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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】電力線通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/00 20060101AFI20240430BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240430BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G08C19/00 P
G08C17/00 Z
H04Q9/00 311S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020087730
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182289
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】星 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】黒田 善雄
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010250(JP,A)
【文献】特開2017-121016(JP,A)
【文献】特開2015-115645(JP,A)
【文献】特開2014-154114(JP,A)
【文献】特開2014-072729(JP,A)
【文献】特開2013-187849(JP,A)
【文献】特開2011-250301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00 - 25/04
H03J 9/00 - 9/06
H04B 3/54 - 3/58
H04Q 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を使って電力線通信方式で通信する電力線通信回路無線で通信する無線通信回路および制御回路を有する通信機能部、並びに、電力量を計量する計量回路を備え、バンク内の電力線に複数接続される電力量計と、
各前記電力量計の前記計量回路で計量され、前記電力線通信回路によって電力線を伝搬して各前記電力量計から送信される計量値を受信する集約装置と
で前記バンク内にマルチホップ方式のネットワークを形成する電力線通信システムにおいて、
前記通信機能部は、
自身が設けられる設置バンクにおいて前記電力線通信回路によって前記集約装置と電力線通信を試みる電力線通信制御手段と、
前記電力線通信制御手段による前記集約装置との前記電力線通信が所定時間にわたって確立しない場合に、前記電力線通信制御手段による前記電力線通信の試みと並行して他のバンクに形成される前記ネットワーク内の設置バンク外前記通信機能部と前記無線通信回路によって無線通信を試み、それに応じて設置バンク外前記通信機能部から送信される無線信号を前記無線通信回路に受信した場合に設置バンク外前記通信機能部との無線通信を確立する無線通信制御手段と
記設置バンク内における他の前記電力量計の前記計量回路で計量される計量値を前記電力線通信回路による電力線通信によって前記集約装置の代わりに受信して、受信した計量値を自身の計量値と共に設置バンク外前記通信機能部へ前記無線通信回路によって無線送信する集約手段と、
前記無線通信制御手段による設置バンク外前記通信機能部との前記無線通信が確立し、かつ、前記無線通信と並行して行う前記設置バンク内における電力線通信によって前記設置バンク内におけるいずれの他の前記通信機能部も前記集約手段を機能させていないことが検知された場合に、自身の前記集約手段を機能させる集約機能起動手段と
して前記制御回路を機能させ、
前記制御回路は、前記無線通信制御手段による設置バンク外前記通信機能部への無線通信の試みを、前記設置バンク内の他の前記電力量計における前記無線通信制御手段による前記無線通信の試みと概ね同じタイミングで行い、それに応じて設置バンク外前記通信機能部から送信される前記無線信号を前記無線通信回路が受信しない場合には、前記設置バンク内の他の前記電力量計における前記通信機能部と概ね同じタイミングで、前記無線通信回路が受信することのできる前記無線信号の信号強度を段階的に下げるとともに、前記無線通信制御手段による前記無線通信の試みを再度行う
ことを特徴とする電力線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計で計量される計量値を電力線通信方式で電力線に送信して集約装置に収集する電力線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の電力線通信システムとしては、例えば、特許文献1に開示された電力線搬送通信システムがある。
