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特許7479961画像処理装置、外観検査装置、画像処理方法、およびプログラム
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  • 特許-画像処理装置、外観検査装置、画像処理方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】画像処理装置、外観検査装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240430BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020109627
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007000
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 健
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173814(JP,A)
【文献】特開2020-009435(JP,A)
【文献】特開平07-220087(JP,A)
【文献】吉田 壮 外,深層学習を用いた中国漢代木簡の文字領域検出,電子情報通信学会技術研究報告 第119巻 第458号,2020年02月27日
【文献】Zhen Yang et al.,Region-aware Random Erasing,2019 IEEE 19th International Conference on Communication Technology (ICCT),2019年10月19日,https://ieeexplore.ieee.org/document/8947189
【文献】Zhun Zhong et al.,Random Erasing Data Augmentation,[online],2017年08月16日, [retrieved on 2023.10.06], Retrieved from the Internet: <URL: https://arxiv.org/pdf/1708.04896v1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
教師データとなる第1画像において、領域を指定する領域指定部と、
前記第1画像において、前記領域指定部によって指定された指定領域をマスクする第1マスキング部と、
教師データとなる第2画像であって、前記指定領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする第2マスキング部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記第1マスキング部によって生成されるマスク済みの画像、および、前記第2マスキング部によって生成されるマスク済みの画像を教師データとして学習を行う学習部、
をさらに備える、画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記学習部が学習に用いる前記教師データに、マスクされた領域を持たない画像が含まれる、画像処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記学習部が生成する学習済みパラメータを用いて推論を行う推論部、
をさらに備える、画像処理装置。
【請求項5】
外観検査装置であって、
対象物を撮影する撮影部と、
請求項4に記載の推論部と、
を備える、外観検査装置。
【請求項6】
学習済みパラメータを含む、情報処理装置が実行可能なプログラムであって、
前記学習済みパラメータは、請求項2に記載の前記学習部による学習によって生成され
前記情報処理装置は、前記プログラムを実行することにより、
前記学習済みパラメータを用いて推論を行う工程を実行する、プログラム。
【請求項7】
画像処理方法であって、
(a) 教師データとなる第1画像において、マスク領域を指定する工程と、
(b) 前記第1画像において、前記工程(a)によって指定される前記マスク領域をマスクする工程と、
(c) 教師データとなる第2画像であって、前記マスク領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする工程と、
を含む、画像処理方法。
【請求項8】
情報処理装置が読み取り可能なプログラムであって、前記情報処理装置は、前記プログラムを読み取ることにより、
(A) 教師データとなる第1画像において、マスク領域を指定する工程と、
(B) 前記第1画像において、前記工程(A)によって指定される前記マスク領域をマスクする工程と、
(C) 教師データとなる第2画像であって、前記マスク領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする工程と、
を実行する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を画像で検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習、とりわけDeep-Learningの画像処理への応用が進んでいる。特に画像分類への応用は広く実施されており、例えば製造物をカメラで撮像した画像から、それが良品か不良品かを分類することによって、製造物の外観検査にも利用することができる。
