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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】静止誘導電器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240430BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240430BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H01F30/10 G
H01F27/24 E
H01F27/26 130B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114818
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012757
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】定方 徹
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋子
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-139517(JP,U)
【文献】特開2015-176881(JP,A)
【文献】特開平02-181407(JP,A)
【文献】特開2020-123683(JP,A)
【文献】実開昭55-037228(JP,U)
【文献】特開2017-017210(JP,A)
【文献】特開平04-033302(JP,A)
【文献】特開昭61-101013(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147725(WO,A1)
【文献】特開昭58-039004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/24
H01F 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の容器と、
前記容器に収容され、前記容器の軸方向から見て円形の断面形状を有するとともに巻線が巻回された1本の主脚と、前記軸方向から見て前記容器の内周面に対向する角部を切り取った外形であって前記容器の前記内周面に対し凸形の断面形状を有するとともに前記巻線の外側に配置された2本の側脚と、を含む鉄心と、を備える
静止誘導電器。
【請求項2】
前記側脚は、前記軸方向から見て前記容器の前記内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する
請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記鉄心は、
前記軸方向に沿って延びる前記主脚と、
前記軸方向に平行な第1方向に沿って延び、前記第1方向に直交する第2方向に前記主脚及び前記巻線を挟んで両側に配置され、前記軸方向から見て前記容器の前記内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する一対の前記側脚と、
前記主脚及び前記一対の側脚のそれぞれの両端部を繋ぐように前記第2方向に沿って延び、前記第2方向から見て前記側脚と同一の断面形状を有する一対のヨークと、を備える
請求項2に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
前記側脚は、前記第2方向において前記巻線に対向する第1面を平面とし且つ前記第2方向において前記第1面とは反対側の第2面を前記容器の前記内周面に向かって凸とした前記軸方向から見て凸形状の断面形状を有する
請求項3に記載の静止誘導電器。
【請求項5】
前記軸方向は、上下方向に沿う方向であり、
前記容器は、
前記上下方向に沿って延び前記上下方向から見て内周円及び外周円を有する円環状の側板と、前記側板の下端に連結され前記上下方向から見て前記側板の前記外周円と同一の直径を有する円形状の底板と、前記側板の上端に連結され前記上下方向から見て前記側板の前記外周円と同一の外径と前記側板の前記内周円よりも小さい内径とを有する円環状のフランジと、を備え、前記鉄心及び前記巻線を収容する収容空間を有する下部容器と、
前記フランジを介して下部容器の上端に連結され、前記上下方向から見て前記側板の前記外周円と同一の直径の円形状を有する上部容器と、を備える
請求項1からのいずれか一項に記載の静止誘導電器。
