(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240430BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240430BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20240430BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20240430BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G02B7/02 E
G03B17/02
G03B17/55
H04N23/52
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020121290
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 恭生
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225745(WO,A1)
【文献】特開平07-254480(JP,A)
【文献】特開昭54-005239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0239105(US,A1)
【文献】特開2003-327048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 17/02
G03B 17/55
H04N 23/52
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
ヒータを備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および、前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、を備え、
前記延伸部には、給電配線が配置され、
前記平面部には、前記給電配線に接続されるヒータ線が配置され、
前記ヒータ線は、複数の折り返し部を備え
、
前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部を備え、
前記突出部に前記折り返し部が配置されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記複数の折り返し部は、前記フレキシブルプリント基板の縁に沿って並んでいることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記折り返し部に付着した短絡用導電材を備え、
前記短絡用導電材により、前記ヒータ線が短絡していることを特徴とする請求項1
または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記平面部は環状であり、
前記給電配線は、前記延伸部から前記平面部へ径方向に延びており、
前記ヒータ線は、前記給電配線の径方向内側の端部に接続されることを特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板は、前記給電配線およびヒータ線を覆うオーバーコート層を備え、
前記折り返し部は、前記オーバーコート層から露出する露出部を備えることを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記ヒータ線は、前記折り返し部と繋がるヒータ細線を備え、
前記折り返し部の線幅は、前記ヒータ細線の線幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から
5の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記折り返し部は、前記ヒータ細線と繋がる第1部分、および、前記第1部分から突出する第2部分を備え、
前記第2部分の線幅は、前記第1部分の線幅よりも大きいことを特徴とする請求項
6に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズを光軸上に配置したレンズユニットに関する。
【0002】
特許文献1には、光学機器に用いられるレンズユニットが開示される。特許文献1のレンズユニットは、光軸上に配置される複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダとを備える。レンズホルダは、鏡筒(レンズ鏡筒)と、鏡筒を覆うケース(フロントケース)とを一体に成形した成形品である。複数のレンズのうちで最も被写体側に位置する第1レンズと鏡筒との隙間は、Oリングによって封止される。
【0003】
特許文献1のレンズユニットは、屋外での使用の際にレンズユニット内で結露が発生することを抑制するため、レンズユニットの内部にヒータが配置される。ヒータは、熱伝導性を有する環状のフレキシブルプリント基板(口径板)の表面に配置した電熱線である。電熱線に通電して発熱させることにより、レンズの周囲の温度を上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルプリント基板の表面に電熱線を形成する際、導電性材料をフレキシブルプリント基板の表面に積層して電熱線の形状のパターンを形成する。その際、必要な発熱量が得られるように導電体のパターンの太さや長さを設定している。しかしながら、パターンの形状精度が低いと、導電体のパターンの抵抗値がばらつくので、発熱量のばらつきに繋がる。
【0006】
例えば、導電性材料のパターンを安価に製造する方法として、フォトリソグラフィにより導電性材料の膜を作り、ウェットエッチングによりパターンを形成する方法が用いられるが、この方法ではパターン形状のばらつきが大きい。その結果、レンズユニットの個体ごとにヒータの発熱量が異なり、結露除去能力がばらつくという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、フレキシブルプリント基板に形成した導電体のパターンをヒータとして使用するレンズユニットにおいて、ヒータの発熱量のばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、最も物体側にある第1レンズと、前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、ヒータを備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および、前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、を備え、前記延伸部には、給電配線が配置され、前記平面部には、前記給電配線に接続されるヒータ線が配置され、前記ヒータ線は、複数の折り返し部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、フレキシブルプリント基板に配置されるヒータ線によって第1レンズ