【0003】
特許文献1には、画像の固有の特徴部分以外の一部(即ち、分類の判定に影響させたくない部分)をマスクして学習、分類を行う手法が開示されている。例えば、車を車種で分類する場合、ナンバープレート部分や搭乗者が写るフロントガラス部分などがマスク対象となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-173814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、教師データにおいて、マスク領域に偏りがある場合、そのマスク領域の偏り自体を特徴として学習する可能性があった。例えば、マスク領域を有する画像が、不良品の教師データに多く存在し、良品の教師データには少ない場合、マスク領域の有無を基準として分類を行うように学習が進む可能性があった。そこで、マスク領域の偏りが学習に与える影響を小さくする技術が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、教師あり学習において、マスクされた領域の偏りの影響を小さくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、画像処理装置であって、教師データとなる第1画像において、領域を指定する領域指定部と、前記第1画像において、前記領域指定部によって指定された指定領域をマスクする第1マスキング部と、教師データとなる第2画像であって、前記指定領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする第2マスキング部とを備える。
【0008】
第2態様は、第1態様の画像処理装置であって、前記第1マスキング部によって生成されるマスク済みの画像、および、前記第2マスキング部によって生成されるマスク済みの画像を教師データとして学習を行う学習部をさらに備える。
【0009】
第3態様は、第2態様の画像処理装置であって、前記学習部が学習に用いる前記教師データに、マスクされた領域を持たない画像が含まれる。
【0010】
第4態様は、第2態様または第3態様の画像処理装置であって、前記学習部が生成する学習済みパラメータを用いて推論を行う推論部をさらに備える。
【0011】
第5態様は、外観検査装置であって、対象物を撮影する撮影部と、第4態様の推論部とを備える。
【0012】
第6態様は、学習済みパラメータを含む、情報処理装置が実行可能なプログラムであって、前記学習済みパラメータは、第2態様の前記学習部による学習によって生成され、前記情報処理装置は、前記コンピュータプログラムを実行することにより、前記学習済パラメータを用いて推論を行う工程を実行する
【0013】
第7態様は、画像処理方法であって、(a)教師データとなる第1画像において、マスク領域を指定する工程と、(b)前記第1画像において、前記工程(a)によって指定される前記マスク領域をマスクする工程と、(c)教師データとなる第2画像であって、前記マスク領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする工程とを含む。
【0014】
第8態様は、情報処理装置が読み取り可能なプログラムであって、前記情報処理装置は、前記プログラムを読み取ることにより、(A)教師データとなる第1画像において、マスク領域を指定する工程と、(B)前記第1画像において、前記工程(A)によって指定される前記マスク領域をマスクする工程と、(C)教師データとなる第2画像であって、前記マスク領域がマスクされていない第2画像において、ランダムに領域を選択してマスクする工程とを実行する。
【発明の効果】
【0015】
指定された領域がマスクされた画像と、ランダムに選択された領域がマスクされた画像とを生成する。これらの画像を教師データとして学習を行うことにより、指定されたマスク領域に偏りがあったとしても、当該偏りが教師あり学習に与える影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の外観検査装置を示す概略図である。
図2】情報処理装置のハードウェアの構成例を示す図である。
図3】情報処理装置の機能の構成例を示すブロック図である。
図4】学習段階において情報処理装置が実行する一連の流れを示す図である。
図5】教師データとなる対象物画像の例を示す図である。
図6】正解ラベルが「良品」である教師データの例を示す図である。
図7】正解ラベルが「不良品」である教師データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0018】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態の外観検査装置100を示す概略図である。外観検査装置100は、対象物90の外観を検査する装置である。対象物90は、例えば錠剤である。ただし、対象物90は錠剤に限定されない。
【0019】
外観検査装置100は、カメラ10および情報処理装置20を備える。カメラ10は、情報処理装置20と電気的に接続されている。カメラ10は、イメージセンサを備える。カメラ10は、イメージセンサに入射した光の強度に応じた画像信号を、情報処理装置20へ出力する。カメラ10は、所定の位置に停止した対象物90を撮影してもよいし、ベルトコンベヤなどの搬送機構等によって所定方向に移動する対象物90を撮影してもよい。また、外観検査装置100は、1台のカメラ10を備えていてもよいし、複数のカメラ10を備えていてもよい。
