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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20240430BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F02F7/00 P
F02P15/00 303E
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020134964
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021038747
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】10 2019 123 721.1
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ディルムダム
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ルシュコウスキ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182808(JP,A)
【文献】特開2014-129813(JP,A)
【文献】特開2010-144628(JP,A)
【文献】特開平09-112402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
7/00
F02P 13/00
15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸が取り付けられているシリンダクランク室と、
複数のシリンダを具備する少なくとも1つのシリンダ列であって、前記シリンダそれぞれが、前記シリンダの内部において燃焼すべき燃料を点火するための点火プラグを備えている、前記シリンダ列と、
を有している内燃エンジンにおいて、
前記シリンダそれぞれが、少なくとも1つの入口側ガス交換弁と少なくとも1つの排出側ガス交換弁とを有しているシリンダヘッドを備えており、
前記シリンダそれぞれが、前記入口側ガス交換弁及び前記排出側ガス交換弁のための弁列の揺動アームを収容するための揺動アーム箱(10)を備えており、
前記シリンダそれぞれが、前記揺動アーム箱(10)それぞれに対して回動可能とされる揺動アームカバー(11)を備えており、
前記揺動アームカバー(11)が、前記シリンダそれぞれの前記点火プラグのための点火コイル(13)であって、前記シリンダヘッドと前記シリンダそれぞれの前記揺動アーム箱(10)又は前記揺動アームカバー(11)との間において保護チューブ(15)を通じて延在している点火プラグ延長部(14)を介して、前記点火プラグと接触可能とされる前記点火コイルを装着しており、
前記揺動アームカバー(11)が、第1の導入補助部(17)を具備する第1の部分(11a)を備えており、前記保護チューブ(15)が、前記揺動アームカバー(11)を閉じるように回動させる際に、前記第1の導入補助部(17)に挿入され、
前記揺動アームカバー(11)が、第2の導入補助部(18)を具備する第2の部分(11b)を備えており、前記保護チューブ(15)から突出している前記点火プラグ延長部(14)の端部(14a)が、前記揺動アームカバー(11)を閉じるように回動させる際に、前記点火プラグ延長部(14)と前記シリンダそれぞれの前記点火コイル(13)との間における電気接点を自動的に中央に形成するために、前記第2の導入補助部(18)に挿入されることを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
前記保護チューブ(15)から突出している前記点火プラグ延長部(14)の前記端部(14a)が、前記揺動アームカバー(11)を閉じる際に前記第1の導入補助部(17)に挿入されるプラグ(16)の内部に案内されることを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記プラグ(16)から突出している前記点火プラグ延長部(14)の前記端部(14a)が、前記揺動アームカバー(11)を閉じる際に、前記第2の導入補助部(18)に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記第2の導入補助部(18)を具備する前記第2の部分(11b)が、前記第1の導入補助部(17)を具備する前記第1の部分(11a)によって形成された領域の内部に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記第2の部分(11b)が、前記保護チューブ(15)から突出している前記点火プラグ延長部(14)の前記端部(14a)のための電気プラグ接点を形成していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
前記電気プラグ接点が、導電性バネ(19)を備えていることを特徴とする請求項5に記載の内燃エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンに関する。
【0002】
本発明は、特にいわゆる大型エンジン又は大型内燃エンジンであって、当該エンジンのシリンダが、140mmより大きい、特に175mmより大きいピストン直径を有している、当該エンジンの技術分野に関する。このような大型内燃エンジンは、例えば船舶用エンジン又は定置式エンジンとされる。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から、複数のシリンダを具備する内燃エンジンが知られている。内燃エンジンは、クランク軸が取り付けられているシリンダクランク室を備えている。シリンダは、少なくとも1つのシリンダ列を形成している。シリンダそれぞれが、シリンダヘッドと、当該シリンダヘッドの上方に位置決めされている揺動アーム箱とを備えており、揺動アーム箱が、弁列の揺動アームを収容するために利用される。
