(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240430BHJP
B65B 61/26 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G06F3/12 331
G06F3/12 329
G06F3/12 303
G06F3/12 391
B65B61/26
(21)【出願番号】P 2020083780
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】大川 佳祐
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-039789(JP,A)
【文献】特開2011-066660(JP,A)
【文献】特開2019-215601(JP,A)
【文献】特開2011-189715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
B41J2/01;2/165-2/20;2/21-2/215
B65B9/00-65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのサーバと複数のインクジェットプリンタを通信ネットワークで接続したインクジェットプリンタシステムにおいて、
所定の設定項目が共通した前記インクジェットプリンタをグルーピングして設定項目グループを形成すると共に、前記設定項目グループの中でグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを設定し、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記サーバから前記所定の設定項目の設定要求を受信すると、自身の前記所定の設定項目を設定すると共に、前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目を設定する
ものであり、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記サーバから送られてくる前記所定の設定項目の情報と、その設定を行う前記設定項目グループに属する他の前記インクジェットプリンタの情報を受信すると、自身が属する前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタに対して、前記所定の設定項目を設定するグループ内設定処理を実行すると共に、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記サーバの演算処理によって求められる
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタシステムにおいて、
前記サーバによって求められる前記マスタインクジェットプリンタは、前記設定項目グループの前記インクジェットプリンタの中で、前記グループマスタとして選ばれている回数が最も少ない前記インクジェットプリンタであるか、或いは前記設定項目グループの前記インクジェットプリンタの中の特定の前記インクジェットプリンタである
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェットプリンタシステムにおいて、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記グループ内設定処理において、前記設定項目グループ内の前記インクジェットプリンタの設定順序を決定し、この設定順序にしたがって、前記設定項目グループ内の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目を設定する
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタシステムにおいて、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタに対して前記設定順序を通知するために、設定順序明示ファイルを作成して前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタに送信する
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のインクジェットプリンタシステムにおいて、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記グループ内設定処理として、前記設定項目グループ内の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目の設定順序を決定する第1のグループ内設定処理と、前記設定項目グループ内の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目を同時に設定する第2のグループ内設定処理とを設定し、
