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特許7479836一定の流体流を提供するための可変速度を有するデュアルアクション灌注ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】一定の流体流を提供するための可変速度を有するデュアルアクション灌注ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240430BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20240430BHJP
   A61M 3/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61B18/14
A61M3/02 126
A61M5/142
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019235842
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2020108767
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】62/786,404
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/586,377
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514021(JP,A)
【文献】米国特許第06135719(US,A)
【文献】国際公開第2016/033351(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2002/0198496(US,A1)
【文献】米国特許第4065230(US,A)
【文献】米国特許第5089017(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61B 18/14
A61M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと、灌注アセンブリと、を備えるアブレーションシステムであって、
前記灌注アセンブリは、デュアルアクションポンプと、流体リザーバと、を備え、
前記流体リザーバは、灌注流体を収容しており、前記灌注流体を前記デュアルアクションポンプに送り、
前記カテーテルは、組織をアブレーションするために使用可能であり、前記灌注流体が通過する灌注開口部を備え、前記灌注流体を前記デュアルアクションポンプから受け取って、前記灌注開口部から前記灌注流体を出して前記組織を灌注し、
前記デュアルアクションポンプは、
第1及び第2の入口出口ポートを備えるシリンダであって、前記第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、前記シリンダへの前記灌注流体の取り入れと、前記シリンダからの前記灌注流体の出力とを交互にするように構成されている、シリンダと、
ピストンであって、前記第1及び第2の入口出口ポートを介して前記灌注流体をポンプ輸送するため、前記シリンダ内で前記ピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで移動されるように構成されている、ピストンと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ピストンを、アブレーションモード、及び、非アブレーションモードで制御可能であり、
前記アブレーションモードおよび前記非アブレーションモードにおいて、前記カテーテルの前記灌注開口部から前記灌注流体を出して前記組織を灌注でき、
前記アブレーションモードにおいて、前記ピストンが、
(a)前記移動方向を反転させることに先行する第1の所定の間隔中の第1の速度、
(b)前記移動方向を反転させることに後続する第2の所定の間隔中の、前記第1の速度よりも速い第2の速度、及び、
(c)前記第1及び第2の間隔の外側の、前記第1の速度よりも遅いベースライン速度で移動するように、前記ピストンが前記コントローラにより制御されており、
前記アブレーションモードにおいて、前記ピストンが前記シリンダの第1の端部から第2の端部まで移動するように、前記ピストンが前記コントローラにより制御されており、
前記非アブレーションモードにおいて、前記ピストンが、前記シリンダの前記第1の端部近傍または前記第2の端部近傍において、前記シリンダの前記第1の端部から前記第2の端部まで間隔よりも小さな所定の間隔において振動するように、前記ピストンが前記コントローラにより制御されているアブレーションシステム
【請求項2】
前記デュアルアクションポンプが、前記シリンダ内の前記ピストンの位置を示す制御信号を生成するように構成されているピストン位置検知アセンブリ(PPSA)を備え、
前記コントローラが、前記制御信号を受信し、前記制御信号に基づいて前記ピストンの前記移動を制御するように構成されている、請求項1に記載のアブレーションシステム
【請求項3】
前記コントローラが、前記シリンダの前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記ピストンの前記移動を制御するように構成され、
前記PPSAは、
(a)前記ピストンが前記第1の端部から所定の距離内に位置するときに、第1の位置信号を生成するように構成されている第1の電気スイッチと、
(b)前記ピストンが前記第2の端部から所定の距離内に位置するときに、第2の位置信号を生成するように構成されている第2の電気スイッチと、
を備え、
前記PPSAが、前記第1の位置信号及び前記第2の位置信号のうちの少なくとも1つに基づいて、前記制御信号を生成するように構成されている、
請求項2に記載のアブレーションシステム
【請求項4】
前記コントローラは、少なくとも前記第1及び第2の所定の間隔を含む第1の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通してポンプ輸送される所与の体積の前記灌注流体を制御し、かつ前記ピストンが前記第1及び第2の間隔の外側にあるとき、前記第1の期間とほぼ等しい第2の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通ってポンプ輸送される同じ所与の体積の前記灌注流体を制御するように構成されている、請求項3に記載のアブレーションシステム
【請求項5】
前記第1及び第2の入口出口ポートのうちの少なくとも1つが、第1のパイプを介して前記流体リザーバに連結され、かつ第2のパイプを介して前記カテーテルに連結されて、医療処置中に前記組織に前記灌注流体を灌注する、請求項1に記載のアブレーションシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第62/786,404号(2018年12月29日に出願)の利益を主張する。本出願は、「Dual-Action Irrigation Pump With Ablation And Non-Ablation Operational Modes」と題された米国特許出願、代理人整理番号ID-1558/BIO6162USNP1/1002-2048に関連するものである。上記の出願のそれぞれは、本出願に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的にポンプに関し、詳細には、医療用灌注ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
灌注ポンプは、いくつかの医療処置で使用される。医療用灌注ポンプの性能を改善するための様々な技術が、これまでに開発されてきた。
【0004】
例えば、米国特許第6,913,933号は、計量システムにおける流体分注速度を、モータの速度を用いて改善する方法を記載しているが、その方法は、計量システムの効率性を改善するために、計量サイクルの特定の部分の間のモータの速度を実質的に増減させるように、その一部分の間に流体流量プロファイルを修正させることを含む。
【0005】
米国特許第5,066,282号は、ポリカーボネート製本体、ピストン、入口弁、及び出口弁を有する、使い捨ての、容積移送式ピストンポンプを記載している。出口弁は出口チャンバに接続され、出口チャンバは、出口弁からエラストマー膜によって分離されている。エラストマー膜は、大気圧下で空気などの流体で充填された蓄積チャンバを包囲する。ピストンのストロークによって引き起こされる出口圧力のパルセ-ションは、エラストマー膜が撓む動作で蓄積チャンバ内で流体を圧縮されることによって減衰される。
