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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】光学駆動装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240430BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240430BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/04 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020026593
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131460
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】追川 真
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-049443(JP,A)
【文献】特開平11-095082(JP,A)
【文献】特開平08-179184(JP,A)
【文献】特開平08-251949(JP,A)
【文献】米国特許第09671616(US,B2)
【文献】特開2011-164615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持し、互いに光軸方向に離間して設けられた第1の当接部および第2の当接部を有する保持部材と、
前記第1および第2の当接部と当接して前記保持部材を前記光軸方向に案内する第1の案内部材と、
第3の当接部と当接して前記保持部材の回転を止める第2の案内部材と、
前記第1および第2の当接部が前記第1の案内部材に押圧されるように前記保持部材を付勢する磁力としての付勢力を発生させる付勢部材とを有し、
前記付勢部材が、前記光軸方向における前記第1の当接部と前記第2の当接部との間に配置されており、
前記保持部材は、前記光軸方向における前記第1および第2の当接部とは異なる位置に互いに前記光軸方向に離間して設けられ、前記第1の案内部材に当接して前記第1および第2の当接部の前記第1の案内部材に対する前記光軸方向とは異なる方向への変位を制限する第1のストッパ部および第2のストッパ部を有し、
前記付勢部材は、前記光軸方向において、前記第1の当接部と前記第2の当接部との間である第1の範囲と前記第1のストッパ部と前記第2のストッパ部との間である第2の範囲とが重なる領域内に配置され
前記第1および第2のストッパ部のうち少なくとも一方は、前記光軸方向における前記第1の範囲の内側に配置されていることを特徴とする光学駆動装置。
【請求項2】
前記第1の当接部と前記第2の当接部がそれぞれ、前記第1の案内部材に互いに異なる2方向から当接する対の当接部を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学駆動装置。
【請求項3】
前記第1および第2の当接部のうち少なくとも一方は、前記第2の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学駆動装置。
【請求項4】
前記第1および第2のストッパ部のうち少なくとも一方が、前記光軸方向における前記第1の範囲の外側であって、前記第1および第2の当接部のうち前記保持部材の重心に近い当接部より外側に設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学駆動装置。
【請求項5】
前記第1および第2のストッパ部が、前記光軸方向における前記第1の範囲の内側に設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学駆動装置。
【請求項6】
振動する振動体と該振動体に接触する接触体とを有し、前記振動体と前記接触体とを相対移動させて前記保持部材を前記光軸方向に駆動する振動型アクチュエータを有し、
前記振動体は、前記光軸方向における前記第1の当接部と前記第2の当接部との間の前記第1の範囲内において前記接触体と接触することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学駆動装置。
【請求項7】