【0020】
情報処理装置20は、画像処理装置の一例である。後述するように、情報処理装置20は、対象物90をカメラ10で撮影した画像(以下、「対象物画像」と称する。)に基づいて、対象物90の検査を行う。また、情報処理装置20は、対象物画像から教師データを生成可能であるとともに、生成した教師データを用いて機械学習を実行可能である。情報処理装置20は、機械学習により生成した学習済みパラメータ(重み)を、対象物90の検査に用いる。
【0021】
図2は、情報処理装置20のハードウェアの構成例を示す図である。情報処理装置20は、コンピュータとしての構成を備える。具体的に、情報処理装置20は、プロセッサ21、RAM23、記憶部25、通信I/F27、機器I/F28、およびバス29を備える。プロセッサ21、RAM23、記憶部25、通信I/F27、および機器I/F28は、バス29を介して、電気的に接続されている。
【0022】
プロセッサ21は、例えば、CPUまたはGPUを含む。RAM23および記憶部25は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。RAM23は、例えば、DRAM、SRAM、またはSDRAMを含む。記憶部25は、例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブなどの固定ドライブを含む。なお、記憶部25は、可搬性を有するリムーバブルメディア(光ディスク、磁気ディスク、または、半導体メモリなど)と、リムーバブルメディアに対して読み書きを行うメディアドライブとを含んでもよい。記憶部25は、プログラムPを記憶する。プロセッサ21は、RAM23を作業領域としてプログラムPを実行することにより、各種機能を実現する。
【0023】
通信I/F27は、情報処理装置20をインターネットなどのネットワークに接続するためのインターフェースである。プログラムPは、ネットワークを通じて、情報処理装置20に提供または配布されてもよい。
【0024】
機器I/F28は、カメラ10、入力部31および表示部33を情報処理装置20と電気的に接続するためのインターフェースである。入力部31は、キーボードまたはマウスなどの入力デバイスを含む。表示部33は、文字や図形などの表示情報を表示する。表示部33は、例えば液晶ディスプレイを含む。表示部33は、タッチパネルを含んでもよい。この場合、表示部33は、入力部として機能し得る。
【0025】
図3は、情報処理装置20の機能の構成例を示すブロック図である。情報処理装置20は、領域指定部41、第1マスキング部43、第2マスキング部45、学習部47および推論部49を備える。領域指定部41、第1マスキング部43、第2マスキング部45、学習部47および推論部49は、プロセッサ21がプログラムPを実行することによってソフトウェア的に実現される機能である。
【0026】
領域指定部41は、教師データとなる対象物画像において、マスクされる領域を指定する。第1マスキング部43は、領域指定部41によって指定された領域(以下、「指定領域7Ar」と称する。)をマスクする。第2マスキング部45は、教師データとなる画像において、ランダムに領域を選択してマスクする。学習部47は、第1マスキング部43によって生成される第1マスク画像、および、第2マスキング部45によって生成される第2マスク画像を教師データとして学習を行う。推論部49は、学習部47が学習によって生成した学習済みパラメータを用いて推論を行う。
【0027】
図4は、学習段階において情報処理装置20が実行する一連の処理を示す図である。まず、情報処理装置20は、教師データとなる複数の対象物画像を準備する(図4:対象物画像準備工程S1)。教師データは、教師あり学習で用いられる「入力データ」と「正解ラベル」とをペアで含む。情報処理装置20で用いられる教師データの「入力データ」は、対象物90をカメラ10で撮影した対象物画像である。また、情報処理装置20で用いられる教師データの「正解ラベル」は、「良品(欠陥なし)」または「不良品(欠陥あり)」である。なお、情報処理装置20で用いられる教師データは別の形態であってもよい。
【0028】
図5は、教師データとなる対象物画像の例を示す図である。図5に示す画像91a,91b,91c,91dは、正解ラベルが「良品」である対象物画像である。すなわち、画像91a~91dは、外観上の欠陥がない良品とされる対象物90の画像に相当する。図5に示す画像93a,93b,93cは、正解ラベルが「不良品」の対象物画像の例である。すなわち、画像93a~93cは、外観上の欠陥を有するために不良品とされる対象物90の画像に相当する。
【0029】
図5に示すように、各対象物画像は、1つの対象物90に相当する薄灰色の部分を有する。例えば、対象物90が良品である場合、画像91a,91bのように、基本的には、対象物画像において薄灰色の部分が一様となる。ただし、画像91c,91dのように、良品の対象物90であっても、対象物画像に非欠陥部71が出現する場合がある。画像91c,91dの場合、非欠陥部71は、黒点であり、対象物90の像に比べて小さい像である。非欠陥部71は、意図しない特徴部分であって、学習することが不要な部分である。非欠陥部71は、例えば、カメラ10などの撮影系に付着した汚れなどにより生じる像であり、対象物90に付着した異物、割れまたは欠けなど、対象物90の固有の特徴に起因する像ではない。
