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特許7479935体液解析装置、体液解析装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】体液解析装置、体液解析装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020091623
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021186008
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 岳人
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159708(WO,A1)
【文献】特開2014-188323(JP,A)
【文献】特開2010-274120(JP,A)
【文献】特開2020-028390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0220123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03、5/055、6/00-6/58、8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記関心領域設定部により設定された関心領域に一以上の部分領域を設定する部分領域設定部と、
前記部分領域設定部により設定された部分領域ごとの基準方向を設定する基準方向設定部と、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定する流れ方向決定部と、
前記基準方向設定部により設定された前記部分領域ごとの基準方向と、前記流れ方向決定部により決定された前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定する判定部と、を備え、
前記基準方向設定部は、対象の部分領域と、前記対象の部分領域から所定範囲内に存在する周辺部分領域とに基づいて形成される角度に基づいて前記対象の部分領域に対する基準方向を設定する
液解析装置。
【請求項2】
前記関心領域設定部は、前記医用画像に含まれる被検体内の部位の構造に関する情報または前記被検体内に留置された医療機器に関する情報のうち一方または双方に基づいて、前記医用画像に関心領域を設定する、
請求項1に記載の体液解析装置。
【請求項3】
前記関心領域は、心臓弁により形成される弁口領域を含む、
請求項1または2に記載の体液解析装置。
【請求項4】
前記部分領域設定部は、前記医用画像に含まれる被検体内の部位の構造を示す情報または前記被検体内に留置された医療機器に関する情報のうち一方または双方に基づいて、前記部分領域を設定する、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項5】
前記基準方向設定部は、前記部分領域ごとに設定した基準方向に基づいて、前記関心領域における基準方向の分布を設定する、
請求項1から4のうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項6】
前記医用画像は、時相の異なる複数の医用画像を含み、
前記基準方向設定部は、時相の異なる複数の医用画像における前記部分領域の移動情報に基づいて、前記部分領域における前記基準方向を設定する、
請求項1からのうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記部分領域ごとの基準方向および体液の流れ方向と、前記部分領域の周囲に存在する周囲部分領域における体液の流れ方向とに基づいて、前記部分領域における体液の流れの状態を判定する、
請求項1からのうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記部分領域の基準方向と、前記部分領域の体液の流れ方向と、前記関心領域における前記部分領域の位置とに基づいて、前記部分領域の体液の流れ状態を判定する、
請求項1からのうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項9】
前記流れ方向決定部は、前記部分領域ごとの体液の流量および流速を決定し、
前記判定部は、前記部分領域の基準方向と、前記体液の流れ方向と、前記体液の流速または流量のうち一方または双方とに基づいて、前記部分領域における体液の流れの状態を判定する、
請求項1からのうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項10】
前記判定部により判定された前記関心領域における体液の流れ方向に関する情報を含む画像を生成し、生成した画像を表示部に表示させる表示制御部を更に備え、
前記表示制御部は、前記関心領域に含まれる部分領域の位置と、前記部分領域における体液の流れの状態を示す情報とを対応付けた画像を生成する、
請求項1からのうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記部分領域ごとに前記体液の流れ方向を示す画像を生成する、
請求項10に記載の体液解析装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記判定部による判定結果に基づいて前記体液の流れの状態を示す画像の表示態様を変更する、
請求項10または11に記載の体液解析装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記部分領域ごとに前記体液の流れが順流であるか、または逆流であるかを判定し、
前記表示制御部は、前記判定部による判定結果が順流である場合と前記逆流である場合とで、前記体液の流れを示す画像の表示態様を異ならせる、
請求項12に記載の体液解析装置。
【請求項14】
前記判定部は、前記部分領域ごとの前記体液の流れ状態に基づいて、前記関心領域における体液の状態を判定する、
請求項1から13のうち何れか1項に記載の体液解析装置。
【請求項15】
医用画像に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記関心領域設定部により設定された関心領域に一以上の部分領域を設定する部分領域設定部と、
前記部分領域設定部により設定された部分領域ごとの基準方向を設定する基準方向設定部と、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定する流れ方向決定部と、
前記基準方向設定部により設定された前記部分領域ごとの基準方向と、前記流れ方向決定部により決定された前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定する判定部と、を備え、
