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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】トナー及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240430BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240430BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G03G9/097 368
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/08 381
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020025110
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2020154294
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019047177
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】鏑木 武志
(72)【発明者】
【氏名】川口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 翔太
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142759(JP,A)
【文献】特開2017-102399(JP,A)
【文献】特開2012-215857(JP,A)
【文献】特開2017-090828(JP,A)
【文献】特開2017-068006(JP,A)
【文献】特開2003-207932(JP,A)
【文献】特開2017-223945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を含有するトナーであって、
該トナー粒子は、表面にポリエステル樹脂を含有し、
該トナー粒子は、多価金属元素を含有し、
該多価金属元素の20℃における電気抵抗率をAΩ・m、該トナー粒子の該多価金属元素の含有量をBμmol/gとしたとき、下記式を満たし、
0.025×10≦(1/A)×B≦4.500×10
該外添剤がシリカ粒子を含有し、
該シリカ粒子は、個数平均粒径が20nm以上0nm以下の球状シリカ粒子を含有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記多価金属元素は、アルミニウム、鉄、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記多価金属元素は、アルミニウム、鉄、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記多価金属元素がアルミニウムを含む場合、トナー粒子中のアルミニウムの含有量は、0.080μmol/g以上0.400μmol/g以下であり、
前記多価金属元素が鉄を含む場合、トナー粒子中の鉄の含有量は、0.270μmol/g以上1.250μmol/g以下であり、
前記多価金属元素がマグネシウムを含む場合、トナー粒子中のマグネシウムの含有量は、2.000μmol/g以上20.000μmol/g以下であり、
前記多価金属元素がカルシウムを含む場合、トナー粒子中のカルシウムの含有量は、1.500μmol/g以上15.000μmol/g以下である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwが、10000以上60000以下であり、
前記ポリエステル樹脂中のエステル基の濃度が、20質量%以上50質量%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記球状シリカ粒子の真円度が0.80以上である請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記球状シリカ粒子が、ゾルゲルシリカ粒子である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー粒子は、ワックスを含有し、
透過型電子顕微鏡を用いた前記トナーの断面観察において、前記トナー粒子の表面から1.0μmまでの領域におけるワックスの占める面積の割合をAsとしたとき、Asが5%以上40%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナー粒子が、乳化凝集トナー粒子である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂である請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
該請求項1~9のいずれか一項に記載のトナーの製造方法であって、
前記結着樹脂の微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する工程、及び
該凝集粒子を融合させて前記トナー粒子を得る工程を有するトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されており、高画質化や高速化を始めとする性能の向上が求められている。
中でも、複写機やプリンターは、小型で省エネルギー性に優れたものにしたいという要望が高まっている。そのため、低温定着性に優れ、良好な保存安定性を有し、長期間にわたって優れた画質を維持できるトナーが求められている。
この要求に対し、材料選択性の幅が広い、トナー粒子の形状の制御が容易、多量の離型剤を含有させることが可能であるといった点で、乳化凝集法により製造されたトナーが多く提案されている。
乳化凝集法では、乳化重合・強制乳化・転相乳化法等による樹脂粒子分散液、及び溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液などを作製する。その後、これらを混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、加熱することによって融合・合一させ、トナーが製造される。
【0003】
特許文献1には、上記乳化凝集法により製造されたトナーとして、トナー粒子中にアルミニウムを含有させ、その含有量が蛍光X線によるNet強度0.02~0.30のトナーが開示されている。
この技術によれば、アルミニウムと結着樹脂分子中のカルボン酸等の極性部との間で一部が架橋構造をとることで、良好な帯電量と低温定着性とを両立できることが開示されている。
特許文献2には、乳化凝集法により製造されたトナーとして、スチレンアクリル共重合体のコア表面をスチレンアクリル変性ポリエステルのシェルで被覆したトナー粒子に、個数平均一次粒径が50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添したトナーを用いた画像形成方法が開示されている。
この技術によれば、トナー粒子表面が平滑化され、比較的大粒径である外添剤のトナー粒子への接着力が高まり、スペーサー効果と遊離抑制の両立が可能になり、高画質のプリント物を安定して作製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-107769号公報
【文献】特開2013-3367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、上記のような乳化凝集法により製造されたトナーでは、凝集剤由来の多価金属イオンが結着樹脂中に存在している。このような多価金属イオンは、トナー粒子表面近傍及びトナー粒子内部に存在するが、高温高湿環境下においては、多価金属イオンの吸湿特性の影響で、トナーの帯電量が低下する傾向にある。
これに対して、上記特許文献を含む従来のトナーは、シリカや酸化チタン等の外添剤微粒子によりトナー粒子表面を被覆して、帯電量の低下影響を抑える手法がとられている。また、特許文献2に示すように、比較的粒径の大きなシリカ粒子をスペーサー粒子として併用添加することで、外添剤微粒子の埋め込みを抑制して、外添剤微粒子の被覆効果を持続させる手法がとられている。
しかし、従来のトナーを、長寿命化や高速化に対応したより過酷な現像プロセスで使用した場合、高温高湿環境下における帯電量の低下を抑えきれず、カブリの発生や画像濃度の低下といった課題が生じることが分かった。
【0006】
また、従来のトナーは、対極の低温低湿環境下において多数枚のプリントを行った場合、トナーの流動性の低下と帯電量の蓄積によるチャージアップが起こりやすくなる。そのため、規制不良や現像ゴースト等の画像品質の低下が顕在化することがわかった。以上のように、従来のトナーは環境帯電特性の安定性にまだまだ課題がある。
本発明は、高速化、長寿命化に対応した画像形成装置においても、高温高湿環境下における濃度の安定性やカブリの抑制に優れ、また、低温低湿環境下における規制不良や現像ゴーストの発生を抑えた、環境帯電特性に優れたトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を含有するトナーであって、
該トナー粒子は、表面にポリエステル樹脂を含有し、
該トナー粒子は、多価金属元素を含有し、
該多価金属元素の20℃における電気抵抗率をAΩ・m、該トナー粒子の該多価金属元素の含有量をBμmol/gとしたとき、下記式を満たし、
0.025×10≦(1/A)×B≦4.500×10
該外添剤がシリカ粒子を含有し、
該シリカ粒子は、個数平均粒径が20nm以上0nm以下の球状シリカ粒子を含有することを特徴とするトナーに関する。


【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高速化、長寿命化に対応した画像形成装置においても、高温高湿環境下における濃度の安定性やカブリの抑制に優れ、また、低温低湿環境下における規制不良や現像ゴーストの発生を抑えた、環境帯電特性に優れたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、多価金属元素が結着樹脂中に存在するトナー粒子を含有するトナーにおいて、高速化、長寿命化に対応した画像形成装置に使用した場合においても、
(1)高温高湿環境下において、多数枚のプリントを経た後も、帯電の立ち上がり性が良好であること
