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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240430BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B1/018 515
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020083642
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021177848
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503468972
【氏名又は名称】小林 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/043340(WO,A1)
【文献】特開平06-296619(JP,A)
【文献】特開2018-068474(JP,A)
【文献】特開2007-289593(JP,A)
【文献】特開2018-000340(JP,A)
【文献】特開2016-087450(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28-17/295
A61B 17/32-17/326
A61B 18/14
A61B 1/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するコイルシースと、
前記コイルシース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記コイルシースの後端部に設けられ前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、
前記コイルシースの先端部または当該先端部に設けられた連結用筒状部に連結された筒部と前記筒部より先端側に延在対向する一対の腕部とを有する先端処置具支持部材と、
一対の先端処置片よりなり当該一対の先端処置片が前記一対の腕部間でX状に交差し交差部が前記一対の腕部に軸支され開閉して生体患部の処置を行う先端処置具と、
前記一対の先端処置片の各基端部と前記操作ワイヤの先端部に設けられた進退伝動リンクの先端部とを連結するように介設され前記操作ワイヤの進退動作力を受け前記一対の先端処置片に伝達する一対の開閉作動用リンクとを備え、
前記先端処置具支持部材が前記腕部間で前記筒部が半割にされた一対の半割体を有し、各前記半割体には前記腕部の対向面の先端側の所要位置に凸設され前記一対の先端処置片が所要開度になるときに一対の開閉作動用リンクと当接する開度制限用突起を有し、前記一対の半割体が前記コイルシースの先端部または前記連結用筒状部の先端部に被嵌した状態に重ね合わせ一体に設けられている
ことを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記コイルシースの先端部に前記先端処置具支持部材の前記筒部が固定状態に被嵌されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記コイルシースの先端部に前記先端処置具支持部材の前記筒部が回動可能に被嵌されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記コイルシースまたは前記連結用筒状部に先端部を避けて先端小径部が設けられ、
各前記半割体の内周面後端部より筒内方へ突出して設けられ前記先端小径部に被嵌する半円環状の軸受部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記コイルシースに樹脂製シースが被覆されているとともに、前記操作部に前記コイルシース内に処置液を注入する注液口を有し、
各前記半割体の前記腕部の対向面の幅中央部に処置液が流れるよう液送用凹条部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記液送用凹条部は、前記先端処置具を前記先端処置具支持部材に支持する支持軸の両側に処置液が迂回して流れる幅広部を有している
ことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記一対の半割体には、半割面に位置決め用の凹部と凸部とが分配して設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡のチャネル内に挿脱され、内視鏡の視野内で病変部位の処置を行う先端処置具を有する内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用処置具は、シースの先端部に先端処置具を有し、シースを内視鏡のチャネル内に挿脱可能に収容され、内視鏡の挿入部とともに体腔内に挿入され、内視鏡の視野内で内視鏡の挿入部の先端より延出する先端処置具により、体腔内の病変部位の直接診察や治療(生体組織の患部の除去、サンプル採取、切除、止血等)を低侵襲で行うために使用される。一般に、内視鏡は医師が操作し、処置具は別の医師また技師が連繋操作する。
【0003】
以下の特許文献1-6の内視鏡用処置具に関する説明で使用する符号は、各特許文献中で使用している符号である。
【0004】
特許文献1に示される内視鏡用鋏(内視鏡用処置具)100は、一対の鋏片12,22が所要最大開き角度に開いたときに、一方の鋏片12の基端部に設けられた2つのストッパー15,16と、他方の鋏片22の基端部の刃側端縁とが当接するように構成されている。ストッパー15,16は、一方の鋏片12に穿設された小孔に差し込み固定される小径部である支持部15b,16bと、小径部の一端に設けられ一方の鋏片12に密着される大径部である係合部15a,16aとからなる。一対の鋏片12,22とストッパー15,16は鋏片刃部を除いて絶縁性被膜が形成され焼灼された生体組織が付着しないようになっている。
