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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240430BHJP
   H01Q 3/36 20060101ALI20240430BHJP
   G01S 13/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G01S7/02 216
H01Q3/36
G01S13/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020115723
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013280
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-027051(JP,A)
【文献】特開2019-086464(JP,A)
【文献】特開2012-137447(JP,A)
【文献】特開2011-158292(JP,A)
【文献】特開2020-027047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備え、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いて、角度軸逆FFTしてサブアレイ信号を生成し、サブアレイ信号によりビーム形成して信号処理するレーダ装置。
【請求項2】
複数のアンテナを備え、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いてビーム形成して信号処理するレーダ装置。
【請求項3】
前記複数のアンテナによる回転アンテナを備え、M=Nとして、全体のM通りの受信データの合成値をΣとし、M通りの受信データの前半のM/2と後半のM/2の受信データを各々合成してΣ1とΣ2を得て、Σ1とΣ2の振幅値の大きい方と、Σを用いて振幅スクイント測角する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
複数のアンテナの受信信号から、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いて、角度軸逆FFTしてサブアレイ信号を生成し、サブアレイ信号によりビーム形成して信号処理するレーダ信号処理方法。
【請求項5】
複数のアンテナの受信信号から、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いてビーム形成して信号処理するレーダ信号処理方法。
【請求項6】
前記複数のアンテナによる回転アンテナの受信信号から、M=Nとして、全体のM通りの受信データの合成値をΣとし、M通りの受信データの前半のM/2と後半のM/2の受信データを各々合成してΣ1とΣ2を得て、Σ1とΣ2の振幅値の大きい方と、Σを用いて振幅スクイント測角する請求項4記載のレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置にあっては、低コストでの測角機能を実現するため、アンテナの測角方式として、振幅モノパルスや位相モノパルス方式(非特許文献1参照)が採用される。しかしながら、振幅モノパルスや位相モノパルス方式では、スクイントしたΣ2ビームやΔビームのためのチャンネルが増えるため、コスト増となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】モノパルス、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 260-264(1996)
【文献】DBF(Digital Beam Forming)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.289-291 (1996)
【文献】拡張アレイ(KR積アレイ)、Wing-Kin Ma, ’DOA Estimation of Quasi-Stationary Signals With Less Sensors Than Sources and Unkown Spatial Noise Covariance: A Khatri-Rao Subspace Approach’, IEEE Trans. Signal Process., vol. 58, no. 4, pp. 2168-2180, April (2010)
【文献】MUSIC処理、菊間、‘アレーアンテナによる適応信号処理’、科学技術出版、pp. 194-199 (1999)
【文献】圧縮センシング、Toyoki Hoshikawa, ’Performance Comparison of Compressed Sensing Algorithms for DOA Estimation of Multi-band Signals’, 2018 15TH WORKSHOP ON POSITIONING NAVIGATION AND COMMUNICATIONS (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のレーダ装置では、アンテナの測角方式として振幅モノパルスや位相モノパルス方式を採用した場合に、スクイントしたΣ2ビームやΔビームのための受信チャンネルが増え、コスト増となる問題があった。
【0005】