【請求項6】
前記容器は、
前記収容空間を前記上下方向に2つに仕切る仕切り板と、
前記フランジの直下に設けられ、前記仕切り板と前記側板の内周面とを接合するための接合部と、を備える
請求項に記載の静止誘導電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトル等の静止誘導電器は、巻線や鉄心等により構成された静止誘導電器本体と、静止誘導電器本体を収容する容器と、を備える。容器内には、絶縁用および冷却用の冷却媒体が充填される。近年では、冷却媒体として従来の絶縁油に代えて、SF等の不燃性の絶縁性ガスを用いたガス絶縁静止誘導電器がある。
例えば、地下変電所向けの静止誘導電器は、その設置場所及び設置場所までの経路による制約から、三相分の機器を1つの容器に収容することが困難である。このため、機器を相毎に別の容器に収納する、いわゆる特別三相構成とすることが一般的である。
【0003】
特別三相構成のガス絶縁静止誘導電器は、絶縁および冷却の面からガス圧を高くする必要があり、ガス圧に耐え得る円筒状の容器を備える。容器内には、鉄心及び巻線が収容される。容器のサイズは、鉄心の大きさにより決まる。鉄心は、容器の中心軸線に沿う軸方向と平行に延びる側脚を備える。側脚は、軸方向から見て長方形の断面形状を有する。この場合、円筒状の容器の内周面と長方形断面を持つ側脚との間に余剰空間が大きくなる。余剰空間を小さくし、小型化できる静止誘導電器が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-161538号公報
【文献】特開平2-181407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化することができる静止誘導電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静止誘導電器は、容器と、鉄心と、を持つ。容器は、円筒状を有する。鉄心は、前記容器に収容される。鉄心は、1本の主脚と、2本の側脚と、を含む。主脚は、前記容器の軸方向から見て円形の断面形状を有する。主脚には、巻線が巻回される。側脚は、前記軸方向から見て前記容器の内周面に対向する角部を切り取った外形であって前記容器の前記内周面に対し凸形の断面形状を有する。側脚は、前記巻線の外側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の静止誘導電器の正面図。
図2】第1実施形態の静止誘導電器の内部構成を軸方向から見た図。
図3】第1実施形態の鉄心の斜視図。
図4】第1実施形態の側脚を軸方向から見た断面図。
図5】第1実施形態の側脚の断面形状の説明図。
図6】第2実施形態の側脚を軸方向から見た断面図。
図7】第3実施形態の側脚を軸方向から見た断面図。
図8】第4実施形態の静止誘導電器の正面図。
図9】第4実施形態の下フランジの連結部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の静止誘導電器を、図面を参照して説明する。
まず、図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の静止誘導電器1の正面図である。例えば、静止誘導電器1は、特別三相構成のガス絶縁静止誘導電器である。例えば、静止誘導電器1は、分路リアクトルである。
図1に示すように、静止誘導電器1は、静止誘導電器本体2と、容器3と、を備える。静止誘導電器本体2は、鉄心4及び巻線5を備える。容器3は、静止誘導電器本体2を収容する。例えば、容器3内には、SF等の不燃性の絶縁性ガス(不図示)が充填される。
【0009】
容器3について説明する。
容器3は、特別三相構成のガス絶縁静止誘導電器の1相分のタンクである。容器3は、円筒状を有する。以下、容器3の中心軸線CLに沿う方向を「軸方向」、中心軸線CLに直交する方向を「径方向」、中心軸線CL周りの方向を「周方向」とする。軸方向は、上下方向に沿う方向である。以下、軸方向に平行な方向V1を「第1方向V1」、第1方向V1に直交する方向V2を「第2方向V2」、第1方向V1及び第2方向V2のそれぞれに直交する方向V3を「第3方向V3」とする。
【0010】
例えば、容器3は、ステンレス鋼等の金属により形成されている。容器3は、上部容器10と、下部容器20と、を備える。
上部容器10は、容器3の上部を構成する。下部容器20は、容器3の下部を構成する。下部容器20は、鉄心4及び巻線5を収容する収容空間19を有する。下部容器20は、側板21と、底板22と、下フランジ23(フランジ)と、を備える。
【0011】