前記第2の範囲は前記第1の範囲内に位置することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学駆動装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の光学駆動装置を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや交換レンズ等の光学機器において、レンズ等の光学素子を光軸方向に駆動する光学駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学駆動装置として、レンズを保持するレンズ保持部材がガイドバー等の案内部材によって光軸方向に案内されるものがある。特許文献1には、レンズ保持部材に光軸方向に離間して設けられた2つの穴部に第1のガイドバーを通すことでレンズ保持部材を光軸方向に案内し、レンズ保持部材に設けられた転動部材を第2のガイドバーに当接させることでレンズ保持部材の第1のガイドバー回りでの回転を制限する光学駆動装置が開示されている。この光学駆動装置では、レンズ保持部材における転動部材の近傍に設けられた磁石と第2のガイドバーとの間に作用する磁力(磁気吸引力)によって転動部材を第2のガイドバーに付勢押圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9,671,616号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された光学駆動装置では、第2のガイドバーに当接する転動部材が1つしか設けられておらず、該転動部材の軸回りにレンズ保持部材が倒れ易い。このため、レンズ保持部材の光軸に直交する方向での位置決めや光軸に対する倒れの抑制が難しい。
【0005】
本発明は、光学素子を保持する保持部材を磁力によって案内部材に当接させる構成において、保持部材の位置決めと倒れ抑制が可能な光学駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学駆動装置は、光学素子を保持し、互いに光軸方向に離間して設けられた第1の当接部および第2の当接部を有する保持部材と、第1および第2の当接部と当接して保持部材を光軸方向に案内する第1の案内部材と、第3の当接部と当接して保持部材の回転を止める第2の案内部材と、第1および第2の当接部が第1の案内部材に押圧されるように保持部材を付勢する磁力としての付勢力を発生させる付勢部材とを有する。付勢部材が、光軸方向における第1の当接部と第2の当接部との間に配置されている。保持部材は、光軸方向における第1および第2の当接部とは異なる位置に互いに光軸方向に離間して設けられ、第1の案内部材に当接して第1および第2の当接部の第1の案内部材に対する光軸方向とは異なる方向への変位を制限する第1のストッパ部および第2のストッパ部を有する。付勢部材は、光軸方向において、第1の当接部と第2の当接部との間である第1の範囲と第1のストッパ部と第2のストッパ部との間である第2の範囲とが重なる領域内に配置され、第1および第2のストッパ部のうち少なくとも一方は、光軸方向における第1の範囲の内側に配置されている。なお、上記光学駆動装置を有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保持部材の第1および第2の当接部を磁力によって案内部材に当接させる光学駆動装置において、保持部材の光軸方向に直交する方向での位置決めを行うことができるとともに、光軸方向への倒れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1であるレンズ駆動装置を備えた撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】実施例1のレンズ駆動装置を示す正面図。
図3図2中のA-A線での断面を示す断面図。
図4】実施例1におけるローラと振動型モータとの位置関係を示す側面図。
図5】実施例1における磁気付勢部材の位置を示す図。
図6】本発明の実施例2における磁気付勢部材の位置を示す図。
図7】本発明の実施例3における磁気付勢部材の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1である光学駆動装置としてのレンズ駆動装置を備えた光学機器である撮像装置(デジタルカメラ)100の構成を示している。図1および他の図において、後述する撮像光学系の光軸Oaが延びる方向(光軸方向)をx方向とし、後述する振動型アクチュエータの摺動面の法線方向をz方向とし、x方向とz方向に直交する方向をy方向とする。またy方向およびz方向に延びる軸をそれぞれ、y軸およびz軸という。
【0011】
撮像装置100は、レンズ鏡筒103とカメラ本体105とにより構成されている。レンズ鏡筒103は、光学素子としての焦点調節用レンズ101を含む撮像光学系と、レンズ101をx方向に駆動する振動型アクチュエータ200を含むレンズ駆動装置と、レンズ101のx方向での位置を検出する位置検出部107とを有する。
【0012】
カメラ本体105は、撮像光学系により形成される光学像を撮像(光電変換)する撮像素子104と、撮像素子104上に形成される光学像のピント状態を検出するピント検出部106とを有する。さらにカメラ本体105は、ピント検出部106によるピント検出結果に応じた合焦位置に位置検出部107により検出されるレンズ101の位置が移動するようにアクチュエータ駆動部109を介して振動型アクチュエータ200を制御する制御部108を有する。
