(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】設計支援装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240430BHJP
G06F 16/583 20190101ALI20240430BHJP
G06F 111/02 20200101ALN20240430BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F16/583
G06F111:02
(21)【出願番号】P 2020057161
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516176361
【氏名又は名称】株式会社コアコンセプト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山川 和浩
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 英明
(72)【発明者】
【氏名】田口 紀成
(72)【発明者】
【氏名】熊田 聖也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 允文
(72)【発明者】
【氏名】石原 雅崇
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-021159(JP,A)
【文献】特開2003-099480(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063663(WO,A1)
【文献】特開2006-235834(JP,A)
【文献】特開2005-071095(JP,A)
【文献】特開2013-109504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 16/583
G06F 111/02
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の設計機能を有する端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な設計支援装置であって、
前記製品の作成済みの製品設計情報から前記製品を構成する複数の部品を当該部品の属性をもとに認識し、認識された前記複数の部品の前記属性を含む部品設計情報を含むカタログ情報を作成して記憶するカタログ情報作成部と、
前記端末装置から前記製品に関する作成中の製品設計情報を取得する第1の取得部と、
取得された前記作成中の製品設計情報から設計中の部品を当該部品の属性をもとに認識し、認識された前記設計中の部品の前記属性を前記カタログ情報に含まれる前記複数の部品の前記属性と照合することで、前記設計中の部品と所定の条件の範囲で前記属性が一致する部品を抽出し、抽出された前記部品の前記属性を含む前記部品設計情報を前記カタログ情報から選択して前記端末装置へ送信する部品情報提示部と
を具備する設計支援装置。
【請求項2】
前記端末装置から前記製品の新規作成された製品設計情報を取得する第2の取得部を、さらに具備し、
前記カタログ情報作成部は、前記新規作成された製品設計情報が取得される毎に、取得された前記新規作成された製品設計情報に基づいて前記カタログ情報の内容を更新する処理をさらに行う、請求項
1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記カタログ情報作成部および前記部品情報提示部は、前記部品の前記属性として前記部品の形状の特徴量を用いる、請求項
1に記載の設計支援装置。
【請求項4】
製品の設計機能を有する端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な情報処理装置が実行する設計支援方法であって、
前記製品の作成済みの製品設計情報から前記製品を構成する複数の部品を当該部品の属性をもとに認識し、認識された前記複数の部品の前記属性を含む部品設計情報を含むカタログ情報
を作成して記憶する過程と、
前記端末装置から作成中の製品設計情報を取得する過程と、
取得された前記作成中の製品設計情報から設計中の部品の属性を認識し、認識された前記設計中の部品の前記属性を前記カタログ情報に含まれる前記複数の部品の前記属性と照合することで、前記設計中の部品の前記属性と所定の条件の範囲で一致する部品を抽出し、抽出された前記部品の前記属性を含む前記部品設計情報を前記カタログ情報から選択して前記端末装置へ送信する過程と