【0003】
この電力線搬送通信システムでは、1つの降圧トランスを備える1バンク毎に、集約装置を構成する1台の親機と複数台の子機とで、ネットワークが構成されている。各ネットワークでは、各子機の電力量計で計量される計量値が、電力線を通信路に用いて親機に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-155201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のようなバンクが複数ある電力線通信システムでは、バンクの数だけ集約装置が必要となる。したがって、バンクによって、電力量計の設置台数が少なくなるバンクが存在する場合、そのバンクにも、電力量計の設置台数が多い他のバンクと同様に、集約装置を設置する必要がある。このため、従来の電力線通信システムでは、このような場合、そのバンクに関わるシステムの機器コストおよび工事コストが、電力量計の設置台数に対して割高となってしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
電力線を使って電力線通信方式で通信する電力線通信回路無線で通信する無線通信回路および制御回路を有する通信機能部、並びに、電力量を計量する計量回路を備え、バンク内の電力線に複数接続される電力量計と、
各電力量計の計量回路で計量され、電力線通信回路によって電力線を伝搬して各電力量計から送信される計量値を受信する集約装置と
でバンク内にマルチホップ方式のネットワークを形成する電力線通信システムにおいて、
通信機能部が、
自身が設けられる設置バンクにおいて電力線通信回路によって集約装置と電力線通信を試みる電力線通信制御手段と、
電力線通信制御手段による集約装置との電力線通信が所定時間にわたって確立しない場合に、電力線通信制御手段による電力線通信の試みと並行して他のバンクに形成されるネットワーク内の設置バンク外通信機能部と無線通信回路によって無線通信を試み、それに応じて設置バンク外通信機能部から送信される無線信号を無線通信回路に受信した場合に設置バンク外通信機能部との無線通信を確立する無線通信制御手段と
置バンク内における他の電力量計の計量回路で計量される計量値を電力線通信回路による電力線通信によって集約装置の代わりに受信して、受信した計量値を自身の計量値と共に設置バンク外通信機能部へ無線通信回路によって無線送信する集約手段と、
無線通信制御手段による設置バンク外通信機能部との無線通信が確立し、かつ、無線通信と並行して行う設置バンク内における電力線通信によって設置バンク内におけるいずれの他の通信機能部も集約手段を機能させていないことが検知された場合に、自身の集約手段を機能させる集約機能起動手段と
して制御回路を機能させ、
制御回路が、無線通信制御手段による設置バンク外通信機能部への無線通信の試みを、設置バンク内の他の電力量計における無線通信制御手段による無線通信の試みと概ね同じタイミングで行い、それに応じて設置バンク外通信機能部から送信される無線信号を無線通信回路が受信しない場合には、設置バンク内の他の電力量計における通信機能部と概ね同じタイミングで、無線通信回路が受信することのできる無線信号の信号強度を段階的に下げるとともに、無線通信制御手段による無線通信の試みを再度行う
ことを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、電力量計の設置台数が少なくなるバンクが存在する場合、そのバンク内の電力量計で計量される計量値は、そのバンクに集約装置を設けることなく、通信機能部が備える集約手段により、電力線通信によって収集され、他のバンクに形成されるネットワーク内の設置バンク外通信機能部へ、無線通信回路によって無線送信される。設置バンク外通信機能部へ無線送信された計量値は、設置バンク外通信機能部を含んで構成されるマルチホップ方式のネットワークにより、そのネットワークにおける集約装置に収集されることとなる。
【0008】
したがって、本構成によれば、電力量計の設置台数が少なくなるバンクが存在しても、そのバンクに集約装置を設けることなく、そのバンク内の電力量計で計量される計量値は、他のバンクのネットワークにおける集約装置に収集されるようになる。このため、そのバンクに関わるシステムの機器コストおよび工事コストが、電力量計の設置台数に対して割高となってしまう、従来の問題が解消される。
【0010】