【0006】
米国特許第9,622,814号には、アブレーションカテーテルが記載されているが、そのカテーテルは、温度を制御し、カテーテルの電極上での生物学的流体の凝固を低減し、電極と接触している組織のインピーダンス上昇を防ぎ、組織への潜在的なエネルギー移動を最大化し、それによってアブレーションによって生成される変性部位の大きさの増加を可能にする。電極は、電極の内部空洞からの生理食塩水の流れを可能にするように配置された通路を含む。この流体流は、乱流を増加させ、停滞流の領域を減少させ、所望の冷却効果をもたらす拍動である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、シリンダと、ピストンと、コントローラとを備えるデュアルアクションポンプを提供する。シリンダは、第1及び第2の入口出口ポートを含み、第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、シリンダへの流体の取り入れと、シリンダからの流体の出力とを交互にするように構成されている。ピストンは、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送するため、シリンダ内でピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで移動されるように構成されている。コントローラは、シリンダ内のピストンの移動を制御するように構成されており、その制御には、ピストンに、(a)移動方向を反転させることに先行する第1の所定の間隔中の第1の速度、(b)方向を反転させることに後続する第2の所定の間隔中の、第1の速度よりも速い第2の速度、及び(c)第1及び第2の間隔の外側の、第1の速度よりも遅いベースライン速度、を設定することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、デュアルアクションポンプは、ピストン位置検知アセンブリ(PPSA)を含み、ピストン位置検知アセンブリ(PPSA)は、シリンダ内のピストンの位置を示す制御信号を生成するように構成され、コントローラは、制御信号を受信し、制御信号に基づいてピストンの移動を制御するように構成されている。他の実施形態では、コントローラが、シリンダの第1の端部と第2の端部との間のピストンの移動を制御するように構成され、PPSAは、(a)ピストンが第1の端部から所定の距離内に位置するときに、第1の位置信号を生成するように構成されている第1の電気スイッチと、(b)ピストンが第2の端部から所定の距離内に位置するときに、第2の位置信号を生成するように構成されている第2の電気スイッチと、を備え、かつPPSAが、第1の位置信号及び第2の位置信号のうちの少なくとも1つに基づいて、制御信号を生成するように構成されている。
【0009】
一実施形態では、コントローラは、少なくとも第1及び第2の所定の距離間隔を含む第1の期間中に、第1及び第2の入口出口ポートを通してポンプ輸送される所与の体積の流体を制御し、かつピストンが第1及び第2の距離間隔の外側にあるとき、第1の期間とほぼ等しい第2の期間中に、第1及び第2の入口出口ポートを通ってポンプ輸送される同じ所与の体積の流体を制御するように構成されている。別の実施形態では、第1及び第2の入口出口ポートのうちの少なくとも1つが、第1のパイプを介して流体リザーバに連結され、かつ第2のパイプを介してカテーテルに連結されて、医療処置中に組織に流体を灌注する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、医療処置において流体をポンプ輸送するための方法が更に提供される。その方法は、それぞれが、シリンダに流体を取り込むことと、前記シリンダから前記流体を出力させることとを交互に行うための第1及び第2の入口出口ポートを有する前記シリンダを備えるデュアルアクションポンプ内で、ピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで、シリンダ内でピストンを移動させて、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送することを含む。シリンダ内のピストンの移動は、(a)移動方向を反転させることに先行する第1の所定の間隔中の第1の速度、(b)方向を反転させることに後続する第2の所定の間隔中の、第1の速度よりも速い第2の速度、及び(c)第1及び第2の間隔の外側の、第1の速度よりも遅いベースライン速度、をピストンに設定することを含むように制御されている。
【0011】
本発明の一実施形態に従って、シリンダと、ピストンと、コントローラとを備えるデュアルアクションポンプが更に提供される。シリンダは、第1及び第2の端部を有し、かつ第1及び第2の入口出口ポートを含み、第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、シリンダへの流体の取り入れと、シリンダからの流体の出力とを交互にするように構成されている。ピストンは、その移動方向を交互に反転させることによって、シリンダ内で、第1の端部と第2の端部との間で移動され、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送するように構成されている。
【0012】
コントローラは、シリンダ内でのピストンの移動を制御するように構成されているが、その制御には、(a)第1の動作モードと第2の動作モードとの間で選択を行うことと、(b)第1の動作モードにおいて、ピストンを、第1の端部から又は第2の端部から所定の距離を超えない所定の距離間隔にわたって振動するように制御することと、(c)前記第2の動作モードにおいて、第1の端部と第2の端部との間を選択された速度で移動させるようにピストンを制御することと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、コントローラは、シリンダ内のピストンの位置を示す信号を受信し、その信号に基づいてピストンの移動を制御するように構成されている。他の実施形態では、第1及び第2の入口出口ポートのうちの少なくとも1つは、第1のパイプを介して流体リザーバに、かつ第2のパイプを介してカテーテルに連結されて、医療処置中に流体で組織を灌注する。更に他の実施形態では、医療処置は、カテーテルによる組織アブレーションを含み、コントローラは、組織アブレーションを示す制御信号を受信したことに応じて、第2の動作モードを選択するように構成されている。
【0014】
一実施形態では、組織アブレーションは、第1及び第2のアブレーション部位にカテーテルを位置決めすることを含み、かつ第2の動作モードでは、コントローラが、ピストンを、(a)カテーテルが第1のアブレーション部位に位置決めされたときに、第1の選択された速度で移動させ、(b)カテーテルが第2のアブレーション部位に位置決めされたときに、第2の、異なる選択速度で移動させるよう制御するように構成されている。別の実施形態では、第2の動作モードでは、コントローラが、ピストンを一定速度で移動させるよう制御するように構成されている。更に別の実施形態では、第2の動作モードでは、コントローラが、ピストンを可変速度で移動させるよう制御するように構成されている。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、医療処置において流体をポンプ輸送するための方法が更に提供される。その方法は、第1及び第2の端部を含むシリンダであって、それぞれが、シリンダに流体を取り込むことと、シリンダから流体を出力させることとを交互に行うための第1及び第2の入口出口ポートを含むシリンダを備えるデュアルアクションポンプ内で、ピストンを、シリンダ内の第1の端部と第2の端部との間で、移動方向を交互に反転させることによって移動させて、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送することを含む。シリンダ内のピストンの移動は、(a)第1の動作モードと第2の動作モードとの間で選択を行うことと、(b)第1の動作モードにおいて、ピストンを、第1の端部から又は第2の端部から所定の距離を超えない所定の間隔にわたって振動するように制御することと、(c)第2の動作モードにおいて、第1の端部と第2の端部との間を選択された速度で移動させるようにピストンを制御することと、を含む。
【0016】