を具備する設計支援方法。
【請求項5】
請求項
1に記載の設計支援装置が具備する、
前記カタログ情報作成部、前記第1の取得部および前記部品情報提示部が実行する処理を、前記設計支援装置が備えるハードウェアプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えば製品メーカの設計作業を支援する設計支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業製品を製造する場合に製品メーカは、一般に設計担当者が製品および当該製品で使用する部品の設計図をCAD(Computer Aided Design)等を使用した設計システムにより作成すると共に、作成された設計図をもとに各部品の製造に必要な詳細な仕様情報および製造指示内容を含む製造指示書を別の書類として手作業で作成する。そして、作成された上記設計図および製造指示書に基づいて、調達担当者が部品ごとにその加工業者を選定し部品の製造を発注するようにしている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、一般に、作成された設計図や製造指示書は設計担当者毎に管理されていても、製品メーカとして管理されていないことがある。また、たとえ製品メーカとして管理されている場合でも、その検索手段が製品名や製品の開発番号等を用いることが一般的となっている。このため、過去に作成された類似製品の設計図や製造指示書を製品単位で検索することは可能であっても、例えば製品名が異なっていたり、また製品を構成する部品単位では、過去の類似する設計図を見つけることができないことが多かった。そのため、設計担当者は重複設計を余儀なくされ、設計業務の効率低下を招いていた。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、一側面では、重複設計の発生を抑制して設計業務の効率向上を図る技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る設計支援装置および方法の第1の態様は、製品の設計機能を有する端末装置との間でネットワークを介してデータ伝送が可能な設計支援装置において、前記製品の作成済みの製品設計情報から前記製品を構成する複数の部品を当該部品の属性をもとに認識し、認識された前記複数の部品の前記属性を含む部品設計情報を含むカタログ情報を作成して記憶する。そして、前記端末装置から作成中の製品設計情報を取得した場合に、取得された前記作成中の製品設計情報から設計中の部品の属性を認識し、認識された前記設計中の部品の前記属性を前記カタログ情報に含まれる前記複数の部品の前記属性と照合することで、前記設計中の部品の前記属性と所定の条件の範囲で一致する部品を抽出し、抽出された前記部品の前記属性を含む前記部品設計情報を前記カタログ情報から選択して前記端末装置へ送信するようにしたものである。
【0009】
この発明の第1の態様によれば、製品の設計情報をもとに部品のカタログ情報が自動作成される。そして、端末装置における製品設計情報の作成中に、設計中の部品の属性が認識されて、上記カタログ情報に含まれる複数の部品の属性と照合され、その結果属性が所定の条件の範囲で一致する部品が上記カタログ情報に既に存在する場合には、当該部品の属性を含む部品設計情報が上記端末装置へ送信される。すなわち、製品の設計中で、設計中の部品と類似する部品がカタログ情報に存在すると、その時点で当該類似する部品の部品設計情報が設計担当者に通知される。従って、設計担当者は設計中で、通知された類似部品の部品設計情報を流用することが可能となり、これにより部品の設計を最後まで自力で行う必要がなくなって、その分設計業務を効率化することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
すなわちこの発明の各態様によれば、重複設計の発生を抑制して設計業務の効率向上を可能にした技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る設計支援装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係る設計支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、この発明の一実施形態に係る設計支援装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した設計支援装置によるカタログ作成処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3に示した設計支援装置による設計支援処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図4および
