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特許7479976ロボットアームの動作方法、ロボットシステム、制御装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ロボットアームの動作方法、ロボットシステム、制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020125131
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021523
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健志
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-115910(JP,A)
【文献】特開2016-144861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームを用いて対象物を被組付物に組み付ける動作方法であって、
前記ロボットアームによって把持された前記対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置場の位置合わせ部に前記対象物が接触するように前記対象物を配置することと、
前記仮置場に配置された前記対象物を前記ロボットアームによって把持することと、
前記対象物の第2の組付制御を開始することと、
を実行させる動作方法。
【請求項2】
倣い動作によって前記仮置場に前記対象物を前記配置することは、
前記対象物を、所定の被接触部に接触させることと、
前記対象物を、前記被接触部に接触させながら、前記位置合わせ部に向かって倣わせることと、を含む、請求項1の動作方法。
【請求項3】
前記第2の組付制御の開始位置は、前記位置合わせ部の位置に基づいて設定される、請求項2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記仮置場の寸法は、前記被組付物に設けられた組付部位の寸法よりも大きく設定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項5】
前記駆動機構は、直列弾性アクチュエータを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項6】
前記倣い動作は、前記直列弾性アクチュエータの弾性体を弾性変形させながら、前記対象物を前記仮置場に対して倣わせることを含む、請求項5に記載の動作方法。
【請求項7】
前記直列弾性アクチュエータの前記弾性体は、板状ばねから構成されている、請求項6に記載の動作方法。
【請求項8】
前記駆動機構は、前記柔軟性を付与するための、磁性液体、機械ばね、空気ばね、磁力ばね及びベーンモータの少なくとも1つを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項9】
前記カジリが所定回数以上検知された場合、所定のエラー処理を実行すること、を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項10】
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームと、
前記ロボットアームを制御する制御装置であって、
前記ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置き場の位置合わせ部に前記対象物が接触するように前記対象物を配置するステップと、
前記仮置き場に配置された前記対象物を前記ロボットアームによって把持するステップと、
前記対象物の第2の組付制御を開始するステップと、
を実行するための制御装置と、
を備えるロボットシステム。
【請求項11】
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームを制御する制御装置であって、
前記ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置き場の位置合わせ部に前記対象物が接触するように前記対象物を配置するステップと、
前記仮置き場に配置された前記対象物を前記ロボットアームによって把持するステップと、
前記対象物の第2の組付制御を開始するステップと、
を実行可能に構成される制御装置。
【請求項12】
コンピュータに、
柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置き場の位置合わせ部に前記対象物が接触するように前記対象物を配置するステップと、
前記仮置き場に配置された前記対象物を前記ロボットアームによって把持するステップと、
前記対象物の第2の組付制御を開始するステップと、
を実行するための制御命令を生成させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの動作方法、ロボットシステム、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットアームを用いて部品等の対象物を把持し、被組付物の所定位置に組み付けることが行われている。例えば、ロボットアームを用いて嵌合物を把持し、被組付物に嵌合させる試みが行われている。
【0003】
特許文献1には、嵌合部品を被嵌合部品に嵌合させるロボットにおいて、嵌合途中でカジリ付き状態であると判断する間は、挿入動作を継続するとともに、大きさと方向が周期的に変化する振動力を、把持手段を介して嵌合部品に付加するロボットが開示されている。
【0004】