前記インクジェットプリンタの数の多い前記設定項目グループには前記第1のグループ内設定処理を実行し、前記インクジェットプリンタの数の少ない前記設定項目グループには前記第2のグループ内設定処理を実行する
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項6】
1つのサーバと複数のインクジェットプリンタを通信ネットワークで接続したインクジェットプリンタシステムにおいて、
所定の設定項目が共通した前記インクジェットプリンタをグルーピングして設定項目グループを形成すると共に、前記設定項目グループの中でグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを設定し、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記サーバから前記所定の設定項目の設定要求を受信すると、自身の前記所定の設定項目を設定すると共に、前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目を設定し、
更に前記設定項目グループと別に、任意の複数の前記インクジェットプリンタのデータを収集するデータ収集グループを設定すると共に、前記マスタインクジェットプリンタは、前記インクジェットプリンタの設定順序とは反対の順序で、任意の複数の前記インクジェットプリンタのデータを収集する
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項7】
1つのサーバと複数のインクジェットプリンタを通信ネットワークで接続したインクジェットプリンタシステムにおいて、
所定の設定項目が共通した前記インクジェットプリンタをグルーピングして設定項目グループを形成すると共に、前記設定項目グループの中でグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを設定し、
前記マスタインクジェットプリンタは、前記サーバから前記所定の設定項目の設定要求を受信すると、自身の前記所定の設定項目を設定すると共に、前記設定項目グループの他の前記インクジェットプリンタの前記所定の設定項目を設定するものであり、
複数の前記インクジェットプリンタは、複数の生産ラインの夫々に配置されたものであり、1つの前記生産ラインの流れから見て順番に配置された前記インクジェットプリンタと、他の前記生産ラインの流れから見て順番に配置された前記インクジェットプリンタは、同じ順番の前記インクジェットプリンタであれば、同じ印字内容を印字すると共に、
前記所定の設定項目は少なくとも、印字内容、文字サイズ、及び印字速度であり、
複数の前記インクジェットプリンタは、前記設定項目グループとして、印字内容設定グループ、文字サイズ設定グループ、及び印字速度設定グループにグルーピングされていることを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットプリンタシステムにおいて、
前記印字内容設定グループは、前記生産ラインの流れから見て同じ順番の複数の前記生産ラインにおける前記インクジェットプリンタからなり、
前記文字サイズ設定グループは、全ての前記インクジェットプリンタからなり、
前
記印字速度設定グループは、夫々の前記生産ラインの前記インクジェットプリンタからなる
ことを特徴とするインクジェットプリンタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタシステムに関し、特に複数のインクジェットプリンタとサーバとを通信ネットワークで接続したインクジェットプリンタシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産工場等で使用されている一般的な連続噴射式荷電制御型のインクジェットプリンタは、本体にインクを貯留するインク容器を設けており、そのインク容器のインクをインク供給ポンプによって印字ヘッドへ供給している。印字ヘッドに供給されたインクは、インクノズルから連続的に噴出され、インク液滴化される。
【0003】
インク液滴のうち、印字に使用するインク液滴には、帯電・偏向処理を行い所望の印字対象物の印字位置へ飛翔させ、印字に使用しないインク液滴には、帯電・偏向処理を行わず、ガターで捕集してインク回収ポンプによりインク容器へ戻す構成とされている。
【0004】
そして、食品を収納した包装容器、飲料を充填したペットボトル等の製品を製造する規模の大きい生産工場の製造ラインにおいては、複数台のインクジェットプリンタが設置され、製品の表面に賞味期限、製造工場、製造番号等を印字している。
【0005】
ところで、このようなインクジェットプリンタにおいては、賞味期限、製造工場、製造番号等の印字仕様を変更することが必要であり、このため、複数のインクジェットプリンタとサーバとを通信ネットワークで接続し、サーバからの指示によって複数のインクジェットプリンタの印字仕様を変更することが有効である。