【0030】
対象物90が不良品である場合、画像93a~93cのように、欠陥部81が出現する。画像93a~93cの場合、欠陥部81は、黒点であり、対象物90の像に比べて小さい。欠陥部81は、対象物90に付着した異物の像である。なお、欠陥部は、錠剤の割れた部分、または、欠けた部分の場合もあり得る。
【0031】
図5に示すように、非欠陥部71は、見た目上、欠陥部81と非常に類似する場合がある。非欠陥部71を含む画像91c,91dを教師データとして学習を行った場合、誤分類の問題が発生し得る。そこで、非欠陥部71が教師あり学習に影響することを抑制するため、情報処理装置20は、非欠陥部71をマスクする処理を実行する。
【0032】
情報処理装置20は、対象物画像準備工程S1の後、マスクされる領域を指定する処理を行う(図4:領域指定工程S2)。具体的には、領域指定部41が、非欠陥部71を含む対象物画像において、非欠陥部71を含む領域を、指定領域7Arとして指定する。図5に示す複数の対象物画像が準備された場合、領域指定工程S2において、領域指定部41が、画像91c,91d,93cの非欠陥部71に対して、指定領域7Arを指定する。
【0033】
領域指定部41による指定領域7Arの指定は、ユーザによる入力部31を介した入力に基づいて行われてもよい。一例として、領域指定部41は、教師データとなる対象物画像(例えば、図5に示す画像91a~91d,画像93a~93d)と、マスク領域を指定するための各種ツールを表示部33に表示させてもよい。そして、ユーザは、表示部33に表示された対象物画像を確認しながら、入力部31を用いて指定領域7Arを設定する操作入力を行ってもよい。
【0034】
指定領域7Arの大きさおよび形状は、各対象物画像における非欠陥部71の大きさ、形状に応じて設定され得る。すなわち、指定領域7Arの大きさおよび形状は、それぞれ対象物画像ごとに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0035】
情報処理装置20は、領域指定工程S2を完了すると、指定領域7Arをマスクする(図4:第1マスキング工程S3)。具体的には、第1マスキング部43が、指定領域7Arをマスクする。
【0036】
図6は、正解ラベルが「良品」である教師データの例を示す図である。図7は、正解ラベルが「不良品」である教師データの例を示す図である。図6に示すマスク済みの画像91c,91dは、それぞれ図5に示す画像91c,91dに対して指定された指定領域7Arをマスクした、第1マスク画像の例である。図7に示すマスク済みの画像93cは、図5に示す画像93cに対して指定された指定領域7Arをマスクした、第1マスク画像の例である。
【0037】
図4に戻って、情報処理装置20は、第1マスキング工程S3を完了すると、第2マスキング部45がマスクする対象物画像(以下、「マスキング対象」と称する。)を選択する(マスキング対象選択工程S4)。詳細には、第2マスキング部45が、対象物画像準備工程S1にて準備された複数の対象物画像のうち、第1マスキング工程S3にてマスクが適用された画像(すなわち、非欠陥部71を有する対象物画像)を除いた、残余の対象物画像群の一部をマスキング対象として選択する。なお、第2マスキング部45は、残余の対象物画像群のすべてを、マスキング対象に選択してもよい。また、第2マスキング部45は、第1マスキング部43によってマスクされた対象物画像も、マスキング対象の一部として選択してもよい。
【0038】
例えば、図5に示す例の場合、第2マスキング部45は、非欠陥部71を持たない画像91a,91b,93a,93bのうち一部または全部を、マスキング対象として選択する。また、第2マスキング部45は、非欠陥部71を持つ画像91c,91d,93cを、マスキング対象の一部として選択してもよい。
【0039】
情報処理装置20は、マスキング対象選択工程S4を完了すると、マスキング対象として選択した対象物画像について、ランダムに選択した領域をマスクする(第2マスキング工程S5)。詳細には、第2マスキング部45が、各対象物画像において、ランダムに位置を選択し、選択した位置に所定サイズの領域を設定する。以下、第2マスキング部45がランダムに選択した領域を「ランダム領域8Ar」と称する。第2マスキング部45は、乱数または擬似乱数を利用して、ランダムな位置を選択してもよい。この場合、情報処理装置20が、乱数または擬似乱数を生成する生成器を有していてもよい。
【0040】
第2マスキング部45は、1つの対象物画像に対して複数のランダム領域8Arを設定してもよい。第2マスキング部45は、設定したランダム領域8Arをマスクする。
【0041】
ランダム領域8Arは、対象物画像における対象物90の像よりも小さいサイズである。ランダム領域8Arの大きさおよび形状は、それぞれ対象物画像ごとに異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、ランダム領域8Arの形状および大きさは、それぞれ指定領域7Arと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