特許文献2には、検出部により部品の装着異常が検出されたとき組立ロボットの部品把持部を組立ステーション外へ一時退避させるとともに外部からの指示に従って予め定められた手順で組立ロボットに部品の再装着動作あるいは続行動作を行わせる自動組立装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-264910号公報
【文献】特開S59-205240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように振動力を嵌合部品に付加する場合、加振力が摺動面に印加され、摩擦や摩耗等により部材が破損する可能性があった。また、特許文献2のように、部品把持部を組立ステーション外へ一時退避させる場合、退避させた部品の位置合わせを行わなければ、組付を再度実行しても当該組付の精度が低下してしまう。
【0007】
本発明のある態様の例示的な目的の一つは、高精度な組付作業を自動化することが可能である、ロボットアームの動作方法、ロボットシステム、制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係るロボットアームの動作方法は、柔軟性を備える駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置場に対象物を配置することと、仮置場に配置された対象物をロボットアームによって把持することと、対象物の第2の組付制御を開始することとを含む。
【0009】
上記態様によれば、柔軟性を備える駆動機構を有するロボットアームを用いて、ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、仮置場に対象物を配置することにより、対象物や組付部位が破損する可能性を低減することができる。また、仮置場への対象物の配置は倣い動作によって実行されるので、当該配置制御を高精度に実行できる。
【0010】
本発明のさらなる別の態様は、ロボットシステムである。このロボットシステムは、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームと、ロボットアームを制御する制御装置であって、ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行するための制御装置と、を備える。
【0011】
本発明のさらなる別の態様は、制御装置である。この制御装置は、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行可能に構成される。
【0012】
本発明のさらなる別の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行するための制御命令を生成させる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高精度な組付作業を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットシステムの機能ブロックを示す図である。
図2】ロボットアームを側面から見た模式図である。
図3】ロボットアームを上面から見た模式図である。
図4】仮置場を上面から見た模式図である。
図5】ロボットアーム20による倣い動作の態様を模式的に示す図である。
図6】ロボットアーム20による倣い動作の他の態様を模式的に示す図である。
図7】ロボットアームの動作方法の一例を示すフローチャートである。
図8】ロボットアームの動作方法の一例を示すフローチャートである。
図9】ロボットアームの動作方法の一例を示す模式図である。
図10】変形例に係る仮置場を上面から見た模式図である。
図11】ロボットアームの動作方法の一例を示すフローチャートである。
図12】ロボットアームの動作方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るロボットシステムの機能ブロックを示す図である。図2及び図3は対象物Wを把持するロボットアームの模式図を示している。
【0018】
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボットアーム20と、ロボットアーム20を制御する制御装置10と、表示装置60と、入力装置62とを備えている。本実施形態に係るロボットシステム100は、組付の対象である対象物Wを把持し、この対象物Wを、被組付物の一例である金型M1の組付部位R1へ組み付ける動作を実行する。ここで、組付の態様は特に限定されないが、例えば、嵌合を含んでもよい。対象物Wの形状は特に限定されないが、図2及び図3では一例として、略円筒形状に形成されている。また、組付部位R1の形状は、組付の態様に応じて任意に構成可能であるが、図2及び図3では一例として、対象物Wを嵌合させるための凹部、すなわち対象物Wの寸法よりもわずかに大きい略円筒形状の凹部として構成されている。
【0019】
本実施形態に係るロボットシステム100は、更に、組付制御の間にカジリが検出された場合、対象物Wを所定の仮置場に配置する仮置制御を実行する。図2及び図3では、一例として、ステージM2に設けられた仮置場R2が示されている。仮置場R2の形状は特に限定されないが、図2及び図3では一例として、組付部位R1よりも寸法が大きい略台形状の底面を有する凹部として構成されている。
【0020】
ロボットアーム20は、例えば、垂直多関節ロボットであり、ベース(図示しない)と、複数のリンク20Lと、複数のジョイント20Jと、エンドエフェクタ20Eと、一又は複数の駆動部30と、一又は複数の直列弾性アクチュエータ40とを備える。但し、ロボットアーム20は、垂直多関節ロボットに限られることはなく、例えば、水平多関節型ロボット装置、パラレルリンク型ロボット装置であってもよい。