前記部分領域設定部は、前記関心領域内に、前記関心領域の端部からの距離に応じた大きさの複数の部分領域を設定する、
液解析装置。
【請求項16】
体液解析装置のコンピュータが、
医用画像に関心領域を設定し、
設定した前記関心領域に一以上の部分領域を設定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向を設定し、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向と、決定した前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定し、
対象の部分領域と、前記対象の部分領域から所定範囲内に存在する周辺部分領域とに基づいて形成される角度に基づいて前記対象の部分領域に対する基準方向を設定する
体液解析装置の制御方法。
【請求項17】
体液解析装置のコンピュータが、
医用画像に関心領域を設定し、
設定した前記関心領域に一以上の部分領域を設定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向を設定し、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向と、決定した前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定し、
前記関心領域内に、前記関心領域の端部からの距離に応じた大きさの複数の部分領域を設定する、
体液解析装置の制御方法。
【請求項18】
体液解析装置のコンピュータに、
医用画像に関心領域を設定させ、
設定された前記関心領域に一以上の部分領域を設定させ、
設定された前記部分領域ごとの基準方向を設定させ、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定させ、
設定された前記部分領域ごとの基準方向と、決定された前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定させ、
対象の部分領域と、前記対象の部分領域から所定範囲内に存在する周辺部分領域とに基づいて形成される角度に基づいて前記対象の部分領域に対する基準方向を設定させる
プログラム。
【請求項19】
体液解析装置のコンピュータに、
医用画像に関心領域を設定させ、
設定された前記関心領域に一以上の部分領域を設定させ、
設定された前記部分領域ごとの基準方向を設定させ、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定させ、
設定された前記部分領域ごとの基準方向と、決定された前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定させ、
前記関心領域内に、前記関心領域の端部からの距離に応じた大きさの複数の部分領域を設定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、体液解析装置、体液解析装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
体液の流れには、体の部位によって正常な方向への流れと異常な方向への流れとが存在する場合がある。例えば、心臓においては、血流の異常な方向への流れは心不全の原因となるため、血流の方向の把握や、血流の状態の判定は、とても重要となる。従来では、血管の心尖方向を基準方向として、基準方向からの血流のずれに基づいて状態を判定する方法や、超音波のビーム方向を基準方向として血流状態を判定する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、体液の流れを判定したい関心領域が歪んだ形状である場合や治療によって関心領域が歪む場合には、関心領域における体液の流れの状態を正確に解析することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6162452号公報
【文献】特許第3691855号公報
【文献】特表2014-503291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、関心領域における体液の流れの状態をより正確に解析することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の体液解析装置は、関心領域設定部と、部分領域設定部と、基準方向設定部と、流れ方向決定部と、判定部とを備える。関心領域設定部は、医用画像に関心領域を設定する。部分領域設定部は、前記関心領域設定部により設定された関心領域に一以上の部分領域を設定する。基準方向設定部は、前記部分領域設定部により設定された部分領域ごとの基準方向を設定する。流れ方向決定部は、前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定する。判定部は、前記基準方向設定部により設定された前記部分領域ごとの基準方向と、前記流れ方向決定部により決定された前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の体液解析装置を含む体液解析システム1の構成例を示す図。
図2】処理回路140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
図3】心臓の解剖学的構造について説明するための模式図(その1)。
図4】心臓の解剖学的構造について説明するための模式図(その2)。
図5】解剖学的構造に基づいて設定される関心領域について説明するための図。
図6】部分領域設定機能146について説明するための図。
図7】部分領域の他の設定の一例について説明するための図。
図8】基準方向設定機能148により設定される基準方向について説明するための図。
図9】流れ状態判定機能152により実行される処理について説明するためのフローチャート。
図10】部分領域ごとの血液の流れ状態の判定内容について説明するための図。
図11】判定不能領域の判定も含む流れ状態判定機能152により実行される処理について説明するためのフローチャート。
図12】表示制御機能154により生成される画像IM1の一例を示す図。
図13】周辺の一部を集約した血液の流れ状態を含む画像IM2の一例を示す図。
図14】基準方向を示す画像を含む画像IM3の一を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の体液解析装置、体液解析装置の制御方法、およびプログラムについて説明する。
【0009】