【0006】
サーバからの指示によって、複数のプリンタの印字仕様を変更する方法として、例えば、特開2006-146946号公報(特許文献1)に記載されている方法が知られている。この特許文献1においては、高機能プリンタの下流に低機能プリンタを接続して一つのプリンタグループを構成し、高機能プリンタは、下流側の低機能プリンタの性能を調べてプリンタグループ全体の性能をホストに通知し、ホストから印刷ジョブデータを受けると、高機能プリンタは、そのジョブを処理するのに適したプリンタをグループ内から選択してジョブデータを転送することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように規模が大きい生産工場において、サーバから複数のインクジェットプリンタの印字仕様を変更する必要が生じる。しかしながら、サーバから夫々のインクジェットプリンタの設定を1つ1つ変更する場合、インクジェットプリンタの数に比例した時間が必要となり、生産性の向上を阻害する恐れがある。また、特許文献1に記載された方法では、夫々のインクジェットプリンタに対して印字仕様の変更を設定できないものである。
【0009】
本発明の目的は、複数のインクジェットプリンタの印字仕様の設定を効率よく短時間に行うことができるインクジェットプリンタシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1つのサーバと複数のインクジェットプリンタを通信ネットワークで接続したインクジェットプリンタシステムにおいて、
所定の設定項目が共通したインクジェットプリンタをグルーピングして設定項目グループを形成すると共に、この設定項目グループの中でグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを設定し、
マスタインクジェットプリンタは、サーバから所定の設定項目の設定要求を受信すると、自身の所定の設定項目を設定すると共に、設定項目グループの他のインクジェットプリンタの所定の設定項目を設定する
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のインクジェットプリンタの印字仕様の変更を効率よく短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】インクジェットプリンタの外観構成を説明する外観図である。
【
図2】インジェットプリンタの構成と動作を説明する説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態になるインクジェットプリンタシステムの構成図である。
【
図4】印字対象物に印字される印字内容の例を説明する説明図である。
【
図5】サーバからインクジェットプリンタの所定の設定項目を設定する設定更フローを示す説明図である。
【
図6】サーバによるグループマスタを決定する決定フローを説明する説明図である。
【
図7】サーバからマスタインクジェットプリンタ、及びこれに紐付けられているインクジェットプリンタに所定の設定項目を設定する設定更フローを示す説明図である。
【
図8】設定項目グループ内のインクジェットプリンタの紐付け例を説明する説明図である。
【
図9】
図8に示す設定項目グループ内のインクジェットプリンタの具体的な紐付け例を示す説明図である。
【
図10】
図8に示す設定項目グループ内のインクジェットプリンタの設定順序明示ファイルの具体例を示す図である。
【
図11】マスタインクジェットプリンタに紐付けられているインクジェットプリンタからデータを収集するときの通信順序を説明する説明図である。
【
図12】
図10で収集されるデータのデータファイルの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0014】
先ず、一般的な連続噴射式荷電制御型のインクジェットプリンタの構成と動作について簡単に説明する。尚、本発明の考え方は、以下に説明する連続噴射式荷電制御型のインクジェットプリンタだけではなく、必要に応じて一般的な事務機用プリンタにおいても適用できるものである。
【0015】
図1に、インクジェットプリンタの外観構成を示している。
図1において、インクジェットプリンタの本体1には表示用のディスプレイ2が備えられている。印字ヘッド4にはケーブル3を介してインクが供給されており、また決定された印字内容は、ケーブル3を介して印字ヘッド4に送られ、これに基づいてインク液滴が連続的に吐出されることで、ベルトコンベア等の搬送ライン5で搬送される印字対象物6に印字される。
【0016】
図2には、インクジェットプリンタの構成を模式的に示している。
図2において、インク容器7に貯留されているインク液8は、インク供給ポンプ9で加圧されてインクノズル10に供給される。インクノズル10に設置された圧電素子11に、周期的に電圧を加えることで、インクノズル10内のインクが励振される。励振されたインクは、インクノズル10よりインク柱12として吐出された後にインク液滴となる。
