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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】質量分析装置、及び質量分析方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 31/50 20060101AFI20240430BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240430BHJP
   G01N 27/64 20060101ALI20240430BHJP
   H01J 49/14 20060101ALI20240430BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20240430BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01J31/50
G01N27/62 G
G01N27/64 B
H01J49/14
H01J49/16
H01J49/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020015391
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021125288
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】内藤 康秀
(72)【発明者】
【氏名】平尾 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 稔
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075574(JP,A)
【文献】特開2007-242252(JP,A)
【文献】特開2015-087237(JP,A)
【文献】特開2007-157581(JP,A)
【文献】特開平9-265936(JP,A)
【文献】特開2009-236846(JP,A)
【文献】特開2017-120192(JP,A)
【文献】特開2001-178673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 31/50
G01N 27/62
G01N 27/64
H01J 49/14
H01J 49/16
H01J 49/40
H01J 49/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置される試料台と、
前記試料に対してエネルギー線を照射することで、前記試料の複数の成分の位置情報を維持したまま前記複数の成分をイオン化する照射部と、
前記エネルギー線の照射によってイオン化された前記試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられ、前記イオン化試料に応じて電子を放出するマイクロチャンネルプレートと、
前記マイクロチャンネルプレートの後段に配置され、前記マイクロチャンネルプレートから放出された前記電子に応じて光を発する蛍光体と、
前記蛍光体の後段に配置され、前記蛍光体からの前記光を通過させて前記光を撮像する開状態と前記蛍光体からの前記光を遮蔽して前記光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部と、
前記シャッター機構の開閉動作を制御する制御部と、
前記撮像部によって撮像された画像のデータを処理するデータ処理部と、を備え、
前記制御部は、前記成分毎のタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記複数の成分のそれぞれに対応する前記光を前記撮像部に撮像させ
前記制御部は、
前記照射部による前記エネルギー線の1回の照射に対応する第1イベントにおいて、n個(nは2以上の整数)の前記成分のそれぞれに対応する前記光が前記撮像部に到達する時点を含む第1期間に前記シャッター機構が前記開状態となるように前記シャッター機構の開閉を行い、
前記第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、前記n個の前記成分から特定成分を除いたn-1個の前記成分のそれぞれに対応する前記光が前記撮像部に到達する時点を含む第2期間に前記シャッター機構が前記開状態となるように前記シャッター機構の開閉を行い、
前記データ処理部は、前記第1イベントにおいて前記撮像部により撮像された画像と前記第2イベントにおいて前記撮像部により撮像された画像との差分に基づいて、前記特定成分に対応する画像を取得する、質量分析装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記シャッター機構を有するイメージインテンシファイアと前記イメージインテンシファイアの後段に配置される固体撮像素子とを有する、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記蛍光体の蛍光材料は、GaN、ZnO又はプラスチックシンチレータである、請求項1又は2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記エネルギー線は、レーザ光、電子ビーム又はイオンビームである、請求項1~3のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記エネルギー線が照射された時点を基準とする前記シャッター機構の開閉のタイミング、前記試料台と前記マイクロチャンネルプレートとの距離、及び前記イオン化試料の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、前記成分毎のタイミングを設定する、請求項1~のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【請求項6】
試料が載置される試料台と、
前記試料に対してエネルギー線を照射することで、前記試料の複数の成分の位置情報を維持したまま前記複数の成分をイオン化する照射部と、
前記エネルギー線の照射によってイオン化された前記試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられ、前記イオン化試料に応じて電子を放出するマイクロチャンネルプレートと、
前記マイクロチャンネルプレートの後段に配置され、前記マイクロチャンネルプレートから放出された前記電子に応じて光を発する蛍光体と、
前記蛍光体の後段に配置され、前記蛍光体からの前記光を通過させて前記光を撮像する開状態と前記蛍光体からの前記光を遮蔽して前記光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部と、
前記シャッター機構の開閉動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記成分毎のタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記複数の成分のそれぞれに対応する前記光を前記撮像部に撮像させ、
前記制御部は、前記照射部による前記エネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の前記成分である特定成分に対応する前記光が前記撮像部に到達するタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記特定成分に対応する前記光のみを撮像する撮像処理を前記撮像部に実行させ、
前記制御部は、複数の前記イベントにおいて、前記イベント毎に前記特定成分を変更しながら、前記撮像部に前記撮像処理を実行させる、質量分析装置。
【請求項7】
エネルギー線を照射する照射部によって、試料に対して前記エネルギー線を照射することで、前記試料の複数の成分の位置情報を維持したまま前記複数の成分をイオン化する第1工程と、
前記エネルギー線の照射によってイオン化された前記試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられたマイクロチャンネルプレートによって、前記イオン化試料に応じて電子を放出する第2工程と、
前記マイクロチャンネルプレートの後段に配置された蛍光体によって、前記電子に応じて光を発する第3工程と、
前記蛍光体の後段に配置され、前記蛍光体からの前記光を通過させて前記光を撮像する開状態と前記蛍光体からの前記光を遮蔽して前記光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部によって、前記光を撮像する第4工程と、
前記撮像部によって撮像された画像のデータを処理する第5工程と、を含み、
