有する転送トランジスタのドレインがフローティングディフュージョンFDである。つまり、2つの転送トランジスタは1つのフローティングディフュージョンFDを共有している。フォトダイオードPDaとフローティングディフュージョンFDが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKaと、が成す角度は、60度以上かつ90度以下(本例では90度)である。フォトダイオードPDaとフローティングディフュージョンFDが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKbと、が成す角度は、0度以上かつ30度以下(本例では0度)である。フォトダイオードPDbとフローティングディフュージョンFDが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKaと、が成す角度は、0度以上かつ30度以下(本例では0度)である。フォトダイオードPDbとフローティングディフュージョンFDが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKbと、が成す角度は、60度以上かつ90度以下(本例では90度)である。
【0057】
半導体層11にはN型MISトランジスタである増幅トランジスタとリセットトランジスタが設けられている。増幅トランジスタとリセットトランジスタ増幅トランジスタはゲート電極SFを有し、リセットトランジスタはゲート電極RSを有する。ゲート電極SFを有する増幅トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKa、HKbと、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい(本例では45度)。ゲート電極RSを有するリセットトランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKa、HKbと、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい(本例では45度)。
【0058】
半導体層11にはN型MISトランジスタである選択トランジスタが設けられている。選択トランジスタはゲート電極SLを有する。ゲート電極SLを有する選択トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、半導体層11の結晶方位HKa、HKbと、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい(本例では45度)。
【0059】
ゲート電極SFを有する増幅トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向(X方向)と、ゲート電極SLを有する選択トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向(Y方向)と、が成す角度は、60度以上かつ90度以下(本例では90度)である。ゲート電極RSを有するリセットトランジスタのソースとドレインが並ぶ方向(X方向)と、ゲート電極SLを有する選択トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向(Y方向)と、が成す角度は、60度以上かつ90度以下(本例では90度)である。ゲート電極SLを有する選択トランジスタのソースとドレインが並ぶ方向と、フォトダイオードPDbとフローティングディフュージョンFDが並ぶ方向と、が成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい(本例では45度)。
【0060】
増幅トランジスタのゲート電極SFおよびリセットトランジスタのソースはフローティングディフュージョンFDに接続されている。リセットトランジスタのソースおよび増幅トランジスタのドレインには電源電位が供給されている。増幅トランジスタのソースは選択トランジスタのドレインに接続され、選択トランジスタのソースは信号出力線に接続される。増幅トランジスタはソースフォロワ回路を構成する。
【0061】
図4(b)に示すように、半導体層11においては、N型MISトランジスタのソースとドレインが並ぶ方向は、3種類以上であってもよい。N型MISトランジスタは、P型MISトランジスタにくらべて、半導体層11の結晶方位の影響を受けにくいためである。
【0062】
半導体層11の素子領域は、単位パターンが周期的に繰り返されたパターンを有する絶縁体からなる素子分離部STIによって画定されている。
図4(b)には、2つ分の単位パターンに相当する部分およびその近傍で示している。単位パターンにおける素子分離部STIの輪郭の75%以上の部分が、半導体層11の結晶方位HKa、HKbに対して成す角度は、30度より大きく60度よりも小さい(本例では45度)。
図4(b)中で、破線で囲んだ部分は、素子分離部STIの輪郭の一部であって、半導体層11の結晶方位HKa、HKbに対して成す角度が、30度以下または60度以上である部分である。結晶方位HKa、HKbでは半導体層11に微小な欠陥が生じやすく、ノイズ源になりやすい。そこで、半導体層11の結晶方位HKa、HKbに対して成す角度が、30度以下または60度以上である部分は極力少ない(25%未満)ことが好ましい。