側板21は、上下方向に沿って延びている。側板21は、上下方向から見て円環状を有する(図2参照)。
図2は、第1実施形態の静止誘導電器1の内部構成を軸方向から見た図である。図2は、静止誘導電器1において上部容器10を取り外した状態を上方から見た図に相当する。 図2に示すように、側板21は、上下方向から見て内周円24及び外周円25を有する。内周円24は、上下方向から見て側板21の径方向内側の円である。外周円25は、上下方向から見て側板21の径方向外側の円である。
【0012】
図1に示すように、底板22は、側板21の下端に連結されている。底板22は、上下方向から見て、側板21と同心の円形状を有する。底板22は、上下方向から見て側板21の外周円25と同一の直径を有する。静止誘導電器本体2は、底板22上に固定されている。
【0013】
下フランジ23は、側板21の上端に連結されている。図2に示すように、下フランジ23は、上下方向から見て、側板21と同心の円環状を有する。下フランジ23は、側板21の上端から径方向外方に張り出している。下フランジ23は、上下方向から見て、側板21の内周円24と同一の内径と、側板21の外周円25よりも大きい外径と、を有する。下フランジ23は、上下方向に開口する貫通孔26(以下「下貫通孔26」という。)を有する。下貫通孔26は、ボルト15(図1参照)の軸部を通過可能な大きさを有する。下貫通孔26は、下フランジ23の周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0014】
図1に示すように、上部容器10は、天板11(鏡板)と、上フランジ12と、を備える。
天板11は、上方に凸のドーム状を有する。天板11は、上下方向から見て、底板22と同心の円形状を有する。
上フランジ12は、天板11の下端に連結されている。上フランジ12は、上下方向から見て、下フランジ23と同心の円環状を有する。上フランジ12は、上下方向から見て、下フランジ23と同一の内径と、下フランジ23と同一の外径と、を有する。上フランジ12は、上下方向に開口する貫通孔(以下「上貫通孔13」という。)を有する。上貫通孔13は、ボルト15の軸部を通過可能な大きさを有する。上貫通孔13は、上フランジ12の周方向に間隔をあけて複数配置されている。上貫通孔13は、下貫通孔26と同じ間隔で複数配置されている。
【0015】
上フランジ12は、不図示のオーリング等のシール部材を介して下フランジ23に連結される。例えば、先ず、不図示のシール部材を介して上フランジ12を下フランジ23に対向させる。このとき、上下方向から見て上フランジ12を下フランジ23に重ね合わせ、上貫通孔13及び下貫通孔26を互いに連通させる。次に、上フランジ12の上方からボルト15を上貫通孔13及び下貫通孔26に挿通し、下フランジ23の下方にボルト15の軸部を突出させる。次に、突出したボルト15の軸部にナット16を螺合する。これにより、上部容器10を下部容器20に締結することができる。
【0016】
鉄心4について説明する。
図3は、第1実施形態の鉄心4の斜視図である。
図3に示すように、鉄心4は、複数の電磁鋼板を第3方向V3に積層することにより形成されている。図2に示すように、鉄心4は、上下方向から見て容器3の内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する。言い換えると、鉄心4は、側板21の内周円24に第2方向V2で対向する部位のうち第3方向V3の両側の角部を切り取った外形を有する。鉄心4は、主脚30と、側脚31と、ヨーク32A,32Bと、を備える。
【0017】
図1に示すように、主脚30は、上下方向(軸方向)に沿って延びている。主脚30は、上下方向に沿う円柱状を有する。主脚30は、上下方向から見て、側板21と同心の円形状を有する(図2参照)。主脚30には、巻線5が巻回されている。上下方向から見て、巻線5は、主脚30と同心の円環状を有する(図2参照)。
【0018】
側脚31は、上下方向(第1方向V1)に沿って延びている。側脚31は、第2方向V2に主脚30及び巻線5を挟んで両側に一対配置されている。図2に示すように、側脚31は、上下方向から見て容器3の内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する。
【0019】
図4は、第1実施形態の側脚31を軸方向から見た断面図である。図4は、図1のIV-IV断面に相当する。