前記第4工程においては、前記成分毎のタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記複数の成分のそれぞれに対応する前記光を前記撮像部に撮像させ
前記第4工程において、
前記照射部による前記エネルギー線の1回の照射に対応する第1イベントにおいて、n個(nは2以上の整数)の前記成分のそれぞれに対応する前記光が前記撮像部に到達する時点を含む第1期間に前記シャッター機構が前記開状態となるように前記シャッター機構の開閉を行い、
前記第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、前記n個の前記成分から特定成分を除いたn-1個の前記成分のそれぞれに対応する前記光が前記撮像部に到達する時点を含む第2期間に前記シャッター機構が前記開状態となるように前記シャッター機構の開閉を行い、
前記第5工程において、前記第1イベントにおいて前記撮像部により撮像された画像と前記第2イベントにおいて前記撮像部により撮像された画像との差分に基づいて、前記特定成分に対応する画像を取得する、質量分析方法。
【請求項8】
前記第4工程において、前記エネルギー線が照射された時点を基準とする前記シャッター機構の開閉のタイミング、前記試料が載置される試料台と前記マイクロチャンネルプレートとの距離、及び前記イオン化試料の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、前記成分毎のタイミングを設定する、請求項に記載の質量分析方法。
【請求項9】
エネルギー線を照射する照射部によって、試料に対して前記エネルギー線を照射することで、前記試料の複数の成分の位置情報を維持したまま前記複数の成分をイオン化する第1工程と、
前記エネルギー線の照射によってイオン化された前記試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられたマイクロチャンネルプレートによって、前記イオン化試料に応じて電子を放出する第2工程と、
前記マイクロチャンネルプレートの後段に配置された蛍光体によって、前記電子に応じて光を発する第3工程と、
前記蛍光体の後段に配置され、前記蛍光体からの前記光を通過させて前記光を撮像する開状態と前記蛍光体からの前記光を遮蔽して前記光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部によって、前記光を撮像する第4工程と、を含み、
前記第4工程においては、前記成分毎のタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記複数の成分のそれぞれに対応する前記光を前記撮像部に撮像させ、
前記第4工程において、
前記照射部による前記エネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の前記成分である特定成分に対応する前記光が前記撮像部に到達するタイミングで前記シャッター機構の開閉を行うことにより、前記特定成分に対応する前記光のみを撮像する撮像処理を前記撮像部に実行させ、
複数の前記イベントにおいて、前記イベント毎に前記特定成分を変更しながら、前記撮像部に前記撮像処理を実行させる、質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、質量分析装置、及び質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージ質量分析を行う装置として、位置情報及び質量情報を同時に測定することが可能な投影型質量分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような投影型質量分析装置によれば、試料に対するプローブビームの照射によって得られるイオン像を拡大投影できるため、走査型質量分析装置と比較して空間分解能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-157353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された質量分析装置では、1回の測定において試料に含まれる複数の成分に対応する情報を測定しているため、1回の測定において測定される情報の量が膨大となり、その結果処理速度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる質量分析装置及び質量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る質量分析装置は、試料が載置される試料台と、試料に対してエネルギー線を照射することで、試料の複数の成分の位置情報を維持したまま複数の成分をイオン化する照射部と、エネルギー線の照射によってイオン化された試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられ、イオン化試料に応じて電子を放出するマイクロチャンネルプレートと、マイクロチャンネルプレートの後段に配置され、マイクロチャンネルプレートから放出された電子に応じて光を発する蛍光体と、蛍光体の後段に配置され、蛍光体からの光を通過させて光を撮像する開状態と蛍光体からの光を遮蔽して光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部と、シャッター機構の開閉動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、成分毎のタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、複数の成分のそれぞれに対応する光を撮像部に撮像させる。
【0007】
この質量分析装置では、試料の複数の成分の位置情報を維持したまま複数の成分をイオン化している。つまり、この質量分析装置は、投影型質量分析装置である。これにより、走査型質量分析装置と比較して質量分析の空間分解能を向上させることができる。また、制御部は、成分毎のタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、複数の成分のそれぞれに対応する光を撮像部に撮像させる。これにより、成分毎に光の撮像を行うことができる。そのため、1回の撮像における情報の量を抑制することができ、処理速度の低下を抑制することができる。よって、この質量分析装置によれば、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる。
【0008】
撮像部は、シャッター機構を有するイメージインテンシファイアとイメージインテンシファイアの後段に配置される固体撮像素子とを有してもよい。これにより、イメージインテンシファイアによって蛍光体からの光を増幅させて、固体撮像素子に撮像させることができる。そのため、蛍光体からの光がごく微弱である場合においても、当該光を撮像することができる。また、イメージインテンシファイアのシャッター機構のシャッタースピードは、機械式のシャッター機構よりも速い。そのため、イメージインテンシファイアのシャッター機構を用いることにより、一の成分のタイミングと他の成分のタイミングとの間隔が短い場合においても、それぞれの成分に対応する光を好適に通過又は遮蔽することができる。
【0009】
蛍光体の蛍光材料は、GaN、ZnO又はプラスチックシンチレータであってもよい。これにより、蛍光材料の残光時間を短くすることができる。そのため、一の成分のタイミングと他の成分のタイミングとの間隔が短い場合においても、蛍光体は、一の成分に対応する残光の影響を受けずに、他の成分に対応する光を発することができる。これにより、各成分に対応する光を精度良く発することができ、質量分析の精度を向上させることができる。
【0010】
エネルギー線は、レーザ光、電子ビーム又はイオンビームであってもよい。これにより、必要に応じて適切なエネルギー線の種類を選択することができる。
【0011】
制御部は、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の成分である特定成分に対応する光が撮像部に到達するタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、特定成分に対応する光のみを撮像する撮像処理を撮像部に実行させ、制御部は、複数のイベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部に撮像処理を実行させてもよい。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分に対応する光の撮像を行うことができる。
【0012】