【0017】
印字に使用するインクに対しては、インクの液滴化と同時に、帯電電極13によってインク液滴への帯電が行われる。帯電されたインク液滴14は、偏向電極正極15、及び偏向電極負極16の間の偏向空間に生じる電場によって偏向された後に印字対象物6に着滴する。また、印字に使用しないインク液滴17は帯電されず、偏向が行われないためガター18にて回収される。
【0018】
尚、
図1のインクジェットプリンタの本体1には、
図2に示すインク容器7、及びインク供給ポンプ19等が格納されている。また、
図1の印字ヘッド4には、
図2に示すインクノズル10、帯電電極13、偏向電極正極15、偏向電極負極16、及びガター18等が格納されている。
【0019】
このようなインクジェットプリンタは、規模が大きい生産工場においては、複数台設置されている。このため、上述したようにサーバから複数のインクジェットプリンタの印字仕様を変更する必要が生じた場合、サーバから夫々のインクジェットプリンタの設定を1つ1つ変更せねばならず、インクジェットプリンタの数に比例した時間が必要となり、生産性の向上を阻害する恐れがある。
【実施例1】
【0020】
本発明は、上述した課題に対応すべく複数のインクジェットプリンタの印字仕様の変更を効率よく短時間に行うことができるインクジェットプリンタシステムを提案するものである。
【0021】
尚、以下で説明する「設定」とは、設定項目の変更や更新を意味するものとして使用する。
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態である1台のサーバから複数台のインクジェットプリンタの印字仕様を設定するインクジェットプリンタシステムの構成を説明する。
【0023】
図3は、生産工場内において3つの製造ラインの夫々に、3つのインクジェットプリンタ(合計で9個)が設置されている状態を示している。サーバ101、及び9台のインクジェットプリンタ102~110は同一の通信ネットワークに接続されており、相互にデータの送受信が可能な構成とされている。
【0024】
1つ目の製造ラインA111には、インクジェットプリンタ102、103、104が設置されており、夫々設定された印字を行うように構成されている。また、2つ目の製造ラインB112には、これもインクジェットプリンタ105、106、107が設置されており、夫々設定された印字を行うように構成されている。更に、、3つ目の製造ラインC113には、インクジェットプリンタ108、109、110が設置されており、夫々設定された印字を行うように構成されている。
【0025】
そして、これらのインクジェットプリンタ102~110は、サーバ101から各インクジェットプリンタに対して印字に関する設定を行うことができる。ここで本実施形態では、夫々のインクジェットプリンタに対して3つの設定項目(印字仕様)があると仮定して説明を進める。
【0026】
上述の3つの設定項目は、例えば「印字内容」、「文字サイズ」、「印字速度」である。「印字内容」とは印字対象物に印字される文字列のことであり、「文字サイズ」は文字の大きさのことであり、「印字速度」は印字対象物に印字を行う速度のことである。
【0027】
今、生産工場の3つの製造ラインA111~製造ラインC113では同じ製品に同じ文字を印字している。印字する文字を
図4に示しており、印字対象物には製造日201と賞味期限202と製造所203が印字される。これらの印字文字は3段に積み重ねられて印字される形態である。
【0028】
そして、これらの印字文字は、別々のインクジェットプリンタにより印字されている。例えば、
図4に示すように製造ラインA111では、インクジェットプリンタ102で製造日を印字し、インクジェットプリンタ103で賞味期限を印字し、インクジェットプリンタ104で製造所を印字している。
【0029】
同様に、製造ラインB112では、インクジェットプリンタ105で製造日を印字し、インクジェットプリンタ106で賞味期限を印字し、インクジェットプリンタ107で製造所を印字している。同様に、製造ラインC113では、インクジェットプリンタ108で製造日を印字し、インクジェットプリンタ109で賞味期限を印字し、インクジェットプリンタ110で製造所を印字している。
【0030】
これらの設定項目である「印字内容」、「文字サイズ」、「印字速度」は全てサーバ101から設定される。尚、これらの設定項目のうち、「文字サイズ」は全てのインクジェットプリンタに対して同じ値が設定される。
【0031】
一方で「印字内容」は、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の進行方向で見て、1番目のインクジェットプリンタ102、105、108は製造日、2番目のインクジェットプリンタ103、106、109は賞味期限、3番目のインクジェットプリンタ104、107、110は製造所という様に異なる設定が必要である。
【0032】