を加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、ヒータ線は、複数の折り返し部を備えている。従って、ヒータ線を備えたフレキシブルプリント基板の製造後に、個体ごとにヒータ線の抵抗値を計測して、目標値と異なる場合には、折り返し部の位置でヒータ線を短絡させて抵抗値を目標値に近づけることができる。これにより、ヒータ線の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線の抵抗値のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータの発熱量のばらつきを少なくすることができ、レンズユニットの結露除去能力のばらつきを少なくすることができる。
【0010】
本発明において、前記折り返し部に付着した短絡用導電材を備え、前記短絡用導電材により、前記ヒータ線が短絡していることが好ましい。例えば、導電性のペーストや導電性接着剤を短絡用導電材として用いれば、ヒータ線を容易に短絡させることができる。従って、ヒータ線の抵抗値を容易に調節できる。
【0011】
本発明において、前記複数の折り返し部は、前記フレキシブルプリント基板の縁に沿って並んでいることが好ましい。このようにすると、短絡用導電材を目標とする位置および範囲に容易に付着させることができる。従って、ヒータ線の抵抗値を容易に、且つ、精度良く調節できる。
【0012】
本発明において、前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側へ突出する突出部を備え、前記突出部に前記折り返し部が配置されることが好ましい。このようにすると、ヒータ線の抵抗値を調節するための折り返し部が、第1レンズの像側に配置される部品(例えば、第2レンズおよびレンズホルダ)と干渉しにくい。ヒータ線の折り返し部が第1レンズと他部品との間に挟まれると、複数の折り返し部が潰されて短絡するおそれがあるが、本形態では、折り返し部を径方向外側に突出した突出部に配置しているので、複数の折り返し部が潰されて短絡するおそれが少ない。また、折り返し部に付着した短絡用導電材が潰されて意図しない範囲に広がり、意図しない位置でヒータ線が短絡するおそれが少ない。従って、ヒータ線の抵抗値を精度良く調節できる。
【0013】
本発明において、前記平面部は環状であり、前記給電配線は、前記延伸部から前記平面部へ径方向に延びており、前記ヒータ線は、前記給電配線の径方向内側の端部に接続されることが好ましい。このように、ヒータ線と給電配線との接続部を径方向内側に配置すると、ヒータ線の折り返し部を径方向外側に配置しやすい。従って、折り返し部を短絡させやすい。
【0014】
本発明において、前記フレキシブルプリント基板は、前記給電配線およびヒータ線を覆うオーバーコート層を備え、前記折り返し部は、前記オーバーコート層から露出する露出部を備えることが好ましい。このようにすると、オーバーコート層によってヒータ線を保護できる。また、折り返し部は露出しているので、短絡用導電材を付着させるだけでヒータ線を短絡させることができる。従って、ヒータ線の抵抗値を容易に調節できる。
【0015】
本発明において、前記ヒータ線は、前記折り返し部と繋がるヒータ細線を備え、前記折り返し部の線幅は、前記ヒータ細線の線幅よりも大きい。このようにすると、折り返し部が断線するおそれが少ない。
【0016】
本発明において、前記折り返し部は、前記ヒータ細線と繋がる第1部分、および、前記第1部分から突出する第2部分を備え、前記第2部分の線幅は、前記第1部分の線幅よりも大きいことが好ましい。このようにすると、折り返し部の先端を短絡させやすいので、ヒータ線の抵抗値を調節しやすい。また、隣り合う折り返し部の隙間が狭いので、短絡用導電材の位置ずれや量の不足によって短絡できなくなるおそれが少ない。
【0017】
次に、上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、最も物体側にある第1レンズと、前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、ヒータを備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および、前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、を備え、前記延伸部には、給電配線が配置され、前記平面部には、前記給電配線に接続されるヒータ線、および、短絡用配線が配置されることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、フレキシブルプリント基板に配置されるヒータ線によって第1レンズを加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、フレキシブルプリント基板には、ヒータ線に加えて短絡用配線が配置される。従って、ヒータ線の抵抗値が目標値と異なる場合には、短絡用配線とヒータ線とを接続させることによって、あるいは、ヒータ線と短絡用配線のいずれかを切断することによって、ヒータ線の抵抗値を調節できる。よって、ヒータ線の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線の抵抗値のばらつきを少なくすることができ、ヒータの発熱量のばらつきを少なくすることができる。
【0019】
例えば、前記短絡用配線と前記ヒータ線とを接続する短絡用導電材を備える構成を採用することができる。例えば、導電性のペーストや導電性接着剤を短絡用導電材として用いれば、短絡用配線とヒータ線とを容易に短絡させることができる。従って、ヒータ線の抵抗値を容易に調節できる。
【0020】
あるいは、前記短絡用配線、もしくは、前記短絡用配線によって短絡されたヒータ線のいずれかに、レーザにより切断された切断部が設けられている構成を採用することができる。このように、ヒータ線と短絡用配線のいずれかを切断することによって、ヒータ線の抵抗値を調節できる。
【0021】