【0005】
特許文献2に示される内視鏡用鋏(内視鏡用処置具)は、一対の鋏片10,11が所要最大開き角度に開いたときに、一方の鋏片11の基端部に設けられた直方体形状のストッパー14の1つの広幅な面と、他方の鋏片10の基端部の刃側端縁とが当接するように構成されている。内視鏡用鋏は、内視鏡用電気焼灼切開鋏であり、一対の鋏片10,11とストッパー14は鋏片刃部を除いて絶縁性被膜が形成されている。また、直方体形状のストッパー14に替えて円柱状のストッパー20が設けられる。
【0006】
特許文献3に示される内視鏡用処置具は、コイルシース11の先端部に連結用筒状部16の筒内径が大きい後部が被嵌し溶接され、そして、連結用筒状部16の内径が小さい先部内に先端本体15が強制嵌入されることにより、先端本体15の外周面の先端部と後端部に設けられた鍔部15aと鍔部15bとの間の小径部に連結用筒状部16の内径が小さい先部が緩く嵌合している。
【0007】
また、特許文献3に示される内視鏡用処置具は、先端処置片13と支軸14と先端本体15のそれぞれに電気絶縁被膜が設けられているとともに、可撓性コイルシース11の外周面に全長にわたり電気絶縁性の絶縁チューブ18を被覆した構成であり、もって、操作ワイヤ12を通じて先端処置片13に高周波電流を通電し、先端処置片13にて止血効果等を得る処置を行えるようになっている。
【0008】
また、特許文献4に示される内視鏡用処置具は、先端支持枠41の一対の腕部の間に一対の鋏片(先端処置片)36a,36bが配設され回動軸35で串刺し状に連結され、先端支持枠41の小径筒部に後端より細筒部材40aと抜け止め部材41bが順に被嵌され、かつ抜け止め部材41bが先端支持枠41の小径筒部に溶接されているとともに、連結用筒状部40の太筒部材40bの後部がシース31の先端部に被嵌され溶接され、次いで連結用筒状部40の太筒部材40bの先部が抜け止め部材41bと細筒部材40aの中程にかけて被嵌され、太筒部材40bと細筒部材40aとが溶接され連結用筒状部40を構成している。もって、連結用筒状部40は、先端支持部材41とシース31とを相対回転可能に連結している。
【0009】
特許文献5に示される内視鏡用処置具は、先端支持部材14の一対の腕部の間に一対の鋏片(先端処置片)36a,36bが配設され回動軸35で串刺し状に連結され、コイルシース31のリング42が設けられた先端小径部が先端支持部材14の筒部内に挿入された状態で、一対の半割リング43が先端支持部材14の後端面に重ねられ溶接されてなる。もって、先端支持部材14とコイルシース31は、相対回転可能であり、かつ軸方向に相対移動可能であり、さらにリング42と一対の半割リング43とにより離脱不能である。
【0010】
特許文献6に示される内視鏡用処置具は、内視鏡用電気焼灼切開鋏であり、開閉可能な一対の鉗子片3aを有する鉗子部3が生理食塩水を送水可能なシース2の先端の先端カバー30より突出状態に設けられ、シース2内に挿通された操作部材4dを前進後退により鉗子片3aが開閉するようになっており、先端カバー30内に、貫通孔7aを有しかつ貫通孔7aに操作部材4dが挿通した状態に流路形成部材7を備え、操作部材4dには大径部4d2を備えてなり、操作部材4dと貫通孔7aとの環状の隙間を第1の送液孔9とされ、操作部材4dと先端カバー30の先端部内周面との環状の隙間を第2の送液孔8とされ、操作部材4dが前進し大径部4d2が流路形成部材7に当接するときは、第1の送液孔9を閉塞するよう構成されている。一対の鉗子片3aを有する鉗子部3は、鉗子片刃部を除いて絶縁性被膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-87171号公報
【文献】特許第5463363号公報
【文献】特開2007-289593号公報
【文献】特開2018-33501号公報
【文献】特開2018-68474号公報
【文献】再表2017-134757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に示される内視鏡用鋏は、極小の先端処置片の基端側の所要の2カ所に2つの小孔を穿設し、さらに2つの小さいリベット形状のストッパーを差し込み嵌着する構成であり、ストッパーの製作が難しく、一対の先端処置片が開いてストッパーが先端処置片と当接したときにストッパーが大径部と小径部との連結部に剪断力が加わり剪断する恐れがある。
【0013】
特許文献2に示される内視鏡用鋏は、極小の先端処置片にさらに小さい直方体形状のストッパーを載せて位置をずらさずにレーザー溶接することは非常に困難である。他方、先端処置片にストッパーを一体に形成する削り出し加工は、普通の機械ではできず、5軸のマシニングを使うことで実現できるものである。したがって、加工が難しいことに加え時間とコストがかかるという課題がある。
【0014】
特許文献3に示される内視鏡用処置具は、先端本体15と連結用筒状部16との嵌合が難しい。すなわち、先端本体15の鍔部15bの外径が連結用筒状部16の先部の内径よりも大きく、かつ先端本体15の鍔部15a,15b間の外径が連結用筒状部16の先部の内径がよりも小さいことが条件になっており、加えて極小部品であるため、寸法管理や組立が難しく、一対の先端処置片13を開くときに鍔部15bが連結用筒状部16の先部に嵌入してしまうと連結用筒状部16に対して先端本体15が回転不能になり、したがって、一対の先端処置片13の開閉方向を患部に適切に対応させることができない恐れがある。そこで、鍔部15bの寸法を十分大きく取れて組み付けが容易であり、先端本体15がコイルシース11に対して円滑に相対回転可能である構成に改良し、できれば連結用筒状部16を無くし部品点数を減らし、組付性を向上し製造コストを低減したいという課題がある。
【0015】
特許文献4に示される内視鏡用処置具では、部品点数が多く、組付工数が多い。一対の半割リング43が極小部品であり、組み付けが難しい。そこで、細筒部材40aと太筒部材40bと抜け止め部材41bとを無くすことができる構成に改良し、部品点数を減らし、組付性を向上し製造コストを低減したいという課題がある。
