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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20240430BHJP
【FI】
F24H1/18 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020136194
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032434
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】牛島 亘
(72)【発明者】
【氏名】松村 侑佳
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178084(JP,A)
【文献】特開2016-156562(JP,A)
【文献】特開2021-148351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0024944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクから出た湯を給湯管経由で出湯口に送る貯湯式給湯装置において、
前記貯湯タンクの下部の湯水を吸い込み前記給湯管に向けて送り出すポンプPと、
前記貯湯タンクの上部及び下部に両端部がそれぞれ接続され、加熱手段と共に設けられた前記ポンプPの作動により流入した前記貯湯タンクの下部の湯水を、前記加熱手段経由で該貯湯タンクの上部に送る沸上げ回路と、
前記沸上げ回路を前記給湯管に連通させるバイパス回路と、
前記沸上げ回路に流入した前記貯湯タンクの下部の湯水の一部又は全部の送り先を切り替えて、前記バイパス回路経由の前記給湯管とする切替え手段と
を備えることを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
請求項記載の貯湯式給湯装置において、前記加熱手段はヒートポンプユニットであることを特徴とする貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の湯を供給する貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯装置は、貯湯タンクから出た湯に水道管の水を混合した湯水(湯又は水を意味し、以下同じとする)を台所や浴室に設けられたカラン等の出湯口に供給する(特許文献1、2参照)。通常時、利用者が出湯口を開けば水道管の水圧によって出湯口から湯水が出るが、自然災害等が原因で水道水供給のインフラが停止して水道管の水圧が無くなると、出湯口を開いても湯水は出ない。
貯湯式給湯装置によっては、水道管の水圧が無い状態で、貯湯タンク下部に連結された排水ホースから貯湯タンクの水を出せるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196887号公報
【文献】特開2017-129328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような貯湯式給湯装置は、排水ホースの水の出口が貯湯タンクの近傍に設けられているため、排水ホースから出た湯水を容器に入れた後、湯水を使用する台所や洗面所等まで容器を運ぶ必要があった。また、寒冷地以外の地域では、通常、貯湯タンクが屋外に設置されており、湯水を入れた容器を屋外から台所等に運搬しなければならなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、水道管の水圧が無い状態でも、貯湯タンク内の湯水を出湯口から出すことができる貯湯式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る貯湯式給湯装置は、貯湯タンクから出た湯を給湯管経由で出湯口に送る貯湯式給湯装置において、前記貯湯タンクの下部の湯水を吸い込み前記給湯管に向けて送り出すポンプPと、前記貯湯タンクの上部及び下部に両端部がそれぞれ接続され、加熱手段と共に設けられた前記ポンプPの作動により流入した前記貯湯タンクの下部の湯水を、前記加熱手段経由で該貯湯タンクの上部に送る沸上げ回路と、前記沸上げ回路を前記給湯管に連通させるバイパス回路と、前記沸上げ回路に流入した前記貯湯タンクの下部の湯水の一部又は全部の送り先を切り替えて、前記バイパス回路経由の前記給湯管とする切替え手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る貯湯式給湯装置は、貯湯タンクの下部の湯水を吸い込み給湯管に向けて送り出すポンプを備えるので、水道管の水圧が無くなった状態でも、貯湯タンク内の湯水を出湯口から出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施の形態に係る貯湯式給湯装置の説明図である。
図2】同貯湯式給湯装置において、貯湯タンク内の湯水の沸き上げの様子を示す説明図である。
図3】同貯湯式給湯装置において、貯湯タンクの下部の湯水を出湯口に送る様子を示す説明図である。
図4】第1の変形例に係る貯湯式給湯装置の説明図である。