本発明において、前記短絡用配線は、前記フレキシブルプリント基板の縁に配置されることが好ましい。このようにすると、短絡用導電材を目標とする位置および範囲に容易に付着させることができる。従って、ヒータ線の抵抗値を容易に、且つ、精度良く調節できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フレキシブルプリント基板に配置されるヒータ線によって第1レンズを加温できるため、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、ヒータ線が複数の折り返し部を備えているか、もしくは、ヒータ線および短絡用配線がフレキシブルプリント基板に配置される。従って、ヒータ線を備えたフレキシブルプリント基板の製造後に、個体ごとにヒータ線の抵抗値を計測して、目標値と異なる場合には、折り返し部の位置でヒータ線を短絡させて抵抗値を目標値に近づけることができる。もしくは、短絡用配線とヒータ線とを接続することによって、あるいは、ヒータ線と短絡用配線のいずれかを切断することによって、ヒータ線の抵抗値を目標値に近づけることができる。これにより、ヒータ線の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線の抵抗値のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータの発熱量のばらつきを少なくすることができ、レンズユニットの結露除去能力のばらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
【
図2】
図1のレンズユニットの分解断面斜視図である。
【
図4】レンズホルダの平面図、および、第1レンズおよびOリングを取り外したレンズユニットの平面図である。
【
図8】変形例1のヒータ線が形成されたフレキシブルプリント基板の平面図である。
【
図9】変形例2のヒータ線および短絡用配線が形成されたフレキシブルプリント基板の平面図である。
【
図10】変形例3のヒータ線および短絡用配線が形成されたフレキシブルプリント基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットの実施形態を説明する。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るレンズユニット1の断面図である。
図1において、Lはレンズユニット1の光軸である。Laは光軸L方向の一方側であり、レンズユニット1の物体側(被写体側)である。Lbは光軸L方向の他方側であり、レンズユニット1の像側である。レンズユニット1は、光軸Lに沿って1列に並ぶ複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダ2を備える。複数のレンズは、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6を備える。第2レンズL2と第3レンズL3との間には遮光板L7が配置され、第3レンズL3と第4レンズL4との間には絞りL8が配置される。
【0026】
複数のレンズのうち、最も物体側Laに位置する第1レンズL1、および、第4レンズL4はガラスレンズである。第4レンズL4は、枠状のホルダ3に固定された状態でレンズホルダ2の内側に配置される。第2レンズL2、第3レンズL3、第5レンズL5、第6レンズL6はプラスチックレンズである。最も像側Lbに位置する第6レンズL6と第5レンズL5は、接合レンズL9を構成している。なお、レンズホルダ2に保持されるレンズの数および構成は、上記の数および構成に限定されるものではない。
【0027】
レンズホルダ2は樹脂製である。レンズホルダ2は、第1レンズL1を保持する第1収容部4と、第1収容部4の像側Lbに配置される第2収容部5と、第2収容部5の外周側を囲むレンズケース6を備える。レンズケース6は、第1収容部4の外周端部から像側Lbへ延びている。第2収容部5には、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が保持される。
【0028】
図2は、
図1のレンズユニット1の分解断面斜視図である。
図3は、レンズホルダ2の斜視図である。
図4(a)はレンズホルダ2の平面図であり、
図4(b)は、第1レンズL1およびOリング7を取り外したレンズユニット1の平面図である。
図3、
図4は、
図1のA-A位置より上の部分(カシメ部45)の図示を省略した図である。
図1、
図2に示すように、レンズホルダ2には、第1収容部4の内周面を基準として第1レンズL1が配置される。また、第2収容部5の内周面を基準として第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が配置される。
【0029】
第1レンズL1は、第1収容部4の底部に形成されたレンズ座面40を基準として光軸L方向に位置決めされる。
図1、
図3に示すように、第1収容部4の底部は、第2収容部5の外周面に繋がる環状接続部41と、環状接続部41の外周側において物体側Laへ突
出した環状の規制部42と、規制部42の外周縁から物体側Laへ立ち上がる周壁部43を備える。
【0030】
図3、
図4に示すように、規制部42は、物体側Laを向く環状端面44からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面40になっている。本形態では、光軸Lを中心として略角度間隔の4か所にレンズ座面40が設けられている。第1レンズL1の外周部分はレンズ座面40に当接しており、周壁部43の先端に設けられたカシメ部45によって第1レンズL1がカシメ固定される。第1レンズL1と第1収容部4との隙間は、Oリング7によって封止される。
【0031】
図1、
図2に示すように、第2収容部5は、第1収容部4の環状接続部41に繋がる筒部51と、光軸L方向に延びる筒部51の像側Lbの端部に設けられた底部52を備える。第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および第6レンズL6)は、第2収容部5の底部52に形成されたレンズ座面50(
図3、
図4(a)参照)を基準として光軸L方向に位置決めされる。
【0032】
第2収容部5の底部52は、物体側Laを向く環状底面53からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面50になっている。
図4(a)に示すように、本形態では、光軸Lを中心として略角度間隔の3か所にレンズ座面50が設けられている。また、第2収容部5は、環状底面53の内周側において像側Lbに所定深さで凹んだ凹部54と、凹部54の中央に設けられた円形の開口部55とを備える。
【0033】
