(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 5/30 20060101AFI20240430BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240430BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240430BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240430BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20240430BHJP
H04N 1/62 20060101ALI20240430BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B41J5/30 C
B41J29/393 101
B41J2/525
G06F3/12 308
G06F3/12 347
G06F3/12 356
H04N1/407 780
H04N1/62
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2019239172
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 隆司
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007647(JP,A)
【文献】特開2011-066862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0177365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 5/30
B41J 29/393
B41J 2/525
G06F 3/12
H04N 1/407
H04N 1/62
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の画像データに対し所定の画像処理を行って印刷手段が処理可能なプリントデータを生成する処理手段、および前記印刷手段を制御する制御装置であって、
ユーザから対象色の指定を受け付ける受付手段と、
前記対象色
を段階的に変化させた候補色を特定する特定手段と、
印刷対象の画像データに含まれる前記対象色のRGB値を、前記特定された候補色のうち前記ユーザに指定された候補色のCMYK値に変換するための処理であって、前記特定された候補色を含む所定の色見本の印刷を前記印刷手段に行わせる処理を実行する実行手段と、
前記ユーザから前記処理の実行指示を受け付けたことに応答し
て、前記印刷手段に対しキャリブレーションを実行させ、前記印刷手段において前記キャリブレーションの終了後に、前記処理手段に対し前記所定の色見本の画像データへの前記キャリブレーションの結果に基づく前記所定の画像処理を実行させて前記所定の色見本のプリントデータを生成させ、当該生成されたプリントデータを用いた前記処理を前記実行手段に実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記処理の実行指示を受け付けた際に前記キャリブレーションの実行の要否判定を行い、前記キャリブレーションの実行が不要と判定された場合は、前記キャリブレーションを実行させることなく、前記処理を前記実行手段に実行させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、一定期間内に前記キャリブレーションを実行済である場合に前記キャリブレーションの実行が不要と判定することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記キャリブレーションとして、前記印刷手段が使用する複数の色材それぞれについての一次元のキャリブレーションに続いて、前記複数の色材の組合せに対する多次元のキャリブレーションを前記印刷手段に実行させる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記所定の画像処理にはガンマ補正処理を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記指定された対象色を含むオブジェクトの種類を特定し、当該特定されたオブジェクトの種類に対応したキャリブレーションを前記印刷手段に実行させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記キャリブレーションが実行される旨をユーザに通知することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
ユーザの指示を受け付けるユーザインタフェース手段を備え、
前記制御手段は、前記キャリブレーションが実行される旨のメッセージを前記ユーザインタフェース手段に表示することにより前記通知を行うことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記印刷対象の画像データに含まれる前記対象色のRGB値を、前記特定された候補色のうち前記ユーザに指定された候補色のCMYK値に変換するためのテーブルを生成する生成手段をさらに有し、
前記生成されたテーブルを用いて前記印刷対象の画像データに含まれる前記対象色のRGB値を、前記特定された候補色のうち前記ユーザに指定された候補色のCMYK値に変換する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記印刷手段及び前記処理手段を備えた外部装置とネットワークを介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