(2)低温低湿環境下において、多数枚のプリントを経た後も、チャージアップ現象を抑え、耐久性が維持できること
について鋭意検討した。
【0010】
その結果、
(1)トナー粒子が、表面にポリエステル樹脂を含有すること、
(2)トナー粒子が、多価金属元素を含有し、該多価金属元素の20℃における電気抵抗率をAΩ・m、該トナー粒子の該多価金属元素の含有量をBμmol/gとしたとき、
0.025×10≦(1/A)×B≦4.500×10 の関係を満たすこと、
(3)トナー粒子が、外添剤として、球状シリカ粒子を含有し、該球状シリカ粒子の個数平均粒径が20nm以上40nm以下であること、
により上記を達成できることを見出した。
【0011】
本発明の効果が発現する理由について、本発明者らは、以下のように考えている。
前述の通り、乳化凝集法により製造されたトナーは、凝集剤由来の多価金属元素を含有する。多価金属のイオンは吸湿傾向が強いため、高温高湿環境下においては水分吸着によってトナー粒子の摩擦帯電が阻害され、帯電量不足による諸問題を引き起こしやすい。
特にトナー粒子表面近傍に存在する多価金属イオンは、キャリアや現像ローラー等の帯電付与部材との摩擦で生じた電荷をリークしやすく、帯電阻害の主要因となることが多い。
【0012】
本発明に用いられるシリカ粒子は、形状が球状であり、個数平均粒径が20nm以上40nm以下である。これらの特徴を有するシリカ粒子は、トナー粒子表面において、帯電付与部材等との接触時にわずかに転がることが観察される。
この転がりにより、トナー粒子表面の多価金属イオンが存在する局所的な電荷のリークポイントと帯電部材が接触する際に、シリカ粒子が介在するケースが増加する。
本発明者らの検討によると、この様なケースにおいては、まずシリカ粒子の保持している電荷が多価金属イオンとの接触によってリークする。しかし、リーク直後にシリカ粒子は転がってリークポイントを離れると同時に帯電部材との接触が加わり摩擦帯電が生じ、局所的な電荷のリークを瞬時に補うことができる。この働きにより、トナー粒子表面で起こる多価金属イオンを起点に広がる電荷消失を、最小限に抑える効果が発現すると推察している。
【0013】
形状が球形のシリカ粒子は、トナー粒子表面に均一に分散させることができる。トナー粒子表面全体を球状シリカ粒子で均一に被覆することで、さらに上記効果を安定して発揮できるものと考えている。
本発明では、シリカ粒子の真円度が0.80以上である場合に、球状であると判断する。シリカ粒子の真円度は、0.85以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、真円度は、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.98以下である。
【0014】
球状シリカ粒子の個数平均粒径が、20nm以上であることで、帯電部材等との接触時に、球状シリカ粒子がトナー粒子表面に埋没することなく転がることができ、リークポイントに介在する機会が増え、高温高湿環境下における帯電安定性が優れる。
個数平均粒径が40nm以下であることで、球状シリカ粒子がリークポイントを離れる際に、帯電部材との接触により生じた電荷を瞬時に補うことができる。
【0015】
一方で、本発明のトナーは、低温低湿環境下においては帯電量の蓄積を緩和して、チャージアップの抑制効果を有する。
帯電量の蓄積を緩和できるメカニズムについて、本発明者らは、トナー粒子表面で摩擦により発生した電荷が、トナー内部に存在する凝集剤由来の多価金属イオンにリークされていると考えている。
上記効果は、トナー粒子表面がポリエステル樹脂であること、さらにシリカ粒子が球状かつシリカ粒子の個数平均粒径が20nm以上40nm以下であることにより発現する。
【0016】
本発明に用いるシリカ粒子の形状は球状であり、帯電部材などの部材との接触時に転がることで、トナー粒子内部に存在する多価金属イオンのリークポイントに接近する機会を得やすいと考えられる。
シリカ粒子の蓄積電荷を速やかにトナー粒子内部に逃がすためには、シリカ粒子の帯電点(帯電サイト)がトナー粒子内部のリークポイントに近づく必要がある。20nm以上40nm以下の大きさが、リークポイントへの接近機会を得るうえで最も好適なサイズになると考えている。
【0017】
また、トナー粒子が、表面にポリエステル樹脂を含有することが必須であり。これによ
り、シリカ粒子との摩擦帯電が過帯電に陥ることを抑制でき、さらにトナー粒子表面で発生する電荷を、トナー粒子内部のリークポイントに速やかに伝播させることができる。
シリカ粒子とポリエステル樹脂は電荷の授受がしやすい関係にある。またポリエステル樹脂は構造上極性基が偏析する傾向が小さく、エステル基等の電荷伝播ユニットがトナー粒子内部にまで均一に存在する。そのため、ポリエステル樹脂により上記効果が発現すると考えている。
【0018】
球状シリカ粒子の個数平均粒径が、20nm以上であることで、部材等との接触時に、球状シリカ粒子がトナー粒子表面に埋没することなく転がることができる。そして、球状シリカ粒子がトナー粒子内部に存在する多価金属イオンへ接近する時に、ポリエステル樹脂を介した蓄積電荷のリークが可能となり、チャージアップを抑制できる。
個数平均粒径が40nm以下であると、シリカ粒子の帯電点(帯電サイト)がトナー粒子内部のリークポイントに近づく機会が得られ、蓄積電荷を速やかにリークさせることができる。
球状シリカ粒子の個数平均粒径は、22nm以上38nm以下であることが好ましい。
【0019】
トナー粒子は多価金属元素を含有し、該多価金属元素の20℃における電気抵抗率をAΩ・m、該トナー粒子中の該多価金属元素の含有量をBμmol/gとしたとき、
0.025×10≦(1/A)×B≦4.500×10
の関係を満たすことが必要である。
(1/A)×Bの値を0.025×10以上とすることで、トナー粒子の表面及び内部に、多価金属元素による適度な電荷リークサイトを存在させることができる。そのため、低温低湿環境下でトナー粒子表面の蓄積電荷をトナー粒子中に拡散することができ、チャージアップが抑えられる。
【0020】
(1/A)×Bの値を4.500×10以下とすることで、本発明のトナー構成においては、高温高湿環境下における電荷のリークを球形シリカの帯電付与により補うことができ、帯電の立ち上がり性の維持に優れ、カブリの発生や濃度低下を抑制することができる。
(1/A)×Bは、
0.030×10≦(1/A)×B≦4.400×10
の関係を満たすことが好ましい。
多価金属元素の20℃における電気抵抗率は、「化学大辞典」(東京化学同人、1989年)、並びに「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(日本化学会編、丸善、1993年、490ページ)に記載されている値を採用しうる。
多価金属元素が複数存在する場合は、それぞれの多価金属元素について(1/A)×Bを計算し、その合算値を採用する。
【0021】
多価金属元素の20℃における電気抵抗率が、2.5×10-8Ω・m以上10.0×10-8Ω・m以下であることが好ましい。上記範囲であると、帯電リークの安定性とチャージアップの抑制に、特段の効果がある。
【0022】
多価金属元素は、例えば、アルミニウム2.7×10-8Ω・m、カルシウム3.5×10-8Ω・m、マグネシウム4.5×10-8Ω・m、及び鉄9.7×10-8Ω・mなどからなる群から選択される少なくとも一つを挙げることができる。
アルミニウム、鉄、マグネシウム、及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つが特に安定した効果を発揮することができる。
【0023】
多価金属元素がアルミニウムを含む場合、トナー粒子中のアルミニウムの含有量は、0.080μmol/g以上0.400μmol/g以下であることが好ましく、0.10
0μmol/g以上0.320μmol/g以下であることがより好ましい。
多価金属元素が鉄を含む場合、トナー粒子中の鉄の含有量は、0.270μmol/g以上1.250μmol/g以下であることが好ましく、0.375μmol/g以上1.000μmol/g以下であることがより好ましい。
多価金属元素がマグネシウムを含む場合、トナー粒子中のマグネシウムの含有量は、2.000μmol/g以上20.000μmol/g以下であることが好ましく、4.000μmol/g以上14.000μmol/g以下であることがより好ましい。
多価金属元素がカルシウムを含む場合、トナー粒子中のカルシウムの含有量は、1.500μmol/g以上15.000μmol/g以下であることが好ましく、2.500μmol/g以上14.000μmol/g以下であることがより好ましい。
【0024】
トナー粒子中の多価金属元素の合計の含有量は、0.100μmol/g以上21.000μmol/g以下程度であることが好ましい。
トナー粒子中の多価金属元素の含有量を上記範囲とすることで、低温低湿環境においてトナー粒子表面の蓄積電荷をトナー粒子内部に伝播させる効果に優れ、高温高湿環境において過度な電荷リークによるカブリの発生を抑えることができる。
また、トナー粒子中の多価金属元素の含有量が上記下限以上であると、低温低湿環境での電荷のリーク性が安定する。一方、多価金属元素の含有量が上記上限以下であると、高温高湿環境における帯電性が良好になる。
【0025】
物質により好ましい多価金属元素の含有量の範囲が異なるのは金属の価数に関係するものと考えている。すなわち、価数が高い場合にはカルボキシ基等との配位能力が高いため、導電パスの形成に優れ、少ない金属量で電荷リーク効果を発揮し得ると考えている。3価のアルミニウムは少量で、2価のマグネシウムとカルシウムは多量で、混合価数を取り得る鉄はその間の量で、好適なリーク効果を発揮できる。
これら多価金属元素の含有量は、トナー粒子作製時における多価金属元素含有物質の添加量により制御することができる。
【0026】
多価金属元素をトナー粒子中に含有させる手段は特に制限されない。例えば、粉砕法によりトナー粒子を製造する場合には、原料の樹脂に予め多価金属元素を含有させておくことや、原料を溶融混練する際に多価金属元素を添加することで、多価金属元素をトナー粒子に含有させることができる。
重合法など湿式製造法でトナー粒子を製造する場合には、原料に多価金属元素を含有させておくことや、製造過程で水系媒体を介して多価金属元素を添加することができる。湿式製造法において、水系媒体中でイオン化させた状態を経てトナー粒子中に含有させることは均一化の観点から好ましい。