接合レンズL9は、第5レンズL5の外周部分がレンズ座面50に当接することによって光軸L方向に位置決めされている。最も像側Lbに配置される第6レンズL6は凹部54の内側に収容されているが、凹部54の内面に接触しておらず、第5レンズL5を介して光軸L方向に位置決めされている。
【0034】
接合レンズL9の物体側Laに位置する第4レンズL4は、ホルダ3に保持されており、ホルダ3は第5レンズL5の外周部分と光軸L方向に当接する。また、第4レンズL4の物体側Laに位置する第3レンズL3の外周部分は、絞りL8を介してホルダ3の外周部分と光軸L方向に当接する。さらに、第3レンズL3の物体側Laに位置する第2レンズL2の外周部分は、遮光板L7を介して第3レンズL3の外周部分と光軸L方向に当接する。従って、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4は、いずれも、レンズ座面50を基準として光軸L方向に位置決めされる。第2レンズL2は、筒部51の物体側Laの端部に設けられたカシメ部56によってカシメ固定される。
【0035】
(第1レンズ)
図1、
図2に示すように、第1レンズL1は、物体側Laに凸の物体側レンズ面11と、物体側Laに凹の像側レンズ面12と、像側レンズ面12の外周側を囲む像側フランジ面13と、像側フランジ面13の外周側で物体側Laに凹む環状段部14を備える。像側フランジ面13は、光軸Lに対して垂直な環状の平坦面である。環状段部14には、Oリング7が配置される。
【0036】
像側フランジ面13は光拡散面であり、全面に微細な凹凸(シボ)が形成されている。本形態では、像側フランジ面13には、黒化膜15が形成される。黒化膜15は、例えば、墨塗りを施すことにより形成される。第1レンズL1は、微細な凹凸(シボ)によって光を拡散し、且つ、墨塗りによって光を吸収するため、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。黒化膜15は、像側フランジ面13の略全体に形成されている。
【0037】
(フレキシブルプリント基板)
図1、
図2に示すように、レンズユニット1は、フレキシブルプリント基板8を備える。フレキシブルプリント基板8は、第1レンズL1と第2レンズL2の間から径方向外側に延びて略直角に屈曲され、レンズホルダ2の第1収容部4に形成された貫通孔46に通されて、レンズホルダ2の像側Lbへ引き出されている。
【0038】
図5は、フレキシブルプリント基板8の平面図である。フレキシブルプリント基板8には、給電配線85およびヒータ9が配置される。本形態では、フレキシブルプリント基板8に発熱部(ヒータ9)が配置される。ヒータ9は、フレキシブルプリント基板8の表面に形成されたヒータ線90(
図7参照)からなる。
【0039】
図5に示すように、フレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う環状の平面部81と、平面部81から径方向外側に向かって直線状に延びる延伸部82と、延伸部82の周方向の両側において平面部81から径方向外側に突出する突出部83を備える。ヒータ9は、平面部81および突出部83に配置される。
図5において、Xは平面部81の中心Pを通る軸線である。延伸部82は、軸線X方向に延びている。フレキシブルプリント基板8およびヒータ9は、軸線Xを基準として線対称に構成される。ヒータ9は、軸線Xに対して一方側の第1領域B1、および、軸線Xに対して他方側の第2領域B2に配置される。第1領域B1および第2領域B2は、繋ぎ部86から、繋ぎ部86に対して径方向で反対側の位置まで拡がる円弧状の領域である。
【0040】
より詳細には、突出部83は、延伸部82の周方向の一方側に配置される第1突出部83Aと、延伸部82の周方向の他方側に配置される第2突出部83Bを備える。給電配線85は、ヒータ線90の一端と繋がる第1給電配線85Aと、ヒータ線90の他端と繋がる第2給電配線85Bを備える。第1給電配線85Aと第2給電配線85Bの一方は正の電極に接続され、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bの他方は負の電極に接続される。
【0041】
フレキシブルプリント基板8の平面部81は、延伸部82の径方向内側に配置される繋ぎ部86と、繋ぎ部86の周方向の両側において周方向に延びる円弧部87を備える。円弧部87は、繋ぎ部86を介して延伸部82と接続される。突出部83は、繋ぎ部86の周方向の両側において、円弧部87から径方向外側へ突出する。
【0042】
第1給電配線85Aと第2給電配線85Bは、延伸部82および繋ぎ部86において電気的に絶縁された状態で略平行に延びている。第1給電配線85Aと第2給電配線85Bは、径方向内側の端部がヒータ9に接続される。
【0043】
フレキシブルプリント基板8は、ポリイミドなどの樹脂フィルムからなる可撓性基板80Aを備えており、可撓性基板80Aの表面にCuなどの導電材によってヒータ線90および給電配線85が形成される。可撓性基板80Aの表面には、ヒータ線90および給電配線85を覆うオーバーコート層80Cが形成される。オーバーコート層80Cは、平面部81および延伸部82に形成され、突出部83には形成されない。従って、ヒータ線90の一部はオーバーコート層80Cによって覆われていない。
【0044】
フレキシブルプリント基板8は、突出部83と周方向で隣り合う部位を径方向内側に向かって直線状に切り欠いた第1切欠き部88を備える。より詳細には、第1切欠き部88は、第1突出部83Aと延伸部82との間、および、第2突出部83Bと延伸部82との間の2か所に設けられている。第1切欠き部88を設けることにより、第1突出部83Aおよび第2突出部83Bの反りが抑制される。また、ヒータ線90と給電配線85とが短絡しにくい。
【0045】
また、フレキシブルプリント基板8は、繋ぎ部86の内周縁を径方向外側に向かって直線状に切り欠いた第2切欠き部89を備える。第2切欠き部89は、延伸部82の周方向の略中央に位置しており、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bの間に配置される。第2切欠き部89を設けることにより、繋ぎ部86の反りが抑制されるとともに、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bとが短絡しにくい。
【0046】
本形態では、第1切欠き部88および第2切欠き部89は、接着剤塗布溝として使用される。レンズユニット1を組み立てる際は、第1切欠き部88および第2切欠き部89に配置した接着剤により、フレキシブルプリント基板8が像側フランジ面13に固定される。
【0047】