【0021】
リンク20Lは、剛性を有する部材から構成されており、例えば、ベースに対して回動可能に取り付けられた胴部に相当するリンク20Lと、胴部に対して回動可能に取り付けられた下腕部に相当するリンク20Lと、下腕部に対して回動可能に取り付けられた上腕部に相当するリンク20Lと、上腕部に対して回動可能に取り付けられた手首部に相当するリンク20L(図示しない)とを備える。
【0022】
エンドエフェクタ20E(「把持機構」の一例)は、対象物Wを把持する機能を有する。エンドエフェクタ20Eは、手首部に相当するリンク20Lの先端に取り付けられており、例えば、アクチュエータによって開閉する可動プレート20E1及び20E2によって対象物Wを挟んで把持可能に構成されている。但し、エンドエフェクタ20Eは、これに限られるものではなく、例えば、対象物Wの表面を把持するための複数の吸着パッドと制御装置10から送信される制御信号に基づいて吸着パッドに負圧を発生させるアクチュエータを備えるものや、或いは、電磁力で対象物Wを把持するものであってもよい。本実施形態に一例として示されるロボットアーム20は、把持機構とは区別される駆動機構により組付制御及び仮置制御を実行することができる。
【0023】
本実施形態に係るロボットアーム20は、リンク20L同士を接続する少なくとも一つのジョイント20Jに設けられた直列弾性アクチュエータ40を備えている。例えば、直列弾性アクチュエータ40は、ロボットアーム20の全てのジョイント20Jに搭載されている。言い換えれば、X軸、Y軸及びZ軸の各並進力成分と、それら3軸のそれぞれの軸周りの回転力成分との6軸の全ての駆動機構が直列弾性アクチュエータ40を備えている。
【0024】
直列弾性アクチュエータ40(「柔軟性を備えた駆動機構」の一例)は、例えば、駆動部42と、駆動部42に接続される弾性体44と、センサ46とから構成される。駆動部42は、例えば、サーボモータから構成される。弾性体44は、例えば、機械ばね(例えば板状ばね)から構成される。板状ばねは高いねじり剛性を有するため、本実施形態における後述する倣い動作に適している。直列弾性アクチュエータ40において駆動部42から出力される動力は、弾性体44を介して、出力側のリンク20Lに伝達し、これを回動させる。センサ46は、カジリを検出するための情報を取得する。例えば、トルクに基づいてカジリを検出する場合、センサ46は、ロボットアーム20により対象物Wが被組付物に接触したときのトルクを示す情報として機械ばねの変位量を取得するための変位センサから構成される。更に、本実施形態に係る直列弾性アクチュエータ40は、機械ばねの変位量を取得するためのセンサ(図示しない)を備えている。
【0025】
以上のようなロボットアーム20の構成によれば、柔軟性を備えた駆動機構に相当する直列弾性アクチュエータ40によって駆動される部分の慣性、質量及び長さ、外力並びに弾性体44である機械ばねのばね定数をパラメータとする運動方程式が成立する。このため、制御装置10は、機械ばねのばね定数及び変位量に基づいて、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御を行うように構成される。
【0026】
なお、直列弾性アクチュエータ40は、駆動部42であるサーボモータの駆動軸に接続され、動力を機械ばねに伝達するギヤを備えていてもよい。更に、直列弾性アクチュエータ40は、粘性に基づいて衝撃を緩和させるダンパ機構及び動力の伝達をスイッチするためのクラッチ機構を備えてもよい。粘性を有するダンパ機構等の粘性体を付与する場合、運動方程式には、粘性定数がパラメータとして加えられる。例えば、粘性定数にリンク角度の時間変化を乗じた値をトルクとして考慮された運動方程式が成立する。
【0027】
直列弾性アクチュエータ40によって駆動されるリンク20L以外のリンク20Lが存在する場合、このようなリンク20Lは、例えば、サーボモータから構成される駆動部30によって駆動される。駆動部30は、出力側のリンク20Lを駆動軸回りに回動させる。駆動部30は、リンク20Lに搭載されていてもよい。以上のような構成により、複数のリンク20Lを回動させることが可能になるため、リンク20Lの先端に相当するエンドエフェクタ20Eの位置及び姿勢を変化させることが可能となる。
【0028】
制御装置10は、制御命令取得部11と、組付制御実行部12と、カジリ検出部13と、エラー処理部14と、仮置制御実行部15とを備えている。
【0029】
制御命令取得部11は、ロボットアーム20の各駆動部30に相当するサーボモータ及び直列弾性アクチュエータ40のサーボモータを制御するための制御命令を取得する。この制御命令は、ロボットアーム20の基準となる位置(例えば、手先位置に相当するエンドエフェクタ20Eのセンターポイント。)の開始位置及びその時の姿勢と、目標位置及びその時の姿勢と、目標位置を基準として目標位置からロボットアーム20の基準位置が離れることができる許容範囲と、開始位置と一つ又は複数の目標位置を結ぶ移動経路とを含む各種情報に基づいて生成される。後述するように、本実施形態に係るロボットアームの動作方法においては、ロボットアーム20によって把持される対象物Wが組付部位及び/又は仮置場と干渉するような経路を取得することが可能である。制御命令取得部11は、基準位置を経路に従って移動させるための各サーボモータを制御するための制御命令を演算処理等により取得する。例えば、制御命令取得部11は、逆運動学演算(インバースキネマティクス)により、基準位置が経路上に位置するための各サーボモータの回転角度を算出し、これに基づいて制御命令を生成する。
【0030】
