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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】シート搬送装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240430BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B65H5/06 P
B65H5/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020090980
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021187562
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011464(JP,A)
【文献】特開2009-179447(JP,A)
【文献】特開2001-019177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 5/38
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送手段を備えるシート搬送装置であって、
第1軸を中心に回動可能に設けられ、前記シート搬送手段によってシートが搬送される第1搬送路を開放する第1開位置と、前記第1搬送路にシートが搬送される第1閉位置と開閉可能な第1開閉部材と、
前記第1軸とは異なる第2軸を中心に回動可能に設けられ、シート搬送方向において前記第1搬送路の下流に設けられる第2搬送路を開放する第2開位置と、前記第2搬送路にシートが搬送される第2閉位置と開閉可能な第2開閉部材と、
前記第1開閉部材に設けられた第1部材と、
前記第2開閉部材に設けられ、前記第2開閉部材が前記第2閉位置にある際に、前記第1開閉部材開閉する際の前記第1部材の移動軌跡に干渉する位置に配置されている第2部材と、を備え、
前記第1開閉部材が前記第1閉位置、かつ前記第2開閉部材が前記第2閉位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1閉位置から前記第1開位置へと移動するときに、前記第1部材と前記第2部材とが干渉して前記第2開閉部材に伝達される力によって、前記第2開閉部材が前記第2閉位置から前記第2開位置に向かって移動し、
前記第2開閉部材が前記第2閉位置、かつ前記第1開閉部材が前記第1開位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1開位置から前記第1閉位置へと移動するときに、前記第1部材と前記第2部材との干渉によって前記第2部材が前記第1部材の移動軌跡から退避して、前記第1開閉部材が前記第1閉位置まで移動することを可能にする、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第2開閉部材に回動可能に支持され、前記第2部材に係合可能な軸部材と、
前記軸部材の回動により、前記第2開閉部材を前記第2閉位置にロックする第2開閉部材ロック位置と、前記第2開閉部材のロックを解除する第2開閉部材解除位置とに切替えられる第2開閉部材ロック機構と、を備え、
前記第1開閉部材が前記第1閉位置、かつ前記第2開閉部材が前記第2閉位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1閉位置から前記第1開位置へと移動する際に、前記第1部材の移動力を前記第2部材を介して前記軸部材に伝達して、前記第2開閉部材ロック機構を前記第2開閉部材ロック位置から前記第2開閉部材解除位置に切り替えることで、前記第2開閉部材が前記第2閉位置から前記第2開位置に向かって回動可能となり、
前記第2開閉部材が前記第2閉位置、かつ前記第1開閉部材が前記第1開位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1開位置から前記第1閉位置へと移動する際に、前記第2部材が前記第1部材の移動軌跡から退避し、前記第2開閉部材ロック機構を前記第2開閉部材ロック位置から前記第2開閉部材解除位置に切り替えることなく、前記第1開閉部材が前記第1閉位置まで移動することを可能にする、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記軸部材は、外周に係合部を有し、
前記第2部材は、前記軸部材に回動自在に支持されると共に、前記係合部に隙間を存して係合する被係合部を有し、
前記第2部材を、前記軸部材を中心とした回動方向の一方側に付勢する付勢部材、を備え、
