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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020135671
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032152
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193343(JP,A)
【文献】特開2011-183290(JP,A)
【文献】特開2008-093623(JP,A)
【文献】特開2019-193511(JP,A)
【文献】特開2019-012409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体および支持体と、
前記可動体と前記支持体を接続する接続体と、
前記可動体および前記支持体のうちの一方側部材に設けられたコイル、および前記コイルに対して前記可動体の振動方向に交差する方向で対向して前記可動体および前記支持体のうちの他方側部材に設けられた磁石を備える磁気駆動機構と、を有し、
前記接続体は、
前記可動体の重心を基準として、前記振動方向に交差する交差方向の一方側に配置される一方側接続体、および、前記重心を基準として前記交差方向の他方側に配置される他方側接続体を備え、
前記一方側接続体が前記振動方向に変形するときのばね定数と、前記他方側接続体が前記振動方向に変形するときのばね定数とが異なることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記一方側接続体は、第1のゲルからなり、
前記他方側接続体は、前記第1のゲルとは異なる第2のゲルからなることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記一方側接続体と前記他方側接続体は、前記交差方向から見た配置面積が異なることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記一方側接続体および前記他方側接続体は、それぞれ、1または複数個の同一形状のゲル状部材からなり、
前記一方側接続体を構成する前記ゲル状部材の個数と、前記他方側接続体を構成する前記ゲル状部材の個数とが異なることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
互いに直交する3方向を第1方向、第2方向、第3方向とするとき、
前記コイルと前記磁石とが対向する方向が前記第1方向であり、
前記振動方向が前記第2方向であり、
前記交差方向は、前記第1方向もしくは前記第3方向であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石とコイルの一方を備えた可動体と、磁石とコイルの他方を備えた固定体とを備え、コイルに駆動電流を流すことにより、可動体を固定体に対して振動させるアクチュエータが記載される。この種のアクチュエータは、固定体と可動体とを接続する接続体として弾性体や粘弾性体を用いる。特許文献1では、接続体としてシリコーンゲルからなるゲル状部材を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動体と固定体とを接続体によって接続したアクチュエータでは、可動体の質量と接続体のばね定数によって決まる共振周波数と、コイルへ流す駆動電流の周波数(駆動周波数)とが一致した際に可動体の加速度が最も大きくなるという振動特性を有する。そのため、大きな振動を出力できる周波数は共振周波数に限定される。
【0005】
特許文献1のアクチュエータは、可動体に搭載する重量調整部材の重量や配置を適切に設計することにより、所望の振動特性を実現することができる。しかしながら、重量調整部材を搭載しただけでは、共振周波数をシフトさせることはできるものの、広い周波数帯域で大きな振動を出力することはできない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、広い周波数帯域で大きな振動を出力することが可能なアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、可動体および支持体と、前記可動体と前記支持体を接続する接続体と、前記可動体および前記支持体のうちの一方側部材に設けられたコイル、および前記コイルに対して前記可動体の振動方向に交差する方向で対向して前記可動体および前記支持体のうちの他方側部材に設けられた磁石を備える磁気駆動機構と、を有し、前記接続体は、前記可動体の重心を基準として、前記振動方向に交差する交差方向の一方側に配置される一方側接続体、および、前記重心を基準として前記交差方向の他方側に配置される他方側接続体を備え、前記一方側接続体が前記振動方向に変形するときのばね定数と、前記他方側接続体が前記振動方向に変形するときのばね定数とが異なることを特徴とする。