本発明の一実施形態に従って、シリンダと、ピストンと、コントローラとを備えるデュアルアクションポンプが更に提供される。シリンダは、第1及び第2の端部を有し、かつ第1及び第2の入口出口ポートを含み、第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、シリンダへの流体の取り入れと、シリンダからの流体の出力とを交互にするように構成されている。ピストンは、その移動方向を交互に反転させることによって、シリンダ内で、第1の端部と第2の端部との間で移動され、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送するように構成されている。コントローラは、シリンダ内でのピストンの移動を制御するように構成されているが、その制御には、(a)第1の動作モードと第2の動作モードとの間で選択を行うことと、(b)第1の動作モードにおいて、ピストンを、第1の端部から又は第2の端部から、ゼロより大きい所定の距離に静止しているように制御することと、(c)前記第2の動作モードにおいて、第1の端部と第2の端部との間を選択された速度で移動させるようにピストンを制御することと、を含む。
【0017】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づいたアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態によるアブレーションシステムのデュアルアクション灌注ポンプの概略側面図である。
図3A】本発明の一実施形態による、デュアルアクション医療用灌注ポンプのシリンダ内でのピストンの移動の概略描写図である。
図3B】本発明の一実施形態による、デュアルアクション医療用灌注ポンプのシリンダ内でのピストンの移動プロファイルを概略的に示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態による、経時的に灌注流体の一定の出力を流す方法を概略的に示すフローチャートである。
図5】本発明の別の実施形態による、心臓アブレーション処置で使用されるデュアルアクション式灌注ポンプにおけるピストンの移動プロファイルの概略描写図である。
図6】本発明の別の実施形態による、心臓アブレーション処置における灌注流体をポンプ輸送する方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概論
いくつかの心臓処置は、不整脈を治療するための患者心臓の所定の部位で実行される高周波(RF)アブレーションなどの組織アブレーションを含む。RFアブレーションシステムは、典型的には、カテーテルの遠位端に連結されたアブレーション電極と、カテーテル遠位端をアブレーション部位に誘導するための磁気位置追跡サブシステムなどのナビゲーションサブシステムとを備える。RFアブレーションシステムは、アブレーションされた組織を灌注流体で灌注するための灌注アセンブリを更に備える。磁気位置追跡サブシステムの磁場と干渉し得る電気ノイズを導入することなく、例えば流量などの、制御される灌注パラメータを用いてアブレーション前及びアブレーション中に組織を灌注することが重要である。
【0020】
以下に記載される本発明の実施形態は、アブレーション処置中の灌注パラメータの制御を改善するための方法及び装置を提供する。いくつかの実施形態では、灌注アセンブリは、(a)灌注流体を収容する流体リザーバと、(b)患者の心臓の組織を灌注するためのカテーテル遠位端にある1つ以上の灌注開口部と、(c)リザーバと灌注開口部との間で灌注流体をポンプ輸送するように構成されているデュアルアクションポンプと、を備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、デュアルアクションポンプは、本明細書において「壁」とも呼ばれる第1及び第2の端部を有するシリンダであって、第1及び第2の入口出口ポートを備えるシリンダを備え、第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、リザーバとカテーテルとの両方に連結される。入口出口ポートのそれぞれは、流体をリザーバからシリンダに吸入することと、シリンダからカテーテル遠位端に流体を出力することとを交互に行うように構成される。デュアルアクションポンプは、ピストンを備えるが、そのピストンは、ピストンの移動方向を交互に反転させることによって、シリンダ内で、第1の壁と第2の壁との間で移動され、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、デュアルアクションポンプは、シリンダ内でのピストンの移動を制御するように構成されているコントローラを更に備える。コントローラは、デュアルアクションポンプのアブレーション動作モードと非アブレーション動作モードとの間で選択をするように構成されている。アブレーション動作モードでは、コントローラはピストンを制御して、アブレーションされた部位を灌注するために、第1の壁と第2の壁との間を選択された速度でピストンを移動させるように構成されている。非アブレーション動作モードでは、コントローラはピストンを制御して、組織のアブレーション作業どうしの間、少量の灌流フローを維持するために、第1の壁から所定の距離を超えない、又はシリンダの第2の壁から所定の距離を超えない所定の間隔にわたってピストンを振動させるように構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラは、シリンダ内のピストンの位置を示す信号を受信し、その信号に基づいてピストンの移動を制御するように構成されている。コントローラは、制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、非アブレーション動作モードとアブレーション動作モードとの間の選択をするように更に構成されている。
【0023】
他の実施形態では、ピストンは、第1及び第2の入口出口ポートを介して流体をポンプ輸送するために、壁の位置で、ピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで、壁どうしの間を移動させられるように構成される。上記のような実施形態では、コントローラは、壁どうしの間でのピストンの移動を制御するように構成されており、その制御には、ピストンに、(a)移動方向を反転させることに先行する、壁から第1の予め設定された間隔の間の第1の速度、(b)方向を反転させることに後続する、壁から第2の予め設定された間隔の間の、第1の速度よりも速い第2の速度、及び(c)第1及び第2の予め設定された間隔の外側の、第1の速度よりも遅いベースライン速度、を設定することを含む。コントローラは、指定の流量に対して灌注流体の流量を制御するために、かつ、適用可能な場合には、ピストンが方向を反転するときに入口出口ポートを通る一定の流量を維持するために、第1及び第2の予め設定された間隔の大きさ並びに対応する第1及び第2の速度を設定するように構成される。
【0024】
開示される技術は、心臓組織のアブレーション中及びアブレーション作業どうしの間の灌注パラメータの制御を改善することによって、患者の安全性及びアブレーション処置の品質を改善する。
【0025】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づいたアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、シャフト遠位端22を有するカテーテル21を備え、カテーテル21は、医師30によって、脈管系を介して患者28の心臓26内に誘導される。図示されている例では、医師30は、カテーテル21の近位端近くに位置する遠隔操縦器32を使用して、シャフト遠位端22を操作しながら、シース23からシャフト遠位端22を挿入する。
【0026】
ここで挿入図25を参照する。いくつかの実施形態では、システム20は、磁気センサ51(本明細書では磁気位置追跡センサ又は簡略化のためセンサ51とも呼ばれる)と、アブレーションカテーテル50とを備え、センサ51とアブレーションカテーテル50とは遠位端22に連結されている。
【0027】
上記の実施形態では、カテーテル21は、例えば、心臓26の電気生理学的(EP)マッピングを実行するため、及び心臓26の選択された組織をアブレーションするためなどの様々な処置に使用され得る。カテーテル21は、以下に詳細に記載されるように、EP処置中、及び特にアブレーション中に心臓26の組織を灌注するための灌注開口部を備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、カテーテル21の近位端は、制御コンソールボックス48に電気的に接続され、かつ並列で、灌注アセンブリ11に電気的に接続され、灌注アセンブリ11は、システム20によって実行されるアブレーション及び他の処置のために、灌注流体88(本明細書では、簡略化のため「流体」88とも称される)を供給する。一実施形態では、コンソールボックス48は、プロセッサ39、コントローラ33、及びインターフェース回路38を備え、及びインターフェース回路38は、プロセッサ39及び/又はコントローラ33と、システム20の様々な構成要素、モジュール、及びアセンブリとの間で信号を交換するように構成されているが、これに関しては、後程詳述する。