図4に示すように、側脚31のうち第2方向V2において巻線5に対向する面を「第1面35」、第2方向V2において第1面35とは反対側の面を「第2面36」とする。側脚31は、第1面35を平面とし且つ第2面36を容器3の内周面(側板21の内周円24)に向かって凸とした形状を有する。側脚31は、上下方向から見て凸形状の断面形状を有する。側脚31の断面形状は、側脚31を中心軸線CL(図1参照)と直交する面で切断した断面の形状を意味する。側脚31は、側脚31が延びる方向全体(上下方向全体)にわたって同一の凸形状の断面形状を有する。
【0020】
図5は、第1実施形態の側脚31の断面形状の説明図である。図5は、側脚31の断面形状を長方形の仮想断面を用いて説明するための図である
図5に示すように、側脚31は、上下方向から見て長方形の仮想断面のうち容器3の内周面に対向する両角部を切り取った一対の長方形の切欠き39(空隙部)を有する。
【0021】
ここで、切欠き39の第2方向V2の長さL1を「第1長さL1」、切欠き39の第3方向V3の長さL2を「第2長さL2」、長方形の仮想断面の短辺の全長X1を「短辺長さX1」、長方形の仮想断面の長辺の全長X2を「長辺長さX2」とする。
例えば、側脚31を通る磁束に影響を与えない観点からは、X1/5≦L1≦X1/3、且つ、X2/5≦L2≦X2/3を満たすことが好ましい。本実施形態では、L1=X1/3、且つ、L2=X2/3を満たしている。
【0022】
図3に示すように、ヨーク32A,32Bは、主脚30及び一対の側脚31のそれぞれの両端部を繋ぐように第2方向V2に沿って延びている。ヨーク32A,32Bは、主脚30及び一対の側脚31の軸方向両側に一対配置されている。ヨーク32A,32Bは、第2方向V2から見て、側脚31(具体的には側脚31を第1方向V1から見た断面形状)と同一の断面形状を有する。ヨーク32A,32Bは、ヨーク32A,32Bが延びる方向全体(第2方向V2全体)にわたって側脚31と同一の凸形状の断面形状を有する。
【0023】
ここで、一対のヨーク32A,32Bのうち、主脚30及び一対の側脚31のそれぞれの上端部を繋ぐヨーク32Aを「上ヨーク32A」、主脚30及び一対の側脚31のそれぞれの下端部を繋ぐヨーク32Bを「下ヨーク32B」とする。
上ヨーク32Aは、上ヨーク32Aが延びる方向全体にわたって上方に向かって凸の凸形状の断面形状を有する。下ヨーク32Bは、下ヨーク32Bが延びる方向全体にわたって下方に向かって凸の凸形状の断面形状を有する。すなわち、ヨーク32A,32Bは、巻線5(図1参照)に対向する面とは反対側に向かって凸の凸形状であって、側脚31と同一の凸形状の断面形状を有する。
【0024】
以上に説明されたように、実施形態の静止誘導電器1は、容器3と、鉄心4と、を持つ。容器3は、円筒状を有する。鉄心4は、容器3に収容される。鉄心4は、軸方向から見て容器3の内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
鉄心4の両角部を切り取った分だけ容器3の内径を小さくし、容器3の内周面と鉄心4との間の余剰空間を小さくすることができる。したがって、静止誘導電器1を小型化することができる。
【0025】
ところで、地下変電所向けの静止誘導電器は、その設置場所及び設置場所までの経路による制約から、三相分の機器を1つの容器に収容することが困難である。このため、機器を相毎に別の容器に収納する、いわゆる特別三相構成とすることが一般的である。実施形態によれば、従来(鉄心の側脚が軸方向から見て長方形の断面形状を有する構成)よりも、特別三相構成のガス絶縁静止誘導電器を小型化することができる。したがって、寸法制約の大きい地下変電所に設置することができるガス絶縁静止誘導電器を提供することができる。
【0026】
仮に、静止誘導電器が負荷時タップ切換器付変圧器等の場合、タップ巻線用を含む複数の配線を余剰空間に収納することで、余剰空間を小さくすることができる。しかしながら、静止誘導電器が分路リアクトル等の場合、負荷時タップ切換器付変圧器等に比べて巻線や配線の数が少ないため、余剰空間が大きくなりやすい。実施形態によれば、静止誘導電器1が分路リアクトルの場合であっても、上述の構成により余剰空間を小さくすることができるため、実益が大きい。
【0027】
ヨーク32A,32Bは、第2方向V2から見て側脚31と同一の断面形状を有することで、以下の効果を奏する。
側脚31及びヨーク32A,32Bの磁束密度を互いに同一とすることができ、局所的な発熱(ローカルヒート)を抑制することができる。
【0028】
側脚31は、軸方向から見て凸形状の断面形状を有することで、以下の効果を奏する。
側脚31の凸形状を容器3の内周面に合わせることで、容器3内の容積の利用効率を高め、容器3の内径を小さくすることができる。したがって、より小型化した静止誘導電器1を提供することができる。
