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特許7479856ドライブチャート作成装置及びその方法並びにドライブチャートを利用する領域特性特定装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ドライブチャート作成装置及びその方法並びにドライブチャートを利用する領域特性特定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240430BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240430BHJP
   G01C 23/00 20060101ALI20240430BHJP
   G09B 29/10 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/13
G01C23/00 R
G09B29/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020010447
(22)【出願日】2020-01-25
(65)【公開番号】P2021117717
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】安田 芽以
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-251698(JP,A)
【文献】特開2016-071442(JP,A)
【文献】特開2009-003577(JP,A)
【文献】特開2015-194939(JP,A)
【文献】特開2013-045392(JP,A)
【文献】特開2019-020928(JP,A)
【文献】特開2019-211793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブカーのプローブデータを保存するプローブデータ保存部と、
前記プローブカーの車両インナーデータを保存する車両インナーデータ保存部と、ここに、前記車両インナーデータは車両が備えるセンサ、コントロールユニットその他から出力される当該車両の各種状態に関するデータであって、当該車両に搭載されたネットワーク上で各種通信プロトコルによって伝送可能であり、前記プローブデータと共通の時刻は含むが、前記プローブデータに比べてデータ取込のインターバルが短く、位置情報を含まない、
地図上の所定の領域における第1のプローブカーの連続した第1の走行軌跡を前記プローブデータから生成する走行軌跡生成部と、ここに、前記連続した第1の走行軌跡の任意の位置における前記プローブカーの位置は前記プローブデータの位置とその取得時刻から演算されている、
生成された該第1の走行軌跡の所定の時刻における車両インナーデータの観測値と、前記第1の走行軌跡を前記所定領域における原点からの距離に正規化したときの、前記観測値を観察した時刻の地点の前記原点からの距離との相関関係を示す第1のドライブチャートを作成する、ドライブチャート作成部と、
を備えてなる、ドライブチャート作成装置。
【請求項2】
前記車両インナーデータは速度、加速度、アクセル開度、駆動機の回転数及びブレーキ圧の少なくとも1つであり、データ取込のインターバルが前記プローブデータの1/10~1/100である、請求項1に記載のドライブチャート作成装置。
【請求項3】
前記所定の領域は交差点を含む領域であり、前記交差点の中心が前記原点である、請求項1又は2に記載のドライブチャート作成装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の前記ドライブチャート作成装置を備えた、領域特性特定装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れかに記載の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートを保存するドライブチャート保存領域と該ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する特性保存領域とを備える教師データ保存部と、
前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データが入力されるAI処理部であって、該AI処理部は前記ドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習する、AI処理部と、を備え、
処理対象の領域におけるドライブチャートを学習済の前記AI処理部へ入力して、前記処理対象の領域の特性を特定する、地図上の領域特性特定装置。
【請求項6】
請求項1~3の何れかに記載の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートを保存するドライブチャート保存領域と該ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する特性保存領域とを備える教師データ保存部と、
前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データが入力されるAI処理部であって、該AI処理部はドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習する、AI処理部とを備えてなる、地図上の領域特性特定装置用の学習装置。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習済のAI処理部を備えており、
