(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】部分フッ素化ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 14/22 20060101AFI20240430BHJP
C08F 4/40 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C08F14/22
C08F4/40
(21)【出願番号】P 2019571346
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018066901
(87)【国際公開番号】W WO2019002180
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェルニショワ, リュボーフ
(72)【発明者】
【氏名】カレッラ, セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-308008(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072397(WO,A1)
【文献】特表2001-509819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 14/00-14/28
C08F 4/00-4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化ポリマー[ポリマー(P)]の合成方法であって、前記方法が、少なくとも1種の有機過酸化物と、少なくとも1個のスルフィン酸基を持つ少なくとも1種の化合物[化合物(S)]を含む少なくとも1種の組成物[組成物(CS)]とを含むレドックス開始システム[システム(R)]の存在下での水性エマルジョン中で、任意選択的に少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]の存在下で、1,1-ジフルオロエチレンを重合させる工程を含む方法であって、
前記化合物(S)が、次式(S-I):
[式中、
Mは、水素原子、アンモニウムイオン又は一価金属イオンであり;
R20は、-OH又は-N(R
4)(R
5)であり、ここで、互いに同一であるか又は異なる、R
4及びR
5の各々は、水素原子又は1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル鎖であり;
R21は、水素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基、5若しくは6員シクロアルキル基、又は5若しくは6員アリール基であり;
R22は、-COOM、-SO
3M、-C(=O)R
4、-C(=O)N(R
4)(R
5)又は-C(=O)OR
4であり、ここで、M、R
4及びR
5は、上に定義された通りである]
の化合
物である、方法。
【請求項2】
前記ポリマー(P)が1,1-ジフルオロエチレンのホモポリマー[ポリマー(P
H)]である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー(P)が、1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]に由来する繰り返し単位とを含む、1,1-ジフルオロエチレンのコポリマー[ポリマー(P
C)]である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー(P
C)が、前記ポリマー(P
C)の全繰り返し単位に対して少なくとも15モル%の、1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー(P
C)が、前記ポリマー(P
C)の全繰り返し単位に対して多くても85モル%の、1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記モノマー(MF)が、
(a)C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)VDFとは異なる水素含有C
2~C
8オレフィン;
(c)C
2~C
8クロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(d)式CF
2=CFOR
f[式中、R
fは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基である]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX{式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12[(パー)フルオロ]-オキシアルキルである}の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
[式中、互いに等しいか又は異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6は、
フッ素原子、及び、1個又は2個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基の中で独立して選択される]
を有する(パー)フルオロジオキソール;
(g)式:CFX
2=CX
2OCF
2OR’’
f[式中、R’’
fは、線状又は分岐C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、線状又は分岐の、C
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルの中で選択され、X
2はF又はHである]を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)
を含む群の中で選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記モノマー(MF)が、テトラフルオロエチレン(TFE)又はヘキサフルオロプロピレン(HFP)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機過酸化物が、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチル-ペルオキシジカーボネート;ジアルキル-ペルオキシジカーボネート;過ネオデカン酸tertブチル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);過ピバル酸tertブチル;ジオクタノイル-ペルオキシド;ジラウロイル-ペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;過2-エチルヘキサン酸tertブチル;過マレイン酸tert-ブチル;ビス(tertブチル-ペルオキシ)-シクロヘキサン;tert-ブチル-ペルオキシイソプロピルカーボネート;過酢酸tertブチル;2,2’-ビス(tertブチル-ペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ-tertアミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;p-メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;ジ-スクシニルペルオキシド;及びtert-ブチルヒドロペルオキシドを含む群の中で選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物(CS)が、前記組成物(CS)の総重量に対して、少なくとも40重量%及び多くても79重量%の化合物(S)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物(CS)が、亜硫酸若しくはその塩及び/又は少なくとも1個のスルホン酸基を含む化合物[化合物(S