図1は、実施形態の体液解析装置を含む体液解析システム1の構成例を示す図である。体液解析システム1は、例えば、外部装置10と、体液解析装置100とを備える。外部装置10と体液解析装置100とは、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、専用回線、無線基地局、プロバイダ等のネットワークNWを介して接続される。外部装置10は、例えば、医用画像を撮影または診断可能な、X線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置等である。医用画像は、例えば、実施形態における体液の流れ方向が決定可能な種類の画像、または上記画像との解剖学的な位置合わせが可能な種類の画像である。医用画像には、例えば、CT画像やMRI画像、および超音波画像等が含まれる。また、外部装置10は、各種の医用画像データを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)や、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステム等であってもよい。また、外部装置10は、ストレージサーバやデータベース等の記憶装置であってもよい。
【0010】
体液解析装置100は、ネットワークNWを介して外部装置10から取得した情報に基づいて、医用画像を用いて体液に関する解析を行う。ここで、実施形態において解析対象となる体液とは、例えば、被検体内の特定の位置(例えば、血管や臓器等の部位における関心領域)において、正常時の流れ方向が特定できる流体物である。体液には、例えば、血液、胃液、尿、および脳脊髄液のうち、少なくとも一つが含まれる。体液に関する解析には、例えば、体液の流れの状態に関する情報が含まれる。流れの状態とは、例えば、体液の流れが順流(正常)または逆流(異常)であるかを示す情報である。また、流れの状態には、例えば、体液が流れる方向に関する情報や、流速、流量に関する情報等が含まれてもよい。
【0011】
体液解析装置100は、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140と、メモリ160とを備える。ディスプレイ130は、「表示部」の一例である。通信インターフェース110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを含む。通信インターフェース110は、ネットワークNWを介して外部装置10と接続され、外部装置10との間でデータ通信を行う。
【0012】
入力インターフェース120は、利用者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作(操作内容)を処理回路140に出力する。例えば、入力インターフェース120は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等により実現される。また、入力インターフェース120は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインターフェースによって実現されてもよい。入力インターフェース120がタッチパネルである場合、後述するディスプレイ130は入力インターフェース120と一体として形成されてよい。また、入力インターフェース120は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られず、例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する信号を受け取り、この信号を制御回路へ出力する処理回路も入力インターフェース120の例に含まれる。
【0013】
ディスプレイ130は、各種の情報を表示する。ディスプレイ130は、例えば、表示制御機能154の制御により生成された画像や、利用者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を所定の表示態様で表示する。例えば、ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0014】
処理回路140は、例えば、取得機能142と、関心領域設定機能144と、部分領域設定機能146と、基準方向設定機能148と、流れ方向決定機能150と、流れ状態判定機能152と、表示制御機能154とを備える。処理回路140は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(メモリ160)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0015】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ160にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ160に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が体液解析装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ160にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。取得機能142は、「取得部」の一例である。関心領域設定機能144は、「関心領域設定部」の一例である。部分領域設定機能146は、「部分領域設定部」の一例である。基準方向設定機能148は、「基準方向設定部」の一例である。流れ方向決定機能150は、「流れ方向決定部」の一例である。流れ状態判定機能152は、「判定部」の一例である。表示制御機能154は、「表示制御部」の一例である。
【0016】
メモリ160は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。非一過性の記憶媒体を含むこれらの記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といったネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、メモリ160には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の一過性の記憶媒体が含まれてもよい。メモリ160には、例えば、画像データ162、部位構造データ164、プログラム、およびその他の情報が格納される。メモリ160は、「記憶部」の一例である。画像データ162は、例えば外部装置10から取得した医用画像が含まれる。部位構造データ164は、例えば、体内の血管又は臓器等の各部位ごとに、解剖学的構造に関する情報が対応付けられた情報である。解剖学的構造に関する情報には、例えば、部位の少なくとも一部の形状や動きを、部位の構造情報に基づいて解析した情報が含まれる。