前記ドライブチャート作成部により作成された処理対象の領域のドライブチャートを前記学習済のAI処理部へ入力して、前記処理対象の領域の特性を特定する、地図上の領域特性特定装置。
【請求項8】
前記領域は交差点を含み、前記特性は該交差点での車両の停止態様である、請求項7に記載の地図上の領域特性特定装置。
【請求項9】
プローブデータ保存部、車両インナーデータ保存部、走行軌跡生成部及びドライブチャート作成部を備えたドライブチャート作成装置によるドライブチャート作成方法であって、
前記プローブデータ保存部にプローブカーのプローブデータを保存させるプローブデータ保存ステップと、
前記車両インナーデータ保存部に、前記プローブカーの車両インナーデータを保存させる車両インナーデータ保存ステップと、ここに、前記車両インナーデータは車両が備えるセンサ、コントロールユニットその他から出力される当該車両の各種状態に関するデータであって、当該車両に搭載されたネットワーク上で各種通信プロトコルによって伝送可能なデーであり、前記プローブデータと共通の時刻は含むが、前記プローブデータに比べてデータ取込のインターバルが短く、位置情報を含まず、
前記走行軌跡生成部に、地図上の所定の領域における第1のプローブカーの連続した第1の走行軌跡を前記プローブデータから生成させる走行軌跡生成ステップと、ここに、前記連続した第1の走行軌跡の任意の位置における前記プローブカーの位置は前記プローブデータの位置とその取得時刻から演算されている、
前記ドライブチャート作成部に、生成された前記第1の走行軌跡の所定の時刻における車両インナーデータの観測値と、前記第1の走行軌跡を前記所定領域における原点からの距離に正規化したときの、前記観測値を観察した時刻の地点の前記原点からの距離との相関関係を示す第1のドライブチャートを作成させる、ドライブチャート作成ステップと、
を備えてなる、ドライブチャート作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライブチャート作成装置及びその方法並びにドライブチャートを利用する領域特性特定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地図上の交差点には停止線が引かれているので、車両は停止線で一旦停止をして安全確認をする。
しかしながら、現実の安全確認動作は、停止線においてなされるだけでは不十分であり、停止線を通過した後、例えば交差点内に少し進入したところで再停止して安全を再確認する場合がある。交差点周囲の地物(建物や看板等)によっては、停止線からでは交差する道路を走行する車両が視認できないときがあるからである。
かかる再停止の必要性の有無、再停止の位置は、交差点によって様々である。
プローブデータを用いて交差点での車両が停止すべき位置を推定する方法が従来から提案されている(特許文献1参照)。
その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2~4を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-109675号公報
【文献】特開2014-099056号公報
【文献】特開2013-190963号公報
【文献】特開2007-041916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように再停止が要求される交差点において、プローブデータのみでは停止線による最初の停止位置に加えて再停止位置を特定することが困難であった。プローブデータは専ら位置情報(x、y)とその取得時刻tとから構成されるところ、現在用いられているGPSの精度と取得時刻の頻度(インターバル)からでは、最初の停止位置とこれに近接する再停止位置とを峻別することができないことがあるからである。
昨今要求される自動運転用の地図として、再停止位置を正確に特定する必要があることは言うまでもない。
そこでこの発明は、交差点における停止位置を、再停止が必要な場合も含めて、正確に特定することのできる新たな方法の提供を目的とする。
更に敷衍して、地図上における所定領域の特性を特定する方法の提案を目的とする。ここに。所定領域の一例が交差点であり、その特性の一例が停止位置である。そのほか、駐車場の出入口なども領域の一例として挙げられる。そしてその特性は、停止位置の他、退出時の右左折の制限などが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきたところ、プローブデータの走行軌跡と車両インナーデータとを組み合わせれば、地図上の所望の領域の特性を特定できるのではないかとの考えに至った。ここに、車両インナーデータとは、車両が備えるセンサ、コントロールユニットその他から出力される当該車両の各種状態に関するデータであって、当該車両に搭載されたネットワーク上でCAN(Controller Area Network)をはじめとした各種通信プロトコルにより伝送可能なデータをいう。この明細書において車両インナーデータを「CANデータ」で代表させることがある。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
プローブカーのプローブデータを保存するプローブデータ保存部と、
前記プローブカーの車両インナーデータを保存する車両インナーデータ保存部と、
地図上の所定の領域における第1のプローブカーの第1の走行軌跡を前記プローブデータから生成する走行軌跡生成部と、
生成された該第1の走行軌跡に対応する第1の車両インナーデータを読み出し、前記第1の走行軌跡と前記第1の車両インナーデータとの相関関係を示す第1のドライブチャートを作成する、ドライブチャート作成部と、