3)]を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物(S
3)が、次式(S
3-I):
[Mは、水素原子、アンモニウムイオン又は一価金属イオンであり;
R20は、-OH又は-N(R
4)(R
5)であり、ここで、互いに同一であるか又は異なる、R
4及びR
5の各々は、水素原子又は1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル鎖であり;
R21は、水素原子、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基、5若しくは6員シクロアルキル基、又は5若しくは6員アリール基であり;
R22は、-COOM、-SO
3M、-C(=O)R
4、-C(=O)N(R
4)(R
5)又は-C(=O)OR
4であり、ここで、M、R
4及びR
5は、上に定義された通りである]
の化合
物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
任意選択的に少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]の存在下での少なくとも1,1-ジフルオロエチレンの重合反応でのレドックス開始システムとしての請求項1に定義された化合物(S)の、又は請求項1及び9~11のいずれか一項に定義された組成物(CS)の使用。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリマー(P)を少なくとも含む組成物を加工する工程を含む、造形品の製造方法。
【請求項14】
前記造形品が、パイプ、ジョイント、O-リング、及びホースから選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月30日に出願された欧州特許出願公開第17178921.7号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、乳化重合での、部分フッ素化ポリマー、とりわけフッ化ビニリデン(VDF)ベースのポリマーの製造方法に、及び前記方法から得られるポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
フッ化ビニリデン(1,1-ジフルオロエチレン又はVDFとも言われる)をベースとするフルオロポリマーは、とりわけ過酷な作業条件において、傑出した耐化学薬品性及び耐熱性というそれらの特性のために、幾つかの技術分野において使用される、エラストマー及び熱可塑性ポリマーを両方とも含む。
【0004】
典型的には、VDFベースのポリマーは、フッ素化モノマーの及び少なくとも1種の界面活性剤(乳化剤とも言われる)の存在下で水溶性重合開始剤を反応させることによる、乳化重合プロセスによって製造される。
【0005】
米国特許出願公開第2002/0042353号明細書(L.BRUGGEMANN KG)は、織物漂白又は建染め又は鉱物精錬用の還元漂白又は繊維仕上げにおける、織物印刷用の還元剤成分として;又はプラスチック製造での乳化重合又はレドックス触媒システムにおける共触媒として使用することができる、式(I):MO-S(=O)-C(R1)(R2)(R3)のスルフィン酸化合物を開示している。実施例において、式(I)の化合物が、硫酸鉄(II)及び酸化剤としての水性過酸化水素の存在下でのエチレン及び酢酸ビニルの乳化重合においてイソアスコルビン酸アンモニウム/イソアスコルビン酸に取って代わるための共触媒として使用されている。
【0006】
スルフィン酸化合物は、超吸収性ポリマーの合成のためのゲル重合(例えば、米国特許出願公開第2006/0089611号明細書(BASF AKTIENGESELLSCHAFT))において、フリーラジカル重合性の水溶性及び/又は水分散性モノマーの合成のための逆エマルジョン重合(例えば、米国特許出願公開第2006/0229369号明細書(BASF AKTIENGESELLSCHAFT))において行われるプロセスで還元剤として当技術分野において開示されている。
【0007】
本出願人は、フルオロポリマーの合成のための還元剤としてのスルフィン酸化合物の使用を開示する又は提案する、今まで公表されたいかなる特許又は文献公文書も知らない。
【発明の概要】
【0008】
本出願人は、加工、モルフォロジ、特性、及び最終使用性能が、VDFベースのポリマーの分岐、架橋、構造の欠陥の含有量の相違、及び他の鎖不規則性の影響を受けることを良く承知している。
【0009】
本出願人は、乳化重合プロセスが、例えば懸濁重合で行われるプロセスと比べて、多数の分岐を典型的にはもたらすこともまた承知している。
【0010】
したがって、本出願人は、乳化重合によって容易に製造することができ、且つ、そのポリマー鎖中の減少した数の分岐で特徴付けられるVDFベースのポリマーを提供するという問題に直面した。
【0011】
意外にも、本出願人は、前記技術的問題が、少なくとも1種の有機過酸化物と、スルフィン酸基を持つ少なくとも1種の化合物とを含むレドックス開始システムの存在下での少なくとも1種の不飽和フッ素化モノマーの反応を含む乳化重合プロセスを行うことによって解決できることを見いだした。
【0012】
したがって、第1態様において、本発明は、1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化ポリマー[ポリマー(P)]の合成方法であって、前記方法が、少なくとも1種の有機ラジカル開始剤と、少なくとも1つのスルフィン酸基を持つ少なくとも1つの化合物[化合物(S)]を含む少なくとも1種の組成物[組成物(CS)]とを含むレドックス開始システム[システム(R)]の存在下での水性エマルジョンで、任意選択的に少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]の存在下で、1,1-ジフルオロエチレンを重合させる工程を含む方法に関する。
【0013】
本出願人は、意外にも、本発明による方法が、当技術分野において公知の方法によって製造されるVDFベースのポリマーと比較されるときに、そのポリマー鎖中の少ない数の分岐で特徴付けられるVDFベースのポリマーを製造できるようにすることを見いだした。
【0014】
有利にも、本発明による方法によって得られるVDFベースのポリマーは、当技術分野において公知の方法によって調製されるVDFベースのポリマーと比べて改善された熱安定性で特徴付けられる。いかなる理論に制約されることなく、これは、最終VDFベースのポリマーの安定性に負の影響を及ぼす、含水素鎖末端(式-CF2H、-CF2CH3、-CH2CH3及び-C(CH3)3のものなど)の数が少ないためであると考えられる。