印刷対象の画像データに対し所定の画像処理を行って印刷手段が処理可能なプリントデータを生成する処理手段、および前記印刷手段を制御する制御方法であって、
ユーザから対象色の指定を受け付ける受付ステップと、
前記対象色
を段階的に変化させた候補色を特定する特定ステップと、
印刷対象の画像データに含まれる前記対象色のRGB値を、前記特定された候補色のうち前記ユーザに指定された候補色のCMYK値に変換するための処理であって、前記特定された候補色を含む所定の色見本の印刷を前記印刷手段に行わせる処理を実行する実行ステップと、
前記ユーザから前記処理の実行指示を受け付けたことに応答して、前記印刷手段に対しキャリブレーションを実行させ、前記印刷手段において前記キャリブレーションの終了後に、前記処理手段に対し前記所定の色見本の画像データへの前記キャリブレーションの結果に基づく前記所定の画像処理を実行させて前記所定の色見本のプリントデータを生成させ、当該生成されたプリントデータを用いた前記実行ステップが行われるように制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像データを印刷するプリンタにおける色調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(パーソナルコンピュータ)上のアプリケーションを使用して作成したデジタル画像データは、ネットワークを介してプリンタに送られ、プリンタ内でプリントデータに変換され印刷処理される。通常、デジタル画像データは、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色成分から成る。そして、プリントデータは、プリンタが使用する4種類の色材に対応した色成分、すなわち、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4つの色成分から成る。そこで、プリンタ内では、RGBで表現されている色をCMYKで表現される色へと変換する必要があり、この際、PCのモニタに表示されたデジタル画像データにおける色味に近づくように色変換が行われるのが一般的である。
【0003】
いわゆるPOP広告等の用途では、デジタル画像上の任意の調整対象色(例えばコーポレートカラーなど)について、上述したモニタの色味に合わせる一般的な色変換に代えて、ユーザが指定する目指す色(目標色)に変換する特殊な色変換が求められる。以下、この色変換を「特殊色変換」と呼ぶこととする。この特殊色変換を行う際、調整対象色に対する目標色をユーザに指定させるために色見本を用いることがある。ユーザは、目標色の候補となる複数の色それぞれに対応した色パッチが並ぶ色見本を印刷し、そのスキャン画像を参照して所望の色を持つ色パッチを選択することで目標色を指定する。この色見本の印刷時には、その色合いを保証するために、プリンタの階調特性が標準状態であることが好ましい。
【0004】
また、例えばプリンタを買い替えた際に、買い替え前の旧プリンタで行っていた特殊色変換を、買い替え後の新プリンタでも引き続き行いたいということがある。この際、旧プリンタによる出力結果を色見本として用いて新プリンタにて目標色を設定することが考えられるが、その際には、目標色の色合いを保証するために、旧プリンタの階調特性が標準状態であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、プリンタは、階調のキャリブレーションを実施することにより、階調特性が標準状態となり、印刷結果における色合いを保証することが可能となる。この点、特許文献1には、デジタル画像データを印刷処理する前に、階調のキャリブレーションの要否を判断してその必要性がある場合にユーザに通知する技術が記載されている。この特許文献1の技術の場合、階調のキャリブレーションをユーザに促すのみであるため、実際に階調のキャリブレーションが実行されるかどうかはユーザの意思に委ねられている。つまり、特許文献1の技術は、印刷時に階調特性が標準状態になっていることまでを保証するものではない。階調特性がプリンタの標準状態からずれている状態のままで上述した色見本の印刷を行っても、適切な結果が得られないことになるので、その意味では上記特許文献の1の技術は十分とは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、印刷対象の画像データに対し所定の画像処理を行って印刷手段が処理可能なプリントデータを生成する処理手段、および前記印刷手段を制御する制御装置であって、ユーザから対象色の指定を受け付ける受付手段と、前記対象色を段階的に変化させた候補色を特定する特定手段と、印刷対象の画像データに含まれる前記対象色のRGB値を、前記特定された候補色のうち前記ユーザに指定された候補色のCMYK値に変換するための処理であって、前記特定された候補色を含む所定の色見本の印刷を前記印刷手段に行わせる処理を実行する実行手段と、前記ユーザから前記処理の実行指示を受け付けたことに応答して、前記印刷手段に対しキャリブレーションを実行させ、前記印刷手段において前記キャリブレーションの終了後に、前記処理手段に対し前記所定の色見本の画像データへの前記キャリブレーションの結果に基づく前記所定の画像処理を実行させて前記所定の色見本のプリントデータを生成させ、当該生成されたプリントデータを用いた前記処理を前記実行手段に実行させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、プリンタの階調特性が標準状態にあることが保証された状況下で色見本の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る、プリントシステムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】実施形態1に係る、画像処理部の内部構成を示す機能ブロック図。