【0013】
図2は、振動型アクチュエータ200によりレンズ101をx方向に駆動するレンズ駆動装置を-x方向から見て示している。振動型アクチュエータ200は、振動を発生する可動部と該可動部が加圧接触する固定部とを有する。可動部は、固定部に対してx方向に移動する。可動部と固定部の詳しい構成については後述する。後述する第2の付勢力の反力は、可動部を固定部に対して加圧する力として作用する。図3は、図2中のA-A線での断面を示している。図4は後述するレンズ保持部材112をy方向から見て示している。
【0014】
固定鏡筒111は、円筒形状の部材であり、レンズ鏡筒103内に固定されている。固定鏡筒111は、そのx方向前後において、後述する第1の案内部材113と第2の案内部材114の前端部と後端部を保持している。
【0015】
レンズ保持部材112は、レンズ101を保持し、固定鏡筒111に対してx方向に移動可能な部材である。レンズ保持部材112におけるx方向前後に離間した部分にはそれぞれ、転動部材ベース123がネジ125により固定されている。前側の転動部材ベース123には、2つ(対)の第1の転動部材115aが軸ビス116とナット126を用いて転動可能に固定されている。第1の転動部材115aは、第1の当接部を構成する。また図3および図4に示すように、後側の転動部材ベース123には、前側の転動部材ベース123と同様に対の第2の転動部材115bが転動可能に固定されている。第2の転動部材115bは、第2の当接部を構成する。以下の説明において、第1および第2の転動部材115a,115bをまとめてガイド転動部材115とも表記する。
【0016】
対のガイド転動部材115は、それらの転動中心である軸が60°の角度をなすように転動部材ベース123に固定されており、x方向に延びる丸棒形状の第1の案内部材(ガイドバー)113に互いに異なる2方向(120°をなす方向)から当接している。対のガイド転動部材115が互いに異なる2方向から第1の案内部材113に当接することで、レンズ保持部材112のy方向およびz方向(以下、まとめてyz方向という)での第1の案内部材113に対する平行変位が制限される。
【0017】
なお、対のガイド転動部材115が第1の案内部材113に当接する2方向は、120°以外の角度をなす2方向であってもよい。
【0018】
本実施例では、第1の案内部材113は磁性体により形成されている。図3に示すように、レンズ保持部材112における前後の転動部材ベース123の間(本実施例では後側の転動部材ベース123に隣接する位置)には、磁気付勢部材としての第1の付勢部材119が固定されている。第1の付勢部材119は、磁石119aとヨーク119bにより構成され、磁性体である第1の案内部材113との間に作用する磁力(磁気吸着力)によってレンズ保持部材112に第1の付勢力を与える。磁石119aの着磁方向は第1の案内部材113に向かう方向であり、第1の付勢力の方向も第1の案内部材113に向かう方向である。この第1の付勢力により、対のガイド転動部材115が第1の案内部材113に押圧される。
【0019】
なお、磁石119aの極は単極でも多極でもよく、単極の場合にはヨーク119bが不要となる。また、前後の転動部材ベース123の間に複数の第1の付勢部材を設けてもよい。さらに第1の付勢部材を磁性体により形成し、第1の案内部材を磁石により形成してもよい。
【0020】
対のガイド転動部材115が第1の案内部材113に押圧した状態でレンズ保持部材112がx方向に移動すると、それらガイド転動部材115が転動する。このため、低い摩擦負荷でレンズ保持部材112をx方向に案内しつつ移動させることが可能である。
【0021】
本実施例では、ガイド転動部材115としてボールベアリングを用いている。ただし、コロや転動ボール等の転動する部材であればよい。またガイド転動部材115に代えて、摺動性の良い材料により形成された摺動部材を第1および第2の当接部として設けてもよい。
【0022】
レンズ保持部材112における光軸Oaを挟んでガイド転動部材115とは反対側には、第3の転動部材117が軸ビス116とナット126を用いて転動可能に固定されている。第3の転動部材117は、x方向に延びる丸棒形状の第2の案内部材(回転止めバー)114に+z方向から当接している。第3の転動部材117が第2の案内部材114に当接することで、yz面内でのレンズ保持部材112の第1の案内部材113回りでの回転を制限することができる。なお、第1および第2の案内部材113,114は、多角形断面を有する棒状の部材や板状の部材としてもよい。
【0023】
