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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020025619
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021129660
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 洋一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274060(JP,A)
【文献】特開2007-014539(JP,A)
【文献】特開2015-024133(JP,A)
【文献】特開2015-119819(JP,A)
【文献】特開2011-004909(JP,A)
【文献】特開2013-244160(JP,A)
【文献】特開2009-219656(JP,A)
【文献】特表2005-527336(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129326(WO,A1)
【文献】日本超音波医学会機器及び安全に関する委員会、電子情報技術産業協会超音波専門委員会,超音波診断装置の安全性に関する資料,第2版,日本,2011年02月,pp. 13-40,http://www.jsum.or.jp/committee/uesc/pdf/safty_old.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信し、前記被検体により反射された前記超音波の反射波を受信する超音波送受信面を有する超音波プローブにおける前記超音波送受信面に対する音響カプラの装着状態を示す音響カプラ情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記音響カプラ情報に基づいて、前記超音波プローブに超音波を出力させるために前記超音波プローブに付与する送信電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記音響カプラが装着された前記超音波プローブに付与する送信電圧を、前記超音波プローブに前記音響カプラが装着されていない状態における送信電圧の上限値を超え、超音波により前記被検体に与える影響の指標である指標値が、音響カプラを介さずに送信される超音波による前記指標値の上限値以下となる送信電圧に設定する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブが受信した反射波に基づいて、前記被検体内の画像を生成する生成部と、
前記生成部が生成した画像を表示装置に表示させる表示制御部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記被検体内の画像とともに、前記超音波プローブに付与する送信電圧を増加させた状態であることを示す画像を表示させる、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、超音波が前記音響カプラを通過する際の減衰量に応じて、前記送信電圧を変化させる、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、超音波が前記音響カプラを通過する際の減衰量が大きいほど、前記送信電圧を大きくする、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記音響カプラの減衰特性、幾何学的特性、及び物理的特性のうち少なくとも一つに基づいて、前記減衰量を取得する、請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記音響カプラにおける前記超音波送受信面側の面と前記被検体側の面との熱量の差分に応じて、前記送信電圧を変化させる、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記音響カプラにおける前記超音波送受信面側の面と前記被検体側の面との熱量の差分が大きいほど、前記送信電圧を大きくする、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記音響カプラの熱伝導特性、幾何学的特性、及び物理的特性のうち少なくとも一つに基づいて、前記熱量の差分を取得する、請求項6または7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記超音波プローブが受信した反射波に基づいて、前記被検体内の画像を生成する生成部と、
前記生成部が生成した画像を表示装置に表示させる表示制御部と、を更に備え、
前記生成部は、前記超音波プローブが受信した反射波のうち、前記音響カプラにおける所定の厚さ以下の部分を通過した反射波を除いて、前記被検体内の画像を生成する、
請求項1から8のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブで被検体の診断を行う際、超音波プローブの送受信面に音響カプラを設けることがある。超音波プローブの送受信面に音響カプラを設けることにより、特に、被検体内の皮膚表面に近い部位を診断する際に、超音波ビームのフォーカスを利かせたり、レンズによる多重反射を受けることを回避しやすくしたりすることができる。
【0003】