図5に示したカタログ作成処理からカタログ更新処理までの一連の動作例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図4に示したカタログ作成処理により作成されたカタログ情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0013】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る設計支援装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
この例では、システムは設計支援装置として動作するサーバコンピュータ(以後サーバ装置と称する)SVを備える。そして、サーバ装置SVは、各製品メーカにおいて使用される複数の端末装置MA1~MAnとの間で、それぞれネットワークNWを介してデータ伝送を行えるようになっている。
【0014】
ネットワークNWは、例えば、インターネットを中核とする広域網と、この広域網にアクセスするためのアクセス網とを備える。アクセス網としては、例えば有線および無線の公衆ネットワーク、有線および無線のLAN(Local Area Network)、CATV(Cable Television)ネットワークが使用される。
【0015】
(2)装置
(2-1)端末装置MA1~MAn
端末装置MA1~MAnは、例えば3DCAD(3D Computer Aided Design)設計用のアプリケーションを備えたパーソナルコンピュータにより構成される。なお、3DCAD設計用のアプリケーションは、例えばクラウドまたはWeb上に記憶されているものをその都度ダウンロードして使用するものであってもよい。
【0016】
端末装置MA1~MAnは、主として製品メーカの設計担当者が使用するもので、設計担当者が作成した製品の設計情報を上記サーバ装置SVへ送信するために使用される。製品の設計情報には、例えば製品の組立図等を示す3DCADデータと、製品および当該製品に使用される部品の仕様・補足情報とを含む。なお、製品は通常では完成品であるが、中間製品であってもよい。また、上記製品を構成する複数の部品の加工を部品メーカに発注した履歴が存在する場合には、当該発注履歴情報を上記設計情報に含めてもよい。
【0017】
(2-2)サーバ装置SV
図2および
図3は、それぞれサーバ装置(プラットフォームとも云う)SVのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
サーバ装置SVは、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部1を備え、この制御部1に対しバス5を介して、プログラム記憶部2およびデータ記憶部3を有する記憶ユニットと、通信インタフェース(通信I/F)4を接続したものとなっている。
【0018】
通信I/F4は、制御部1の制御の下、ネットワークNWにより定義される通信プロトコルを使用して上記端末装置MA1~MAnとの間でデータ伝送を行うもので、例えば有線ネットワーク用のインタフェースにより構成される。
【0019】
プログラム記憶部2は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0020】
データ記憶部3は、例えば、記憶媒体として、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、この発明の一実施形態を実施するために必要な主たる記憶部として、設計情報記憶部31と、部品学習モデル記憶部32と、カタログ情報記憶部33とを備えている。
【0021】
設計情報記憶部31は、上記端末装置MA1~MAnから取得した製品の設計情報を記憶するために使用される。製品の設計情報には、例えば先に述べたように、3DCADデータと、製品および当該製品に使用される部品の仕様・補足情報と、発注履歴情報とが含まれる。仕様・補足情報には、例えば部品の材質、硬度、製造指示コメント(留意点)、幾何公差が含まれる。なお、部品の設計日時や有効期限等が含まれていてもよい。発注履歴情報には、例えば部品の発注先となった加工業者名、発注日時、数量、単価、納期が含まれる。