フレキシブルプリント基板8の平面部81を像側フランジ面13に固定する際、像側フランジ面13の中心と平面部81の中心とを一致させるように平面部81を位置決めする。平面部81の形状は、レンズユニット1の光学性能に影響を与えるおそれが少ない形状に設定されている。本形態では、平面部81の内径D1(
図2参照)は、像側フランジ面13の内径D2(
図2参照)よりも所定寸法(例えば、0.4mm)大きい。従って、平面部81の内周縁が像側レンズ面12の内側にはみ出して光学性能を低下させるおそれが少ない。
【0048】
(ヒータ線)
図6は、ヒータ線90の部分拡大図である。
図6(a)は、
図5の領域Dの部分拡大図であり、
図6(b)は、
図5の領域Eの部分拡大図である。ヒータ線90は、連続した1本の導体の線であり、一端は第1給電配線85Aに接続され、他端は第2給電配線85Bに接続される。以下、軸線Xに対して一方側の第1領域B1に配置されるヒータ線90の形状を説明する。軸線Xに対して他方側の第2領域B2に配置されるヒータ線90は、第1領域B1のヒータ線90に対して軸線Xを基準として線対称な形状である。
【0049】
図6(a)、
図6(b)に示すように、第1領域B1に配置されるヒータ線90は、第1領域B1の周方向の両端において周方向で反対側に折り返されて、径方向に蛇腹状に延びている。ヒータ線90は、周方向に延びる円弧状のヒータ細線91と、ヒータ細線91の周方向の端部に配置される折り返し部92を備える。複数のヒータ細線91は、径方向に一定間隔で並んでいる。
図6(a)に示すように、最も内周側のヒータ細線91の周方向の一方側CCWの端部は、第2給電配線85Bの径方向内側の端部に接続される。また、最も外周側のヒータ細線91の周方向の他方側CWの端部は、軸線Xまで延びて、第2領域B2の最も外周側に配置されるヒータ細線91と繋がっている。
【0050】
折り返し部92は、第1領域B1の周方向の一方側CCWの端部に配置される複数の第1折り返し部93(
図6(a)参照)と、第1領域B1の周方向の他方側CWの端部に配置される複数の第2折り返し部94(
図6(b)参照)と、第2突出部83Bに配置される複数の第3折り返し部95を備える。
【0051】
複数のヒータ細線91のうち、径方向内側に配置される一部のヒータ細線91は繋ぎ部86まで延びており、第1折り返し部93に接続される。第1折り返し部93は、第2給電配線85Bと周方向で隣り合う位置において径方向に一列に並んでいる。複数のヒータ細線91のうち、第1折り返し部93に接続されるヒータ細線91よりも径方向外側に配置されるヒータ細線91は、第1折り返し部93よりも周方向の他方側CWにおいて、径方向外側へ延びる第3折り返し部95に接続される。複数の第3折り返し部95は、第2突出部83Bにおいて周方向に一列に並んでいる。第2折り返し部94は、繋ぎ部86に対して径方向で反対側の位置において、径方向に一列に並んでいる。最も外周側のヒータ細線91を除く全てのヒータ細線91は、第2折り返し部94に接続される。
【0052】
第1折り返し部93および第2折り返し部94には、それぞれ、略平行に延びる2本のヒータ細線91が接続される。
図6(b)の部分拡大図に示すように、第2折り返し部94の線幅W1は、ヒータ細線91の線幅W0よりも大きい。また、第1折り返し部93の線幅は、第2折り返し部94の線幅W1と等しく、ヒータ細線91の線幅W0よりも大きい。従って、ヒータ線90は、折り返した位置で断線するおそれが少ない。本形態では、ヒータ細線91の線幅W0が30μmであり、第1折り返し部93および第2折り返し部94の線幅W1が120μmである。
【0053】
図6(a)に示すように、第3折り返し部95は、2本のヒータ細線91に繋がる第1部分951と、第1部分951の先端から径方向外側へ延びる第2部分952を備える。第3折り返し部95は、第1部分951と第2部分952で線幅が異なり、第2部分952の線幅W3は、第1部分951の線幅W2よりも大きい。本形態では、第1部分951の線幅W2が120μmであり、第2部分952の線幅W3が160μmである。また、隣り合う第1部分951の間の隙間は100μmであり、隣り合う第2部分952の間の隙間は50μmである。
【0054】
レンズユニット1の製造時には、フレキシブルプリント基板8にヒータ線90を形成した後に、個体ごとにヒータ線90の抵抗値を計測し、ヒータ線90の抵抗値が目標値と異なる場合には、折り返し部92を短絡させることによってヒータ線90の抵抗値を調節する。そのため、ヒータ線90は、複数の折り返し部92を備えた形状に形成されている。複数の折り返し部92は、一列に並んでいる。従って、隣り合う折り返し部92の間に短絡用導電材96を付着させることにより、折り返し部92の位置でヒータ線90を短絡させて抵抗値を調節することができる。
【0055】
折り返し部92の一部は、オーバーコート層80Cから露出した露出部97を備える。従って、露出部97に短絡用導電材96を付着させることによってヒータ線90を短絡させることができる。
図5、
図6(a)に示すように、第1突出部83Aおよび第2突出部83Bは、オーバーコート層80Cによって覆われていないため、第3折り返し部95の第2部分952は、露出部97を備えている。従って、
図6(a)に示すように、隣り合う露出部97の間に短絡用導電材96を付着させることにより、ヒータ線90を短絡させることができる。
【0056】
本形態では、第3折り返し部95は径方向に延びており、露出部97は、フレキシブルプリント基板8の外周縁に沿って一列に並んでいる。従って、隣り合う露出部97の間に短絡用導電材96を付着させる作業が容易である。また、上記のように、第3折り返し部95は、露出部97である第2部分952の線幅W3が大きく、隣り合う露出部97の隙間は小さい。上記のように、本形態では、隣り合う露出部97の間の隙間は50μmである。従って、短絡用導電材96の位置ずれや短絡用導電材96の量の不足などによってヒータ線90を短絡できなくなってしまうおそれが少ない。
【0057】
(第1レンズの光軸L方向の位置決め)
図7は、レンズユニット1の部分拡大断面図であり、
図4(b)のC-C位置で切断した図である。
図7に示すように、レンズホルダ2は、第1収容部4の底面から物体側Laに突出する規制部42を備えており、第1レンズL1の像側フランジ面13は、規制部42の先端に設けられたレンズ座面40に当接する外周領域13Aを備える。また、像側フランジ面13は、外周領域13Aの内周側に位置する内周領域13Bを備えており、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、内周領域13Bに配置される。
【0058】