また、「印字速度」は、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113毎の速度によって決まり、同一の製造ラインにあるインクジェットプリンタには同一速度の設定を行うが、製造ライン毎に微調整が必要となる。
【0033】
このような背景から、本実施形態では設定項目毎にインクジェットプリンタをグルーピングすることを特徴としている。すなわち、本実施形態では、共通の設定項目の設定を行うインクジェットプリンタを設定項目グループとしてグルーピングする。
【0034】
図3に戻って、「文字サイズ設定グループ」114は、同一の文字サイズを設定するインクジェットプリンタのグループである。上述の通り、全てのインクジェットプリンタ102~110に同じ文字サイズを設定するため、このグループには全てのインクジェットプリンタ102~110が属することになる。
【0035】
また、「製造日設定グループ」115は、同一の印字内容を設定するためのグループである。夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の1番目のインクジェットプリンタ102、105、108には、同一の印字内容である「製造日」が設定される。このように、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の1番目のインクジェットプリンタ102、105、108が、「製造日設定グループ」115に属することになる。
【0036】
参照番号を付してはいないが、同様に「賞味期限設定グループ」として、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の2番目のインクジェットプリンタ103、106、109には、同一の印字内容である「賞味期限」が設定される。このように、各製造ラインA111~製造ラインC113の2番目のインクジェットプリンタ103、106、109が、「賞味期限設定グループ」に属することになる。
【0037】
これも参照番号を付してはいないが、同様に「製造所設定グループ」として、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の3番目のインクジェットプリンタ104、107、110には、同一の印字内容である「製造所」が設定される。このように、夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の3番目のインクジェットプリンタ104、107、110が、「賞味期限設定グループ」に属することになる。
【0038】
尚、「製造日設定グループ」、「賞味期限設定グループ」、「賞味期限設定グループ」は「印字内容設定グループ」の具体的な例である。
【0039】
更に、「印字速度設定グループ」116は、同一の印字速度を設定するためのグループである。印字速度は夫々の製造ラインのライン毎に調整する必要がある。このため、「ラインC印字速度設定グループ」116には、製造ラインC113にあるインクジェットプリンタ108、109、110が属することになる。
【0040】
参照番号を付してはいないが、同様に「印字速度設定グループ」として、製造ラインA111のインクジェットプリンタ103、104、105には、同一の印字速度が設定される。このように、製造ラインA111のインクジェットプリンタ103、104、105が、「ラインA印字速度設定グループ」に属することになる。
【0041】
これも参照番号を付してはいないが、同様に「印字速度設定グループ」として、製造ラインB112のインクジェットプリンタ106、107、108には、同一の印字速度が設定される。このように、製造ラインB112のインクジェットプリンタ106、107、108が、「ラインB印字速度設定グループ」に属することになる。
【0042】
したがって、サーバ101によって設定項目が設定されると、この設定項目にしたがって上述の設定項目グループが選択され、選択された設定項目グループに対応するインクジェットプリンタにおいて、設定項目の内容が変更されることになる。
【0043】
例えば、「製造日」を変更する場合は、サーバ101によって「製造日設定グループ」115が選択され、この「製造日設定グループ」115に属する夫々の製造ラインA111~製造ラインC113の1番目のインクジェットプリンタ102、105、108に変更された「製造日」が設定されることになる。
【0044】
また、製造ラインC113の「印字速度」を変更する場合は、サーバ101によって製造ラインC113の「ラインC印字速度設定グループ」116が選択され、この「ラインC印字速度設定グループ」116に属する製造ラインC113の夫々のインクジェットプリンタ108、109、110に変更された「印字速度」が設定されることになる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、複数のインクジェットプリンタを設定項目毎にグルーピングして設定項目グループを形成し、この設定項目グループに対してサーバから設定項目の設定を行うことを特徴の1つとしている。