前記第1開閉部材が前記第1閉位置、かつ前記第2開閉部材が前記第2閉位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1閉位置から前記第1開位置へと移動する際に、前記付勢部材の付勢力により前記係合部と前記被係合部とが当接した状態で、前記第2部材が前記軸部材に対して前記回動方向の一方側の係合位置で係合されることで、前記第1部材の移動力を前記第2部材を介して前記軸部材に伝達し、
前記第2開閉部材が前記第2閉位置、かつ前記第1開閉部材が前記第1開位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1開位置から前記第1閉位置へと移動する際に、前記係合部と前記被係合部との前記隙間によって、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2部材が前記軸部材に対して前記回動方向の他方側の退避位置に回動されることが許容されることで、前記第1部材の移動力によって前記第2部材が前記退避位置に移動し、前記第2部材が前記第1部材の移動軌跡から退避する、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記軸部材に連結され、ユーザの操作に応じて前記第2開閉部材ロック機構を前記第2開閉部材ロック位置と前記第2開閉部材解除位置とに切替可能な第2開閉部材操作部材、を備える、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第1開閉部材に設けられ、前記第1開閉部材を前記第1閉位置にロックする第1開閉部材ロック位置と、前記第1開閉部材のロックを解除する第1開閉部材解除位置とに切り替えられる第1開閉部材ロック機構と、
前記第1開閉部材ロック機構に連結され、ユーザの操作に応じて前記第1開閉部材ロック機構を前記第1開閉部材ロック位置と前記第1開閉部材解除位置とに切替可能な第1開閉部材操作部材と、を備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第1開閉部材は、前記第1搬送路を形成する第1搬送ガイド面を有し
前記第2開閉部材は、シート搬送方向に関して前記第1搬送ガイド面よりも下流において前記第2搬送路を形成する第2搬送ガイド面を有している、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第1軸は、前記第2軸と交差する軸と平行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
請求項1からのいずれか1項に記載のシート搬送装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像形成装置には、シート詰まりが発生したときに搬送路を開放してシートを除去可能とした構成のものがある。例えば、特許文献1には、搬送路を開放する際に、搬送路を形成する2つの案内部材を連動して回動させる構成を備えるシート搬送装置が開示されている。特許文献1では、内側案内部材と第1案内部材とによって形成された第1搬送路と、第1案内部材と第2案内部材とによって形成された第2搬送路とを第2案内部材の回動に伴って第1案内部材を回動させることで開放している。具体的に、装置の扉が閉じた状態では、第1案内部材に設けられた係合片と、第2案内部材に設けられた突起とが係合している。そして、扉が閉じた状態から扉が開く方向に第2案内部材を回動させるのに伴って第1案内部材が回動することで、係合片と突起との係合が解除されて第1案内路と第2案内路とが開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-179447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、係合片の移動軌跡に干渉する位置に突起を設けることで、第2案内部材の回動に伴って第1案内部材を回動させることができる。しかし、第2搬送路だけを開放した状態で扉が閉じる方向へ第2案内部材が回動すると、突起と係合片とが干渉してしまい、扉が閉じられなくなる事態が生じうる。このような場合、扉を閉じるためには、第1搬送路及び第2搬送路の両方を開放してから扉が閉じる方向に第2案内部材を操作する必要があるため、操作性を損ねてしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、複数の部材を連動させて扉を開放する際に、操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シートを搬送するシート搬送手段を備えるシート搬送装置であって、第1軸を中心に回動可能に設けられ、前記シート搬送手段によってシートが搬送される第1搬送路を開放する第1開位置と、前記第1搬送路にシートが搬送される第1閉位置と開閉可能な第1開閉部材と、前記第1