を備えてなる、ドライブチャート作成装置。
【0006】
このように規定されるドライブチャート作成装置によれば、プローブデータから生成される走行軌跡と車両インナーデータとの組合せからなるドライブチャートが作成される。ここに、ドライブチャートの一例を図1-1に示す。このドライブチャートが作成された交差点の模式図を図1-2に示す。図1-2において、停止線をS1で示す。仮想線S2は、車両が再停止する位置を示す。図1-2におけるドット「・」はプローブデータの座標を示している。
図1-1において、横軸は交差点からの距離Lを示し、縦軸は速度vを示す。図1-2に示すように、交差点Aに対する一つの進入路aから一つの退出路cへの経路における交差点の中心Oからプローブデータの座標までの距離が横軸に示されている。これは、1つのプローブカーのプローブデータの位置情報を時間順に進入路a、交差点A及び退出路c上にプロットして形成されるプローブカーの走行軌跡を表している。プローブデータを構成する位置情報に多少の誤差があったとしても当該位置情報を、いわゆるマップマッチング等の方法で補正し、連続した走行軌跡とする。
かかる連続した走行軌跡の任意の位置におけるプローブカーの存在時刻は、その前後のプローブデータの取得時刻から、例えば線形補完法により、演算される。
【0007】
図1-3は、走行軌跡(横軸)とプローブデータの数(縦軸)との関係を示す。プローブデータは所定のインターバルで取得されるので、プローブカーが停止しているとその座標においてプローブデータは重なる。しかしながら、図1-3の例からわかる通り、再停止の位置でプローブデータの重なりがみられなかった。これは、再停止の時間がプローブデータ取得のインターバルより短かったことを意味する。
時間的に連続するプローブデータの座標から速度を演算することができるが、図1-3のプローブデータに基づく速度(縦軸)-走行軌跡(横軸)のドライブチャートは図1-4となり、再停止位置での減速が現れない。
【0008】
車両において多種多様な車両インナーデータが利用されている。車速データも車両インナーデータの1つとして利用されている。
車速に関する車両インナーデータが取り込まれるインターバルは、プローブデータのそれの1/10~1/100である。
従って、走行軌跡と車両インナーデータの数との関係は、図1-5に示すようになり、再停止位置においても十分な量の車両インナーデータが取得できることがわかる。この例では、停止位置S1及び再停止位置S2において取得した車速に関する車両インナーデータの平均値(=0km/h)をもって、図1-1の速度vとしている。
【0009】
以上より、図1-1に示すように、走行軌跡と車速に関する車両インナーデータとの相関関係から得られるドライブチャートを用いれば、交差点における最初の停止位置S1と再停止位置S2とを確実に特定できることがわかる。
走行軌跡に対応させる車両インナーデータは、走行軌跡に対応して連続していることが好ましい(第2の局面)。換言すれば、走行軌跡の任意の位置の時刻は演算により得られる。このようにして演算された時刻における車両インナーデータを得ることで、車両インナーデータもまた走行軌跡に対応して連続したものとなる。
かかる連続的な車両インナーデータとして、既述の速度データの他、加速度データ、アクセル開度、駆動機の回転数、ブレーキ圧など、車両の運行の変化にともない常に生成されるものを採用することができる(第3の局面)。
図2には走行軌跡(横軸)と車両進行方向の加速度に関する車両インナーデータの相関関係を示す。
走行軌跡は、基準点からの距離に正規化されることが好ましい(第5の局面)。データに汎用性を与えるためである。ただし、交差点を直進する場合、右折する場合、左折する場合はそれぞれ別のデータとして取り扱うこととする。
【0010】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、請求項1~5の何れかに記載の前記ドライブチャート作成装置を備えた、領域特性特定装置。
このように規定される第6の局面の領域特性特定装置によれば、地図上の所定の領域における走行軌跡と車両インナーデータとの相関関係からなるドライブチャートを利用して当該所定の領域の特性を判断することができる。
【0011】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第1~5の局面の何れかに規定の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートを保存するドライブチャート保存領域と該ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する特性保存領域とを備える教師データ保存部と、
前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データが入力されるAI処理部であって、該AI処理部はドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習する、AI処理部と、を備え、
処理対象の領域におけるドライブチャートを学習済の前記AI処理部へ入力して、前記処理対象の領域の特性を特定する、地図上の領域特性特定装置。
【0012】
このように規定される第7の局面の領域特性特定装置によれば、いわゆるAI技術を用いて領域の特性を特定可能となる。
例えば、代表的な特性を備える交差点(単数又は複数)について、それぞれ標準的なドライバーによる図1-1なる関係のドライブチャートのn個を取得する。取得したn個のドライブチャートと交差点の特性との組合せを教師データとして、AI処理部へ入力してこれに学習させる。