【0046】
図5には、サーバ301からインクジェットプリンタ302に設定項目を設定するときの基本的な流れを示している。サーバ301からインクジェットプリンタ302に対して設定項目の設定を行うが、縦軸は時間の経過を表しており、下に向かうにしたがって時間が経過している。
【0047】
サーバ301は、インクジェットプリンタ302に対して設定リクエスト303を送信する。この設定リクエスト303には設定する内容に関する情報も含まれている。受信したインクジェットプリンタ302は自身の設定項目を変更したのち、設定完了レスポンス304を送信する。サーバ301が設定完了レスポンス304を受信した時点で設定完了となる。
【0048】
そして、本実施形態では、サーバ301が或る設定項目グループ(上述した設定項目グループ)に対して設定項目の設定を行う際、まずその設定項目グループにおけるグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを選定することも特徴の1つとされている。マスタインクジェットプリンタは、自身が属する設定項目グループの他のインクジェットプリンタの設定項目の設定を指示する機能を備えている。
【0049】
また、マスタインクジェットプリンタは、設定項目グループのインクジェットプリンタの中で、最もグループマスタとして選ばれている回数が少ないものとされている。そうすることで、設定動作の実行に対する負荷分散が可能となる。ただ、マスタインクジェットプリンタは、特定のインクジェットプリンタとすることも可能である。また、マスタインクジェットプリンタは、「印字内容」、「文字サイズ」、「印字速度」の夫々の設定項目グループに対して設定されている。
【0050】
グループマスタであるマスタインクジェットプリンタを選定する制御フローを
図6に示している。ここで、サーバ301には、夫々のインクジェットプリンタに対して、そのプリンタを識別する固有インデックス(IJP.idx)と、そのインクジェットプリンタがグループマスタとして選択された選択回数(IJP.n_master)が保持されている。
【0051】
繰り返しステップ(S401)においては、本フローを上述した夫々の設定項目グループに対して繰り返している。次に変数初期化ステップ(S402)で、夫々の設定項目グループにおいて、グループマスタとなるインクジェットプリンタのマスタ固有インデックス(target_idx)と、その設定項目グループ内のインクジェットプリンタの中で最も小さな選択回数(IJP.n_master)を示す最小選択回数(min_n_master)を「-1」で初期化する。
【0052】
次に、繰り返しステップ(S403)で、設定項目グループに属する全てのインクジェットプリンタに関してこの動作を繰り返し実行する。
【0053】
次に比較ステップ(S404)において、インクジェットプリンタの選択回数(IJP.n_master)を現在の最小選択回数(min_n_master)と比較し、選択回数(IJP.n_master)の方が小さい場合は、変数更新ステップ(S405)で、最小選択回数(min_n_master)を選択回数(IJP.n_master)に更新し、またマスタ固有インデックス(target_idx)を固有インデックス(IJP.idx)に更新する。
【0054】
この制御フローを実行することにより、夫々の設定項目グループにおいて、最もグループマスタとして選ばれている回数が少ないインクジェットプリンタが、グループマスタとして選択される。グループマスタが選択されるとループ演算を終了する。
【0055】
そしてサーバ301は、夫々の設定項目グループのマスタインクジェットプリンタに対して設定リクエストを送信する。その際に、設定された設定項目グループに所属するインクジェットプリンタの数が多い方から順番にリクエストを送信している。
【0056】
図7には、本実施形態になるサーバ501からグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタ502に設定項目を設定するときの流れを示している。この例もサーバ501からマスタインクジェットプリンタ502に対して設定項目の設定を行うが、縦軸は時間の経過を表しており、下に向かうにしたがって時間が経過している。
【0057】
サーバ501からマスタインクジェットプリンタ502に対し、設定リクエスト503を送信する。設定リクエストには、設定するべき項目の情報とその設定を行う設定項目グループに属する他のインクジェットプリンタの情報が含まれている。
【0058】
設定リクエスト503を受信したマスタインクジェットプリンタ502は、自身が属するグループのインクジェットプリンタに対して、グループ内設定処理504を実行する。このグループ内設定処理504に関しては後述する。グループ内設定処理504が完了すると、マスタインクジェットプリンタ502は、サーバ501に対して設定完了レスポンス505を送信する。サーバ501が全ての設定項目グループから設定完了レスポンス505を受信すると設定が完了する。