多価金属元素がアルミニウム、鉄、マグネシウム、及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つであると、イオン化傾向が比較的大きく、イオン化しやすいため特に好ましい。
【0027】
製造時に混合する際の多価金属元素の態様は特に制限されず、単体、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩、ヘキサフルオロシリル化物、酢酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、塩素酸類塩、硝酸類塩等を挙げることができる。前述の通りこれらを水系媒体中で一度イオン化した状態を経てトナー粒子中に含有させることが好ましい。
水系媒体とは水が50質量%以上と、水溶性の有機溶媒50質量%以下からなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを挙げることができる。
水系媒体がヒドロキシアパタイトを含有し、該多価金属元素がカルシウムである場合にはカルシウムの添加量に注意する。ヒドロキシアパタイトの化学式はCa10(PO(OH)であり、カルシウムとリンのモル数の比は1.67である。従って、カルシ
ウムのモル数をM(Ca)、リンのモル数をM(P)とした時、M(Ca)≦1.67M(P)の条件下ではカルシウムはヒドロキシアパタイトの結晶に取り込まれやすいため、これを超える量のカルシウムを水系媒体に存在させることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる球状シリカ粒子について説明する。
シリカ粒子としては、水ガラスから製造される湿式シリカ、湿式法により得られるゾルゲル法シリカ粒子、ゲル法シリカ粒子、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られる溶融シリカ粒子、爆燃法シリカ粒子が挙げられる。湿式法により得られるシリカ粒子は、水分吸着特性を有する傾向にあるため、低温低湿環境下における電荷の蓄積を抑制する働きがあり好ましい。
湿式法シリカ粒子の中でも、円形度が高く、粒度分布がシャープな特性を有するゾルゲル法によるシリカ粒子、すなわちゾルゲルシリカ粒子が特に好ましい。
個数平均粒径が20nm以上40nm以下の球状シリカ粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上3.0質量部以下である。
【0029】
シリカ粒子の表面は、疎水化処理されていることが好ましい。
シリカ粒子の疎水化処理に用いられるシラン又はシラザン化合物としては特段の制限なく公知のシラン又はシラザン化合物を用いることができる。
シラン化合物としては、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン等のアルコキシシラン類、クロルシラン、ブロモシラン、ヨードシラン等のハロシラン類、ハイドロシラン類、アルキルシラン類、アリールシラン類、ビニルシラン類、アクリルシラン類、エポキシシラン類、シリル化合物類、シロキサン類、シリルウレア類、シリルアセトアミド類、及びこれらのシラン化合物類が有する異種の置換基を同時に有するシラン化合物類があげられる。
【0030】
シラザン化合物は、分子中にSi-N結合を有する化合物の総称である。具体的には、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、テトラエチルテトラメチルシクロテトラシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジブチルテトラメチルジシラザン、ジヘキシルテトラメチルジシラザン、ジオクチルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザンなどが挙げられる。
これらの中でも、処理の均一性の観点から、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0031】
以下にトナーの好ましい形態について説明する。
トナー粒子表面に存在するポリエステル樹脂は、重量平均分子量Mwが10000以上60000以下であることが好ましく、15000以上55000以下であることがより好ましい。また、該ポリエステル樹脂中のエステル基の濃度が20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
重量平均分子量Mwを10000以上にすることで、末端極性基による電荷リーク特性が強まる影響を抑えることができ、高温高湿環境における帯電の安定性に優れる。
一方、重量平均分子量Mwを55000以下とすることで、トナー表面で発生する摩擦帯電による電荷を、トナー粒子内部に速やかに伝播させることができ、チャージアップの抑制効果に優れる。
【0032】
ポリエステル樹脂中のエステル基の濃度を20質量%以上とすることで、トナー粒子内に存在する多価金属元素への導電パスの形成に優れ、低温低湿環境における電荷の蓄積を抑えることができる。
ポリエステル樹脂中のエステル基の濃度を50質量%以下とすることで、高温高湿環境
においても、良好な帯電立ち上がり特性を維持することができる。
トナー粒子表面の蓄積電荷をトナー粒子内部に存在する多価金属元素に安定して電荷を伝播させることができ、チャージアップの抑制効果に優れる。
【0033】
本発明におけるポリエステル樹脂中のエステル基濃度(質量%)は、以下の様にして求められる。ポリエステル樹脂をNMRで組成分析することにより、ポリエステル樹脂の各モノマーに由来する組成比率を求める。
得られたモノマー組成より、下記式を用いてエステル基濃度を求める。カルボン酸成分中のカルボキシ基のモル当量数、及びアルコール成分中のヒドロキシ基のモル当量数を比較し、モル当量数が少ない方の成分(x)に着目する。成分(x)のモノマー質量、モノマー分子量及び官能基数並びに生成した樹脂の質量を下記式に代入する。成分(x)のモノマーが2種以上(n≧2)ある場合、それぞれについて計算した総和をエステル基濃度とする。なお、本発明におけるエステル基濃度とは、ポリエステル樹脂中におけるエステル結合部“-COO-”(分子量44)の質量割合を意味する。
【0034】
【数1】
【0035】
P:モノマーの質量(g)(得られたポリエステル樹脂の質量と分析から得られたmol比から算出)
Q:生成した樹脂の質量(g)
R:モノマーの分子量
S:モノマーの官能基数(成分(x)がアルコールである場合はヒドロキシ基、カルボン酸である場合はカルボキシ基の数とする)
n:成分(x)のモノマーの種類(数)
【0036】
NMRによる組成分析は例えば以下のように行うことができる。
核磁気共鳴分光分析(H-NMR)[400MHz、CDCl、室温(25℃)]を用いてポリエステル樹脂を組成分析する。
測定装置:FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
(トナーを用いた、トナー粒子表面のポリエステル樹脂の組成分析)
以下の方法により、トナーを用いてその表面に存在するポリエステル樹脂の組成分析を行うこともできる。
トナーをメタノールに超音波分散させて球状シリカ粒子や他の外添剤を分離して、24時間静置する。沈降したトナー粒子と、上澄み液に分散した球状シリカ粒子や他の外添剤とを分離、回収し、十分に乾燥させることで、トナー粒子を単離することができる。
単離したトナー粒子は、まず後述するTOF-SIMS分析により、トナー粒子表面にポリエステル樹脂が存在することを確認する。
続いてトナー粒子を、クロロホルムに溶解し、例えばマイショリディスクH-25-2(東ソー社製)などを使用して不溶分を除去する。次に、分取HPLC(例えば、日本分析工業社製LC-9130 NEXT 分取カラム[60cm])に可溶分を導入し、分取
した各成分を、前述のNMR測定により組成分析を行う。
なお、結着樹脂が複数種存在する場合の、トナー粒子表面に存在する樹脂の特定は、極性の異なる各種溶媒を用いて、多段階溶媒抽出法や、ソックスレー抽出により表層樹脂成分を予め分取し、上記NMR分析を行うことで同定することができる。
また、トナーから表面のポリエステル樹脂の組成分析を行って、エステル基濃度を算出する場合、P:モノマーの質量、Q:生成した樹脂の質量、R:モノマーの分子量は以下のようにして求めることができる。
P及びQは、前述のNMR分析を行うことで、ポリエステル樹脂の分子構造と分子量を特定することで求めることができる。Qに関しては、溶媒抽出成分をエバポレータで乾固させることで、求めることができる。なお、抽出成分中にその他の樹脂成分等が含まれる場合は、前述のNMR分析によりその他の樹脂成分の分子構造と分子量を特定し、抽出成分中のポリエステル樹脂の質量Qを求めることができる。
【0037】
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。
カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6~18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;シクロヘキサンジカルボン酸;及びトリメリット酸が挙げられる。
これらの中で好ましく用いられる酸モノマー成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸である。
【0038】
アルコール成分としては、ビスフェノールA;水素添加ビスフェノール;ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、イソソルビド等が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂は末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
【0039】
高いエステル基濃度を有するポリエステル樹脂を製造する観点では、酸成分としてはテレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸成分が好ましい。アルコール成分としてはエチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも一の脂肪族アルコール成分を含有することが好ましい。
【0040】