【0008】
本発明では、可動体と支持体とを接続する接続体が、可動体の重心を基準として、振動方向と交差する方向でばね定数が非対称になるように構成されている。このような構成では、可動体の加速度が2つの駆動周波数でピークを持ち、2つの共振周波数を持つアクチュエータが得られる。従って、広い周波数帯域で大きな振動を出力することが可能なアクチュエータが得られる。
【0009】
本発明において、前記一方側接続体は、第1のゲルからなり、前記他方側接続体は、前
記第1のゲルとは異なる第2のゲルからなることが好ましい。このように、異なるゲルを用いることで、接続体の形状および配置を対称にしたままで、接続体のばね定数を非対称にすることができる。例えば、接続体としてゲルを用いる場合には、ゲルを製造する際、原料の配合比を調節することでゲルの硬さを調節して、接続体のばね定数を変更できる。従って、部品の製造設備や製造工程を変更することなく、原料の配合比の調節のみで、接続体のばね定数を非対称にすることができる。
【0010】
本発明において、前記一方側接続体と前記他方側接続体は、前記交差方向から見た配置面積が異なることが好ましい。このようにすると、使用するゲルを変更することなく、接続体のばね定数を非対称にすることができる。
【0011】
本発明において、前記一方側接続体および前記他方側接続体は、それぞれ、1または複数個の同一形状のゲル状部材からなり、前記一方側接続体を構成する前記ゲル状部材の個数と、前記他方側接続体を構成する前記ゲル状部材の個数とが異なることが好ましい。このようにすると、接続体を構成する部品(ゲル状部材)は全て同一にすることができるので、部品管理が容易である。
【0012】
本発明において、互いに直交する3方向を第1方向、第2方向、第3方向とするとき、前記コイルと前記磁石とが対向する方向が前記第1方向であり、前記振動方向が前記第2方向であり、前記交差方向は、前記第1方向もしくは前記第3方向である。このように、可動体の振動方向と直交する方向で接続体のばね定数を非対称にすることにより、広い周波数帯域で大きな振動を出力することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、可動体と支持体とを接続する接続体が、可動体の重心を基準として、振動方向と交差する方向でばね定数が非対称になるように構成されている。このような構成では、可動体の加速度が2つの駆動周波数でピークを持ち、2つの共振周波数を持つアクチュエータが得られる。従って、広い周波数帯域で大きな振動を出力することが可能なアクチュエータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータのYZ断面図である。
図3図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図4】ケースを取り外したアクチュエータの斜視図である。
図5】ケースを取り外した支持体の斜視図である。
図6】接続体の配置を示す説明図である
図7】アクチュエータの加速度周波数特性を示すグラフである。
図8】変形例1の接続体の配置を示す説明図である。
図9】変形例1の接続体を備えたアクチュエータの加速度周波数特性を示すグラフである。
図10】変形例2の接続体の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、可動体6の振動方向である第2方向にXを付し、第2方向Xと交差する第1方向にZを付し、第1方向Zおよび第2方向Xに対して交差する第3方向にYを付して説明する。第1方向Z、第2方向X,第3方向Yは互いに直交する方向である。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側に
Y2を付して説明する。以下の説明では、コイル5を保持する一方側部材が支持体2であって、磁石7を保持する他方側部材が可動体6である場合を中心に説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1のYZ断面図であり、図1のA-A位置で切断した断面図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図4は、ケース3を取り外したアクチュエータの斜視図である。図5は、ケース3を取り外した支持体2の斜視図である。図6は、コイルホルダ4および第1プレート47とコイル5の分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、アクチュエータ1は、第3方向Yに長手方向を向けた直方体形状であり、アクチュエータ1を手にした利用者に対して第2方向Xの振動によって情報を報知する。アクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材等として利用することができ、振動等によって新たな感覚を実感することができる。