第1レンズL1を第1収容部4に装着すると、
図4(b)、
図7に示すように、像側フ
ランジ面13の内周領域13Bに配置された平面部81は、規制部42の内周側に配置される。従って、平面部81は、規制部42と干渉することはなく、第1レンズL1とレンズホルダ2との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。本形態では、第1レンズL1の光軸L方向の位置は、像側フランジ面13の外周領域13Aとレンズ座面40とが直接当接することによって規定される。
【0059】
図7に示すように、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、第2レンズL2の外周縁を固定するカシメ部56よりも径方向外側まで延びている。本形態では、カシメ部56と像側フランジ面13の内周領域13Bとの光軸L方向の隙間Sは、フレキシブルプリント基板8の厚みよりも大きい。従って、平面部81は、カシメ部56と干渉することはなく、第1レンズL1とカシメ部56との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。
【0060】
(ザグリ部)
図2、
図3、
図4に示すように、第1収容部4は、規制部42の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部47を備える。
図4(b)に示すように、フレキシブルプリント基板8の延伸部82および突出部83は、ザグリ部47に配置される。また、
図2に示すように、延伸部82は、径方向外側へ延びる途中で像側Lbに曲げられて、ザグリ部47の底面に開口するスリット状の貫通孔46に挿入される。従って、延伸部82および突出部83は、規制部42と干渉しない。なお、延伸部82は、可撓性基板80Aに固定される補強板80Bを備えていてもよい。補強板80Bを備える場合、補強板80Bは、貫通孔46に配置される。
【0061】
図1、
図2に示すように、貫通孔46は、第1収容部4の底部を光軸L方向に貫通しており、第2収容部5の筒部51とレンズケース6との隙間に連通している。レンズケース6の内周面は、貫通孔46の径方向外側の縁に沿う形状に凹んでいる。貫通孔46に挿入された延伸部82は、レンズケース6の内周面と筒部51の外周面との隙間を通って、レンズホルダ2の像側Lbに引き出されている。
【0062】
本形態では、延伸部82は貫通孔46に固定されていないが、貫通孔46に接着剤を配置して、接着剤によって延伸部82を貫通孔46に固定することもできる。この場合には、貫通孔46の内周面に凹凸を形成しておくことにより、接着面積を増やすことができ、延伸部82の固定強度を高めることができる。
【0063】
規制部42は、ザグリ部47の径方向外側において周方向に延びる外縁部48を備える。外縁部48は、ザグリ部47の周方向の両側に設けられたレンズ座面40と繋がっている。従って、本形態では、規制部42は全体として環状であり、第1レンズL1の外周縁と全周で対向する。従って、第1レンズL1の外周縁に配置されるOリング7は、全周で規制部42に支持されるので、ザグリ部47の内側にOリング7が落ち込んでシール性が低下することが回避される。
【0064】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のレンズユニット1は、最も物体側Laにある第1レンズL1と、第1レンズL1に対して像側Lbに配置される第2レンズL2と、第1レンズL1を収容する第1収容部4、および、第2レンズL2を収容する第2収容部5を備えるレンズホルダと、ヒータを備えるフレキシブルプリント基板8と、を有する。第1レンズL1は、物体側レンズ面11、像側レンズ面12、および、像側レンズ面12を囲む像側フランジ面13を備える。フレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う平面部81と、径方向外側へ延びる延伸部82と、を備える。延伸部82には、給電配線85が配置され、平面部81には、給電配線85に接続されるヒータ線90が配置される。ヒータ線
90は、複数の第3折り返し部95(折り返し部)を備える。
【0065】
本形態では、フレキシブルプリント基板8に配置されるヒータ線90によって第1レンズL1を加温できるため、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、レンズユニット1の内部に配置されるヒータ9は、製造後に個体ごとにヒータ線90の抵抗値を計測して、目標値と異なる場合には、第3折り返し部95の位置でヒータ線90を短絡させて抵抗値を目標値に近づける調整作業を行うことができる。従って、ヒータ線90の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線90の抵抗値のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータ9の発熱量のばらつきが少なく、レンズユニット1の結露除去能力のばらつきが少ない。
【0066】
例えば、ヒータ線90の抵抗値の計測結果が目標値からずれていた場合には、隣り合う第3折り返し部95の両方に接触する位置に短絡用導電材96を付着させてヒータ線90を短絡させる。短絡用導電材96としては、導電性のペーストや導電性接着剤を使用することができる。従って、ヒータ線90を容易に短絡させることができ、ヒータ線90の抵抗値を容易に調節できる。
【0067】
ヒータ線90の抵抗値の計測結果が目標値からずれていない場合には、ヒータ線90を短絡させる必要がない。従って、この場合、フレキシブルプリント基板8は、第3折り返し部95に短絡用導電材96を付着させない状態で使用すればよい。
【0068】
本形態では、複数の第3折り返し部95は、フレキシブルプリント基板8の突出部83の縁に沿って並んでいるため、目標とする位置に短絡用導電材96を付着させやすい。また、第3折り返し部95の間から短絡用導電材96がはみ出したとしても、短絡させようとする部位以外の箇所に短絡用導電材96が付着するおそれが少ない。従って、ヒータ線90の抵抗値を容易に、且つ、精度良く調節できる。
【0069】
本形態では、フレキシブルプリント基板8は、平面部81から径方向外側へ突出する突出部83を備えており、突出部83に第3折り返し部95が配置される。従って、第3折り返し部95を径方向外側に配置できるため、第1レンズL1の像側に配置される第2レンズL2や、第2レンズL2の外周縁をカシメ固定するカシメ部56を備えたレンズホルダ2などの部品が第3折り返し部95と干渉しにくい。従って、第1レンズL1と他部品との間に第3折り返し部95が挟まれて潰されるおそれが少ないので、短絡用導電材96を付着していないにもかかわらず、第3折り返し部95が短絡するおそれが少ない。また、短絡用導電材96を付着させた場合には、短絡用導電材96が潰されて意図しない範囲に広がり、意図しない位置でヒータ線90が短絡するおそれが少ない。従って、ヒータ線90の抵抗値を精度良く調節できる。