【0022】
部品学習モデル記憶部32は、上記製品設計情報に含まれるCAD画像データから部品をその形状をもとに認識するために用いる部品学習モデルを記憶する。カタログ情報記憶部33は、部品のカタログ情報を記憶するために使用される。
【0023】
制御部1は、この発明の一実施形態に係る処理機能として、設計情報取得処理部11と、部品認識処理部12と、カタログ情報作成処理部13と、第1のカタログ検索処理部14と、第2のカタログ検索処理部15と、カタログ情報更新処理部16とを備えている。これらの処理部11~16は、何れもプログラム記憶部2に格納されたプログラムを制御部1のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0024】
設計情報取得処理部11は、端末装置MA1~MAnから送信された製品の設計情報を通信I/F4を介して受信し、受信された製品の設計情報を例えば製品IDと紐づけて設計情報記憶部31に記憶させる処理を行う。
【0025】
部品認識処理部12は、設計情報記憶部31に記憶された複数の製品設計情報からそれぞれ製品を構成する複数の部品をその形状をもとに認識する処理を行う。この部品の認識処理には、部品学習モデル記憶部32に記憶された部品学習モデルが使用される。部品認識処理部12は、上記部品学習モデルを作成および更新する処理も行う。なお、部品学習モデルを使用した部品の認識処理の一例は後述する。
【0026】
カタログ情報作成処理部13は、上記部品学習モデルを用いて認識された複数の部品の各々について、形状が類似するもの同士でグループ化する処理を行ったのち、設計担当者から指定されるラベルおよびタグを付与することで、部品別のカタログ情報を作成する。そして、作成された部品別のカタログ情報をカタログ情報記憶部33に記憶させる処理を行う。
【0027】
カタログ情報は、部品の設計情報を含む。部品設計情報には、部品の3D画像データ、作成日時、サイズ、上記ラベルおよびタグが含まれる。ラベルには例えば部品名が含まれる。またタグには、例えば部品の形状名や加工方法、さらにはハッシュタグ(社内で使用されている部品の呼称)等が含まれる。なお、タグに含まれる各情報は、製品の仕様・補足情報に含めておき、仕様・補足情報から抽出するようにしてもよい。
【0028】
第1のカタログ検索処理部14は、設計担当者による構想設計の段階で、端末装置MA1~MAnから部品の検索要求を受信した場合に、当該検索要求に含まれる検索条件に基づいてカタログ情報記憶部33から対応する部品のカタログ情報を読み出し、要求元の端末装置へ送信する処理を行う。なお、検索条件としては、例えばラベルで指定された部品名や、タグにより指定された部品形状名や加工方法、さらにはハッシュタグ(社内で使用されている部品の呼称)が用いられる。
【0029】
第2のカタログ検索処理部15は、設計担当者が製品を設計中の段階で、端末装置MA1~MAnから上記設計中の製品の中間設計情報を定期的または任意のタイミングで取得し、取得された上記中間設計情報に含まれる設計中の部品の認識処理を上記部品認識処理部12に行わせる。そして、認識された部品の形状をカタログ情報記憶部33に記憶されている複数の部品の形状と照合することで形状が類似する部品または部品グループを検索し、検索された部品または部品グループの設計情報をカタログ情報記憶部33から読み出して要求元の端末装置MA1~MAnへ送信する処理を行う。なお、形状を用いた類似部品の検索処理の一例については後述する。
【0030】
カタログ情報更新処理部16は、端末装置MA1~MAnから新規に作成された製品設計情報の登録要求を受信した場合に、受信された上記製品設計情報に含まれる複数の部品の認識処理を上記部品認識処理部12に行わせる。そして、認識された各部品のカタログ情報を作成してカタログ情報記憶部33に追加記憶させる処理を行う。
【0031】
またカタログ情報更新処理部16は、上記追加記憶された部品のカタログ情報について、カタログ情報記憶部33に既に記憶済の部品グループの中に、形状が類似する部品グループが存在するか否かを判定する。そして、形状が類似する部品グループが見つかった場合は、上記追加記憶された部品のカタログ情報を上記部品グループと紐づける処理を行う。
【0032】
(動作例)
次に、以上のように構成されたサーバ装置SVの動作例を説明する。
図4および
図5はサーバ装置SVによる設計支援動作に係る処理手順と処理内容を示すフローチャート、
図6は上記設計支援動作に係るデータの入出力と処理の概要を示す図である。