【0016】
特許文献5に示される内視鏡用処置具は、一対の半割リング43が極小部品であり、組み付けが難しい。そこで、リング42と一対の半割リング43とを無くすことができる構成に改良し、部品点数を減らし、組付性を向上し製造コストを低減したいという課題がある。
【0017】
特許文献6に示される内視鏡用処置具は、液流量と流れ方向が切り変わるが、いずれの場合も、鉗子片3aの先端から第2の送液孔8までの距離が長いこと、および液流が先端カバー30の内部で絞られかつ曲がりくねって流れるので、第2の送液孔8から流出する液流が大きく広がり、流速が無いので、生体の被処置部位の流血や淀み、濁りを効果的に洗い除けることができず、焼灼切開に効果を発揮が十分であるとは言えないという課題がある。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、一対の先端処置片の最大開度を所定角度に制限できるとともに、簡素な連結構造の実現と、組立の容易化、コスト低減が実現できる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様に係る内視鏡用処置具は、上記目的を達成するため、可撓性を有するコイルシースと、前記コイルシース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、前記コイルシースの後端部に設けられ前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、前記コイルシースの先端部または当該先端部に設けられた連結用筒状部に連結された筒部と前記筒部より先端側に延在対向する一対の腕部とを有する先端処置具支持部材と、一対の先端処置片よりなり当該一対の先端処置片が前記一対の腕部間でX状に交差し交差部が前記一対の腕部に軸支され開閉して生体患部の処置を行う先端処置具と、前記一対の先端処置片の各基端部と前記操作ワイヤの先端部に設けられた進退伝動リンクの先端部とを連結するように介設され前記操作ワイヤの進退動作力を受け前記一対の先端処置片に伝達する一対の開閉作動用リンクとを備え、前記先端処置具支持部材が前記腕部間で前記筒部が半割にされた一対の半割体を有し、各前記半割体には前記腕部の対向面の先端側の所要位置に凸設され前記一対の先端処置片が所要開度になるときに一対の開閉作動用リンクと当接する開度制限用突起を有し、前記一対の半割体が前記コイルシースの先端部または前記連結用筒状部の先端部に被嵌した状態に重ね合わせ一体に設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の態様に係る内視鏡用処置具は、第1の態様の構成に加え、前記コイルシースの先端部に前記先端処置具支持部材の前記筒部が固定状態に被嵌されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の態様に係る内視鏡用処置具は、第1の態様の構成に加え、前記コイルシースの先端部に前記先端処置具支持部材の前記筒部が回動可能に被嵌されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の態様に係る内視鏡用処置具は、第3の態様の構成に加え、前記コイルシースまたは前記連結用筒状部に先端部を避けて先端小径部が設けられ、各前記半割体の内周面後端部より筒内方へ突出して設けられ前記先端小径部に被嵌する半円環状の軸受部を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の態様に係る内視鏡用処置具は、第1ないし4のいずれか一態様の構成に加え、前記コイルシースに樹脂製シースが被覆されているとともに、前記操作部に前記コイルシース内に処置液を注入する注液口を有し、各前記半割体の前記腕部の対向面の幅中央部に処置液が流れるよう液送用凹条部を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の態様に係る内視鏡用処置具は、第5の態様の構成に加え、前記液送用凹条部は、前記先端処置具を前記先端処置具支持部材に支持する支持軸の両側に処置液が迂回して流れる幅広部を有していることを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の態様に係る内視鏡用処置具は、第1ないし6のいずれか一態様の構成に加え、前記一対の半割体には、半割面に位置決め用の凹部と凸部とが分配して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、一対の先端処置片の最大開度を所定角度に制限できるとともに、簡素な連結構造の実現と、組立の容易化、コスト低減が実現できる内視鏡用処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態1に係る内視鏡用処置具を含む内視鏡システムを説明するための図である。
図2】本発明の実施形態1に係る内視鏡用処置具の全体図である。
図3】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具に係り、図3(A)は先端処置具が閉じた状態の処置具先端部を示す正面図、図3(B)は先端処置具が閉じた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図3(C)は先端処置具が開いた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図3(D)は図3(A)におけるIIId-IIId矢視縦断図である。
図4】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の先端処置具支持部材に係り、図4(A)は先端処置具支持部材を構成する一対の半割体が重なった状態を示す正面図、図4(B)は先端処置具支持部材を構成する一方の半割体の分割面側から視た図、図4(C)は先端処置具支持部材を構成する他方の半割体の斜視図、図4(D)は一方の半割体の斜視図である。