【0018】
アクチュエータ1は、アクチュエータ1の外形を規定する角形のケース3等を含む支持体2と、ケース3の内部で支持体2に対して第2方向Xに移動可能に支持された可動体6を備える。また、アクチュエータ1は、可動体6を第2方向Xに振動させる磁気駆動機構1a(図2参照)と、可動体6と支持体2とを接続する接続体90を備える。
【0019】
支持体2は、ケース3、コイルホルダ4、コイル5、給電基板10を有しており、可動体6は、磁石7(第1磁石71および第2磁石72)、およびヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を有する。コイル5および磁石7(第1磁石71および第2磁石72)は、磁気駆動機構1aを構成する。可動体6は、可動体6と支持体2との間に配置される接続体90を介して支持体2に支持される。接続体90は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0020】
(可動体)
図2図3図4に示すように、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの一方側Z1に配置された磁性板からなる第1ヨーク81と、コイル5に第1方向Zの一方側Z1で対向するように第1ヨーク81の第1方向Zの他方側Z2の面に保持された平板状の第1磁石71とを有している。また、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの他方側Z2に配置された磁性板からなる第2ヨーク82と、コイル5に第1方向Zの他方側Z2で対向するように第2ヨーク82の第1方向Zの一方側Z1の面に保持された平板状の第2磁石72とを有している。第1磁石71および第2磁石72は各々、第1方向の一方側X1と第1方向の他方側X2とが異なる極に着磁されている。
【0021】
図3に示すように、第1ヨーク81は、第1磁石71が固定された平板部811と、平板部811の第2方向Xの両側の端部から第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった一対の連結部812とを有している。第2ヨーク82は、第2磁石72が固定された平板部821を有しており、平板部821の第3方向Yの中間部分には、第2方向Xの一方側X1および他方側X2に張り出した一対の張り出し部822を有している。図4に示すように、一対の張り出し部822には、第1ヨーク81の一対の連結部812が溶接等の方法で連結される。
【0022】
(支持体)
図1図2および図3に示すように、支持体2において、ケース3は、第1方向Zの一方側Z1に位置する第1ケース部材31と、第1方向Zの他方側Z2で第1ケース部材31と重なる第2ケース部材32とを有する。第1ケース部材31の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部311に、第2ケース部材32の第2方向Xの両側に設けられた一
対の側板部321が被さってケース3を構成する。その際、第1ケース部材31と第2ケース部材32との間には、コイルホルダ4、コイル5および可動体6が収容される。本形態において、ケース3は、第3方向Yの両端が開口部になっている。
【0023】
図3に示すように、コイル5は、長円状に巻回された空芯コイルであり、第3方向Yに延びる空芯部50を備えている。コイル5は、第2方向Xで並列して第3方向Yに延在する2つの長辺部51と、2つの長辺部51の第3方向Yの両端を繋ぐ円弧状の2つの短辺部52とを備えている。このように構成したコイル5に対して、長辺部51には、第1方向Zの一方側Z1で第1磁石71が対向し、第1方向Zの他方側Z2で第2磁石72が対向する。
【0024】
図2図3に示すように、コイル5は、コイルホルダ4に保持されている。コイルホルダ4は、コイル5が内側に配置される長円状の貫通穴からなるコイル配置穴410が第1方向Zで開口する板部41を有している。板部41の第3方向Yの一方側Y1の端部411において、第3方向Yの一方側Y1の縁からは、第1方向Zの一方側Z1に向けて側板部413が突出し、第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部414、415が突出している。側板部414、415の内面には、第1方向Zに延在する溝状の凹部からなる保持部414s、415sが形成されている。保持部414s、415sは、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1および他方側Z2にそれぞれ形成されている。