【0063】
図5(a)にはチップ2のより具体的な構造を示している。チップ2の左半分と右半分にはほぼ対称(線対称であってもよいし、並進対称であってもよい)な回路が配置されている。チップ2の左半分の上半分とチップ2の左半分の下半分にはほぼ線対称な回路が配置されている。チップ2の右半分の上半分とチップ2の左半分の下半分にはほぼ線対称な回路が配置されている。
図5には、第1実施形態において説明した結晶方位HKc、HKd(例えば<110>方位)を示している。第1実施形態において説明した結晶方位LKc(例えば<100>方位)は
図5においてX方向に平行であり、第1実施形態において説明した結晶方位LKd(例えば<100>方位)は
図5においてY方向に平行である。
【0064】
チップ2は、ADC521が複数行複数列に渡って配されたAD変換領域(図中でADC Arrayと表記)522を複数有する。つまり、AD変換領域522もまた、複数行複数列に渡って配されている。各AD変換領域522に対応して、バッファメモリ(図中ではbuffer memoryと表記)525が設けられている。AD変換領域522のADC521とバッファメモリ525とが
図5では不図示の伝送線によって接続されている。また、チップ2は、チップ1に配された画素回路を行ごとに順次走査する垂直走査回路524(図中ではVSCANと表記)を有する。
【0065】
チップ2は、デジタル信号処理回路(図中でDFEと表記した。以降DFEとする)528を有する。DFE528は、バッファメモリ525から出力されるデジタル信号に対して種々の処理(ノイズ減算処理、ゲイン補正・オフセット補正等の各種補正等)を行う。チップ2は、複数のDFE528を有する。1つのDFE528は、複数のバッファメモリ525から出力されるデジタル信号を処理する。ADC521は、ランプ信号と、光電変換部の生成した信号に基づく信号とを比較するランプ信号比較型のAD変換を行う。チップ2は、このランプ信号を生成するランプ信号生成部535(図中ではRamp Gen.と表記)を有する。チップ2は、各種の制御信号を生成するタイミングジェネレータ(図中でTGと表記した。以降TGとする)530、ランプ信号比較型のAD変換で用いる、グレイコードのカウント信号を生成するカウンタ(図中でCounterと表記)531とを有する。チップ2は、DFE528が処理した信号を、撮像装置の外部に出力するデータインターフェース部(図中ではdata I/Fと表記。以降IF部とする)535を有する。
【0066】
図5(b)には、チップ2の一部における、半導体層21の表面215側のレイアウトの一例を示している。半導体層21には複数のp型のウェルPWと、複数のn型のウェルNWと、が交互に設けられている。複数のp型のウェルPWの各々には、複数のN型MISトランジスタNMが設けられている。複数のn型のウェルNWの各々には、複数のP型MISトランジスタPMが設けられている。N型MISトランジスタNMはn型のソース101とドレイン102とゲート電極103を有する。P型MISトランジスタPMはp型のソース106とドレイン107とゲート電極108を有する。ソース101とソース106が配線104を介して接続されており、ドレイン102とドレイン107が配線105を介して接続されており、ゲート電極103とゲート電極108が配線109を介して接続されている。これにより、配線109が接続されたノードを入力ノードとし、配線107が接続されたノードを出力ノードとするCMOSスイッチ回路が構成される。ソース101とドレイン107が配線を介して接続されており、ドレイン102とソース106が配線を介して接続されており、ゲート電極103とゲート電極108が配線109を介して接続されているような回路であってもよい。
【0067】
図5(b)には、N型MISトランジスタNMのチャネル幅をWnで示し、N型MISトランジスタNMのチャネル長をLnで示している。また、
図5(b)には、P型MISトランジスタPMのチャネル幅をWpで示し、P型MISトランジスタPMのチャネル長さをLpで示している。
図5(b)に示す様に、チャネル長Ln,Lpの方向(X方向)と、結晶方位HKc,HKdと、が成す角度は30度より大きく60度より小さい(本例では45度)。同同様に、チャネル幅Wn、Wpの方向(Y方向)と、半導体層21の結晶方位HKc,HKdと、が成す角度は30度より大きく60度より小さい(本例では45度)。上述したように、チャネル長Ln,Lpの方向(X方向)と、半導体層11の結晶方位HKa,HKbと、が成す角度は30度より大きく60度より小さい(本例では45度)。また、チャネル幅Wn,Wpの方向(Y方向)と、半導体層11の結晶方位HKa,HKbと、が成す角度は30度より大きく60度より小さい(本例では45度)。
【0068】