【0059】
マスタインクジェットプリンタ502はグループ内設定処理において、まず設定項目グループ内での設定順序を決定する。ここではプリンタが7個の場合を例にとって設定順序の決定方法を説明する。
【0060】
夫々のインクジェットプリンタの固有のインデックスをidx1 …idx7とし、またインクジェットプリンタの数に対して「2n」がそれを超える最小のnをステップ数と呼ぶ。この場合「23=8」が7を超えるのでステップ数は3となる。マスタインクジェットプリンタ502が、直接的に設定を行うインクジェットプリンタの数はステップ数に等しい。
【0061】
ここではステップ数3であるので、
図8に示すように、マスタインクジェットプリンタ502が直接的に設定するインクジェットプリンタを、例えば、idx1、idx2、idx4のインクジェットプリンタとし、この順番に設定を行うこととする。
【0062】
、最初に設定するidx1に対して、更に2つのインクジェットプリンタの設定を実行する。ここではidx3、idx5とする。2つ目に設定するidx2に対しては、更に1つのインクジェットプリンタの設定を実行する。これをidx6とする。idx1が設定するidx3に対して、更に1つのインクジェットプリンタに対して設定を実行する。これをidx7とする。以上により、夫々のインクジェットプリンタの設定が並列に進み、最大で3ステップのうちに設定が完了する。
【0063】
以上をまとめると、マスタインクジェットプリンタ502と、他のインクジェットプリンタは、
図9に示すように紐付けられることになる。このように、マスタインクジェットプリンタ502は、紐付けられたインクジェットプリンタに設定順序を送って設定を行うことができる。
【0064】
一般にインクジェットプリンタ自身のインデックス番号が整数iであるときに、そのインクジェットプリンタはステップ数tにおいて、i+2(t-1)のインデックスのインクジェットプリンタに設定を行うことができる。この時のマスタインクジェットプリンタはidx0として取り扱う。この方法で設定するインクジェットプリンタを割り当てることで、インクジェットプリンタの数にかかわらず設定項目グループ内の設定はnステップの内に完了することができる。
【0065】
そして、マスタインクジェットプリンタ502は設定順序を通知するために、設定順序明示ファイルを作成し、それを設定時に他のインクジェットプリンタに同時に送信する。これは設定順序が明示されていればどのような形式でもよいが、例えば
図10に示すようなマークアップ形式のテキストファイルである。夫々のインデックスの後に、中括弧を用いて設定すべきインクジェットプリンタの固有インデックスを列挙するような形式である。
【0066】
このように本実施形態では、所定の設定項目が共通したインクジェットプリンタをグルーピングして設定項目グループを形成すると共に、この設定項目グループの中でグループマスタとなるマスタインクジェットプリンタを設定し、マスタインクジェットプリンタは、サーバからの所定の設定項目の設定要求を受信すると、自身の所定の設定項目を設定すると共に、所定の設定順序で設定項目グループの他のインクジェットプリンタの所定の設定項目を設定する構成とされている。
【0067】
これにより、1台のサーバから複数のインクジェットプリンタの設定項目を設定することができ、複数のインクジェットプリンタの印字仕様の変更を効率よく短時間に行うことができる。
【実施例2】
【0068】
次に、第2の本実施形態について説明する。本実施形態では、通信ネットワークの帯域を占有せずに設定を行う例である。
【0069】
上述したグループ内設定処理とは別に、グループ内のすべてのインクジェットプリンタの設定を、マスタインクジェットプリンタが行うことができる。そして、グループ内にインクジェットプリンタが7台ある場合には、マスタインクジェットプリンタがidx1からidx7の全てのインクジェットプリンタに対して設定を実行することができる。
【0070】
この設定には7ステップが必要となり、第1の実施形態に比べて設定に時間がかかるが、一方で夫々のステップで1台のインクジェットプリンタに対する設定しか行われないため、通信ネットワークの帯域を圧迫しない。一方で、サーバにかかる負担は十分に低減することが可能である。
【0071】
グループ内設定処理を、サーバからポリシーという形で設定することが可能である。第1の実施形態の設定方法を「効率優先ポリシー」、上述した方法を「帯域優先ポリシー」と定義する。
【0072】
そして、インクジェットプリンタの数の多い設定項目グループ(例えば、
図3の「文字サイズ設定グループ」)と、インクジェットプリンタの数の少ない設定項目グループ(例えば、
図3の「製造日設定グループ」)が混在するとき、インクジェットプリンタの数の少ない設定項目グループに対して「効率優先ポリシー」を設定しても、全体の速度はインクジェットプリンタの数が多いグループが律速するため効果が低い。