組付制御実行部12は、ロボットアーム20によって把持した対象物Wを組付部位に組み付ける組付制御を実行する。例えば、組付制御実行部12は、組付制御において、ロボットアーム20の直列弾性アクチュエータ40を弾性変形させることによって、ロボットアーム20が対象物Wを組付部位に接触させて倣わせる倣い動作を実行する。ここで、組付制御における倣い動作とは、対象物Wを組付部位に接触させながら、対象物Wを組付部位に対して相対的に移動させることをいう。ここで、相対的に移動させることは、並進移動に限られず、組付部位に対して対象物Wを相対的に回転移動させることを含む。組付制御実行部12は、センサ46によって検出される接触圧力が実質的に一定値又は所定範囲内となるように、直列弾性アクチュエータ40の弾性体44を弾性変形させるように構成されている。これにより、対象物W又は組付部位に対して、カジリなどの損傷を抑制しつつ組付作業を実行することができる。
【0031】
カジリ検出部13は、センサ46から取得した情報に基づいてカジリを検出する。例えば、カジリ検出部13は、直列弾性アクチュエータ40の弾性体44の変位量を示す情報をセンサ46から取得し、これに基づいて取得された回転トルクが所定の閾値を越えている場合に、カジリを検出するように構成される。
【0032】
但し、カジリの検出方法は、これに限られるものではない。例えば、エンドエフェクタ20Eに力覚センサを設置し、カジリ検出部13は、対象物Wが被組付物から受ける接触圧力の大きさを示す情報を力覚センサから取得し、これに基づいて取得された接触圧力が所定の閾値を越えている場合に、カジリを検出するように構成されてもよい。又、カジリ検出部は、ロボットアーム20の位置情報に基づいて、例えば、指令値と実際値との差に基づいて、カジリを検出するように構成してもよい。
【0033】
「カジリ」とは、局部的に発生する凝着のことをいう。カジリは、2つの部材が接触し、一方の表面に形成される突起(真実接触点)が、他方との接触により、他方側に凝着することにより発生する。凝着を起こしやすい材料間では、カジリは、常温でも発生する場合がある。カジリは、対象物W又は被組付物の形状精度のばらつき、表面粗さ又は表面形状の違い、これらに起因する片当たり、その他潤滑不良、異物混入等を原因として、発生し得る。カジリは、噛み付き、引掛り等と呼ばれる場合もある。
【0034】
「カジリ」とは、現実にカジリが発生したことのみならず、カジリ発生直前の状態になることを含む。例えば、現実にカジリが発生していないものの、二つの部材の接触圧力が閾値を越え、このままでは、カジリが発生することになる状態を含む。
【0035】
エラー処理部14は、カジリ検出部13によるカジリの検出回数をカウントし、所定の回数以上カジリを検出した場合に所定のエラー処理を実行する。当該所定の回数は、任意に設定可能であってよい。また、当該所定のエラー処理は、例えば、組付制御の停止を含んでもよく、また、組付制御中の対象物Wを所定の開始位置に戻す制御を含んでもよい。
【0036】
仮置制御実行部15は、ロボットアーム20によって把持した対象物Wを仮置場に配置する仮置制御を実行する。例えば、仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20の直列弾性アクチュエータ40を弾性変形させることによって、ロボットアーム20が対象物Wを仮置場に接触させて倣わせる倣い動作を実行する。ここで、仮置制御における倣い動作とは、対象物Wを後述する仮置場の被接触部に接触させながら、対象物Wを後述する仮置位置に対して相対的に移動させることをいう。ここで、相対的に移動させることは、並進移動に限られず、所定の仮置位置に対して対象物Wを相対的に回転移動させることを含む。仮置制御実行部15は、センサ46によって検出される接触圧力が実質的に一定値又は所定範囲内となるように、直列弾性アクチュエータ40の弾性体44を弾性変形させるように構成されている。これにより、対象物W又は所定の仮置場に対して、カジリなどの損傷を抑制しつつ組付作業を実行することができる。
【0037】
ハードウェア構成に関し、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサである演算素子と、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶素子と、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶素子と、これらを接続するバス等の通信手段を備えるコンピュータから構成することが可能である。不揮発性記憶素子には、例えば、本実施形態に示される各処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されている。揮発性記憶素子は、これらコンピュータプログラムの少なくとも一部及び演算処理結果等を一時的に記憶する。但し、これら演算素子、不揮発性記憶素子等の少なくとも一部は、インターネット等の通信ネットワークに接続された遠隔地に設置されていてもよい。例えば、演算素子は、通信ネットワークを介して、コンピュータプログラム又は必要なデータを取得するように構成されてもよい。
【0038】
制御装置10、ロボットアーム20、表示装置60及び入力装置62は、それぞれ無線又は有線による通信手段によって情報の送受信が可能に構成されている。なお、制御装置10には、ロボットシステム100に動作教示するための教示装置(図示しない)が接続されてもよい。表示装置60及び入力装置62は、表示部及び入力部を備えるコンピュータであってもよいし、タッチパネル等のように一体として構成されていてもよい。
【0039】
次に、図4を参照して、仮置場の構成について説明する。図4は、ステージM2に設けられた仮置場R2の平面図である。
【0040】