【0017】
次に、処理回路140によって実行される処理について説明する。図2は、処理回路140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図2の処理は、実施形態における体液解析装置100により実行される処理の一例と言い換えてもよい。図2の例において、まず、取得機能142は、ネットワークNWを介して接続された外部装置10から医用画像を取得する(ステップS100)。取得した医用画像は、画像データ162としてメモリ160に格納されてよい。なお、取得機能142は、医用画像を取得する他、外部装置10や入力インターフェース120により受け付けられた利用者からの操作内容等を取得してもよい。また、取得機能142は、外部装置10からの要求を取得し、取得した要求に基づく解析結果等の情報を外部装置10に提供してもよい。
【0018】
次に、関心領域設定機能144は、取得機能142により取得された医用画像の関心領域を設定する(ステップS110)。関心領域とは、本実施形態の体液の解析を行う領域である。次に、部分領域設定機能146は、関心領域に対する一以上の部分領域を設定する(ステップS130)。次に、基準方向設定機能148は、部分領域設定機能146により設定された各部分領域における基準方向を設定する(ステップS130)。次に、流れ方向決定機能150は、部分領域ごとに体液の流れ方向を決定する(ステップS140)。
【0019】
次に、流れ状態判定機能152は、基準方向設定機能148により設定された基準方向と、流れ方向決定機能150により決定された血液の流れ方向とに基づいて、部分領域ごとの血液の流れ状態を判定する(ステップS150)。次に、表示制御機能154は、流れ状態判定機能152による判定結果を含む画像を生成し(ステップS160)、生成した画像を体液に関する解析結果としてディスプレイ130に表示させる(ステップS170)。以下、ステップS110~ステップS170の各処理の内容について、具体的に説明する。
【0020】
まず、ステップS110の処理について説明する。例えば、関心領域設定機能144は、取得機能142により取得された処理対象の医用画像を、表示制御機能154によりディスプレイ130に表示させる。そして、関心領域設定機能144は、ディスプレイ130に表示された医用画像に対し、入力インターフェース120により受け付けられた利用者からの操作内容に基づいて、ディスプレイ130に表示された医用画像に対して関心領域を設定する。
【0021】
また、関心領域設定機能144は、医用画像に含まれる部位の構造に関する情報に基づいて、医用画像に対する関心領域を設定してもよい。例えば、関心領域設定機能144は、医用画像に対して二値化やグラフカット等の処理を行い、処理結果に基づく輝度抽出やエッジ抽出等の特徴を抽出する画像解析を行う。また、関心領域設定機能144は、画像解析により得られた特徴情報と、予め用意された部位のテンプレートを用いたパターンマッチング等の手法を用いて医用画像に含まる部位を推定する。そして、関心領域設定機能144は、メモリ160に記憶された部位構造データ164を参照し、推定された部位に対応する解剖学的構造に関するに基づいて関心領域を設定する。以下では、部位の一例として心臓を用い、体液の一例として血液を用いて説明する。
【0022】
図3および図4は、心臓の解剖学的構造について説明するための模式図(その1、その2)である。図3および図4は、人体の頭部方向(上方向)から見た心臓弁の構造を示す断面図である。図3は心臓の収縮期における弁の状態を示し、図4は心臓の拡張期における弁の状態を示している。図3および図4に示すように、心臓200には、血液の逆流を防ぐための三尖弁(右房室弁)210、僧帽弁(左房室弁)220、大動脈弁230、および肺動脈弁240が存在する。ここで、正常な心臓の収縮期には、図3に示すように、三尖弁210と僧帽弁220が閉鎖され、大動脈弁230と肺動脈弁240が開放される。また、正常な心臓の拡張期には、図4に示すように、三尖弁210と僧帽弁220が解放され、大動脈弁230と肺動脈弁240が閉鎖される。このように、心臓弁の動きは解剖学的構造に基づいて特定されるため、弁の解放時の弁口領域等についても特定することができる。
【0023】
図5は、解剖学的構造に基づいて設定される関心領域について説明するための図である。図5の例では、三尖弁210の構造の模式図を示している。三尖弁210は、前尖212と、中隔尖214と、後尖216とからなる。血液は、前尖212と、中隔尖214と、後尖216とから形成される弁口領域218を流れるため、関心領域設定機能144は、医用画像に三尖弁210が含まれる場合に、解剖学的構造に基づく弁口領域218に基づいて関心領域を設定する。このように、医用画像に含まれる部位の解剖学的構造に基づいて関心領域を設定することで、血液の流れ状態を解析する関心領域を、より適切に設定することができる。
【0024】
また、関心領域設定機能144は、上述した解剖学的構造に代えて(または加えて)、治療または診断用に体内に留置する医療機器の構造に関する情報に基づいて、関心領域を設定してもよい。医療機器とは、例えば、人体の管状の部分を管腔内部から広げるステントや、人工心臓弁等である。医療機器は医用画像からも識別可能であるとともに、形状が特定されるため、体内に留置する医療機器の構造に基づいて、その付近の関心領域をより適切に設定することができる。
【0025】
なお、関心領域設定機能144は、二次元の関心領域を設定してもよく、三次元の関心領域を設定してもよい。例えば、関心領域設定機能144は、血管の延伸方向に対して垂直な断面(平面)を二次元の関心領域として設定する。また、関心領域設定機能144は、弁口領域に基づいて関心領域を設定する場合、解剖学的構造から得られる血管の閉鎖時の弁によって形成される面(弁面)に相当する解放時の弁口面を三次元の関心領域として設定する。これにより、歪んだ形状の関心領域を設定することができる。
【0026】
また、関心領域設定機能144は、上述した手法に代えて(または加えて)、事前に学習用データによって学習された学習モデルから関心領域を設定してもよい。学習モデルは、例えば、機械学習やニューラルネットワーク等が利用されたモデルである。学習モデルは、例えば、医用画像から得られる特徴情報を入力すると、医用画像に対する関心領域が出力されるものである。関心領域設定機能144は、取得機能142により取得された医用画像の特徴情報を学習モデルに入力することで、その医用画像の関心領域を取得することができる。なお、学習モデルは、メモリ160に記憶されてよい。
【0027】