軸とは異なる第2軸を中心に回動可能に設けられ、シート搬送方向において前記第1搬送路の下流に設けられる第2搬送路を開放する第2開位置と、前記第2搬送路にシートが搬送される第2閉位置と開閉可能な第2開閉部材と、前記第1開閉部材に設けられた第1部材と、前記第2開閉部材に設けられ、前記第2開閉部材が前記第2閉位置にある際に、前記第1開閉部材開閉する際の前記第1部材の移動軌跡に干渉する位置に配置されている第2部材と、を備え、前記第1開閉部材が前記第1閉位置、かつ前記第2開閉部材が前記第2閉位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1閉位置から前記第1開位置へと移動するときに、前記第1部材と前記第2部材とが干渉して前記第2開閉部材に伝達される力によって、前記第2開閉部材が前記第2閉位置から前記第2開位置に向かって移動し、前記第2開閉部材が前記第2閉位置、かつ前記第1開閉部材が前記第1開位置である状態から、前記第1開閉部材が前記第1開位置から前記第1閉位置へと移動するときに、前記第1部材と前記第2部材との干渉によって前記第2部材が前記第1部材の移動軌跡から退避して、前記第1開閉部材が前記第1閉位置まで移動することを可能にすることを特徴とするシート搬送装置である
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の部材を連動させて扉を開放する際に、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のプリンタの概略構成図。
図2】実施例1の両面搬送パスを開放したときのプリンタを示す図。
図3】実施例1の搬送路を開放していないときの搬送下ガイドの斜視図。
図4】実施例1の搬送路を開放しているときの搬送下ガイドの斜視図。
図5】実施例1の連動機構の拡大図(A、B、C)。
図6】実施例1の連動機構の拡大図(A、B、C)。
図7】実施例1の変形例としての搬送下ガイドの斜視図(A、B)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
<画像形成装置の全体構成>
始めに、図1を参照して実施例1のシート搬送装置、及び画像形成装置としてのプリンタ100の構成について説明する。図1は、プリンタ100の概略構成図である。プリンタ100は、筐体100A、100Bを有する。またプリンタ100は、画像形成処理を実行する画像形成手段としてのエンジン部101Aと、シートSにトナー像を定着させる第1定着部150及び第2定着部160と、シートSを給送する給送部113と、シートSを搬送する搬送部170とを有する。また、プリンタ100は、エンジン部101A、第1定着部150、第2定着部160、給送部113、搬送部170を制御可能な制御部102と、画像形成処理の実行や各種の設定のためにユーザによって操作される操作部180とを有する。
【0011】
図1のエンジン部101Aは、Y(イエロー)ステーション120、M(マゼンタ)ステーション121、C(シアン)ステーション122、K(ブラック)ステーション123を含み、フルカラーの画像形成出力が可能な構成である。Yステーション120、Mステーション121、Cステーション122、Kステーション123は、トナーの色が異なる以外は共通化された構成である。Yステーション120、Mステーション121、Cステーション122及びKステーション123は、それぞれ、レーザスキャナ部107、感光体ドラム105、一次帯電器111、現像器112を有する。Yステーション120、Mステーション121、Cステーション122及びKステーション123では、制御部102から供給されるイメージデータに応じてレーザスキャナ部107から感光体ドラム105にレーザ光が照射される。レーザスキャナ部107は、半導体レーザ等から発射されるレーザ光を回転多面鏡や反射ミラーに反射させて感光体ドラム105に向けて照射する。感光体ドラム105の表面は、予め一次帯電器111によって一様な電荷を帯びるように帯電されている。そして、レーザスキャナ部107から照射されたレーザ光により、感光体ドラム105の表面が露光されてイメージデータに応じた静電潜像が形成される。感光体ドラム105の表面に形成された静電潜像は、現像器112においてトナー像に顕像化される。そして、感光体ドラム105表面のトナー像は、中間転写体106上に転写(1次転写)される。このようにして、中間転写体106上にYMCK各色のトナー像が順次転写されフルカラーの可視像が中間転写体106上に形成される。
【0012】