レンズ保持部材112と振動型アクチュエータ200の可動部との間には、バネ等の弾性部材である第2の付勢部材120が配置されている。またレンズ保持部材112に設けられた連結部121には、振動型アクチュエータ200の可動部がx方向においてガタが生じないように連結されている。第2の付勢部材120は、その一端が振動型アクチュエータ200の可動部に当接し、他端がレンズ保持部材112に当接して圧縮されることで、レンズ保持部材112に第3の転動部材117を第2の案内部材114に押圧するための弾性力としての第2の付勢力を与える。第2の付勢力は第1の付勢力よりも小さい。
【0024】
第3の転動部材117が第2の案内部材114に当接した状態で振動型アクチュエータ200が駆動されてレンズ保持部材112がx方向に移動すると、第3の転動部材117が転動する。このため、低い摩擦負荷でレンズ保持部材112をx方向に案内しつつ移動させることが可能であり、かつレンズ保持部材112の第1の案内部材113回りでの回転を制限することができる。
【0025】
以上説明した第1および第2の案内部材113,114と、ガイド転動部材115と、第3の転動部材117と、第1および第2の付勢部材119,120を含むガイド機構によって、レンズ保持部材112(つまりはレンズ101)をガタなく、かつ低負荷でx方向に案内することができる。
【0026】
次に振動型アクチュエータ200の詳細な構成について説明する。振動子(振動体)202は、弾性体に電気-機械エネルギ変換素子としての圧電素子が接着されて構成されており、振動子保持部材203により保持されている。振動子202には、互いにx方向に離間した2つの突起部202aが設けられている。突起部202aの先端は、伝達部材205を介して振動子202に作用するバネ204の加圧力によって摩擦部材(接触体)201の摺動面201aに-Z方向から加圧接触している。バネ204は、その両端が伝達部材205と可動ガイド板208に掛けられている。振動子202、振動子保持部材203、バネ204、伝達部材205および可動ガイド板208により可動部が構成される。
【0027】
摩擦部材201は、固定ガイド板206によりx方向において固定されている。摩擦部材201と固定ガイド板206により固定部が構成される。固定ガイド板206と可動ガイド板208のそれぞれにはx方向に延びる溝部が形成されており、両溝部の間にはボール207が配置されている。
【0028】
振動子202の圧電素子に周波信号が印加されると、振動子202に振動が励起され、突起部202aの先端が楕円運動する。楕円運動する突起部202aの先端とこれに圧接する摩擦部材201の摺動面201aとの間の摩擦によって可動部が固定部に対してx方向に駆動される。この際、ボール207が転動することにより、可動部はx方向に低摩擦負荷で案内される。なお、振動子に対して摩擦部材が移動してもよく、振動子と摩擦部材が相対移動すればよい。
【0029】
レンズ保持部材112の連結部121は、可動部の振動子保持部材203に連結されている。このため、可動部のx方向での移動とともにレンズ保持部材112がx方向に駆動される。
【0030】
本実施例では、図3を用いて先に説明したように、x方向の2か所のそれぞれにおいて、レンズ保持部材112に転動部材ベース123を介して設けられた対のガイド転動部材115が互いに異なる2方向から第1の案内部材113に当接している。これにより、レンズ保持部材112のyz方向での位置が決められるとともに、レンズ保持部材112のy軸回りとz軸回りの(光軸方向への)倒れを抑制することできる。
【0031】
また、第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間の距離が増加するとそれらの間の磁気吸着力が急激に弱くなる。このため、撮像装置100の落下等による衝撃によりレンズ保持部材112が第1の案内部材113から離れる方向に外力が加わることでガイド転動部材115が第1の案内部材113から脱落するおそれがある。
【0032】
そこで本実施例では、図2および図3に示すように、レンズ保持部材112におけるx方向にて互いに異なる位置に、第1の案内部材113に係合(当接)してレンズ保持部材112の第1の案内部材113から離れる方向への変位(移動範囲)を制限する第1のストッパ部112aと第2のストッパ部112bを設けている。第1および第2のストッパ部112a,112bはそれぞれ、第1の案内部材113が通る穴部を有する。穴部の内径は、第1および第2のストッパ部112a,112bと第1の案内部材113との摩擦がレンズ保持部材112のx方向での移動に対する抵抗にならないように、第1の案内部材113の外径よりわずかに大きい。
【0033】
図3において、レンズ保持部材112に下向きに外力が作用したとき、第1および第2のストッパ部112a,112bが第1の案内部材113に当接してレンズ保持部材112の下方への変位をわずかな量に制限する。これにより、ガイド転動部材115が第1の案内部材113から脱落することを防ぐことができる。
【0034】