なお、トナー粒子表面にポリエステル樹脂を存在させる方法は、トナー粒子を構成する結着樹脂にポリエステル樹脂を使用する方法が挙げられる。すなわち、結着樹脂がポリエステル樹脂を含むことが好ましく、結着樹脂がポリエステル樹脂であることがより好ましい。結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは80質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%である。
また、コアシェル構造を有するトナー粒子のシェル層に、ポリエステル樹脂を存在させる方法等が挙げられる。すなわち、トナー粒子がコアシェル構造を有し、シェル層がポリエステル樹脂を含むことが好ましく、シェル層がポリエステル樹脂であることがより好ましい。シェル層のポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは80質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%である。
【0041】
なお、トナー粒子表面のポリエステル樹脂の存在量は、後述のTOF-SIMS分析により、二次イオンのフラグメント比で確認することができる。
飛行時間型二次イオン質量分析法TOF-SIMSによるトナー粒子表面の樹脂由来のイオンフラグメントの強度の和(ZI)に対するエステル基由来のイオンフラグメントの強度の和(EI)の比(EI/ZI)が0.50以上1.00以下であることが好ましく、0.70以上1.00以下であることがより好ましく、0.90以上1.00以下であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0042】
また、トナー粒子がワックスを含有することが好ましい。透過型電子顕微鏡を用いたトナーの断面観察において、トナー粒子の断面にワックスのドメインが観察され、トナー粒子の表面から1.0μmまでの領域におけるワックスの占める面積の割合をAsとしたとき、Asが5%以上40%以下であることが好ましい。Asは、より好ましくは7%以上35%以下である。Asは、ワックスの添加量や、トナー粒子の製造工程におけるワックスの添加タイミング、ワックス分散剤の併用等により制御できる。
【0043】
トナー粒子内部のワックスが、表面近くに存在する程、定着時に結着樹脂の軟化を促進し、低温定着性の良化やオフセット性の防止に寄与するが、環境帯電特性に課題を有することがわかった。
本発明では、比較的表面近傍にワックスが存在する状態においても、20nm以上40nm以下の球状シリカ粒子のスペーサー効果と転がり効果によって、帯電立ち上がり性の低下を抑え、且つこれを補うことができる。
Asを5%以上40%以下とすることで、低温低湿環境におけるチャージアップ抑制効果と高温高湿環境における帯電立ち上がり性に優れた、低温定着特性を有するトナーを提供することができる。
【0044】
以下、トナー粒子の構成成分について説明する。
[結着樹脂]
トナー粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂は特段限定されず、従来公知のものを用いることができる。
結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。より好ましくはポリエステル樹脂である。ビニル系樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
【0045】
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフ
タリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。
これら結着樹脂は単独又は混合して使用できる。好ましくは、スチレン系共重合体である。
【0046】
ビニル系樹脂には、カルボキシ基を含む重合性単量体を用いることが好ましい。
カルボキシ基を含む重合性単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸;α-エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸又はメタクリル酸のα-アルキル誘導体又はβ-アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体などが挙げられる。
【0047】
[架橋剤]
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたものが挙げられる。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
【0048】
[ワックス]
トナー粒子はワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パ
ルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂が挙げられる。好ましくは炭化水素ワックスである。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。なお、ワックスの含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0049】
[着色剤]
トナー粒子は着色剤を含有してもよい。着色剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180、185、193。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
【0050】
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
【0051】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
必要により、重合阻害のない物質により着色剤に表面処理を施してもよい。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0052】
[荷電制御剤]
トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
【0053】
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100.00質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
【0054】
〔外添剤〕
トナーは、個数平均粒径が20nm以上40nm以下の球状シリカ粒子の他に、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、いわゆる外添剤として流動化剤、クリーニング助剤などを含有してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。外添剤のBET比表面積は、10m/g以上450m/g以下であることが好ましい。
【0055】
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m/g)を算出することができる。
これらの種々の外添剤の含有量は、その合計が、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5.00質量部以下である。本発明の効果が阻害されない限り、外添剤種並びに含有量は、適宜選択することができる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0056】
〔現像剤〕
トナーは、一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。本発明の効果を好適に発揮する観点から、トナーを一成分現像剤として使用することが好ましい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用い
ることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上80μm以下のものがより好ましい。
【0057】
[トナー粒子の製造方法]
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法が好ましい。湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、乳化凝集法がより好ましい。すなわち、トナー粒子の製造方法が、結着樹脂の微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する工程及び該凝集粒子を融合させてトナー粒子を得る工程を有することが好ましい。また、トナー粒子が、乳化凝集トナー粒子であることが好ましい。これは、水系媒体中で多価金属元素をイオン化させやすいため、また、結着樹脂を凝集させる際にトナー粒子中に多価金属元素を含有させやすいためである。
【0058】
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子及び必要に応じて着色剤、ワックスなどの各材料の分散液を調製する。得られた各材料の分散液を、必要に応じて分散安定剤を添加して、分散混合させる。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ凝集粒子を形成させる。その後又は凝集と同時に、加熱などにより結着樹脂微粒子間の融合を行い、トナー粒子を得る。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行ってもよい。
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。
【0059】
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を樹脂微粒子と凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。
【0060】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
画像の高精細、高解像の観点から、トナー粒子の重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
【0061】
[トナーの製造方法]
