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特許7479902冷熱供給システムの冷媒充填方法及び冷媒充填システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】冷熱供給システムの冷媒充填方法及び冷媒充填システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 45/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
F25B45/00 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020062264
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162197
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】馬場 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀一
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-296620(JP,A)
【文献】特開2019-163867(JP,A)
【文献】特開2007-078238(JP,A)
【文献】特開平04-203864(JP,A)
【文献】特開2008-298335(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側に設けられている凝縮器と室内側の蒸発器との間に、前記凝縮器からの冷媒に対して冷却処理を行なうサブクール装置を備え、前記サブクール装置で降温した冷媒を前記蒸発器に送るように構成された冷熱供給システムにおける、冷媒の充填方法であって、
前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管に冷媒状態確認手段を設け、
前記凝縮器が置かれた空間が所定雰囲気の下で、前記サブクール装置を停止し、圧縮機を作動させた状態で、冷媒を注入するようにし、
前記冷媒状態確認手段で確認される冷媒が液相のみであり、かつ前記圧縮機出口側の冷媒の圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、前記冷媒を注入することを特徴とする、冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項2】
前記所定雰囲気は、前記冷熱供給システムが設置される地域の年間の最高気温の温度雰囲気であることを特徴とする、請求項1に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項3】
前記所定雰囲気は、32℃以上の温度雰囲気であることを特徴とする、請求項1に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項4】
前記所定雰囲気は、少なくとも前記凝縮器が置かれた空間を仕切り材で囲って形成した空間内の雰囲気であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項5】
前記仕切り材で囲って形成された空間は、一部が開放自在であることを特徴とする、請求項4に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項6】
前記圧縮機を作動させた状態で、前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管に対して冷媒を注入するようにしたことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項7】
前記圧縮機の停止直前の圧力値を、当該圧縮機に設定されている停止圧力の85%以上とすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷熱供給システムの冷媒充填方法。
【請求項8】
室外側に設けられている凝縮器と室内側の蒸発器との間に、前記凝縮器からの冷媒に対して冷却処理を行なうサブクール装置を備え、前記サブクール装置で降温した冷媒を前記蒸発器に送るように構成された冷熱供給システムにおける、冷媒の充填システムであって、
前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管内の冷媒状態を確認するための冷媒状態確認手段と、
前記冷媒配管に対して冷媒を注入する冷媒注入装置と、
圧縮機出口側の冷媒配管内の冷媒の圧力を検出する圧力検出装置と、