【
図3】実施形態1に係る、特殊色変換LUTの作成処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】(a)及び(b)は、特殊色変換を行う際のUI画面の一例を示す図。
【
図5】印刷出力された色見本チャートの一例を示す図。
【
図6】色見本チャートの印刷制御処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】キャリブレーションチャートの一例を示す図。
【
図9】(a)及び(b)は、プリンタの使用を開始してからの経過時間tとプリント部における標準状態からの濃度ずれ量との関係を示す図。
【
図10】実施形態2に係る、プリントシステムの構成の一例を示すブロック図。
【
図11】実施形態2に係る、特殊色変換LUTを作成する処理の流れを示すフローチャート。
【
図13】色見本チャートの印刷先を指定するためのUI画面の一例を示す図。
【
図14】印刷先プリンタでのキャリブレーションの流れを示すフローチャート。
【
図15】印刷先プリンタでの色見本チャートの印刷処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を好適な実施例に従って詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
[実施形態1]
<プリントシステムの構成>
図1は、本実施形態に係る、プリントシステムの構成の一例を示す図である。プリンタ120は、ネットワーク130を介してPC(パーソナルコンピュータ)110と接続されている。ネットワーク130は、例えば、LANやWAN等である。
【0012】
PC110には文書作成や表作成を行うアプリケーションの他、プリントドライバがインストールされている。任意のアプリケーションで作成したデジタル画像データをプリントする場合、ユーザは、プリンタドライバでPDL(Page Description Language)データに変換し、得られたPDLデータをネットワーク130経由でプリンタ120に送信する。また、PC110にはモニタ109が接続されており、各種アプリケーションで作成したデジタル画像データの表示などを行う。
【0013】
プリンタ120は、CPU121、メモリ122、大容量記憶部123、UI(ユーザインタフェース)部124、画像処理部125、プリント部126、スキャン部127、ネットワークI/F128を備える。そして、これら各部はバス129を介して相互に接続されている。CPU121は、プリンタ120全体の制御を司り、受信したPDLデータをPDLインタプリタで解釈し、レンダリングによりプリント用のビットマップデータに変換する。レンダリングは、CPU121を使用してソフトウェアで行なってもよいし、専用のハードウェアで行っても問題ない。レンダリングによって、1画素あたり複数の色成分を持つビットマップデータが生成される。複数の色成分とは、R(赤)、G(緑)、B(青)あるいはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)など、所定の色空間における独立した色成分のことである。ビットマップデータは、画素毎に、1つの色成分につき8ビット(256階調)の値を持つ。すなわち、ビットマップデータは多値の画素を含む、多値の画像データである。また、レンダリングでは、印刷対象の画像データに加え、当該画像データにおける各画素の属性を示す属性データも生成される。この属性データは、各画素がどの種類のオブジェクトに属するかを示し、例えば文字やグラフィックやイメージといったオブジェクトの種類を示す値を属性情報として保持している。ネットワークI/F128は、プリンタ120を、ネットワーク130を介してPC110や他の装置(不図示)に繋げ、それらと各種データをやり取りするためのインターフェースである。メモリ部122は、CPU121のワークエリアとしてのRAMや各種プログラムを格納するためのROMで構成される。大容量記憶部123は、例えばHDDやSSDで構成され、OSやプログラム或いはPC110から受信したPDLデータ等の格納に使用する。UI部124は、各種表示を行うためのディスプレイを兼ねたタッチパネルやハードウェアボタンで構成される。画像処理部125は、レンダリングによって得られたビットマップデータに対して所定の画像処理を行って、プリント部126で処理可能なプリントデータを生成する。プリント部126は、画像処理部125によって生成されたプリントデータに基づき、紙等の記録媒体に印刷処理を行なう。スキャン部127は、不図示の原稿台等にセットされた原稿を光学的に読み取って画像データ(スキャン画像データ)を生成する。
【0014】
プリンタ120において各種の動作・処理を実現するソフトウェアは、例えば上述の大容量記憶部123を含むコンピュータ可読媒体に格納される。ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体からメモリ部122内のRAMにロードされ、CPU121がこれを実行することで実現される。
【0015】
<画像処理部の詳細>
図2は、本実施形態に係る、画像処理部125の内部構成を示す機能ブロック図である。画像処理部125は、色変換部201、ガンマ補正部202、中間調処理部203、制御コマンド生成部204、LUT作成部205を有する。以下、各機能ブロックについて説明する。
【0016】