図5】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の先端処置具支持部材に係り、図5(A)は一対の先端処置片が最大開度に制限される状態の正面図、図5(B)は一対の先端処置片が中開度に制限される状態の正面図、図5(C)は一対の先端処置片が小開度に制限される状態の正面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る内視鏡用処置具の先端処置具が開いた状態の先端部を示す縦断正面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る内視鏡用処置具の全体図である。
図8】本発明の実施形態3の内視鏡用処置具の先端部に係り、図8(A)は閉じた状態の先端処置具の正面図、図8(B)は最大開度になる手前の開いた状態の先端処置具の縦断正面図、図8(C)は最大開度となるように開いた状態の先端処置具の縦断正面図、図8(C)は図8(A)におけるVIIId-VIIId矢視縦断図である。
図9】本発明の実施形態3の内視鏡用処置具の先端処置具支持部材に係り、図9(A)は先端処置具支持部材を構成する一対の半割体が重なった状態を示す正面図、図9(B)は先端処置具支持部材を構成する一方の半割体の分割面側から視た図、図9(C)は先端処置具支持部材を構成する他方の半割体の斜視図、図9(D)は一方の半割体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る内視鏡用処置具に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、先端処置具が位置する側を先端側、操作部が位置する側を基端側と呼ぶ。
【0029】
[実施形態1]
[内視鏡システム]
図1は実施形態1に係る内視鏡用処置具が適用される内視鏡システム1を示す。内視鏡システム1は、生体の体腔内に挿入するための挿入部2と、基端部に設けられ挿入部2の先端を上下左右方向に湾曲操作するためのダイヤルを有する内視鏡操作部3と、挿入部2と内視鏡操作部3との間を接続するように配置された処置具導入部4とを備え、処置具導入部4から挿入部2の先端に向かって長手方向に形成された内視鏡チャネル5が形成され、内視鏡チャネル5内に、後述する内視鏡用処置具10の生体患部の処置を行う先端処置具としての一対の先端処置片(鋏片)15,16およびシース11を挿通し操作部13より操作するように構成されている。
【0030】
[内視鏡用処置具の基本的構成]
図2は実施形態1に係る内視鏡用処置具10を示す。内視鏡用処置具10は、内視鏡用電気焼灼切開鋏であり、一対の先端処置片15,16で体腔内の生体組織を挟みつつ所要の電流を通電し生体組織を焼灼し止血しつつ切開するものである。
【0031】
内視鏡用処置具10は、内視鏡チャネル5に挿脱される可撓性を有する細長いシース11と、シース11内に進退可能に配置された操作ワイヤ12と、操作ワイヤ12を進退操作および回転操作する操作部13と、シース11の先端に設けられた先端処置具支持部材14と、先端処置具支持部材14に支持軸18で回動可能に支持される先端処置具としての一対の先端処置片15,16とを備える。
【0032】
シース11は、長さが500~2000mmの、可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状体である。本実施形態のシース11は、コイルシース11aと、コイルシース11aの外面に被さる樹脂製外被11bとで構成されている。樹脂製外被11bは、PTFE、PEEK、PPS、ポリエチレン、またはポリイミド、等よりなり可撓性・電気絶縁性を有する。コイルシース11aは、例えば断面形状が矩形であるステンレス線等の金属材を密着巻きしてなるコイルシースが用いられることが好ましい。
【0033】
内視鏡用処置具10は、コイルシース11aの内面と、先端処置具支持部材14の外面に電気絶縁被膜が形成されている。樹脂製外被11bが設けられない構成では、コイルシース11aの内外面に電気絶縁被膜が形成されていてもよい。
【0034】
操作ワイヤ12は、シース11内に進退可能に緩く配置され、導電性であって回転追従性が大きなトルクワイヤからなる。操作ワイヤ12は、例えば、全長がステンレス製であるか、またはステンレス製の基端側部分とナイチノール(ニッケルチタン合金)製の先端側部分とをステンレスパイプで接続してなるものであっても良い。
【0035】
操作部13は操作部本体13aとスライダ13bとを有する。操作部本体13aはコイルシース11aの基端に先端部が連結されている。スライダ13bは、操作部本体13aの側面部に設けられたスリットに対応する範囲で操作部本体13aに被嵌してスライドするように設けられ、操作部本体13aの先端面から内部に導入された操作ワイヤ12の基端と連結されている。
【0036】
操作部13は、操作部本体13aとスライダ13bとを相対的にスライド操作(進退操作)することによって、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対移動させることができ、スライダ13bを図中の左方向(先端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を先端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を開くことができ、また、スライダ13bを図中の右方向(基端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を基端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を閉じることができるように構成されている。もって、操作部13は、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対的に進退操作および回転操作すること、さらに、一対の先端処置片15,16を開閉することができるよう構成されている。