しかし、超音波プローブの送受信面に音響カプラを設けると、音響カプラによる超音波減衰が生じる。このため、音響カプラを装着することによって感度の低下を招く恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-070788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、超音波プローブに音響カプラを装着したことによる感度の低下を小さくできる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波診断装置は、取得部と、制御部と、を持つ。取得部は、被検体に超音波を送信し、前記被検体により反射された前記超音波の反射波を受信する超音波送受信面を有する超音波プローブにおける前記超音波送受信面に対する音響カプラの装着状態を示す音響カプラ情報を取得する。制御部は、前記取得部により取得された前記音響カプラ情報に基づいて、前記超音波プローブに超音波を出力させるために前記超音波プローブに付与する送信電圧を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の超音波診断装置1の機能構成を示すブロック図。
図2】超音波プローブ10及び音響カプラ20を示す図。
図3】音響カプラ特性テーブル132を示す図。
図4】超音波診断装置100における処理の一例を示すフローチャート。
図5】超音波診断装置100における処理の一例を示すフローチャート。
図6】超音波診断装置100における処理の一例を示すフローチャート。
図7】超音波診断装置100における処理の一例を示すフローチャート。
図8】表示装置200の表示画面の一例を示す図。
図9】表示装置200の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の超音波プローブを、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態の超音波診断システム1の機能構成を示すブロック図である。超音波診断システム1は、超音波プローブ10と、音響カプラ20と、入力装置30と、超音波診断装置100と、表示装置200と、を備える。
【0010】
超音波プローブ10は、例えば、被検体内の画像を取得するために被検体に対して超音波を送信する。超音波プローブ10は、送信した超音波の反射波を受信する。超音波プローブ10は、送受信面12が受信した超音波の反射波に基づく反射波情報を生成して超音波診断装置100に出力する。超音波プローブ10は、例えば、超音波送受信面(以下「送受信面」という)12と、振動子14と、ICタグリーダ16と、を備える。
【0011】
音響カプラ20は、例えば、超音波ビームのフォーカスを利かせたり、レンズによる多重反射を受けることを回避したりするために、超音波プローブ10に取り付けられる。音響カプラ20は、ICタグ22を備える。ICタグ22は、音響カプラ情報を記憶する。音響カプラ情報には、音響カプラ20の識別番号などの情報が含まれる。図2は、超音波プローブ10及び音響カプラ20を示す図である。図2に示すように、音響カプラ20は、超音波プローブ10に脱着可能である。
【0012】
超音波プローブ10における送受信面12は、超音波を送信する面であるとともに、反射波を受信する面である。振動子14は、超音波診断装置100により送信電圧が付与されて振動する。振動子14が振動することにより、送受信面12は、超音波を送信する。送受信面12より送信される超音波は、振動子14に付与される送信電圧に応じて変動する。例えば、送受信面12より送信される超音波の送信エネルギーは、振動子14に付与される送信電圧が大きいほど大きくなり、送信電圧が小さいほど小さくなる。
【0013】
ICタグリーダ16は、音響カプラ20が備えるICタグ22に読取信号を送信し、ICタグ22が記憶する音響カプラ情報を読み取る。超音波プローブ10は、ICタグリーダ16によって読み取った音響カプラ情報を超音波診断装置100に出力する。
【0014】
音響カプラ20は、超音波プローブ10における送受信面12を覆って超音波プローブ10に脱着可能である。音響カプラ20は、超音波プローブ10と異なる種類の超音波プローブに脱着可能である。音響カプラ20は、超音波プローブ10と異なる種類の超音波プローブに脱着不可能であってもよい。
【0015】
入力装置30は、例えば、パネルスイッチ31、タッチコマンドスクリーン32、フットスイッチ33、トラックボール34、カメラ35、バーコードリーダ36、及び外部記憶装置37を備える。入力装置30は、例えば、診断を行う検査者の近傍に設置される。外部記憶装置37は、パネルスイッチ31、タッチコマンドスクリーン32、フットスイッチ33、トラックボール34の操作量やカメラ35やバーコードリーダ36による読込結果に応じた操作情報を記憶する。入力装置30は、パネルスイッチ31、タッチコマンドスクリーン32、フットスイッチ33、トラックボール34の操作量やカメラ35やバーコードリーダ36による読込結果に基づく操作情報を生成し、超音波診断装置100に送信する。
【0016】
超音波診断装置100は、例えば、送受信回路110と、処理回路120と、メモリ130と、を備える。送受信回路110は、例えば、パルサー等を含む。送受信回路110は、処理回路120により送信される送受信条件に応じて、超音波プローブ10に送信電圧を付与する。送受信回路110は、超音波プローブ10により出力される反射波情報を取得する。送受信回路110は、取得した反射波情報をデジタル信号に変換する。
【0017】