また、関心領域設定機能144は、例えば、上述した解剖学的構造や学習モデルによって設定された関心領域を示す画像をディスプレイ130に表示させ、入力インターフェース120により受け付けられた操作内容に基づいて表示された関心領域の形状を調整してもよい。
【0028】
また、関心領域設定機能144は、医用画像に対して予め設定された大きさ、形状、画像上の位置に基づいて関心領域を設定してもよい。また、関心領域設定機能144は、医用画像の全領域を関心領域として設定してもよい。また、関心領域設定機能144は、一つの医用画像に対して複数の関心領域を設定してもよい。
【0029】
次に、ステップS120の処理について説明する。図6は、部分領域設定機能146について説明するための図である。なお、図6の例では、図5に示す三尖弁210の弁口領域218に基づいて関心領域300が設定されているものとする。例えば、部分領域設定機能146は、関心領域300に対して、所定の大きさからなる格子形状で分割された部分領域310を設定する。格子の大きさは、例えば、関心領域300の大きさや関心領域300を含む人体の部位に基づいて設定される。
【0030】
また、格子の大きさは、関心領域300の位置によって可変に設定されてよい。例えば、関心領域300の中心付近(例えば、中心から所定距離以内)は、領域端部付近よりも血流の状態変化が少ないことが想定される。そのため、部分領域設定機能146は、関心領域300の中心付近の部分領域を領域端部付近よりも大きく設定する(または、領域端部付近の部分領域を、中心付近よりも小さく設定する)。これにより、より効率的、且つより正確に血流の状態を解析することができる。また、部分領域設定機能146は、分割した複数の格子のうち一以上の格子の領域を部分領域として設定してもよい。また、部分領域設定機能146は、格子以外の形状(丸形状や長方形)で部分領域を設定してもよい。
【0031】
図7は、部分領域の他の設定の一例について説明するための図である。例えば、部分領域設定機能146は、例えば、図7に示すように、関心領域300の輪郭形状に基づいて同心円状に部分領域320をしてもよい。また、部分領域設定機能146は、関心領域300の輪郭線上に部分領域320を設定してもよい。また、部分領域設定機能146は、関心領域300の中心または重心を基準として同心円状に部分領域320を設定してもよい。また、部分領域設定機能146は、関心領域300の端部(輪郭部)からの距離に応じて部分領域の大きさや数を動的に変更して設定してもよい。
【0032】
また、部分領域設定機能146は、医用画像の画素単位で部分領域を設定してもよい。また、部分領域設定機能146は、関心領域300に含まれる所定数の部分領域をランダムに設定してもよい。また、部分領域は、領域に含まれる所定の点(例えば中心または重心等)であってもよい。
【0033】
また、部分領域設定機能146は、上述した関心領域設定機能144と同様に解剖学的構造または体内に留置する医療機器の構造に関する情報のうち、一方または双方に基づいて部分領域を設定してもよい。これにより、関心領域のうち、特に血流の状態の解析が被検者の診断の支援に有効となる部分領域を設定することができる。
【0034】
また、部分領域設定機能146は、入力インターフェース120により受け付けられた利用者の操作内容に基づいて、部分領域の数や位置を設定してもよい。本実施形態に係る処理は、部分領域の数によって処理コスト(例えば、処理時間、CPUやメモリの使用率等)が大きく変わるため、利用者に状況や用途等に合わせて部分領域の数や位置を入力させることで、より適切な処理コストで実施できる。
【0035】
次に、ステップS130の処理について説明する。図8は、基準方向設定機能148により設定される基準方向について説明するための図である。図8の例では、図6において設定された部分領域310A、310Bと関心領域300との関係を簡略化して示している。
【0036】
基準方向設定機能148は、例えば、基準方向を設定する対象の部分領域(以下、対象部分領域と称する)と、対象部分領域の周期の部分領域との位置関係に基づいて基準方向を設定する。例えば、関心領域300が二次元(平面)の領域である場合には、対象部分領域と、対象部分領域の左右の二つの方向に位置する部分領域(以下、周囲部分領域と称する)との合計三つの部分領域の位置関係によって決定される角度の二等分線を基準方向として設定する。
【0037】
例えば、対象部分領域310Aの左右方向の周囲部分領域をそれぞれ310AL、310ARとした場合、基準方向設定機能148は、対象部分領域310Aの中心と周囲部分領域310ALの中心とを結ぶ直線と、対象部分領域310Aの中心と周囲部分領域310ARの中心とを結ぶ直線を設定がなす角度θAの二等分線を、基準方向Baとして設定する。また、対象部分領域310Bの左右方向の周囲部分領域をそれぞれ310BL、310BRとした場合、基準方向設定機能148は、対象部分領域310Bの中心と周囲部分領域310BLの中心とを結ぶ直線と、対象部分領域310Bの中心と周囲部分領域310BRの中心とを結ぶ直線とがなす角度θBの二等分線を、基準方向Bbとして設定する。各部分領域に対して同様の処理を行うことで、関心領域が平面でない(歪んでいる)領域であっても、部分領域ごとに適切な基準方向を設定することができる。
【0038】
また、基準方向設定機能148は、関心領域300が三次元(立体)の領域である場合には、対象部分領域の左右の二点に加えて、前後や上下等の多方向に位置する6つの周囲部分領域を設定して、対象部分領域と周辺部分領域との位置関係によって形成される複数の直線が成す角に基づいて基準方向と設定してもよい。なお、周囲部分領域は、対象部分領域に隣接する部分領域でもよく、対象部分領域から見た一方向に対して複数の部分領域を用いてもよい。基準方向設定機能148は、入力インターフェース120により受け付けられた利用者の操作内容に基づいて、基準方向を設定してもよい。
【0039】
また、基準方向設定機能148は、対象部分領域と周囲部分領域との位置関係に代えて(または加えて)、解剖学的構造を用いて基準方向を設定してもよい。例えば、僧帽弁の弁口領域が関心領域として設定されている場合、基準方向設定機能148は、画像解析等により左心室および左心房の領域を抽出し、抽出した左心室の領域の中心(または重心)と、左心房の領域の中心(または重心)とを結ぶ直線と各部分領域との位置関係に基づいて部分領域を設定する。なお、基準方向設定機能148は、左心室や左心房に限らず、腱索や乳頭筋等の構造等に基づいて、基準方向を設定してもよい。これにより、心臓領域全体の構造(形状等)に基づいて、より適切に基準方向を設定することができる。
【0040】