本構成によれば、設置バンクに設置される複数の通信機能部のうち、設置バンク外通信機能部に最も近い位置に存在する通信機能部が最も早く、設置バンク外通信機能部から送信される無線信号を無線通信回路に受信する。また、その通信機能部は、無線通信と並行して行う電力線通信によって、設置バンク内におけるいずれの他の通信機能部も集約手段を機能させていないことを検知した場合、自身が最も早く、設置バンク外通信機能部から送信される無線信号を受信したことを認知する。この場合、その通信機能部は、集約機能起動手段によって自身の集約手段を機能させ、設置バンクにおいて集約装置に代わって各電力量計の計量値を収集する。このため、集約装置に代わってその機能を果たすこととなる通信機能部は、設置バンク外通信機能部に最も近くに存在して、設置バンク外通信機能部と安定した無線通信を行えるものになり、集約装置による各ネットワーク内電力量計の計量値の収集は、信頼性高く確実に行えるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力量計の設置台数が少なくなるバンクが存在する場合に、そのバンクに関わるシステムの機器コストおよび工事コストが、電力量計の設置台数に対して割高となってしまう、従来の問題を解消できる電力線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による電力線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示すスマートメータの内部構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態による電力線通信システムで、通信機能部がサブコンセントレータとして動作を開始するまでの処理の流れを示すタイミングチャート図である。
図4】一実施形態による電力線通信システムにおける、サブコンセントレータを介したネットワーク間の接続処理を表すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による電力線通信システムを実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による電力線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【0015】
通信方式に電力線通信(PLC:Power Line Communication)方式を利用したスマートメータ向け電力線通信システムは、降圧トランスTr1,Tr2,Tr3の各二次側(低圧側)のバンク1,2,3において、電力線4を介してネットワークを形成している。電力線通信の信号は、降圧トランスTr1,Tr2,Tr3の二次側から一次側(高圧側)へ超えることはあるが、信号の損失が大きいため、一般的に電力線通信のネットワークは、降圧トランスTr1,Tr2,Tr3毎(バンク毎)に形成される。本実施形態の電力線通信システムは、降圧トランスTr1の二次側のバンク1に集約装置(以下、コンセントレータと称する)5を備えるPLCネットワークA、各降圧トランスTr2,3の二次側のバンク2,3にコンセントレータ5を備えないPLCサブネットワークB,Cがそれぞれ形成されている。
【0016】
PLCネットワークAは、1台のコンセントレータ(CR)5と複数台のスマートメータ(SM)6とで、バンク1内に電力線4を介してマルチホップ方式のネットワークを形成している。また、PLCサブネットワークB,Cは、それぞれ、複数台のスマートメータ6だけで、バンク2,3内に電力線4を介してマルチホップ方式のネットワークを形成している。
【0017】
図2は、スマートメータ6の内部構成を示すブロック図である。
【0018】
スマートメータ6は、他のスマートメータ6およびコンセントレータ5と電力線通信によってマルチホップ方式のネットワークを構成する通信機能部7と、計量回路8から構成される計量器9とを備えて構成される、通信機能付き電力量計である。このスマートメータ6は、各バンク1,2,3内の電力線4に複数接続される。計量回路8は、スマートメータ6が設置される需要家の電力量を計量する。通信機能部7は、電力線4を使って電力線通信方式でマルチホップ通信する電力線通信回路10と、920[MHz]の周波数帯で無線でマルチホップ通信する無線通信回路11と、計量回路8で計量された計量値を通信機能部7に取り込むメータIF回路12と、通信機能部7の全体動作を制御する制御回路13とを備えて、構成される。
【0019】
PLCネットワークAにおいては、メータIF回路12から取り込まれる計量値は、電力線通信回路10によって電力線4を通信路として30分周期でコンセントレータ5へ送信される。コンセントレータ5は、各スマートメータ6から送信される計量値を収集して、図示しないMDMS(Meter Data Management System:メータデータ管理システム)へ送信する。また、無線通信回路11は、需要家内に設置されるHEMS機器と無線通信し、メータIF回路12から取り込まれる計量値等をHEMS機器に表示させる。また、PLCサブネットワークB,Cにおける通信機能部7の無線通信回路11は、後述するように、PLCネットワークAに参入済みの通信機能部7に無線補完接続する。
【0020】