【0004】
特許文献2から、さらなる内燃エンジンが知られている。当該特許文献から、カバーがシリンダヘッドの上方に位置決めされた揺動アーム箱の上方に位置決めされていることが知られている。当該カバーは、揺動アーム箱の内部をアクセス可能なように露出させるために取り外し可能とされる。
【0005】
点火プラグを具備する内燃エンジンの場合には、すなわち、燃焼させるべき燃料が点火プラグを介して点火される内燃エンジンの場合には、カバー又は揺動アームカバーを取り外すことによって揺動アーム箱にアクセスするために要する手間が大きい。
【0006】
従って、シリンダそれぞれの点火プラグと導電状態で接触される点火コイルの電気接点は、当該アクセスを実現するために煩雑な接続解除をしなくてはならない。これに続いて、当該電気接点は、再び煩雑な接続をしなくてはならない。このことは、不利益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許公開公報第102012023836号明細書
【文献】独国特許公開公報第102012208076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、揺動アーム箱又は揺動アーム箱に位置決めされているアセンブリに対するアクセスが特に点検作業を実施するために単純化された、内燃エンジンに対するニーズが存在する。このようなニーズを発端として、本発明の目的は、新規のタイプの内燃エンジンを創作することである。当該目的は、請求項1に規定される内燃エンジンによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
内燃エンジンのシリンダそれぞれが、ガス交換弁のための弁列の揺動アームを収容するための揺動アーム箱と、揺動アーム箱それぞれに対して回動可能とされる揺動アームカバーとを備えている。
【0010】
内燃エンジンの揺動アームカバーそれぞれが、シリンダそれぞれの点火プラグのための点火コイルを装着している。点火コイルは、シリンダヘッドとシリンダそれぞれの揺動アーム箱又は揺動アームカバーとの間において保護チューブを通じて延在している点火プラグ延長部を介して、点火プラグと接触可能とされる。
【0011】
本発明における内燃エンジンでは、揺動アームカバーが、第1の導入補助部を具備する第1の部分を備えており、保護チューブが、揺動アームカバーを閉じるように回動させる際に、第1の導入補助部に螺入され、揺動アームカバーが、第2の導入補助部を具備する第2の部分を備えており、保護チューブから突出している点火プラグ延長部の端部が、揺動アームカバーを閉じるように回動させる際に、点火プラグ延長部とシリンダそれぞれの点火コイルとの間における電気接点を自動的に中央に形成するために、第2の導入補助部に螺入される。
【0012】
本発明における内燃機関の構成を通じて、揺動アーム箱に対するアクセス、及び揺動アーム箱の内部に位置決めされたアセンブリに対するアクセスが容易に実現可能となる。単に揺動アームカバーを揺動アーム箱に対して回動させれば良い。保護チューブのための揺動アームカバーの導入補助部と、保護チューブから突出している点火プラグ延長部の端部とによって、点火プラグ延長部と点火コイルとが、ひいては点火プラグと点火コイルとが自動的に中心で接触可能とされる。
【0013】
従来技術として知られている内燃エンジンでは必要とされた、点火プラグと点火コイルとの間における高電圧経路の電気接点の煩雑な接続解除及び接続することを省略することができる。
【0014】
優位なさらなる発展形態では、保護チューブから突出している点火プラグ延長部の端部が、プラグの内部に案内され、揺動アームカバーを閉じるように回動させる際に第1の導入補助部に螺入される。プラグから突出している点火プラグ延長部の端部が、揺動アームカバーを閉じる際に第2の導入補助部に螺入される。このために、特に優位には、点火プラグ延長部と点火コイルとが自動的に中心で接触する。
【0015】
優位なさらなる発展形態では、第2の導入補助部を具備する第2の部分が、第1の導入補助部を具備する第1の部分によって形成されている領域の内部に配置されている。また、本発明における当該さらなる発展形態は、特に優位にシリンダそれぞれの点火プラグ延長部と点火コイルとを自動的に中心で接触させるために利用される。
【0016】
優位なさらなる発展形態では、第2の部分が、保護チューブから突出している点火プラグ延長部の端部のための電気プラグ接点を形成している。当該さらなる発展形態によって、点火プラグ延長部と点火コイルとを特に優位な態様で自動的に中心で接触させることができる。
【0017】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び発明の詳細な説明から得られる。本発明の例示的な実施例について、図面を参照しつつ詳述するが、本発明は当該実施例に限定される訳では無い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明における内燃エンジンの、揺動アームカバーが閉じた状態における揺動アーム箱と揺動アームカバーとの領域の抽出図である。
図2】揺動アームカバーが部分的に開いた状態における、図1に表わす抽出図である。