【0025】
板部41の第3方向Yの他方側Y2の端部412において、第3方向Yの他方側Y2の縁、第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部417、418、419が突出している。側板部418、419の内面には、第1方向Zに延在する溝状の凹部からなる保持部418s、419sが形成されている。保持部418s、419sは、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1および他方側Z2にそれぞれ形成されている。
【0026】
(第1プレートおよび第2プレート)
支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの一方側Z1から重なる第1プレート47を有している。図2に示すように、コイル5の空芯部50に充填された接着剤が硬化した接着剤層9によって、コイル5が第1プレート47および板部41に固定されている。従って、コイル5は、第1プレート47を介して第1磁石71と第1方向Zで対向している。
【0027】
また、支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの他方側Z2から重なる第2プレート48を有している。図2に示すように、コイル5の空芯部50に充填された接着剤が硬化した接着剤層9によって、コイル5が第2プレート48に固定されている。従って、コイル5は、第2プレート48を介して第2磁石72と第1方向Zで対向している。
【0028】
第1プレート47および第2プレート48は、非磁性材料からなる。本形態において、第1プレート47および第2プレート48は、金属板からなる。より具体的には、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性のステンレンス板からなる。従って、第1磁石71からの磁束、および第2磁石72の磁束は、第1プレート47および第2プレート48の影響を受けずに、コイル5と鎖交する。また、コイル5で発生した熱を第1プレート47および第2プレート48を介して効率よく逃がすことができる。
【0029】
図3に示すように、第1プレート47は、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪状の凸部472を有しており、凸部472は、コイルホルダ4の側
板部414、415、418、419に形成された溝状の凹部からなる保持部414s、415s、418s、419sの内部に弾性をもって当接し、コイルホルダ4に保持される。同様に、第2プレート48は、第2方向Xの両側から第1方向Zの他方側Z2に斜めに突出した爪状の凸部482を有しており、凸部482は、コイルホルダ4の保持部414s、415s、418s、419sの内部に弾性をもって当接し、コイルホルダ4に保持されている。
【0030】
(給電基板)
図1図4図5に示すように、アクチュエータ1では、コイルホルダ4に給電基板10が保持されており、給電基板10には、コイル5から引き出したコイル線56、57が半田19により接続されている。本形態において、給電基板10は剛性基板である。
【0031】
図3に示すように、コイルホルダ4の第3方向Yの一方側Y1の端部には、基板保持部45が設けられている。基板保持部45は、側板部414、415および板部41の第3方向Yの一方側Y1の端部411に囲まれた開口部44を挟んで第2方向Xに対向するスリット414t、415tを備える。図4に示すように、給電基板10は、第2方向Xの両側の端部が各々、スリット414t、415tの内側に嵌っている。本形態では、給電基板10の端部をスリット414t、415tに嵌めた後、さらに接着剤によってコイルホルダ4と給電基板10とを固定し、給電基板10の振動を抑制する構造になっている。
【0032】
給電基板10は、2つのランド11a、11bが第2方向Xで離間する位置に形成された第1板部11と、第1板部11の第2方向Xの両端から第1方向Zの一方側Z1に突出した2つの第2板部12、13とを備えている。コイル線56、57は、半田19によりランド11a、11bに接続される。
【0033】
(接続体)
図2図3図4に示すように、可動体6は、可動体6と支持体2との間に設けられた接続体90によって第2方向Xおよび第3方向Yに移動可能に支持される。本形態において、接続体90は、第1ヨーク81と第1ケース部材31とが第1方向Zで対向する部分に配置されるとともに、第2ヨーク82と第2ケース部材32とが第1方向Zで対向する部分に配置される。接続体90は、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間において、第3方向Yにおいて離間する2個所に配置されるとともに、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間において、第3方向Yにおいて離間する2個所に配置される。