P型MISトランジスタPMのチャネル幅Wpは、N型MISトランジスタNMのチャネル幅Wnよりも大きい。N型MISトランジスタNMのチャネル幅Wnは、N型MISトランジスタNMのチャネル長Lnよりも大きい。P型MISトランジスタPMのチャネル幅Wpは、P型MISトランジスタPMのチャネル長Lpよりも大きい。N型MISトランジスタNMのチャネル長LnとP型MISトランジスタPMのチャネル長Lpとの差は、N型MISトランジスタNMのチャネル幅WnとP型MISトランジスタPMのチャネル幅Wpとの差よりも小さい(|Ln-Lp|<|Wn-Wp|)。
【0069】
半導体層21の主成分はシリコンであってよい。シリコンを主成分とする半導体層21の表面にはコバルトシリサイド領域および/またはニッケルシリサイド領域が設けられていてもよい。このようなシリサイド領域により、半導体層21のトランジスタのコンタクト抵抗を低減できる。シリコンを主成分とする半導体層21はゲルマニウムおよび/またはインジウムを含有する領域を含んでいてもよい。このような、ゲルマニウムおよび/またはインジウムを含有する領域によって、トランジスタの特性を調整することができる。
【0070】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態および/または第2実施形態に適用可能な第3実施形態を説明する。第3実施形態において第1実施形態および/または第2実施形態と同様であってよい事項については説明を省略する。
図6(a)、(b)は第3実施形態の模式図である。チップ1とチップ2が重なっているのは
図1と同様である。チップ2はチップ1よりも大きい輪郭を有する。チップ1(半導体層11)の輪郭は半導体層11の裏面116と辺を共有する側面117によって規定される。チップ(半導体層21)2の輪郭は半導体層21の裏面216と辺を共有する側面217によって規定される。チップ1の側面117はチップ2の主面である裏面216に重なる。このような構造は、上述したチップ1とチップ2を備える半導体装置APRを製造する方法の、第2の方法あるいは第3の方法によって実現可能である。
【0071】
チップ1の半導体層11は、化合物半導体層であってよい。化合物半導体層は受光層または発光層として用いられうる。例えばチップ1における半導体層11としての化合物半導体層は、赤外線を受光する赤外線センサーとしての半導体装置APRにおける受光層でありうる。この場合、チップ2は半導体層11からの信号を読み出すための読み出し集積回路(ROIC)でありうる。例えばチップ1における半導体層11としての化合物半導体層は、レーザー光源やLEDなどの半導体装置APRにおいて、単一のピーク波長を有する光の発光層でありうる。なお、チップ1の半導体層11が化合物半導体層である場合において、チップ2の半導体層21は化合物半導体層なくてよく、シリコンやゲルマニウムなどのIV族半導体で構成されていてよく、本実施形態においても半導体層21はシリコン層でありうる。
【0072】
化合物半導体層としての半導体層11は、例えばIII-V族半導体またはII-VI族半導体で構成されてよく、2元系混晶や3元系混晶、4元系混晶であってもよい。上述した結晶方位とヤング率の関係はヒ化ガリウム(GaAs)などのIII-V族半導体においても同様に適用できる。すなわち、<110>方位に沿った方向におけるIII-V族半導体のヤング率は、<100>方位に沿った方向におけるIII-V族半導体のヤング率よりも高い。<111>方位に沿った方向におけるIII-V族半導体のヤング率は、<110>方位に沿った方向におけるIII-V族半導体のヤング率よりも高い。例えばヒ化ガリウム層の<100>方位に平行な方向におけるヤング率は約85GPa(80~90GPa)である。ヒ化ガリウム層の<110>方位に平行な方向におけるヤング率は約122GPa(117~127GPa)である。ヒ化ガリウム層の<111>方位に平行な方向におけるヤング率は約142GPa(137~147GPa)である。<100>方位と<110>方位との間の方向におけるヤング率は、<110>方位に平行な方向におけるヤング率と<110>方位に平行な方向におけるヤング率との間の値である。<100>方位と<110>方位との間の方向におけるヤング率は、<100>方位に平行な方向におけるヤング率と<110>方位に平行な方向におけるヤング率との間の値である。<110>方位と<111>方位との間の方向におけるヤング率は、<110>方位に平行な方向におけるヤング率と<111>方位に平行な方向におけるヤング率との間の値である。
【0073】
半導体層11は、複数の半導体領域を含んでいてもよい。半導体層11に含まれる複数の半導体領域(例えばInGaAs領域とInP領域)が量子井戸構造を構成してもよい。例えば、半導体層11は、InGaAs領域とInP領域による量子井戸構造を有していてもよい。半導体層11は、InGaAs領域とGaAsSb領域による量子井戸構造を有していてもよく、GaInNAs領域とGaAsSb領域による量子井戸構造を有していてもよい。半導体層11は、InAs領域とGaSb領域による量子井戸構造を有していてもよく、InAsSb領域とInGaSb領域による量子井戸構造を有していてもよい。チップ1をウエハからダイシングによってチップ化する際に、レーザーを用いたダイシングを使用することで化合物半導体などのような難削材もデラミネーションやチッピング無しにチップ化することができる。
【0074】