図3】揺動アームカバーが図2と比較してさらに開いた状態における、図1及び図2に表わす抽出図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、内燃エンジンに関する。
【0020】
特に内燃エンジンは、140mmより大きい、特に175mmより大きいピストン直径を有している、いわゆる大型エンジン又は大型内燃エンジンとされる。このような大型エンジンは、船舶の、又は発電のための発電所の駆動ユニットとして利用される。
【0021】
内燃エンジンは、クランク軸が取り付けられているシリンダクランク室を備えている。
【0022】
さらに、内燃エンジンは、少なくとも1つのシリンダ列を形成している複数のシリンダを備えている。特にすべてのシリンダが直列に配置されている場合に、当該すべてのシリンダはシリンダ列を形成している。特にシリンダがV字状に群集している場合には、当該シリンダは2つのシリンダ列を形成している。
【0023】
シリンダそれぞれが、入口側ガス交換弁と排出側ガス交換弁とを備えており、当該ガス交換弁は、当該シリンダそれぞれのシリンダヘッドに受容されている。
【0024】
さらに、点火プラグは、シリンダヘッドそれぞれに収容されており、内燃エンジンのシリンダそれぞれの内部で燃焼されるべき燃料を点火するために利用される。
【0025】
内燃エンジンのシリンダのガス交換弁を動作させるために、内燃エンジンは、弁列を備えている。シリンダそれぞれのガス交換弁のための弁列は、シリンダそれぞれの揺動アーム箱に収容されている揺動アームを備えている。
【0026】
図1図3は、内燃エンジンからシリンダの領域、すなわちシリンダそれぞれの揺動アーム箱10の領域を抽出した図面であり、揺動アーム箱10の上側部分が図示されている。
【0027】
揺動アームカバー11は、回転軸線12を中心として回動可能なように揺動アーム箱10に取り付けられており、揺動アーム箱10それぞれと協働している。揺動アームカバー11を揺動アーム箱10に向かって回動させることによって、揺動アーム箱10に対するアクセス、及び揺動アーム箱10の内部に位置決めされたアセンブリに対するアクセスが、例えばシリンダそれぞれのガス交換弁における弁間隙を調整するために可能となる。
【0028】
シリンダそれぞれの揺動アームカバー11には、点火コイル13が装着されている。シリンダそれぞれの点火コイル13によって、電気エネルギが、燃料それぞれを点火するために、シリンダそれぞれの点火プラグに供給可能とされる。図1及び図2は、点火プラグ延長部14を表わす。点火プラグ延長部14は、点火プラグそれぞれから点火コイル13に向かって、すなわちシリンダのシリンダヘッドと揺動アームカバー11との間で延伸している保護チューブ15を通じて延在している。従って、点火プラグ延長部14は、揺動アーム箱10を通じて延在している。
【0029】
保護チューブ15の上側端部において、点火プラグ延長部14の端部14aが突出しており、保護チューブ15から突出している点火プラグ延長部14の端部14aを介して、点火プラグと点火コイル13とが電気的に接触する。
【0030】
図1図3から明らかなように、点火プラグ延長部14の上側端部14aは、点火プラグ延長部14を保護チューブ15に位置決めするために利用されるプラグ16の内部に案内される。点火プラグ延長部14の端部14aは、プラグ16に対して突出している。
【0031】
第1の部分11aにおいて、揺動アームカバー11は、揺動アームカバー11を閉じるように回動させる際に保護チューブ15又はプラグ16が螺入される、導入補助部17を備えている。
【0032】
第2の部分11bにおいて、揺動アームカバー11は、さらなる導入補助部18をさらに備えている。点火プラグ延長部14の端部14aは、保護チューブ15から突出して、すなわちプラグ16から突き出して、さらなる導入補助部18の内部に至る。これにより、点火プラグ延長部14とシリンダそれぞれの点火コイル13との電気的接触が、自動的に中心に形成される。
【0033】
図1図3に表わすように、第2の導入補助部18を具備する第2の部分11bが、導入補助部17を具備する第1の部分11aによって形成された領域の内部に配置されている。このことは、点火プラグと点火コイルとの間における高電圧経路の自動的な中心での接触を提供するために、特に望ましい。
【0034】
点火プラグ延長部14の端部14aと接触可能とされる揺動アームカバー11の第2の部分11bは、保護チューブ15又はプラグ16から突出している点火プラグ延長部14の端部14aのためのプラグ接点を形成している。導電性バネ19が、このようなプラグ接点に位置決めされており、また高電圧経路に配置されているので、点火コイル13からの電流又は電圧を点火プラグに向かって伝送する。
【0035】
図1及び図2に表わす典型的な実施例では、ケーブル20が、点火プラグ延長部14の端部14aのためのプラグ接点と点火コイル13との間に延在している。これとは対照的に、点火プラグ13を第2の部分11bすなわちプラグ接点に直接位置決めすることができる一方、このようなケーブル20を省略することができる。
【0036】
本発明は、点火プラグを具備する内燃エンジンにおいて、揺動アーム箱10に収容されたアセンブリに対する特に容易なアクセスを実現することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 揺動アーム箱
11 揺動アームカバー
11a 第1の部分
11b 第2の部分
12 回転軸線
13 点火コイル
14 点火プラグ延長部
14a 上側端部
15 保護チューブ
16 プラグ
17 導入補助部
18 さらなる(第2の)導入補助部
19 導電性バネ
20 ケーブル
図1
図2
図3