色変換部201は、入力されたビットマップデータの色空間(ここではRGB色空間)を、プリントデータ用の色空間(ここではCMYK)に変換する色変換処理を、色変換テーブルを用いて行う。通常の色変換においては、一般色変換LUT211が用いられる。なお、「LUT」とは、ルックアップテーブルの略であり、色空間内の複数の離散点(後述の格子点に相当)における入力値と出力値とを対応付けて保持している。一般色変換LUT211は、RGB色空間における様々な階調の色値(RGB値)を、CMYK色空間における対応する色値(CMYK値)に変換するための色変換テーブルであり、プリンタ120の階調特性が標準状態にあるときに予め作成し保持しておく。また、色変換部201は、前述の特殊色変換も行う。この特殊色変換では、特殊色変換LUT212に基づき、ビットマップデータ内の調整対象色に対応する特定のRGB値が、ユーザが指定する目標色に対応する特定のCMYK値に変換されることになる。
【0017】
ガンマ補正部202は、色変換処理によって得られたCMYK色空間のビットマップデータに対し、階調補正テーブル(階調補正LUT213)を用いて、ガンマ補正処理を行う。
【0018】
中間調処理部203は、ガンマ補正処理後のCMYK色空間のビットマップデータに対し中間調処理を行って、網点で表現されたプリントデータを生成する。生成されたプリントデータは、プリント部126に送られる。
【0019】
制御コマンド生成部204は、上述した各種LUTを作成するための制御コマンドを生成する。LUT作成部205は、制御コマンド生成部204にて生成された制御コマンドに従って、上述の各種LUTを作成する。
【0020】
<特殊色変換LUTの作成処理>
図3は、本実施形態に係る、画像処理部125における特殊色変換LUT212の作成処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図3のフローチャートに沿って、特殊色変換LUTの作成の一連の流れを説明する。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。
【0021】
S301では、印刷対象の画像データ(ビットマップデータ)内の任意の調整対象色が、UI部124を介して設定される。例えば、UI部124の画面上に印刷対象画像を表示し、ユーザが調整したい色の部分をタッチ操作し、当該タッチ操作に係る位置のRGB値で表される色が調整対象色として設定される。ここでは、RGB値=(R1,G1,B1)の色が調整対象色として設定されたものとする。
【0022】
S302では、S301にて設定された調整対象色が目指す目標色の候補となる色が決定される。実際に印刷してみないと本当の色は分からないので、候補色は、複数決定される。具体的には、設定された調整対象色を段階的に変化させた複数の色を算出することで複数の候補色が決定される。この際の色の変化のさせ方としては、例えばR、G、B別に所定の変化量を調整対象色に足す手法がとられる。こうして決定された複数の候補色も、UI部124の画面上に表示される。
【0023】
S303では、S302にて決定された複数の候補色それぞれに対応する色パッチが並んだチャート(色見本チャート)の印刷制御処理が実行される。
図4の(a)及び(b)は、特殊色変換を行う際のUI画面の一例を示す図である。そして、
図4(a)は、色見本チャートの印刷指示を受け付ける場面におけるUI画面の状態を示している。
図4(a)に示すUI画面内の矩形401には調整対象色に対応する色が表示され、3つの矩形402a~402cには複数の候補色それぞれに対応する色が表示されている。なお、ここでは候補色の数を3つとしているが、これに限定されるものではない。ユーザが「印刷」ボタン403を押下すると、色見本チャートの画像データが生成され、プリント部126に送られて印刷出力される。
図5は、印刷出力された色見本チャートの一例を示す図である。
図5に示す色見本チャート500には、上述の3つの矩形402a~402cに対応する3つの色パッチ501~503が形成されている。そして、このような色見本チャートの印刷を行う時点でプリンタ120の階調特性が標準状態にあることを保証するため、色見本チャートの印刷に先立って、階調補正LUT213の更新と更新後の階調補正LUT213を用いたガンマ補正処理が実行される。色見本チャートの印刷指示から実際に印刷出力されるまでの制御の詳細については後述する。
【0024】
S304では、S301にて設定された調整対象色についての目標色が、UI部124を介したユーザ指示に基づき設定される。
図4(b)は、目標色の選択を受け付ける場面におけるUI画面の状態を示している。ユーザは、印刷出力された色見本チャートを見ながら目指す色を確認しつつ、UI画面内に表示された複数の候補色の中から、調整対象色についての目標色に対応する矩形部分をタッチ操作等により1つ選択する。
図4(b)の例では矩形402bが選択されており、この状態で「完了」ボタン404が押下されると、当該選択中の色に対応する色見本チャートにおけるCMYK値で表される色が目標色として設定されることになる。ここでは、CMYK値=(C1,M1,Y1,K1)の色が目標色として設定されたものとする。
【0025】
S305では、S301にて設定された調整対象色のRGB値(R1,G1,B1)が入力された場合に、S304にて設定された目標色のCMYK値(C1,M1,Y1,K1)が出力されるような特殊色変換用の特殊色変換LUT212が作成される。この特殊色変換LUT212を色変換処理において使用することにより、入力画像データ内のある画素におけるRGB値が(R1,G1,B1)のとき、色変換後のCMYK値は(C1,M1,Y1,K1)となる。なお、調整対象色が複数ある場合は、LUT作成部205は、各調整対象色のRGB値に対して目標色となるCMYK値がそれぞれ対応付けられた特殊色変換LUT212を作成することになる。