給送部113から給送されたシートSは、搬送部170の搬送ユニット142によって転写ローラ114に向けて搬送される。中間転写体106上に形成された可視像は、転写ローラ114によってシートS転写される(2次転写)。なお、感光体ドラム105及び現像器112は着脱可能である。また、中間転写体106の周囲には、画像形成を行なうに際し印字開始位置を決めるための位置検出センサ115や、シートSの給送タイミングを図るためのタイミングセンサ116が配置されている。転写ローラ114によってトナー像が転写されたシートは、第1定着部150に向けて搬送される。第1定着部150は、シートSに熱を加える定着ローラ151と、シートSを定着ローラ151に圧接させる加圧ベルト152と、定着完了を検知する定着後センサ153を含み、シートSに転写されたトナー像を加熱及び加圧によって定着させる。定着ローラ151は内部にヒータを有し、回転駆動されると同時にシートSを加圧ベルト152と挟持して搬送するように構成されている。第1定着部150を通過したシートSは、第2定着部160に向けて搬送される。
【0013】
第2定着部160は、第1定着部150よりもシートSの搬送方向下流に配置されており、第1定着部150でトナー像が定着されたシートSに対してグロスを付加したり、定着性を向上させることができる。第2定着部160も、第1定着部150同様に定着ローラ161、加圧ローラ162、定着後センサ163を有し、シートSを加熱及び加圧可能に構成されている。なお、シートSの種類によっては、第2定着部160での加圧及び加熱が必要無いものが存在する。この場合、プリンタ100のエネルギー消費量を抑制するために、第2定着部160を経由せずに搬送パス130に向けてシートSを搬送する。シートSは、切替フラップ部材131によって搬送パス130に案内される。そして、第2定着部160又は搬送パス130を通過したシートSは、切替フラップ部材132、134によって排出搬送パス143又は反転搬送パス135に案内される。反転搬送パス135に案内されたシートSは、反転センサ137によってシートSの位置が検出された後、反転部136でスイッチバックされる。反転部136でスイッチバックされて、搬送方向におけるシートSの先後端が入れ替わった状態になる。反転されたシートSは、両面搬送パス138及び搬送ユニット142を経由して再び転写ローラ114に向けて搬送され、裏面に対して表面と同様にトナー像が転写及び定着される。シートが搬送される搬送路の一例としての両面搬送パス138は、搬送ユニット139、140、141によって形成される。搬送ユニット139、140、141には、シートを挟持して搬送するローラ対が複数設けられている。本実施例のシート搬送手段としての搬送部170は、搬送パス130、及び反転搬送パス135に設けられているローラ対と、搬送ユニット139、140、141、142とによって構成されている。
【0014】
<シート詰まり発生時の処理構成>
次に、本実施例において両面搬送パス138においてシート詰まり(ジャム)が発生したときの処理について図2を参照して説明する。図2は、両面搬送パス138を開放したときのプリンタ100を示す図である。搬送ユニット139、140は、筐体100A、100Bの正面から見て奥側に回動支点を有する搬送下ガイド139A、140Aを有し、不図示のハンドルによって正面側が開放する構成になっている。搬送ユニット141は、筐体100A、100Bの正面側から見て右側(搬送方向の下流側)に回動支点を有する搬送下ガイド141Aを有し、不図示のハンドルによって左側(搬送方向の上流側)が開放する構成となっている。搬送ユニット142は、筐体100Aに対して不図示のレールにより挿抜可能に支持されており、筐体100Aの正面側から見て手前方向に挿抜可能な構成となっている。プリンタ100では、搬送方向の長さが著しく長いシート(いわゆる長尺シート)を搬送することができる。そのため、搬送ユニット139、140、141を開いて両面搬送パス138を開放可能にして、長尺シートのジャムが発生してもジャムしたシートの除去を容易に行うことができる。
【0015】
<搬送下ガイド140A、141Aの開閉構成>
次に、搬送下ガイド140A、141Aの開閉構成について説明する。図3は、両面搬送パス138が開放されていないときの搬送下ガイド140A、141Aの斜視図である。図4は、両面搬送パス138が開放されているときの搬送下ガイド140A、141Aの斜視図である。搬送下ガイド140Aは、両面搬送パス138を形成する第1搬送ガイド面としての搬送面140Bを有している。また、搬送下ガイド140Aは、本実施例の第1扉操作部材としてのハンドル301を有し、ハンドル301を図3の矢印D1方向に押し込むことで軸303と一体支持されているフック304A、304Bを回転させる。フック304A、304Bが回転し、筐体100B(図1、2参照)に支持されているキャッチャ305A、305Bから外れることで搬送下ガイド140Aはロックが解除される。この結果、搬送下ガイド140Aは、第1軸としての回動軸309を中心に回動可能な状態となる(図4参照)。