また、基準方向設定機能148は、一つの時相の医用画像に基づいて基準方向を設定してもよく、時相の異なる複数の医用画像に基づいて基準方向を設定してもよい。例えば、関心領域が弁口領域である場合、弁の動作によって弁口領域が変形するため、関心領域の形状も変形する。したがって、時相の異なる複数の医用画像を用いる場合、基準方向設定機能148は、異なる時点で撮像された複数の医用画像において、既存の変形位置合わせ手法を用いて、複数の医用画像における各部分領域の位置同士を対応付ける。そして、基準方向設定機能148は、対応付けたそれぞれの部分領域において、複数の医用画像における基準方向を設定する。例えば、部分領域における時点T1~Tmのそれぞれの時点における三次元の基準方向が(T1α,T1β,T1γ)~(Tmα,Tmβ,Tmγ)で表現される場合、基準方向設定機能148は、対象部分領域の基準方向を、各時点の基準方向の平均値(Σ(Tmα)/m,Σ(Tmβ)/m,Σ(Tmγ)/m)によって算出する。
【0041】
また、基準方向設定機能148は、各部分領域に対する基準方向に基づいて、関心領域全体に対する基準方向の分布を設定してもよい。例えば、基準方向設定機能148は、関心領域の形状に応じた正常な体液の流れ状態を所定の数値流体解析や機械学習を用いて算出し、算出した結果に基づいて基準方向の分布を設定してもよい。また、基準方向設定機能148は、設定した基準方向の分布に基づいて、各部分領域における基準方向を調整してもよい。また、基準方向設定機能148は、同一被験者が過去に実行した体液解析の実行履歴データから、過去に設定した同一部位の基準方向または基準方向の分布を設定してもよい。
【0042】
次に、ステップS140の処理について説明する。例えば、流れ方向決定機能150は、医用画像の種類に応じて異なる手法で血液方向(体液の流れ方向)を決定する。例えば、医用画像が超音波画像である場合、流れ方向決定機能150は、部分領域を流れる血液のドプラ効果によって得られる情報に基づいて血流方向を決定する。また、流れ方向決定機能150は、ドプラ効果によって得られる情報に基づいて、部分領域における血液の流速、流量等の情報を取得してもよい。また、医用画像がMRI画像の場合、流れ方向決定機能150は、例えば4D-Flow MRI解析等の既知の解析技術を用いて部分領域における血流方向を決定する。また、流れ方向決定機能150は、MRI画像の解析結果から部分領域を流れる血液の流速や流量を取得してもよい。また、医用画像がCT画像である場合、流れ方向決定機能150は、造影剤を用いた複数時相(時系列)のCT画像に基づいて造影剤の流れから血流方向を決定する。また、流れ方向決定機能150は、例えば、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析に基づいてCT画像から血流方向をシミュレーションしてもよい。
【0043】
また、流れ方向決定機能150は、上述した複数種類の医用画像のうち、二種類以上の医用画像を用いてそれぞれ決定された血流方向を総合的に判断して最終的な血流方向を決定してもよい。例えば、流れ方向決定機能150は、CT画像に対して部分領域を設定し、CT画像と超音波画像とにおいて、解剖学的構造により変形させて部分領域の位置を合わせ、CT画像上の部分領域に対して超音波画像によって決定された血流方向を適用してもよい。なお、変形して位置合わせする手法としては、例えば、FFD(Free Form Deformation)手法やLDDMM(Large Deformation Diffeomorphic Metric Mapping)手法等の既知の手法を用いることができる。
【0044】
次に、ステップS150の処理について説明する。図9は、流れ状態判定機能152により実行される処理について説明するためのフローチャートである。流れ状態判定機能152は、部分領域ごとに基準方向と体液の流れ方向(例えば、血流方向)とを取得し(ステップS151)、基準方向に対する流れ方向の角度を算出する(ステップS152)。次に、流れ状態判定機能152は、算出した角度が所定角度以上であるか否かを判定する(ステップS153)。所定角度以上であると判定した場合、流れ状態判定機能152は、対象部分領域における体液の流れが逆流であると判定する(ステップS154)。また、算出した角度が所定角度以上ではないと判定した場合、対象部分領域における体液の流れが順流であると判定する(ステップS155)。
【0045】
ステップS154またはステップS155の処理後、全ての部分領域について体液の流れ状態を判定したか否かを判定する(ステップS156)。全ての部分領域において、流れ状態を判定していないと判定された場合、流れ状態判定機能152は、ステップS151の処理に戻り、流れ状態を判定していない部分領域を対象部分領域として処理を実行する。また、ステップS156の処理において、全ての部分領域において体液の流れ状態を判定した場合、本フローチャートの処理は、終了する。なお、図9に示す処理では、全ての部分領域に対して血流の状態の判定を行ったが、これに限定されるものではなく、予め設定された所定数または所定の位置の部分領域のみついて判定を行ってもよい。
【0046】
図10は、部分領域ごとの血液の流れ状態の判定内容について説明するための図である。図10の例では、図8と同様に部分領域310A、310Bと関心領域300との関係を簡略化して示している。図10は、部分領域310Aに対する基準方向Baおよび血流の流れ方向Faと、部分領域310Bに対する基準方向Bbおよび血流の流れ方向Fbとが示されている。流れ状態判定機能152は、部分領域310Aを中心として基準方向Baを示す直線と流れ方向Faを示す直線とがなす角θCAを算出し、算出した角度θCAが所定角度θTh以上であるか否かによって部分領域310Aを通過する血流が順流であるか逆流であるかを判定する。所定角度θThとは、例えば、部分領域が弁口面である場合に、血流が弁口面を通過していると推定される角度である。所定角度θThは、固定角度でもよく、関心領域300や部分領域によって可変に設定されてもよい。例えば、所定角度θThは、ステップS130の処理で設定した対象部分領域の中心と周囲部分領域の中心とを結ぶ直線がなす角度に基づいて設定されてもよい。また、所定角度θThは、入力インターフェース120により受け付けられてもよい。なお、所定角度θThは、一般にπ(180度)以下の大きさを取る。
【0047】
例えば、図10に示すように角度θCAが所定角度θTh以上である場合には、血流の方向Faが弁口面(部分領域310Aの周囲の関心領域300)を越えて通過する方向となる。したがって、流れ状態判定機能152は、部分領域310Aにおける血流の流れは逆流であると判定する。
【0048】
一方、部分領域310Bを中心として基準方向Bbを示す直線と流れ方向Faを示す直線とがなす角θCBが所定角度θTh未満である場合、図10に示すように、血流は弁口面(部分領域310Bの周囲の関心領域300)を越えていないこと(関心領域300の線よりも下方向)となる。したがって、流れ状態判定機能152は、部分領域310Bにおける血流の流れは順流であると判定する。このように、部分領域ごとに基準方向を設定して、血流の流れ方向と比較することで、境界領域に対する部分領域ごとの血流の状態を、より高精度に判定することができる。