【0029】
いくつかの実施形態では、インターフェース回路38は、カテーテル21、及びシステム20の他のセンサから電気信号を受信するように構成されている。回路38は、プロセッサ39及びコントローラ33から受信した電気信号を、システム20の他の構成要素及びアセンブリに送信するように更に構成されているが、具体的には、心臓26の組織をアブレーションしたり、システム20の他の構成要素及びアセンブリを制御したりするために、カテーテル21を介して電力を印加する。例えば、以下に詳細に記載されるように、カテーテル21は、アブレーション中に、アブレーションされた組織を灌注流体で灌注するように構成されている。一実施形態では、プロセッサ39は、遠位端22に配置されたアブレーション電極(図示せず)を制御して、高周波(RF)エネルギーを心臓26の組織に印加するように構成されている。以下で詳細に説明するように、コントローラ33は、例えば、アブレーション処置中に、潅注流体88を組織にかけるように構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、システム20は、交番磁界を生成するように構成されている複数の(例えば、3つの)磁場発生器36を備える。磁場発生器36は、例えば、患者台29の下など、患者28の外部の既知の位置に配置される。
【0031】
いくつかの実施形態では、コンソールボックス48は、ディスプレイ27及び駆動回路(図示せず)を更に備え、駆動回路は、磁場発生器36を駆動するように構成されている。
【0032】
EP処置の間、医師30は、心臓26内のカテーテル21の遠位端22を誘導する。いくつかの実施形態では、磁気センサ51は、磁場発生器36から放たれた磁場に応答して、心臓26内の遠位端22の位置を示す位置信号を生成するように構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、センサ51から受信した位置信号に基づいて、例えば、ディスプレイ27上に、システム20の座標系内の遠位端22の位置を表示するように構成されている。
【0034】
この位置検知方法は、例えば、Biosense Webster社(カリフォルニア州、Irvine)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、かつ、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、灌注アセンブリ11は、ポンプ44(本実施例では、デュアルアクション式灌注ポンプである)を備え、ポンプ44は、例えば、以下の図2図3A、及び図5に記載されている構造及び機能性を有する。灌注アセンブリ11は、流体リザーバ55を更に備えており、流体リザーバ55は、生理食塩水などの灌注流体88、又は心臓26の組織を灌注するのに好適な任意の他の種類の流体などの灌注流体88を収容するように構成されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、灌注アセンブリ11は、管52A及び52Bを備え、管52A及び52Bは、リザーバ55とポンプ44との間に流体88を流すように構成されている。灌注アセンブリ11は、管49A及び49Bを更に備え、管49A及び49Bは、ポンプ44とカテーテル21との間に流体88を流すように構成されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、灌注アセンブリ11の制御パラメータを示す電気信号を、ケーブル53を介して受信するように構成されている。コントローラ33は、その制御パラメータに基づいて、遠位端22への及び灌注アセンブリ11内での、流体88の流れを制御するように構成されている。流体88の流れを制御するための方法及び装置の実施形態は、以下の図2~6に詳細に記載されている。
【0038】
プロセッサ39及び/又はコントローラ33は通常、本明細書に記載される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされている汎用プロセッサ又はコントローラを含む。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサ39及びコントローラ33にダウンロードされてよいが、あるいはこれに代えて又はこれに加えて、例えば磁気的記憶装置、光学的記憶装置、若しくは電子的記憶装置などの、非一時的な有形媒体上に提供され、かつ/又は記憶されてよい。
【0039】
デュアルアクションポンプ内での流体のポンプ輸送の制御
図2は、本発明の一実施形態による、ポンプ44の概略側面図である。いくつかの実施形態では、ポンプ44は、シリンダ111を備え、シリンダ111は、心臓26の組織を灌注するための灌注流体88を収容するように構成されている。ポンプ44は、ピストン99を更に備え、ピストン99は、例えば、ステッピングモータ(図示せず)、又は任意の好適なタイプの運動装置(例えば、任意の他の種類の好適なモータ又はアクチュエータなど、ただし、それらに限られない)を使用して、シリンダ111内で、例えばシャフト105に沿って、移動されるように構成されている。ポンプ44の例では、シリンダ111及びピストン99はともに、円形の断面を有する。
【0040】
本特許出願の文脈において、及び特許請求の範囲においては、用語「シリンダ」は、専門用語として、ピストン99又は任意の他の好適な種類のピストンがその中で移動する、任意の好適な容器を指す。この文脈では、シリンダ及びピストンは、必ずしも円形ではない、任意の好適な断面を有していてよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、シリンダ111は、左壁66及び右壁77を有し、左壁66及び右壁77は、本明細書において、シリンダ111の「第1の端部及び第2の端部」ともそれぞれ呼ばれ、あるいは、簡略化のために、「壁66及び壁77」ともそれぞれ呼ばれる。いくつかの実施形態では、シリンダ111は、壁66及び壁77にそれぞれ形成された、入口出口ポート112及び入口出口ポート114を備える。
【0042】
本特許出願の文脈において及び特許請求の範囲において、それぞれの用語「入口出口ポート112及び114」、「ポート112及び114」、並びに「第1及び第2の入口出口ポート」といった用語はそれぞれ、互換的に使用され、シリンダ111内の開口部を指す。一実施形態では、第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれは、シリンダ111への吸入流体88の取り入れと、シリンダ111からの流体88の出力とを、交互に行うように構成されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、入口出口ポート112及び114のそれぞれは、2つの開口部を有してもよい。なお、図2の側面図では、両方の開口部は同じ平面(図2の平面に直交する面)にあるため、第2の開口部は第1の開口部の後ろに隠され、両方の開口部は単一の開口部のように図示されていることに留意されたい。いくつかの実施形態では、入口出口ポート112の第1の開口部は、弁122Aを介して管52Aに連結され、入口出口ポート112の第2の開口部は、弁122Bを介して管49Aに連結されている。同様に、入口出口ポート114の第1の開口部は、弁124Aを介して管52Bに連結され、入口出口ポート114の第2の開口部は、弁124Bを介して管49Bに連結されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、管49A及び49Bは共通管49Cに連結され、共通管49Cはまた、カテーテル21にも連結されている。同様に、管52A及び52Bは共通管52Cに連結され、共通管52Cはまた、リザーバ55にも連結されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポンプ44などのデュアルアクションポンプでは、入口出口ポート112及び114のそれぞれは、流体88を2つの構成要素(本実施例では、リザーバ55及びカテーテル21)とやりとりするようになっている。