前記冷媒状態確認手段で確認される冷媒が液相のみであり、かつ前記圧力検出装置で検出される圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、前記冷媒を注入するように前記冷媒注入装置による冷媒注入量を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする、冷熱供給システムの冷媒充填システム。
【請求項9】
前記サブクール装置を停止し、前記圧縮機を作動させた状態で、前記冷媒が注入されることを特徴とする、請求項8に記載の冷熱供給システムの冷媒充填システム。
【請求項10】
前記冷媒の注入は、前記凝縮器が置かれた空間が所定雰囲気の下で行われることを特徴とする、請求項9に記載の冷熱供給システムの冷媒充填システム。
【請求項11】
前記圧縮機の停止直前の圧力値は、当該圧縮機に設定されている停止圧力の85%以上であることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の冷熱供給システムの冷媒充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱供給システムの冷媒充填方法及び冷媒充填システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばスーパーマーケットの食料品売り場においては、冷蔵食品を陳列する冷蔵ショーケースが設置されている。この冷蔵ショーケースは、一般的に蒸発器を有する室内機を冷蔵ショーケースに設け、陳列する食品によって異なっているが、例えば精肉、鮮魚の場合には、-2℃~2℃の温度帯に冷蔵ショーケースの庫内温度を維持するように制御されている。このような制御は、圧縮機入口設定圧力値に従い、圧縮機のON-OFF制御がなされているケースが多い。
【0003】
ところでスーパーマーケットなどの大規模小売店については、大規模小売店立地法に基づいて各自治体で設置指針を定めており、省エネについても規定されている。このような観点から、冷蔵ショーケースについても単純な冷凍サイクルの冷熱供給システムに対して、省エネの工夫がなされている。
【0004】
この点に関し、凝縮器からの冷媒に対して水の蒸発潜熱によって冷却処理を行なうサブクール装置を備えた冷熱供給システムがそのような冷蔵ショーケースに適用されている。
【0005】
このサブクール装置は、例えば室外機に設けられた凝縮器からの降温した高圧の冷媒が流れる冷媒配管に対して散水し、その時の水の蒸発潜熱によって冷媒の温度をさらに下げ(いわゆる過冷却)、これによって降温した液相の冷媒を冷蔵ショーケースに設けられている蒸発器に送って、当該蒸発器からの冷熱を庫内に供給するものである。これによって省エネ効果を高めることができる。この場合、かかる構成のサブクール装置では、サブクール装置に供給される冷媒に気泡等が混じり、気液二相状態では十分な省エネ効果が得られないことが知られている。
【0006】
そのため、このようなサブクール装置を有する冷熱供給システムにおいては、サブクール装置の上流側の冷媒が液相のみとすることが必要である。また特に夏期においても十分な省エネ効果が得られるように、通常の冷媒量よりも多く冷媒を充填することが効果的であると考えられる。
【0007】
しかしながら、どの程度まで冷媒を追加充填するかは極めて難しい問題であり、単に追加充填しただけでは、却って特に夏期に圧縮機が高圧カットによって停止してしまうことが発明者らによって確認されている。
【0008】
冷凍サイクル内に冷媒を注入する方法としては、特許文献1に記載されているような、過冷却度を有するサブクールサイクル内の膨張弁入口側の冷媒が、気液二相状態と液相状態との何れの状態であるのかを検出し、前記膨張弁入口側の冷媒が気液二相状態の時には、この膨張弁入口側の冷媒が液相状態に変わるまで前記サブクールサイクル内に冷媒を封入し、前記膨張弁入口側の冷媒が液相状態の時には、この膨張弁入口側の冷媒が気液二相状態に変わるまで前記サブクールサイクル内の冷媒を排出し、その後、予め定められた過冷却度に対応する所定量の冷媒を前記サブクールサイクル内に封入する冷媒封入方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-101940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、どの程度まで冷媒を追加充填するかについては何ら解決手法を開示するものではなく、サブクール装置を有する冷熱供給システムに対して、サブクール装置による省エネ効果を実現するためにどの程度の冷媒を追加充填すればよいかは、依然として解決すべき課題であった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、室外側に設けられている凝縮器と室