なお、部品学習モデル記憶部32には、製品に使用される多数の部品について学習済の部品学習モデルが既に記憶されているものとして説明を行う。
【0033】
(1)カタログ情報の作成
サーバ装置SVは、先ず部品のカタログ情報の作成処理を実行する。
図4にその処理手順と処理内容を示す。
製品メーカの設計担当者は、過去に作成した複数の製品設計情報を端末装置MA1~MAnからサーバ装置SVへアップロードする。製品設計情報には、それぞれ3DCADデータと、当該3DCADデータに対応する仕様・補足情報および発注履歴情報が含まれる。
【0034】
これに対しサーバ装置SVの制御部1は、設計情報取得処理部11の制御の下、ステップS10において、上記端末装置MA1~MAnから送信された複数の製品設計情報を通信I/F4を介してそれぞれ受信し、製品IDと紐づけて設計情報記憶部31にそれぞれ記憶させる。
【0035】
サーバ装置SVの制御部1は、次に部品認識処理部12の制御の下、ステップS11において、上記設計情報記憶部31から製品を一つ選択してその設計情報を読み込む。そして、ステップS12において、部品学習モデル記憶部32に記憶された部品学習モデルを用いて、読み込まれた上記設計情報から製品を構成する複数の部品を認識する処理を実行する。
【0036】
部品の認識処理は、例えば以下のように行われる。すなわち、先ず製品設計情報に含まれる部品毎に、その3D画像データをもとにその正12面体の20箇所の頂点から2D画像データを作成する。続いて、2D画像データから複数の特徴ベクトルを算出し、算出された複数の特徴ベクトルを上記部品学習モデルに説明変数として与える。この結果、部品学習モデルから上記特徴ベクトルに応じてクラスタリングされた部品形状の認識結果が出力される。
【0037】
製品を構成するすべての部品について形状の認識処理が終了すると、サーバ装置SVの制御部1は、次にカタログ情報作成処理部13の制御の下、ステップS13において、形状が認識された各部品について設計情報記憶部31から対応する仕様・補足情報を読み出す。そして、ステップS14において、上記認識された部品の形状を表す3D画像データと、上記読み出された仕様・補足情報を、登録要求元の端末装置MA1~MAnへ送信する。上記部品形状の3D画像データおよび仕様・補足情報は、端末装置MA1~MAnで受信されて表示される。なお、端末装置MA1~MAnへは、上記認識された部品の形状を表す3D画像データのみが送信されるようにしてもよい。
【0038】
この状態で、設計担当者が端末装置MA1~MAnにおいて、上記部品形状の3D画像データおよび仕様・補足情報に対し、ラベルおよびタグを入力したとする。これに対しサーバ装置SVの制御部1は、カタログ情報作成処理部13の制御の下、ステップS15で上記ラベルおよびタグの受信を確認すると、ステップS16において、受信された上記ラベルおよびタグを上記部品形状の3D画像データおよび仕様・補足情報に付与して部品別のカタログ情報を作成する。そして、作成された部品別のカタログ情報をカタログ情報記憶部33に記憶させる。
【0039】
以後同様にカタログ情報作成処理部13は、製品毎に当該製品を構成する複数の部品の各々について上記ステップS11~S16による部品別のカタログ作成処理を繰り返し行う。そして、すべての製品の全部品について上記部品別のカタログ情報の作成が終了したことをステップS17で確認すると、部品のグループ化処理に移行する。
【0040】
カタログ情報作成処理部13は、次にステップS18において、カタログ情報記憶部33に記憶されたすべての部品別カタログ情報をもとに、部品間の形状の類似性を判定し、形状が予め設定された閾値の範囲で共通する部品を抽出してグループ化する。上記形状の類似性の判定は、例えば、部品認識処理部12において各部品の形状の特徴ベクトル同士を比較し、その一致度合いを上記閾値と比較することにより行われる。カタログ情報作成処理部13は、最後にステップS19において、同一のグループに属する各部品に対し共通の部品グループIDを付与し、このグループID毎に各部品のカタログ情報をソートしてカタログ情報記憶部33に記憶し直す。
【0041】
図7は、カタログ情報記憶部33に記憶された部品別のカタログ情報の一例を示すものである。
図7では、部品毎にその3D画像データ、部品名、作成日時、サイズおよびタグを対応付けて記憶した場合を例示している。なお、サイズは3D画像データの各部位の具体的な寸法を記載するようにしてもよい。
【0042】