本実施形態の課題は、少ない受信チャンネル数で角度精度の高い測角を実現することのできるレーダ装置及びレーダ信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るレーダ装置は、PRI毎BS-ES型では、複数のアンテナを備え、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いて、角度軸逆FFTしてサブアレイ信号を生成し、サブアレイ信号によりビーム形成して信号処理する。PRI毎BS型では、複数のアンテナを備え、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、N(N≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、N通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いてビーム形成して信号処理する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態において、送受信処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態において、サブアレイ間隔とsinθ軸上のグレーティングローブ間隔との関係を示す波形図である。
図4図4は、第1の実施形態において、サブアレイが4×4(Naz=Nel=4)の場合のビーム形成とその指向方向を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態において、4×4ビ-ムそれぞれの指向方向をPRI毎にランダムに変化させる処理例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態において、CPI信号のうち16通り各々のグループ毎に信号を抽出する受信信号の処理例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態において、CPI信号のうち該当グループ以外のPRIを0埋めする処理例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態において、4×4(Naz=Nel=4)通りのサブアレイ信号からEL軸またはAZ軸の1軸で合成した信号を用いてAZ軸またはEL軸の1軸の信号を得る処理例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図である。
図10図10は、第2の実施形態において、送受信処理の流れを示すフローチャートである。
図11図11は、第2の実施形態において、サブアレイが2×2(Naz=Nel=2)の場合のビーム形成とその指向方向を説明するための図である。
図12図12は、第2の実施形態において、2×2ビ-ムそれぞれの指向方向をPRI毎にランダムに変化させる処理例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態において、CPI信号のうち4通り各々のグループ毎に信号を抽出する受信信号の処理例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態において、2×2(Naz=Nel=2)通りのビームスペースの信号から左右、上下の合成ビーム信号を形成してΣビーム、Δビームの信号を得る処理例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態において、Σビーム及びΔビームから得られる誤差電圧から誤差曲線に基づいて角度を求める処理を説明するための図である。
図16図16は、第2の実施形態において、2×2(Naz=Nel=2)通りのビームスペースの信号から左右、上下の合成ビーム信号を形成してΣビーム、Σ2ビームの信号を得る処理例を示す図である。
図17図17は、第2の実施形態において、Σビーム及びΣ2ビームから得られる誤差電圧から誤差曲線に基づいて角度を求める処理を説明するための図である。
図18図18は、第3の実施形態に係るレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図である。
図19図19は、第3の実施形態において、送受信処理の流れを示すフローチャートである。
図20図20は、第3の実施形態において、全体CPIのslow-time軸FFTを行ってΣビームを取得し、前半のCPIと後半のCPIでslow-time軸のFFTを行ってΣ1とΣ2ビームを取得する様子を示す図である。
図21図21は、第3の実施形態において、回転ビームからスクイントビーム(Σビーム、Σ1ビーム、Σ2ビーム)を形成し、それぞれの受信信号の振幅を検出して振幅比較測角を行う様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1はレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図、図2図1に示すレーダ装置の送受信処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態のレーダ装置は、図1に示すように、信号生成器11により送信変調信号を生成し、DA変換器12によりアナログ信号に変換し、周波数変換器13により高周波数信号に変換する。その後、フェーズドアレイの場合には、分配器14によりN系統に分配し、移相器151~15Nで送信ビーム指向方向に応じた位相を設定し、高出力増幅器161~16Nにより増幅して、サーキュレータ171~17Nを介して、アンテナ(サブアレイ)181~18Nより送信する。アンテナ181~18Nに入力した目標からの反射信号は、低雑音増幅器201~20Nで低雑音増幅された後、移相器211~21Nにより受信ビームの指向方向に応じた位相を設定し、合成器22で合成された後、周波数変換器23により周波数変換され、AD変換器24によりディジタル信号に変換される。以上の信号取得は、図2に示すようにビーム指向方向の異なるビーム毎に行われる。
【0010】