【0015】
したがって、第2態様において、本発明は、1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と、任意選択的に少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]に由来する繰り返し単位とを含む部分フッ素化ポリマー[ポリマー(P)]であって、前記ポリマー(P)が上述の方法によって有利に得られるポリマー(P)に関する。
【0016】
第3態様において、本発明は、任意選択的に少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]の存在下での、少なくとも1,1-ジフルオロエチレンの重合反応におけるレドックス開始システムとしてのスルフィン酸基を持つ化合物[化合物(S)]の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の及び以下の請求項の目的のためには:
- 例えば「ポリマー(P)」のような表現などにおける、式を特定する記号又は数字周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという目的を有するにすぎず、それ故に、前記括弧はまた省略することができ;
- 表現「本質的に~からなる」は、少量の末端鎖、欠陥、不規則性及びモノマー再配列がポリマー(P)中に許容される、但し、それらの量が最終ポリマー(P)の総モル数を基準として5モル%未満、より好ましくは2モル%未満であることを示すことを意図し;
- 用語「1,1-ジフルオロエチレン」、「1,1-ジフルオロエテン」及び「フッ化ビニリデン」は、同義語として用いられ;
- 用語「ポリ-(1,1-ジフルオロエチレン)」及び「ポリフッ化ビニリデン」は、同義語として用いられ;
- 用語「フルオロエラストマー」は、低い程度の結晶化度(20容積%未満の結晶相)及び室温未満のガラス転移温度(Tg)を好ましくは有する、非晶性ポリマーを示すことを意図する。フルオロエラストマーは、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のTgを有し;
- 表現「1,1-ジフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー(P)」は、好適な反応によって、任意選択的に少なくとも1種の更なるモノマー(MF)の存在下で、少なくとも1,1-ジフルオロエチレンモノマーを一緒に反応させることによってポリマー(P)が得られることを示すことを意図する。
【0018】
第1の好ましい実施形態によれば、前記ポリマー(P)は、VDFのホモポリマー[ポリマー(PH)]である、すなわち、それは本質的に、フッ化ビニリデン(1,1-ジフルオロエチレンとも言われる)に由来する繰り返し単位からなる。
【0019】
別の好ましい実施形態によれば、前記ポリマー(P)は、VDFのコポリマー[ポリマー(PC)]である、すなわち、それは、フッ化ビニリデン(1,1-ジフルオロエチレンとも言われる)に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の更なる(過)フッ素化モノマー[モノマー(MF)]に由来する繰り返し単位とを含む。
【0020】
好ましくは、前記ポリマー(PC)は、前記ポリマー(PC)の全繰り返し単位に対して少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、更により好ましくは少なくとも35モル%の、VDFに由来する繰り返し単位を含む。
【0021】
好ましくは、前記ポリマー(PC)は、前記ポリマー(PC)の全繰り返し単位に対して多くても85モル%、より好ましくは多くても80モル%、更により好ましくは多くても78モル%の、VDFに由来する繰り返し単位を含む。
【0022】
好適なモノマー(M
F)の非限定的な例は、とりわけ:
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH
2=CH-R
f(式中、R
fはC
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、VDFとは異なる水素含有C
2~C
8オレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC
2~C
8クロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(d)式CF
2=CFOR
f(式中、R
fは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX{式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12[(パー)フルオロ]-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である}の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
[式中、互いに等しいか又は異なる、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6は、フッ素原子、及び、とりわけ-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3などの、1個又は2個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基の中で独立して選択される]
を有する(パー)フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:CFX
2=CX
2OCF
2OR’’
f{式中、R’’
fは、線状又は分岐C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、線状又は分岐の、C
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルの中で選択され、X
2=F、Hであり;好ましくはX
2はFであり、R’’
fは、-CF
2CF
3(MOVE1);-CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);又は-CF
3(MOVE3)である}
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE)
である。
【0023】
前記ポリマー(PC)が、VDFに由来する繰り返し単位に加えて、HFPに由来する繰り返し単位を含むことが一般に好ましい。
【0024】
この場合に、ポリマー(PC)は、典型的には、ポリマー(PC)の全繰り返し単位に対して、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも12モル%、より好ましくは少なくとも15モル%のHFPに由来する繰り返し単位を含む。
【0025】