【0070】
本形態のフレキシブルプリント基板8は、ヒータ9が配置される平面部81が環状であり、第1給電配線85Aおよび第2給電配線85Bは、延伸部82から平面部81へ径方向に延びている。ヒータ線90は、第1給電配線85Aおよび第2給電配線85Bの径方向内側の端部に接続される。このように、1本のヒータ線90を平面部81に配置する際、ヒータ線90の始点および終点(第1給電配線85Aおよび第2給電配線85Bに接続される部分)を径方向内側に配置した場合には、第3折り返し部95を径方向外側に配置しやすい。従って、第3折り返し部95を短絡させやすい。
【0071】
本形態では、フレキシブルプリント基板8は、給電配線85およびヒータ線90を覆うオーバーコート層80Cを備えるため、ヒータ線90を保護できる。オーバーコート層80Cは、平面部81および延伸部82に形成され、突出部83には形成されない。従って、突出部83に配置される第3折り返し部95は、オーバーコート層80Cから露出する
露出部97を備えるため、露出部97に短絡用導電材96を付着させるだけでヒータ線90を短絡させることができる。
【0072】
本形態のヒータ線90は、折り返し部92の線幅がヒータ細線91の線幅W0よりも大きい。すなわち、第1折り返し部93と第2折り返し部94の線幅W1、および、第3折り返し部95の線幅W2、W3は、いずれも、ヒータ細線91の線幅W0よりも大きい。従って、折り返し位置でヒータ線90が断線するおそれが少ない。
【0073】
本形態では、ヒータ線90の第3折り返し部95は、ヒータ細線と繋がる第1部分951、および、第1部分951から突出する第2部分952を備え、第2部分952の線幅W3が第1部分951の線幅W2よりも大きい。従って、第3折り返し部95は先端側の線幅が大きいので短絡させやすい。また、隣り合う第3折り返し部95の隙間が狭いので、短絡用導電材96の位置ずれや量の不足などによって短絡させることができなくなるおそれが少ない。
【0074】
ヒータ線90を短絡させることによって抵抗値を調整できる構成は、上記形態に限定されるものではない。例えば、以下に説明する変形例1-3の構成を採用することができる。
【0075】
(変形例1)
図8は、変形例1のヒータ線190が形成されたフレキシブルプリント基板8の平面図である。変形例1のヒータ9は、フレキシブルプリント基板8の平面部81に配置されるヒータ線190を備える。ヒータ線190は、周方向に並ぶ複数のヒータ線部分190Aを備える。各ヒータ線部分190Aは、周方向に延びる円弧状のヒータ細線191と、ヒータ細線191の周方向の端部に接続される折り返し部192と、径方向に延びる直線部193を備える。径方向に一定間隔で並ぶ複数のヒータ細線191は、折り返し部192によって周方向で反対側に折り返され、径方向に蛇腹状に延びている。直線部193は、周方向で隣り合うヒータ線部分190Aを接続する。
【0076】
変形例1のフレキシブルプリント基板8は、ヒータ線190の配置領域にオーバーコート層が設けられていないので、ヒータ線190は露出している。従って、
図8に示すように、各ヒータ線部分190Aの折り返し部192に短絡用導電材196を付着させることにより、周方向で隣り合うヒータ線部分190Aを短絡させることができる。
図8に示す例では、2か所を短絡させているが、短絡させる位置および数は、抵抗値に応じて適宜選択すればよい。
【0077】
図8に示すように、変形例1では、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bは、フレキシブルプリント基板8の延伸部82において電気的に絶縁された状態で略平行に延びており、繋ぎ部86において周方向で反対側へ延びている。周方向の一方側へ延びる第1給電配線85Aは、ヒータ線190の一端に接続される。また、周方向の他方側へ延びる第2給電配線85Bは、ヒータ線190の他端に接続される。
【0078】
変形例1のヒータ線190は、上記形態と同様に第1レンズL1を加温できるため、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、ヒータ線190は折り返し部192を備える。従って、製造後に個体ごとにヒータ線190の抵抗値を計測して、目標値と異なる場合には、折り返し部192の位置でヒータ線190を短絡させて抵抗値を目標値に近づけることができる。これにより、ヒータ線190を短絡させる短絡用導電材196を備えたヒータ9が得られる。あるいは、抵抗値の調整が必要ない場合には、ヒータ線190を短絡させずにそのままヒータ9として使用すればよい。従って、ヒータ線190の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線190の抵抗値
のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータ9の発熱量のばらつきを少なくすることができ、レンズユニット1の結露除去能力のばらつきを少なくすることができる。
【0079】
(変形例2)
図9は、変形例2のヒータ線290および短絡用配線200が形成されたフレキシブルプリント基板8の平面図である。変形例2のヒータ9は、フレキシブルプリント基板8の平面部81に配置されるヒータ線290および短絡用配線200を備える。ヒータ線290は、変形例1のヒータ線190と略同一形状であり、周方向に延びるヒータ細線291と、折り返し部292と、径方向に延びる直線部293を備える。ヒータ線290は、一端が第1給電配線85Aに接続され、他端が第2給電配線85Bに接続される。
【0080】
短絡用配線200は、平面部81の外周縁に沿って周方向に延びている。短絡用配線200は、ヒータ線290の径方向外側に配置され、ヒータ線290から離れている。短絡用配線200は電気的に独立なダミー配線であり、第1給電配線85Aおよび第2給電配線85Bに電気的に接続されていない。
【0081】
変形例2のフレキシブルプリント基板8は、ヒータ線290および短絡用配線200の配置領域にオーバーコート層が設けられていないので、ヒータ線290および短絡用配線200は露出している。従って、