教師データの準備段階において、不注意なドライバーによるドライブチャートは図1-1に示すパターンと異なるパターンとなる場合がある。かかるドライブチャートは教師データから除外することが好ましい。
このようにして得られた学習済のAI処理部へ、特性未知の領域で得られたプローブカーの走行軌跡を入力する。AI処理部は出力として、その走行軌跡が属する可能性の高い交差点の特性を特定する。処理対象となるプローブカーの走行履歴は単数であっても、複数であってもよい。
【0013】
この発明の第8の局面は次のように規定される。
第1~5の何れかに規定の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートを保存するドライブチャート保存領域と該ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する特性保存領域とを備える教師データ保存部と、
前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データが入力されるAI処理部であって、該AI処理部はドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習する、AI処理部とを備えてなる、地図上の領域特性特定装置用の学習装置。
これにより、後述する第9の局面で利用される学習済の学習AI処理部が提供される。
【0014】
この発明の第9の局面は次のように規定される。
第1~5の何れかの局面に記載の前記ドライブチャート作成装置が作成したドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習済のAI処理部を備えており、
前記ドライブチャート作成部により作成された処理対象の領域のドライブチャートを前記学習済のAI処理部へ入力して、前記処理対象の領域の特性を特定する、地図上の領域特性特定装置。
地図上
【0015】
これにより、第8の局面で学習させたAI処理部を利用して、検査対象の領域で得られたドライブチャートから、当該領域の特性を特定できる。
ここに、所定の領域として交差点が挙げられ、その特性として車両の停止状態をあげることができる(第10の局面)。更には、特性として、該交差点の進入路にマークされた停止線前での第1の停止態様と、該停止線を通過した後の交差点内での第2の停止態様とを挙げることができる。
【0016】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
プローブデータ保存部、車両インナーデータ保存部、走行軌跡保存部及びドライブチャート作成部を備えたドライブチャート作成装置によるドライブチャート作成方法であって、
前記プローブデータ保存部に、プローブカーのプローブデータを保存させるプローブデータ保存ステップと、
前記車両インナーデータ保存部に、前記プローブカーの車両インナーデータを保存させる車両インナーデータ保存ステップと、
前記走行軌跡生成部に、地図上の所定の領域における第1のプローブカーの第1の走行軌跡を前記プローブデータから生成させる走行軌跡生成ステップと、
前記ドライブチャート作成部に、生成された前記第1の走行軌跡に対応する第1の車両インナーデータを読み出させ、前記第1の走行軌跡と前記第1の車両インナーデータとの相関関係を示す第1のドライブチャートを作成させる、ドライブチャート作成ステップと、
を備えてなる、ドライブチャート作成方法。
このように規定される第11の局面の発明によれば、第1の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【0017】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、第11の局面に規定のドライブチャート作成方法において、前記走行軌跡生成部に基準点からの距離で正規化された走行軌跡を生成させる。
このように規定される第12の局面の発明によれば、第5の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【0018】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、第11又は第12の局面に規定のドライブチャート作成方法で作成されたドライブチャートを利用して領域の特性を特定する領域特性特定方法。
このように規定される第13の局面の発明によれば、第6の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【0019】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、教師データ保存部及びAI処理部を備えた領域特性特定装置による領域特性特定方法であって、
前記教師データ保存部のドライブチャート保存領域に請求項11~13の何れかに記載の前記ドライブチャート作成方法で作成されたドライブチャートを保存し、前記教師データ保存部の特性保存領域に前記ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する教師データ準備ステップと、
前記AI処理部に前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データを入力し、該AI処理部に前記ドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習させる学習ステップと、