制御部は、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント内で、複数の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達するタイミング毎にシャッター機構の開閉を複数回行ってもよい。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分に対応する光の撮像を効率よく行うことができる。
【0013】
質量分析装置は、撮像部によって撮像された画像のデータを処理するデータ処理部を更に備え、制御部は、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する第1イベントにおいて、n個(nは2以上の整数)の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達する時点を含む第1期間にシャッター機構が開状態となるようにシャッター機構の開閉を行い、第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、n個の成分から特定成分を除いたn-1個の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達する時点を含む第2期間にシャッター機構が開状態となるようにシャッター機構の開閉を行い、データ処理部は、第1イベントにおいて撮像部により撮像された画像と第2イベントにおいて撮像部により撮像された画像との差分に基づいて、特定成分に対応する画像を取得してもよい。これにより、シャッター機構のシャッタースピードの制限を緩和することができる。すなわち、シャッター機構のシャッタースピードが比較的遅い(すなわち、開状態の期間が比較的長い)ことに起因して、開状態の期間中に特定成分とは別の成分に対応する光が撮像されてしまう場合においても、特定成分に対応する画像を取得することができる。
【0014】
制御部は、エネルギー線が照射された時点を基準とするシャッター機構の開閉のタイミング、試料台とマイクロチャンネルプレートとの距離、及びイオン化試料の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、成分毎のタイミングを設定してもよい。これにより、成分毎に光の撮像を柔軟に行うことができる。
【0015】
本発明の一側面に係る質量分析方法は、エネルギー線を照射する照射部によって、試料に対してエネルギー線を照射することで、試料の複数の成分の位置情報を維持したまま複数の成分をイオン化する第1工程と、エネルギー線の照射によってイオン化された試料の成分であるイオン化試料の飛行経路上に設けられたマイクロチャンネルプレートによって、イオン化試料に応じて電子を放出する第2工程と、マイクロチャンネルプレートの後段に配置された蛍光体によって、電子に応じて光を発する第3工程と、蛍光体の後段に配置され、蛍光体からの光を通過させて光を撮像する開状態と蛍光体からの光を遮蔽して光を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されたシャッター機構を有する撮像部によって、光を撮像する第4工程と、を含み、第4工程においては、成分毎のタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、複数の成分のそれぞれに対応する光を撮像部に撮像させる。
【0016】
この質量分析方法では、第1工程において、試料の複数の成分の位置情報を維持したまま複数の成分をイオン化している。つまり、この質量分析方法は、投影型質量分析方法である。これにより、質量分析の空間分解能を向上させることができる。また、第4工程において、成分毎のタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、複数の成分のそれぞれに対応する光を撮像部に撮像させる。これにより、成分毎に光の撮像を行うことができる。そのため、1回の撮像における情報の量を抑制することができ、処理速度の低下を抑制することができる。よって、この質量分析方法によれば、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる。
【0017】
第4工程において、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の成分である特定成分に対応する光が撮像部に到達するタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、特定成分に対応する光のみを撮像する撮像処理を撮像部に実行させ、複数のイベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部に撮像処理を実行させてもよい。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分に対応する光の撮像を行うことができる。
【0018】
第4工程において、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する1回のイベント内で、複数の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達するタイミング毎にシャッター機構の開閉を複数回行ってもよい。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分に対応する光の撮像を効率よく行うことができる。
【0019】
質量分析方法は、撮像部によって撮像された画像のデータを処理する第5工程を更に含み、第4工程において、照射部によるエネルギー線の1回の照射に対応する第1イベントにおいて、n個(nは2以上の整数)の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達する時点を含む第1期間にシャッター機構が開状態となるようにシャッター機構の開閉を行い、第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、n個の成分から特定成分を除いたn-1個の成分のそれぞれに対応する光が撮像部に到達する時点を含む第2期間にシャッター機構が開状態となるようにシャッター機構の開閉を行い、第5工程において、第1イベントにおいて撮像部により撮像された画像と第2イベントにおいて撮像部により撮像された画像との差分に基づいて、特定成分に対応する画像を取得してもよい。これにより、シャッター機構のシャッタースピードの制限を緩和することができる。すなわち、シャッター機構のシャッタースピードが比較的遅い(すなわち、開状態の期間が比較的長い)ことに起因して、開状態の期間中に特定成分とは別の成分に対応する光が撮像されてしまう場合においても、特定成分に対応する画像を取得することができる。
【0020】
第4工程において、エネルギー線が照射された時点を基準とするシャッター機構の開閉のタイミング、試料が載置される試料台とマイクロチャンネルプレートとの距離、及びイオン化試料の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、成分毎のタイミングを設定してもよい。これにより、成分毎に光の撮像を柔軟に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一側面によれば、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる質量分析装置及び質量分析方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態の質量分析装置の概略図である。
図2図1の質量分析装置の各種信号の時間変化を示す図である。
図3】複数のイベントにおけるシャッター機構の開閉のタイミングを示す図である。
図4】複数のイベントにおけるイオン化試料のイオン信号強度及びシャッター機構の開閉のタイミングを示す図である。
図5】シャッター機構の制御の第1変形例を示す図である。
図6】シャッター機構の制御の第2変形例を示す図である。
図7】撮像ユニットの第1変形例を示す概略図である。
図8】撮像ユニットの第2変形例を示す概略図である。
図9】撮像ユニットの第3変形例を示す概略図である。
図10】撮像ユニットの第4変形例を示す概略図である。
図11】撮像ユニットの第5変形例を示す概略図である。
図12】撮像ユニットの第6変形例を示す概略図である。
図13】撮像ユニットの第7変形例を示す概略図である。
図14】撮像ユニットの第8変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
[質量分析装置]