【0026】
以上が、色変換部201が特殊色変換処理の際に使用する特殊色変換LUT212が出来上がるまでの大まかな流れである。
【0027】
<色見本チャートの印刷制御処理の詳細>
図6は、上述の
図3のフローにおける色見本チャートの印刷制御処理(S303)の詳細を示すフローチャートである。以下、
図6のフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。
【0028】
S601では、色見本チャートの印刷指示がなされたか否か、具体的には、
図4(a)に示すUI画面における「印刷」ボタン403が押下されたかどうかが判定される。「印刷」ボタン403の押下が検知された場合はS602に進み、検知されない場合は所定間隔にてボタン押下監視処理を続ける。
【0029】
S602では、色見本チャートの印刷に先立って階調のキャリブレーションを実施するべく、専用のチャート(以下、「キャリブレーションチャート」と呼ぶ)が印刷される。
図7にキャリブレーションチャートの一例を示す。
図7に示すキャリブレーションチャートは、CMYK各色について、薄いものから濃いものまで7段階に変化した7つの色パッチで構成されている。ここでは説明を簡単にするため、各色7階調分の色パッチとしているが、例えば各色64階調分にするなどより多くの階調数とすることで高精度なキャリブレーションが可能となる。なお、本ステップの実行に際しては、キャリブレーションを先行実施する旨のメッセージをUI部124に表示したり、音声で報知するなどして、ユーザに通知することを併せて行うようにしてもよい。
【0030】
S603では、印刷出力したキャリブレーションチャートのスキャン画像データが取得される。この際には、まず、キャリブレーションチャートのスキャンをユーザに促すメッセージがUI部124に表示される。そして、ユーザによるスキャン開始の指示(例えば、「スキャン開始」ボタンの押下)に応答して、キャリブレーションチャートをスキャン部127で読み取る。これにより、キャリブレーションチャートのスキャン画像データが取得される。
【0031】
S604では、S603にて取得したスキャン画像データから、それぞれの色パッチの輝度値が読み取られる。そして、読み取られた各色パッチの輝度値は、予め求めてあった輝度濃度変換テーブルを用いて濃度値に変換される。
【0032】
S605では、S604にて得られた各色パッチの濃度値に基づいて、プリント部126の階調特性が標準状態となるような階調補正LUTが新たに作成される。
図8は、プリンタ部126の階調特性の一例を示すグラフである。
図8のグラフにおいて、横軸が入力濃度値を示し、縦軸が出力濃度値を示している。CMYKの各色において階調特性は異なり得るものであるが、ここでは、CMYK共通の階調特性を持つものとして説明することとする。
図8のグラフにおいて、破線801がプリンタ部126の階調特性が標準状態である時の理想的な階調特性を示し、実線802がキャリブレーションチャートを読み取って得られた濃度値をプロットして得られた実際の階調特性を示している。この例では、標準状態よりも濃い濃度で出力されるような状態にずれていることになる。このまま色見本チャートを印刷出力した場合には、標準状態より濃い状態で各色パッチが印刷されてしまうので、結果的に不正確な目標色が設定されてしまうことになる。そこで、プリント部126の階調特性が破線801で示す標準状態となるよう、実線802が示す階調特性を打ち消すような入力濃度値と出力濃度値との関係を実現可能な新たな階調補正LUTを作成する。
図8のグラフにおいて、一点鎖線803は、標準状態の階調特性を実現するために新たに作成した階調補正LUTの階調特性を示している。ここでは、濃度値が8ビット(256階調)の例を示しているが、これに限定されない。こうして、新たに作成された階調補正LUTが、ガンマ補正部202で使用される階調補正LUT213として設定(更新)される。
【0033】
S606では、上述の色見本チャートの画像データが生成され、生成された当該画像データに対して所定の画像処理が施されて、色見本チャートのプリントデータが生成される。具体的には、まず、色変換部201が一般色変換LUT211を用いた色変換処理を施し、次にガンマ補正部202がS605で設定された階調補正LUT213を用いてガンマ補正処理を施し、次に中間調処理部203が中間調処理を施す。こうして得られた色見本チャートのプリントデータはプリント部126に送られる。
【0034】
S607では、S606にて生成された色見本チャートのプリントデータがプリント部126から印刷出力される。
【0035】
以上が、本実施形態に係る、色見本チャートの印刷制御処理の内容である。これにより、プリント部126の階調特性が標準状態にあることが保証された状況下で、理想的な色見本チャートが得られる。なお、本実施形態では、チャートを印刷出力して行うタイプのキャリブレーションを例に説明を行ったが、色パッチを転写ベルト等に直接印刷してチャートを出力しないタイプのキャリブレーションでもよい。この場合は、S603を省略できる。
【0036】
<本実施形態の効果>
ここで、本実施形態の手法によって色見本チャートを印刷することの意義・効果について説明する。
図9の(a)及び(b)は、プリンタ120の使用を開始してからの経過時間tとプリント部126における標準状態からの濃度ずれ量との関係を示す図である。前述の
図8も合わせて参照しつつ、以下説明する。
【0037】
いま、経過時間tが“t0”のときに、キャリブレーション(Cal0)を実行したとする。このとき、キャリブレーションによって作成された階調補正LUTを適用してガンマ補正を行った後のプリント部126の階調特性は、前述の