【0029】
切欠き39の第2方向V2の長さをL1、切欠き39の第3方向V3の長さをL2、長方形の仮想断面の短辺の全長をX1、長方形の仮想断面の長辺の全長をX2としたとき、L1=X1/3、且つ、L2=X2/3を満たすことで、以下の効果を奏する。
側脚31を通る磁束に影響を与えることを抑制しつつ、容器3の内周面と側脚31との間の余剰空間を可及的に小さくすることができる。したがって、鉄心4の励磁特性を維持しつつ、より小型化した静止誘導電器1を提供することができる。
【0030】
次に、図6を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
側脚は、軸方向から見て凸形状の断面形状を有することに限らない。第2実施形態は、側脚が軸方向から見て蒲鉾形状の断面形状を有する点で第1実施形態と異なる。
【0031】
図6は、第2実施形態の側脚231を軸方向から見た断面図である。
図6に示すように、側脚231は、第1面235を平面とし且つ第2面236を容器3の内周面に向かって凸の弧状の曲面とした形状を有する。側脚231は、軸方向から見て蒲鉾形状の断面形状を有する。第2面236は、容器3の内周面よりも小さい曲率半径を有する。なお、第2面236は、容器3の内周面と同等以上の曲率半径を有していてもよい。
【0032】
第2実施形態によれば、側脚231は、軸方向から見て蒲鉾形状の断面形状を有することで、以下の効果を奏する。
側脚231の第2面236(弧状の曲面)を容器3の内周面に沿わせることで、容器3内の容積の利用効率を高め、容器3の内径を小さくすることができる。したがって、より小型化した静止誘導電器を提供することができる。
【0033】
次に、図7を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
側脚は、軸方向から見て凸形状の断面形状を有することに限らない。第3実施形態は、側脚が軸方向から見て弧状の短冊形状の断面形状を有する点で第1実施形態と異なる。
【0034】
図7は、第3実施形態の側脚331を軸方向から見た断面図である。
図7に示すように、側脚331は、第1面335を巻線5の外形に沿う弧状の曲面とし且つ第2面336を容器3の内周面に向かって凸の弧状の曲面とした形状を有する。側脚331は、第1面335及び第2面336のそれぞれの両端を繋ぐ第3面337を第2方向V2に沿う平面とした形状を有する。側脚331は、軸方向から見て弧状の短冊形状の断面形状を有する。第1面335及び第2面336は、互いに同じ曲率半径を有する。第2面336は、容器3の内周面よりも小さい曲率半径を有する。なお、第2面336は、容器3の内周面と同等以上の曲率半径を有していてもよい。
【0035】
第3実施形態によれば、側脚331は、軸方向から見て弧状の短冊形状の断面形状を有することで、以下の効果を奏する。
側脚331の第2面336(弧状の曲面)を容器3の内周面に沿わせることで、容器3内の容積の利用効率を高め、容器3の内径を小さくすることができる。したがって、より小型化した静止誘導電器を提供することができる。
【0036】
次に、図8及び図9を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
下フランジは、側板21の上端から径方向外方に張り出すこと(外向きフランジであること)に限らない。第4実施形態は、下フランジが側板21の上端から径方向内方に張り出している(内向きフランジである)点で第1実施形態と異なる。
【0037】
図8は、第4実施形態の静止誘導電器401の正面図である。
図8に示すように、下フランジ423は、側板21の上端に連結されている。下フランジ423は、上下方向から見て、側板21と同心の円環状を有する。下フランジ423は、側板21の上端から径方向内方に張り出している。下フランジ423は、上下方向から見て、側板21の外周円25と同一の外径と、側板21の内周円24よりも小さい内径と、を有する。第4実施形態の下フランジ423は、第1実施形態の下フランジ23(図1参照)よりも小さい円環状を有する。
【0038】
図9は、第4実施形態の下フランジ423の連結部の断面図である。図9は、下フランジ423の連結部をボルト415の軸線を含む面で切断した断面図に相当する。
図9に示すように、下フランジ423は、上方に開口する雌ねじ426を有する。雌ねじ426は、ボルト415の軸部を螺合可能な大きさを有する。雌ねじ426は、下フランジ423の周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0039】