本実施例の第1扉ロック機構は、軸303と、フック304A、304Bと、キャッチャ305A、305Bとによって構成されている。両面搬送パス138が開放されていない状態で搬送下ガイド140Aの移動を規制(ロック)するときのフック304A、304B及びキャッチャ305A、305Bの位置が本実施例の第1扉ロック位置である。第1扉ロック位置では、フック304Aとキャッチャ305Aとが係合し、さらにフック304Bとキャッチャ305Bとが係合した状態である。一方、搬送下ガイド140Aのロックが解除されたときのフック304A、304B及びキャッチャ305A、305Bの位置が本実施例の第1扉解除位置である。第1扉解除位置では、フック304Aとキャッチャ305Aとの係合、及びフック304Bとキャッチャ305Bとの係合が解除されている。
【0016】
搬送下ガイド141Aは、シート搬送方向において、搬送下ガイド140Aの下流に配置されており、両面搬送パス138を形成する第2搬送ガイド面としての搬送面141Bと、本実施例の第2扉操作部材としてのハンドル302とを有する。ハンドル302は軸部材306に連結されており、ハンドル302を図3の矢印D2方向に押し込むことで軸部材306に一体支持されているフック307A、307Bが反時計回りに回転する。フック307A、307Bが反時計回りに回転して、筐体100A(図1、2参照)に支持されている軸308A、308Bから外れることで搬送下ガイド141Aのロックが解除される。この結果、搬送下ガイド141Aは、第2軸としての回動軸310を中心に反時計回りに回動可能な状態となる(図4参照)。回動軸310は、回動軸309と交差する方向に平行に伸びる軸であり、回動軸309とはねじれの位置関係にある。本実施例の第2扉ロック機構は、軸部材306と、フック307A、307Bと、軸308A、308Bとによって構成されている。両面搬送パス138が開放されていない状態で搬送下ガイド141Aの移動を規制(ロック)するときのフック307A、307B及び軸308A、308Bの位置が本実施例の第2扉ロック位置である。第2扉ロック位置では、フック307Aと軸308Aとが係合し、さらにフック307Bと軸308Bとが係合した状態である。一方、搬送下ガイド141Aのロックが解除されたときのフック307A、307B及び軸308A、308Bの位置が本実施例の第2扉解除位置である。第2扉解除位置では、フック307Aと軸308Aとの係合、及びフック307Bと軸308Bとの係合が解除されている。
【0017】
<搬送下ガイド140A、141Aの連動構成>
次に、本実施例において搬送下ガイド140A、141Aを連動して回動するための構成について図5及び6を参照して説明する。図5及び図6では、図3の破線領域313の拡大図を示している。まず、図5(A)を参照して、図3の破線領域313に示された搬送下ガイド140A、141Aの構成について説明する。図5(A)は、両面搬送パス138(図1、2参照)が開放されていないときの搬送下ガイド140A、141Aの連動構成を示す図である。
【0018】
搬送下ガイド141Aには、軸部材306に対して一方向にのみ回転するように設けられているリンク311が設けられている。一方、搬送下ガイド140Aには、搬送下ガイド140Aと一体形成された突起部312が設けられている。本実施例の第1部材が突起部312であり、第2部材がリンク311である。また、本実施例では、第1部材としての突起部312が設けられている搬送下ガイド140Aを第1扉とし、第2部材としてのリンク311が設けられている搬送下ガイド141Aを第2扉としている。なお、突起部312を搬送下ガイド141Aに設け、第2部材としてのリンク311を搬送下ガイド140Aに設ける構成としてもよい。また、両面搬送パス138が開放されていないとき(図1、3参照)の搬送下ガイド140Aの位置が本実施例の第1閉位置であり、両面搬送パス138が開放されているとき(図2、4参照)の搬送下ガイド140Aの位置が本実施例の第1開位置である。さらに、両面搬送パス138が開放されていないとき(図1、3参照)の搬送下ガイド141Aの位置が本実施例の第2閉位置であり、両面搬送パス138が開放されているとき(図2、4参照)の搬送下ガイド141Aの位置が本実施例の第2開位置である。本実施例では、搬送下ガイド140Aが第1開位置と第1閉位置とに切替可能に構成されており、搬送下ガイド141Aが第2開位置と第2閉位置とに切替可能に構成されている。
【0019】
本実施例では、両面搬送パス138が開放されていない状状態で、搬送下ガイド140Aを第1開位置に向けて回動させると、搬送下ガイド140Aの回動に伴って搬送下ガイド141Aも連動して回動する構成となっている。両面搬送パス138が開放されていない状態とは、搬送下ガイド140Aが第1閉位置、かつ搬送下ガイド141Aが第2閉位置の場合である。図5(A)は上述したように、両面搬送パス138が開放されていないときの搬送下ガイド140A、141Aの連動構成を示す図である。図5(B)は、図5(A)の位置から搬送下ガイド140Aが回動して突起部312にリンク311が当接した状態を示す図である。図5(C)は、図5(B)の位置から、さらに搬送下ガイド140Aが回動した状態を示す図である。