図1は、質量分析装置1の概略図である。図1に示されるように、質量分析装置1は、試料台2と、照射部3と、撮像ユニット4と、制御部5と、データ処理部6と、を備えている。質量分析装置1は、レーザ脱離イオン化(Laser Desorption/Ionization、LDI)法、表面支援レーザ脱離イオン化(SALDI:Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization)法、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI:Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)法、及び2次イオン質量分析(SIMS)法等の質量分析法に用いられる。また、質量分析装置1は、浜松ホトニクス社製のイオン化支援基板DIUTHAME(ジュテーム)を用いた質量分析法に用いられてもよい。
【0025】
試料台2には、試料Sが載置される。なお、試料Sを支持する支持基板(例えば上述したイオン化支援基板)が用いられる場合には、試料台2には、試料Sと共に上記支持基板が載置される。試料台2は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電膜が形成されたガラス基板であり、透明導電膜の表面が載置面となっている。試料台2には、電圧が印加される。なお、試料台2は、導電性を確保し得る部材(例えば、ステンレス等の金属材料等からなる基板等)であればよい。試料Sは、例えば生体試料である。照射部3は、試料台2における試料Sが載置される面側に配置されている。照射部3は、試料Sに対してエネルギー線L1を照射する。これにより、照射部3は、試料Sの複数の成分S1の位置情報を維持したまま複数の成分S1をイオン化する。試料Sの成分S1は、エネルギー線L1の照射によってイオン化試料S2にイオン化される。なお、試料台2は、試料台2の両端部(両脇)を金属等で挟むことによって固定されてもよい。この場合、照射部3は、試料台2における試料Sが載置される面とは反対側(裏面側)に配置されてもよい。すなわち、照射部3は、試料台2の裏面側から試料Sに対してエネルギー線L1を照射してもよい。
【0026】
照射部3は、試料Sのうち所定の面積を有する所定範囲に対してエネルギー線L1を一括に照射する。本実施形態では、照射部3は、上記所定範囲を含む大きさのスポット径を有するフラットビームであるエネルギー線L1を試料Sに対して照射する。なお、エネルギー線L1のスポット径の大きさは、測定対象の試料Sの全体を含む大きさであってもよいし、試料Sの一部のみを含む大きさであってもよい。後者の場合には、エネルギー線L1の照射位置(試料S上においてエネルギー線L1が照射される位置)を移動させながらエネルギー線L1を複数回試料Sに対して照射することにより、試料S全体の画像を得ることができる。エネルギー線L1が照射されると、上記所定範囲内における試料Sの複数の成分S1が一括にイオン化される。質量分析装置1は、投影型質量分析装置である。より具体的には、走査型質量分析装置では、1回のエネルギー線の照射毎にエネルギー線のスポット径に対応する大きさの1ピクセルの信号が取得される。これに対して、質量分析装置1は、1回のエネルギー線L1の照射毎にエネルギー線L1のスポット径に対応する画像(複数のピクセル)の信号を取得する。このような投影型の質量分析装置1によれば、走査型質量分析装置よりも高い解像度(空間分解能)が実現される。
【0027】
エネルギー線L1は、例えばレーザ光である。エネルギー線L1は、例えばN2レーザ又はYAGレーザ等である。エネルギー線L1の強度分布(軸線に垂直な断面における強度分布)は、略均一である。エネルギー線L1のスポット径は、例えば100μm~300μm程度である。エネルギー線L1は、電子ビーム又はイオンビームであってもよい。照射部3は、エネルギー線L1をパルス的に照射する。照射部3は、イベント毎にエネルギー線L1を照射する。照射部3は、1回のイベントにおいてエネルギー線L1を1回照射する。つまり、エネルギー線L1の1回の照射が、1イベントに対応している。
【0028】
撮像ユニット4は、マイクロチャンネルプレート(Micro-Channel Plate、以下、「MCP」という)41と、蛍光体42と、撮像部43と、光学レンズ(接続部)44と、を有している。MCP41は、エネルギー線L1の照射によってイオン化された試料Sの成分S1であるイオン化試料S2の飛行経路上に設けられている。本実施形態では一例として、イオン化試料S2の飛行経路は、試料台2からMCP41に向かった略直線状を呈しており、MCP41は、試料台2に対向して設けられている。ただし、エネルギー線L1のスポット径内のエリアの位置情報を維持したままイオン化試料S2を試料台2からMCP41まで導くための飛行経路は、略直線状に限られない。このため、MCP41は、必ずしも試料台2に対向する位置に設けられるとは限らない。例えば、イオン化試料S2を試料台2からMCP41まで導く方式として、イオン化試料S2の軌道を3回曲げて飛行させるトリフト(TRIFT:triple focusing time-of-flight)、イオン化試料S2をV字状に飛行させるリフレクトロン、イオン化試料S2を8の字状に飛行させるマルタム(MULTUM)等が利用される場合には、MCP41は、イオン化試料S2の飛行経路上には設けられるが、試料台2とは対向しない。
【0029】
MCP41には電圧が印加される。試料台2上においてイオン化されたイオン化試料S2は、試料台2に印加される電圧とMCP41に印加される電圧との電位差によって、MCP41に向かって飛行し、MCP41に衝突する。複数のイオン化試料S2は、位置情報を維持したまま飛行し、質量差によって生じた時間差情報を持った状態でMCP41に衝突する。つまり、イオン化試料S2は、その種類毎に、質量差に応じた異なるタイミングでMCP41に到達する。
【0030】
MCP41は、イオン化試料S2に応じて電子Eを放出する。具体的には、MCP41は、試料台2に対向する入力面41a、及び入力面41aとは反対側の出力面41bを有している。入力面41a及び出力面41bは、互いに対向した状態で所定の基準軸と交差するように配置されている。MCP41は、入力面41aへのイオン(荷電粒子)の入射に応答して出力面41bから電子Eを出力する。MCP41は、イオンの空間分布を電子の空間分布(電子像)に変換する。
【0031】
MCP41は、内径が数μm~数十μmのガラスキャピラリ(チャンネル)を複数束ねた板状構造を有している。MCP41のそれぞれのチャンネルは、独立した2次電子増倍器として機能する。そのため,MCP41によれば、イオンがチャンネルの表面に達すると2次電子に変換されチャンネルの中で衝突を繰り返しながら電子増倍することができる。イオン衝突から2次電子として取り出すまでの時間は、数ナノ秒以下である。なお、撮像ユニット4は、複数段のMCP41を有していてもよい。
【0032】
蛍光体42は、MCP41の後段に配置されている。つまり、蛍光体42は、MCP41に対して試料台2とは反対側に配置されている。蛍光体42は、MCP41に対向する入力面42a、及び入力面42aとは反対側の出力面42bを有している。入力面42aは、電子検出面として機能する。
【0033】
蛍光体42は、基板421と、蛍光層422と、を有している。蛍光体42は、蛍光層422がMCP41に対向するように配置されている。蛍光層422は、入力面42aを有しており、基板421は、出力面42bを有している。基板421の材料は、例えば透明なガラス等である。基板421の材料は、例えばサファイア等であってもよい。蛍光層422は、基板421の出力面42bとは反対側の面に塗布されている。蛍光層422は、電子が衝突すると蛍光を発する蛍光材料からなっている。蛍光層422の蛍光材料は、例えばGaNである。蛍光層422の蛍光材料は、例えばZnO又はプラスチックシンチレータであってもよい。
【0034】
蛍光層422は、MCP41から放出された電子Eに応じて蛍光L2を発する。蛍光層422は、電子Eの衝突による蛍光L2を蛍光パターン(光学画像)に変換する。蛍光材料は、電子励起が無くなった後も発光しており徐々に弱くなっていく残光特性を有している。蛍光層422の残光時間は、12ns以下である。蛍光層422の残光時間は、例えば3ns程度である。つまり、蛍光体42は、いわゆる高速蛍光体である。質量分析装置1では、MCP41及び蛍光層422が、放電しない範囲で近接しており、それぞれに高電圧が印加されている。質量分析装置1では、イオン及び電子をそれぞれMCP41及び蛍光層422に高速で衝突させることで、信号増幅率(ゲイン)及び位置情報の両立を図っている。
【0035】
蛍光層422の蛍光材料がGaN又はZnOである場合には、蛍光層422は、例えば、蛍光材料を基板421(例えばサファイア基板)上にエピタキシャル成長させることによって形成することができる。この場合、蛍光層422の厚さは、例えば1μm~5μm程度である。或いは、蛍光層422は、例えば、ZnOからなる粉体の蛍光材料を基板421(例えばサファイア基板)上に塗布することによって形成されてもよい。この場合、蛍光層422の厚さは、例えば2μm~8μm程度である。