弁122A、122B、124A、及び124Bのそれぞれは、流体88の流れが一方向へ流れるのを可能にするものの、流体88の流れが反対方向へ流れるのを遮断するように構成され、かつその流れの方向を反転させるようにも構成されている。コントローラ33は、ピストン99の移動方向を切り替えることによって、流体88の流れの方向を制御するように構成されている。このような実施形態では、ピストン99の移動は、前述の弁における流れの方向を決定する。例えば、ピストン99が壁77に向かって移動すると、弁122Aは、流体88をリザーバ55から、管52C及び52Aを介してシリンダ111内に取り入れるのと同時に、弁124Bは、流体88をシリンダ111から、管49B及び49Cを介してカテーテル21内へ出力する。代替的実施形態では、コントローラ33は、弁122A、122B、124A、及び124Bの流れ方向を、ケーブル53を介して制御するように構成されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、ピストン99は、周期的サイクルでシリンダ111内を移動するが、その周期的サイクルは、ピストン99の移動方向を交互に反転させて、入口出口ポート112及び114を通して、流体88をポンプ輸送するようになっている。例えば、ピストン99が左壁66に向かって、反転された方向に移動されると、弁122Bは、ピストン99と壁66との間に配置された流体88が、心臓26の組織を灌注するために、ポンプ44から、ポート112、並びに管49A及び管49Cを介して、カテーテル21内に流れる。同時に、弁124Aは、リザーバ55から、管52C及び52Bを介し、ポート114を通り、シリンダ111内へ流れる、流体88の流れを可能にする。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポンプ44は、ピストン位置検知アセンブリ(PPSA)54を備え、ピストン位置検知アセンブリ(PPSA)54は、シャフト105に沿ったピストン99の位置を感知し、シリンダ111内でのピストン99の位置を示す信号を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、PPSA54は、任意の好適な種類の位置センサを含む。図2の実施例では、PPSA54は、壁66及び壁77にそれぞれ近接して配設された、電気スイッチ56A及び電気スイッチ56Bを含む。いくつかの実施形態では、電気スイッチ56A及び電気スイッチ56Bは、コントローラ33に電気的に接続されたコントローラ57に電気的に連結されている。他の実施形態では、電気スイッチ56A及び電気スイッチ56Bは、コントローラ33に直接電気的に連結されていてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、PPSA54は、システム20の組立中、及び/又は少なくとも、灌注を必要とする最初の医療処置の前に較正され得る。較正中、コントローラ33は、シャフト105に沿った、壁66と壁77との間のピストンの移動を制御する。ピストン99が壁66に到達すると、電気スイッチ56Aは、ピストン99の位置を示す信号をコントローラ57に送る。続いて、コントローラ33は、シリンダ111内でのピストン99の壁77への移動を制御し、かつステッパモータの段数をカウントする。ピストン99が壁77に達すると、電気スイッチ56Bは、ピストン99の位置を示す信号をコントローラ57に送信し、コントローラ57は較正を完結させる。
【0049】
いくつかの実施形態では、較正に基づいて、カウントされ段数及びその方向に基づいて、コントローラ57は、シリンダ111内のピストン99の位置を示す前述の信号を、コントローラ33に送信してもよい。
【0050】
代替的な実施形態では、ピストン99は、壁66及び壁77と物理的に接触せず、しかし例えば、数ミリメートルの又は任意の他の好適な距離の所定の距離の範囲以内で壁に接近してもよい。
【0051】
他の実施形態では、PPSA54は、シリンダ111内のピストン99の現在位置を示す信号を生成するための任意の好適な技術を使用する、任意の他の好適な構成を有していてもよい。
【0052】
灌注アセンブリ11及びシステム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示するため、及びこれらの実施形態を適用することが、このようなシステムの性能を向上させることができることを実証するため、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なシステムに限定されるものではなく、本明細書に記載される原理は、他の種類の医療用アブレーションシステム及び/又は灌注システムにも、同様に適用され得る。
【0053】
図3Aは、本発明の一実施形態による、灌注が行われている最中の、シリンダ111内でのピストン99の移動の概略描写図である。いくつかの実施形態において、コントローラ33は、周期的なサイクルでのピストン99の移動を制御するように構成されており、その周期的サイクルは、ピストン99の移動方向を、移動プロファイル80を使用して交互に反転させて、流体88を一定の流量でポンプ輸送するようになっている。
【0054】
なお、コントローラ33は、ピストン99が壁66及び壁77のいずれかに到達したときに移動方向を変化させなければならず、したがって、ピストン99は、方向を変える前に、壁66及び壁77の位置において停止する(すなわち、静止したままである)ということに留意されたい。換言すれば、壁66及び壁77の場所に位置したときのピストン99の移動速度はゼロであり、したがって、ピストン99がこれらの位置にあるときには、流体88はポンプ輸送されない。一実施形態では、コントローラ33は、以下の図3Bに記載される技術を使用して、流体88の流量を一定に維持するように構成されている。
【0055】
他の実施形態では、ピストン99は、壁66及び壁77の少なくとも一方と物理的に接触しない。このような実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が壁66及び壁77のいずれかに到達する前に、移動方向を変更し得る。例えば、コントローラ33は、ピストン99が壁66に、数ミリメートルの所定の間隔内に、又は任意の他の好適な所定の間隔内に接近したときに、ピストン99の移動方向を変化させ得る。
【0056】
デュアルアクションポンプを使用した、流体の一定速度でのポンプ輸送の制御
図3Bは、本発明の一実施形態による、灌注実行中の、シリンダ111内での、ピストン99の移動プロファイルを概略的に示すグラフ100である。いくつかの実施形態では、グラフ100は、上の図3Aに示す移動のプロファイル80に従うピストン99の位置の関数としての、ピストン99の移動速度を示す。概念を明確にするために、グラフ100は、シリンダ111内でのピストン99の位置に対応する複数のセクションに分割されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、図3Aに示すように、ピストン99が壁66と壁77との間に位置するセクション164に位置しているとき、ピストン99を、グラフ100の移動速度軸上のベースライン速度(「BLS」とも呼ぶ)で壁77に向かって移動させるように構成されている。BLSは、流体88の体積を画定するシリンダ111の寸法に依存し、また、アブレーション電力及びアブレーションされる組織の標的温度などの、アブレーション処置の所定のパラメータに基づいていることに留意されたい。
【0058】
上述したように、ピストン99が壁77に向かって移動し、PPSA54が、シリンダ111内でのピストン99のそれぞれの位置を示す信号を送る。なお、コントローラ33は、壁66及び壁77に到達すると、又は壁にごく近接すると、ピストン99の移動方向を反転させることに留意されたい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ピストン99が壁77から所定の間隔176(例えば、約1mm又は任意の他の好適な間隔)にあるとき、コントローラ33は、その対応する位置を示す信号をPPSA54から受信し、それに応答して、コントローラ33は、BLSよりも大きい第1の速度S1をピストンに設定する。
【0060】