【0020】
図5(A)に示すように、軸部材306には、平行ピン401を挿入可能な孔が形成されている。孔は、軸部材306を貫通するように形成してもよく、また、平行ピン401をはめ込める程度の深さの窪みとして形成してもよい。孔に挿入されて、軸部材306の外周から突出した状態の平行ピン401によって本実施例の係合部が構成されている。また、リンク311は、平行ピン401と係合可能な被係合部としての凹部314を有し、凹部314に平行ピン401が係合することで軸部材306にリンク311が支持されている。凹部314は、軸部材306に挿入された状態の平行ピン401との間に、平行ピン401の移動を許容するための隙間314A、314Bを存して、軸部材306を中心とした扇型に形成されている。隙間314A、314Bを平行ピン401が移動することにより、リンク311は軸部材306に対して回動自在に支持されている。また、リンク311には、軸部材306を中心とした回動方向の一方側に向けてリンク311を付勢する付勢部材としてのトーションばね315が設けられている。本実施例では、トーションばね315の付勢力により、軸部材306に挿入された平行ピン401が凹部314に対して凹部314の一側面に当接した状態でリンク311と軸部材306とが係合している。また、リンク311は、このような構造により、平行ピン401が凹部314の一側面に当接した位置で、軸部材306に対して反時計回りに回動しないように規制される。平行ピン401が凹部314の一側面に当接した状態での軸部材306に対するリンク311の位置が本実施例の係合位置の一例である。つまり、図5(A)の位置においてリンク311は、軸部材306に対して時計回りには回動可能であるものの、反時計回り(図5(C)のY1方向)への回動が規制されている。図5(A)では、軸部材306に挿入された平行ピン401が凹部314に対して凹部314の一側面に当接した状態で係合しているときのリンク311と軸部材306とを示している。
【0021】
図5(A)に示す位置から、ハンドル301(図3参照)を操作して図5(B)のX1方向に搬送下ガイド140Aを回動させると、突起部312がリンク311に干渉する。これは、両面搬送パス138が開放されていない状態から搬送下ガイド140Aを回動させたときに、突起部312の移動軌跡と干渉する位置にリンク311が配置されているためである。図5(B)に示すように、突起部312と干渉したリンク311に対して、突起部312からはX1方向の力が伝達される。X1方向の力はリンク311を反時計回りに回転させる力であるが、上述したようにリンク311は、軸部材306に対して反時計回りへの回動が規制されている。これにより、突起部312からのX1方向への移動力は搬送下ガイド141Aに伝達されて、軸部材306を図5(C)のY1方向に回転させる力として作用する。突起部312とリンク311とが干渉して軸部材306に伝達された力によって、軸部材306がY1方向に回転することで、フック307Aと軸308Aとの係合が解除される。この結果、搬送下ガイド141Aは、搬送下ガイド140Aの回動に伴って、両面搬送パス138を開放する位置に向かって回動することが可能となる。
【0022】
次に、両面搬送パス138が開放された状態から搬送下ガイド141Aを先に第2閉位置に移動させてから、搬送下ガイド140Aを第1開位置から第1閉位置に移動させたときの搬送下ガイド140A、141Aの構成について説明する。図6(A)は、両面搬送パス138が搬送下ガイド141Aでのみ開放されているときの搬送下ガイド140A、141Aの構成を示す図である。図6(B)は、図6(A)の位置から搬送下ガイド140Aが回動したときの搬送下ガイド140A、141Aの構成を示す図である。図6(C)は、図6(B)の位置から、さらに搬送下ガイド140Aが回動したときの搬送下ガイド140A、141Aの構成を示す図である。
【0023】