例えば、図6に示す画像91e,91f、および、図7に示す画像93d,93fは、マスキング対象に選択され、ランダム領域8Arがマスクされた第2マスク画像である。画像93d,93eにおいては、欠陥部81とは異なる位置にランダム領域8Arが設定されており、欠陥部81がマスクされていない。これは、第2マスキング部45が、任意の位置にランダム領域8Arを設定するためである。
【0043】
図6に示す画像91a,91b、および、図7に示す画像93a,93bは、非欠陥部71がなく、かつ、マスキング対象に選択されなかった対象物画像である。つまり、画像91a,91b,93a,93bは、マスクされた領域を持たないマスクなし画像である。
【0044】
図4に戻って、情報処理装置20は、第2マスキング工程S5を完了すると、学習を行う(学習工程S6)。詳細には、学習部47が、第1マスキング工程S3で生成される第1マスク画像、および、第2マスキング工程S5で生成される第2マスク画像を入力データとするマスク済み教師データと、マスクなし画像を入力データとするマスクなし教師データとを用いて、学習を行う。
【0045】
学習の一例として、情報処理装置20は、ニューラルネットワークを利用する。ニューラルネットワークは、入力層、中間層、および出力層を含み、中間層は、多層である。また、各層は、複数のニューロンで構成され、隣接する層間のニューロン同士は互いに連結されている。各ニューロンは、重みを有する。入力層は、入力データである対象物画像の入力を受け付ける。出力層は、入力データに対するラベル(本例では、「良品」または「不良品」)を出力する。
【0046】
学習部47は、教師データを入力データ(本例では、第1マスク画像、第2マスク画像、またはマスクなし画像)と正解ラベル(本例では、「良品」または「不良品」)とに分離する。学習部47は、順伝播処理と逆伝播処理とを行うことにより、重みを更新する。学習部47は、すべての教師データについて学習を行った場合、あるいは、損失関数が所定の閾値を下回った場合、学習を終了する。そして、学習部47は、学習によって得た重み(学習済みパラメータ)を、記憶部25に保存する(図3参照)。
【0047】
推論部49は、上記ニューラルネットワークと上記学習済みパラメータを用いて、検査対象の対象物画像を、「良品」または「不良品」のいずれか一方に分類する。検査対象の対象物画像は、検査対象の対象物90をカメラ10で撮影した画像である。検査対象の対象物画像が非欠陥部71を含む場合、領域指定部41および第1マスキング部43が、当該非欠陥部71をマスクしてもよい。また、第2マスキング部45は、検査対象の対象物画像に対して、ランダム領域8Arをマスクしてもよい。
【0048】
情報処理装置20によれば、教師データとなる対象物画像(第1画像)において、領域指定部41が非欠陥部71(非特徴部分)を指定領域7Arとし、第1マスキング部43がマスクする。これにより、非欠陥部71が教師あり学習に影響することが抑制される。また、第2マスキング部45が、教師データとなる対象物画像(第2画像)について、ランダムに選択したランダム領域8Arをマスクする。指定領域7Arがマスクされた画像だけでなく、ランダム領域8Arがマスクされた画像も教師データとするため、指定領域7Arに偏りがあったとしても、当該偏りが教師あり学習に与える影響を小さくすることができる。したがって、推論部49による、推論(具体的には、「良品」または「不良品」への分類)の精度を高めることができる。
【0049】
また、学習部47は、ランダムにマスクされた画像を教師データとして用いる。すなわち、学習部47は、どの位置がマスクされても問題ないように学習を行う。このため、新たにマスクすべき非欠陥部71が発生しても、当該部分をマスクした教師データを使用した学習をやり直さなくてすむ。
【0050】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0051】
領域指定部41は、複数の対象物画像の間で対応する位置にマスク領域を指定してもよい。例えば、非欠陥部71がカメラ10を含む撮像系に由来する場合、図4に示す画像91c,91dのように、複数の対象物画像の間で、同じ位置に非欠陥部71が出現し得る。そこで、共通のカメラ10を含む撮像系で撮影された複数の対象物画像については、領域指定部41が同じ位置に指定領域7Arを指定するようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、領域指定部41による指定領域7Arが、ユーザの入力に基づいて行われるとしている。しかしながら、領域指定部41による指定領域7Arは、ソフトウェアにより自動または半自動で行われてもよい。すなわち、領域指定部41が自動で非欠陥部71を認識し、指定領域7Arを設定してもよい。
【0053】
上記実施形態では、学習部47は、ニューラルネットワークが「良品」または「不良品」を出力するように学習を行うとしている。しかしながら、学習部47は、ニューラルネットワークが対象物画像に含まれる欠陥部81の位置を示す情報、あるいは、対象物画像に含まれる欠陥部81の画像等を出力するように学習を行ってもよい。
【0054】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0055】
100 外観検査装置
20 情報処理装置(画像処理装置)
41 領域指定部
43 第1マスキング部
45 第2マスキング部
47 学習部
49 推論部
7Ar 指定領域
90 対象物
P プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7