図8に示すように、上部容器10は、天板11と、上フランジ412と、を備える。上部容器10は、上下方向から見て、側板21の外周円25と同一の直径の円形状を有する。
上フランジ412は、天板11の下端に連結されている。上フランジ412は、上下方向から見て、下フランジ423と同心の円環状を有する。上フランジ412は、上下方向から見て、下フランジ423と同一の内径と、下フランジ423と同一の外径と、を有する。第4実施形態の上フランジ412は、第1実施形態の上フランジ12(図1参照)よりも小さい円環状を有する。
【0040】
図9に示すように、上フランジ412は、上下方向に開口する貫通孔413を有する。貫通孔413は、ボルト415の軸部を通過可能な大きさを有する。貫通孔413は、上フランジ412の周方向に間隔をあけて複数配置されている。貫通孔413は、雌ねじ426と同じ間隔で複数配置されている。
【0041】
上フランジ412は、不図示のオーリング等のシール部材を介して下フランジ423に連結される。例えば、先ず、不図示のシール部材を介して上フランジ412を下フランジ423に対向させる。このとき、上下方向から見て上フランジ412を下フランジ423に重ね合わせ、貫通孔413及び雌ねじ426を互いに連通させる。次に、上フランジ412の上方からボルト415を貫通孔413に挿通し、下フランジ423の雌ねじ426にボルト415の軸部を螺合する。これにより、上部容器10を下部容器20に締結することができる。
【0042】
図8に示すように、容器3は、収容空間419を上下方向に2つに仕切る仕切り板440と、仕切り板440と側板21の内周面とを接合するための接続フランジ450(接合部)と、を備える。
収容空間419は、仕切り板440によって上部空間419Aと下部空間419Bとに仕切られている。上部空間419A内には、静止誘導電器本体2の大部分(下ヨーク32B以外の部分)が主に収容されている。下部空間419B内には、下ヨーク32Bが主に収容されている。
【0043】
仕切り板440は、上ヨーク32Aと下ヨーク32Bとの間に配置されている。仕切り板440は、上ヨーク32Aよりも下ヨーク32Bの近くに配置されている。仕切り板440は、上下方向から見て、側板21と同心の円環状を有する。仕切り板440は、上下方向から見て、側板21の内周円24と同一の外径と、巻線5の外径と同一の内径と、を有する。
【0044】
仕切り板440は、鉄心4の側脚31を挿通するための不図示の貫通孔と、ボルト445の軸部を挿通するための貫通孔441(以下「第1ボルト孔441」という。)と、を有する。第1ボルト孔441は、ボルト445の軸部を通過可能な大きさを有する。第1ボルト孔441は、仕切り板440の周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0045】
接続フランジ450は、仕切り板440と下ヨーク32Bとの間に配置されている。接続フランジ450は、側脚31よりも径方向外方に配置されている。接続フランジ450は、側板21の内周面から径方向内方に張り出している。接続フランジ450は、上下方向から見て、側板21と同心の円環状を有する。接続フランジ450は、下フランジ423の直下に設けられている。接続フランジ450は、上下方向から見て、下フランジ423の径方向幅内に収まるように設けられている。
【0046】
接続フランジ450は、ボルト445の軸部を挿通するための貫通孔451(以下「第2ボルト孔451」という。)と、を有する。第2ボルト孔451は、ボルト445の軸部を通過可能な大きさを有する。第2ボルト孔451は、接続フランジ450の周方向に間隔をあけて複数配置されている。第2ボルト孔451は、第1ボルト孔441と同じ間隔で複数配置されている。
【0047】
仕切り板440は、複数のボルト445により接続フランジ450に連結される。例えば、先ず、仕切り板440を接続フランジ450上に設置する。このとき、上下方向から見て仕切り板440を接続フランジ450に重ね合わせ、第1ボルト孔441及び第2ボルト孔451を互いに連通させる。次に、仕切り板440の上方からボルト445を第1ボルト孔441及び第2ボルト孔451に挿通し、接続フランジ450の下方にボルト445の軸部を突出させる。次に、突出したボルト445の軸部にナット446を螺合する。これにより、仕切り板440を接続フランジ450に締結することができる。
【0048】