以下、図3を用いて、レンズ101を含むレンズ保持部材112の重心122と第1および第2の転動部材115a,115bと第1および第2のストッパ部112a,112bとのx方向での位置関係について説明する。
【0035】
図3では、x方向において重心122を挟んだ2か所に第1および第2の転動部材115a,115bを配置している。これにより、撮像装置100の姿勢が変化して重心122にかかる重力の向きが変化したり、撮像装置100に衝撃等の外力が加わって重心122に急激に力(加速度)がかかったりした場合でも、第1および第2の転動部材115a,115bのうち一方の第1の案内部材113からの浮きを発生しにくくしている。すなわち、第1および第2の転動部材115a,115bの両方が第1の案内部材113に当接した状態を維持して、レンズ保持部材112の第1の案内部材113に対する位置を安定的に保つことができるようにしている。
【0036】
同様に、x方向において重心122を挟んだ2か所に第1および第2のストッパ部112a,112bを配置することで、重心122に急激に力が加わった場合でも第1および第2のストッパ部112a,112bのうち一方だけでレンズ保持部材112の変位を制限する状態を起きにくくしている。すなわち、第1および第2のストッパ部112a,112bの両方でレンズ保持部材112の第1の案内部材113に対する変位を安定的に制限できるようにしている。
【0037】
次に、図4を用いて、第1および第2の転動部材115a,115bと、第1および第2のストッパ部112a,112bと、第1の付勢部材119と、振動型アクチュエータ200との位置関係について説明する。図4では図2に示した構成要素のうち一部の図示を省略している。
【0038】
図4でも、図3と同様に、レンズ保持部材112の重心122は第1および第2の転動部材115a,115bの間、かつ第1および第2のストッパ部112a,112bの間に位置することを示している。レンズ保持部材112には、図1に示した位置検出部107が光学的または磁気的に読み取る周期パターンを有するスケール107aが固定されている。位置検出部107は、読み取った周期パターンに応じて、制御部108がレンズ保持部材112のx方向での位置を検出するために用いる周期信号を出力する。
【0039】
x方向における第1および第2の転動部材115a,115b間の範囲を第1の範囲115cとするとき、第1の付勢部材119は第1の範囲115c内に配置されている。これにより、第1の付勢部材119と第1の案内部材113とがyz方向にて離れにくくなり、第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間に作用する磁気吸着力(第1の付勢力)を安定させることができる。この結果、レンズ保持部材112の第1の案内部材113に対するyz方向での位置を安定させるとともに、y軸およびz軸回りでの倒れを抑制することができる。
【0040】
また、x方向における第1および第2のストッパ部112a,112b間の範囲を第2の範囲112cとするととき、第1の付勢部材119はx方向において第1の範囲115cと第2の範囲112cとが重なる領域内に配置されている。これにより、第1の付勢部材119と第1の案内部材113とがyz方向においてさらに離れにくくなり、第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間に作用する磁気吸着力をより安定させることができる。この結果、レンズ保持部材112の第1の案内部材113に対するyz方向での位置をより安定させるとともに、y軸およびz軸回りでの倒れをより確実に抑制することができる。このことについては後に図を用いて再度説明する。
【0041】
振動子202においてx方向に離間した2つの突起部202aは、図2に示したバネ204により加圧された状態で摩擦部材201の摺動面201aに接触している。振動子202の突起部202aは、x方向において第1の範囲115c内に配置されている。その理由は以下の通りである。
【0042】
衝撃等によってレンズ保持部材112に第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間の磁気吸着力を超える外力が急激に作用すると、レンズ保持部材112の重心122がx方向において第1の範囲115c内に位置するため、レンズ保持部材112は第1の転動部材115a,115bのうち一方を中心として傾く。このとき、振動子202は連結部121と図2に示した振動子保持部材203を介してレンズ保持部材112と連結されているため、振動子202にも上記傾きによる回転力が伝わる。振動子202の突起部202aが第1の転動部材115aよりも-x方向外側に配置されていると、レンズ保持部材112が第2の転動部材115bを中心として回転したときに突起部202aが摺動面201aに過度に強く押し付けられることになり、振動子202が破損するおそれがある。また振動子202の突起部202aが第2の転動部材115bより+x方向外側に配置されていると、レンズ保持部材112が第1の転動部材115aを中心として回転したときに同様に振動子202が破損するおそれがある。