処理回路120は、例えば、取得機能122と、制御機能124と、生成機能126と、表示制御機能128と、を備える。処理回路120は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ130に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0018】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。メモリ130にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0019】
メモリ130は、処理回路120の各機能を実行させるプログラムを記憶するとともに、音響カプラの特性を示す音響カプラ特性テーブル132を記憶する。図3は、音響カプラ特性テーブル132を示す図である。音響カプラ特性テーブル132は、音響カプラの種類ごとに付与された音響カプラの識別番号と、音響カプラの識別番号に対応する音響カプラが備える音響カプラ特性を示すテーブルである。音響カプラ特性としては、例えば、減衰特性、伝熱特性(熱伝導率)、厚み、面積、材質の各項目がある。これらの音響カプラ特性のうち、厚み及び面積は幾何学的特性であり、材質は物理的特性である。幾何学的特性は、厚み及び面積以外の特性、例えば体積、曲率、数量などを含んでもよく、物理的特性は、材質以外の特性、例えば、質量、密度、音速などを含んでもよい。
【0020】
処理回路120における取得機能122は、送受信回路110によりデジタル信号に変換された反射波情報及び超音波プローブ10により出力された音響カプラ情報を取得する。取得機能122は、超音波プローブ10により出力された音響カプラ情報に基づいて、超音波プローブ10に装着された音響カプラ20を特定する。
【0021】
制御機能124は、送受信回路110に送受信条件を出力し、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を制御する。例えば、制御機能124は、超音波プローブ10に対する音響カプラ20の装着状態に基づいて、超音波プローブ10に付与する送信電圧を制御する。音響カプラ20の装着状態は、例えば、超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されているか否か、及び超音波プローブ10に装着された音響カプラ20の音響カプラ特性を含む。制御機能124は、音響カプラ情報が出力されているか否かに基づいて、超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されているか否かを判定する。制御機能124は、例えば、超音波プローブ10により出力される音響カプラ情報やメモリ130に記憶される音響カプラ特性テーブル132により音響カプラ20の装着状態を取得する。
【0022】
制御機能124は、入力装置30により出力される操作情報に基づいて、超音波プローブ10に付与する送信電圧の基準値を仮決定する。送信電圧の基準値は、例えば、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられていない状態のときに、超音波プローブ10により送信される超音波の出力が、検査者が入力装置30を操作等することによって指定した出力となる送信電圧である。
【0023】
制御機能124は、例えば、超音波プローブ10により送信される超音波により被検体に与える影響の指標となる指標値(以下「超音波による指標値」という)に予め上限値を設定する。制御機能124は、超音波による指標値に上限値を設定することにより、超音波プローブ10により送信される超音波の音圧や被検体と音響カプラ20の接触面同士の熱量の差による被検体への負荷を軽減することができる。
【0024】
制御機能124は、超音波による指標値として、例えば、メカニカルインデックス(以下「MI」という)、サーマルインデックス(以下「TI」という)、音響減衰係数を0.3dB/MHz/cmとしたときの減衰空間ピーク時間時間平均強度(以下「Ispta.3」という)を利用する。制御機能124は、これらの一部の指標値を利用してもよいし、他の指標値(例えば、送受信面12の発熱値)や他の指標値を含めたいくつかの指標値を利用してもよい。制御機能124は、例えば、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波による指標値の上限値として、MIを1.9、TIを6.0、Ispta.3を720mW/cmに設定する。
【0025】
超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されていない状態では、超音波による指標値が上限値を超えない送信電圧の最大値が送信電圧の上限値となる。超音波プローブ10に音響カプラ20が装着された状態では、音響カプラ20を通過することで超音波が減衰するので、超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されていない状態における送信電圧の上限値を超えた送信電圧を付与する。このため、送信電圧の実際の上限値は、音響カプラ20を通過した超音波によるMIが1.9、TIが6.0、Ispta.3が720mW/cmとなるそれぞれの送信電圧のうちの最小値となる。送信電圧の実際の上限値は、その他の基準で設定してもよい。
【0026】