【0049】
なお、血流の流れには、通過する関心領域の位置によって、渦流や螺旋流も発生するため、角度θCAおよびθCBが所定角度θThに近い場合には、誤った判定を行う可能性もあり得る。したがって、流れ状態判定機能152は、角度θCAおよびθCBが所定角度θThに近い角度である場合には、血流の流れの状態が判定できない領域(判定不能領域)と判定してもよい。
【0050】
図11は、判定不能領域の判定も含む流れ状態判定機能152により実行される処理について説明するためのフローチャートである。図11に示す処理は、図9に示すステップS151~S156の処理と比較すると、ステップS153の処理に代えて、ステップS157~S159の処理が追加されている点で相違する。したがって、以下では、主にステップS157~S159の処理を中心として説明する。
【0051】
ステップS152の処理後、流れ状態判定機能152は、算出した角度が第1角度θTh1以上であるか否かを判定する(ステップS157)。第1角度θTh1とは、所定角度θThよりも数度~数十度程度大きくした角度である。算出した角度が第1角度θTh1以上である場合、流れ状態判定機能152は、対象部分領域における体液の流れが逆流であると判定する(ステップS154)。また、算出した角度が第1角度θTh1以上ではないと判定した場合、算出した角度が第2角度θTh2未満であるか否かを判定する(ステップS158)。第2角度θTh2とは、所定角度θThよりも数度~数十度程度小さくした値である。算出した角度が第1角度θTh2未満である場合、流れ状態判定機能152は、対象部分領域における体液の流れが順流であると判定する(ステップS158)。また、算出した角度が第2所定角度θTh2未満ではないと判定した場合、算出した角度は、所定角度θThに近い角度であるため、流れ状態判定機能152は、対象部分領域を判定不能領域として判定する(ステップS159)。図11に示す処理によれば、血液の流れが曖昧な部分を明確にすることができる。したがって、判定不能領域以外の部分領域の結果に基づいて、より正確に血液の流れ状態を判定することができる。
【0052】
また、流れ状態判定機能152は、部分領域ごとに、基準方向と血流方向とに基づいて血液の流れ状態を判定することに代えて、対象部分領域と周囲部分領域の血液の流れ方向に基づいて、血液の流れ状態を判定してもよい。例えば、対象部分領域の流れ状態が逆流と判定され、周囲部分領域の流れ状態が順流と判定された場合、対象部分領域の流れ状態を順流に変更する。例えば、人体の特定の領域には、大きな体液の流れの他に渦流や螺旋流等の特殊な流れが局所的に発生する箇所または時期がある。したがって、上述したように周囲の流れ状態に基づいて、対象部分領域の血液の流れ状態を変更することで、渦流や螺旋流等の特殊な流れが発生した場合に血液の流れ状態の判定結果が変化することを抑制することができる。なお、周囲部分領域は、例えば、対象部分領域から所定距離以内の領域としてもよく、対象部分領域から近い順に所定数の周囲部分領域であってもよい。
【0053】
また、流れ状態判定機能152は、基準方向および血流方向に加えて、関心領域における対象部分領域の位置に基づいて、対象部分領域の血液の流れ状態を判定してもよい。例えば、流れ状態判定機能152は、関心領域における対象部分領域の位置が関心領域の中心付近である場合には、領域端部よりも弁の動作による渦流や螺旋流等が少ないと推定されるため、上述した周囲部分領域の血液の流れ状態に基づく対象部分領域の血液の流れ状態の変更を抑制する。このように、関心領域における対象部分領域の位置に基づいて判定基準を変更することで、より適切に部分領域または関心領域全体の血液の流れ状態を判定することができる。
【0054】
また、流れ状態判定機能152は、基準方向および血流方向に加えて、対象部分領域を通過する血液の流速または流量のうち、一方または双方に基づいて血液の流れ状態を判定してもよい。例えば、流れ状態判定機能152は、流速または流量が閾値以上である部分領域に対して血液の流れの状態を判定してもよい。これにより、血液の流れが強い領域に対して流れ状態を判定することができるため、順流であるか逆流であるかをより正確に判定することができる。また、流れ状態判定機能152は、流量や流速の大きさに応じて、所定角度θTh(第1角度θTh1、第2角度θTh2)を調整してもよい。例えば、流れ状態判定機能152は、流量や流速が大きくなるほど、第1角度θTh1から第2角度θTh2までの角度範囲を広くし、流量や流速が小さくなるほど上記角度範囲を狭くする。
【0055】
また、流れ状態判定機能152は、例えば、上述したように時相の異なる複数の医用画像を用いる場合には、上記角度範囲を時点T1~Tmにおける基準方向の最大値から最小値までの範囲としてもよい。また、流れ状態判定機能152は、各部分領域における時点T1~Tmの基準方向の変動量の大きさや部分領域の移動量の大きさ等の移動情報に基づいて、各部分領域における角度範囲を設定してもよい。例えば、所定の時系列における基準方向の変動量が大きい部分領域は血液の移動量が大きいと推定されるため上記角度範囲を広く取り、基準方向の変動量が小さい部分領域は血液の移動量が小さいと推定されるため、角度範囲を狭くする。これにより、血液の流速や流量に応じて、より適切に流れ状態の判定を行うことができる。
【0056】
また、流れ状態判定機能152は、関心領域における血液の流れ状態に基づいて、診断を支援するための判定を行ってもよい。診断を支援するための判定とは、例えば推定される病名(例えば、心不全、弁閉鎖不全等)や、将来において病気になる確率等の判定である。
【0057】
次に、ステップS150およびステップS170の処理について説明する。図12は、表示制御機能154により生成される画像IM1の一例を示す図である。画像IM1には、関心領域300を示す画像IM10に、部分領域に位置付けられた流れ状態を示す画像IM11およびIM12が重畳して表示されている。画像IM1は、関心領域300を含む医用画像であってもよい。
【0058】
例えば、表示制御機能154は、流れ状態判定機能152により判定された部分領域ごとの血液の流れ状態を示す画像を、関心領域を示す画像IM10における部分領域の位置に対応付けて重畳させる。この場合、表示制御機能154は、血流の状態の違いが視認できるように異なる画像を重畳させる。図12の例では、血流の状態が順流であることを示す画像IM11と逆流であることを示す画像IM12とが異なる表示態様で表示されている。異なる表示態様とは、例えば、画像の色や模様、グラデーション、線種、形状、大きさ(太さ)、向き、透過度、強調度合等によって、画像の種類が異なることが視認できる態様である。これにより、関心領域300内の様子をより高精度に把握させることができる。