内側の蒸発器との間に、前記凝縮器からの冷媒に対して水の蒸発潜熱によって冷却処理を行なうサブクール装置を備えた冷熱供給システムにおいて、適切量の冷媒を充填することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、室外側に設けられている凝縮器と室内側の蒸発器との間に、前記凝縮器からの冷媒に対して冷却処理を行なうサブクール装置を備え、前記サブクール装置で降温した冷媒を前記蒸発器に送るように構成された冷熱供給システムにおける、冷媒の充填方法であって、前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管に冷媒状態確認手段を設け、前記凝縮器が置かれた空間が所定雰囲気の下で、前記サブクール装置を停止し、圧縮機を作動させた状態で、冷媒を注入するようにし、前記冷媒状態確認手段で確認される冷媒が液相のみであり、かつ前記圧縮機出口側の冷媒の圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、前記冷媒を注入することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、前記凝縮器が置かれた空間が所定雰囲気の下で、サブクール装置を停止し、圧縮機を作動させた状態で、前記圧縮機出口側の冷媒の圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、冷媒を注入するようにしたので、追加充填して単に過充填しただけでは、例えば夏期において高圧カットが起こってしまう事態を防止して、適切な量の冷媒を過充填することができる。したがって、サブクール装置による省エネ効果を享有しつつ、サブクール装置を有する冷熱供給システムを安全に運転することが可能である。
なお冷媒状態確認手段としては、例えば市販のサイトグラスを用いることができる。もちろん冷媒状態確認手段は、これに限らず冷媒の相状態、すなわち少なくとも液相か気液二相状態かを確認できるものであればよい。
【0014】
前記所定雰囲気は、前記冷熱供給システムが設置される地域の年間の最高気温の温度雰囲気であってもよい。ここで冷熱供給システムが設置される地域は、例えば県、市、区、町、村を例示できる。年間の最高気温とは、前記冷熱供給システムが設置される年、あるいはその前年の年間最高気温が例示できる。また平年値であってもよい。さらにまた前記冷熱供給システムが設置される地域の最高気温の上位10位以内の温度の温度雰囲気としてもよい。さらに安全を見てその年間の最高気温程度よりも、例えば3~5℃高い温度としてもよい。より高圧カットを確実に防ぐにはさらに高い温度雰囲気にすることが良い。またいわゆる夏期雰囲気としてもよい。
【0015】
また所定雰囲気の温度を具体的に32℃以上としてもよい。好ましくは35℃以上、より好ましくは38℃以上の温度雰囲気とするのがよい。
【0016】
前記所定雰囲気は、少なくとも前記凝縮器が置かれた空間を仕切り材で囲って形成した空間内の雰囲気であってもよい。いわば疑似的、人工的に所定雰囲気を造り出してもよい。ここで少なくとも凝縮器が置かれた空間を仕切り材で囲って形成するとは、たとえばビニールシートやパネル材などで凝縮器を囲ったり、覆ったりして凝縮器が置かれた空間を所定雰囲気にすることをいう。凝縮器は熱を発生しているので、そのようなシート材などで囲むことで、外部からエネルギーを付与することなく、容易にそのような所定雰囲気にすることが可能である。したがって四季、寒冷地、温暖地を問わず、本発明を好適に実施することができる。もちろん当該仕切り材で囲って形成した空間内をヒータなどで加熱するようにしてもよい。
【0017】
前記仕切り材で囲って形成された空間は、一部が開放自在であるようにしてもよい。すなわち、所定雰囲気する場合に、想定した温度雰囲気を超えて高温になる場合には、前記シート材の一部を開放することでそのような雰囲気制御が可能である。すなわち、前記仕切り材で囲って所定雰囲気とした空間は、一部が開放自在とすることが好ましい。これによって例えば、疑似的に例えば夏期雰囲気をより適切かつ容易に実現することができる。
【0018】
前記冷媒を注入するにあたっては、圧縮器入口側に通常設定されている冷媒充填ポートからガス状態で注入しても良い。ガス状態で注入する場合、冷媒は複数の物質が混合したものである場合が多く、注入の際に冷媒の組成が変わってしまうことを抑制するために、液状態で凝縮器の下流側から注入することが好ましい。すなわち、例えば前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管に対して冷媒を注入することがよい。また、サブクール装置を既存の冷凍サイクルシステムに後付けで設置する場合、サブクール装置の設置箇所に近い凝縮器側での注入とするほうが、工事範囲を小さくすることができる。