更に、ポリマー(PC)は、典型的には、ポリマー(PC)の全繰り返し単位に対して、多くても45モル%、好ましくは多くても40モル%、より好ましくは多くても35モル%のHFPに由来する繰り返し単位を含む。
【0026】
ポリマー(P
C)は、VDF及びHFPに由来する繰り返し単位に加えて、下記:
- 一般式;
[式中、互いに等しいか又は異なる、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、H、ハロゲン、又は1個以上の酸素基を場合により含む、C
1~C
5の任意選択的にハロゲン化された基であり;Zは、酸素原子を任意選択的に含有する、線状又は分岐のC
1~C
18の任意選択的にハロゲン化されたアルキレン若しくはシクロアルキレンラジカル、又は(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである]
を有する少なくとも1種のビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位;
- VDF及びHFPとは異なる少なくとも1種の(過)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位;並びに
- 少なくとも1種の含水素モノマーに由来する繰り返し単位
のうちの1つ以上を含み得る。
【0027】
含水素モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどを含む、非フッ素化アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが典型的には使用される。C2~C8非フッ素化アルファ-オレフィン(Ol)、より具体的にはエチレン及びプロピレンが向上した耐塩基性を達成するために選択されるであろう。
【0028】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)及び(OF-3):
[式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいか又は異なる、R
1、R
2、R
3、R
4は、H、F又はC
1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である];
[式中、
互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、Aの各々は、F、Cl、及びHから独立して選択され;
互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、Bの各々は、F、Cl、H及びOR
Bから独立して選択され、ここで、R
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化されていることができる、分岐若しくは直鎖アルキル基であり;
Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくはEは、-(CF
2)
m-基(mは3~5の整数である)であり;
(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、F
2C=CF-O-(CF
2)
5-O-CF=CF
2である];
[式中、E、A及びBは、上に定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいか又は異なる、R
5、R
6、R
7は、H、F又はC
1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である]
に従うものからなる群から選択される。
【0029】
ビス-オレフィンが用いられる場合、結果として生じるポリマー(PC)は、典型的には、前記ポリマー(PC)の単位の総量に対して、0.01モル%~5モル%のビス-オレフィンに由来する単位を含む。
【0030】
任意選択的に、前記ポリマー(PC)は、特定の繰り返し単位に結合したペンダント基として又はポリマー鎖の末端基としてのいずれかで、硬化部位を含んでもよく、前記硬化部位は、少なくとも1個のヨウ素又は臭素原子、より好ましくは少なくとも1個のヨウ素原子を含む。
【0031】
硬化部位含有繰り返し単位の中に、とりわけ:
(CSM-1)式:
[式中、互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、A
Hfの各々は、F、Cl、及びHから独立して選択され;B
Hfは、F、Cl、H及びOR
Hf
Bのいずれかであり、ここで、R
Hf
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化されていることができる分岐若しくは直鎖アルキルラジカルであり;互いに及び出現ごとに等しいか又は異なる、W
Hfの各々は、独立して、共有結合又は酸素原子であり;E
Hfは、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;R
Hfは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化されていることができる、分岐若しくは直鎖アルキルラジカルであり;R
Hfは、ヨウ素及び臭素からなる群から選択されるハロゲン原子であり;それらは、エーテル結合が挿入されていてもよく;好ましくはEは、-(CF
2)
m-基(mは、3~5の整数である)である]
のヨウ素又は臭素含有モノマー;
(CSM-2)場合によりフッ素化されている、シアニド基を含むエチレン性不飽和化合物
を挙げることができる。
【0032】
タイプ(CSM1)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、(CSM1-A)式:
[式中、mは0~5の整数であり、nは0~3の整数である、但し、m及びnの少なくとも1つは0とは異なり、RfiはF又はCF3である(とりわけ、米国特許第4745165号明細書(AUSIMONT S.P.A.)、米国特許第4564662号明細書(MINNESOTA MINING)及び欧州特許出願公開第199138 A号明細書(DAIKIN IND.,LTD.)に記載されているような)]
のヨウ素含有パーフルオロビニルエーテル;及び
(CSM-1B)式:
CX
1X
2=CX
3-(CF
2CF
2)
p-I
[式中、互いに等しいか又は異なる、X
1、X
2及びX
3の各々は、独立して、H又はFであり;pは、1~5の整数である]
のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物(これらの化合物の中で、CH
2=CHCF
2CF
2I、I(CF
2CF
2)
2CH=CH
2、ICF
2CF
2CF=CH
2、I(CF
2CF
2)
2CF=CH
2を挙げることができる);
(CSM-1C)式:
CHR=CH-Z-CH
2CHR-I
[式中、Rは、H又はCH
3であり、Zは、1個若しくは複数個のエーテル酸素原子を任意選択的に含有する、線状又は分岐の、C
1~C
18(パー)フルオロアルキレンラジカル、又は(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである]のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物(これらの化合物の中に、CH