【0034】
図6は、接続体90の配置を示す説明図である。図6(a)は、第2ケース部材32を取り外したアクチュエータ1を第1方向Zの他方側Z2から見た平面図であり、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間に配置された接続体90を示す。また、図6(b)は、第1ケース部材31を取り外したアクチュエータ1を第1方向Zの一方側Z1から見た底面図であり、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間に配置された接続体90を示す。図6(c)は、可動体6および接続体90を第2方向Xの一方側X1から見た側面図であり、図6(d)は、可動体6および接続体90を第3方向Yの一方側Y1から見た正面図である。
【0035】
接続体90は粘弾性部材である。より具体的には、接続体90(粘弾性部材)は、シリコーンゲルからなるゲル状部材である。本形態において、接続体90は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。接続体90と第1ヨーク81および第2ヨーク82との固定、および接続体90と第1ケース部材31および第2ケース部材32との固定は、接着剤、粘着剤、あるいはシリコーンゲルの粘着性を利用して行われる。
【0036】
なお、接続体90として、ゴムやバネ等を用いてもよい。ここで、粘弾性とは、粘性と
弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、粘弾性を備えた接続体90として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0037】
接続体90は、可動体6の重心Pに対して第3方向Yの一方側Y1に配置される一方側接続体91と、可動体6の重心Pに対して第3方向Yの他方側Y2に配置される他方側接続体92を備える。本形態では、一方側接続体91は、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間に配置される一方側接続体91A、および、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間に配置される一方側接続体91Bを備えている。一方側接続体91A、91Bは、第1方向Zから見て同一位置に配置される。また、他方側接続体92は、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間に配置される他方側接続体92A、および、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間に配置される他方側接続体92Bを備えている。他方側接続体92A、92Bは、第1方向Zから見て同一位置に配置される。
【0038】
アクチュエータ1は、可動体6が第2方向Xに振動するとき、接続体90のばね定数が振動方向と交差する交差方向の一方側と他方側で非対称となるように構成されている。本形態では、可動体6の重心Pに対して第2方向X(振動方向)と交差する第3方向Y(交差方向)の一方側Y1に配置される一方側接続体91(91A、91B)と、重心Pに対して第3方向Y(交差方向)の他方側Y2に配置される他方側接続体92(92A、92B)を備えており、一方側接続体91と他方側接続体92は、第2方向(振動方向)にせん断変形するときのばね定数が異なる。ここで、一方側接続体91のばね定数は、一方側接続体91A、91Bを並列に配置した場合の合成ばね定数であり、他方側接続体92のばね定数は、他方側接続体92A、92Bを並列に配置した場合の合成ばね定数である。従って、一方側接続体91A、91Bを並列に配置した場合の合成ばね定数と、他方側接続体92A、92Bを並列に配置した場合の合成ばね定数とが異なる。
【0039】
本形態では、一方側接続体91A、91Bと、他方側接続体92A、92Bは、いずれも直方体状であり、同一形状である。一方側接続体91A、91Bと、他方側接続体92A、92Bは、可動体6の重心Pを基準として、第3方向Yで対称に配置される。
【0040】
ここで、一方側接続体91(91A、91B)は、第1のゲルからなるゲル状部材であり、他方側接続体92(92A、92B)は、第2のゲルからなるゲル状部材である。第1のゲルと第2のゲルは、硬さの異なるゲルである。すなわち、第1のゲルと第2のゲルの一方は、他方よりも硬いゲルである。ゲルの硬さは、例えば、ゲルが弾性変形する範囲における、単位応力当たりのひずみ量、言い換えれば、ヤング率(応力-ひずみ曲線の傾き)によって表すことができる。ヤング率が大きいことは、ひずみが小さく、硬いことを意味する。