【0037】
なお、操作ワイヤ12とコイルシース11aは、基端部同士が一体に回転可能である構成と、操作ワイヤ12が全長にわたりコイルシース11aに対し回転可能である構成のいずれであっても良い。
【0038】
図3(A)に示すように、先端処置具支持部材14は、コイルシース11aの先端部に被嵌・連結された筒部14aと、筒部14aより先端側に延在する対向一対の腕部14bとを有する。一対の先端処置片15,16は先端処置具支持部材14に開閉可能に支持される。一対の先端処置片15,16は、中程(交差部)15a,16aと基端側部分15b,16bと先側部分15c,16cとに区分される形状を有する。先端側部分15c,16cは弓形でかつ先端外側に角状の突出部がある形状である。先端側部分15c,16cを閉じた状態で針状メスやマーカーとして使用でき、開閉すると鋏として使用できる。
【0039】
図3(B),(C),(D)に示すように、一対の先端処置片15,16の中程(交差部)15a,16aには軸孔を有し、2つの軸孔は合わされて先端処置具支持部材14の一対の腕部14b,14bの先端部間に位置され、かつ一対の腕部14b,14bの先端部に一軸上に設けられた一対の軸受用孔に合わされ、一方の軸受用孔より他方の軸受用孔まで支持軸18が通されてなる。支持軸18は一対の腕部14b,14bの軸受用孔に強制嵌着されてなるか、嵌着後にレーザー溶接により固着されている。支持軸18は、一対の先端処置片15,16の中程(交差部)15a,16aの軸孔に緩く嵌着されている。したがって、一対の先端処置片15,16は、中程(交差部)15a,16aが先端処置具支持部材14の一対の腕部14b,14b間に軸支され、先側部分15c,16cが開閉可能である。先側部分15c,16cが開閉側縁には鋏刃を有する鋏片として形成されている。なお、先側部分15c,16cは生検鉗子と形成されても良い。
【0040】
一対の先端処置片15,16の各基端部は、一対の開閉作動用リンク19,20の各先端部とピン軸22,23で連結され、さらに一対の開閉作動用リンク19,20の各基端部は進退伝動リンク21の先端部とピン軸24で連結され、進退伝動リンク21は操作ワイヤ12と連結されている。
【0041】
詳細には、一方の先端処置片15の基端側部分15bに設けられたピン軸孔と一方の開閉作動用リンク19の先端部に設けられたピン軸孔とにピン軸22が通され止着されることにより、一方の先端処置片15と一方の開閉作動用リンク19とが連結されているとともに、他方の先端処置片16の基端側部分16bに設けられたピン軸孔と他方の開閉作動用リンク20の先端部に設けられたピン軸孔とが重ね合され、これらピン軸孔にピン軸23が通され止着されることにより、他方の先端処置片16と他方の開閉作動用リンク20とが連結されている。したがって、先端処置片15,16の基端側部分15b,16bと開閉作動用リンク19,20は菱形に連鎖している。
【0042】
さらに、一対の開閉作動用リンク19,20の各基端部に設けられたピン軸孔が進退伝動リンク21の先端部に設けられたピン軸孔の両側に重ね合され、これら軸孔にピン軸24が通され止着されることにより、かつ一対の開閉作動用リンク19,20と開閉作動用リンク19とが連結されている。進退伝動リンク21は、外形がロッド状であり、基端面より軸方向に内方にワイヤ受け入れ穴を有し、ワイヤ受け入れ穴に操作ワイヤ12の先端部が嵌入され進退伝動リンク21の側面より締め付けねじをねじ込むか、あるいは銀ロウ付け、ハンダ付け、カシメ、等により連結固定され、もって、進退伝動リンク21と操作ワイヤ12とが連結されている。
【0043】
したがって、操作ワイヤ12がシース11に対して基端方向に相対移動されると、開閉作動用リンク19,20の交差角が小さくなると、先端処置片15,16の基端側部分15b,16bの交差角も小さくなり、これにより、先端処置片15,16の先側部分15c,16cが閉じていき(図3(B))、また、開閉作動用リンク19,20の交差角が大きくなると、先端処置片15,16の基端側部分15b,16bも交差角が大きくなり、これにより、先端処置片15,16の先側部分15c,16cが開いていく(図3(A))。もって、操作ワイヤ12がシース11に対して相対移動されると、先端処置片15,16の先側部分15c,16cが開閉するようになっている。
【0044】
その他の基本的構成を説明する。一対の先端処置片15,16はステンレス製またはナイチノール(ニッケルチタン合金)製である。一対の先端処置片15,16は、刃部同士が閉じ合さるときに刃部間を電流が流れるようになっている。さらに、先端処置具支持部材14の外面の電気絶縁被膜と、シース11の樹脂製外被11bとに親水性被膜が形成され、もって、先端処置片15,16からシース11までが体腔内に引き攣りなく円滑に導入できるようになっている。
【0045】
したがって、操作ワイヤ12を進退操作することにより、一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cが閉じるときに、電流を通電して体腔内の生体組織を焼灼し止血することや、生体組織の切除等の処置を行うよう構成されている。
【0046】
[内視鏡用処置具の特徴的構成]
図3(A),(D)に示すように、先端処置具支持部材14は、筒部14aと、筒部14aの線端面より先方に延在する対向一対の腕部14bとを有する。そして、図4(A)-(D)に示すように、先端処置具支持部材14は、腕部14b間で筒部14aを半割した一対の半割体14A,14Bを合わせてなる。したがって、一方の半割体14Aは半筒部14a1と腕部14bとの一体形状であり、他方の半割体14Bは半筒部14a2と腕部14bとの一体形状である。
【0047】