【0043】
そこで本実施例では、振動子202の突起部202aをx方向において第1の範囲115c内に配置している。これにより、レンズ保持部材112に第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間の磁気吸着力を超える外力が急激に作用した場合に突起部202aが摺動面201aに過度に強く押し付けられることを防止して、振動子202の破損を回避することができる。
【0044】
図5を用いて、本実施例における第1の付勢部材119の位置とその効果について説明する。図5は、x方向における第1の付勢部材119と、第1の案内部材113と、第1および第2の転動部材115a,115bと、第1および第2のストッパ部112a,112bとの位置関係を示している。図示を省略したレンズ保持部材112にx方向において離間して設けられて第1の案内部材113に当接した第1および第2の転動部材115a,115bのうち第2の転動部材115bの方が第1の転動部材115aよりもレンズ保持部材112の重心122の近くに配置されている。第1の付勢部材119は、第1および第2の転動部材115a,115b間の第1の範囲115c内に配置されている。
【0045】
前述したように撮像装置100に衝撃等の外力が加わってレンズ保持部材112の重心122に大きな力(加速度)がかかると、レンズ保持部材112に設けられた第1および第2の転動部材115a,115bが第1の案内部材113に対して傾く。なお、図5では第1の転動部材115a,115bを固定し、第1の案内部材113を破線113aおよび点線113bのように傾かせて示している。以下の説明において、第1の案内部材113が破線113aで示すようになる傾き状態を第1の傾き状態といい、第1の案内部材113が点線113bで示すようになる傾き状態を第2の傾き状態という。
【0046】
第1の傾き状態において第1のストッパ部112aと第2の転動部材115bが第1の案内部材113(113a)に当接することで、第1および第2の転動部材115a,115b(すなわちレンズ保持部材112)のそれ以上の倒れが阻止される。第1のストッパ部112aの内周面の第1の案内部材113の外周面に対する隙間は、第1の転動部材115aが第1の案内部材113から離れることなく第1の案内部材113が第1のストッパ部112aに当接するように設定されている。また第2の傾き状態において第2のストッパ部112bと第1の転動部材115aが第1の案内部材113(113b)に当接することで、第1および第2の転動部材115a,115bのそれ以上の倒れが阻止される。第2のストッパ部112bの内周面の第1の案内部材113の外周面に対する隙間は、第2の転動部材115bが第1の案内部材113から離れることなく第1の案内部材113が第2のストッパ部112bに当接するように設定されている。
【0047】
第1の傾き状態でも第2の傾き状態でも、第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間の距離が増加してそれらの間の磁気吸着力が減少する。両傾き状態での上記距離の増加をできるたけ少なくするために、第1の傾き状態の第1の案内部材113(113a)と第2の傾き状態の第1の案内部材113(113b)とが交差する位置に対向するように第1の付勢部材119を配置することが好ましい。これにより、両傾き状態での上記距離を小さな値Lminに抑えることができる。このような配置を実現するために、本実施例では、前述したように第1の付勢部材119をx方向において第1の範囲115cと第2の範囲112cとが重なる領域内に配置している。これにより、第1の付勢部材119と第1の案内部材113との間に作用する磁気吸着力を安定させ、レンズ保持部材112のyz方向での位置決めを行うことができるとともに、光軸方向への倒れを抑制することができる。
【0048】
図5において、第1のストッパ部112aと第1の案内部材113との間の隙間と第2のストッパ部112bと第1の案内部材113との間の隙間は互いに同じである。しかし、第1の傾き状態では第1のストッパ部112aに当接した第1の案内部材113(113a)に対して第1の転動部材115aは離れる(脱落する)直前であるのに対して、第2の傾き状態では第2のストッパ部112bに当接した第1の案内部材113(113b)に対して第2の転動部材115bはまだ離れるまでに余裕がある。これは、第2のストッパ部112bが第2の転動部材115bよりも外側(第1の範囲115cの外側)にあり、第2の傾き状態において第2の転動部材115bよりも第2のストッパ部112bの方が傾き半径が大きく、移動量が大きいためである。