2=CH-(CF
2)
4CH
2CH
2I、CH
2=CH-(CF
2)
6CH
2CH
2I、
CH
2=CH-(CF
2)
8CH
2CH
2I、CH
2=CH-(CF
2)
2CH
2CH
2Iを挙げることができる);
(CSM-1D)2~10個の炭素原子を含有するブロモ及び/又はヨードアルファ-オレフィン、例えば、米国特許第4035565号明細書(DU PONT)に記載されているブロモトリフルオロエチレン又はブロモテトラフルオロブテンなど、又は米国特許第4694045号明細書(DU PONT)に開示されている他の化合物ブロモ及び/又はヨードアルファ-オレフィン
からなる群から選択されるものである。
【0033】
タイプ(CSM2)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、
(CSM2-A)式CF2=CF-(OCF2CFXCN)m-O-(CF2)n-CN(XCNは、F又はCF3であり、mは、0、1、2、3又は4であり;nは、1~12の整数である)のシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CSM2-B)式
CF2=CF-(OCF2CFXCN)m’-O-CF2-CF(CF3)-CN(XCNは、F又はCF3であり、m’は、0、1、2、3又は4である)のシアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択されるものである。
【0034】
本発明の目的に好適なタイプCSM2-A及びCSM2-Bの硬化部位含有モノマーの具体例は、とりわけ、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)、米国特許第5447993号明細書(DU PONT)及び米国特許第5789489号明細書(DU PONT)に記載されたものである。
【0035】
好ましくは、前記ポリマー(PC)は、0.001~10重量%の量でヨウ素又は臭素硬化部位を含む。これらの中で、ヨウ素硬化部位は、硬化速度を最大にするために選択されるものであり、その結果ヨウ素硬化部位を含む(パー)フルオロエラストマーが好ましい。
【0036】
この実施形態によれば、許容できる反応性を確保するために、ポリマー(PC)中のヨウ素及び/又は臭素の含有量は、前記ポリマー(PC)の総重量に対して、少なくとも0.05重量%の、好ましくは少なくとも0.1重量%の、より好ましくは少なくとも0.15重量%のものであるべきであると一般に理解される。
【0037】
他方では、前記ポリマー(PC)の総重量に対して、好ましくは7重量%を超えない、より特に5重量%を超えない、又は更に4重量%を超えないヨウ素及び/又は臭素の量が、副反応及び/又は熱安定性への悪影響を回避するために一般に選択されるものである。
【0038】
本発明のこれらの好ましい実施形態のこれらのヨウ素又は臭素硬化部位は、ポリマー(PC)の主鎖に結合したペンディング基として(上に記載されたような、(CSM-1)タイプのモノマーに由来する、及び好ましくは上に詳述されたような、(CSM-1A)~(CSM1-D)のモノマーに由来する繰り返し単位のポリマー鎖への組み込みによって)含まれてもよいし、又は前記ポリマー鎖の末端基として含まれてもよい。
【0039】
第1の実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は、ポリマー(PC)鎖の主鎖に結合しているペンディング基として含まれる。この実施形態によるポリマー(PC)は、一般に、上述のヨウ素及び/又は臭素重量含有量を有利に確保するように、(パー)フルオロエラストマーの全ての他の繰り返し単位の100モル当たり0.05~5モルの量でヨウ素又は臭素含有モノマー(CSM-1)に由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
第2の好ましい実施形態によれば、ヨウ素及び/又は臭素硬化部位は、ポリマー(PC)鎖の末端基として含まれる。この実施形態によるポリマー(PC)は、一般に、
- ヨウ素化及び/又は臭素化連鎖移動剤;好適な鎖-鎖移動剤は、典型的には、式Rf(I)x(Br)y(式中、Rfは、1~8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキル又は(パー)フルオロクロロアルキルであり、一方、x及びyは、1≦x+y≦2で、0~2の整数である)のものである(例えば、米国特許第4243770号明細書(DAIKIN IND.,LTD.)及び米国特許第4943622号明細書(NIPPON MEKTRON KK.)を参照されたい);並びに
- とりわけ米国特許第5173553号明細書(AUSIMONT SRL.)に記載されているものなどの、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属ヨウ化物及び/又は臭化物
のいずれかをフルオロエラストマー製造中に重合媒体に添加することによって得られる。
【0041】
好ましいポリマー(PC)は、以下の組成(単位:mol%)を有するものである:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル
(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;テトラフルオロエチレン(TFE)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~50%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)45~65%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)20~55%、フッ化ビニリデン0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)32~60%モル%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(vii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(viii)テトラフルオロエチレン(TFE)20~70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~50%、ビス-オレフィン(OF)0~5%。
【0042】
より好ましいポリマー(PC)は、フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%を含むものである。
【0043】
有利には、本発明の方法は、少なくとも1種の有機ラジカル開始剤と、少なくとも1個のスルフィン酸基を持つ少なくとも1種の化合物[化合物(S)]を含む少なくとも1種の組成物[組成物(CS)]とを含むレドックス開始システム[システム(R)]、及び任意選択的に更なる原料の存在下で1,1-ジフルオロエチレンを重合させる工程を含む。
【0044】