【0019】
前記冷媒配管中の冷媒の圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、前記冷媒を注入するにあたっては、例えば圧力計を監視しておき、その経時波形の変化によって判断したり、あるいは定量的に、圧縮機に設定されている停止圧力の85%以上の圧力値になったら、冷媒の注入を停止するようにしてもよい、
【0020】
また別な観点によれば、本発明は、室外側に設けられている凝縮器と室内側の蒸発器との間に、前記凝縮器からの冷媒に対して冷却処理を行なうサブクール装置を備え、前記サブクール装置で降温した冷媒を前記蒸発器に送るように構成された冷熱供給システムにおける、冷媒の充填システムであって、前記凝縮器とサブクール装置との間の冷媒配管内の冷媒状態を確認するための冷媒状態確認手段と、前記冷媒配管に対して冷媒を注入する冷媒注入装置と、圧縮機出口側の冷媒配管内の冷媒の圧力を検出する圧力検出装置と、前記冷媒状態確認手段で確認される冷媒が液相のみであり、かつ前記圧力検出装置で検出される圧力が前記圧縮機の停止直前の圧力値となるまで、前記冷媒を注入するように前記冷媒注入装置による冷媒注入量を制御する制御装置と、を有することを特徴としている。
【0021】
かかる冷媒の充填システムによれば、作業員個々の判断に左右されることなく、常に所定の過充填冷媒量を冷媒配管に充填することが可能である。
【0022】
この場合、冷媒状態確認手段によって冷媒が液相のみであるかどうかについては、例えば冷媒状態確認手段にサイトグラスを用いた場合には、サイトグラスを介して視認できる冷媒の相状態をイメージセンサで撮像しておき、気泡がない状態を検出したら信号を出力するようにし、当該信号に基づいて例えば次の圧力値による制御を行うようにしてもよい。
【0023】
また圧力値による制御については、所定の値以上になったら注入を停止する圧力波形を監視しておき、急峻な立ち上がり波形を検出した時点で注入を停止するような制御を行うことが提案できる。なお所定の値以上の上限値を超えてしまった場合には、適宜冷媒を抜く動作を実行して、細かいチューニングを実施するようにしてもよい。
さらに前記した冷熱供給システムの冷媒充填システムにおいては、前記サブクール装置を停止し、前記圧縮機を作動させた状態で、前記冷媒が注入されるように構成してもよい。
また当該冷媒の注入は、前記凝縮器が置かれた空間が所定雰囲気の下で行われるように構成してもよい。
さらにまた前記圧縮機の停止直前の圧力値は、当該圧縮機に設定されている停止圧力の85%以上としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、適切な過充填量の冷媒を、冷熱供給システムに供給することができ、それによってサブクール装置の省エネ効果を享有しつつ冷熱供給システムを安全に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態にかかる冷媒充填方法が実施される冷熱供給システムの系統の概略図である。
図2図1の冷熱供給システムにおける室外機周辺を仕切り材で囲った様子を示す側面図である。
図3】圧縮機が高圧カットされるときの圧縮機入口側と出口側における冷媒圧力の経時変化を示すグラフである。
図4】適正冷媒過充填量時の圧縮機入口側と出口側における冷媒圧力の経時変化を示すグラフである。
図5】実施の形態にかかる冷媒充填システムが適用された冷熱供給システムの系統の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態にかかる冷媒充填方法について説明する。図1は、実施の形態にかかる冷媒充填方法が実施される冷熱供給システム1の系統の概略図であり、この例では店舗2内に設置されている冷蔵ショーケース3に対して冷熱を供給するシステムとして構成されている。冷蔵ショーケース3には、例えば精肉、鮮魚などの冷蔵保存の食品4が陳列されている。
【0027】
冷熱供給システム1は、圧縮機10、室外機11に設けられている凝縮器12、膨張弁として機能する電磁弁13、冷蔵ショーケース3に設けられた蒸発器14とを有している。室外機11には、ファン15が設けられており、凝縮器12で発生する熱を屋外に放出する。
【0028】
凝縮器12と蒸発器14との間には、凝縮器12からの冷媒に対して水の蒸発潜熱によって冷却処理を行なうサブクール装置20が設けられている。このサブクール装置20は、凝縮器12からの冷媒が流れる冷媒配管16から続く配管22に対して、ケーシング23内において散水装置24から水を散水し、その際に発生する水の蒸発潜熱によって配管22内の冷媒を過冷却するようになっている。散水装置24には、ポンプ25によって給水管26から水が供給される。配管22の下側にはドレンパン27が設けられ、散水された水を回収しドレン管28から排出する。散水装置24の上側にはファン29が設けられており、ケーシング23内の熱が外部に放出される。