【0059】
また、表示制御機能154は、全ての部分領域に対して流れ状態を示す画像IM11およびIM12を表示させず、一部を間引いて流れ状態を示す画像IM11、IM12を表示させてもよい。また、表示制御機能154は、所定の流れ状態(例えば、逆流)を示す画像のみを関心領域を示す画像IM10に重畳して表示させてもよい。
【0060】
また、表示制御機能154は、周辺(所定領域)の流れ状態を集約し、集約した流れ状態を示す画像を生成してもよい。所定領域とは、例えば、複数の部分領域を含み、且つ関心領域以下の領域である。また、所定領域とは、関心領域の形状や大きさに基づいて設定されていてもよく、関心領域の中心領域等の固定の領域が設定されてもよい。また、所定領域の数は、固定数でもよく、入力インターフェース120により受け付けられた操作内容に基づいて設定されてもよい。図13は、集約した血液の流れ状態を含む画像IM2の一例を示す図である。図13の例では、図12に示す血液の流れ状態を周辺領域で集約することで、順流を示す画像IM21、IM22と、逆流を示す画像IM23、IM24とが、関心領域を示す画像IM10に重畳して表示されている。
【0061】
例えば、表示制御機能154は、所定領域に含まれる部分領域ごとの血液の流れ状態に異なる流れ状態が含まれる場合に、それぞれの流れ状態と総合的に判断して所定領域ごとに血液の流れ状態を決定してもよい。例えば、所定領域内における対象部分領域の流れ状態が逆流であり、その周辺部分領域の流れ状態が順流であると判定された場合、対象部分領域の流れ状態を順流に更新する。なお、上記の更新は、所定回数以上行わないように設定されていてもよい。所定回数は、固定回数でもよく、入力インターフェース120により受け付けられた可変値であってもよい。
【0062】
また、表示制御機能154は、逆流と判定された部分領域の数と順流と判定された部分領域の数を比較し、判定された数の多い体液の流れ状態を関心領域全体の流れ状態としてもよい。また、表示制御機能154は、順流または逆流と判定された計測領域の分布に基づいて、関心領域全体の流れ状態を判定してもよい。これにより、関心領域内における位置を大まかな流れ状態を、より明確に利用者に提供することができる。
【0063】
また、表示制御機能154は、血液の流れ状態を示す画像に加えて、部分領域の基準方向を示す画像を表示させてもよい。図14は、基準方向を示す画像を含む画像IM3の一を示す図である。画像IM3には、関心領域を示す画像IM10に、部分領域に対する基準方向を示す画像IM31と、血液の流れが順流であることを示す画像IM32と、血液の流れが逆流であることを示す画像IM33とが重畳して表示されている。表示制御機能154は、画像IM3を表示させることで、基準方向と、血流方向との関係をより明確に確認することができる。したがって、利用者に、血液の流れ状態の特性(例えば、基準方向に対してどのように血液が流れているか)等を、より明確に把握させることができる。
【0064】
また、表示制御機能154は、上述した画像に代えて(または加えて)、上述した部分領域が判定不能領域であることを示す画像を画像IM10に重畳してディスプレイ130に表示させてもよい。これにより、より詳細な判定結果を表示させることができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、関心領域に含まれる部分領域ごとに基準方向を設定し、基準方向と体液の流れ方向(例えば、血流方向)とがなす角度と所定角度(固定角度)とを比較することで、体液の流れ状態を判定したが、これに代えて、基準方向を固定方向とし、所定角度を部分領域ごとに可変にして比較を行ってもよい。
【0066】
以上説明した実施形態によれば、体液解析装置100において、医用画像に関心領域を設定する関心領域設定機能144と、関心領域設定機能144により設定された関心領域に複数の部分領域を設定する部分領域設定機能146と、部分領域設定機能146により設定された部分領域ごとの基準方向を設定する基準方向設定機能148と、部分領域ごとに体液の流れ方向を決定する流れ方向決定機能150と、基準方向設定機能148により設定された部分領域ごとの基準方向と、流れ方向決定機能150により決定された部分領域ごとの流れ方向とに基づいて、関心領域における体液の流れ方向を判定する流れの状態を判定する判定機能を備えることにより、関心領域における体液の流れの状態をより正確に解析することができる。
【0067】
また、実施形態によれば、関心領域における体液の流れの状態をより正確に判定することで、医師等よる治療効果の判定等の医療行為を支援できる。また、実施形態によれば、関心領域が歪んだ形状であっても、より正確に体液の流れ状態を判定することができる。
【0068】
上記説明したいずれかの実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを格納するストレージと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
医用画像に関心領域を設定し、
設定した前記関心領域に一以上の部分領域を設定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向を設定し、
前記部分領域ごとに体液の流れ方向を決定し、
設定した前記部分領域ごとの基準方向と、決定した前記部分領域ごとの体液の流れ方向とに基づいて、前記関心領域における体液の流れの状態を判定する、
ように構成されている、体液解析装置。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0070】
例えば、本実施形態における体液解析装置は、医用画像に含まれる関心領域の体液の流れ状態を医師等の利用者に提供して診断等を支援するだけでなく、数値流体解析による治療効果シミュレーションの分野において、解析された体液の流れ状態から治療効果を判定する分野においても適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…体液解析システム、10…外部装置、100…体液解析装置、110…通信インターフェース、120…入力インターフェース、130…ディスプレイ、140…処理回路、142…取得機能、144…関心領域設定機能、146…部分領域設定機能、148…基準方向設定機能、150…流れ方向決定機能、152…流れ状態判定機能、154…表示制御機能、160…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14