好ましくは、前記有機ラジカル開始剤は、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチル-ペルオキシジカーボネート;ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;過ネオデカン酸tertブチル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4ジメチルバレロニトリル);過ピバル酸tertブチル;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイル-ペルオキシド;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル);tert-ブチルアゾ-2-シアノブタン;ジベンゾイルペルオキシド;過2-エチルヘキサン酸tertブチル;過マレイン酸tert-ブチル;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tertブチル-ペルオキシ)-シクロヘキサン;tert-ブチル-ペルオキシイソプロピルカーボネート;過酢酸tertブチル;2,2’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ-tertアミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;p-メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;ジスクシニルペルオキシド;及びtert-ブチルヒドロペルオキシドを含む群、より好ましくはそれらからなる群の中で選択される。過酸化物から選択される有機ラジカル開始剤が特に好ましい。
【0045】
好ましくは、前記有機ラジカル開始剤は、重合媒体の総重量を基準として0.001~20重量%の範囲の濃度で使用される。
【0046】
好ましくは、前記化合物(S)は、次式(S-I):
[式中、
Mは、水素原子、アンモニウムイオン、一価金属イオンであり;
R20は、-OH又は-N(R
4)(R
5)であり、ここで、互いに同一であるか又は異なる、R
4及びR
5の各々は、水素原子又は1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル鎖であり;
R21は、水素原子、1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基、5又は6員シクロアルキル基、5又は6員アリール基であり;
R22は、-COOM、-SO
3M、-C(=O)R
4、-C(=O)N(R
4)(R
5)、-C(=O)OR
4であり、ここで、M、R
4及びR
5は、上に定義された通りである]、
並びに少なくとも1種の一価金属イオンとのその塩
に従う。
【0047】
好ましくは、Mは、水素原子又は一価金属イオンである。
【0048】
好ましくは、前記一価金属イオンは、ナトリウム及びカリウムから選択される。
【0049】
好ましくは、R20は、ヒドロキシル又はアミノ基から選択される。
【0050】
好ましくは、R21は、水素原子、1~3個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基、及び5又は6員アリール基から選択される。
【0051】
好ましくは、R22は、-COOM、-SO3M、及びC(=O)OR4から選択され、ここで、M、R4及びR5は、上に定義された通りである。
【0052】
好ましい化合物(S)は、上記の式(S-I)(式中、Mはナトリウムであり、R20は-OHであり、R21は水素原子であり、R22は、-COOM、
-SO3M、及びC(=O)OR4から選択され、ここで、M、R4及びR5は上に定義された通りである)に従う。
【0053】
より好ましい化合物(S)は、上記の式(S-I)(式中、Mはナトリウムであり、R20は-OHであり、R21は水素原子であり、R22は、Mがナトリウムである、-COOMである)に従う。
【0054】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、少なくとも40重量%の上に定義されたような式(S-I)に従う化合物を含む。
【0055】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、多くとも79重量%の上に定義されたような式(S-I)に従う化合物を含む。
【0056】
好ましくは、前記組成物(CS)は、亜硫酸又は、とりわけ亜硫酸ナトリウムなどの、その塩(「スルファイト」とも言われる)を更に含む。
【0057】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、少なくとも20重量%の前記亜硫酸又はその塩を含む。
【0058】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、多くとも40重量%の前記亜硫酸又はその塩を含む。
【0059】
好ましくは、前記組成物(CS)は、少なくとも1個のスルホン酸基を含む化合物[化合物(S3)を更に含む。
【0060】
好ましくは、前記化合物(S
3)は、次式(S
3-I):
(式中、M、R20、R21及びR22は、式(S-I)の化合物について上に定義されたのと同じ意味を有する)
及び少なくとも1種の一価金属イオンとのその塩に従う。
【0061】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、少なくとも1重量%の、上に定義されたような式(S3-I)に従う化合物を含む。
【0062】
好ましくは、前記組成物(CS)は、前記組成物(CS)の総重量に対して、多くとも40重量%の、上に定義されたような式(S3-I)に従う化合物を含む。
【0063】
前記組成物(CS)及び化合物(S)の好適な例は、商品名Bruggolite(登録商標)でBRUEGGEMANN-GROUPから商業的に入手可能である。
【0064】
本発明による方法は、典型的には界面活性剤、連鎖移動剤及び反応促進剤などの、当技術分野において公知の更なる原料の使用を更に含む。
【0065】
好ましくは、前記界面活性剤は、とりわけ次式:
R*-XB-(T+)
[式中、
R*は、C5~C16(パー)フルオロアルキル鎖又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、
XB-は、-COO-又は-SO3
-であり、
T+は、H+、NH4
+、アルカリ金属イオンから選択される]
に従うものなどの、フッ素化界面活性剤から選択される。
【0066】
好ましい界面活性剤は、とりわけ:パーフルオロオクタン酸アンモニウムなどの、フッ素化界面活性剤;任意選択的にナトリウム、アンモニウム及びアルカリ金属で塩化された、より好ましくはナトリウムで塩化された、1個以上のカルボン酸基で終了した(パー)フルオロポリオキシアルキレン;並びに部分フッ素化アルキルスルホネートを含む群からとりわけ選択される。
【0067】
好ましくは、前記界面活性剤は、最終ポリマー(P)の総重量を基準として0.05~5重量%の量で使用される。
【0068】
代わりの実施形態によれば、本発明の方法は、前記界面活性剤の不在下で行われるか、又は前記界面活性剤は、最終ポリマー(P)の総重量に対して、100ppmを超えない、より好ましくは50ppmを超えない量で使用される。
【0069】