仮置場R2は、ステージM2に設けられた、例えばXY平面に略平行な略台形状の底面を有する凹部として構成される。ここで、ステージM2の構成は仮置場が形成可能であれば特に限定されないが、例えば、金属や樹脂等の任意の材料で構成されてもよい。仮置場R2のX軸負方向側には、XY平面における寸法が対象物Wの寸法と略同一である仮置位置Pが設けられる。また、仮置場R2を構成する凹部のうちX軸負方向側においてZ軸方向に延伸した内周面は、位置合わせ部Tを構成する。位置合わせ部Tの曲率は、対象物Wの側面の少なくとも一部の曲率と同一に設定される。これにより、対象物Wが仮置位置Pに配置されると、当該対象物Wは位置合わせ部Tの少なくとも一部又は全部に沿って配置される。なお、このとき、対象物Wは、位置合わせ部Tの少なくとも一部又は全部に接触してもよい。
【0041】
仮置場R2には、仮置制御において対象物Wを接触させるための被接触部S1、S2、及びS3が設けられている。被接触部S1は、仮置場R2を構成する凹部の底面のうち、仮置位置Pに隣接する部分を含んで構成される。被接触部S1は、仮置位置PとZ軸方向における高さが同一である。被接触部S2及びS3は、仮置場R2を構成する凹部のうち、位置合わせ部Tに隣接するZ軸方向に延伸した内周面に設けられる。これら被接触部S1~S3は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを仮置位置Pに向けて案内する機能を有する。すなわち、仮置制御において、ロボットアーム20によって把持された対象物Wは、被接触部S1、S2、及び/又はS3に接触したまま、仮置位置Pまで移動する。なお、被接触部の位置や構成は、対象物Wを倣い動作させることが可能であれば、特にこれら被接触部S1~S3に限定されず、例えば仮置場や仮置位置の寸法や形状に合わせて任意に構成可能である。
【0042】
仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを被接触部S1に含まれる任意の位置に接触させた上で、対象物Wを被接触部S1に接触させたまま(被接触部S1上を摺動させながら)、仮置位置Pに向かって並進移動させてもよい。また、仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを被接触部S2に含まれる任意の位置に接触させた上で、対象物Wを被接触部S2に接触させたまま(被接触部S2上を摺動させながら)、仮置位置Pに向かって並進移動させてもよい。また、仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを被接触部S3に含まれる任意の位置に接触させた上で、対象物Wを被接触部S3に接触させたまま(被接触部S3上を摺動させながら)、仮置位置Pに向かって並進移動させてもよい。
【0043】
次に、図5及び図6を参照しつつ、ロボットアーム20が実行する仮置制御における倣い動作について説明する。当該倣い動作は、上述したとおり、組付制御実行部12が組付制御に際して実行することができ、又、仮置制御実行部15が仮置制御に際して実行することができる。以下では、一例として、対象物Wを仮置場R2に仮置する仮置制御における倣い動作について説明する。
【0044】
図5は、ロボットアーム20による倣い動作の態様を模式的に示す図である。同図は、倣い動作の一例として、ロボットアーム20により把持された対象物Wを仮置位置Pに向かって被接触部S1上を並進移動させる場合の倣い動作の態様が示されている。
【0045】
図5において、基準位置が目標位置にある時のエンドエフェクタ20E及びこれに把持される対象物Wは、破線で示され、基準位置が目標位置から離間している実際のエンドエフェクタ20E及びこれに把持される対象物Wは、実線で示されている。破線で示されるように、目標位置において、エンドエフェクタ20Eに把持される対象物Wは、仮置場R2の被接触部S1と干渉する。しかしながら、実際は、仮置場R2が存在するために、対象物Wの接触部W1が仮置場R2の被接触部S1と接触する。
【0046】
ここで、接触部W1は、例えば、略円筒形状の底面と側面との境界の一部であってよい。変位量D1は、直列弾性アクチュエータ40の弾性体44が弾性変形した量に相当する。このとき、変位量及びばね定数に基づいた力が、対象物Wから仮置場R2の被接触部S1に作用する。そして、対象物Wの接触部W1が仮置場R2の被接触部S1に接触した後、ロボットアーム20は、対象物Wを、接触部W1が被接触部S1に接触した状態を維持しながら仮置位置Pに向かって図6の矢印で示す方向に並進移動させる。ロボットアーム20は、例えば対象物Wが位置合わせ部Tに接触するまで、対象物Wの並進移動を実行する。なお、このとき、ロボットアーム20は、対象物Wを更に被接触部S2又はS3に接触させたまま仮置位置Pまで並進移動させてもよい。
【0047】
図6は、ロボットアーム20による倣い動作の他の態様を模式的に示す図である。同図は、倣い動作の一例として、ロボットアーム20により把持された対象物Wを仮置位置Pに対して回転移動させる場合の倣い動作の態様が示されている。当該倣い動作は、例えば、図5を参照して説明したように、ロボットアーム20により把持された対象物Wが、仮置場R2に設けられた仮置位置Pに到達した後に実行される。
【0048】
図6において、目標位置におけるエンドエフェクタ20E及びこれに把持される対象物Wは、破線で示され、実際のエンドエフェクタ20E及びこれに把持される対象物Wは、実線で示されている。破線で示されるように、目標位置において、エンドエフェクタ20Eに把持される対象物Wは、仮置場R2の位置合わせ部Tと干渉する。しかしながら、実際は、仮置場R2が存在するために、対象物Wの接触部W2が仮置場R2の位置合わせ部Tと接触する。
【0049】