【0049】
第1のストッパ部112aも第1の範囲115cの外側に配置された方が、第1の傾き状態での第1の転動部材115aの第1の案内部材113に対する脱落余裕量を増やすことができる。しかし、第1のストッパ部112aと第2のストッパ部112bの両方を第1の範囲115cの外側に設けると、レンズ保持部材112がx方向において大型化するおそれがある。
【0050】
そこで本実施例では、第2のストッパ部112bのみを第1の範囲115cの外側に配置している。レンズ保持部材112における重心122の近傍には、レンズ101を保持する構成を設ける必要があるため、第2のストッパ部112bを設けてもレンズ保持部材112のx方向へのサイズの増加はほとんど発生しない。一方、第1のストッパ部112aを第1の範囲115cの外側に設けると、元々はレンズ保持部材112が存在しない位置に第1のストッパ部112aを追加することになるため、レンズ保持部材112全体としてx方向でのサイズが増加することになる。したがって、本実施例では、レンズ保持部材112の重心122に近い第2の転動部材115bの外側にのみ第2のストッパ部112bを設けることで、上述した脱落余裕量を確保しつつ、レンズ保持部材112を小型化している。
【0051】
以上説明したように、本実施例では、レンズ保持部材112がx方向における互いに異なる位置に設けられた第1の転動部材(第1の当接部)115aと第2の転動部材(第2の当接部)115bにて第1の案内部材113と当接し、第1の付勢部材119を第1の範囲115c内に配置している。これにより、第1の案内部材113に対してレンズ保持部材112を倒れにくくし、レンズ保持部材112のyz面内での位置決めとy軸およびz軸回りでの倒れ抑制とを行うことができる。
【実施例2】
【0052】
次に、図6を用いて、本発明の実施例2であるレンズ駆動装置について説明する。本実施例では、実施例1と共通する構成要素については実施例1と同符号を付して説明に代え、実施例1と異なる点について説明する。
【0053】
本実施例では、実施例1と同様に第2のストッパ部112bが第2の転動部材115bより外側(第1の範囲115cの外側)に配置されているとともに、第1のストッパ部112aも第1の転動部材115aより外側に配置されている。この構成では、第1の傾き状態において第1の転動部材115aよりも第1のストッパ部112aの方が傾き半径が大きく、移動量が大きい。このため、第1のストッパ部112aが第1の案内部材113に当接しても、第1の転動部材115aが第1の案内部材113から離れるまでにはまだ余裕がある。
【0054】
このように本実施例では、第2の転動部材115bの第1の案内部材113に対する脱落余裕量と同様に、第1の転動部材115aの第1の案内部材113に対する脱落余裕量を確保することができる。
【実施例3】
【0055】
次に、図7を用いて、本発明の実施例3であるレンズ駆動装置について説明する。本実施例では、実施例1と共通する構成要素については実施例1と同符号を付して説明に代え、実施例1と異なる点について説明する。
【0056】
本実施例では、実施例1と同様に第1のストッパ部112aが第1の転動部材115aより内側(第1の範囲115cの内側)に配置されているとともに、第2のストッパ部112bも第2の転動部材115bより内側に配置されている。この構成では、実施例1に比べて、第2のストッパ部112bが内側に移動した分だけレンズ保持部材112を小型化することができる。
【0057】
第2のストッパ部112bが第2の転動部材115bより内側に位置するため、第2の傾き状態において第2の転動部材115bよりも第2のストッパ部112bの方が傾き半径が小さくなり、移動量が小さくなる。このため実施例1に比べて第2の転動部材115bの第1の案内部材113に対する脱落余裕量が減る。しかし、第2のストッパ部112bに第1の案内部材113(113b)が当接した状態で第2の転動部材115bは第1の案内部材113から離れる直前であり、脱落することはない。
【0058】
このように本実施例では、第1および第2のストッパ部112a,112bをともに第1の範囲115cの内側に配置することで、第1および第2の転動部材115a,115bの第1の案内部材113からの脱落を防ぎつつ、レンズ保持部材112を小型化することができる。
【0059】
上記各実施例では保持部材がレンズを保持する場合について説明したが、保持部材はレンズ以外の光学素子(フィルタ、絞り、撮像素子等)を保持してもよい。
【0060】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
112 レンズ保持部材
113 第1の案内部材
115a 第1の転動部材
115b 第2の転動部材
119 第1の付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7