【0041】
シリコーンゲルからなるゲル状部材は、複数の原料を配合して熱硬化させることによって製造される。ゲル状部材を構成するゲルの硬さは、原料の配合比によって調節可能である。本形態では、一方側接続体91を構成する第1のゲルと、他方側接続体92を構成する第2のゲルとは、原料の配合比が異なるゲルである。
【0042】
一方側接続体91と他方側接続体92は、第3方向Yで対称に配置されているが、硬さの異なるゲルによって構成されている。そのため、一方側接続体91が第2方向X(振動方向)に変形するときのばね定数と、他方側接続体92が第2方向X(振動方向)に変形
するときのばね定数とが異なっている。
【0043】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、給電基板10を介して外部(上位の機器)からコイル5に給電すると、コイル5、第1磁石71および第2磁石72を備えた磁気駆動機構1aによって、可動体6が第2方向Xに往復移動する。従って、アクチュエータ1を手に持っていた利用者は、アクチュエータ1からの振動によって情報を得ることができる。その際、コイル5に印加される信号波形については、伝達すべき情報によって、周波数を変化させる。また、コイル5に印加される信号波形については極性を反転させるが、その際、駆動信号の極性が負の期間と正の期間とにおいて電圧の変化に対して緩急の差を設けることにより、可動体6が第2方向Xの一方側X1に移動する際の加速度と可動体6が第2方向Xの他方側X2に移動する際の加速度との間に差を発生させる。これにより、利用者に対して、アクチュエータ1が第2方向Xの一方側X1あるいは他方側X2に移動するような錯覚を感じさせることができる。
【0044】
アクチュエータ1においては、可動体6と支持体2との間に粘弾性部材からなる接続体90が設けられている。接続体90は、可動体6が第2方向Xに振動した際、せん断方向に変形するように配置されており、弾性率の変化が小さい。従って、可動体6の共振を効果的に抑制することができる。また、接続体90は、支持体2と可動体6との間で第1方向Zに圧縮された状態にあるため、可動体6の移動に確実に追従する。従って、可動体6の共振を効果的に防止することができる。
【0045】
図7は、アクチュエータ1の振動特性(加速度周波数特性)を示すグラフであり、アクチュエータ1の駆動周波数(コイル5に対する通電パターンの周波数)と可動体6の加速度の関係を示すグラフである。図7に示すように、本形態のアクチュエータ1は、加速度のピークを2つ持っており、共振周波数を2つ持っている。従って、アクチュエータ1は、加速度のピークが1つである場合よりも広い周波数帯域で加速度が大きい。従って、広い周波数帯域で大きな振動を出力できる。
【0046】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のアクチュエータ1は、可動体6および支持体2と、可動体6と支持体2を接続する接続体90と、可動体6および支持体2のうちの一方側部材に設けられたコイル5、およびコイル5に対して可動体6の第2方向X(振動方向)に交差する方向で対向して可動体6および支持体2のうちの他方側部材に設けられた磁石7を備える磁気駆動機構1aと、を有する。接続体90は、可動体6の重心Pを基準として、第2方向X(振動方向)に交差する第3方向Y(交差方向)の一方側Y1に配置される一方側接続体91、および、重心Pを基準として第3方向Y(交差方向)の他方側Y2に配置される他方側接続体92を備えており、一方側接続体91が第2方向X(振動方向)に変形するときのばね定数と、他方側接続体92が第2方向X(振動方向)に変形するときのばね定数とが異なる。
【0047】
本形態では、可動体6と支持体2とを接続する接続体90が、可動体6の重心Pを基準として第2方向X(振動方向)と交差する方向でばね定数が非対称になるように構成されている。このため、アクチュエータ1は、可動体6の加速度が2つの駆動周波数でピークを持ち、2つの共振周波数を持っている。従って、加速度のピークが1つである場合よりも、広い周波数帯域で大きな振動を出力することができる。
【0048】
本形態では、一方側接続体91は、第1のゲルからなり、他方側接続体92は、第1のゲルとは異なる第2のゲルからなる。このように、異なるゲルを用いることで、ゲルの硬さを異ならせることができ、一方側接続体91と他方側接続体92の形状や配置を対称に
したままで、ばね定数を非対称にすることができる。ゲルは、原料の配合比を調節することで硬さを調節し、ばね定数を変更できる。従って、部品の製造設備や製造工程を変更することなく、原料の配合比の調節のみで、接続体90のばね定数を非対称にすることができる。
【0049】
