(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20240430BHJP
F02M 59/26 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F02M59/44 V
F02M59/26 330P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020103664
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10 2019 116 353.6
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ケーニッヒ
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070278(JP,A)
【文献】特開平06-317233(JP,A)
【文献】特開2004-340052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプシリンダー(21)と、
前記ポンプシリンダー(21)の凹部(23)内で移動可能に搭載され、カム(24)によって、制御される様式で上下に移動可能であるポンププランジャー(22)と、
前記凹部(23)の領域で前記ポンプシリンダー(21)に導入されている溝と、
を有する燃料ポンプ(20)において、
前記カム(24)からの距離が最長である第1の溝(25)が、燃料戻り部(28)に結合され、
前記カム(24)からの距離が最短である第2の溝(26)が、リークライン(29)に結合され、
前記第1の溝(25)と前記第2の溝(26)との間に位置する第3の溝(27)が、燃料入口(30)に結合されており、
第4の溝(31)が、前記第1の溝(25)と共に前記燃料戻り部(28)に結合されており、
前記第4の溝(31)が、前記第3の溝(27)と前記第2の溝(26)との間に位置している
ことを特徴とする燃料ポンプ(20)。
【請求項2】
前記第3の溝(27)が、前記第2の溝(26)からの距離よりも前記第1の溝(25)からの距離がより短いことを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ(20)。
【請求項3】
前記燃料戻り部(28)には、燃料戻り部圧力が存在し、前記燃料入口(30)には、前記燃料戻り部圧力よりも高い燃料入口圧力が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ポンプ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の燃料ポンプ、特に、コモンレール燃料システムの高圧燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
実際に知られている燃料ポンプは、ポンプシリンダーを備え、ポンプシリンダー内にはポンププランジャーが移動可能に搭載されている。ポンププランジャーは、1つ以上のカムを介してポンプシリンダー内で上下に移動させられ、その結果として、燃料は、燃料ポンプによって引き込まれ、例えば燃料システムの噴射弁のような消費部に供給される。
【0003】
図1は、先行技術から知られている燃料ポンプ10の概略断面図を示し、燃料ポンプ10は、ポンプシリンダー11と、ポンププランジャー12と、を備える。ポンププランジャー12は、ポンプシリンダー11の凹部13内で上下に移動可能に案内され、ポンプシリンダー11内でのポンププランジャー12の上下移動は、カム14によって制御される。特に、
図1において、ポンププランジャー12がカム14によって凹部13内で上方に移動させられるとき、燃料の圧縮が起こる。ポンププランジャー12の反対の移動方向では、燃料ポンプ10は吸引段階にある。
【0004】
示された先行技術では、溝15および16がポンプシリンダー11に導入されている。第1の上部の溝15は、先行技術によると、燃料入口圧力が存在する燃料入口17に結合されている。第2の下部の溝16は、リークライン18を介して、周囲圧力が通常存在するリークタンクに結合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料の圧縮中、すなわち、シリンダープランジャー12が凹部13内で上方に移動させられている間、圧縮された燃料の一部が、内部リークと呼ばれる損失として、上部の第1の溝15に到達し、したがって燃料入口17に押し込まれる。燃料ポンプ10の吸引段階の間、燃料は第1の上部の溝15から引き込まれ、その過程で、圧縮中に内部リークとして以前に燃料入口17に押し込まれた燃料も部分的に引き込まれる。燃料ポンプ10の圧力がますます上昇すると、内部リークの燃料の温度が上昇するため、吸引段階の間、比較的高温の燃料が引き込まれる。特定の条件下では、燃料ポンプ10が過熱して、燃料ポンプ10に損傷を引き起こしうる。
【0006】
晒される過熱起因の損傷のリスクがより小さい、すなわち特に、ポンプが高い燃料圧力を提供するときでさえ、晒される過熱起因の損傷のリスクがより小さい燃料ポンプが必要とされている。これから出発して、本発明は、新しいタイプの燃料ポンプを創出するという目的に基づいている。この目的は、請求項1に記載の燃料ポンプによって解決される。カムからの距離が最長である第1の溝は、燃料戻り部に結合されている。カムからの距離が最短である第2の溝は、リークラインに結合されている。第1の溝と第2の溝との間に位置する第3の溝は、燃料入口に結合されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による燃料ポンプでは、第1の上部の溝は、燃料入口に結合されているのではなく、流れ戻り部に結合されている。第1の上部の溝と第2の下部の溝との間に、燃料入口に結合されている第3の溝が設けられる。圧縮中、圧縮された燃料の一部は、内部リークとして燃料戻り部に押し込まれかつ排出される。吸引段階の間、燃料が第3の溝から引き込まれ、第1の溝にも流し込まれるため、燃料ポンプからの連続的な熱の除去が可能である。したがって、燃料圧力が高くても、ポンプが過熱するいかなるリスクもない。