【0036】
撮像部43は、蛍光体42の後段に配置されている。つまり、撮像部43は、蛍光体42に対してMCP41とは反対側に配置されている。撮像部43は、固体撮像素子431を有している。固体撮像素子431は、例えばCMOSイメージセンサである。固体撮像素子431は、例えばCCDイメージセンサ又は高速イメージセンサであってもよい。
【0037】
固体撮像素子431は、シャッター機構432を有している。シャッター機構432は、蛍光体42からの蛍光L2を通過させて蛍光L2を撮像する開状態と蛍光体42からの蛍光L2を遮蔽して蛍光L2を撮像しない閉状態とを切替可能に構成されている。シャッター機構432のシャッタースピードは、蛍光層422の残光時間と同程度である。シャッター機構432のシャッタースピードは、例えば3ns程度である。シャッター機構432の開閉のタイミングは、可変である。
【0038】
光学レンズ44は、蛍光体42と撮像部43との間に配置されている。光学レンズ44は、蛍光体42と撮像部43とを光学的に接続している。光学レンズ44は、撮像部43に接続されている。光学レンズ44は、蛍光体42からの蛍光L2を撮像部43に導く。
【0039】
制御部5は、照射部3及び撮像部43の動作を制御する。制御部5は、エネルギー線L1をパルス的に照射するように照射部3を制御する。制御部5は、固体撮像素子431のシャッター機構432の開閉動作を制御する。制御部5は、撮像処理を実行するように撮像部43を制御する。制御部5は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU等)、及びメモリ(例えば、ROM、RAM等)等を備えるコンピュータ装置である。データ処理部6は、撮像部43によって撮像された画像のデータを処理する。データ処理部6は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU等)、及びメモリ(例えば、ROM、RAM等)等を備えるコンピュータ装置である。図1の例では、制御部5とデータ処理部6とを分けて記載しているが、制御部5とデータ処理部6とは同じコンピュータ装置によって構成されてもよい。
【0040】
図2は、質量分析装置1の各種信号の時間変化を示す図である。図2に示されるように、制御部5は、照射部3、MCP41及び撮像部43からの信号を取得する。図2の横軸は、時間を示している。図2の縦軸は、上から順に、エネルギー線L1の制御信号強度、MCP41のイオン信号強度、シャッター機構432の開閉、及びMCP41のイオン信号強度の所定期間内の積算値を示している。エネルギー線L1の制御信号強度は、照射部3が有する検出器(不図示)によって検出されるエネルギー線L1の信号強度である。当該検出器は、エネルギー線L1が照射されているか否か、及びエネルギー線L1が照射されるタイミング(時点)等を検出する。質量分析装置1では、エネルギー線L1が照射されるタイミングに基づいて、シャッター機構432の開閉等の制御が行われる。本実施形態では、エネルギー線L1が試料Sに照射された時点(以下、「基準点」いう)を時間のスタートの基準「0」としている。制御部5は、例えばMCP41の出力の積算値がピークに達したタイミングでシャッター機構の開閉を行うことができる。なお、シャッター機構の開閉とは、シャッター機構が開状態となった後当該開状態から閉状態となるまでの1回の動作をいう。
【0041】
制御部5は、試料Sの成分S1毎(すなわち、試料Sに含まれる成分の種類毎)のタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、複数の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2を撮像部43に撮像させる。成分S1毎のタイミングとは、一例として、当該成分S1に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングをいう。制御部5は、一の成分S1に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を一回行う。
【0042】
制御部5は、1回のイベント毎に、一の成分S1である特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像する撮像処理を撮像部43に実行させる。つまり、本実施形態では、制御部5は、1回のイベント内で、一の特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像部43に撮像させる。1回のイベントは、照射部3によりエネルギー線L1が照射されてから、当該エネルギー線L1の照射による質量分析の画像を得るまでの質量分析装置1の全ての動作を含む期間である。なお、「特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像する」とは、特定成分に対応する蛍光L2以外の蛍光が全く撮像されない場合だけでなく、特定成分と共に測定上無視できる程度の特定成分とは別の他の成分に対応する蛍光(ノイズ)が撮像される場合も含む。
【0043】
制御部5による上記制御を詳細に説明する。試料Sの複数の成分S1のそれぞれに対応するイオン化試料S2の質量は、互いに異なっている。そのため、複数のイオン化試料S2は、質量差によって生じた時間差情報を持った状態でMCP41に順次到達する。すなわち、試料台2とMCP41との電位差、及び、試料台2とMCP41との距離が一定である場合において、エネルギー線L1が試料Sに照射されてから、複数のイオン化試料S2のそれぞれがMCP41に到達するタイミングは、試料Sの成分S1毎に異なっている。このため、MCP41は、それぞれのイオン化試料S2が到達するタイミング毎に、順次電子を放出することになる。
【0044】
本実施形態では、第1イベント~第4イベントに着目して説明する。図3の(a)は、基準点R1を示す図である。本実施形態では、エネルギー線L1の制御信号強度が立ち上がり始める時点を基準点R1とする。図3の(b)~(e)のそれぞれは、第1イベント~第4イベントのそれぞれにおけるシャッター機構432の開閉のタイミングを示す図である。図3に示されるように、制御部5は、第1イベント~第4イベントのそれぞれにおいて、基準点R1を基準として互いに異なるタイミングでシャッター機構432の開閉を行っている。
【0045】
図4は、複数のイベントにおけるイオン化試料S2のイオン信号強度及びシャッター機構432の開閉のタイミングを示す図である。図4に示されるように、第1イベント~第4イベントのそれぞれにおいて、MCP41によって試料Sの複数(ここでは4つ)の成分S1(S10,S20,S30,S40)に対応するイオン信号(スペクトル)が順次検出される。この例では、エネルギー線L1が試料Sに照射されてからMCP41に到達する時間順は、成分S10,S20,S30,S40の順番となっている。制御部5は、複数の第1イベント~第4イベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部43に撮像処理を実行させる。
【0046】
具体的には、第1イベントにおいては、制御部5は、成分S10に応じたタイミング(成分S10に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミング)でシャッター機構432の開閉を1回行う。つまり、第1イベントにおいては、制御部5は、成分S10を特定成分として、撮像部43に撮像処理を実行させる。
【0047】
第2イベントにおいては、制御部5は、成分S20に応じたタイミング(成分S20に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミング)でシャッター機構432の開閉を1回行う。つまり、第2イベントにおいては、制御部5は、成分S20を特定成分として、撮像部43に撮像処理を実行させる。
【0048】
第3イベントにおいては、制御部5は、成分S30に応じたタイミング(成分S30に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミング)でシャッター機構432の開閉を1回行う。つまり、第3イベントにおいては、制御部5は、成分S30を特定成分として、撮像部43に撮像処理を実行させる。
【0049】
第4イベントにおいては、制御部5は、成分S40に応じたタイミング(成分S40に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミング)でシャッター機構432の開閉を1回行う。つまり、第4イベントにおいては、制御部5は、成分S40を特定成分として、撮像部43に撮像処理を実行させる。