【0029】
このサブクール装置20によって過冷却された冷媒は、配管22から続く冷媒配管31を流れて蒸発器14に供給される。電磁弁13は冷媒配管31に設けられ、電磁弁13を通過して低温になった冷媒は蒸発器14によって冷蔵ショーケース3に対して冷熱が供給される。蒸発器14を経た低圧の冷媒は、冷媒配管32によって圧縮機10に送られる。そして圧縮機10で圧縮された高温高圧の冷媒は、冷媒配管33を流れて室外機11の凝縮器12へと送られる。
【0030】
かかる構成を有するサブクール装置20を備えた冷熱供給システム1においては、既述したように、サブクール装置20の性能を適切に発揮するために冷媒の充填量は、通常の冷媒量よりも多く冷媒を充填することが効果的であると考えられる。しかしながら、既述したように、どの程度まで冷媒を追加充填するかは難しい。
【0031】
そこで実施の形態にかかる冷媒の充填方法は、例えば次のようなプロセスを通じて行われる。まず凝縮器12とサブクール装置20との間の冷媒配管16に、冷媒状態確認手段として、例えばサイトグラス41を設ける。また冷媒配管16には、配管内の圧力を検出する圧力計42を設ける。そして凝縮器12を有する室外機11の周辺を、図2に示したように、仕切り材43で囲って閉鎖空間Sにする。
【0032】
この場合、本実施の形態では、室外機11は凝縮器12を有しているが、圧縮機10は室外機11とは別に設置されている。かかる場合、圧縮機10を含むように仕切り材43で囲ってもよい。すなわち、閉鎖空間S内に圧縮機10を収容するようにしてもよい。また圧縮機と凝縮器を備えた室外機の場合には、当該室外機を閉鎖空間S内に収容する。また閉鎖空間S内には、図2に示したように、サブクール装置20を収容するようにしてもよい。
【0033】
仕切り材43は、例えばビニールシートが好適であるが、これに限らず他のシート材やパネル材などを用いてもよい。組み立て、撤去が容易な仕切り材が適している。また閉鎖空間Sは気密に閉鎖する空間である必要はなく、適宜隙間があるものがよい。また仕切り材43で閉鎖空間Sを構成する場合、一部が開放自在な構成としておくことがよい。例えばビニールシートで構成した場合には、一部をめくることで、簡単にそのような開放部を形成することができる。要は閉鎖空間S内の雰囲気を適宜放出して閉鎖空間S内の温度が調節できるものがよい。
【0034】
そして例えば冷媒配管16におけるサイトグラス41の上流側に、冷媒注入装置50、冷媒抜き取り装置60を設置する。冷媒注入装置50は可変バルブ51を有する注入管52を有し、注入管52が冷媒配管16に接続されている。また冷媒抜き取り装置60は可変バルブ61を有する抜き取り管62を有し、抜き取り管62が冷媒配管16に接続されている。なお図2では、単純に冷媒配管16に注入管52、抜き取り管62を接続した様子を描図しているが、実際の作業では冷媒配管16に設けられた専用のポート(図示せず)に、これら注入管52、抜き取り管62が接続される。
【0035】
次に具体的な作業について説明すると、まずサブクール装置20を停止した状態で圧縮機10を作動させる。これによって冷媒は、冷媒配管33、凝縮器12、冷媒配管16、作動していないサブクール装置20の配管22、冷媒配管31、電磁弁13、蒸発器14、冷媒配管32を流れて圧縮機10に戻る冷凍サイクルが実現される。
【0036】
そうすると凝縮器12を有する室外機11からの放熱で閉鎖空間S内の雰囲気は、疑似的に夏期雰囲気とすることができる。疑似的な夏期雰囲気としては、例えば閉鎖空間S内の気温が38℃~42℃となる雰囲気をいう。そのような温度範囲に閉鎖空間S内の雰囲気を維持するには、適宜仕切り材43の一部を開放して、閉鎖空間S内の雰囲気を適宜室外に放出するようにすれば、容易に実現でき、かつ外部からのエネルギーが不要である。
【0037】
この状態で冷媒注入装置50から冷媒を冷媒配管16に注入していく。このときサイトグラス41によって確認される冷媒が液相となるまで注入する。そしてその後さらに圧力計42で監視される冷媒配管16内の圧力が、圧縮機10の停止直前の圧力値となるまで注入する。
【0038】
すなわち、サブクール装置20を停止した状態で圧縮機10を作動させ、冷蔵ショーケース3を所定温度、例えば-2℃~2℃となるように、電磁弁13のON-OFF制御を行うと、電磁弁13がOFF(閉鎖)の時には、圧縮機10の出口側圧力が上昇し、電磁弁13がON(開放)すると圧縮機10の出口側圧力が低下する。このときの圧力変化を示すと図3のグラフに示したようになる。同グラフ中、P1は圧縮機10の入口側圧力、P2は圧縮機10の出口側圧力を示す。