各半割体14A,14Bは、腕部14bに、支持軸18の端部を支持するための支持軸用軸受部14cが設けられ、各半筒部14a1,14a2の内周面後端部に内方に突出する半円環状の軸受部14dが設けられ、また内周面先端部に内方に突出する内側凸壁14gが設けられ、各腕部14bの対向面の先端側の所要位置に開度制限用突起14jまたは14kが設けられ、筒部14aの各半割面に位置決め用の凸部14eと凹部14fとが分配して設けられている。
【0048】
図示の支持軸用軸受部14cは貫通孔として設けられているが、半割面側から設けられた円筒凹部(未貫通穴)であってもよい。
【0049】
筒部14a1または14a2を構成する一対の半割体14A,14Bは、ステンレス製またはナイチノール(ニッケルチタン合金)製の微細粒子をMIM方式(金属粉末射出成形)にて焼成されており、精密な形状・寸法が得られる。
【0050】
開度制限用突起14j,14kは、各半割体14A,14BがMIM方式(金属粉末射出成形)にて形成される。
【0051】
図5(A),(B),(C)に示す開度制限用突起14j,14kは、一対の先端処置片15,16のそれぞれの最大開度時の角度が110度、70度、45度になるときに、一対の開閉作動用リンク19,20が当接するように設けられている。
【0052】
このように、一対の先端処置片15,16のそれぞれの最大開度時の角度の設定は、開度制限用突起14j,14kの設け方次第で適宜決定することができる。
【0053】
図5(C)に示すように、開度制限用突起14j,14kは、支持軸18の両側に2つに分かれて設けられてもよい。開度制限用突起14j,14kがそれぞれ2つに分かれて設けられる場合、開閉作動用リンク20に対応している方の開度制限用突起14jと、開閉作動用リンク19に対応している方の開度制限用突起14kとがストッパー機能を有する。なお、開度制限用突起14j,14kのいずれか一方が設けられていれば足りる。
【0054】
したがって、コイルシース11aへの一対の半割体14A,14Bおよび一対の先端処置片15,16の第1段階の組立手順は、一対の先端処置片15,16をX状に交差させ、交差部15a,16aの軸孔に支持軸18の中央部を嵌合し、次に、一対の先端処置片15,16の基端部と一対の開閉作動用リンク19,20の先端部とをピン軸22,23で連結し、さらに一対の開閉作動用リンク19,20の後端と進退伝動リンク21とをピン軸24で連結し、さらにまた進退伝動リンク21と操作ワイヤ12とを連結する。
【0055】
続く第2段階の組立手順は、一対の先端処置片15,16の交差部15a,16aの軸孔に嵌合させた支持軸18の両端に、一対の半割体14A,14Bの支持軸用軸受部14cを被嵌させ(図3(D))、凸部14eと凹部14fとを契合させ(図4(A))、これと同時に、一対の半円環状の軸受部14dでコイルシース11aの先端部の脱出防止用凸部11a1を避けて形成された先端小径部11a2を挟み、もって、一対の半割体14A,14Bを重ね合わせ(図3(B)-(D))、半筒部14a1同士の外周面の両側の重ね合わせ線14iの全長を固着(レーザー溶接)されている(図4(A))。このレーザー溶接により、半筒部14a1同士の外周面の重ね合わせ線に沿う領域の電気絶縁被膜が剥離するが、一対の先端処置片15,16の刃部から離間した位置であることから、電流を通電し生体組織を焼灼し止血しつつ切開する際の支障になることはない。一対の内側凸壁14gは、進退伝動リンク21を通すようになる。
【0056】
一対の半円環状の軸受部14dは、コイルシース11aの先端部11a1を避けて形成された先端小径部11a2を相対回転可能に被嵌することになり、先端部11a1は先端処置具支持部材14のコイルシース11aからの脱出を防止する役目を果たす。なお、先端小径部11a2を設ける場合に、先端まで含めて研磨加工を行い、先端部11a1に相当するリングを被嵌しレーザー溶接あるいは銀ロウ付け、等で固定してもよい。
【0057】
上記のように組み立てることができるので、支持軸18を中央部が大径となる段軸形状に形成して、一対の先端処置片15,16を安定した開閉を保障することもできる。また、凸部14eと凹部14fとを契合させるので、一対の半割体14A,14Bの軸方向の位置合わせを迅速容易かつ正確に行えて、支持軸18の両側の端部を支持する一対の半割体14A,14Bの支持軸用軸受部14cが精密な一軸線上に位置し、一対の先端処置片15,16の中程15a,16aと一対の腕部14bとが平行状態に接触し、もって、一対の一対の腕部14bが一対の先端処置片15,16を円滑な回転を保障するように保持することができる。
【0058】
一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cは、長手方向に垂直な断面形状が矩形であって、電気絶縁性の不活性被膜がなく金属面が露出している。先端側部分15c,16cの各対向面の先端部に形成された凸部同士が当接することで、先端側部分15c,16cが閉じた状態になるときに、粘膜剥離処理の際に、対向面同士の間隔が例えば1mm程度に保持され、対向面同士間に泡を発生させつつ血管を圧迫して切断することが無く、生体組織を安全に切開する機能を有する。
【0059】
上記構成の内視鏡用処置具10によれば、先端処置具支持部材14をMIM方式(金属粉末射出成形)にて焼成することができる一対の半割体14A,14Bで構成し、各半割体14A,14Bに開度制限用突起14jまたは14kを設けたので一対の先端処置片15,16の最大開度を所定角度に制限できるとともに、コイルシース11aに形成する先端小径部11a2に先端処置具支持部材14を離脱不能・回転可能に直接連結する構成をコイルシース11aの先端部に連結部品に介在しない簡素な構成として実現することができ、もって、簡素な連結構造の実現と、組立の容易化、コスト低減が実現できる。なお、先端小径部11a2に先端処置具支持部材14を回転不能に連結してもよい。
また、開度制限用突起14j,14kを先端処置具支持部材14に設けたことにより、開度制限用突起を先端処置片に設ける場合に比べ大きくすることができ、また開度制限用突起14j,14kと開閉作動用リンク19,20とを当接させて開度を制限するため破損しにくい。