制御回路13は、CPUおよびメモリを備え、メモリにはCPUの動作処理を規定するコンピュータプログラムが記憶されている。CPUがこのコンピュータプログラムに従って動作することで、制御回路13は、電力線通信制御手段、無線通信制御手段、および、集約手段として機能する。
【0021】
電力線通信制御手段は、通信機能部7自身が設けられるいずれかの設置バンク1,2,3において、電力線通信回路10によってコンセントレータ5と電力線通信を試みる。設置バンク2,3にはコンセントレータ5が存在しないため、設置バンク2,3における通信機能部7の無線通信制御手段は、コンセントレータ5との電力線通信が所定時間にわたって確立しない。この場合、無線通信制御手段は、他のバンク1に形成されるPLCネットワークA内の設置バンク外通信機能部7と無線通信回路11によって無線通信を試みる。集約手段は、PLCネットワークA内の設置バンク外通信機能部7との無線通信が確立した場合に、設置バンク2,3内におけるスマートメータ6の計量回路8で計量される計量値を、電力線通信回路10による電力線通信によって収集して、収集した計量値を設置バンク外通信機能部7へ無線通信回路11によって無線送信する。
【0022】
本実施形態では、通信機能部7における制御回路13は、さらに集約機能起動手段を備える。集約機能起動手段は、無線通信回路11に受信することのできる無線信号の信号強度を時間の経過に従って下げ、設置バンク外通信機能部7との無線通信と並行して行う設置バンク2,3内における電力線通信によって、設置バンク2,3内におけるいずれの他の通信機能部7も上記の集約手段を機能させていないことが検知され、かつ、設置バンク外通信機能部7から送信される無線信号を無線通信回路11に受信した場合に、自身の集約手段を機能させる。
【0023】
自身の集約手段を機能させた制御回路13を持つ通信機能部7は、図1に点線枠で示すスマートメータ6のようにサブコンセントレータ(SCR)となり、設置バンク2,3でコンセントレータ5に代わってコンセントレータ5としての機能を果たす。通信機能部7の、計量値を電力線通信で送信するPLC機能と、サブコンセントレータとして動作する機能とは、制御回路13のソフトウエア制御により、適宜切り替えられる。
【0024】
図3は、本実施形態による電力線通信システムで、通信機能部7がサブコンセントレータとして動作を開始するまでの処理の流れを示すタイミングチャート図である。
【0025】
本実施形態による電力線通信システムでは、PLCネットワーク形成の前提として、通信機能部7のビーコンの発呼によるブロードキャストで、マルチホップ方式の通信が行われる。コンセントレータ5は、通信機能部7からのネットワーク参入を常時待ち受けているものとし、通信機能部7は、起動後、自発的にコンセントレータ5あるいはコンセントレータ5に接続している通信機能部7に接続を試みるものとする。
【0026】
同図に示すように、時間t1で、通信機能部7に電源が供給されて通信機能部7が起動すると、通信機能部7は、時間t1から時間t2までの所定の一定時間、電力線通信回路10による電力線4を使った電力線通信により、PLCネットワークへの参入を試みる。この所定の一定時間にわたって通信機能部7がPLCネットワークへ参入できない、通信機能部7の設置バンクがバンク2,3の場合、通信機能部7は、時間t2において無線通信回路11を起動し、電力線通信回路10の電力線通信による参入の試みと並行して、無線通信回路11の無線通信によってもPLCネットワークへの参入を補完的に試みる。
【0027】
その無線通信によるPLCネットワークへの参入の試みは、その通信機能部7が属するバンク2,3内で、無線の通信強度が強い通信機能部7が優先してサブコンセントレータとなるよう、時間経過に従い、ビーコン受信強度の接続閾値を下げて行くことで行われる。無線の通信に時間t3で成功した通信機能部7は、時間t3を境に、PLCの動作をPeer(ピア)からCoordinator(コーディネーター)に切り替え、サブコンセントレータとして動作するようになる。
【0028】
図4は、サブコンセントレータを介したネットワーク間の接続処理を表すシーケンス図である。
【0029】
このシーケンスは、降圧トランスTr1のバンク1におけるコンセントレータ5およびスマートメータ6の通信機能部7(以下、通信機能部1と記す)と、降圧トランスTr2のバンク2における2台のスマートメータ6の通信機能部7(以下、通信機能部2,3と記す)との間で行われる処理を例として示している。また、このシーケンスでは、図の上側から下側に向かって時間が経過するものとし、実線で示す通信は電力線通信回路10による電力線通信(PLC)、破線で示す通信は無線通信回路11による無線通信、二重楕円はブロードキャストを表している。
【0030】