【0039】
しかしながら、冷媒の充填量が適正値を超えた過充填量の場合、そのうちに圧縮機10に定められた圧縮機10の出口側圧力P2が、停止圧力値(例えば4.1Mpa)を超える状態が発生し、以後圧縮機10が停止してしまう(図3のグラフでは1000秒経過時点)。これは冷媒の過充填量が多すぎたため発生したものである。
【0040】
したがって、そのように圧縮機10が停止する直前で、冷媒の充填を停止する。そのように圧縮機10の出口側圧力P2が停止直前の圧力値となった時点で冷媒の充填を停止するのは、例えば幾度かそのような充填作業を繰り返し、圧力計42のからの圧力値をモニタリングしながら、圧縮機10が停止する直前の値を知見し、その後その値となったら冷媒の注入を停止すればよい。なお冷媒を充填しすぎた場合には、適宜冷媒抜き取り装置60から冷媒を抜き出して、再度充填作業を実施する。
【0041】
しかしながら、そのような作業を繰り返すのは労を多とするので、圧力計42の圧力値をモニタリングしながら、定量的に例えば圧縮機10のメーカー側で設定されている停止圧力の90%以上の圧力値となったら、冷媒の注入を停止するようにしてもよい。
【0042】
あるいは、圧力計42からの圧力値の経時変化をモニタリングし、通常よりも急峻な上昇ピークが発生したら、冷媒の注入を停止するようにしてもよい。
【0043】
そのようにして、適切な冷媒の過充填量を冷媒配管16に注入した場合の圧縮機10の圧力変化は図4のグラフに示したようになる。このようにして適切な冷媒の過充填量を充填した後、サブクール装置20を作動させて、通常の冷熱供給運転を実施すれば、夏期においても、圧縮機10が高圧カットされることなく、しかもサブクール装置20による省エネ効果を享有しつつ冷熱供給システム1を安全に運転することが可能になる。
【0044】
図5は、前記した実施の形態にかかる冷媒充填方法を、半ば自動的に実施することが可能な冷媒充填システムの構成の概略を示しており、図中、前記した実施の形態にかかる冷媒充填方法の説明の際に用いた装置、部材と同一の符号で示されるものは同一の装置、部材を示し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
この冷媒充填システムでは、制御装置70によって、冷媒注入装置50、冷媒抜き取り装置60の各可変バルブ51、61の開閉及び開度が調整される。制御装置70には、サイトグラス41による冷媒の相状態の確認を行うイメージセンサ71からの検出信号が入力されるようになっている。イメージセンサ71は、例えばCCDカメラによって構成され、CCDカメラで撮像したサイトグラス41の画像信号は制御装置70に出力される。制御装置70では、入力された画像信号に対して演算処理を行い、気相、気液二相、液相を判別する。また制御装置70には、圧力計42からの圧力信号が入力される。
【0046】
そして制御装置70では、入力されたイメージセンサ71からの画像信号によって液相であることが確認され、かつ圧力計42からの圧力信号が、例えば所定の圧力値(例えば圧縮機10のメーカーで事前に設定した圧縮機停止圧力値)の90%以上になった時点で、可変バルブ51を閉鎖して冷媒注入装置50からの冷媒の充填を停止する制御が行われる。
【0047】
かかる場合、既述したように、圧力計42からの圧力値の経時変化をモニタリングし、通常よりも急峻な上昇ピークが発生したら、冷媒の注入を停止するように制御してもよい。例えば図3に示した開始1000秒後の急峻な圧力の立ち上がりを検出した際に、可変バルブ51を閉鎖するようにしてもよい。もちろん併せて冷媒抜き取り装置60の可変バルブ61も制御して充填する冷媒量を微調整することも可能である。
【0048】
このような制御装置70によって制御される冷媒充填システムによれば、作業員個々の判断に左右されることなく、常に所定の過充填冷媒量を冷媒配管に充填することが可能である。またそれに要する時間も短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、サブクール装置を有する冷熱供給ステムの冷媒の充填に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 冷熱供給システム
2 店舗
3 冷蔵ショーケース
4 食品
10 圧縮機
11 室外機
12 凝縮器
13 電磁弁
14 蒸発器
15、29 ファン
16、31、32、33 冷媒配管
20 サブクール装置
22 配管
23 ケーシング
24 散水装置
25 ポンプ
26 給水管
27 ドレンパン
28 ドレン管
41 サイトグラス
42 圧力計
43 仕切り材
50 冷媒注入装置
51、61 可変バルブ
52 注入管
62 抜き取り管
70 制御装置
71 イメージセンサ
S 閉鎖空間
図1
図2
図3
図4
図5