本開示の文脈において及び特許請求の範囲において、任意の数値や数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、適当な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば、「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、ピストン99が壁77コントローラにごく近接している(例えば、約2mmの位置にある)とき、コントローラは、ピストン99の速度を、点177での速度「S0」として示される完全停止まで減速させ得るが、この点177は、ピストン99が、壁77と物理的に接触していること、又はピストン99が、壁77から所定の間隔内にあることに対応している。
【0062】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が壁77と物理的に接触している(又はそこから所定の間隔内にある)ことを示す信号を、PPSA54から受信したことに応じて、ピストン99の移動方向を壁66に向かって反転させ、ピストン99に、グラフ100の所定の間隔178に示される移動速度S2を設定するように構成される。なお、間隔176及び間隔178は、その位置が重なっていてもよい(例えば、両方が壁77に近接している)が、ピストンが互いに異なる方向に移動させられている、したがって、グラフ100には異なる間隔として示されていることに留意されたい。
【0063】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、壁77における完全停止(点177に対応している)によって引き起こされるポンプ44の流量の低減を補償するように構成されており、その補償を行うために、移動の方向を反転させるのに先行する間隔176では、ピストン99に速度S1を設定し、かつ移動の方向を反転させたのに後続する間隔178では、速度S2を設定する。上述したように、速度S2は速度S1より速く、速度S1及び速度S2は両方ともBLSよりも速い。そのため、ピストンが壁77にごく近接して位置しているとき、及び壁77と接触しているときにポンプ44の流量が減少するが、上記のシーケンスの結果、この減少を補償するようにポンプ44の流量が増加する。
【0064】
このような実施形態では、本明細書ではグラフ100のセクション174と称される第1の時間間隔においては、ポンプ44はあたかもピストン99がBLS速度で移動されている場合にポンプ44によって流される流体88の体積と同様の体積の流体88を、所与の時間、(例えば、カテーテル21に)流すようになっている。換言すれば、コントローラ33は、壁66及び壁77において移動方向を反転させるときにも、流体88の一定の流れを維持するように、ポンプ44を設定する。
【0065】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、ポンプ44によって流体88の前述の一定の流れを得る任意の好適な仕組みを使用して、速度S1及び速度S2と、間隔176及び間隔178の物理的寸法とを設定するように構成されている。このような実施形態では、コントローラ33は、間隔176及び間隔178が、互いに類似した若しくは異なる移動、及び/又は互いに類似した若しくは異なる持続時間を有するように設定してもよい。例えば、コントローラ33は、速度S2を速度S1よりも実質的に速く、かつ間隔178を間隔176よりも実質的に短く設定してもよく、又はポンプ44の流量を最適化するために、速度及び間隔持続時間の任意の他の好適な組み合わせを使用してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、ピストンが間隔178内の移動を終了したことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、コントローラ33は、間隔176及び178の外側に位置する所定の間隔179で壁66に向かうピストン99の移動を制御し、ピストン99の速度をBLSに設定する。
【0067】
いくつかの実施形態では、ピストンが間隔179の移動を終了したことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、コントローラ33は、壁66における移動方向の反転に先行する所定の間隔165に対するピストン99の速度を、速度S1に設定する。
【0068】
コントローラ33は、ピストンが間隔165の移動を終了したことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、点177について上述したのと同じシーケンスを使用して、ピストン99の移動速度を、ピストン99が壁66に物理的に接触していること又はピストン99が壁66から所定の間隔内に入っていることに対応する点166での完全な停止まで、ピストン99の移動速度を減速させる。
【0069】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が壁66と物理的に接触している(又は、そこから所定の間隔内にある)ことを示す信号を、PPSA54から受信したことに応じて、ピストン99の移動方向を壁77に向かって反転させ、かつ、移動方向を反転させたことに後続する所定の間隔167で、ピストン99の移動速度を速度S2に設定するように構成されている。
【0070】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が間隔167に沿って移動し終えたことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、ピストン99が間隔165及び間隔167の外側に位置する間隔164で、壁77に向かうピストン99の移動を制御し、ピストン99の速度をBLSに設定する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書ではグラフ100のセクション169と称される第2の時間間隔においては、上記のセクション174に対して説明したように、ポンプ44はあたかもピストン99がBLS速度で移動されている場合にポンプ44によって流される流体88の体積と同様の体積の流体88を、所与の時間、(例えば、カテーテル21に)流すようになっている。
【0072】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、プロセッサ39から受信した信号に応じて、ピストン99を、周期的サイクルでシリンダ111内を移動させるように構成されるが、その周期的サイクルは、ピストン99の移動方向を交互に反転させて、入口出口ポート112及び114を通して流体88をポンプ輸送するようになっている。医師30が心臓26の組織を灌注するのを停止するよう決定するとき、又はシステム20が自動的に灌注を停止させたとき、プロセッサ39は、信号をコントローラ33に送信してシリンダ111内でのピストン99の移動を停止させ、その結果、灌注が停止する。
【0073】
図4は、本発明の一実施形態による、ポンプ44に、灌注流体88を一定の出力で流させるための方法を概略的に例示するフローチャート200である。この方法は、ピストン移動工程202において開始し、コントローラ33は、プロセッサ39から制御信号を受信して、灌注流体88で心臓26の組織を灌流し、上の図3Bの間隔164に記載されているように、ピストン99を選択された方向へベースライン速度(BLS)で移動させるように制御する。
【0074】
位置信号受信工程204においては、コントローラ33は、上記の図3Bに記載されているように、壁77に向かって移動させられているピストン99の位置を示すそれぞれの信号を、PPSA54から受信する。第1の速度設定工程206においては、コントローラ33は、ピストンが間隔164内の移動を終了したことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、ピストン99を、間隔165に沿って速度S1で壁77に向かって移動させるように制御する。続いて、ピストン99が壁77に近づくと、コントローラ33は、上の図3Bに記載されているように、ピストン99の速度を低減し、ピストン99が壁77に到達する際に完全に停止させる。
【0075】
第2の速度設定工程208では、コントローラ33は、PPSA54から、ピストンが壁77と接触していることか又は壁77に近づいていること(例えば、壁77から前述した所定の間隔以内まで近づいていること)を示す信号を受信したことに応じて、上記の図3Bに記載されるように、ピストン99を、間隔167に沿って速度S2で壁66に向かって移動させるように制御する。第3の速度設定工程210では、コントローラ33は、ピストンが間隔167内の移動を終了したことを示す信号をPPSA54から受信したことに応じて、上記の図3Bに記載されているように、ピストン99を、間隔179に沿って壁66に向かってBLSで移動させるように設定する。いくつかの実施形態では、工程210は、典型的には、コントローラ33がPPSA54から、ピストンが間隔179内の移動を終了したことを示す信号を受信した時点で通常は終了し、方法は工程206に戻り、かつ、コントローラ33が心臓26の組織への灌注を停止させる制御信号をプロセッサ39から受信するまで継続する。