トナー粒子に外添剤を添加してトナーを得ることができる。外添装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、ナウターミキサー、メカノハイブリッドなどを用
いることができる。
個数平均粒径が20nm以上40nm以下の球状シリカ粒子を、トナー粒子表面に均一に処理する観点において、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)が好ましい。
【0062】
トナー、トナー粒子、球状シリカ粒子、その他材料に係る各種物性の測定方法を以下に説明する。
球状シリカ粒子の物性は、トナーをサンプルとして測定する。または、球状シリカ粒子が外添されたトナーから、球状シリカ粒子やトナー粒子の物性を測定する場合は、トナーから球状シリカ粒子や他の外添剤を分離して測定することができる。
その場合、トナーをメタノールに超音波分散させて球状シリカ粒子や他の外添剤を分離して、24時間静置する。沈降したトナー粒子と、上澄み液に分散した球状シリカ粒子や他の外添剤とを分離、回収し、十分に乾燥させることで、トナー粒子を単離することができる。また、上澄み液を遠心分離で処理することで、球状シリカ粒子を単離することができる。
【0063】
<トナー粒子の粒径の測定>
トナー粒子の粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」と、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3Version3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定および算出することができる。
細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置(商品名:コールター・カウンター Multisizer 3)と、専用ソフト(商品名:ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51、ベックマン・コールター社製)を用いる。アパーチャー径は100μmを用い、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、ベックマン・コールター社製のISOTON II(商品名)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は(標準粒子10.0μm、ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON II(商品名)に設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0064】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。ここにコンタミノンN(商品名)(精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器(商品名:Ultrasonic Dispersion System Tetora150、日科機バイオス(株)製)
の水槽内にイオン交換水所定量とコンタミノンN(商品名)を約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0065】
<球状シリカ粒子の一次粒子の個数平均粒径>
球状シリカ粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡「JEM-2800」(日本電子株式会社)を用いて行う。球状シリカ微粒子が外添されたトナーを観察して、最大20万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の球状シリカ粒子の一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、球状シリカ粒子の大きさによって適宜調整する。
なお、トナーの外添剤から、球状シリカ粒子を区別する方法としては、後述するX線光電子分光装置を用いたトナー粒子表面の元素分析により行うことができる。さらに、トナー粒子表面において球状シリカ粒子は、後述の真円度の測定に準じ、画像解析ソフトを用いて非球状シリカ粒子と区別して測定することができる。
また、外添前の球状シリカ粒子を入手可能な場合は、それを用いて上記方法により個数平均粒径を算出することもできるし、上述のように、単離した球状シリカ粒子を同様の元素分析を行うことで区別することでも代用可能である。
【0066】
<球状シリカ粒子の真円度の測定方法>
球状シリカ粒子の真円度の測定は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影した球状シリカ粒子の観察画像を、画像解析ソフトImageJ(開発元 Wayne Rashand)を用いて解析することで算出する。測定手順を以下に示す。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上に球状シリカ粒子を付着させる。ブロアーを用いて、余剰の球状シリカ粒子をエアブローした後、十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットする。
なお、凝集性の高い球状シリカ粒子を測定する場合は、予め測定する球状シリカ粒子をメタノールと混合して超音波分散させ、溶媒を除去して取り出したものを測定サンプルとする。
(2)S-4800観察条件
観察条件を以下に示す。
加速電圧:1kV
エミッション電流:10μA
検出器:[SE上(U)]、[+BSE(L.A.100)]
プローブ電流:[High]
焦点モード:[UHR]
WD:[3.0mm]
(3)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ1280×960ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。観察倍率は、観察対象の微粒子の大きさによって適宜調整する。
(4)画像解析
得られたSEM観察像から、画像処理ソフトImageJ(開発元 Wayne Rashand)を用いて、真円度を算出する。算出の手順を以下に示す。
[1][Analyze]-[Set Scale]にて、スケールの設定を行う。
[2][Image]-[Adjust]-[Threshold]で閾値を設定する。(ノイズが残らず、測定対象である球状シリカ粒子が残る値に設定)
[3][Image]-[Crop]で、測定した球状シリカ粒子の画像部分を選択する。
[4]粒子が重なっているものは画像編集により消去する。
[5][Edit]-[Invert]で白黒の画像を反転させる。
[6][Analyze]-[Set Measurements]で[Area]、[Shape Descriptors]をチェックする。また、
[Redirect to]を[None]、
[Decimal Place(0-9)]を3に設定する。
[7][Analyze]-[Analyze Particle]で、粒子の面積を0.0005μm以上に指定し、実行する。
[8]各粒子の真円度(circularity)の値を得る。
[9]観察した粒子100個以上について測定を行い、得られた真円度の相加平均値を算出し、真円度とする。
尚、拡大画像におけるノイズの除去方法としては、[2]の[Threshold]を設定する前に、[Process]-[Filter]-[Median]における[Radius]を2.0Pixelsに設定する方法等で、除去することができる。
真円度(circularity)の公式は、4π×(面積)/(周長の2乗)である。真円度が1のとき、正円であることを示す。
(トナーを用いた真円度の測定)
トナーに含まれる球状シリカ粒子の真円度を測定する場合、上記と同様の手順によりトナーを試料台に付着させて測定することができる。
測定はトナー粒子表面に複数種の微粒子が含まれているトナーに対しても同様に行える。S―4800で反射電子像の観察を行った際に、EDAXなど元素分析を用いて、各微粒子の元素を特定することが可能である。また、形状の特徴等から同一種の微粒子を選び出すことが可能である。同一種の微粒子に対して上記測定を行うことで、微粒子の種類毎の真円度を算出することができる。
【0067】
<トナー粒子中の多価金属元素の含有量(ICP-AES)>
トナー粒子中の多価金属元素の含有量は、結合誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES(セイコーインスツル社製))により定量する。
前処理として、トナー粒子100.0mgに60%硝酸(関東化学製、原子吸光分析用)8.00mlを使用して酸分解を行う。
酸分解の際には、マイクロウェーブハイパワー試料前処理装置ETHOS1600(マイルストーンゼネラル(株)製)により内部温度220℃/1時間密封容器内で処理し、多価金属元素含有溶液サンプルを作製する。
その後、全体で50.00gになるように超純水を加え、測定サンプルとする。各多価金属元素に対し、検量線を作成し、各サンプルに含まれている金属量の定量を行う。なお、硝酸8.00mlに超純水を加え、全体で50.00gとしたものをブランクとして測定し、ブランクの金属量は差し引いている。
【0068】
<Asの算出>
トナー中のワックス分布状態は、トナーの断面を透過型電子顕微鏡で観察し、ワックスによって形成されたドメインの断面積からAsを算出し、任意に選択したトナー10個の平均値をもって評価する。詳細には、トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRu染色(RuOガス500Pa雰囲気で15分間染色)を行う。
その後、透過型電子顕微鏡(H7500、日立社製)により加速電圧120kVで観察を行った。観察するトナー断面は、重量平均粒子径から±2.0μm以内のものを10個選んで撮影を行う。得られた画像に画像処理ソフト(Photoshop 5.0、Adobe製)を用い、しきい値調整により2諧調化することでワックスのドメインと結着樹脂の領域の区別を明確化する。
トナー粒子の表面(断面の輪郭)から1.0μmまで(1.0μmの境界を含む)の領域を残しマスキングを行い、残った領域の面積におけるワックスのドメインの占有面積百分率を算出し、トナー10個の平均値をAs(面積%)とする。
【0069】