図8のグラフにおける破線801が示す階調特性となる。つまり、入力濃度値が“inX0”のときは、出力濃度値は“outX0”となる。その後、プリンタ120の使用を続け、経過時間tが“t1”になったとき、プリント部126の階調特性が前述の
図8のグラフにおける実線802が示す階調特性に変化していたとする。つまり、入力濃度値が“inX0”に対応する出力濃度値が“outX1”に変化していたとする。
図9(a)は、この場合における、入力濃度値が“inX0”についての経過時間tと標準状態からの濃度ずれ量の変化を示しており、時間の経過と共に濃度ずれ量が増していることが分かる。この状態で、すなわち、キャリブレーションを“Cal0”のタイミングで実行してから“t1”経過後に、キャリブレーションを行わずに色見本チャートを印刷すると、プリント部126の階調特性が標準状態からずれた状況下で印刷されることになる。
【0038】
これに対し、本実施形態の手法の場合は、“Cal0”でキャリブレーションを実行し“t1”経過時点で色見本チャートの印刷指示があると、その印刷の前にキャリブレーションを実行させる(
図9(b)における“cal1”)。このタイミングでキャリブレーションを実行することでプリント部126の階調特性は標準状態に戻るため、濃度ずれ量も“0”にリセットされることになる。このように、本実施形態の手法の場合は、色見本チャートの印刷出力に先立ってプリント部126の階調特性が標準状態に置かれることが保証されるので、その後の目標色設定も適切に行うことが出来、ひいてはユーザが望む特殊色変換を行うことが可能となる。
【0039】
<変形例1>
プリント部126の階調特性が標準状態に戻っている状況下で色見本チャートが印刷出力されるようにすることが本実施形態の目的である。裏を返せば、例えばキャリブレーションの実行直後など、階調特性が標準状態にあることが推認されるような状況であれば、必ずしもキャリブレーションを行わなくてもよいといえる。そこで、前述の
図6のフローのS601にてYesの判定がなされた場合に、キャリブレーションの実行の要否判定を追加的に行ってもよい。この要否判定においては、例えば一定期間内にキャリブレーションが実行済であるか否か、直近のキャリブレーション実行後の印刷処理枚数が一定枚数以内か、といった所定条件を満足するかどうかで判断する。要は、プリント部126における濃度変動が少なく、色合いを保証することが可能と見込まれるような状況かどうかの見極めができればよい。そして、一定期間内にキャリブレーションを実行済であったり、印刷処理枚数が一定枚数以内の場合は、S602~S605をスキップするようにすればよい。このような制御を行うことで、不要なキャリブレーションの実行を抑制でき、キャリブレーションに伴うチャート用紙の節約やユーザの手間の削減にも繋がる。
【0040】
<変形例2>
通常、中間調処理部203での中間調処理に適用されるスクリーン線数は、オブジェクト種によって異なる。例えば、テキストの場合は高い線数、グラフィックの場合は中程度の線数、イメージ(写真)の場合は低い線数といった具合である。また、スクリーン線数が異なるとその構造の違いから階調特性もそれぞれ異なってくる。そのため、設定可能なスクリーン線数の種類数に応じた数のキャリブレーションを行う必要がある。例えば、上述のように高い線数、中程度の線数、低い線数といったように3種類ある場合は、キャリブレーションチャートも3枚印刷し、階調補正LUTも3つ作成する必要がある。
【0041】
そこで、S602におけるチャート印刷処理において、ユーザによって設定された調整対象色が属するオブジェクトを特定し、そのオブジェクト種に対応したスクリーン線数用のキャリブレーションチャートだけを印刷するようにしてもよい。例えば、調整対象色が属するオブジェクトの種類がテキストの場合は、高い線数のみの1枚のキャリブレーションチャートの印刷で済ませることができる。このような制御を行う際は、前述の
図3のフローのS301にて、ユーザが設定した調整対象色が属するオブジェクト種の情報を記憶しておくようにする。また、判別したオブジェクト種に適した中間調処理がなされるように中間調処理部203にて使用するスクリーン線数をオブジェクト種に対応したものに設定する。
【0042】
本変形例によれば、調整対応色が属するオブジェクト種に応じ、必要なキャリブレーションのみ行うので、変形例1と同様、出力用紙の節約やユーザの手間の削減に繋がる。また、調整対象色が属するオブジェクト種に応じてスクリーン線数を決めるのではなく、ユーザが特定のスクリーン線数を指定して、それに対応するキャリブレーションのみを行うような制御を行って同様の効果を得ることができる。
【0043】
<変形例3>
プリンタの中には、CMYKの組合せに対する多次元のキャリブレーション(以下、「多次色キャリブレーション」と呼ぶ)の機能を備えたものも存在する。この場合、上述したCMYK各色についての一次元のキャリブレーションを行った上で、さらに多次色キャリブレーションを行うようにしてもよい。具体的には、まず、前述した通り、CMYK各色についての一次元のキャリブレーションを行う(S602~S605)。これに続いて、多次色キャリブレーションを行って、LUT作成部205にてCMYKの組合せに対応した多次色補正LUTを作成する。作成した多次色補正LUTは、不図示の多次色補正部にて、ガンマ補正後のビットマップデータに対する色補正処理に使用され、当該色補正後のビットマップデータが中間調処理部203に出力される。このように一次元のキャリブレーションに続けて多次色キャリブレーションを実行するようにしてもよい。
【0044】