ここで、接触部W2は、例えば、略円筒形状の底面と側面との境界の一部であってよい。変位量D2は、直列弾性アクチュエータ40の弾性体44が弾性変形した量に相当する。このとき、変位量及びばね定数に基づいた力が、対象物Wから仮置場R2に作用する。ロボットアーム20は、対象物Wの接触部W1が仮置場R2の仮置位置Pに接触し、且つ対象物Wの接触部W2が仮置場R2の位置合わせ部Tに接触した状態のまま、接触部W1を仮置位置Pに沿ってX軸負方向側へ摺動させ、且つ接触部W2を位置合わせ部Tに沿ってZ軸正方向側へ摺動させるように、対象物Wを回転移動させる。当該回転移動は、対象物Wの底面が仮置位置Pに接触するまで実行される。回転移動が終了すると、対象物Wは仮置位置Pに配置され、対象物Wの側面が位置合わせ部Tに接触する。
【0050】
次に、図7を参照して、本実施形態に係るロボットアーム20の動作方法について説明する。図7は、本実施形態に係るロボットアーム20の基本の動作フローの一例を示す図である。当該基本の動作フローでは、組付部位R1への対象物Wの組付制御の間にカジリが検出された場合、所定条件下において、対象物Wを仮置場R2に配置する仮置制御が実行される。そして、当該仮置制御の後に、再び組付制御が開始される。組付制御の間にカジリが検出された場合に、当該組付制御を「第1の組付制御」と称し、その後に仮置制御を経て再び開始される組付制御を「第2の組付制御」と称してもよい。なお、「第1の組付制御」及び「第2の組付制御」とは、これら組付制御の経時的な順序を相対的に示す呼称に過ぎない。すなわち、仮置制御を経て組付制御が開始された後に再びカジリが検出されれば、当該カジリが検出されたときに実行されている組付制御が「第1の組付制御」となるし、当該カジリが検出された後に仮置制御を経て開始される組付制御が「第2の組付制御」となる。
【0051】
まず、組付制御実行部12は、ロボットアーム20による対象物Wの組付制御を開始する(S10)。具体的には、組付制御実行部12による制御に応じて、ロボットアーム20のエンドエフェクタ20Eは、所定の開始位置に配置された対象物Wの上面と側面を挟むことにより対象物Wを把持した上で、金型M1に設けられた組付部位R1に対象物Wを移動させ、対象物Wの組付部位R1への組付制御を開始する。なお、後述するステップS15の仮置制御の後に実行される組付制御の場合は、ロボットアーム20のエンドエフェクタ20Eは、仮置場R2に配置された対象物Wを把持する。
【0052】
組付制御が開始されると、カジリ検出部13はカジリを検出したか否かを判定する(S11)。カジリ検出部13は、カジリを検出していないと判定した場合(S11;No)、組付制御が終了したか否かを判定する。組付制御が終了したと判定された場合(S12;Yes)、処理は終了する。一方、組付制御が終了していないと判定した場合(S12;No)、処理は再びステップS11に戻る。このように、カジリ検出部13は、組付制御が実行されている間、カジリの検出を判定する。
【0053】
カジリ検出部13がカジリを検出した場合(S11;Yes)、エラー処理部14は、カジリの検出回数が予め設定された所定回数以上か否かを判定する(S13)。カジリの検出回数が所定回数以上であると判定された場合(S13;Yes)、エラー処理部14は所定のエラー処理を実行する(S14)。エラー処理部14は、例えば、所定のエラー処理として組付制御を停止する制御を実行する。また、エラー処理部14は、更に組付制御の途中の対象物Wを、所定の開始位置に戻す制御を実行してもよい。
【0054】
カジリの検出回数が所定回数以上でないと判定された場合(S13;No)、仮置制御実行部15は、ロボットアーム20に把持された対象物Wを仮置場R2に配置する仮置制御を実行する(S15)。仮置制御の詳細については、後述する。仮置制御により対象物Wが仮置場R2に配置されると、処理はステップS10に戻り、再び組付制御実行部12による組付制御が開始される。このように仮置制御の後に実行される組付制御における開始位置は、位置合わせ部Tの位置に基づいて設定されてもよい。
【0055】
再び組付制御が開始された後は、組付制御が終了するか(S12;Yes)、カジリの検出が所定回数以上となりエラー処理が実行される(S13;Yes、S14)まで、以上の処理が繰り返される。
【0056】
次に、図8及び図9を参照して、本実施形態に係るロボットアーム20の仮置制御について説明する。当該仮置制御は、上述したステップS15の仮置制御実行部15による仮置制御に対応する。図8は、本実施形態に係るロボットアーム20の仮置制御の動作フローの一例を示す図である。図9は、本実施形態に係るロボットアーム20の仮置制御の態様を模式的に表した図である。
【0057】
まず、図9(a)に示すように、ロボットアーム20は、対象物WをステージM2に設けられた仮置場R2まで移動させる(S20)。具体的には、ロボットアーム20は、金型M1に設けられた組付部位R1から仮置場R2の被接触部S1の上における所定量域内まで、対象物Wを移動させる。
【0058】
次に、図9(b)に示すように、ロボットアーム20は、把持した対象物Wを下降させて、対象物Wの接触部W1を被接触部S1に接触させる(S21)。ここで、接触部W1は、対象物Wの一部であれば特に限定されないが、例えば、略円筒形状の底面と側面との境界の一部であってよい。
【0059】
次に、図9(c)に示すように、ロボットアーム20は、所定の接触圧力で対象物Wの接触部W1を被接触部S1に接触させたまま、対象物WをX軸負方向に向かって並進移動させる(S22)。これにより、対象物Wは、接触部W1を被接触部S1に接触させたまま、被接触部S1上を仮置位置Pに向かって摺動する。なお、このとき、ロボットアーム20は、対象物Wの任意の接触部を、図4を参照して説明した仮置場R2の被接触部S2又はS3に接触させた上で、当該接触状態を保ちながら対象物WをX軸負方向に向かって移動させてもよい。これにより、被接触部S2又はS3に接触した対象物Wは、Y軸方向について被接触部S2又はS3に案内されながら仮置位置Pに向かって摺動する。