本形態では、互いに直交する3方向を第1方向Z、第2方向X、第3方向Yとしており、コイル5と磁石7とが対向する方向が第1方向Zであり、可動体6の振動方向が第2方向Xである。このように、可動体6の振動方向と直交する方向で接続体90のばね定数を非対称にすることにより、広い周波数帯域で大きな振動を出力することができる。
【0050】
なお、上記形態では、第2方向Xと交差する方向のうち、第2方向Xと直交する第3方向Yで、接続体90のばね定数を非対称にしているが、ばね定数を非対称にする方向は、第2方向X(振動方向)と交差する方向であればよく、第3方向Yと異なる方向でもよい。例えば、第2方向Xと直交する第1方向Zで、接続体90のばね定数を非対称にした場合においても、可動体6の駆動周波数に対する加速度のグラフが2つのピークを持つようになる。従って、広い周波数帯域で大きな振動を出力することができる。
【0051】
(変形例1)
上記形態は、異なる2種類のゲルを用いることで接続体90のばね定数を非対称にするものであったが、他の構成によってもばね定数を非対称にすることが可能である。変形例1のアクチュエータ1は、可動体6と支持体2とを接続する接続体190を備える。接続体190は、全て、同一のゲルからなる。接続体190は、可動体6の重心Pに対して第1方向Zの一方側Z1に配置される一方側接続体191と、可動体6の重心Pに対して第1方向Zの他方側Y2に配置される他方側接続体192を備える。接続体190は、可動体6が第2方向Xに振動するとき、第1方向Z(第2方向Xと交差する交差方向)の一方側と他方側でばね定数が非対称となるように構成されている。
【0052】
図8は、変形例1の接続体190の配置を示す説明図である。図8(a)は、第2ケース部材32を取り外した変形例1のアクチュエータ1を第1方向Zの他方側Z2から見た平面図であり、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間に配置された他方側接続体192を示す。また、図8(b)は、第1ケース部材31を取り外した変形例1のアクチュエータ1を第1方向Zの一方側Z1から見た底面図であり、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間に配置された一方側接続体191を示す。図8(c)は、可動体6および接続体190を第2方向Xの一方側X1から見た側面図であり、図8(d)は、可動体6および接続体190を第3方向Yの一方側Y1から見た正面図である。
【0053】
変形例1では、一方側接続体191と他方側接続体192は、同一のゲル状部材193からなる。ゲル状部材193は、第3方向Yに直線状に延びる直方体状のゲルである。図8に示すように、一方側接続体191と他方側接続体192は、構成するゲル状部材193の数が異なる。一方側接続体191は、1つのゲル状部材193からなり、他方側接続体192は、2つのゲル状部材193からなる。従って、一方側接続体191と他方側接続体192は、第1方向Zから見た配置面積が異なり、第2方向Xにせん断変形するときのばね定数が異なる。
【0054】
可動体6が第2方向Xに振動するときの他方側接続体192のばね定数は、2つのゲル状部材193を並列に配置した場合の合成ばね定数である。一方側接続体191のばね定数は、1つのゲル状部材193のばね定数である。従って、接続体190は、可動体6が第2方向Xに振動するとき、第1方向Zの一方側と他方側でばね定数が非対称である。
【0055】
図9は、変形例1のアクチュエータ1の振動特性(加速度周波数特性)を示すグラフで
あり、アクチュエータ1の駆動周波数(コイル5に対する通電パターンの周波数)と可動体6の加速度の関係を示すグラフである。図9に示すように、変形例1のアクチュエータ1は、上記形態と同様に加速度のピークを2つ持っており、共振周波数を2つ持っている。従って、加速度のピークが1つである場合よりも広い周波数帯域で加速度を大きくすることができ、広い周波数帯域で大きな振動を出力できる。
【0056】
また、変形例1では、一方側接続体191と他方側接続体192は、構成するゲル状部材193の数が異なるだけであって、同一のゲル状部材193を用いて構成されている。従って、使用する部品(ゲル状部材193)は全て同じでよいので、部品管理が容易である。なお、ゲル状部材193の個数は、一方側接続体191と他方側接続体192で異なっていればよく、上記の個数に限定されるものではない。例えば、一方側接続体191が2個のゲル状部材193で構成され、他方側接続体192が3個のゲル状部材193で構成されていてもよい。
【0057】
また、一方側接続体191と他方側接続体192として、第1方向Zから見た大きさ(配置面積)が異なる1つのゲル状部材を用いることにより、第1方向Zの一方側と他方側で接続体190のはね定数が異なる構成を実現してもよい。例えば、一方側接続体191として、第1方向Zから見た面積が他方側接続体192の2倍のゲル状部材を用いてもよい。