第4実施形態によれば、下フランジ423は、側板21の上端から径方向内方に張り出している。下フランジ423は、上下方向から見て、側板21の外周円25と同一の外径と、側板21の内周円24よりも小さい内径と、を有する。上部容器10は、上下方向から見て、側板21の外周円25と同一の直径の円形状を有する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
下フランジが側板21の上端から径方向外方に張り出す場合と比較して、静止誘導電器401をより小型化することができる。
加えて、下フランジ423の直下の空間を有効活用することができる。例えば、下フランジ423の直下の空間に、不図示の配線やシールド等を配置することができる。
【0049】
容器3は、収容空間419を上下方向に2つに仕切る仕切り板440を備えることで、以下の効果を奏する。
発熱体である鉄心4及び巻線5(静止誘導電器本体2の大部分)を冷却するために、仕切り板440によって仕切られた空間内(上部空間419A内)に加圧ガスを強制的に循環させることができる。例えば、冷却用のガスは、静止誘導電器本体2に設けられた不図示の連通孔を通じて容器3の下部から上部に向かって流すことができる。
【0050】
接続フランジ450は、下フランジ423の直下に設けられていることで、以下の効果を奏する。
下フランジ423の直下の空間を、接続フランジ450の配置スペースとして有効活用することができる。したがって、容器3内の容積の利用効率をより高めることができる。
【0051】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態の鉄心4は、軸方向から見て容器3の内周面に対向する両角部を切り取った外形を有する。これに対して、鉄心4は、軸方向から見て容器3の内周面に対向する片側の角部のみを切り取った外形を有してもよい。すなわち、鉄心4は、軸方向から見て容器3の内周面に対向する両側の角部の少なくとも一方を切り取った外形を有していればよい。例えば、鉄心4において容器3の内周面に対向する部位の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0052】
実施形態の鉄心4は、主脚30と、一対の側脚31と、一対のヨーク32A,32Bと、を備える。これに対して、鉄心4は、主脚30を有しなくてもよい。例えば、鉄心4は、巻線5が巻回された一対の側脚31と、一対のヨーク32A,32Bと、を備えていてもよい。例えば、鉄心4の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0053】
実施形態のヨーク32A,32Bは、第2方向V2から見て側脚31と同一の断面形状を有する。これに対して、ヨーク32A,32Bは、第2方向V2から見て側脚31と異なる断面形状を有してもよい。例えば、ヨーク32A,32Bの断面形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0054】
実施形態の容器3は、上下方向に延びる円筒状を有する。これに対して、容器3は、上下方向に交差する方向(例えば水平方向)に延びる円筒状を有してもよい。例えば、容器3の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0055】
実施形態の静止誘導電器1は、分路リアクトルである。これに対して、静止誘導電器1は、負荷時タップ切換器付変圧器であってもよい。例えば、静止誘導電器1の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0056】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、鉄心4の角部を切り取った分だけ容器3の内径を小さくし、容器3の内周面と鉄心4との間の余剰空間を小さくすることができる。したがって、静止誘導電器1を小型化することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…静止誘導電器、3…容器、4…鉄心、5…巻線、10…上部容器、19…収容空間、20…下部容器、21…側板、22…底板、23…下フランジ(フランジ)、24…内周円、25…外周円、30…主脚、31…側脚、32A…上ヨーク(ヨーク)、32B…下ヨーク(ヨーク)、35…第1面、36…第2面、231…側脚、235…第1面、236…第2面、331…側脚、335…第1面、336…第2面、337…第3面、401…静止誘導電器、419…収容空間、423…下フランジ(フランジ)、440…仕切り板、450…接続フランジ(接合部)、V1…第1方向、V2…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9