【0076】
アブレーション作業どうしの間及びアブレーション中の灌注ポンプの制御
図5は、本発明の別の実施形態による、心臓アブレーション処置で使用されるポンプ44内での、ピストン99の移動のプロファイルの概略描写図である。いくつかの実施形態では、コントローラ33は、2つの動作モード(本明細書では第1及び第2の動作モードと称される)でポンプ44を動作させるように構成される。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1の動作モードは、壁66又は壁77から所定の距離(例えば、約0.5cmなどであるが、それに限られない)を超えない所定の間隔311で実行される。コントローラ33は、第1の動作モードでは、非アブレーション状態333でポンプ44を動作させるように構成され、遠位端22が心臓26内で医師30によって操作されるが、心臓26の組織をアブレーションしないようになっている。なお、以下に詳細に記載されるアブレーション状態では、ピストン99の移動方向を変更することなく流体88をポンプ輸送することが重要で、したがって、非アブレーション状態333は、壁66及び壁77のうちの1つにごく近接してピストン99を位置決めするために、かつ必要に応じて、心臓26内で指定の灌注を行うために、コントローラ33によって使用されることに留意されたい。
【0078】
いくつかの実施形態では、非アブレーション状態333では、コントローラ33は、ピストン99を制御して所定の間隔311にわたって振動させるように構成されている。このような実施形態では、ピストン99は、周期的サイクルでインターバル311内では移動されるが、その周期的サイクルは、ピストン99の移動方向を交互に反転させて、入口出口ポート112及び114を通して、流体88をポンプ輸送するようになっている。なお、間隔311内でピストン99を振動させることにより、灌注アセンブリ11は、間隔311の幅及びピストン99の移動速度によって、又は換言すれば、1つの振動(例えば、壁66の場所で開始し終了する)のサイクル時間によって画定される流体88のパルスで、心臓26の組織を灌注することに留意されたい。
【0079】
他の実施形態では、コントローラ33は、例えば、上記図3B及び図4に記載される技術を適用することによって、間隔311内でのピストン99の移動を制御し、一定の流量の流体88をポンプ輸送してもよい。
【0080】
代替的な実施形態では、コントローラ33は、任意の他の好適な移動プロファイルを使用して、ピストン99の移動を制御してもよい。コントローラ33は、例えば、プロセッサ39からの指示信号に応じて、ピストン99の速度を時間と共に変化させ、ポンプ44によってポンプ輸送される流体88の量を増減させるように制御することができる。この例示的な移動プロファイルは、医療処置に関連する1つ以上の信号を受信したことに応じて、医師30によって手動で、又はプロセッサ39によって自動的に定義され得る。
【0081】
他の実施形態では、コントローラ33は、ポンプ44を、典型的には間隔311内に位置する、壁66及び/又は壁77からの任意の好適な所定の距離の位置で、移動することなく静止しているように制御することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、典型的には組織アブレーション中にアブレーション状態300の動作ポンプ44と、典型的にはアブレーション作業間の非アブレーション333状態の動作ポンプ44との間で、選択をするように構成されている。場合によっては、コントローラ33は、プロセッサ39から指示信号を受信して、状態300と状態333との間で切り替えを行う。
【0083】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、前述の第2の動作モードに対応するアブレーション状態300では、ピストン99を制御して、壁66と壁77との間を選択された速度で移動させるように構成されている。選択された速度は、心臓26内の全てのアブレーション部位のアブレーション中においては一定であってもよく、又は異なるアブレーション条件(例えば、時間、温度、及び組織に印加されるRFエネルギー量)に応じて、心臓26内の具体的なアブレーション部位どうしの間で変化してもよい。更に、ある具体的なアブレーション部位でのアブレーションの間、コントローラ33は、例えば、そのアブレーション部位で測定された温度の変化に応じて、ピストン99の移動速度を変化させることができる。換言すれば、コントローラ33は、ピストン99を制御して、組織アブレーション中に可変速度で移動させるように構成されている。
【0084】
いくつかの実施形態では、コントローラ33は、間隔311の外側にありかつ間隔311とは重なっていない、所定の間隔322内にピストンが位置しているときに、ポンプ44をアブレーション状態300で作動させる。
【0085】
他の実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が依然として間隔311内に位置しているときに、第1の動作モードから(すなわち、非アブレーション状態333でのモード)、第2の動作モード(すなわち、アブレーション状態300でのモード)に切り替えることを選択してもよい。同様に、コントローラ33は、ピストン99がシリンダ111の他端の間隔311内に既に位置した後、第2の動作モードから第1の動作モードに切り替えて戻ることを選択してもよい。
【0086】
一実施形態では、プロセッサ39は、ピストンが間隔311内で壁66に近接した位置にあるときに、第1の指示信号をコントローラ33に送信し、アブレーション状態300に切り替え、かつ、ピストンが間隔311内で壁77に近接した位置にあるときに、第2の指示信号をコントローラ33に送信し、非アブレーション状態333に切り替えるようにしてもよい。図5に示すこの例示的実施形態では、アブレーション状態300を表す矢印は、間隔311内で壁66に近接した位置で始まり、間隔311内で壁77に近接した位置で終端している。このような実施形態では、コントローラ33は、ピストン99が壁77と物理的に接触するまで、ポンプ44をアブレーション状態300で動作させるように構成されている。
【0087】
他の実施形態では、コントローラ33は、プロセッサ39とは独立して、第1の動作モードと第2の動作モードとの間で選択をするように構成されている。例えば、コントローラ33は、ピストン99が間隔311内に位置していることを示す位置信号をPPSA54から受信したことに応じて、第2の動作モードのアブレーション状態300から、第1の動作モードの非アブレーション状態333に切り替えることができる。
【0088】
追加的に又は代替的に、コントローラ33は、例えば、所定の体積の流体88で心臓26のアブレーション部位を灌注した後、他のシーケンスを用いて、又は任意の他の好適な信号に基づいて、又はコントローラ33にプログラムされた任意の好適なシーケンスを使用することによって、第1の動作モードと第2の動作モードとの間で選択をするように構成されている。
【0089】
図5のこの特定のシーケンスは、例えばデュアルアクションポンプを使用してアブレーション中に組織を灌注するために十分な流体88を確保することといった特定の問題を示すために、例として示されている。上述したように、これらの問題は、本発明の実施形態によって対処されるが、これらの実施形態の適用が心臓アブレーションシステム内で動作するデュアルアクションポンプの性能を向上させることも実証している。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の種類の例示的なポンプ及びシステムに限定されるものでは決してなく、本明細書に記載される原理は、他の種類のポンプ及び医療アブレーションシステムにも同様に適用され得る。
【0090】
図6は、本発明の別の実施形態による、灌注アセンブリ11によって実行される心臓アブレーション処置において灌注流体88をポンプ輸送するための方法を、概略的に示すフローチャート400である。この方法は、第1ピストン移動工程402で始まるが、そこでは、コントローラ33は、アブレーション状態300の矢印によって示される方向に選択された速度で、ピストン99の移動を制御する。なお、工程402においては、コントローラ33は、心臓26内の組織のアブレーション中は、ポンプ44を第2の動作モードで動作させ、ピストン99を壁77に向かって移動させるように制御していることに留意されたい。