制御機能124は、超音波プローブ10に送信電圧を付与する間、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3を確認する。制御機能124は、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3が、いずれも上限値を超えないように送信電圧を増大させるように制御する。
【0027】
制御機能124は、取得機能122により取得された音響カプラ情報に基づいて、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を調整して変化させる。例えば、制御機能124は、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられる場合には、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられない場合よりも送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を増大させる。
【0028】
制御機能124は、超音波プローブ10に取り付けられた音響カプラ20の種類等に応じて、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を増大させる大きさを制御する。制御機能124は、例えば、音響カプラ20の減衰特性や伝熱特性に基づいて、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を増大させる大きさを制御する。制御機能124は、例えば、音響カプラ20における厚み、面積などの幾何学的特性、材質などの物理的特性に基づいて、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を増大させる大きさを制御する。
【0029】
例えば、制御機能124は、超音波プローブ10に取り付けられた音響カプラ20が、減衰量が大きい減衰特性を有する場合には、減衰量が小さい減衰特性を有する場合よりも、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を大きく増大させる。制御機能124は、例えば、超音波プローブ10に取り付けられた音響カプラ20が、熱伝導率が小さい伝熱特性を有する場合には、熱伝導率が大きい伝熱特性を有する場合よりも、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を大きく増大させる。
【0030】
制御機能124は、送受信回路110が超音波プローブ10に付与する送信電圧を大きく増大させる制御に伴い、超音波プローブ10に付与する送信電圧の上限値も大きく設定する。制御機能124は、例えば、音響カプラ20を介して送信される超音波による指標値が、音響カプラ20を介さずに送信される超音波による指標値の上限値となる送信電圧を、超音波プローブ10に付与する送信電圧の上限値として設定する。
【0031】
具体的に、制御機能124は、取得機能122により取得された音響カプラ情報に基づいて、超音波プローブ10に装着された音響カプラ20の識別番号を特定する。制御機能124は、図3に示す音響カプラ特性テーブル132から、特定した音響カプラ20の識別番号に対応する各音響カプラ特性の数値を読み出す。制御機能124は、読み出した音響カプラ特性の数値に基づいて、送信電圧を増大させる大きさを算出する。
【0032】
制御機能124は、例えば、超音波が音響カプラ20を通過する際の減衰量に応じて、超音波プローブ10に供給する送信電圧の増大量を調整して変化させる。制御機能124は、例えば、音響カプラ20を通過する際の減衰量が多いほど、送信電圧の増大量を大きくする。制御機能124は、例えば、超音波が音響カプラ20を通過する際の音響カプラにおける送受信面12側の面と被検体側の面との熱量の差分(以下「熱量差分」という)に応じて、超音波プローブ10に供給する送信電圧の増大量を調整して変化させる。制御機能124は、例えば、超音波が音響カプラ20を通過する際の熱量差分が大きいほど、送信電圧の増大量を大きくする。
【0033】
生成機能126は、超音波プローブ10により出力され、取得機能122が取得した反射波情報に基づいて、被検体内の画像である超音波画像を生成する。生成機能126は、被検体内の画像とともに、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3を示す指標値画像を生成する。超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられる場合には、生成機能126は、さらに、送信電圧が増大し、超音波プローブ10により送信される超音波の出力が増大する旨を示す増大モード画像を生成する。増大モード画像は、超音波プローブ10に付与する送信電圧を増加させたことに関する画像である。
【0034】
表示制御機能128は、生成機能126が生成した超音波画像、指標値画像、および増大モード画像を表示装置200に表示させる。表示制御機能128は、超音波画像のうち、不要な画像を除去する。被検体内の画像の必要性は、音響カプラ20の厚さが薄いほど低くなる。このため、表示制御機能128は、音響カプラ20の厚い側を通じて得られた超音波画像から順に優先させて、超音波画像を表示装置200に表示させる。
【0035】
表示装置200は、例えば、液晶表示装置やCRTディスプレイなどからなる情報出力装置である。表示装置200は、例えば、診断を行う検査者が視認可能な位置に設置される。表示装置200は、超音波診断装置100の表示制御機能128の制御により、超音波画像、指標値画像、及び増大モード画像を表示する。