図5】第2の変形例に係る貯湯式給湯装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る貯湯式給湯装置10は、貯湯タンク11から出た湯を給湯管13経由で出湯口に送る装置である。以下、詳細に説明する。
【0009】
貯湯タンク11は、図1に示すように、鉛直方向に長く、異なる高さ位置に貯湯タンク11内の湯水の温度を計測する温度センサ14が設けられている。貯湯タンク11の下部には、水道管12に連結された給水管15が接続され、貯湯タンク11の上部には、給湯管13に混合弁16を介して接続された出湯管17が連結されている。水道管12は、給水管15に加え、混合弁16を介して給湯管13に連結されている。
【0010】
混合弁16は、図示しない操作盤で設定された温度に応じて、出湯管17の湯と水道管12の水の混合する割合を調整し、混合弁16で出湯管17の湯及び水道管12の水を混合してなる湯水は給湯管13経由で出湯口に送られる。出湯口とは、例えば浴室のシャワーやカラン、台所のカランである。貯湯タンク11の上部から出湯管17に湯が送り出されると、貯湯タンク11の上部から出湯管17に流出した湯と同量の水が水道管12及び給水管15経由で貯湯タンク11の下部に流入する。
【0011】
本実施の形態では、出湯管17及び水道管12には、混合弁16から湯水が逆流するのを防止する逆止弁18、19がそれぞれ設けられ、給水管15には、給水管15の水が水道管12に逆流するのを防止する逆止弁20が装着されている。水道管12には、混合弁16に送られる水道管12の水の温度を計測する温度センサ21及び圧力調整のための減圧弁22が設けられ、給湯管13には、混合弁16から出湯される湯水の量を計測する水量センサ23が設けられている。
【0012】
また、貯湯タンク11には、加熱手段の一例であるヒートポンプユニット24が設けられた沸上げ回路25が連結されている。沸上げ回路25は貯湯タンク11の上部及び下部に両端部がそれぞれ接続されている。沸上げ回路25には、作動して、沸上げ回路25に貯湯タンク11の下部の湯水を流入させ、その湯水をヒートポンプユニット24経由で貯湯タンク11上部に送るポンプ26(ポンプP)が設けられている。本実施の形態では、沸上げ回路25において、ポンプ26がヒートポンプユニット24の上流側に配されている。
【0013】
沸上げ回路25のヒートポンプユニット24の下流側の領域には、沸上げ回路25と貯湯タンク11の下部を連通するバイパス管27が接続され、沸上げ回路25とバイパス管27の接続部には、三方弁28が取り付けられている。三方弁28は、ヒートポンプユニット24を通過した湯水の送り先を、貯湯タンク11の上部とするか、バイパス管27経由の貯湯タンク11の下部とするかを切り替えることができる。
【0014】
貯湯タンク11の沸き上げは、ポンプ26及びヒートポンプユニット24の作動によって行われる。ポンプ26の作動によって、貯湯タンク11の下部の湯水が沸上げ回路25に流入し、ヒートポンプユニット24に送られる。三方弁28は、ヒートポンプユニット24によって加熱された湯水が所定の温度以上となるまで、ヒートポンプユニット24を通過した湯水の送り先をバイパス管27経由の貯湯タンク11の下部とし、ヒートポンプユニット24によって加熱された湯水が所定の温度以上になると、図2に示すように、その送り先を貯湯タンク11の上部に切り替える。これによって、貯湯タンク11の下部の湯水がヒートポンプユニット24で加熱されて湯となり貯湯タンク11の上部に流入するようになる。
【0015】
また、沸上げ回路25には、沸上げ回路25を給湯管13に連通させるバイパス回路30が接続されている。バイパス回路30は、一端部が沸上げ回路25のポンプ26とヒートポンプユニット24の間の領域に連結され、他端部が給湯管13に連結されている。バイパス回路30の他端部と給湯管13の連結部には、切替え手段の一例である三方弁31が設けられている。
【0016】
三方弁31は、給湯管13の三方弁31より下流側に、給湯管13の三方弁31より上流側の湯水を流せるようにするか、バイパス回路30を流れる湯水を流せるようにするかを切り替えることができる。通常時、三方弁31は、給湯管13の三方弁31より上流側の湯水を給湯管13の三方弁31より下流側に流せる状態(以下、「通常状態」とも言う)になっている。三方弁31が通常状態で、ポンプ26が作動すると、貯湯タンク11の下部から沸上げ回路25に流入した湯水は、バイパス回路30ではなく、ヒートポンプユニット24に送られる。
【0017】
一方、三方弁31が、バイパス回路30を流れる湯水を給湯管13の三方弁31より下流側に流す状態(以下、「非常状態」とも言う)で、ポンプ26が作動すると、貯湯タンク11の下部から沸上げ回路25に流入した湯水を、バイパス回路30及びヒートポンプユニット24に送れる状態となる。この状態で、出湯口を湯水が出るようにすれば(例えば、出湯口の蛇口を開いて)、貯湯タンク11の下部の湯水は、一部が、図3に示すように、ヒートポンプユニット24経由で貯湯タンク11の上部(又は下部)に送られ、残りがバイパス回路30に送られ、出湯口から出る(このとき、ポンプ26は貯湯タンク11の下部の湯水を吸い込み給湯管13に向けて送り出すこととなる)。従って、三方弁31は、沸上げ回路25に流入した貯湯タンク11の下部の湯水の一部の送り先を切り替えて、バイパス回路30経由の給湯管13とする。