【0050】
このように、制御部5は、1回のイベント毎に1つの特定成分に対応する蛍光L2のみがシャッター機構432を通過するように、シャッター機構432の開閉を制御する。これにより、イベント毎に1つの特定成分に対応する蛍光L2のみが撮像される。
【0051】
制御部5は、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミングを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定している。制御部5は、各イベントにおいて、基準点R1から特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングを含む期間にシャッター機構432が開状態となるように、シャッター機構432の開閉のタイミングを調整する。
【0052】
なお、各イベントにおいて、それぞれの特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングは、試料Sの各成分S1についてのデータを用いて算出することができる。また、それぞれの特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングは、エネルギー線L1を試料Sに照射することによって、予め測定してもよい。すなわち、各イベントに先立って、エネルギー線L1を試料Sに照射してMCP41のイオン信号強度を取得することによって、基準点R1を基準として各イオン化試料S2がMCP41に到達するタイミングのそれぞれを取得することができる。これらのタイミングは、それぞれの特定成分に対応する蛍光L2のそれぞれが撮像部43に到達するタイミングとされる。
【0053】
制御部5は、第1イベント~第4イベントのそれぞれを複数回繰り返す。例えば、制御部5は、「第1イベント→第2イベント→第3イベント→第4イベント」の一連の処理を複数回繰り返し実行する。或いは、制御部5は、「第1イベント→第2イベント→第3イベント→第4イベント」の一連の処理と「第4イベント→第3イベント→第2イベント→第1イベント」の一連の処理とを交互に繰り返し実行してもよい。
【0054】
試料Sに対してエネルギー線L1の照射を繰り返すと、試料Sがイオン化されて試料Sの量が少なくなる。これに従って、それぞれの成分S1に対応するイオン信号強度が弱くなる傾向にある。例えば、第1イベントを複数回繰り返した後、第2イベントを複数回繰り返すと、成分S20に対応するイオン信号強度が成分S10に対応するイオン信号強度よりも弱くなる傾向にある。そのため、成分S10の画像と比較して成分S20の画像が不明瞭になるおそれがある。本実施形態では、上述したような順に各イベントを繰り返し、成分S1毎に複数取得された画像を重ね合わせる処理(後述するデータ処理部6の処理)を行うことによって、各成分S10,S20,S30,S40のそれぞれに対応する画像の明瞭さを均一にすることができる。
【0055】
データ処理部6は、撮像部43によって撮像された複数の画像を重ねる処理を行う。具体的には、データ処理部6は、第1イベント~第4イベントにおいて撮像された画像のそれぞれを重ねる処理を行う。これにより、一の画像において第1イベント~第4イベントにおけるそれぞれの特定成分に対応する画像を観察することができる。更に、データ処理部6は、第1イベント~第4イベントのそれぞれを複数回繰り返すことによって撮像された画像の全てを重ねる処理を行う。これにより、同じ成分S1について複数回撮像した画像を重ねる(積算する)ことで、より明瞭な画像が得られる。
【0056】
以上説明したように、質量分析装置1では、試料Sの複数の成分S1の位置情報を維持したまま複数の成分S1をイオン化している。つまり、質量分析装置1は、投影型質量分析装置である。これにより、走査型質量分析装置と比較して質量分析の空間分解能を向上させることができる。また、制御部5は、成分S1毎のタイミングでシャッター機構の開閉を行うことにより、複数の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2を撮像部43に撮像させる。これにより、成分S1毎に蛍光L2の撮像を行うことができる。そのため、1回の撮像における情報の量を抑制することができ、処理速度の低下を抑制することができる。よって、質量分析装置1によれば、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる。
【0057】
蛍光体42の蛍光材料は、GaN、ZnO又はプラスチックシンチレータである。これにより、蛍光材料の残光時間を短くすることができる。そのため、一の成分S1のタイミングと他の成分S1のタイミングとの間隔が短い場合においても、蛍光体42は、一の成分S1に対応する残光の影響を受けずに、他の成分S1に対応する蛍光L2を発することができる。これにより、各成分S1に対応する蛍光L2を精度良く発することができ、質量分析の精度を向上させることができる。
【0058】
エネルギー線L1は、レーザ光、電子ビーム又はイオンビームである。これにより、必要に応じて適切なエネルギー線L1の種類を選択することができる。
【0059】
制御部5は、照射部3によるエネルギー線L1の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の成分S1である特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像する撮像処理を撮像部43に実行させている。制御部5は、複数のイベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部43に撮像処理を実行させている。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分S1に対応する蛍光L2の撮像を行うことができる。
【0060】
制御部5は、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミングを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定している。これにより、成分S1毎に蛍光L2の撮像を柔軟に行うことができる。
【0061】
[質量分析方法]
次に、図1及び図4を参照して、質量分析装置1を用いた試料Sの質量分析方法について説明する。
【0062】
まず、図1に示されるように、試料Sを試料台2に載置する。続いて、照射部3によって、試料Sに対してエネルギー線L1を照射する(第1工程)。これにより、試料Sの複数の成分S1の位置情報を維持したまま複数の成分S1をイオン化する。試料Sの成分S1は、エネルギー線L1の照射によってイオン化試料S2にイオン化される。続いて、MCP41によって、イオン化試料S2に応じて電子Eを放出する(第2工程)。続いて、蛍光体42によって、電子Eに応じて蛍光L2を発する(第3工程)。続いて、撮像部43によって、蛍光L2を撮像する(第4工程)。続いて、撮像部43によって撮像された画像のデータを処理する(第5工程)。
【0063】
第4工程においては、上述したように、成分S1毎のタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、複数の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2を撮像部43に撮像させる。具体的には、第4工程においては、上述したように、照射部3によるエネルギー線L1の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の成分S1である特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像する撮像処理を撮像部43に実行させる。図4に示されるように、第4工程においては、上述したように、複数の第1イベント~第4イベントにおいて、イベント毎に特定成分(成分S10,S20,S30,S40)を変更しながら、撮像部43に撮像処理を実行させる。第4工程においては、上述したように、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミングを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定する。
【0064】