【0036】
次に、超音波診断装置100における処理について説明する。まず、超音波診断装置100による診断を開始する前の準備段階での処理について、図4を参照して説明する。図4図7は、いずれも超音波診断装置100における処理の一例を示すフローチャートである。被検体の診断を開始する際、超音波診断装置100は、取得機能122において、超音波プローブ10に取り付けられる音響カプラ20の音響カプラ情報を取得する(ステップS101)。
【0037】
続いて、取得機能122は、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられたか否かを判定する(ステップS103)。超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられると、超音波プローブ10におけるICタグリーダ16は、音響カプラ20のICタグ22から音響カプラ情報を取得して超音波診断装置100に出力する。取得機能122は、ICタグリーダ16が音響カプラ20の音響カプラ情報を取得した場合に、音響カプラ20が取り付けられたと判定する。取得機能122は、ICタグリーダ16音響カプラ20の音響カプラ情報を取得しなかった場合に、音響カプラ20が取り付けられていないと判定する。
【0038】
取得機能122は、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられたと判定した場合に、出力増大フラグをセットして(ステップS105)、メモリ130に格納する。その後、超音波診断装置100は、図4に示す処理を終了する。取得機能122は、超音波プローブ10に音響カプラ20が取り付けられていないと判定した場合に、超音波プローブ10に、出力増大フラグをセットせず、超音波診断装置100は、図4に示す処理を終了する。
【0039】
次に、超音波診断の準備が完了し、超音波診断装置100による被検体の診断を開始した後の処理について、図5を参照して説明する。被検体の診断を開始すると、超音波診断装置100における取得機能122は、入力装置30により出力される操作情報を取得する(ステップS201)。
【0040】
続いて、制御機能124は、入力装置30により出力される操作情報に基づいて、送受信条件を生成して送受信回路110に出力し、送受信回路110により超音波プローブ10に送信する送信電圧の基準値を仮決定する(ステップS203)。ここで仮決定する送信電圧の基準値は、操作情報に応じた超音波が、音響カプラ20が取り付けられていない超音波プローブ10から送信される送信電圧である。
【0041】
続いて、取得機能122は、出力増大フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS205)。出力増大フラグがセットされていると判定した場合、取得機能122は、音響カプラ情報に含まれる音響カプラ20の識別番号を特定する(ステップS207)。続いて、制御機能124は、取得機能122が特定した音響カプラ20の識別番号に対応する各音響カプラ特性の数値を音響カプラ特性テーブル132から読み出す(ステップS209)。
【0042】
続いて、制御機能124は、読み出した音響カプラ特性の数値に基づいて、仮決定された送信電圧の基準値を増大し、超音波プローブ10に付与する送信電圧として設定する(ステップS211)。仮決定された送信電圧の基準値を増大し、超音波プローブ10に付与する送信電圧として設定する手順については、後に説明する。
【0043】
ステップS205において、出力増大フラグがセットされていないと判定した場合、制御機能124は、仮決定された基準値をそのまま送信電圧として超音波プローブ10に付与する送信電圧として設定する(ステップS213)。その後、制御機能124は、送受信回路110に送受信条件を出力し、設定した送信電圧を超音波プローブ10に付与する(ステップS215)。こうして、超音波診断装置100は、図5に示す処理を終了する。
【0044】
次に、図5のステップS211で実行される、仮決定された送信電圧の基準値を増大し、超音波プローブ10に付与する送信電圧として設定する手順について、図6を参照して説明する。制御機能124は、ステップS209で読み出した音響カプラ特性を用いて、音響カプラ20の減衰特性及び伝熱特性を取得する。制御機能124は、取得した減衰特性伝熱特性に基づいて、超音波プローブ10により送信されて音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3を算出する(ステップS301)。続いて、制御機能124は、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3が、ステップS301で算出した値となるために超音波プローブ10に付与する送信電圧をそれぞれ算出し、算出した送信電圧の最大値を特定する(ステップS303)。例えば、制御機能124は、超音波によるMI、TI、及びIspta.3が算出した値となるための送信電圧をそれぞれMI対応電圧Vm、TI対応電圧Vt、Ispta.3対応電圧Viとした場合におけるMI対応電圧Vm、TI対応電圧Vt、Ispta.3対応電圧Viを算出する。制御機能124は、算出した3つの送信電圧であるMI対応電圧Vm、TI対応電圧Vt、Ispta.3対応電圧Viのうちの最大値を特定する。
【0045】