【0060】
やがて、図9(d)に示すように、対象物Wの接触部W2が、仮置場R2に設けられた位置合わせ部Tに接触する。ここで、接触部W2は、対象物Wの一部であれば特に限定されないが、例えば、略円筒形状の上面と側面との境界の一部であってよい。
【0061】
次に、図9(e)に示すように、ロボットアーム20は、対象物Wの接触部W1が仮置場R2の仮置位置Pに接触し、且つ対象物Wの接触部W2が仮置場R2の位置合わせ部Tに接触した状態のまま、接触部W1を仮置位置Pに沿ってX軸負方向側へ摺動させ、且つ接触部W2を位置合わせ部Tに沿ってZ軸正方向側へ摺動させるように、対象物Wを回転移動させる(S23)。当該回転移動は、対象物Wの底面が仮置位置Pに接触するまで実行される。回転移動が終了すると、対象物Wは仮置位置Pに配置され、対象物Wの側面が位置合わせ部Tに接触する。以上で、仮置制御が終了する。
【0062】
次に、図10を参照して、変形例に係る仮置場R2’の構成を説明する。図10は、ステージM2に設けられた仮置場R2’の平面図である。
【0063】
仮置場R2’は、ステージM2に設けられた、金型M1に設けられた組付部位R1の寸法よりもわずかに大きい略円筒形状の凹部として構成される。仮置制御において、例えば、対象物Wは当該仮置場R2’に嵌合されてもよい。仮置場R2’の当該凹部内には、仮置位置P’が設けられる。仮置場R2’を構成する凹部のうちZ軸方向に延伸する内周面は、位置合わせ部T’を構成する。上述したとおり、仮置場R2’の寸法は組付部位R1の寸法よりもわずかに大きいため、仮に組付制御中に組付部位R1においてカジリが発生した場合であっても、仮置制御においてカジリが発生する可能性が低減される。
【0064】
対象物Wが仮置位置P’に配置されると、当該対象物Wは位置合わせ部T’の少なくとも一部又は全部に沿って配置される。なお、このとき、対象物Wは、位置合わせ部T’の少なくとも一部又は全部に接触してもよい。組付制御実行部12による組付制御は、例えば、仮置位置P’に配置された対象物Wの位置を開始位置とすることができる。
【0065】
仮置場R2’を構成する凹部の周囲には、XY方向に延伸した面である被接触部S4が設けられる。被接触部S4が設けられる位置は、仮置位置P’の周囲であれば特に限定されない。仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを被接触部S4に含まれる任意の位置に接触させた上で、対象物Wを被接触部S4に接触させたまま(被接触部S4上を摺動させながら)仮置位置P’に向かって並進移動させてもよい。また、仮置制御実行部15は、仮置制御において、ロボットアーム20により把持された対象物Wを仮置場R2’の角部(仮置場R2’を構成する凹部の略円筒形状のうち上面と側面との境界)に接触させた上で、対象物Wを当該角部に接触させたまま仮置位置P’に向かって回転移動させてもよい。
【0066】
次に、図11及び図12を参照して、変形例に係るロボットアーム20の仮置制御について説明する。当該仮置制御は、図7を参照して説明したステップS15の仮置制御実行部15による仮置制御に対応する。図11は、変形例に係るロボットアーム20の仮置制御の動作フローの一例を示す図である。図12は、変形例に係るロボットアーム20の仮置制御の態様を模式的に表した図である。
【0067】
まず、図12(a)に示すように、ロボットアーム20は、対象物WをステージM2に設けられた仮置場R2’まで移動させる(S30)。具体的には、ロボットアーム20は、金型M1に設けられた組付部位R1からステージM2に設けられた仮置場R2’の上の所定量域内まで、対象物Wを移動させる。
【0068】
次に、図12(b)に示すように、ロボットアーム20は、把持した対象物Wを下降させて、対象物Wの接触部W1を被接触部S4に接触させる(S31)。ここで、接触部W1は、対象物Wの一部であれば特に限定されないが、例えば、略円筒形状の底面と側面との境界の一部であってよい。
【0069】
次に、図12(c)に示すように、ロボットアーム20は、所定の接触圧力で対象物Wの接触部W1を被接触部S4に接触させたまま、対象物Wを仮置位置P’に向かって並進移動させる(S32)。これにより、対象物Wは、接触部W1を被接触部S4に接触させたまま、被接触部S4上を仮置位置P’に向かって摺動する。
【0070】
やがて、図12(d)に示すように、対象物Wの接触部W1が仮置場R2’の内部に進入すると共に、対象物Wの接触部W3が仮置場R2’の角部T1(仮置場R2’を構成する凹部の略円筒形状のうち上面と側面との境界)上を摺動する。ここで、接触部W3は、対象物Wの一部であれば特に限定されないが、例えば、略円筒形状の側面の一部であってよい。
【0071】
次に、図12(e)に示すように、ロボットアーム20は、対象物Wの接触部W3が仮置場R2’の角部T1に接触した状態のまま、対象物Wを矢印の向きに回転移動させる(S33)。当該回転移動は、対象物Wが仮置場R2’の上部に嵌合するまで実行される。
【0072】
次に、図12(f)に示すように、ロボットアーム20は、対象物Wを上から横圧して、対象物Wを仮置場R2’内に挿入させる(S34)。対象物Wが仮置場R2’の底面に接触すると横圧は終了し、対象物Wは、仮置位置P’内に嵌合された状態で配置される。このとき、対象物Wの側面が位置合わせ部Tに接触する。以上で、仮置制御が終了する。
【0073】