これに対し、出湯口が湯水を出せない状態であれば、貯湯タンク11の下部の湯水はヒートポンプユニット24経由で貯湯タンク11の上部(又は下部)のみに送られる。
【0018】
水道水供給のインフラの停止等によって水道管12の水圧が無くなると、出湯口を湯水が出る状態にしても、水道管12の水圧によって出湯口から湯水が出ることはない。本実施の形態では、水道管12の水圧が無くなった際に、操作盤への操作により、ポンプ26を作動させ、三方弁31を通常状態から非常状態にする(即ち、三方弁31を、ポンプ26の作動により沸上げ回路25に流入した貯湯タンク11の下部の湯水の一部又は全部の送り先を切り替えて、バイパス回路30経由の給湯管13に向かわせるようにする)ことによって、出湯口から貯湯タンク11の湯水を出すことができる。
【0019】
ここで、ポンプ26は、貯湯タンク11内の湯水を沸き上げるための駆動源、及び、水道管12の水圧が無くなった際に貯湯タンク11の湯水を出湯口から出すための駆動源として利用されることから、水道管12の水圧が無くなった際に貯湯タンク11の湯水を出湯口から出すための駆動源を新たに設ける必要はない。
【0020】
水道管12の水圧が無くなっている際には、出湯口から貯湯タンク11の下部の湯水(バイパス回路30を通過した湯水)を出しても、水道管12の水が給水管15経由で貯湯タンク11に供給されることはない。この点、本実施の形態では、水道管12の水が貯湯タンク11に供給されない状態で、貯湯タンク11から湯水が出ている際に、貯湯タンク11内に空気を流入させる負圧作動弁32が設けられている。
なお、沸上げ回路25において、ポンプ26の上流側には、図1に示すように、貯湯式給湯装置10の撤去時等に貯湯タンク11内の湯水を排水するための排水バルブ33が設置されている。
【0021】
ここまで説明した貯湯式給湯装置10では、切替え手段である三方弁31が、バイパス回路30と給湯管13の連結部に設けられているが、切替え手段は、ポンプ26の作動により沸上げ回路25に流入した貯湯タンク11の下部の湯水の送り先を、貯湯タンク11の上部からバイパス回路30経由の給湯管13に切り替えることができれば、他の場所に設けられていてもよい。
【0022】
例えば、図4に示す第1の変形例に係る貯湯式給湯装置40のように、切替え手段である三方弁41を、沸上げ回路25とバイパス回路30の連結部に設けることができる。貯湯式給湯装置40は、貯湯式給湯装置10に対し、三方弁31が無く、三方弁41が設けられている点のみが貯湯式給湯装置10と異なる。なお、貯湯式給湯装置40において、貯湯式給湯装置10と同様の構成については、貯湯式給湯装置10と同じ符号を付している。
【0023】
三方弁41は、ポンプ26の作動により沸上げ回路25に流入した貯湯タンク11の下部の湯水の全部の送り先を切り替えて、バイパス回路30経由の給湯管13に向かわせることができる。水道管12の水圧が無くなった際、操作盤への操作によって、ポンプ26を作動させ、三方弁41の切り替え処理をすれば、貯湯タンク11の下部の湯水が沸上げ回路25、バイパス回路30及び給湯管13経由で出湯口から出るようになる。
貯湯式給湯装置40では、貯湯タンク11の下部の湯水を沸上げ回路25、バイパス回路30及び給湯管13経由で出湯口から出している際に、貯湯タンク11の下部の湯水がヒートポンプユニット24に送られることはない。
【0024】
また、貯湯式給湯装置10では、貯湯タンク11の下部の湯水を給湯管13に向けて送り出すポンプ26(ポンプP)が、貯湯タンク11の下部の湯水を沸上げ回路25経由で貯湯タンク11の上部に送ることにも使用されるが、これに限定されない。例えば、図5に示す第2の変形例に係る貯湯式給湯装置50のように、一端部が沸上げ回路25ではなく貯湯タンク11の下部に連結され他端部が給湯管13に連結されたバイパス回路51を設け、バイパス回路51に貯湯タンク11の下部の湯水をバイパス回路51経由で給湯管13に向けて送り出すポンプ52(ポンプP)を設ければ、貯湯タンク11の下部の湯水を沸上げ回路25経由で貯湯タンク11の上部に送るポンプ53(ポンプQ)とは別のポンプ52で貯湯タンク11の下部の湯水を給湯管13に送ることができる。
なお、貯湯式給湯装置50において、貯湯式給湯装置10と同様の構成については、貯湯式給湯装置10と同じ符号を付している。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、切替え手段は、三方弁に限定されない。例えば、複数の電磁弁によって切替え手段を構成することができる。
また、加熱手段はヒートポンプユニットに限定されず、例えば、ガス燃料によって湯水を加熱するユニットであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10:貯湯式給湯装置、11:貯湯タンク、12:水道管、13:給湯管、14:温度センサ、15:給水管、16:混合弁、17:出湯管、18、19、20:逆止弁、21:温度センサ、22:減圧弁、23:水量センサ、24:ヒートポンプユニット、25:沸上げ回路、26:ポンプ、27:バイパス管、28:三方弁、30:バイパス回路、31:三方弁、32:負圧作動弁、33:排水バルブ、40:貯湯式給湯装置、41:三方弁、50:貯湯式給湯装置、51:バイパス回路、52:ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5