【0060】
また、先端処置具支持部材14が一対の半割体14A,14Bよりなるから、支持軸18の両端部と一対の半割体14A,14Bの支持軸用軸受部14cとの嵌合を半割面側から行うことができる。さらに、支持軸18の両端部を一対の半割体14A,14Bを嵌合する構成であるから、支持軸18について中央部を大径に、両端部を小径に形成できるから、半割体の軸受部として貫通孔を設けて支持軸18の両端部を嵌合して両者をレーザー溶接する構成とした場合には溶接個所が小さくて済み(電気絶縁被膜が剥がれる部位が極小に抑えられる)、また、半割体の軸受部として軸孔(非貫通)を設けて支持軸18の両端部を嵌合する構成とした場合には溶接を半割面側から行うことができる。
【0061】
[実施形態2]
【0062】
図6は実施形態2に係る内視鏡用処置具10Aの先端処置具を含む先端部分を示す図である。
【0063】
内視鏡用処置具10Aは、内視鏡用電気焼灼切開鋏として用いられる。内視鏡用処置具10Aの基本的構成は、実施形態1に係る内視鏡用処置具10の基本的構成と略同一の構成である。内視鏡用処置具10Aの実施形態1に係る内視鏡用処置具10と相違する構成は、コイルシース11aの先端部に延長するように連結用筒状部25を有し、連結用筒状部25の先端部に先端処置具支持部材14が連結されていることが特徴的構成である。
【0064】
内視鏡用処置具10Aは、連結用筒状部25を備えていることだけが、実施形態1の内視鏡用処置具10と相違しているので、図3(C)と同一の符号を付して詳細な構成、作用・効果の説明を省略する。
【0065】
連結用筒状部25は、コイルシース11aの先端部に被嵌されレーザー溶接、銀ロウ付け、ハンダ付け、等により固定された大径筒部25aと、大径筒部25aの先端から延在していて先端処置具支持部材14の半円環状の軸受部14dが被嵌している先端小径筒部22bと、先端小径筒部25bの先端部に径方向外方に突出して設けられ先端処置具支持部材14の軸受部14dの離脱を防止する脱出防止用凸部25cとを有している。
【0066】
連結用筒状部25を設けていることにより以下の利点がある。実施形態1では、コイルシース11aの先端小径部11a2を設けることで部品省略できるが、コイルシース11aの先端部の外周面を円筒研磨加工することは加工が難しく、高コストになる。これに対し、連結用筒状部25を設ける場合には、連結用筒状部25についてはステンレス製またはナイチノール(ニッケルチタン合金)製の微細粒子をMIM方式(金属粉末射出成形)にて焼成されており、精密な形状・寸法が得られるので低コストになる。
【0067】
この実施形態2の先端処置具支持部材14も、開度制限用突起14j,14kを有しているので、一対の先端処置片15,16のそれぞれの最大開度時の角度の設定が行える。先端処置具支持部材14は、連結用筒状部25の先端小径筒部22bに対して先端処置具に求める機能に合致するよう固定、回転可能のいずれか1つの関係に設けられる。
【0068】
[実施形態3]
[内視鏡用処置具の基本的構成]
図7は実施形態3に係る電気焼灼切開鋏として使用される内視鏡用処置具10Bを示す。内視鏡用処置具10Bは、生理食塩水等の液体をシース11内に通流させて先端処置具支持部材14の先端から噴き出して生体組織の血液を押し流す機能を有することが、図2に示す実施形態1に係る内視鏡用処置具10と相違している。内視鏡用処置具10Bは、内視鏡用処置具10に替えて図1に示す内視鏡システム1の内視鏡チャネル5内に進退可能である。
【0069】
図7に示す内視鏡用処置具10Bに関し、図2に示す内視鏡用処置具10と相違する構成部分、および相違する構成部分から生じる作用・効果を説明する。内視鏡用処置具10Bの内視鏡用処置具10と同一の構成部分、および同一の構成部分から生じる作用・効果については説明をする。
【0070】
内視鏡用処置具10Bの操作部13は、操作部本体13aと、スライダ13bと、液注入部13cと、接続キャップ13dとを備えてなる。
【0071】
操作部本体13aは、両側面部に直線ガイドを有する長矩形枠部13a1と、矩形枠部13a1の基端に延在する指掛け孔を有するハンドル部13a2と、矩形枠部13a1の先端に延在する雄型接続部13a3とを有し、円錐状の雄型接続部13a3には貫通孔を有する。スライダ13bは、中央部が長矩形枠部13a1の直線ガイドに摺動可能に嵌着され、両側部に指掛け孔を有する。したがって、ハンドル部13a2に親指を掛け、指かけ孔に人差し指及び中指を掛けて、操作部本体13a及びスライダ13bを相対的に移動させることができる。
【0072】
また、スライダ13bを矩形枠部13aに対して移動することにより操作ワイヤ12をシース11に対して進退可能である。操作ワイヤ12とコイルシース11aは、基端部同士が一体に回転可能である構成である。したがって、スライダ13bを保持し矩形枠部13aの周りに回動し操作ワイヤ12とシース11とを一体に回転することにより、シース11の先端側でシース11と操作ワイヤ12とを一体に回転することができる。
【0073】
なお、雄型接続部13a3を矩形枠部13aに一体に延設するのではなく、雄型接続部13a3を矩形枠部13aと分離して長く設けて回らないように保持部を付設し、この雄型接続部13a3を矩形枠部13aの先端部に相対回転可能に連結する構成とすれば、スライダ13bを保持し矩形枠部13aの周りに回動すると、操作ワイヤ12とコイルシース11aが先端側において相対回転可能になる。
【0074】
液注入部13cは、貫通孔13c1と、貫通孔13c1の中途部に連通するように送液接続口13c2と、貫通孔13c1の基端部に形成され操作部本体13aの雄型接続部13a3に螺着している円錐状の雌ねじ部(符号なし)と、貫通孔の先端部に形成され接続キャップ13dが螺着している円錐状の雄ねじ部(符号なし)とを有する。送液接続口13c2には、送液手段6が接続される。送液手段6は、シリンジあるいはポンプ等であり、生理食塩水等の液体をシース2の流路2aに送り込むことができるようになっている。