なお、以上の説明では、各部品について部品別カタログ情報の作成が終了した後、さらに部品のグループ化処理を行う場合について述べた。しかし、部品学習モデルのクラスタリング精度が高い場合には、部品学習モデルから出力された部品形状の認識結果が、形状が類似する部品同士でグループ化されたものとして利用できる。従って、この場合にはグループ化処理を省略してもよい。
【0043】
(2)構想設計段階でのカタログ情報の検索
製品メーカの設計担当者は、製品の構想設計の段階で、過去に設計された製品に使用されている部品の設計情報を参照することができる。この場合設計担当者は、自身の端末装置MA1~MAnにおいてカタログ情報検索画面を開き、検索条件として部品名を入力し検索ボタンを押下する。なお、検索条件としては部品名(ラベル)に限らず、部品の種類に対応する部品グループIDを入力してもよく、また作成日時が分かっている場合には、作成日時を入力してもよい。上記検索ボタンの押下に応じて、上記検索要求は端末装置MA1~MAnからサーバ装置SVへ送信される。
【0044】
サーバ装置SVの制御部1は、設計支援モードが設定されると、
図5に示すようにステップS20において検索要求の受信を監視している。この状態で、端末装置MA1~MAnから検索要求が受信されると、制御部1は第1のカタログ検索処理部14の制御の下、以下のように部品のカタログ情報の検索処理を実行する。
【0045】
すなわち、第1のカタログ検索処理部14は、先ずステップS21においてカタログ情報記憶部33に対しアクセスし、受信された上記検索要求に含まれる検索条件、例えば部品名または部品グループIDを検索する。そして、該当する部品別カタログ情報が見つかった場合には、ステップS22において、上記部品名に対応する部品別カタログ情報、または部品グループに属する複数の部品別カタログ情報をカタログ情報記憶部33から読み出す。第1のカタログ検索処理部14は、続いてステップS23において、読み出された上記部品別カタログ情報、または部品グループに属する複数の部品別カタログ情報を、通信I/F4から要求元の端末装置MA1~MAnへ送信する。
【0046】
端末装置MA1~MAnでは、上記サーバ装置SVから送られた部品別カタログ情報が表示部に表示される。また、設計担当者が部品グループIDを指定した場合には、当該部品グループに属する各部品別カタログ情報が一覧表示される。なお、1つの部品グループに属する部品別カタログ情報が多く一覧表示できない場合には、ソート操作によりすべての部品別カタログ情報を表示される。
【0047】
設計担当者は、表示された上記部品別カタログ情報を見ることにより、過去に設計された製品に使用されている部品設計情報を、新たな製品の設計を開始する構想設計の段階で事前に確認することが可能となる。そして、過去に設計された部品設計情報の中に適当な設計情報が存在する場合には、当該部品設計情報を流用することができる。これにより同一部品の重複設計が防止される。
【0048】
(3)設計段階におけるカタログ情報の自動検索
サーバ装置SVの制御部1は、ステップS30において、端末装置MA1~MAnのCADアプリケーションと連携することで、端末装置MA1~MAnで設計動作中か否かを判定する。そして、この判定の結果設計動作中であれば、第2のカタログ検索処理部15の制御の下、設計段階におけるカタログ情報の自動検索を以下のように実行する。
【0049】
すなわち、第2のカタログ検索処理部15は、先ずステップS31において、定期的に、または設計情報が一定量変化する毎に、端末装置MA1~MAnから上記設計中の設計情報を通信I/F4を介して取得する。第2のカタログ検索処理部15は、続いてステップS32において、取得された上記設計中の設計情報から部品を認識または推定する処理を、部品認識処理部12に行わせる。部品の認識処理は、(1)のカタログ情報作成処理において述べた処理内容と同一なので、再度の説明は省略する。
【0050】
第2のカタログ検索処理部15は、次にステップS33において、認識または推定された上記部品の形状データを、カタログ情報記憶部33に記憶されている各部品のカタログ情報に含まれる形状データと比較することで、上記認識された部品の形状と所定の閾値の範囲で一致する類似部品をカタログ情報記憶部33から検索する。
【0051】
なお、上記類似部品の検索処理は、例えば、認識または推定された上記部品の3D画像データから算出された特徴ベクトルを、各部品別カタログ情報の3D画像データから算出される形状の特徴ベクトルとそれぞれ比較し、その差分が所定の閾値の範囲内の部品をカタログ情報から抽出することで実現される。
【0052】