バンク1では、通信機能部1がまずビーコン信号をブロードキャストし、二重楕円で示すように(1)ビーコン・リクエスト(Beacon Request)をする。コンセントレータ5は、この(1)ビーコン・リクエストを検知して、(2)ビーコン信号を通信機能部1へ返信する。このビーコン信号の授受により、通信機能部1とコンセントレータ5との間で(3)接続認証が行われる。その後、通信機能部1は、バンク1に形成されるPLCネットワークAへの(4)登録要求を送信する。コンセントレータ5はこの(4)登録要求を受信すると、(5)通信機能部1をPLCネットワークAに登録する。そして、通信機能部1をPLCネットワークAに登録したことを知らせる(6)登録応答を、通信機能部1へ送信する。
【0031】
一方、バンク2では、各通信機能部2,3の起動後、各通信機能部2,3は電力線通信回路10によるPLCで、図示しないビーコン・リクエストを発し、PLCネットワークへの参入を試みる。バンク2にはコンセントレータ5が存在しないので、そのビーコン・リクエストに対する応答は、各通信機能部2,3に得られない。この状態が一定時間経過すると、各通信機能部2,3は、電力線通信回路10のPLCによる(7)ビーコン・リクエスト,(8)ビーコン・リクエストに並行して、無線通信回路11の無線通信による(9)ビーコン・リクエスト,(10)ビーコン・リクエストをする。
【0032】
この無線通信は、集約機能起動手段により、各通信機能部2,3が無線信号を受信することのできる信号強度が、時間の経過に従って3段階に低下させられ、当初、受信強度が閾値3以上に設定される。つまり、各通信機能部2,3の無線通信回路11は、閾値3以上の強度の無線信号でなければ、信号受信できない状態に設定される。各通信機能部1,2,3の位置関係は、同図に図示する位置関係と対応しており、バンク2内の通信機能部2は、通信機能部3よりもバンク1内の通信機能部1に近い位置に存在する。
【0033】
したがって、(9)ビーコン・リクエスト,(10)ビーコン・リクエストに応じて、通信機能部2には通信機能部1から強度2のビーコン信号が受信され、通信機能部3には、通信機能部1から強度1のビーコン信号が受信される。このため、各通信機能部2,3に受信される無線信号の強度は、各通信機能部2,3に設定されている受信強度閾値3以上に達しない。したがって、各通信機能部2,3には(9)ビーコン・リクエスト,(10)ビーコン・リクエストに応答する信号が受信されない。
【0034】
このため、集約機能起動手段により、各通信機能部2,3が無線信号を受信することのできる信号強度が一段階低下され、受信強度が閾値2以上に設定される。つまり、各通信機能部2,3の無線通信回路11は、閾値2以上の強度の無線信号でなければ、信号受信できない状態に設定される。そして、各通信機能部2,3は、再度、電力線通信回路10のPLCによる(11)ビーコン・リクエスト,(12)ビーコン・リクエストに並行して、無線通信回路11の無線通信による(13)ビーコン・リクエスト,(14)ビーコン・リクエストをする。
【0035】
この(13)ビーコン・リクエスト,(14)ビーコン・リクエストに応じて、通信機能部1から、再度、通信機能部2には強度2、通信機能部3には強度1の各ビーコン信号が受信される。このため、受信強度が閾値2以上に設定された通信機能部2は、通信機能部1から送信されるビーコン信号を受信することができる。よって、通信機能部2と通信機能部1との間で(15)接続認証が行われ、通信機能部2と接続認証を行った通信機能部1は、電力線通信回路10のPLCによってコンセントレータ5に対して通信機能部2の(16)登録要求を行う。この(16)登録要求を受信したコンセントレータ5は、(17)通信機能部2をPLCネットワークAに登録し、その登録をしたことを知らせる(18)登録応答を通信機能部1へ送信する。通信機能部1は、コンセントレータ5から受信した(18)登録応答を、無線通信で(19)登録応答として、通信機能部2へ送信する。
【0036】
この際、通信機能部2は、PLCの(11)ビーコン・リクエストにより、設置バンク2内における他の通信機能部7が上記の集約手段を機能させていないことを検知している。したがって、通信機能部2は、バンク2内で最も早く通信機能部1から送信されるビーコン信号を受信したことを認知する。よって、通信機能部2は、自身が有する集約手段を機能させ、サブコンセントレータとしての動作を開始し、PLC動作をPeerからCoordinatorに切り替え、PLCサブネットワークBにおいて、次のようにコンセントレータ5としての機能を果たすようになる。
【0037】
すなわち、通信機能部2は、通信機能部3からのPLCによる(20)ビーコン・リクエストを受信すると、そのリクエストに応じて、(21)ビーコン信号を通信機能部3へ送信する。よって、通信機能部3と通信機能部2との間で(22)接続認証が行われ、通信機能部2と接続認証を行った通信機能部3は、電力線通信回路10のPLCによって通信機能部2に対して通信機能部3の(23)登録要求を行う。この(23)登録要求を受信した通信機能部2は、通信機能部1へ無線通信によって通信機能部3の(24)登録要求を行う。この(24)登録要求を受信した通信機能部1は、コンセントレータ5に対して通信機能部3の(25)登録要求をPLCによって行う。