図9に示すように、短絡用配線200に付着させた短絡用導電材296によって短絡用配線200とヒータ線290とを2か所で接続して、ヒータ線290を短絡させることができる。短絡させる位置は、抵抗値に応じて適宜選択すればよい。本形態では、短絡用配線200と最も径方向外側に位置するヒータ細線291との間隔W4は、径方向で隣り合うヒータ細線291の間隔W5よりも小さい。従って、短絡用配線200とヒータ線290とを短絡させやすく、短絡用導電材296の付着位置のずれや付着量のばらつきによって短絡できなくなるおそれが少ない。
【0082】
変形例2のヒータ線290は、上記形態と同様に第1レンズL1を加温できるため、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、変形例2では、フレキシブルプリント基板8の平面部81にヒータ線290および短絡用配線200が配置される。従って、製造後に個体ごとにヒータ線290の抵抗値を計測して、目標値と異なる場合には、短絡用配線200とヒータ線290とを接続することによって、ヒータ線290を短絡させて抵抗値を目標値に近づけることができる。これにより、ヒータ線290の長さや太さの形状精度が低い場合でも、ヒータ線290の抵抗値のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータ9の発熱量のばらつきを少なくすることができ、レンズユニット1の結露除去能力のばらつきを少なくすることができる。
【0083】
なお、
図9に示した形態では、短絡用配線200は、第1給電配線85Aおよび第2給電配線85Bに接続されていないが、短絡用配線200を第1給電配線85Aもしくは第2給電配線85Bに接続しておいてもよい。これにより、短絡用導電材296を1か所配置するだけで、ヒータ線290を短絡させることができる。
【0084】
(変形例3)
図10は、変形例3のヒータ線390および短絡用配線300が形成されたフレキシブルプリント基板8の平面図である。変形例3のヒータ9は、フレキシブルプリント基板8の平面部81に配置されるヒータ線390および短絡用配線300を備える。ヒータ線390は、変形例1のヒータ線190と略同一形状であり、周方向に延びるヒータ細線391と、折り返し部392と、直線部393を備える。ヒータ細線391および折り返し部392は、蛇腹状に接続される。ヒータ線390は、一端が第1給電配線85Aに接続され、他端が第2給電配線85Bに接続される。
【0085】
変形例3では、ヒータ細線391、折り返し部392、および直線部393はヒータ線部分390Aを構成しており、ヒータ線390は、周方向に並ぶ複数のヒータ線部分390Aを備える。短絡用配線300は、平面部81の外周縁に沿って周方向に延びており、ヒータ線390の径方向外側に配置される。短絡用配線300は、周方向に離間した6か所に配置される。各短絡用配線300は、隣り合うヒータ線部分390Aを接続する。つまり、ヒータ線390は、6本の短絡用配線300によって、6か所で短絡した状態になっている。
【0086】
変形例3のヒータ線390は、上記形態と同様に第1レンズL1を加温できるため、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、製造後に個体ごとにヒータ線390の抵抗値を計測して、計測結果が目標値と異なる場合には、短絡用配線300もしくはヒータ線部分390Aのいずれかをレーザによって切断して、ヒータ線390の抵抗値を目標値に近づけることができる。抵抗値を調整した後のヒータ9は、短絡用配線300、もしくは、短絡用配線300によって短絡されたヒータ線390のいずれかに、レーザにより切断された切断部が設けられている。
【0087】
短絡用配線300を切断する場合の切断位置Q1、および、ヒータ線部分390Aを切断する場合の切断位置Q2は、例えば、
図10に示す位置にすることができる。ヒータ線部分390Aの切断位置Q2を最も内周側のヒータ細線391に設定すれば、正確な位置で切断しやすく、誤って他の部位を切断するおそれが少ない。また、短絡用配線300は平面部81の外周縁に沿って延びているので、正確な位置で切断しやすく、誤って他の部位を切断するおそれが少ない。
【0088】
変形例3では、以上のように、予めヒータ線390を短絡用配線300によって短絡させておき、ヒータ線390もしくは短絡用配線300を切断することによって抵抗値を調節できる。従って、ヒータ線390の長さや太さの形状精度が低い場合でも、抵抗値の調整作業により、ヒータ線390の抵抗値のばらつきを少なくすることができる。よって、ヒータ9の発熱量のばらつきを少なくすることができ、レンズユニット1の結露除去能力のばらつきを少なくすることができる。
【0089】
(他の変形例)
第1レンズL1の像側レンズ面12にヒータとして機能する透明導電膜を設け、フレキシブルプリント基板に形成した電極から透明導電膜に給電する構成を採用してもよい。このようにすると、ヒータ線90および透明導電膜によって第1レンズL1を加温できるため、結露除去能力を高めることができる。
【符号の説明】
【0090】
1…レンズユニット、2…レンズホルダ、3…ホルダ、4…第1収容部、5…第2収容部、6…レンズケース、7…Oリング、8…フレキシブルプリント基板、9…ヒータ、11…物体側レンズ面、12…像側レンズ面、13…像側フランジ面、13A…外周領域、13B…内周領域、14…環状段部、15…黒化膜、40…レンズ座面、41…環状接続部、42…規制部、43…周壁部、44…環状端面、45…カシメ部、46…貫通孔、47…ザグリ部、48…外縁部、50…レンズ座面、51…筒部、52…底部、53…環状底面、54…凹部、55…開口部、56…カシメ部、80A…可撓性基板、80B…補強板、80C…オーバーコート層、81…平面部、82…延伸部、83…突出部、83A…第1突出部、83B…第2突出部、85…給電配線、85A…第1給電配線、85B…第2給電配線、86…繋ぎ部、87…円弧部、88…第1切欠き部、89…第2切欠き部、90…ヒータ線、91…ヒータ細線、92…折り返し部、93…第1折り返し部、94…第2折り返し部、95…第3折り返し部、96…短絡用導電材、97…露出部、190、290、390…ヒータ線、190A、390A…ヒータ線部分、191、291、391
…ヒータ細線、192、292、392…折り返し部、193、293、393…直線部、196、296…短絡用導電材、200、300…短絡用配線、951…第1部分、952…第2部分、B1…第1領域、B2…第2領域、CCW…周方向の一方側、CW…周方向の他方側、L…光軸、La…物体側、Lb…像側、L1…第1レンズ、L2…第3レンズL3…第3レンズ、L4…第4レンズ、L5…第5レンズ、L6…第6レンズ、L7…遮光板、L8…絞り、L9…接合レンズ、P…平面部の中心、Q1、Q2…切断位置、S…隙間