【0008】
優先的には、第3の溝は、第2の溝からの距離よりも第1の溝からの距離がより短い。これは、連続的な熱の除去のために特に好ましい。
【0009】
有利なさらなる展開によると、第4の溝は、第1の溝と共に燃料戻り部に結合され、第4の溝は、第3の溝と第2の溝との間に位置する。この有利なさらなる展開により、燃料ポンプからの熱の除去をさらに改善することができる。燃料ポンプの吸引段階では、燃料を第3の溝から第4の溝に流し込むことができる。第3の溝と第4の溝との間の径方向の隙間を比較的大きく構成することが可能であり、その結果として、吸引段階での洗浄および冷却する燃料の量を増加させることができる。
【0010】
本発明の好ましいさらなる展開は、従属請求項および以下の説明から得られる。本発明の例示的な実施形態は、これに限定されることなく、図面によってより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】先行技術による燃料ポンプの概略断面図を示す。
【
図2】本発明による第1の燃料ポンプの概略断面図を示す。
【
図3】本発明による第2の燃料ポンプの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、燃料ポンプ、特に、船舶の内燃機関のような内燃機関のコモンレール燃料システムの高圧燃料ポンプに関する。
【0013】
図2は、本発明による燃料ポンプ20の第1の例示的な実施形態の概略断面図を示している。次に、
図2の燃料ポンプ20は、ポンプシリンダー21と、ポンププランジャー22と、を備え、ポンププランジャー22は、カム24を介してポンプシリンダー21の凹部23内で上下に移動可能に案内されている。
【0014】
ポンプシリンダー21には、凹部23の領域に複数の溝が導入されている。したがって、
図2の例示的な実施形態では、凹部23の領域で3つの溝25、26および27がポンプシリンダー21に導入されている。カム24からの距離が最長である第1の上部の溝25は、燃料戻り部28に結合されている。カム24からの距離が最短である第2の下部の溝26は、リークライン29を介してリークタンクに結合されている。第1の溝25と第2の溝26との間に位置する第3の溝27は、燃料入口30に結合されている。燃料戻り部28には、燃料入口30に存在する燃料入口圧力よりも低い燃料戻り部圧力が存在する。
【0015】
燃料戻り部圧力は6barのオーダーの大きさであってよく、燃料入口圧力は11barのオーダーの大きさであってもよい。これらの値は、本質的に、完全に例示的なものである。したがって、第1の上部の溝25は、第3の溝27よりも低い圧力レベルに結合されている。第2の下部の溝26は、最も低い圧力レベル、すなわち優先的には周囲圧力が存在するリークタンクの圧力レベルに結合されている。
【0016】
燃料の圧縮中、圧縮された燃料の一部は、損失またはいわゆる内部リークとして、第1の上部の溝25に、したがって燃料戻り部28に押し込まれる。2,000barを超えうる高圧縮圧力のため、この燃料は比較的高温である。
【0017】
燃料ポンプ20の次の吸引段階では、燃料は第3の溝27から引き込まれ、また第1の溝25に流し込まれるため、燃料ポンプ20から燃料戻り部28への高温の燃料の連続的な熱の除去が確保される。
【0018】
燃料ポンプ20からの効果的な熱の除去が可能である。ポンププランジャー22の潤滑、洗浄および冷却も可能である。
【0019】
図2から分かるように、第3の溝27は、第2の下部の溝26からの距離よりも第1の上部の溝25からの距離がより短い。
【0020】
図2の燃料ポンプの有利なさらなる発展が
図3に示されている。不必要な繰り返しを回避するために、同じ参照番号が同じアセンブリに使用され、以下では、
図3の燃料ポンプ20が
図2の燃料ポンプ20と異なる詳細についてのみ説明される。
【0021】
上述の第1の溝25、第2の溝26および第3の溝27に加えて、
図3の燃料ポンプ20は、第1の溝25と共に燃料戻り部28に結合されている追加の第4の溝31を備える。ここで、この第4の溝31は、第2の溝26と第3の溝27との間に位置する。
【0022】
燃料の圧縮中に、圧縮された燃料の一部は、損失または内部リークとして第1の溝25に、したがって
図3の燃料ポンプ20の燃料戻り部28に押し込まれる。
図3のポンプ20の吸引段階では、燃料は第3の溝27から、したがって燃料入口30から引き込まれ、次に第1の溝25にも押し込まれるため、次にポンプからの連続的な熱の除去が可能である。
【0023】
同時に、
図3の燃料ポンプ20の吸引段階での、第3の溝27を介して燃料入口30から引き込まれた燃料も、第4の溝31に、したがって次に第4の溝31を介して燃料戻り部に流し込まれる。ここで、第3の溝27と第4の溝31との間で、ポンププランジャー22とポンプシリンダー21との間の径方向の隙間を拡大することができ、その結果として、吸引段階の間のポンププランジャー22の効果的な潤滑、洗浄および冷却が可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 燃料ポンプ
11 ポンプシリンダー
12 ポンププランジャー
13 凹部
14 カム
15 溝
16 溝
17 燃料入口
18 リークライン
20 燃料ポンプ
21 ポンプシリンダー
22 ポンププランジャー
23 凹部
24 カム
25 溝
26 溝
27 溝
28 燃料戻り部
29 リークライン
30 燃料入口
31 溝