チップ1とチップ2は接合面33において、ハイブリッド接合されている。チップ1とチップ2とを、バンプで接合することもできるが、ハイブリッド接合は非常に強固であり、チップ1とチップ2との相互の応力の作用が大きくなりやすい。そのため、ハイブリッド接合を採用する場合において、半導体層11の結晶方位を上述したように設定することが好適である。チップ1およびチップ2は基板9の上に配置される。チップ2には電極25が設けられており、基板9には電極8が設けられており、電極25と電極8がボンディングワイヤ6で接続される。基板9上には、チップ2を制御するための集積回路部品や、チップ2から出力された信号を処理するための集積回路部品、コンデンサや抵抗などの受動部品や、トランジスタやダイオードなどの能動部品を配置することができる。半導体層11の割れを抑制する上では、基板9はフレキシブル基板であるよりもリジッド基板であることが好ましい。基板9はセラミック基板であってもよいし、エポキシ基板(ガラスエポキシ基板)やポリイミド基板のような樹脂基板であってもよい。
【0075】
<第4実施形態>
上述した第1~4実施形態に適用可能な第3実施形態を説明する。第4実施形態において第1~3実施形態と同様であってよい事項については説明を省略する。
図1(b)に示した機器EQPについて詳述する。半導体装置APRはチップ1、2の積層体である半導体デバイスICの他に、半導体デバイスICを収容するパッケージPKGを含みうる。パッケージPKGは、半導体デバイスICが固定された基体と、半導体デバイスICに対向するガラス等の蓋体と、基体に設けられた端子と半導体デバイスICに設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプ等の接続部材と、を含みうる。 機器EQPは、光学装置OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYの少なくともいずれかをさらに備え得る。光学装置OPTは光電変換装置としての半導体装置APRに結像するものであり、例えばレンズやシャッター、ミラーである。制御装置CTRLは半導体装置APRを制御するものであり、例えばASICなどの半導体デバイスである。処理装置PRCSは半導体装置APRから出力された信号を処理するものであり、AFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成する。処理装置PRCSは、CPU(中央処理装置)やASIC(特定用途向け集積回路)などの半導体デバイスである。表示装置DSPLは半導体装置APRで得られた情報(画像)を表示する、EL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置MMRYは、半導体装置APRで得られた情報(画像)を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置MMRYは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリである。機械装置MCHNはモーターやエンジン等の可動部あるいは推進部を有する。機器EQPでは、半導体装置APRから出力された信号を表示装置DSPLに表示したり、機器EQPが備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。そのために、機器EQPは、半導体装置APRが有する記憶回路部や演算回路部とは別に、記憶装置MMRYや処理装置PRCSを更に備えることが好ましい。
【0076】
図1(b)に示した機器EQPは、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器でありうる。カメラにおける機械装置MCHNはズーミングや合焦、シャッター動作のために光学装置OPTの部品を駆動することができる。また、機器EQPは、車両や船舶、飛行体などの輸送機器(移動体)でありうる。輸送機器における機械装置MCHNは移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器EQPは、半導体装置APRを輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置PRCSは、半導体装置APRで得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置MCHNを操作するための処理を行うことができる。
【0077】
本実施形態による半導体装置APRは、その設計者、製造者、販売者、購入者および/または使用者に、高い価値を提供することができる。そのため、半導体装置APRを機器EQPに搭載すれば、機器EQP価値も高めることができる。よって、機器EQPの製造、販売を行う上で、本実施形態の半導体装置APRの機器EQPへの搭載を決定することは、機器EQPの価値を高める上で有利である。
【0078】
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0079】
11 半導体層
21 半導体層
30 配線構造
PMa P型MISトランジスタ
HKa 結晶方位
LKa 結晶方位