上記検索の結果、類似部品が見つかると、第2のカタログ検索処理部15はステップS34からステップS35に移行し、上記類似部品の部品別カタログ情報をカタログ情報記憶部33から読み出す。そして、読み出された上記部品別カタログ情報を、通信I/F4から端末装置MA1~MAnへ送信する。
【0053】
なお、類似部品の検索処理は部品グループ単位で行ってもよい。この場合サーバ装置SVから端末装置MA1~MAnへは、部品グループに属するすべての類似部品のカタログ情報が端末装置MA1~MAnへ送信される。このため設計担当者は、送られた各類似部品のカタログ情報を、例えばソート操作により確認することができる。そして、表示された類似部品の中に設計中の部品設計に流用可能なものがあれば、当該類似部品の設計情報をサーバ装置SVからダウンロードして、設計中の上記部品設計情報に置き換えることが可能となる。
【0054】
(4)設計情報の新規登録に伴うカタログ情報の更新
設計担当者が、自身の端末装置MA1~MAnにおいて、新規作成した製品設計情報の登録操作を行ったとする。サーバ装置の制御部1は、ステップS40において設計情報取得処理部11により上記新規作成された製品設計情報の受信を監視している。この状態で、上記製品設計情報が受信され、設計情報記憶部31に記憶されると、サーバ装置の制御部1は、カタログ情報更新処理部16の制御の下、以下のように製品設計情報の新規登録処理を実行する。
【0055】
すなわち、カタログ情報更新処理部16は、上記設計情報記憶部31から上記新規作成された製品設計情報を読み出し、当該製品設計情報から製品を構成する複数の部品を認識する処理を、部品認識処理部12に行わせる。部品の認識処理は、(1)のカタログ情報作成処理において述べた処理内容と同一なので、ここでの説明は省略する。
【0056】
カタログ情報更新処理部16は、次にステップS13において、形状が認識された各部品について設計情報記憶部31から対応する仕様・補足情報を読み出す。そして、ステップS14において、上記部品の形状を表す3D画像データと、上記読み出された仕様・補足情報を、登録要求元の端末装置MA1~MAnへ送信する。上記部品形状の3D画像データおよび仕様・補足情報は、端末装置MA1~MAnで受信されて表示される。
【0057】
この状態で、上記部品形状の3D画像および仕様・補足情報に対し、設計担当者が部品名を示すラベルと、部品形状名および加工方法を示すタグを入力したとする。これに対しサーバ装置SVの制御部1は、カタログ情報更新処理部16の制御の下、ステップS15で上記ラベルおよびタグの受信を確認すると、ステップS16において、受信された上記ラベルおよびタグを上記部品形状の3D画像および仕様・補足情報に付与して新たな部品別カタログ情報を作成する。そして、作成された新たな部品別カタログ情報をカタログ情報記憶部33に追加記憶させる。
【0058】
次にカタログ情報更新処理部16は、ステップS18において、上記追加記憶された部品別カタログ情報を、カタログ情報記憶部33に記憶されたすべての部品別カタログ情報と比較し、部品形状が類似する部品別カタログ情報が存在するか否かを判定する。なお、上記形状の類似性の判定は、例えば、部品認識処理部12において各部品の形状の特徴ベクトル同士を比較し、その一致度合いを上記閾値と比較することにより行われる。
【0059】
カタログ情報更新処理部16は、カタログ情報記憶部33に登録済の部品の中から、形状が類似する部品が見つかった場合には、ステップS19において、上記追加記憶された部品別カタログ情報に、上記類似部品のカタログ情報に付与されている部品グループIDを付与する。すなわち、上記追加記憶された部品別カタログ情報を、上記形状が類似する部品グループに追加する。
【0060】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、端末装置MA1~MAnから取得した製品設計情報から、部品形状の部品学習モデルを用いて上記製品を構成する複数の部品を認識し、認識された複数の部品の各々についてその3D画像データおよび仕様・補足情報を含み、さらに部品名を示すラベルと形状名および加工方法を示すタグが付与された部品別カタログ情報を作成して、カタログ情報記憶部33に記憶させる。そして、設計担当者の構想設計の段階において端末装置MA1~MAnから検索要求が送られた場合には、当該検索要求の検索条件に対応する部品別カタログ情報をカタログ情報記憶部33から検索し、要求元の端末装置MA1~MAnへ送信するようにしている。
【0061】