【0058】
(変形例2)
変形例2のアクチュエータ1は、可動体6と支持体2とを接続する接続体290を備える。図10は、変形例2の接続体290の配置を示す説明図である。図10(a)は、第2ケース部材32を取り外した変形例1のアクチュエータ1を第1方向Zの他方側Z2から見た平面図であり、第2ヨーク82と第2ケース部材32との間に配置された他方側接続体292を示す。また、図10(b)は、第1ケース部材31を取り外した変形例1のアクチュエータ1を第1方向Zの一方側Z1から見た底面図であり、第1ヨーク81と第1ケース部材31との間に配置された一方側接続体291を示す。図10(c)は、可動体6および接続体290を第2方向Xの一方側X1から見た側面図であり、図10(d)は、可動体6および接続体290を第3方向Yの一方側Y1から見た正面図である。
【0059】
接続体290は、全て、同一のゲルからなる。図10に示すように、接続体290は、可動体6の重心Pに対して第1方向Zの一方側Z1に配置される一方側接続体291と、可動体6の重心Pに対して第1方向Zの他方側Y2に配置される他方側接続体292を備える。変形例2では、変形例1と同様に、一方側接続体291と他方側接続体292は、第1方向Zから見た配置面積が異なり、第2方向Xに変形するときのばね定数が異なる。従って、変形例1のアクチュエータ1は、可動体6が第2方向Xに振動するとき、第2方向Xと交差する第1方向Z(交差方向)の一方側と他方側でばね定数が非対称となるように構成されている。
【0060】
変形例2では、一方側接続体291と他方側接続体292は、異なる形状のゲル状部材からなる。一方側接続体291は、第3方向Yを長手方向とする直方体状のゲル状部材1個で構成されている。一方、他方側接続体292は、第2方向Xを長手方向とする直方体状のゲル状部材2個で構成されている。他方側接続体292を構成する2個のゲル状部材は、可動体6の重心Pに対して第3方向Yで対称に配置される。一方側接続体291と他方側接続体292は、第1方向Zから見た配置面積および形状が異なり、第2方向Xにせん断変形するときのばね定数が異なる。従って、接続体290は、可動体6が第2方向Xに振動するとき、第1方向Zの一方側と他方側でばね定数が非対称である。
【0061】
変形例2のアクチュエータ1は、上記形態と同様に加速度のピークを2つ持っており、
共振周波数を2つ持っている。従って、加速度のピークが1つである場合よりも広い周波数帯域で加速度を大きくすることができ、広い周波数帯域で大きな振動を出力できる。
【0062】
なお、変形例1、2のアクチュエータ1は、第1方向Zの一方側と他方側で接続体のばね定数が非対称になっているが、ばね定数を非対称とする方向は、可動体6の振動方向と交差する方向であればよく、第2方向Xと交差する方向であればよい。例えば、第3方向Yの一方側と他方側で接続体のばね定数が非対称となるように構成されていてもよい。
【0063】
(他の変形例)
接続体を構成する粘弾性体の種類数、配置、個数は上記に限定されるものではなく、可動体6の振動方向と交差する方向の一方側と他方側で、ばね定数が非対称となる構成であればよい。
【0064】
上記形態では、接続体90、190、290は、ケース3と可動体6とを接続するものであったが、可動体6と支持体2とを接続するための接続体の配置は、上記形態の配置に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1…アクチュエータ、1a…磁気駆動機構、2…支持体、3…ケース、4…コイルホルダ、5…コイル、6…可動体、7…磁石、8…ヨーク、9…接着剤層、10…給電基板、11…第1板部、11a、11b…ランド、12…第2板部、19…半田、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、41…板部、44…開口部、45…基板保持部、47…第1プレート、48…第2プレート、50…空芯部、51…長辺部、52…短辺部、56…コイル線、71…第1磁石、72…第2磁石、81…第1ヨーク、82…第2ヨーク、90…接続体、91、91A、91B…一方側接続体、92、92A、92B…他方側接続体、190…接続体、191…一方側接続体、192…他方側接続体、193…ゲル状部材、290…接続体、291…一方側接続体、292…他方側接続体、311,321…側板部、410…第コイル配置穴、411、412…端部、413、414、415、417、418、419…側板部、414t、415t…スリット、414s、415s、418s、419s…保持部、472、482…凸部、811…平板部、812…連結部、821…平板部、822…張り出し部、P…重心、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10