以上のとおり本実施形態によれば、色見本チャートの印刷を行う時点で、プリンタの階調特性が標準状態にあることが保証される。よって、プリンタの階調特性が標準状態からずれたままの状況下で色見本チャートが印刷されてしまうのを防ぐことが可能となる。その結果、適切な特殊色変換LUTを得ることができ、理想的な特殊色変換を実現できる。
【0045】
[実施形態2]
実施形態1では、特殊色変換用の色見本チャートを印刷出力する場面において、色見本チャートの印刷に先立って自プリンタの階調特性を標準状態にする態様について説明した。次に、異なるプリンタ間で色再現特性を揃えるべく、色見本チャートを自プリンタ以外の他プリンタで印刷出力する際に、当該他プリンタにおける階調特性を標準状態にする態様について実施形態2として説明する。なお、実施形態1と共通する内容については説明を省略し、以下では差異点を中心に説明を行うこことする。
【0046】
<プリントシステムの構成>
図10は、本実施形態に係る、プリントシステムの構成の一例を示す図である。実施形態1における
図1との違いは、ネットワーク130に対して、2台のプリンタ120a及び120bが接続されている点である。ここでは、プリンタ120aとプリンタ120bとは全く同じ構成としているが、別個のハードウェア構成であってもよい。以下では、プリンタ120aの色再現性をプリンタ120bの色再現性に合わせるデバイス間色合わせを行う場合を例に説明する。プリンタ120a及び120bのハードウェア構成、及び画像処理部125内の内部構成は、実施形態1と異なるところはないのでその説明を省く。なお、プリンタ120aが有するハードウェア構成や機能ブロックの符号には添え字“a”を付し、プリンタ120bが有するハードウェア構成や機能ブロックの符号には添え字“b”を付して区別するものとする。
【0047】
<特殊色変換テーブルの作成ついての説明]
図11は、本実施形態に係る、プリンタ120aの画像処理部125が、プリンタ120bで印刷出力された色見本チャートに基づき特殊色変換LUT212を作成する処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図11のフローチャートに沿って、特殊色変換LUTの作成の一連の流れを説明する。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。
【0048】
S1101では、実施形態1の
図3のフローにおけるS301と同様、特定の調整対象色がUI部124を介して設定される。続くS1102では、S1101にて設定された調整対象色に対応する色見本チャートの画像データが生成される。
図12に、本実施形態に係る色見本チャートの一例を示す。
図12に示す色見本チャート1200には、調整対象色に対応する色パッチ1201が1つ形成されている。ここでは、調整対象色が一色だけ設定されたとの前提で1つの色パッチとなっているが、複数の調整対象色が設定された場合は、設定された調整対象色分の色パッチが形成されることになる。
【0049】
S1103では、S1102にて生成した色見本チャートの画像データを印刷出力するプリンタ(印刷先)が、UI部124aを介して決定される。
図13は、この際にUI部124aに表示されるUI画面の一例である。
図13に示すUI画面1300には、プリンタ120aを示す「プリンタ1」ボタン1301とプリンタ120bを示す「プリンタ2」ボタン1302が存在している。いま、
図10に示すプリントシステムに接続された2台のプリンタ120a及び120b間で、プリンタ120aにおける色再現特性をプリンタ120bに揃えようとしている。よって、ユーザは、基準となるプリンタ120bを示す「プリンタ2」ボタン1302を選択して「決定」ボタン1303を押下する。このようにユーザは、
図13に示すようなUI画面を用いて、色見本チャートの印刷先となるプリンタを決定する。この「決定」ボタン1303の押下は、前述のS601における色見本チャートの印刷指示と等価である。
【0050】
S1104では、S1103にて決定された印刷先プリンタでの色見本チャートの印刷出力に先立って、当該プリンタの階調特性を標準状態にするために、当該プリンタに対してキャリブレーションの実行指示が送信される。この実行指示を受けた印刷先プリンタにおけるキャリブレーションの動作に関しては後述する。この際、プリンタ120aとプリンタ120bとが同じメーカーのプリンタ同士であれば、当該メーカーで使用されている共通の制御プロトコルを使用することができる。共通の制御プロ徳留であれば、キャリブレーションの実行指示と当該指示に従ったキャリブレーションの動作制御を容易に行うことが可能である。また、異なるメーカー間であっても、制御プロトコルが公開されていれば同様に、キャリブレーションの実行指示とその動作制御をプリンタ間で行うことが可能である。
【0051】
S1105では、印刷先プリンタから、キャリブレーションの実行が終了したことを示す通知(以下、「キャリブレーション終了通知」と呼ぶ。)を受信したかどうかが判定される。印刷先プリンタ(ここではプリンタ120b)にてキャリブレーション終了通知が発行されて、その受信が検知された場合はS1106に進む。一方、キャリブレーション終了通知の受信が検知できない場合は、所定間隔にて、キャリブレーション終了通知の受信監視処理を続ける。
【0052】
キャリブレーションの終了によって、印刷先プリンタの階調特性が標準状態になっていることが確認されると、S1106では、当該プリンタに対して色見本チャートの印刷指示が送信される。この際、色見本チャートの画像データが一緒に送信される。印刷先プリンタ(ここでは、プリンタ120b)での色見本チャートの印刷動作に関しては後述する。
【0053】