このため、設計担当者は、過去に作成された部品に関する設計情報を参照して部品設計を行うことが可能となり、これにより部品の設計を最初から行う場合に比べ設計の業務効率を高めることが可能となる。
【0062】
また、各部品別カタログ情報は部品の形状が類似するもの同士でグループ化されてカタログ情報記憶部33に記憶される。このため、設計担当者は個別の部品名等が分からなくても、グループ単位で部品別カタログ情報を検索することが可能となる。
【0063】
さらに一実施形態では、製品設計情報の作成中に、当該作成中の製品設計情報を端末装置MA1~MAnから定期的に、または設計情報の内容が変化する毎に取得し、取得された製品設計情報から設計中の部品を認識する。そして、認識された部品と形状が類似する部品をカタログ情報記憶部に記憶されている各部品別カタログ情報の中から検索し、検索された類似部品の設計情報を端末装置MA1~MAnへ送信して設計担当者に提示するようにしている。
【0064】
このため、設計担当者は、設計中において提示された類似部品の設計情報を流用することが可能となり、これにより部品の設計を最後まで自力で行う必要がなくなって、その分設計業務を効率化することが可能となる。
【0065】
さらに一実施形態では、新規作成された製品設計情報が設計情報記憶部31に記憶される毎に、当該製品設計情報の構成部品が認識されて部品別カタログ情報が作成され、カタログ情報記憶部33に追加記憶される。このため、カタログ情報記憶部33に記憶されたカタログ情報を自動的に更新することができ、常に最新のカタログ情報を設計担当者に提供することが可能となる。
【0066】
さらに一実施形態では、製品設計情報から製品の構成部品を認識する手段として、部品形状を表す特徴ベクトルを入力として、当該特徴ベクトルに対応する部品の認識情報を出力する部品学習モデルを使用するようにしている。このため、部品の認識のために大掛かりな画像処理が不要となり、これによりサーバ装置SVは低処理負荷でかつ短時間に部品の認識を行うことができる。
【0067】
[その他の実施形態]
(1)前記一実施形態では、サーバ装置SVが、製品メーカの端末装置MA1~MAnから過去に作成された複数の製品設計情報を取得し、取得された複数の製品設計情報をもとにカタログ情報を作成する場合を例にとって説明した。しかし、製品メーカが製品設計情報を管理するサーバ装置を備えている場合には、サーバ装置SVは上記製品メーカのサーバ装置から製品設計情報を一括取得し、取得された複数の製品設計情報をもとにカタログ情報を作成するようにしてもよい。また、サーバ装置SVは、過去に作成された複数の製品設計情報を記憶媒体に格納し、この記憶媒体から上記製品設計情報を読み込むようにしてもよい。
【0068】
(2)前記一実施形態では、製品設計情報から製品の構成部品を認識する手段として、部品形状を表す特徴量(特徴ベクトル)を入力として、当該特徴量に対応する部品の認識情報を出力する部品学習モデルを使用する場合を例にとって説明した。しかし、それに限らず、例えば認識対象となる複数の部品の基本形状を示す画像パターンを予め記憶しておき、製品設計情報の3D又は2D画像データと上記基本形状を示す画像パターンとのパターンマッチング処理を行うことで、部品を認識するようにしてもよい。
【0069】
(3)前記一実施形態では、部品別カタログ情報を部品の形状が所定の条件の範囲で共通するもの同士でグループ化するようにした。しかし、それに加え、部品のサイズや素材、加工方法等が所定の条件の範囲で共通するもの同士をさらにグループ化するようにしてもよい。
【0070】
(4)その他、設計支援装置の構成、設計支援処理の手順と処理内容、カタログ情報の構成や作成手法等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0071】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0072】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0073】
SV…サーバ装置
MA1~MAn…製品メーカの端末装置
NW…ネットワーク
1…制御部
2…プログラム記憶部
3…データ記憶部
4…通信インタフェース(通信I/F)
5…バス
11…設計情報取得処理部
12…部品認識処理部
13…カタログ情報作成処理部
14…第1のカタログ検索処理部
15…第2のカタログ検索処理部
16…カタログ情報更新処理部
31…設計情報記憶部
32…部品学習モデル記憶部
33…カタログ情報記憶部