<トナー粒子表面のポリエステル樹脂の測定>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いたトナー粒子表面のポリエステル樹脂の測定は、ポリエステル樹脂がフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来の構造を有する場合、アルバック・ファイ社製、TRIFT-IVを使用して行うことができる。分析条件は以下の通りである。
サンプル調整:トナー粒子をインジウムシートに付着させる。なお、トナーからシリカ粒子などの外添剤を分離して得られたトナー粒子を試料として用いてもよい。
サンプル前処理:なし
一次イオン:Au
加速電圧:30kV
電荷中和モード:On
測定モード:Positive
ラスター:100μm
エステル基を含むフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来のピーク強度(EI)の算出:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、質量数148~150の合計カウントピーク数をピーク強度(EI)とする。
その他の樹脂由来ピーク強度の算出:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、質量数90~105の合計カウントピーク数をその他の樹脂由来のピーク強度とする。このピーク強度と上記エステル基を含むフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来のピーク強度(EI)の合計値をトナー粒子表面の樹脂由来のピーク強度(ZI)とする。
EI/ZIは上記ピーク強度より算出する。EI/ZIが0.50以上の場合にトナー粒子表面にポリエステル樹脂が存在すると判断する。
【0070】
<樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
ポリエステル樹脂などの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料(樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF-801、802、803、804、805、80
6、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0071】
<酸価の測定>
樹脂等の酸価は、以下の操作により求める。酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。基本操作はJIS K0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【実施例
【0072】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
なお、本発明の構成による本発明の効果を明確に示すために、本発明の実施例、比較例において、トナー粒子の重量平均粒径を6.0μmとし、現像性評価と定着性評価を実施した。
【0073】
<ポリエステル樹脂1の製造例>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にテレフタル酸 47モル部、イソフ
タル酸 3モル部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物) 26モル部、エチレングリコール 18モル部及びテトラブトキシチタン 1000ppmを入れ
、190℃でエステル化反応を行った。その後、無水トリメリット酸(TMA) 6モル部を加え、220℃に昇温すると共に系内を徐々に減圧し、150Paで重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1の物性を表1に示す。
【0074】
<ポリエステル樹脂2~5の製造例>
ポリエステル樹脂1の製造例に記載のモノマーを表1に記載のモノマーに変更し、テトラブトキシチタンの添加量と、反応温度、反応時間を変更することで、ポリエステル樹脂2~5を得た。物性を表1に示す。
【0075】
【表1】

酸価の単位はmgKOH/gである。
表中の略称は以下の通り。
BPA-EO:エチレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)
BPA-PO:プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)
【0076】
<シリカ粒子1の製造例>
撹拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール500部、10質量%アンモニア水70部を添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。
このアルカリ触媒溶液を30℃に調整した後、撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)100部と8.0質量%アンモニア水20部とを同時に60分かけ滴下して、親水性のシリカ粒子分散液を得た。
その後、得られたシリカ粒子分散液をロータリーフィルターR-ファイン(寿工業社製)で固形分濃度50質量%まで濃縮してシリカ粒子分散液を得た。
シリカ粒子分散液250部に、疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS)50部を添加し、130℃で2時間反応させた後、冷却した後、噴霧乾燥により乾燥し、シリカ粒子1を得た。得られたシリカ粒子1の物性を表2に示す。
【0077】
<シリカ粒子2、3、5、6の製造例>
シリカ粒子1の製造において、アルカリ触媒溶液の調整温度と添加量、及びテトラメトキシシランの滴下時間を変更して、球状シリカ粒子2,3,5,6を作製した。得られたシリカ粒子2,3,5,6の物性を表2に示す。
【0078】
<シリカ粒子4>
シリカ粒子4として、粉砕した原料珪石を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化した、デンカ社製の溶融シリカ「UFP-80」を用いた。シリカ微粒子4の物性を表2に示す。
【0079】
<シリカ粒子7>
シリカ粒子7として、燃焼法で製造したシリカ粒子にアルキルシランで疎水化処理を行
った、ワッカー社製のヒュームドシリカ「HDK H18」を用いた。シリカ粒子7の物
性を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
<樹脂粒子分散液1の調製>
ポリエステル樹脂1: 100.0部、イオン交換水350部をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。
その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水300部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液を得た。分散液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液1を得た。
【0082】
<樹脂粒子分散液2~5の調製>
樹脂微粒子分散液1の調整において、添加するポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2~5に変更する以外は同様にして、固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液2~5を得た。
【0083】
<樹脂粒子分散液6の調製>
スチレン78.0部、アクリル酸ブチル20.7部、カルボキシル基付与モノマーとしてアクリル酸1.3部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。
さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液6を得た。
【0084】
<ワックス分散液の調製>
炭化水素ワックス(融点:77℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散してワックス分散液を得た。ワックス分散液の濃度は20質量%であった。
【0085】
<着色剤分散液1の調製>
着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3(100部)、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液1を得た。
【0086】
<着色剤分散液2の調製>
着色剤としてC.I.ピグメントイエロー74(100部)、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液2を得た。
【0087】
<着色剤分散液3の調製>
着色剤としてC.I.ピグメントレッド122(100部)、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液3を得た。
【0088】
<着色剤分散液4の調製>
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液4を得た。
【0089】
<トナー粒子1の作製例>
樹脂粒子分散液1: 265部、ワックス分散液20部、着色剤分散液1: 20部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した(pH調整1)。
凝集剤として、塩化アルミニウム0.23部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を添加して粒子成長を停止させた。
1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9.0に調整してから95℃まで昇温し、凝集粒子の球形化を行った。平均円形度が0.980に到達したら降温を開始し、室温まで冷却して、トナー粒子分散液1を得た。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは、乾燥を行い、更に分級機を用いて、重量平均粒径が6.0μmになるように分級して、トナー粒子1を得た。
【0090】
<トナー粒子2の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.36部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子2を得た。