S1107では、印刷先プリンタから、色見本チャートの印刷が終了したことを示す通知(以下、「チャート印刷終了通知」と呼ぶ。)を受信したかどうかの監視処理が実行される。印刷先のプリンタ(ここではプリンタ120b)にてチャート印刷終了通知が発行されて、その受信が確認された場合はS1108に進む。
【0054】
S1108では、実施形態1の
図6のフローにおけるS603と同様、印刷出力された色見本チャートのスキャン画像データが取得される。この際には、まず、色見本チャートのスキャンをユーザに促すメッセージがUI部124aに表示される。そして、ユーザによるスキャン開始の指示に応答して、色見本チャートをスキャン部127aで読み取る。これにより、基準となるプリンタ120bから印刷出力された色見本チャート(ここでは色見本チャート1200)のスキャン画像データが取得される。
【0055】
S1109では、S1108にて取得したスキャン画像データから、色パッチ(こおでは1つの色パッチ1201)の輝度が測定される。そして、S1110では、S1109にて得られた測定結果としての輝度値(ここではRGB値)に基づいて、特殊色変換テーブルが作成される。具体的には、S1101にて設定された調整対象色に対応するRGB値が入力された場合に、プリンタ120bで印刷した色見本チャートの色パッチが表す色を再現可能なCMYK値を出力するような特殊色変換テーブルを作成する。この際には、まず、色パッチの測定結果であるRGB値(RP1、GP1、BP1)を、標準的な色空間における色値(ここではLab値)に、予め規定されたRGB値とLab値との関係を示すLUT等を用いて変換する。次に、予め規定されたLab値とCMYK値との関係を示すLUT等を用いて、変換後のLab値からプリンタの出力値であるCMYK値(CP1、MP1、YP1、KP1)を求める。こうして、入力値であるRGB値(RP1、GP1、BP1)と、出力値であるCMYK値(CP1、MP1、YP1、KP1)とを対応付けた、特殊色変換テーブルを得ることができる。ここで、標準色空間であるLab色空間の色値を間に挟んでCMYK値を求めているのは、プリンタ120aとプリンタ120bとは別個の装置であるためである。プリンタ120bで再現された色をいったん標準色空間における色値に置き換え、当該色値をCMYK値に変換することで、プリンタ120aでも同じ色を正確に再現することが可能となる。なお、標準色空間はLab色空間に限定されるものではなく、XYZ色空間などでもよい。
【0056】
以上が、本実施形態に係る、プリンタ120aの画像処理部125にて特殊色変換LUT212が作成されるまでの流れである。
【0057】
<印刷先プリンタでのキャリブレーションの実行>
続いて、印刷先のプリンタで実行されるキャリブレーション動作について説明する。本実施形態では、「プリンタ1」としてのプリンタ120aからの指示に基づき、「プリンタ2」としてのプリンタ120bの画像処理部125b内のLUT作成部205によってキャリブレーションが実行されることになる。以下、
図14のフローチャートに沿って説明する。なお、
図14に示す一連の処理は、外部のプリンタ(ここではプリンタ120a)からのキャリブレーションの実行指示の送信を検知したことに応答して開始される。また、キャリブレーション動作の開始に伴い、プリンタ120bのUI部124bはキャリブレーションモードの表示画面(不図示)となり、他のジョブを受け付けない状態となる。キャリブレーションが終了後、プリンタ120bは他のジョブを受け付け可能な状態に戻る。
【0058】
S1401では、プリンタ120aからのキャリブレーションの実行指示が受信される。次のS1402~S1405の各処理は、実施形態1の
図6のフローにおけるS602~S605にそれぞれ対応する。すなわち、プリント部126bによってキャリブレーションチャートが印刷され(S1402)、そのスキャン画像データが取得されて色パッチの輝度値が読み取られる(S1403及びS1404)。そして、読み取り結果に基づき階調補正LUTが作成され、ガンマ補正部202で使用される階調補正LUT213として設定(更新)される(S1405)。
【0059】
そして、S1406では、キャリブレーションが終了したことを示すキャリブレーション終了通知が、キャリブレーションの実行指示を送信したプリンタ(ここではプリンタ120a)に送信される。
【0060】
以上が、印刷先プリンタにおけるキャリブレーション動作の内容である。
【0061】
<印刷先プリンタでの色見本チャートの印刷>
続いて、印刷先のプリンタで実行される色見本チャートの印刷出力について説明する。本実施形態では、「プリンタ1」としてのプリンタ120aからの印刷指示に基づき、「プリンタ2」としてのプリンタ120bにおいて色見本チャートの印刷処理が実行されることになる。以下、
図15のフローチャートに沿って説明する。
【0062】
S1501では、色見本チャートの画像データと共にその印刷指示がプリンタ120aから受信される。続くS1502では、プリンタ120b内の画像処理部125bにて前述のS606と同様の所定の画像処理が施されてプリントデータに変換され、プリント部126bにて色見本チャートが印刷出力される。そして、S1503では、色見本チャートの印刷出力が終了したことを示すチャート印刷終了通知が、その実行指示を送信したプリンタ120aに送信される。
【0063】
以上が、印刷先プリンタにおける色見本チャートの印刷出力の内容である。
【0064】
以上のとおり本実施形態によれば、色見本チャートの印刷を他プリンタで行う時点で、他プリンタの階調特性が標準状態にあることが保証される。よって、他プリンタの階調特性が標準状態からずれたままの状況下で色見本チャートが印刷されてしまうのを防ぐことが可能となり、異なるプリンタ間で色再現特性を適切に揃えることが可能となる。