【0038】
(25)登録要求を受信したコンセントレータ5は、(26)通信機能部3をPLCネットワークAに登録し、その登録をしたことを知らせる(27)登録応答を、通信機能部1へ送信する。通信機能部1は、コンセントレータ5から受信した(27)登録応答を、無線通信で(28)登録応答として、通信機能部2へ送信する。(28)登録応答を受信した通信機能部2はPLCで(29)登録応答として、通信機能部3へ送信する。通信機能部3は(29)登録応答を受信することで、自身のネットワーク登録が行われたことを知る。
【0039】
なお、上記の説明では、バンク2における通信機能部2,3の信号受信強度が3段階の場合について説明したが、その段階数は任意であり、3段階に限定されるものではない。また、上記の説明ではバンク2内のスマートメータ6とバンク1内のスマートメータ6との間の接続について説明したが、バンク3内のスマートメータ6とバンク1内のスマートメータ6との間の接続も同様に行われる。
【0040】
このような本実施形態による電力線通信システムによれば、スマートメータ6の設置台数が少なくなるバンク、例えば、バンク2,3が存在する場合、そのバンク2,3内のスマートメータ6で計量される計量値は、そのバンク2,3にコンセントレータ5を設けることなく、サブコンセントレータとなる通信機能部7の制御回路15が備える集約手段により、電力線通信によって収集され、他のバンク1に形成されるPLCネットワークA内の設置バンク外通信機能部7へ、無線通信回路11によって無線送信される。設置バンク外通信機能部7へ無線送信された計量値は、設置バンク外通信機能部7を含んで構成されるマルチホップ方式のPLCネットワークAにより、そのネットワークにおけるコンセントレータ5に収集されることとなる。
【0041】
したがって、本実施形態による電力線通信システムによれば、スマートメータ6の設置台数が少なくなるバンク2,3が存在しても、そのバンク2,3にコンセントレータ5を設けることなく、そのバンク2,3内のスマートメータ6で計量される計量値は、他のバンク1のPLCネットワークAにおけるコンセントレータ5に収集されるようになる。すなわち、集約手段を起動した1台の通信機能部7がPLC親機としてバンク2,3内にPLCサブネットワークB,Cを形成し、無線通信によりPLCネットワークAと連携することにより、1台のコンセントレータ5でサブコンセントレータを含む全てのスマートメータ6の管理が可能となる。このため、そのバンク2,3に関わるシステムの機器コストおよび工事コストが、スマートメータ6の設置台数に対して割高となってしまう、従来の問題が解消される。
【0042】
また、本実施形態による電力線通信システムによれば、設置バンク2,3に設置される複数の通信機能部7のうち、設置バンク外通信機能部7に最も近い位置に存在する通信機能部7が最も早く、設置バンク外通信機能部7から送信される無線信号を無線通信回路11に受信する。また、その通信機能部7は、無線通信と並行して行う電力線通信によって、設置バンク2,3内におけるいずれの他の通信機能部7も集約手段を機能させていないことを検知した場合、自身が最も早く、設置バンク外通信機能部7から送信される無線信号を受信したことを認知する。この場合、その通信機能部7は、集約機能起動手段によって自身の集約手段を機能させ、設置バンク2,3においてコンセントレータ5に代わって各スマートメータ6の計量値を収集する。このため、コンセントレータ5に代わってその機能を果たすこととなる通信機能部7は、設置バンク外通信機能部7に最も近くに存在して、設置バンク外通信機能部7と安定した無線通信を行えるものになり、コンセントレータ5による各ネットワークA,B,C内におけるスマートメータ6の計量値の収集は、信頼性高く確実に行えるようになる。
【0043】
また、本実施形態による電力線通信システムによれば、バンク2,3にもコンセントレータ5が設けられていて、各バンク2,3におけるスマートメータ6のPLC通信によって、自身の属するバンク2,3のコンセントレータ5と通信ができない場合に、そのスマートメータ6で計量される計量値は、他のバンク1のPLCネットワークAにおけるコンセントレータ5に収集されるようになる。このため、自身の属するバンク2,3のコンセントレータ5とPLC通信ができないスマートメータ6が、ネットワークから孤立してしまうことを救うこともできる。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3…バンク
4…電力線
5…集約装置(コンセントレータ:CR)
6…スマートメータ(電力量計:SM)
7…通信機能部
8…計量回路
9…計量器
10…電力線通信回路
11…無線通信回路
12…メータIF回路
13…制御回路
SCR…サブコンセントレータ
図1
図2
図3
図4