図6(A)の搬送下ガイド141Aが第2閉位置であり、かつ搬送下ガイド140Aが第1開位置である状態から、搬送下ガイド140Aを図6(B)のX2方向に回動させて第1閉位置に向けて移動させる。すると、突起部312とリンク311とが干渉して突起部312からリンク311に対してX2方向の移動力が伝達される。X2方向の移動力はリンク311を時計回り(図6(B)のY2方向)に回転させる力である。そして、リンク311は、トーションばね315の付勢力に抗して、平行ピン401が凹部314の一側面からY2方向の他方側に設けられた側面に当接するまで回動する。リンク311の回動方向に関して、平行ピン401が隙間314A、314Bを経由して、凹部314の他方側に設けられた側面に当接するまでの軸部材306に対するリンク311の位置が本実施例の退避位置の一例である。軸部材306に対してリンク311が時計回りに回動することにより、リンク311が突起部312の移動軌跡から退避する(図6(B))。つまり、突起部312の移動軌跡から退避する方向へのリンク311の回動が凹部314に設けられた隙間314A、Bによって許容されているため、リンク311と突起部312との相対的な位置が入れ替わる。この結果、搬送下ガイド140AをX2方向に移動することが可能となり、最終的には搬送下ガイド140Aを第1閉位置まで移動させることができる。また、リンク311は、突起部312の移動軌跡から退避したのち、平行ピン401が凹部314の一側面に当接するまで、トーションばね315の付勢力によって反時計回り(図6(C)のY1方向)に回動する。このとき、軸部材306は回転しないので、フック307Aと軸308Aとは係合した状態である。この結果、本実施例では、搬送下ガイド140A、141Aの操作順に関わらず、両面搬送パス138を形成する位置又は開放する位置に搬送下ガイド140A、141Aを操作することができる。
【0024】
従来のプリンタでは、異なる複数のガイド部材を連動させて搬送路を開放することができた一方で、連動機構がガイド部材を操作して搬送路を形成するときの妨げとなっていた。これに対して、本実施例では、搬送下ガイド140A、141Aを連動させるリンク311と突起部312との相対的な位置を入れ替え可能とする。これにより、搬送下ガイド140A、141Aの操作順に関わらず、両面搬送パス138を形成する又は開放することができるため、操作性を向上させることが可能となる。
【0025】
<変形例>
また図7(A、B)のように、例えば搬送下ガイド601、602がそれぞれ平行な回動支点603、604を中心に回動開閉するような構成にも実施例1の構成を適用することができる。この場合、搬送下ガイド601に突起312A及びリンク311B、搬送下ガイド602にリンク311A及び突起312Bを配置するような構成を採用してもよい。これにより、搬送下ガイド601と602のどちらか一方のみを開くだけで搬送下ガイド601、602の両方が連動して開く構成となる。さらに、搬送下ガイド601、602が開いた状態で、搬送下ガイド601、602のどちらから先に閉めても相互に干渉することなく閉じることが出来る構成となっている。
【0026】
<その他の実施例>
実施例1では、搬送下ガイド140A、141Aをロックする第1扉ロック機構及び第2扉ロック機構として回動式のフックを軸やキャッチャに引っ掛ける方法を採用している。これ以外にも、例えばマグネットのような、一定の付勢力(マグネットにおける引力等)以上の力を加えると開くロック手段を用いてもよい。
【0027】
また、搬送下ガイド140A、141Aに相当する構成を、複数枚のシートを順次給送及び搬送して、読み取りを行う自動原稿給送装置を備える構成としてもよい。この場合、自動原稿給送装置が本実施例のシート搬送装置である。また、搬送下ガイド140A、141Aに相当する構成を有するフィニッシャ等、シートの搬送を実行可能なシート搬送装置に対しても本実施例の構成を適用することができる。
【0028】
さらに、プリンタ100が搬送ユニット140を含むひとつの筐体によって構成されるものとしてもよい。また、プリンタ100に開閉可能に設けられた複数の扉に対して突起部312やリンク311に相当する構成を設けることにより、実施例1と同様に、操作性を向上させて複数の扉を開閉することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 プリンタ(画像形成装置、シート搬送装置)/101A エンジン部(画像形成手段)/138 両面搬送パス(搬送路)/140A 搬送下ガイド(第1扉)/140B 搬送面(第1搬送ガイド面)/141A 搬送下ガイド(第2扉)/141B 搬送面(第2搬送ガイド面)/170 搬送部(シート搬送手段)/301 ハンドル(第1扉操作部材)/302 ハンドル(第2扉操作部材)/303 軸(第1扉ロック機構)/304A、304B フック(第1扉ロック機構)/305A、305B キャッチャ(第1扉ロック機構)/306 軸部材/307A、307B フック(第2扉ロック機構)/308A、308B 軸(第2扉ロック機構)/309 回動軸(第1軸)/310 回動軸(第2軸)/311 リンク(第2部材)/312 突起部(第1部材)/314 凹部(被係合部)/314A、314B 隙間/315 トーションばね(付勢部材)/401 平行ピン(係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7