【0073】
そこで、インクジェットプリンタの数が少ない設定項目グループに対しては、「帯域優先ポリシー」を設定するといった使い方が可能である。
【0074】
また、生産工場の通信ネットワーク状況に応じて新たなポリシーを定義することも可能である。例えば、1ステップで同時に設定するインクジェットプリンタを、2つに限定するポリシーなどが定義できる。
【0075】
このように第2の実施形態によれば、通信ネットワークの帯域を占有せずに設定項目の設定を行うことが可能となる。
【実施例3】
【0076】
次に、第3の本実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態におけるインクジェットプリンタの設定項目の設定だけでなく、インクジェットプリンタからデータを収集する例である。
【0077】
第1の実施形態では、設定項目グループに分割してインクジェットプリンタの設定を行った。一方でデータ収集では全てのインクジェットプリンタから一斉にデータを収集する必要がある。
【0078】
そこで、設定項目グループと同じ考え方で、データ収集グループを形成することができる。全てのインクジェットプリンタからデータ収集を行う場合は、全てのインクジェットプリンタを「全データ収集グループ」に属するように構成すればよい。一方で、一部のインクジェットプリンタのみからデータを収集したい場合は、その一部のインクジェットプリンタのみを「一部データ収集グループ」に属ように構成すればよい。
【0079】
データの収集は第1の実施形態と同様に「効率優先のポリシー」にしたがって行うことができる。インクジェットプリンタ間の通信ネットワークの構成(紐付け関係)も第1の実施形態と同様である。
【0080】
図11にインクジェットプリンタが7台であるときの全データの収集の様子を示している。マスタインクジェットプリンタは、先ずidx1のインクジェットプリンタにデータ収集要求(REQ)を送信する。このデータ収集要求には第1の実施形態と同様に、設定順序明記ファイルが含まれている。
【0081】
Idx1は設定順序明記ファイルにしたがって、idx3に対してデータ収集の要求(REQ)を実行する。また、idx3はidx7に対してデータ収集の要求(REQ)を実行する。idx7は設定順序明記ファイルにより自身が末端であることを理解しているので、自身のデータをデータファイルに書き出し、それをデータ収集の応答(RES)としてidx3に送信する。
【0082】
Idx3は受信したデータファイルに自身のデータを追記し、idx1にデータ収集の応答(RES)として送信する。idx1は、idx3とidx5から受信したデータファイルを結合し、自身のデータを追記してマスタインクジェットプリンタへと送信する。
【0083】
同様に、idx2は設定順序明記ファイルにしたがって、idx6に対してデータ収集の要求(REQ)を実行する。idx6は設定順序明記ファイルにより自身が末端であることを理解しているので、自身のデータをデータファイルに書き出し、それをデータ収集の応答(RES)としてidx2に送信する。idx2は受信したデータファイルに自身のデータとidx6から受信したデータファイルを結合してマスタインクジェットプリンタへと送信する。
【0084】
更に、idx4は自身のデータをデータファイルに書き出し、それをデータ収集の応答(RES)としてマスタインクジェットプリンタへと送信する。
【0085】
このように設定項目グループと別に、任意の複数のインクジェットプリンタのデータを収集するデータ収集グループを設定すると共に、マスタインクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの設定項目の設定順序とは反対の順序で任意の複数のインクジェットプリンタのデータを収集する構成とされている。
【0086】
上述したデータファイルはどのような形式でもよいが、例えば、
図12に示すようなマークアップ形式のテキストファイルである。
【0087】
このように、本実施形態によれば、インクジェットプリンタの設定項目の設定だけでなく、インクジェットプリンタからデータを収集することも可能となる。
【0088】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
101、301、501…サーバ、102…インクジェットプリンタ、103…インクジェットプリンタ、104…インクジェットプリンタ、105…インクジェットプリンタ、106…インクジェットプリンタ、107…インクジェットプリンタ、108…インクジェットプリンタ、109…インクジェットプリンタ、110…インクジェットプリンタ、111…製造ラインA、112…製造ラインB、113…製造ラインC、114…文字サイズ設定グループ、115…賞味期限(印字内容)設定グループ、116…印字速度設定グループ、201…製造日、202…賞味期限、203…製造所、302…インクジェットプリンタ、502…マスタインクジェットプリンタ。