学習済の前記AI処理部に処理対象の領域におけるドライブチャートを入力し、前記処理対象の領域の特性を特定させる運用ステップと、
を備えてなる領域特性特定方法。
このように規定される第14の局面の発明によれば、第7の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【0020】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、教師データ保存部及びAI処理部を備えた領域特性特定装置用の学習方法であって、
前記教師データ保存部のドライブチャート保存領域に第11~13の何れかの局面で規定の前記ドライブチャート作成方法で作成されたドライブチャートを保存し、前記教師データ保存部の特性保存領域に前記ドライブチャートを作成した領域の特性を保存する教師データ準備ステップと、
前記AI処理部に前記ドライブチャートのデータと前記領域の特性に関するデータとのセットからなる教師データを入力し、該AI処理部に前記ドライブチャートと前記領域の特性との関係を学習させる学習ステップと、
を備えてなる学習方法。
このように規定される第15の局面の発明によれば、第8の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【0021】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、教師データ保存部及びAI処理部を備えた領域特性特定装置による領域特性特定方法であって、
第15の局面で規定の学習ステップを実行した前記AI処理部を準備する学習済AI処理部準備ステップと、
処理対象の領域のドライブチャートを前記学習済のAI処理部へ入力して、前記処理対象の領域の特性を特定する、
領域特性特定方法。
このように規定される第16の局面の発明によれば、第9の局面に規定の発明と同様の作用が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明で提案するドライブチャートを説明するための各種ヒストグラムであり、図1-1はこの発明のドライブチャートの一例を示し、図1-2は図1-1のドライブチャートを得た交差点を模式的に示し、図1-3はドライブチャートの走行軌跡を示す図1-1の横軸とプローブデータのデータ数との関係を示し、図1-4は図1-3に基づく速度―走行軌跡の関係を示し、図1-5はドライブチャートの走行軌跡を示す図1-1の横軸とCAN速度データのデータ数を示す。
図2図2はドライブチャートの他の例を示す。
図3図3はこの発明のドライブチャートの作成装置を示す模式図である。
図4図4はドライブチャートの作成動作を示すフローチャートである。
図5図5はコンピュータ装置をこの発明の領域特性特定装置(学習モード)として機能させたときのブロック図である。
図6図6はコンピュータ措置をこの発明の領域特性特定装置(運用モード)として機能させたときのブロックである。
図7図7は実施形態のドライブチャート作成装置のハード構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図3はこの発明の実施形態のドライブチャート作成装置1を示す。
このドライブチャート作成装置1は、プローブデータ保存部3、走行軌跡作成部4、CANデータ保存部5及びドライブチャート作成部6から概略構成される。
プローブデータ保存部3には、複数のプローブカーから収集されたプローブデータが保存されている。その特性、即ち停止位置の特定が求められる交差点が指定されると、走行軌跡作成部4は、当該交差点を中心に所定の範囲内にあるプローブデータを読み出す。読み出されたプローブデータの中から、同一のプローブカーに起因するものであり、時間的に連続しており、かつ交差点を通過するものを抽出する。このようにして抽出されたプローブデータから交差点を通過する走行軌跡を作成する。
この走行軌跡はプローブデータの座標をつないで形成される、連続的なデータとする。図1-1の例では交差点の中心位置からの距離を表すものとして正規化されている。
走行軌跡作成部4は、また、走行軌跡を表す連続的なデータの任意の点の時刻を、その前後のプローブデータの取得時刻に基づき演算する。
【0024】
CANデータ保存部5にはプローブカーのCANデータが保存されている。CANデータにはこれが得られたプローブカーのIDが含まれ、各CANデータの取得時刻も保存されている。
CANデータの取得インターバルは極めて短いので、走行軌跡作成部4で作成された走行軌跡の任意の時刻のCANデータを特定可能である。
その結果、ドライブチャート作成部6は走行軌跡とCAN速度データとの相関関係を示すドライブチャートを作成する。
作成されたドライブチャートはディスプレイ等の出力部7を介して、既述の図1-1の形で表現される。また、作成されたドライブチャートはドライブチャート保存部8に保存される。
【0025】
ドライブチャート作成装置1の動作を図4のフローチャートに基づき説明する。
ステップ1では、プローブデータ保存部3に保存されているプローブデータの中から、指定した交差点の近辺にあるプローブデータを読み出す。その後、時間的に連続しておりかつ交差点を通過するものを抽出する。
ステップ2では、抽出したプローブデータを用いて、走行軌跡を生成する。この例では、時系列に並んだプローブデータの座標を単純につないで一旦仮の走行軌跡を形成する。その後、この仮の走行軌跡を、マップマッチング等の方法で、補正して、交差点及びその道路上に存在させる。