すなわち、ビーム指向方向が設定されると(ステップS11)、ビームを形成して(ステップS12)、到来波を受信し(ステップS13)、PRIが設定回数に達したか判断し(ステップS14)、設定回数に達していない場合には、指向方向を変更して(ステップS15)、ビームの形成処理(ステップS12)に戻る。ステップS14でPRIが設定回数に達したと判断された場合には、slow-time FFT処理器25で、Mグループ毎にslow-time軸FFTを行い(ステップS16)、サブアレイ変換器26でM種のビーム信号を角度軸逆FFTしてサブアレイ信号を生成する(ステップS17)。続いて、ビーム形成器27で2次元DBFを行い(ステップS18)、信号処理器28で目標検出/測角処理等の信号処理を行い(ステップS19)、測角器29でその信号処理結果に基づく測角を観測し、その観測値を出力する(ステップS20)。
【0011】
ビーム指向方向を変化させるには、電子走査による方法を用いる。本実施形態では、PRI(Pulse Repetition Interval)毎に、送信ビーム制御器19または受信ビーム制御器30で送信ビーム、受信ビームの指向方向を変化させることに特徴がある。この場合、
方式1)送信ビームのみを変える方法、
方式2)受信ビームのみを変える方法、
方式3)送信及び受信ビームを変える方法
の3通りがある。いずれの場合も、方式の考え方は同様であり、以下において、3方式を区別せずに説明する。
【0012】
まず、ビーム走査方向について説明する。図3(a)に示すように、サブアレイ間隔をdとすると、サブアレイでビーム指向方向を制御する場合、図3(b)に示すように、sinθ軸上で、グレーティングローブ間隔はλ/dの範囲となる。グレーティングロ-ブを発生させないためには、この範囲を走査となる。したがって、N個のサブアレイ111~11Nによる制御の場合には、sinθ軸で、λ/dの範囲をN等分した方向にビーム形成する。この信号は直交ビーム信号であり、空間周波数軸(sinθ軸であり、以下、簡単のため角度軸と表現する)逆FFTすることにより、サブアレイ信号を得ることができる。
【0013】
【数1】
【0014】
これを角度軸逆FFTすることにより、サブアレイ信号を得ることができる。
【0015】
【数2】
【0016】
このサブアレイ信号を用いてDBF(非特許文献2参照)処理により、振幅及び位相制御すれば、sinθ軸においてλ/dの範囲で任意のビームを形成することができる。
【0017】
以上の原理を踏まえて、図4(a)に示すように、Naz×Nel (Naz≧1、Nel≧1)のビームを形成する場合について考える。説明をわかりやすくするために、図4では、4×4(Naz=Nel=4)の場合について示している。
【0018】
各ビ-ムの指向方向は、図4(b)に示すサブアレイ信号A11~A44を用いて、図5に示すように、PRI毎にランダムにA11~A44を選定(1/16の間引き)し、変化させる。図4では、指向方向をAZ軸及びEL軸で16通りの方向に変化させる場合である。この場合は、PRI数(ヒット数)を16分割し、16通りの指向方向をPRI軸に対して、ランダムに割り当てる。16通りの各々のPRI数は同一とする。
【0019】
受信信号の処理を図6に示す。図6(a)に示すCPIの送信パルス信号のうち、16通りの各々のグループ毎に受信パルスの信号を、図6(b)に示すように、ランダムに選択し抽出する。ここで、該当グループ以外のPRIは、図7に示すように、データが無いので0埋めを行う。これにより、slow-time軸の観測時間を各グループで同一にして、ドップラ分解能を揃えることができる。
【0020】
このグループ毎のビーム信号を用いて、角度軸逆FFTすることにより、サブアレイ信号が得られる。
【0021】
【数3】
【0022】
以上で、図4に示す16通りのサブアレイ(A11~A44)のslow-time軸FFT後のレンジ-ドップラ信号が得られる。この16通りの信号を用いて、サブアレイDBFによる任意のビームを形成することができる。
【0023】
一般に、Naz×Nelのサブアレイ信号を得て、任意のDBFビームを形成する手法について述べた。この場合、Naz×Nelを増やすと、CPIのPRIを細かく分割するため、1サブアレイ当たりのCPIの間引き率が大きくなり、ドップラ軸でグレ-ティングローブが発生し、偽目標を発生する可能性がある。
【0024】
この対策として、Naz×Nel通りのサブアレイ信号を得た後、図8(a)または図8(b)に示すように、EL軸またはAZ軸の1軸で列毎または段毎に開口合成した4chのAZ-DBF(BS)信号または4chのEL-DBF(BS)信号を用いて、IFFTによりAZ-DBF(ES)またはEL-DBF(ES)を取得する。AZ軸またはEL軸の1軸の信号を得て、処理する。処理手法としては、例えば、モノパルス測角や、高分解能処理(KR積拡張アレイ(非特許文献3)、MUSIC(非特許文献4)、圧縮センシング(非特許文献5)等)がある。
【0025】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ビーム信号をサブアレイ信号に変換してから、DBF形成する手法について述べた。本実施形態では、サブアレイ信号に変換せずに、ビームスペースのままで処理する手法について述べる。
【0026】
図9は第2の実施形態に係るレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図、図10図9に示すレーダ装置の送受信処理の流れを示すフローチャートである。図9及び図10において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。本実施形態は、第1の実施形態とは、サブアレイ変換器26、ステップS17が無い部分が異なっている。
【0027】
本実施形態は、サブアレイ信号を用いずに、ビームスペースのままで処理する。具体的には、Naz=Nel=2の場合、図11(a)に示すように4通りのビームを形成する。このビーム指向方向の様子を、わかりやすいように図11(b)のA11~A22で表現する。すなわち、図12に示すようにPRI1~PRINの送信パルスからランダムにA11~A22を選定(1/4の間引き)し、図13(a)に示す選定出力を図13(b)に示すように受信して、各グループで間引き部分を0埋めし、それぞれのビームをslow-time軸FFTしてビーム合成し、レンジ・ドップラセルを抽出する検出処理を行い、検出セルについてモノパルスビームを形成し、そのビーム出力から測角する。