【0091】
位置信号受信工程404において、コントローラ33は、上記の図3Bに記載されているように、壁77に向かって移動したピストン99のそれぞれの位置を示す信号を、PPSA54から受信する。ピストン振動工程406においては、コントローラ33は、ピストン99が間隔311内で、壁77にごく近接して位置することを示す位置信号を受信したことに応じて、上記の図5に記載されているように、非アブレーション状態333を使用して、間隔311にわたってピストン99を振動させるように制御する。
【0092】
制御信号受信工程408においては、コントローラ33は、心臓26内の組織アブレーションの開始を示す制御信号を、(例えば、プロセッサ33から)受信する。なお、工程402に示される第1の灌注は、遠位端22が第1のアブレーション部位に位置しているときに実行され、工程408の制御信号は、遠位端22が典型的には第2の異なるアブレーション部位に位置しているときに受信されるということに留意されたい。
【0093】
第2のピストン移動工程410においては、コントローラ33は、制御信号を受信したことに応じて、ポンプ44の動作モードを切り替え、第2のアブレーション部位のアブレーション中に流体88を用いて組織を灌注するために、壁66に向かってピストン99を移動させるようにピストン99を制御する。いくつかの実施形態では、コントローラ33は、上述の工程402で選択された速度でピストン99が移動する、ただし、反対方向、すなわち壁66に向かって移動するように制御する。他の実施形態では、第2のアブレーション部位におけるアブレーションパラメータは、第1のアブレーション部位のアブレーションパラメータと異なっていていてもよく、したがって、工程410で選択された速度は上記の工程402で選択された速度と異なっていて、かつ、第2のアブレーション部位でのアブレーションプロセス中に流体88で好適な灌注を実行するようになっていてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、終了工程401の後、方法は工程404に戻り、最後のアブレーション部位が医師30によってアブレーションされるまで継続する。
【0095】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓アブレーション処置における組織灌注に対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、他の用途、例えば、他の心臓用途、任意の他の臓器の組織に適用される任意のタイプのアブレーション処置において使用することもできる。
【0096】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0097】
〔実施の態様〕
(1) デュアルアクションポンプであって、
第1及び第2の入口出口ポートを備えるシリンダであって、前記第1及び第2の入口出口ポートのそれぞれが、前記シリンダへの流体の取り入れと、前記シリンダからの前記流体の出力とを交互にするように構成されている、シリンダと、
ピストンであって、前記第1及び第2の入口出口ポートを介して前記流体をポンプ輸送するため、前記シリンダ内で前記ピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで移動されるように構成されている、ピストンと、
コントローラであって、前記ピストンが、
(a)前記移動方向を反転させることに先行する第1の所定の間隔中の第1の速度、
(b)前記方向を反転させることに後続する第2の所定の間隔中の、前記第1の速度よりも速い第2の速度、又は
(c)前記第1及び第2の間隔の外側の、前記第1の速度よりも遅いベースライン速度、
のうちの1つ以上で移動するように、前記シリンダ内での前記ピストンの前記移動を制御するように構成されている、コントローラと、
を備える、デュアルアクションポンプ。
(2) 前記シリンダ内の前記ピストンの位置を示す制御信号を生成するように構成されているピストン位置検知アセンブリ(PPSA)を備え、
前記コントローラが、前記制御信号を受信し、前記制御信号に基づいて前記ピストンの前記移動を制御するように構成されている、実施態様1に記載のポンプ。
(3) 前記コントローラが、前記シリンダの第1の端部と第2の端部との間の前記ピストンの前記移動を制御するように構成され、
前記PPSAは、
(a)前記ピストンが前記第1の端部から所定の距離内に位置するときに、第1の位置信号を生成するように構成されている第1の電気スイッチと、
(b)前記ピストンが前記第2の端部から所定の距離内に位置するときに、第2の位置信号を生成するように構成されている第2の電気スイッチと、
を備え、
前記PPSAが、前記第1の位置信号及び前記第2の位置信号のうちの少なくとも1つに基づいて、前記制御信号を生成するように構成されている、
実施態様2に記載のポンプ。
(4) 前記コントローラは、少なくとも前記第1及び第2の所定の間隔を含む第1の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通してポンプ輸送される所与の体積の前記流体を制御し、かつ前記ピストンが前記第1及び第2の間隔の外側にあるとき、前記第1の期間とほぼ等しい第2の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通ってポンプ輸送される同じ所与の体積の前記流体を制御するように構成されている、実施態様3に記載のポンプ。
(5) 前記第1及び第2の入口出口ポートのうちの少なくとも1つが、第1のパイプを介して流体リザーバに連結され、かつ第2のパイプを介してカテーテルに連結されて、医療処置中に組織に前記流体を灌注する、実施態様1に記載のポンプ。
【0098】
(6) それぞれが、シリンダに流体を取り込むことと、前記シリンダから前記流体を出力させることとを交互に行うための第1及び第2の入口出口ポートを有する前記シリンダを備えるデュアルアクションポンプ内で、前記流体をポンプ輸送するための方法であって、
ピストンの移動方向を交互に反転させる周期的サイクルで、前記シリンダ内で前記ピストンを移動させて、前記第1及び第2の入口出口ポートを介して前記流体をポンプ輸送することと、
前記シリンダ内の前記ピストンの前記移動を、
(a)前記移動方向を反転させることに先行する第1の所定の間隔中の第1の速度、
(b)前記方向を反転させることに後続する第2の所定の間隔中の、前記第1の速度よりも速い第2の速度、又は
(c)前記第1及び第2の間隔の外側の、前記第1の速度よりも遅いベースライン速度、
のうちの1つ以上に制御することと、
を含む、方法。
(7) 前記シリンダ内の前記ピストンの位置を示す制御信号を生成することと、
前記制御信号に基づいて前記ピストンの前記移動を制御することと、
を更に含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記シリンダ内での前記ピストンの前記移動を制御することは、
前記シリンダの第1の端部と第2の端部との間の前記ピストンの前記移動を制御することを含み、
(a)前記ピストンが前記第1の端部から所定の距離内に位置するときに第1の位置信号を生成し、かつ(b)前記ピストンが前記第2の端部から所定の距離内に位置するときに第2の位置信号を生成することと、
前記第1及び第2の位置信号のうちの少なくとも1つに基づいて前記制御信号を生成することと、
を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記ピストンの前記移動を制御することが、
少なくとも前記第1及び第2の所定の間隔を含む第1の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通してポンプ輸送されるべき所与の体積の前記流体を制御すること、及び
前記ピストンが前記第1及び第2の間隔の外側にあるとき、前記第1の期間にほぼ等しい第2の期間中に、前記第1及び第2の入口出口ポートを通してポンプ輸送されるべき同じ所与の体積の前記流体を制御すること、
を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記第1及び第2の入口出口ポートのうちの少なくとも1つを、第1のパイプを介して流体リザーバに、かつ第2のパイプを介してカテーテルに連結することによって、医療処置中に組織に前記流体を灌注することを更に含む、実施態様6に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6