続いて、制御機能124は、特定した送信電圧の最大値に対応する指標値が、予め設定された上限値を超えているか否かを判定する(ステップS305)。例えば、MI対応電圧Vm、TI対応電圧Vt、Ispta.3対応電圧Viのうちの最大値がMI対応電圧Vmであった場合、制御機能124は、算出したMIが予め設定された上限値を超えているか否かを判定する。
【0046】
制御機能124は、特定した送信電圧の最大値に対応する指標値が、予め設定された上限値を超えていると判定した場合、送信電圧を許容最大値に設定する(ステップS307)。許容最大値とは、TI、MI、及びIspta.3のそれぞれの上限値を与える送信電圧のうちの最小値である。こうして、超音波診断装置100は、図6に示す処理を終了する。
【0047】
制御機能124は、特定した送信電圧の最大値に対応する指標値が、予め設定された上限値を超えていないと判定した場合、送信電圧を、ステップS303で特定した最大値に設定する(ステップS309)。こうして、超音波診断装置100は、図6に示す処理を終了する。
【0048】
続いて、表示装置200に画像を表示させる手順について、図7を参照して説明する。超音波プローブ10により出力される反射波情報を取得機能122が取得した場合、生成機能126は、反射波情報に基づいて超音波画像を生成する(ステップS401)。超音波画像を生成する際、生成機能126は、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3の各数値を示す指標値画像を生成する(ステップS401)。
【0049】
続いて、生成機能126は、制御機能124が仮決定した送信電圧の基準値を制御機能124が増大させているか否かを判定する(ステップS403)。生成機能126は、制御機能124が仮決定した送信電圧の基準値を制御機能124が増大させていると判定した場合、増大モード画像を生成する(ステップS405)。増大モード画像とは、超音波プローブ10に音響カプラ20を取り付けていないときの送信電圧よりも大きな送信電圧を超音波プローブ10に付与していることを検査者に知らせるための画像である。生成機能126は、制御機能124が仮決定した送信電圧の基準値を制御機能124が増大させていないと判定した場合、ステップS405をスキップしてステップS407に進む。
【0050】
続いて、表示制御機能128は、生成機能126が生成した画像を表示装置200に表示させる(ステップS407)。図8は、表示装置200の表示画面の一例を示す図である。表示制御機能128は、例えば、表示装置200の表示画面に、超音波画像210、指標値画像220、及び増大モード画像230を表示させる。超音波画像210は、反射波情報により生成される被検体内の状態を示す。指標値画像220は、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3の各数値を示す。増大モード画像230は、例えば、指標値画像220の右上方に表示される。増大モード画像230は、制御機能124が仮決定した送信電圧の基準値を制御機能124が増大させていないときには表示されない。こうして、超音波診断装置100は、図7に示す処理を終了する。
【0051】
例えば、超音波診断装置100では、取得した反射波情報を増幅させる処理を行うなどして表示装置200に表示させる指標値画像を調整することにより、診断結果を分かりやすくさせることもできる。しかし、このような調整を行っても、実際に超音波プローブ10に付与される送信電圧が変動しているわけではないので、音響カプラ20を装着したことによる感度の低下の改善に寄与することはない。
【0052】
この点、実施形態の超音波診断装置100は、超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されるときには、超音波プローブ10の振動子14に付与する送信電圧を増大させる。このため、超音波プローブ10に音響カプラ20を装着したことによる感度の低下を小さくできる。
【0053】
また、超音波診断装置100は、制御機能124は、例えば、音響カプラ20を通過する際の超音波の減衰量が多いほど、送信電圧の増大量を大きくする。また、超音波診断装置100は、超音波プローブ10の熱量差分が大きいほど、送信電圧の増大量を大きくする。このため、被検者に与える負担を低く抑えながら、超音波プローブ10に音響カプラ20を装着したことによる感度の低下を小さくできる。
【0054】
また、超音波診断装置100は、音響カプラ20の減衰特性、幾何学的特性、及び物理的特性のうち少なくとも一つに基づいて、音響カプラ20を通過する超音波の減衰量を取得する。また、超音波診断装置100は、音響カプラ20の熱伝導特性、幾何学的特性、及び物理的特性のうち少なくとも一つに基づいて、熱量差分を取得する。このため、精度の高い超音波の減衰量及び熱量差分を取得することができる。
【0055】
また、超音波診断装置100は、生成機能126において、超音波プローブ10が受信した反射波のうち、音響カプラ20における所定の厚さ、例えば音響カプラ20における最も薄い部分を通過した反射波を除いて、被検体内の画像を生成してもよい。例えば、生成機能126は、音響カプラ20の厚さの最小値と、音響カプラ20の音速に基づいて、超音波画像を生成する際のオフセット値(オフセット時間)を算出し、オフセット時間分を遅らせた超音波画像を生成してもよい。例えば、音響カプラ20の厚さの最小値が2[cm]、音響カプラ20の音速が1450[m/s]であるとする。この場合、生成機能126は、オフセット時間として2/1450=13.8[μs]を算出する。生成機能126は、算出した13.8[μs]分を遅らせた超音波画像を生成してもよい。