好ましくは、前記連鎖移動剤は、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチル-ter-ブチルエーテル、イソプロピルアルコールなどの、ケトン、エステル、エーテル又は3~10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール;クロロホルム、トリクロロフルオロメタンなどの、1~6個の炭素原子を有し、任意選択的に水素を含有するクロロ(フルオロ)カーボン;ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネートなどの、ビス(アルキル)カーボネート(ここで、アルキルは、1~5個の炭素原子を有する)から選択される。連鎖移動剤は、開始時に、重合中に連続的に又は個別の量で(段階的に)重合媒体に供給できるが、連続的又は段階的供給が好ましい。
【0070】
好ましくは、前記反応促進剤は、有機オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン及びイミン化合物を含む群、より好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0071】
使用され得る反応促進剤の例としては、とりわけ欧州特許出願公開第335705 A号明細書(MINNESOTA MINING)及び米国特許第3876654号明細書(DUPONT)に記載されているような第四級アンモニウム又はホスホニウム塩;とりわけ米国特許第4259469号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているようなアミノホスホニウム塩 ;とりわけ米国特許第3752787号明細書(DUPONT)に記載されているようなホスホラン;欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているような又は欧州特許出願公開第0182299A号明細書(ASAHI CHEMICAL)に記載されているようなイミン化合物が挙げられる。
【0072】
第四級ホスホニウム塩及びアミノホスホニウム塩、より好ましくはテトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウムの、及び式:
の1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチル-ホスホラミンの塩が好ましい。
【0073】
前記反応促進剤は、ポリマー(P)の総重量を基準として、0.05phrから10phrまでの量で好ましくは使用される。
【0074】
上記に付け加えて、本発明の方法は、強化充填材(例えば、カーボンブラック)、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などの、他の慣習的な添加剤を使用して行われる。
【0075】
有利には、本発明の方法は、上に定義されたようなシステム(R)、及び任意選択的に更なる原料の存在下で水性エマルジョンで、上に定義されたような少なくとも1種の更なるモノマー(MF)と1,1-ジフルオロエチレンを重合させる工程を含む。
【0076】
好ましくは、前記更なる原料は、上に定義されたような、界面活性剤、連鎖移動剤及び反応促進剤から選択される。
【0077】
本発明による方法は、好ましくは、連続的、又はセミバッチ若しくはバッチで行うことができる。
【0078】
本発明の方法は、とりわけ有機過酸化物に基づいて、当業者によって選択できる温度で行われる。好ましくは、本発明の方法は、40℃~120℃、より好ましくは50℃~100℃の温度で行われる。
【0079】
本発明の方法は、好ましくは、10~60バール、より好ましくは25~55バールの圧力で行われる。
【0080】
更なる態様において、本発明はまた、上に定義されたようなポリマー(P)を少なくとも含む組成物から製造される物品に関する。
【0081】
前記物品は、とりわけ、パイプ、ジョイント、O-リング、ホースなどから選択することができる。
【0082】
更なる態様において、本発明は、造形品の製造方法であって、前記方法が、上に定義されたようなポリマー(P)を少なくとも含む組成物を加工する工程を含む方法に関する。
【0083】
前記ポリマー(P)は、例えば、成形(射出成形、押出成形)、カレンダーがけ、又は押出によって、所望の造形品へ二次加工することができる。必要ならば、物品は次に、加工それ自体中に及び/又はその後の工程(後処理又はポスト硬化)において加硫(又は硬化)にかけられる。
【0084】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0085】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0086】
原材料:
Bruggolite(登録商標)タイプTP1328(2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸二ナトリウム塩)は、Brugemann(登録商標)から入手し、そのまま使用した。
【0087】
方法:
分岐の数(分岐数)は、次式:
分岐数=[(測定CEの数)-(理論CEの数)]×Mn×10-6
(ここで、
- 「測定CEの数」は、ポリマーに関してNMRによって測定される、鎖末端の全数であり;
- 「理論CEの数」は、次の通り:(2×106)/Mn
計算される、鎖末端の全数であり;
- Mnは、GPCによって測定されるような、ポリマーの数平均分子量である)
に従って計算する。
数平均分子量(Mn)は、以下の条件を用いてGPCによって測定した:
- VDFコポリマーについて:1700~4,000,000の分子量を有するポリスチレン単分散標準に基づく較正曲線と対照をなして、THFを溶媒として使用した。GPC条件の詳細を本明細書で以下にリストアップする:
移動相 テトラヒドロフラン;流量 1.0mL/分;温度 35℃;注入システム Autosamplerモデル717プラス;注入量 200μl;ポンプ Isocratic Pumpモデル515;カラムセット:Precolumn+4 Agilent PL Gel:106、105、104及び103Å;検出器 Waters Refractive Indexモデル2414;データ取得及び処理のためのソフトウェア:Waters Empower 3。
- VDFホモポリマー(PVDF)について:溶離液 DMA+LiBr 0.01N.フラックス:1mL/分;溶液濃度 DMA+LiBr 0.01N中の約0.25%w/v;ポンプ Waters Isocratic Pumpモデル515;注入システム Waters 717plus Autosampler.注入量:200μl;カラム Four Water Styragel HT(300×7.5)mm、10μm粒径-ガードカラム付きのStyragel HT-6、HT-5、HT-4、HT-3-ガードカラム及びカラム温度:45℃;検出器 Waters屈折率モデル2414.検出器温度:45℃;標準ポリスチレンで較正。
【0088】
実施例1-本発明によるレドックス開始システムを使ったVDF/HFPコポリマーの製造