以上説明したように、質量分析方法では、第1工程において、試料Sの複数の成分S1の位置情報を維持したまま複数の成分S1をイオン化している。つまり、この質量分析方法は、投影型質量分析方法である。これにより、質量分析の空間分解能を向上させることができる。また、第4工程において、成分S1毎のタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、複数の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2を撮像部43に撮像させる。これにより、成分S1毎に蛍光L2の撮像を行うことができる。そのため、1回の撮像における情報の量を抑制することができ、処理速度の低下を抑制することができる。よって、質量分析方法によれば、空間分解能の向上及び処理速度の低下の抑制を両立させることができる。
【0065】
第4工程において、照射部3によるエネルギー線L1の1回の照射に対応する1回のイベント毎に、一の成分S1である特定成分に対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を行うことにより、特定成分に対応する蛍光L2のみを撮像する撮像処理を撮像部43に実行させている。第4工程において、複数のイベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部43に撮像処理を実行させている。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分S1に対応する蛍光L2の撮像を行うことができる。
【0066】
第4工程において、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミングを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定している。これにより、成分S1毎に蛍光L2の撮像を柔軟に行うことができる。
【0067】
[変形例]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0068】
(シャッター機構の制御の第1変形例)
上記実施形態では、制御部5が、複数のイベントにおいて、イベント毎に特定成分を変更しながら、撮像部43に撮像処理を実行させる例を示したが、この限りではない。図5は、シャッター機構432の制御の第1変形例を示す図である。図5の(a)は、基準点R1を示す図である。図5の(b)は、1回のイベントにおけるシャッター機構432の開閉のタイミングを示す図である。図5に示されるように、制御部5は、照射部3によるエネルギー線L1の1回の照射に対応する1回のイベント内で、複数の成分S1(成分S10,S20,S30,S40)のそれぞれに対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミングでシャッター機構432の開閉を複数回行ってもよい。つまり、制御部5は、1回のイベントにおいて、複数の成分S1に対応する複数の蛍光L2を撮像部43に撮像させてもよい。これにより、1回の撮像における情報の量を抑制しつつ、複数の成分S1に対応する蛍光L2の撮像を1回のイベントにおいて効率よく行うことができる。シャッター機構432の開閉の間隔を、例えば1μs、1.5μs又は500ns等の互いに異なる値に設定することができる。
【0069】
(シャッター機構の制御の第2変形例)
図6は、シャッター機構432の制御の第2変形例を示す図である。図6の(a)は、基準点R1を示す図である。図6の(b)及び(c)のそれぞれは、第1イベント及び第2イベントのそれぞれにおけるシャッター機構432の開閉のタイミングを示す図である。図6の(d)は、特定成分に対応する蛍光L2を撮像するためのシャッター機構432の開閉のタイミングの目標値を示す図である。
【0070】
図6の(b)に示されるように、制御部5は、第1イベントにおいて、第1期間T1にシャッター機構432が開状態となるようにシャッター機構432の開閉を行い、図6の(c)に示されるように、第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、第2期間T2にシャッター機構432が開状態となるようにシャッター機構432の開閉を行ってもよい。第1期間T1は、n個(nは2以上の整数)の成分S1(例えば、図4に示した4つの成分S10,S20,S30,S40)のそれぞれに対応する蛍光L2が撮像部43に到達する時点を含んでいる。つまり、第1期間T1は、n個の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2の全てが撮像部43に到達する期間である。第2期間T2は、n個の成分S1から特定成分(例えば成分S10)を除いたn-1個の成分S1(成分S20,S30,S40)のそれぞれに対応する蛍光L2が撮像部43に到達する時点を含んでいる。つまり、第2期間T2は、n-1個の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2の全てが撮像部43に到達する期間である。
【0071】
第1期間T1と第2期間T2との差分は、特定成分(ここでは一例として成分S10)に対応する蛍光L2を撮像するためのシャッター機構432の開閉の期間に相当する。すなわち、第1期間T1から第2期間T2と重複する期間を除いた期間は、複数の成分S10,S20,S30,S40のうち特定成分である成分S10に対応する蛍光L2のみが撮像される期間である。そこで、データ処理部6は、第1イベントにおいて撮像部43により撮像された第1期間T1に対応する画像と第2イベントにおいて撮像部43により撮像された第2期間T2に対応する画像との差分に基づいて、特定成分に対応する画像を取得してもよい。これにより、シャッター機構432のシャッタースピードの制限を緩和することができる。すなわち、シャッター機構432のシャッタースピードが比較的遅い(すなわち、開状態の期間が比較的長い)ことに起因して、開状態の期間中に特定成分とは別の成分S1に対応する蛍光L2が撮像されてしまう場合においても、特定成分に対応する画像を取得することができる。
【0072】
また、制御部5が、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミングを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定する例を示したが、この限りではない。制御部5は、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミング、試料台2とMCP41との距離、及びイオン化試料S2の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定すればよい。イオン化試料S2の飛行速度は、例えば、試料台2とMCP41との電位差を調整することにより設定することができる。
【0073】
また、質量分析方法の第4工程において、上述したように、照射部3によるエネルギー線L1の1回の照射に対応する1回のイベント内で、複数の成分S1のそれぞれに対応する蛍光L2が撮像部43に到達するタイミング毎にシャッター機構432の開閉を複数回行ってもよい。
【0074】
また、質量分析方法の第4工程において、上述したように、第1イベントにおいて、第1期間T1にシャッター機構432が開状態となるようにシャッター機構432の開閉を行い、第1イベントとは異なる第2イベントにおいて、第2期間T2にシャッター機構432が開状態となるようにシャッター機構432の開閉を行ってもよい。また、第5工程において、上述したように、第1イベントにおいて撮像部43により撮像された第1期間T1に対応する画像と第2イベントにおいて撮像部43により撮像された第2期間T2に対応する画像との差分に基づいて、特定成分に対応する画像を取得してもよい。
【0075】
また、質量分析方法の第4工程において、上述したように、基準点R1を基準とするシャッター機構432の開閉のタイミング、試料台2とMCP41との距離、及びイオン化試料S2の飛行速度の少なくとも一つを調整することにより、成分S1毎のタイミングを設定すればよい。
【0076】
以下、撮像ユニットのいくつかの変形例(第1~第8変形例に係る撮像ユニット4A~4H)について説明する。質量分析装置1は、上述した撮像ユニット4の代わりに以下に説明する撮像ユニット4A~4Hのいずれかを備えてもよい。
【0077】
(撮像ユニットの第1変形例)
図7は、撮像ユニットの第1変形例(撮像ユニット4A)を示す図である。撮像ユニット4Aは、光学リレーレンズ(接続部)45と、イメージインテンシファイア433を更に有している点で撮像ユニット4と相違している。撮像ユニット4Aでは、撮像部43は、固体撮像素子431とイメージインテンシファイア433と、を有している。固体撮像素子431は、イメージインテンシファイア433の後段に配置されている。つまり、固体撮像素子431は、イメージインテンシファイア433に対して蛍光体42とは反対側に配置されている。イメージインテンシファイア433は、シャッター機構434を有している。
【0078】