【0056】
また、超音波診断装置100は、超音波プローブ10に付与する送信電圧を増加させたことを示す増大モード画像230を表示装置200に表示させる。このため、送信電圧が上昇していることを検査者に認識させることができる。したがって、検査者に与える違和感を軽減することができる。
【0057】
上記の実施形態では、表示制御機能128は、指標値画像220として、超音波プローブ10により送信され、音響カプラ20を通過した超音波によるMI、TI、及びIspta.3の各指標値を表示装置200に表示させるが、表示制御機能128は、音響カプラ20を通過していない超音波による指標値を表示装置200に表示させてもよい。また、表示制御機能128は、図9に示すように、指標値画像220として、音響カプラ20を通過した超音波による指標値及び音響カプラ20を通過していない超音波による指標値を表示装置200に表示させてもよい。
【0058】
表示制御機能128は、図9に示す指標値画像220では、音響カプラ20を通過していない超音波による指標値を括弧内に表示装置200に表示させるが、指標値画像220を他の態様で表示させてもよい。例えば、表示制御機能128は、表示装置200において、指標値画像220として、音響カプラ20を通過した超音波による指標値を括弧内に表示させてもよい。
【0059】
また、表示制御機能128は、音響カプラ20を通過した超音波による指標値及び音響カプラ20を通過していない超音波による指標値の差分(オフセット値)を表示装置200に表示させてもよい。また、表示制御機能128は、音響カプラ20を通過した超音波による指標値及び音響カプラ20を通過していない超音波による指標値を示す指標値画像220とともに、図8に示す増大モード画像230を表示装置200に表示させてもよい。
【0060】
また、音響カプラ20を通過した超音波による指標値は、表示制御機能128が表示装置200に表示させるほか、制御機能124が、超音波画像のデータに付帯させる付帯情報としてメモリ130に記憶させてもよい。この場合、超音波画像と指標値との関係を診断後に確認することができる。また、音響カプラ20を通過した超音波による指標値を、超音波画像のデータに付帯させてメモリ130に記憶させてもよい。また、指標値の情報は、超音波診断の診断結果に含めてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、音響カプラ20の音響カプラ特性を記憶する音響カプラ特性テーブル132をメモリ130が記憶するが、音響カプラ特性は、例えば、音響カプラ20から取得できるようにしてもよい。例えば、音響カプラ20のICタグ22に音響カプラ特性の情報が記憶されており、ICタグリーダ16でICタグ22の情報を読み取ることにより、超音波プローブ10を介して超音波診断装置100が音響カプラ特性を取得できるようしてもよい。また、音響カプラ20の識別番号や音響カプラ特性を入力する入力手段を設け、検査者等が手入力により音響カプラ20の識別番号や音響カプラ特性を入力するようにしてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、超音波診断装置100は、ICタグリーダ16がICタグ22から読み取った音響カプラ情報に基づいて、音響カプラ20が超音波プローブ10に装着されたことを確認するが、他の態様で確認してもよい。例えば、超音波診断装置100は、入力装置30を介した検査者等の手入力により、音響カプラ20が超音波プローブ10に装着されたことを確認してもよい。また、表示制御機能128は、超音波プローブ10に音響カプラ20が装着されることを示す装着画像を表示装置200に表示させてもよい。また、音響カプラ20が超音波プローブ10に装着されていない場合に、送信電圧の増大を禁止させる増圧禁止手段を設けてもよい。また、上記の実施形態では、音響カプラ20が超音波プローブ10に装着されている場合に送信電圧を増大させるが、音響カプラ20が超音波プローブ10に装着されている場合に送信電圧を増大させることなく、超音波プローブ10に付与する送信電圧に上限値を大きくするようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、制御機能124は、取得した音響カプラ特性を用いて音響カプラ20を通過する際の超音波の減衰量や熱量差分を算出するが、音響カプラ20ごとの減衰量や熱量差分をテーブル化してメモリ130等が記憶していてもよい。また、制御機能124は、取得した減衰量や熱量差分を用いてMI、TI、及びIspta.3を算出するが、入力装置30により出力される操作情報と音響カプラ20との間におけるMI、TI、及びIspta.3をテーブル化してメモリ130に記憶させてもよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…超音波診断システム、10…超音波プローブ、12…送受信面、14…振動子、16…ICタグリーダ、20…音響カプラ、22…ICタグ、30…入力装置、100…超音波診断装置、110…送受信回路、120…処理回路、122…取得機能、124…制御機能、126…生成機能、128…表示制御機能、130…メモリ、132…音響カプラ特性テーブル、200…表示装置、210…超音波画像、220…指標値画像、230…増大モード画像
図1
図2
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