60rpmで作動する攪拌機を備えた、21Lの水平オートクレーブに、排気後に10.5Lの脱塩水と、米国特許第7122608号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)の実施例1に記載された手順に従って調製した113mLのマイクロエマルジョンとを導入した。オートクレーブを次に60℃に加熱し、反応の全体継続時間の間そのような温度に維持した。次に、500ml(濃度5.9重量%での水溶液)の酢酸エチル移動剤を導入した。デルタ圧力が11.4バールに達するまで、HFPモノマーを供給することによってオートクレーブの圧力を増加させた。圧力を37バールにするために次のモノマーのガス状混合物:フッ化ビニリデン(VDF)52モル%及びヘキサフルオロプロペン(HFP)48モル%をオートクレーブに供給した。脱塩水中のt-ブチルヒドロペルオキシドの2.2重量%溶液を、75mL/hのスピードでオートクレーブにポンピングした。同時に、しかし別々に、蒸留水中の1.5重量%のBruggolite(登録商標)タイプTP1328を同じスピードでオートクレーブにポンピングした。次のモノマーからなる混合物:VDF(78.5モル%)及びHFP(21.5モル%)を供給することによって37バールの圧力を重合の間中一定に維持した。
【0089】
202分後に4800gの全体モノマー消費に達するまで重合を続行し、次にオートクレーブを圧抜きし、ガス抜きし、冷却した。
【0090】
次のモノマーモル組成:79.4モル%のVDF及び20.6モル%のHFPを有するコポリマーの28.3重量%の固形分を有するラテックスを得た。
【0091】
標準的条件に従って、ラテックスを硫酸アルミニウムで凝固させた。
【0092】
NMRによって検出された、モノマー組成及び鎖末端キャラクタリゼーションを表1に提供する。得られたフルオロエラストマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって検出されたような分子量を表2に提供する。
【0093】
実施例2C(*)-比較-t-ブチルヒドロペルオキシド及びアスコルビン酸を含むレドックス開始システムを使ったVDF/HFPコポリマーの製造
60rpmで作動する攪拌機を備えた、21lの水平オートクレーブに、排気後に10.5Lの脱塩水と、米国特許第7122608号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)の実施例1に記載された手順に従って調製した113mlのマイクロエマルジョンとを導入した。オートクレーブを次に60℃に加熱し、反応の全期間そのような温度に維持した。次に、517ml(濃度5.9重量%での水溶液)の酢酸エチル移動剤を導入した。圧力を37バールにするために次のモノマーのガス状混合物:フッ化ビニリデン(VDF)48モル%及びヘキサフルオロプロペン(HFP)52モル%をオートクレーブに供給した。脱塩水中のt-ブチルヒドロペルオキシドの2.0重量%溶液を、75mL/hのスピードでオートクレーブにポンピングした。同時に、しかし別々に、L-アスコルビン酸の2.0重量%溶液を、同じスピードでオートクレーブにポンピングした。次のモノマーからなる混合物:VDF(71.5モル%)及びHFP(21.5モル%)を供給することによって37バールの圧力を重合の間中一定に維持した。
【0094】
194分後に4800gの全体モノマー消費に達するまで重合を続行し、次にオートクレーブを圧抜きし、ガス抜きし、冷却した。
【0095】
次のモノマーモル組成:79.9モル%のVDF及び20.1モル%のHFPを有するコポリマーの31.2重量%の固形分を有するラテックスを得た。
【0096】
標準的条件に従って、ラテックスを硫酸アルミニウムで凝固させた。
【0097】
NMRによって検出された、モノマー組成及び鎖末端キャラクタリゼーションを表1に提供する。得られたフルオロエラストマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって検出された、分子量、及びフルオロエラストマーの鎖当たりの分岐の数を表2に提供する。
【0098】
【0099】
【0100】
実施例3-本発明によるレドックス開始システムを使ったPVDFホモポリマーの製造
60rpmで作動する攪拌機を備えた、21Lの水平オートクレーブに、排気後に13.8Lの脱塩水と、米国特許第7122608号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)の実施例1に記載された手順に従って調製した76gのマイクロエマルジョンとを導入した。
【0101】
オートクレーブを70℃に加熱しながら、酢酸エチルの5.6重量%溶液の583mlを反応器へポンピングした。VDFを供給することによって反応器を50バールまで加圧した。酢酸エチルの添加が完了したとき、脱塩水中のt-ブチルヒドロペルオキシドの2.2重量%溶液を75mL/hのスピードでポンピングした。同時に、しかし別々に、脱塩水中の1.5重量%のBruggolite(登録商標)を同じスピードでオートクレーブにポンピングした。VDFを供給することによって50バールの圧力を重合の間中一定に維持した。
【0102】
318分後に4500gの全体モノマー消費に達するまで重合を続行し、次にオートクレーブを圧抜きし、ガス抜きし、冷却した。
【0103】
24.5重量%の固形分を有するホモポリマーPVDFラテックスを、400gの凝固PVDFと一緒に得た。
【0104】
NMRによって検出された、モノマー組成及び鎖末端キャラクタリゼーションを表3に提供する。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって検出された分子量、及び得られたフルオロエラストマーの鎖当たりの分岐の数を表4に提供する。
【0105】
実施例4C(*)-比較-t-ブチルヒドロペルオキシド及びアスコルビン酸を含むレドックス開始システムを使ったPVDFホモポリマーの製造
60rpmで作動する攪拌機を備えた、21Lの水平オートクレーブに、排気後に、13.8Lの脱塩水と、米国特許第7122608号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)の実施例1に記載された手順に従って調製した76gのマイクロエマルジョンとを導入した。オートクレーブを70℃に加熱しながら、酢酸エチルの5.6重量%溶液の583mlを反応器へポンピングした。VDFを供給することによって反応器を50バールまで加圧した。酢酸エチルの添加が完了したとき、脱塩水中のt-ブチルヒドロペルオキシドの2.0重量%溶液を、75mL/hのスピードでポンピングした。同時にしかし別々に、L-アスコルビン酸の2.0重量%溶液を同じスピードでポンピングした。VDFを供給することによって50バールの圧力を重合の間中一定に維持した。
【0106】
215分後に4500gの全体モノマー消費に達するまで重合を続行し、次にオートクレーブを圧抜きし、ガス抜きし、冷却した。
【0107】
27重量%の固形分を有するホモポリマーPVDFラテックスを、200gの凝固PVDFと一緒に得た。
【0108】
NMRによって検出された、モノマー組成及び鎖末端キャラクタリゼーションを表3に提供する。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって検出された、分子量、及び得られたフルオロエラストマーの鎖当たりの分岐の数を表4に提供する。
【0109】
【0110】