【0075】
そして、シース11内に挿通された操作ワイヤ12が、接続キャップ13dと液注入部13cの貫通孔13c1と操作部本体13aの貫通孔に挿通され、操作ワイヤ12の基端が、矩形枠部13aの枠内に通され、スライダ13bに連結されており、スライダ13bを保持して矩形枠部13aに対して移動すると、操作ワイヤ12を進退可能となっている。操作ワイヤ12と操作部本体13aの貫通孔基端部の環状隙間を埋めるように液封リング(不図示)が設けられている。
【0076】
また、シース11の基端部を液注入部13cの先端にフレアに当接され接続キャップ13dにより固定されている。送液手段6の液体は、送液接続口13c2からシース11内の操作ワイヤ12の周囲空間を通ってシース11先端に送液される。
【0077】
図8に示す先端処置具支持部材14に関し、図3に示す先端処置具支持部材14と相違する構成部分、および相違する構成部分から生じる作用・効果を説明する。内視鏡用処置具10Bの内視鏡用処置具10と同一の構成部分、および同一の構成部分から生じる作用・効果については説明をする。
【0078】
図9は実施形態3に係る内視鏡用処置具10Bを示す。内視鏡用処置具10Bは、先端処置具支持部材14に図3に示す先端処置具支持部材14と相違する特徴がある。
【0079】
先端処置片15B,16Bの先端部15c、16cは、後述する液送用凹条部26と、開度制限用突起14j,14kを除き、実施形態1と同一に構成される。
【0080】
図8(A),(C)に示すように、先端処置具支持部材14Bは、半割体14A,14Bの各腕部14bの対向面の幅中央部を流れ先端より噴き出すように生理食塩水等の液体を通流させる液送用凹条部26を有する。
【0081】
図8(D)に示すように、支持軸は中央が大径部とされ両側が小径部とされ、段差面が液送用凹条部26に当接するように段軸状に形成されている。また、各腕部14bの先端側対向面より突出するよう設けられている開度制限用突起14j,14kは先端処置片15B,16Bの中央部15a,16aに当接している。
【0082】
液送用凹条部26は、内側凸壁14gおよび開度制限用突起14j,14kを切り欠いて各腕部14b,14bの対向面の幅中央部に設けられ、支持軸18の両側に処置液が迂回して流れる幅広部を有している。
【0083】
この実施の形態では、先端処置具支持部材14を構成する一対の半割体14A,14Bの各腕部14bに開度制限用突起14j,14kおよび液送用凹条部26が設けられているので、先端処置片15B,16Bを開くときには開度制限用突起14j,14kに一対の開閉作動用リンク19,20が当接するストッパー機能(開度制限機能)により一対の開閉作動用リンク19,20の最大開度が決まる。
【0084】
液送用凹条部26を通流し一対の腕部14b,14b間の先端から噴き出す生理食塩水等の液体は、図8(A)に示すように、先端処置片15B,16Bが閉じた状態であるときには先端処置具支持部材14Bの内部(液送用凹条部26)を通流する液体が先端から真直ぐ1本で流出する状態となり、先端処置片15B,16Bが最大角度よりも僅かに小さい角度に開いた状態(図8(B)に示す開度より僅かに小さい開度の状態)であるときには真直ぐに噴き出す状態を僅かな時間保持してから表面張力が作用して一対の先端処置片15,16に沿って広がって流れさらに下流側で再び集まるように流れとなり、さらに、図8(C)に示すように、先端処置片15B,16Bが最大角度に開いた状態になるときに先端処置具支持部材14の内部を通流する液体が先端処置具支持部材の先端から2本に分かれて流出する状態となる。
【0085】
したがって、先端処置片15B,16Bを開閉することにより、先端処置具支持部材14の先端から噴き出す生理食塩水等の液体の流れを自在に変化させることができて、これにより切開部に生じる血を生理食塩水で効果的に押し流すことができる。
【0086】
[実施形態1-3の変形例]
先端処置具支持部材14-14Bが、コイルシース11aの先端部または当該先端部に設けられた連結用筒状部22の先端部に脱出防止用リングが被嵌されレーザー溶接により固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、一対の先端処置片の最大開度を所定角度に制限できるとともに、簡素な連結構造の実現と、組立の容易化、コスト低減が実現できるという効果を有し、優れた内視鏡用処置具を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…内視鏡システム、
2…挿入部、
3…内視鏡操作部、
4…処置具導入部、
5…内視鏡チャネル、
6…送液手段、
10,10A,10B…内視鏡用処置具、
11…シース、
11a…コイルシース、
11a1…先端部(脱出防止用凸部)、
11a2…先端小径部、
11b…樹脂製外被、
12…操作ワイヤ、
13…操作部、
13a…操作部本体、
13a1…長矩形枠部、
13a2…ハンドル部、
13a3…雄型接続部、
13b…スライダ、
13c…液注入部、
13c1…貫通孔、
13c2…送液接続口、
13d…接続キャップ、
14…先端処置具支持部材、
14A,14B…半割体、
14a…筒部、
14a1…半筒部、
14b,14b…腕部、
14c…支持軸用軸受部、
14d…軸受部、
14e…凸部、
14f…凹部、
14g…内側凸壁、
14h…先端肉厚部、
14i…重ね合わせ線、
14j,14k…開度制限用突起、
15,15A,15B…先端処置片(先端処置具)、
15a,16a…中程(交差部)、
15b,16b…基端側部分、
15c,16c…先端側部分、
15d,16d…開閉作動用リンク、
15e…円孔、
18…支持軸、
19,20…開閉作動用リンク、
21…進退伝動リンク、
22,23,24…ピン軸、
25…連結用筒状部、
25a…大径筒部、
25b…先端小径筒部、
25c…脱出防止用凸部、
26…液送用凹条部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9