以上のとおり、本発明の一実施形態に係るロボットアームの動作方法は、柔軟性を備える駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い動作によって仮置場に対象物を配置することと、仮置場に配置された対象物をロボットアームによって把持することと、対象物の第2の組付制御を開始することとを含む。
【0074】
これによれば、柔軟性を備える駆動機構を有するロボットアームを用いて、ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、仮置場に対象物を配置することにより、対象物や組付部位が破損する可能性を低減することができる。また、仮置場への対象物の配置は倣い動作によって実行されるので、当該配置制御を高精度に実行できる。
【0075】
上記態様において、倣い動作によって前記仮置場に前記対象物を前記配置することは、前記対象物を、所定の被接触部に接触させることと、前記対象物を、前記被接触部に接触させながら、所定の仮置位置に向かって倣わせることと、を含んでもよい。
【0076】
上記態様において、所定の仮置位置は、対象物が所定の位置合わせ部に接触する位置であってもよい。
【0077】
上記態様において、第2の組付制御の開始位置は、所定の位置合わせ部の位置に基づいて設定されてもよい。
【0078】
上記態様において、仮置場の寸法は、被組付物に設けられた組付部位の寸法よりも大きく設定されてもよい。
【0079】
上記態様において、駆動機構は、直列弾性アクチュエータを備えてもよい。
【0080】
上記態様において、倣い動作は、直列弾性アクチュエータの弾性体を弾性変形させながら、対象物を仮置場に対して倣わせることを含んでもよい。
【0081】
上記態様において、直列弾性アクチュエータの弾性体は、板状ばねから構成されていてもよい。
【0082】
上記態様において、駆動機構は、柔軟性を付与するための、磁性液体、機械ばね、空気ばね、磁力ばね及びベーンモータの少なくとも1つを備えてもよい。
【0083】
上記態様において、動作方法は、カジリが所定回数以上検知された場合、所定のエラー処理を実行すること、を更に含んでもよい。
【0084】
本発明の一実施形態に係るロボットシステムは、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームと、ロボットアームを制御する制御装置であって、ロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行するための制御装置と、を備える。
【0085】
本発明の一実施形態に係る制御装置は、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行可能に構成される。
【0086】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、柔軟性を備えた駆動機構を有するロボットアームによって把持された対象物の第1の組付制御の間にカジリが検出された場合、倣い当て動作によって仮置き場に対象物を置く配置するステップと、仮置き場に配置された対象物をロボットアームによって把持するステップと、対象物の第2の組付制御を開始するステップと、を実行するための制御命令を生成させる。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。上記実施形態及び変形例において説明したいずれかの態様は、当業者の理解に矛盾がない範囲で他の態様と組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
上記実施形態では、対象物Wが金型M1の組付部位R1に嵌合する態様を説明したが、このほか、本発明は、貫通孔が形成されるフランジ(「対象物」の一例)を把持し、貫通孔をシャフトが貫通するように、貫通孔の壁面をシャフト(「被組付物」の一例)の表面に倣わせて、フランジをシャフトに組み付ける作業や、検査対象となるプリント配線基板(「対象物」の一例)を把持し、プリント配線基板に形成された貫通孔を棒状の検査器具(「被組付物」の一例)が貫通するように、貫通孔の壁面を検査器具の表面に倣わせて、貫通孔の内径を検査する作業や、レンズモジュール等の光学部品(「対象物」の一例)を精密機器(「被組付物」の一例)に組み付ける作業等、様々な用途に適用することが可能である。
【0089】
また、柔軟性を備えた駆動機構として、直列弾性アクチュエータの他、様々な駆動機構を利用することが可能である。ここで、「柔軟性を備えた」とは、弾性、粘性又は弾性及び粘性を備えていることをいう。弾性とは、応力を加えると変形し、応力を除去すると元に戻る性質をいい、弾性変形のしやすさを示す可撓性という言葉で表現される場合もある。粘性とは、流体の流動速度を一様化する応力を生じさせる性質をいう。粘性、弾性を付与するために、磁性流体、機械ばね(板ばね、ねじりコイルばね)、空気ばね、磁力ばね、ベーンモータ、印加電圧に応じて粘性を調整可能な電機粘性流体を用いた可変ダンパ、等を用いてもよい。
【0090】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0091】
10…制御装置、11…制御命令取得部、12…組付制御実行部、13…カジリ検出部、14…エラー処理部、15…仮置制御実行部、20…ロボットアーム、20E…エンドエフェクタ、20E1…可動プレート、20E2…可動プレート、20J…ジョイント、20L…リンク、30…駆動部、40…直列弾性アクチュエータ、42…駆動部、44…弾性体、46…センサ、60…表示装置、62…入力装置、100…ロボットシステム、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12