プローブデータの取得時刻には所定のインターバルがあるので、連続したデータからなる走行軌跡には、プローブデータの座標情報から外れた位置にあるものもある。かかる位置においてプローブカーが存在した時間は、当該位置を挟む実際のプローブデータの取得時刻から演算により特定できる。演算には線形補完を用いることができる。このようにして走行軌跡上のすべての位置においてプローブカーが存在した時刻が演算により特定される(ステップ3)
【0026】
上記のようにして得られた走行軌跡において、例えば、0.3m単位で観測点を定め、当該観測点の時刻に対応した、同じプローブカーの、CAN速度データをCANデータ保存部5から読み出し、図示しないバッファメモリに保存する(ステップ5)
ステップ7では、走行軌跡を処理して、図1-1に示すように、交差点の原点からの距離に変換する。得られた走行軌跡を基準点からの距離に正規化することで、交差点の特性を一般化することができる。正規化された走行軌跡においても観測点及びその時刻は維持される。
正規化された走行軌跡の各観測点に対してステップ5で得られたCAN速度データを対応させる。これにより、図1-1に示したドライブチャートが作成される。
作成されたドライブチャートは出力部7から出力されるとともに、ドライブチャート保存部8に保存される(ステップ9)。
【0027】
上記において、同じ交差点において、異なるプローブカーの走行軌跡とCAN速度データから、第2のドライブチャートを作成し、これより先に得られたドライブチャートと比較することができる。比較のために、2つのドライブチャートを同じ画面(ドライブチャート比較部)に表示することができる。
【0028】
最初の停止位置S1と再停止位置S2とが特定された交差点について、ドライブチャートを作成し、交差点の特性(停止位置S1とS2の位置)とドライブチャートとの関係を分析する。その結果、ドライブチャートのパターンから交差点の特性を特定可能となる。
かかる分析に、いわゆるAI技術を用いることが好ましい。
【0029】
図5はコンピュータ装置をこの発明の領域特性特定装置(学習モード)として機能させたときのブロック図である。
ステップ7で得られたドライブチャートは、教師データ保存部13のドライブチャート保存領域13Aに保存され、対象となった交差点の特性が特性保存領域13Bに保存される。
ドライブチャート保存領域13Aに保存されたデータ数がAI学習に適した数以上となったことを条件に、各ドライブチャートを交差点の特性とともにAI処理部15へ入力し、両者の関係を学習させる。
上記のようにその特性が特定されている交差点のそれぞれについてそのドライブチャートを収集し、これら(ドライブチャートと特性のセット)をAI処理部15へ入力し、学習させる。これにより、AI処理部15はドライブチャートのパターンと交差点の特性とを関係づける。
【0030】
図6はコンピュータ装置をこの発明の領域特性特定装置(運用モード)として機能させたときのブロック図である。
特性未知の交差点について、図3のドライブチャート作成装置1によりドライブチャートを作成し、メモリ部23のドライブチャート保存領域23Aに保存する。このドライブチャートを学習済のAI処理部15へ入力する。学習済のAI処理部15は、入力されたドライブチャートに関係する特性を特定し、それとの関係性を例えば%表示する。当該出力はディスプレイ等の出力部17を介して行われる。その出力は出力結果保存部18に保存される。
【0031】
図7にトライブチャート作成装置のハード構成を示す。
演算部300はCPU301、ROM303及びRAM305を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、走行軌跡作成部4及びドライブチャート作成部6として機能する。ROM303は、演算部300を制御する制御プログラム等が格納された不揮発性メモリである。RAM305は、キーボード等の入力装置330を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPU301に対してワーキングエリアを提供したりする。演算部300を制御する制御プログラムはROM303に限らずRAM305や第1、第2記憶装置340及び350に格納されていてもよい。
【0032】
第1記憶装置340はプローブデータ保存部3及びCANデータ保存部5を備える。
第2記憶装置350はドライブチャート保存部8を備える。
第1、第2記憶装置はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
【0033】
データを一時的に保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
出力装置320はディスプレイや音声出力装置であり、入力装置330は音声入力部や、ディスプレイに重ねて配置されるタッチパネル式のキーボートやマウスなどが該当する。
通信インターフェース360を介して、プローブカーと通信可能となる。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス370で連結されている。
【0034】
かかるドライブチャート作成装置はプローブカーからの各種データを受け取るサーバにその機能を持たせることが好ましい。
図5及び6で説明したコンピュータ装置のハード構成も、図7と同等のものである。
【0035】
本発明は、上記実施形態、実施例、変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 ドライブチャート作成装置
3 プローブデータ保存部
4 走行軌跡作成部
5 車両インナーデータ保存部
6 ドライブチャート作成部
13 教師データ保存部
15 AI処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7