イメージインテンシファイア433は、蛍光体42からの光が入射される側(光学レンズ44側)に設けられ、蛍光体42からの光を電子に変換する光電面と、当該電子を増倍させるMCPと、増倍された電子を光に変換し、当該光を固体撮像素子431側に出射する蛍光面と、を備えている。イメージインテンシファイア433は、例えば、浜松ホトニクス社製の高速ゲートイメージインテンシファイアユニットである。シャッター機構434は、イメージインテンシファイア433の内部に設けられた光電面及びMCPにより構成される。具体的には、MCPの電位よりも光電面の電位が低い状態が、光電面で変換された光がMCPへと引き寄せられる状態(すなわち、シャッター機構434の開状態)に相当し、MCPの電位よりも光電面の電位が高い状態が、光電面で変換された光がMCPから反発され遮断される状態(すなわち、シャッター機構434の閉状態)に相当する。すなわち、質量分析装置1が撮像ユニット4Aを備える場合には、制御部5(図1参照)は、イメージインテンシファイア433の光電面及びMCP間の電位を変化させることにより、シャッター機構434の開閉を制御することができる。光学リレーレンズ45は、イメージインテンシファイア433と固体撮像素子431との間に配置されている。光学リレーレンズ45は、イメージインテンシファイア433及び固体撮像素子431を光学的に接続している。
【0079】
撮像ユニット4Aにおいては、シャッター機構432の代わりにシャッター機構434によって、上述したような開閉動作を行ってもよい。また、図5の(b)に示されるような開閉動作は、シャッター機構432によっても実現することができる。この場合、例えば、比較的高性能のファンクションジェネレータにより生成された電圧信号に基づいてシャッター機構434を動作させることにより、シャッター機構434の開閉の間隔を、例えば1μs、1.5μs又は500ns等の互いに異なる値に設定することができる。イメージインテンシファイア433の電源の供給能力を高くし、且つ、固体撮像素子431のフレームレートを高くすることによって、1回のイベントにおいてシャッター機構434の開閉を複数回行うことを実現している。
【0080】
撮像ユニット4Aによれば、イメージインテンシファイア433によって蛍光体42からの蛍光を増幅させて、固体撮像素子431に撮像させることができる。そのため、蛍光体42からの光がごく微弱である場合においても、当該光を撮像することができる。また、イメージインテンシファイア433のシャッター機構434のシャッタースピードは、機械式のシャッター機構よりも速い。そのため、イメージインテンシファイア433のシャッター機構434を用いることにより、一の成分のタイミングと他の成分のタイミングとの間隔が短い場合においても、それぞれの成分に対応する光を好適に通過又は遮蔽することができる。
【0081】
(撮像ユニットの第2変形例)
図8は、撮像ユニットの第2変形例(撮像ユニット4B)を示す図である。撮像ユニット4Bは、光学リレーレンズ45の代わりにFOP(ファイバオプティカルプレート、接続部)46を有している点で撮像ユニット4Aと相違している。FOP46は、イメージインテンシファイア433と固体撮像素子431との間に配置されている。FOP46は、イメージインテンシファイア433及び固体撮像素子431を光学的に接続している。具体的には、撮像ユニット4Bは、FOP46を固体撮像素子431上にカップリングした構成を有する。FOP46は、例えば、幅が数μm程度の光ファイバーを数百万本束ねることによって形成された光学デバイスである。このような構成によれば、撮像ユニット4Bの構成(イメージインテンシファイア433と固体撮像素子431との接続部分の構成)をコンパクト化できると共に、接続部として光学レンズを用いる場合よりも光学調整が容易となり且つ光量を向上させることができる。
【0082】
(撮像ユニットの第3変形例)
図9は、撮像ユニットの第3変形例(撮像ユニット4C)を示す図である。撮像ユニット4Cは、光学レンズ44の代わりにFOP(接続部)47を有している点、及び、蛍光体42の代わりに蛍光体42Cを有している点で撮像ユニット4と相違している。蛍光体42Cは、基板421を有していない点で蛍光体42と相違している。つまり、蛍光体42Cは、蛍光層422のみによって構成されている。FOP47は、蛍光体42Cと撮像部43との間に配置されている。蛍光体42Cは、FOP47における撮像部43とは反対側の一方の面47aに形成されている。蛍光体42Cは、例えば、板状(ブロック状)又は液体状のプラスチックシンチレータからなる蛍光材料をFOP47の一方の面47a上に塗布し乾燥させることによって形成することができる。或いは、蛍光体42Cは、例えば、ZnOからなる粉体の蛍光材料をFOP47の一方の面47a上に塗布することによって形成されてもよい。後者の場合の蛍光体42Cの厚さは、例えば2μm~8μm程度である。FOP47の他方の面(一方の面47aとは反対側の面)47bは、撮像部43に接続されている。FOP47は、蛍光体42C及び撮像部43を光学的に接続している。撮像ユニット4Cによれば、簡単な構成で蛍光体42C及び撮像部43を光学的に接続することができる。
【0083】
(撮像ユニットの第4変形例)
図10は、撮像ユニットの第4変形例(撮像ユニット4D)を示す図である。撮像ユニット4Dは、光学レンズ44の代わりにFOP47を有している点、及び、蛍光体42の代わりに蛍光体42Cを有している点で撮像ユニット4Aと相違している。FOP47は、蛍光体42Cと撮像部43のイメージインテンシファイア433との間に配置されている。FOP47の他方の面47bは、イメージインテンシファイア433に接続されている。FOP47は、蛍光体42C及びイメージインテンシファイア433を光学的に接続している。
【0084】
(撮像ユニットの第5変形例)
図11は、撮像ユニットの第5変形例(撮像ユニット4E)を示す図である。撮像ユニット4Eは、光学リレーレンズ45の代わりにFOP46を有している点で撮像ユニット4Dと相違している。
【0085】
(撮像ユニットの第6変形例)
図12は、撮像ユニットの第6変形例(撮像ユニット4F)を示す図である。撮像ユニット4Fは、光学レンズ44の代わりにFOP(接続部)48を有している点で撮像ユニット4と相違している。FOP48は、蛍光体42と撮像部43との間に配置されている。FOP48は、蛍光体42及び撮像部43に接続されている。FOP48は、蛍光体42及び撮像部43を光学的に接続している。撮像ユニット4Eの構成は、蛍光層422をFOP48に直接形成することが困難な場合に有効である。具体的には、撮像ユニット4Eの構成を採用する場合には、まず、蛍光層422を基板421の表面に形成し、研磨によって基板421を薄化することで蛍光体42を形成することができる。続いて、蛍光体42をFOP48に張り付けることができる。
【0086】
(撮像ユニットの第7変形例)
図13は、撮像ユニットの第7変形例(撮像ユニット4G)を示す図である。撮像ユニット4Gは、光学レンズ44の代わりにFOP48を有している点で撮像ユニット4Aと相違している。FOP48は、蛍光体42とイメージインテンシファイア433との間に配置されている。FOP48は、蛍光体42及びイメージインテンシファイア433に接続されている。FOP48は、蛍光体42及びイメージインテンシファイア433を光学的に接続している。
【0087】
(撮像ユニットの第8変形例)
図14は、撮像ユニットの第8変形例(撮像ユニット4H)を示す図である。撮像ユニット4Hは、光学レンズ44の代わりにFOP48を有している点で撮像ユニット4Bと相違している。FOP48は、蛍光体42とイメージインテンシファイア433との間に配置されている。FOP48は、蛍光体42及びイメージインテンシファイア433に接続されている。FOP48は、蛍光体42及びイメージインテンシファイア433を光学的に接続している。
【0088】
上述した一の実施形態又は変形例における一部の構成は、他の実施形態又は変形例における構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…質量分析装置、2…試料台、3…照射部、4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H…撮像ユニット、41…MCP(マイクロチャンネルプレート)、42…蛍光体、43…撮像部、431…固体撮像素子、432,434…シャッター機構、433…イメージインテンシファイア、44…光学レンズ(接続部)、45…光学リレーレンズ(接続部)、46,47,48…FOP(ファイバオプティカルプレート、接続部)、5…制御部、6…データ処理部、E…電子、L1…エネルギー線、L2…蛍光、S1…成分、S…試料、S2…イオン化試料、T1…第1期間、T2…第2期間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14