<トナー粒子3の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を1.20部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子3を得た。
【0091】
<トナー粒子4の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を1.50部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子4を得た。
<トナー粒子5の作製例>
凝集剤として添加する塩化アルミニウムに加えて、更に塩化鉄(III)0.36部を同時に添加した以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子5を得た。
【0092】
<トナー粒子6の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから、硫酸マグネシウムと塩化カルシウムに変更し、添加量をそれぞれ1.20部と1.50部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子6を得た。
<トナー粒子7の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから、塩化鉄(III)と硫酸マグネシウムと塩化カルシウムに変更し、添加量をそれぞれ0.36部と1.20部と1.50部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子7を得た。
【0093】
<トナー粒子8の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する着色剤分散液1を着色剤分散液2に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子8を得た。
<トナー粒子9の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する着色剤分散液1を着色剤分散液3に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子9を得た。
<トナー粒子10の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する着色剤分散液1を着色剤分散液4に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子10を得た。
【0094】
<トナー粒子11の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液2に変更し、ワックス分散液の添加タイミングを遅らせ、凝集剤として添加する塩化アルミニウムの添加量を0.12部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子11を得た。
<トナー粒子12の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液3に変更し、ワックス分散液の添加量を20部から10部に変更し、凝集剤として添加する塩化アルミニウムの添加量を0.35部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子12を得た。
【0095】
<トナー粒子13の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.21部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子13を得た。
<トナー粒子14の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.50部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子14を得た。
【0096】
<トナー粒子15の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を0.60部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子15を得た。
<トナー粒子16の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を1.90部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子16を得た。
【0097】
<トナー粒子17の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を0.70部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子17を得た。
<トナー粒子18の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を2.45部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子18を得た。
【0098】
<トナー粒子19の作製例>
トナー粒子1の作製例において、塩化アルミニウムの添加量を0.09部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子19を得た。
<トナー粒子20の作製例>
トナー粒子1の作製例において、塩化アルミニウムの添加量を0.39部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子20を得た。
【0099】
<トナー粒子21の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.20部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子21を得た。
<トナー粒子22の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.52部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子22を得た。
【0100】
<トナー粒子23の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を0.55部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子23を得た。
<トナー粒子24の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を1.95部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子24を得た。
【0101】
<トナー粒子25の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を0.60部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子25を得た。
<トナー粒子26の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を2.50部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子26を得た。
【0102】
<トナー粒子27の作製例>
トナー粒子19の作製例において、添加する樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液4に変更する以外はトナー粒子19と同様に作製し、トナー粒子27を得た。
<トナー粒子28の作製例>
トナー粒子26の作製例において、添加する樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液5に変更する以外はトナー粒子26と同様に作製し、トナー粒子28を得た。
【0103】
<トナー粒子29の作製例>
トナー粒子21の作製例において、ワックス分散液の添加タイミングを遅らせた以外は同様に作製し、トナー粒子29を得た。
<トナー粒子30の作製例>
トナー粒子24の作製例において、ワックス分散液の添加量を20部から6部に変更する以外は同様に作製し、トナー粒子30を得た。
【0104】
<トナー粒子31の作製例>
・ポリエステル樹脂1 100.0部
・メチルエチルケトン 80.0部
・酢酸エチル 80.0部
・炭化水素系ワックス(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピーク=78℃)
12.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.0部
・荷電制御樹脂(FCA-N 藤倉化成株式会社製) 1.0部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
上記材料を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し72時間静置して混合着色剤分散液を得た。
一方、イオン交換水220部に塩化アルミニウム0.5部を投入し65℃に加温した後、1.0モル/リットル-CaCl水溶液20部を徐々に添加した水系媒体を用意した。
上記水系媒体へ前記着色剤分散液を投入し、温度65℃、N雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて12000rpmで15分間撹拌し着色剤分散液を造粒した。その後、内温を30℃まで急冷して、そのまま12時間保持して溶剤を除去し、樹脂粒子が分散している水系媒体を得た。
樹脂粒子が分散されている水系媒体に塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することで分散剤を溶解させた。上記分散液を加圧ろ過器にてろ過し、得られた湿潤トナー粒子を洗浄してトナーケーキを得た。その後、トナーケーキを破砕、乾燥してトナー粒子31を得た。
【0105】