【0028】
本実施形態では、上記4通りのビーム全体を合成するとΣビームになり、図14(a)に示すように、左ビーム(A11,A21)と右ビーム(A12,A22)でそれぞれ合成すると、左右のビーム信号が得られるので、その減算により、ΔAZビームを形成できる。同様に、図14(b)に示すように、上ビーム(A11,A12)と下ビーム(A21,A22)でそれぞれ合成すると、上下のビーム信号が得られるので、その減算により、ΔELビームを形成できる。
【0029】
これを用いて、次式により位相モノパルス(非特許文献1参照)の誤差電圧を計算することができる。
【0030】
【数4】
【0031】
上記誤差電圧と、予め取得した図15(a)のΣビームの出力T1及びΔビームの出力T2に対する図15(b)に示す誤差曲線(テーブル)Real[T1/T2]とを比較することにより、角度を算出することができる。
【0032】
次に、スクイントモノパルスの場合について述べる。
【0033】
上記4通りのビーム(A11、A12,A21,A22)について、slow-time軸FFTすることでレンジ-ドップラ信号が得られる。この4通りの信号を用いて、全体を合成するとΣビームになり、図16(a)に示すように、左半分のビーム(A11、A21)と右半分のビーム(A12、A22)でそれぞれ合成すると、左右のビーム信号が得られる。そこで、その2つのビームにより、ΣビームとAZ軸のいずれか一方のスクイントビームΣAZを選択することができる。同様に、図16(b)に示すように、上半分のビ-ム(A11、A12)と下半分のビーム(A21、A22)でそれぞれ合成すると、上下のビーム信号が得られるので、その2つのビームにより、ΣビームとEL軸で指向方向がずれたスクイントビームΣELを選択することができる。
【0034】
また、誤差電圧は次式となる。
【0035】
【数5】
【0036】
上記誤差電圧と、予め取得した図17(a)のΣビームの出力T1及びスクイントビームの出力T2に対する図17(b)に示す誤差曲線(テーブル)Real[T1/T2]とを比較することにより、角度を算出することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、任意の走査方向の場合のビームスペースのまま処理する手法について述べた。本実施形態では、回転型アンテナの場合のように、ビーム方向が連続して変化する場合について述べる。
【0038】
図18は第3の実施形態に係るレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図、図19はその送受信処理の流れを示すフローチャートである。図18及び図19において、図1図2図9図10と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。本実施形態では、測角器29をビーム選定測角器29aに変更した点が異なる。また、測角のためのビームとして、CPIを前半と後半に分けてビーム形成処理した点が異なる。
【0039】
すなわち、PRI毎には、指向方向を制御できないため、PRIをランダムに選定することができない。そこで、本実施形態では、まず、Σビームについては、全体CPIのslow-time軸FFTを行ってΣビームを得る。一方、測角のためのビームとしては、CPIを前半と後半に分けて、前半のCPIと後半のCPIのぞれぞれにおいてslow-time軸のFFTを行い、それぞれΣ1ビームとΣ2ビームとする。この際に、Σビームとドップラ分解能を合わせるために、図20に示すように、前半(後半)のCPIの場合は、後半(前半)のCPIは0埋めとする。図21(a)にスクイントビーム、図21(b)にモノパルスビームの形状を比較して示す。
【0040】
このΣ1ビームとΣ2ビームでは、目標速度がある場合には、ドップラ成分があるために位相が異なっており、速度を抽出して位相補正を行う必要がある。その補正ができない場合は、Σ、Σ1、Σ2の振幅を用いて、Σ1とΣ2のいずれか大きな振幅のビームを用いて、次式により振幅比較測角を行う。
【0041】
【数6】
【0042】
上記誤差電圧と、予め取得した誤差曲線(テーブル)を比較することにより、角度を算出することができる。
【0043】
以上のように、上記実施形態によれば、M(M≧2)ヒットのCPI(Coherent Pulse Interval)のPRI(Pulse repetition Interval)毎に、M(M≧2)通りの方向にビーム走査角を変えて受信したデータより、M通りのビーム毎にslow-time軸FFTしたデータを用いて、角度軸逆FFTして、サブアレイ信号またはビームスペースを生成し、受信信号によりビーム形成して信号処理するようにしているので、少ない受信チャンネル数で角度精度の高い測角を実現することができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11…信号生成器、12…DA変換器、13…周波数変換器、14…分配器、151~15N…移相器、161~16N…高出力増幅器、171~17N…サーキュレータ、181~18N…アンテナ(サブアレイ)、19…送信ビーム制御器、201~20N…低雑音増幅器、211~21N…移相器、22…合成器、23…周波数変換器、24…AD変換器、25…slow-time FFT処理器、26…サブアレイ変換器、27…ビーム形成器、28…信号処理器、29…測角器、29a…ビーム選定測角器、30…受信ビーム制御器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21