<トナー粒子32の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する樹脂粒子分散液1を樹脂粒子分散液6に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子32を得た。
<トナー粒子33の作製例>
トナー粒子1の作製例において、添加する塩化アルミニウムを0.15部に変更し、重量平均粒径が6.0μmになった時点で、更に樹脂粒子分散液6を50部、塩化アルミニウム0.08部を添加する以外は同様にして、トナー粒子33を得た。
【0106】
<トナー粒子34の作製例>
凝集剤として添加する塩化アルミニウムを1-ペンタノール500部に変更し、1時間かけて滴下した以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子34を得た。
<トナー粒子35の作製例>
トナー粒子1の作製例において、塩化アルミニウムの添加量を0.07部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子35を得た。
【0107】
<トナー粒子36の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を0.16部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子36を得た。
<トナー粒子37の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を0.40部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子37を得た。
【0108】
<トナー粒子38の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから、硫酸マグネシウムと塩化カルシウムに変更し、添加量をそれぞれ0.35部と0.30部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子38を得た。
<トナー粒子39の作製例>
添加する凝集剤を、塩化アルミニウムの添加量を0.35部に変更し、更に塩化鉄(III)を0.50部、硫酸マグネシウムを1.20部、塩化カルシウムを1.50部添加する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子39を得た。
【0109】
<トナー粒子40の作製例>
トナー粒子1の作製例において、凝集剤として添加する塩化アルミニウムの添加量を12.50部に変更する以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子40を得た。
<トナー粒子41の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化鉄(III)に変更し、添加部数を12.00部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子41を得た。
【0110】
<トナー粒子42の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから硫酸マグネシウムに変更し、添加部数を2.00部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子42を得た。
<トナー粒子43の作製例>
凝集剤を塩化アルミニウムから塩化カルシウムに変更し、添加部数を2.60部とした以外はトナー粒子1と同様に作製し、トナー粒子43を得た。
【0111】
<トナー1の製造例>
上記で得られたトナー粒子1(100部)に対して、シリカ粒子1(1.0部)を、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、下羽根をA0羽根とし、デフクレターの壁との間隔を20mmにセットさせ、トナー粒子の仕込み量:2.0kg、回転数:66.6s-1、外添時間:10分、冷却水を温度20℃・流量10L/minで行った。
その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表3に示す。
【0112】
<トナーの製造例2~47>
トナーの製造例1において、使用するトナー粒子、シリカ粒子を表3の記載に変更した以外は、同様にしてトナー2~47を得た。トナー物性を表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
<実施例1>
トナー1について、下記評価を行った。評価結果は、表4に示す。
評価に際しては、市販のカラーレーザープリンタ〔HP LaserJet Enterprise Color m553dn]を一部改造して評価を行った。改造は、本体のプロセススピードを300mm/secに改造し、この条件で画像形成が可能となるように必要な調整を行った。また、定着器を任意の温度に変更できるように改造した。
また、シアントナーカートリッジからトナーを抜き取り、トナー1:320gに詰め替えた。詰め替えたトナーカートリッジをシアンステーションに装着し、他のステーションにはダミーカートリッジを装着して、下記の画像出力試験を実施した。
【0115】
(高温高湿環境における現像評価)
<カブリ>
高温高湿環境下(温度30℃/湿度80%RH)において、印字率1%となる横線画像を、2枚出力する毎に一旦停止させる間欠動作を繰り返して30000枚のプリントアウト試験を行った。試験終了後、48時間放置させた後、再び白紙の画像をプリントアウトして、得られた画像の非画像部の反射率(%)を「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」(東京電色社製)で測定した。得られた反射率を、同様にして測定した未使用のプリントアウト用紙(標準紙)の反射率(%)から差し引いた数値(%)を用いて以下の基準で評価した。
数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。評価は、グロス紙モードで、グロス紙(HP Brochure Paper 200g , Glossy、HP社製、200g/m)を用いて行った。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:0.5%未満
B:0.5%以上1.5%未満
C:1.5%以上3.0%未満
D:3.0%以上
【0116】
<濃度安定性>
画像濃度は、20mm四方のベタ黒画像が紙面の4隅と中央に印字されたサンプル画像をキヤノンカラーレーザーコピー用紙(A4:81.4g/m)に出力して、X-Rite 500シリーズ(ビデオジェット・エックスライト(株)製)で反射濃度の測定を行い、5点の画像濃度の平均値を算出した。
本評価は、高温高湿環境(30℃/80%RH)下、及び低温低湿環境(15℃/10%RH)下において行い、初期の画像と、上記と同様の間欠動作で30000枚出力後に更に48時間放置した後に出力した画像を耐久画像とし、初期画像と耐久画像の濃度変化幅を下記評価ランクにより評価した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:初期画像濃度と耐久後画像濃度の差(絶対値)が0.10未満。
B:初期画像濃度と耐久後画像濃度の差(絶対値)が0.10以上0.15未満
C:初期画像濃度と耐久後画像濃度の差(絶対値)が0.15以上0.20未満
D:初期画像濃度と耐久後画像濃度の差(絶対値)が0.20以上
【0117】
(低温低湿環境における現像評価)
<現像性>
低温低湿環境下(温度15℃/湿度10%RH)において、印字率1%となる横線画像を、2枚出力する毎に一旦停止させる間欠動作を繰り返して30000枚のプリントアウト試験を行った。30000枚のプリントアウト終了後に、べたパッチとハーフトーン画像からなるゴースト評価チャートとべた白画像を出力して、下記評価ランクによりチャージアップ起因の画像弊害を評価した。C以上を良好と判断した。
記録媒体は、キヤノンカラーレーザーコピー用紙(A4:81.4g/m)を用いた。
(評価基準)
A:初期画像と変わらず良好
B:べたパッチ印字後のハーフトーン画像上に、薄っすらとパッチ跡がみられる
C:べたパッチ印字後のハーフトーン画像上に、はっきりとパッチ跡がみられる
D:べたパッチ印字後のハーフトーン画像上に、はっきりとパッチ跡がみられ、且つべた白画像上に、規制不良による縦筋がみられる
【0118】
(定着性評価)
<低温定着性>
常温常湿環境下(23℃、50%RH)において、出力紙上のトナー載り量が0.20mg/cmとなるように調整し、縦2.0cm、横15.0cmの定着画像を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。記録媒体としては、カラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m)を使用した。
初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で定着評価を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点とは、画像の表面を4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけたシルボン紙(ダスパー K-3)で0.2m/秒の速度で5回摺擦したときに、摺擦前後の画像濃度の低下率が10.0%以下になる最低温度のことである。定着がしっかり行われない場合には、上記画像濃度の低下率は増える傾向にある。
評価結果を表4に示す。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:低温側定着開始点が130℃以下
B:低温側定着開始点が135℃又は140℃
C:低温側定着開始点が145℃又は150℃
D:低温側定着開始点が155℃以上
【0119】
<実施例2~32>
実施例2~32では、トナー2~32をそれぞれ用いて上記評価を行った。
なお、実施例8~10における、トナー8~10の評価は、使用するトナーカートリッジをそれぞれイエロー、マゼンタ、ブラックに変更してトナーを詰め替え、対応するステ
ーションに装着して実施例1と同様の評価を行った。実施例12及び31は、参考例として評価を行った。それぞれの評価結果を表4に示す。
【0120】
<比較例1~15>
比較例1~15では、トナー33~47をそれぞれ用いて上記評価を行った。それぞれの評価結果を表4に示す。
【0121】
【表4】