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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】合成桁の床版の撤去工法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20240430BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20240430BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D24/00
E04G23/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020139950
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035542
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 重美
(72)【発明者】
【氏名】升形 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 保久
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直文
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089302(JP,A)
【文献】特開2020-012275(JP,A)
【文献】特開平02-311605(JP,A)
【文献】実開昭60-062521(JP,U)
【文献】特開平09-158124(JP,A)
【文献】特開2017-218885(JP,A)
【文献】特開平07-003719(JP,A)
【文献】実開昭49-096731(JP,U)
【文献】特開2003-193418(JP,A)
【文献】特開2019-031868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 24/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版の撤去工法であって、
前記床版における前記鋼桁の橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版における前記鋼桁上に位置しない非桁上部分を撤去するステップと、
前記床版における前記鋼桁上に位置して前記ずれ止めを含む桁上部分の上面及び前記橋幅方向の両側面に当接するフレーム、並びに前記フレームに固定されて前記橋軸方向に延在して互いに前記橋幅方向の反対側に設けられた1対のレールを含む少なくとも1つのレールユニットと、前記レールの各々に少なくとも1つ取り付けられ、前記床版を切削するブレード及び前記レールを走行する走行部を含むコンクリートカッターとを設置するステップと、
前記桁上部分に対して、前記橋幅方向に非切削区間が残り、かつ、前記ずれ止めを切断するように、前記レールの各々に取り付けられた前記コンクリートカッターの前記ブレードによって前記橋幅方向の前記両側面から切削し、前記橋軸方向に沿って延在する切削溝を形成するステップと、
前記非切削区間に上下方向に引張力を加えて、前記桁上部分を前記切削溝に対して上下の部分に分離して、分離した前記桁上部分における前記切削溝よりも上方の部分を撤去するステップと
を備えることを特徴とする床版の撤去工法。
【請求項2】
鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版の撤去工法であって、
前記床版における前記鋼桁上に位置して前記ずれ止めを含む桁上部分に対して、橋幅方向に非切削区間が残り、かつ、前記ずれ止めを切断するように、ブレードによって前記橋幅方向の側面から切削し、橋軸方向に沿って延在する切削溝を形成するステップと、
前記非切削区間に上下方向に引張力を加えて、前記桁上部分を前記切削溝に対して上下の部分に分離して、分離した前記桁上部分における前記切削溝よりも上方の部分を撤去するステップと
を備え、
前記切削溝を形成するステップは、前記桁上部分における前記橋幅方向の一方の側部に前記非切削区間が形成されるように、前記ブレードによって前記橋幅方向の他方の前記側面からのみ切削することを含むことを特徴とする、床版の撤去工法。
【請求項3】
鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版の撤去工法であって、
前記床版における前記鋼桁上に位置して前記ずれ止めを含む桁上部分に対して、橋幅方向に非切削区間が残り、かつ、前記ずれ止めを切断するように、ブレードによって前記橋幅方向の側面から切削し、橋軸方向に沿って延在する切削溝を形成するステップと、
前記非切削区間に上下方向に引張力を加えて、前記桁上部分を前記切削溝に対して上下の部分に分離して、分離した前記桁上部分における前記切削溝よりも上方の部分を撤去するステップと
を備え、
前記ブレードは、第1ブレードと、前記第1ブレードよりも薄い第2ブレードとを含み、
前記切削溝を形成するステップは、前記第1ブレードによって、前記桁上部分を前記側面から切削して第1切削溝を形成し、その後、前記非切削区間が残り、かつ前記ずれ止めを切断するように、前記第2ブレードによって、前記桁上部分を前記第1切削溝の底面から切削して第2切削溝を形成することを含むことを特徴とする床版の撤去工法。
【請求項4】
前記切削溝を形成するステップの前に実施される、前記床版における前記鋼桁の前記橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を前記橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版における前記鋼桁上に位置しない非桁上部分を撤去するステップを更に備えることを特徴とする、請求項2又は3に記載の床版の撤去工法。
【請求項5】
前記切削溝を形成するステップにおいて、前記切削溝は、前記橋幅方向の両側面から形成されることを特徴とする請求項に記載の床版の撤去工法。
【請求項6】
鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版を撤去するために、前記床版における前記鋼桁の橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版における前記鋼桁上に位置しない非桁上部分を撤去した後、前記床版における前記鋼桁上に残っている桁上部分の側面を切削するための装置であって、
前記桁上部分の上面及び1対の前記側面に当接するフレーム、及び前記フレームに固定されて前記橋軸方向に延在するレールを含む少なくとも1つのレールユニットと、
前記床版を切削するブレード及び前記レールを走行する走行部を含むコンクリートカッターとを備え、
前記フレームは、それぞれが前記桁上部分の前記上面に当接する上壁と、前記桁上部分における対応する前記側面に当接する側壁と、前記上壁に取り付けられた固定部とを含む1対のフレーム部材を含み、1対の前記フレーム部材は、前記側壁の各々が前記桁上部分における互いに反対側の前記側面に当接した状態で、前記固定部を互いに固定できるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項7】
鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版を撤去するために、前記床版における前記鋼桁の橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版における前記鋼桁上に位置しない非桁上部分を撤去した後、前記床版における前記鋼桁上に残っている桁上部分の側面を切削するための装置であって、
前記桁上部分の上面及び1対の前記側面に当接するフレーム、及び前記フレームに固定されて前記橋軸方向に延在するレールを含む少なくとも1つのレールユニットと、
前記床版を切削するブレード及び前記レールを走行する走行部を含むコンクリートカッターとを備え、
前記レールは、互いに前記橋幅方向の反対側に1対設けられ、
前記コンクリートカッターは、前記レールの各々に少なくとも1つ取り付けられたことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記フレームは、それぞれが前記桁上部分の前記上面に当接する上壁と、前記桁上部分における対応する前記側面に当接する側壁と、前記上壁に取り付けられた固定部とを含む複数対のフレーム部材を含み、複数対の前記フレーム部材は、前記橋軸方向に互いに離間し、前記側壁の各々が前記桁上部分における互いに反対側の前記側面に当接した状態で、前記固定部を互いに固定できるように構成されたことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
互いに前記橋軸方向に連結及び分離可能な2つ以上の前記レールユニットを備えることを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼桁の上面から突出するずれ止めを埋設するように構築されたコンクリート造の床版、すなわち、合成桁の床版の撤去工法及び撤去のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼桁の上面から突出するずれ止めをコンクリート内に埋設するように構築された床版(合成桁の床版)において、既設の床版を撤去して、既設の鋼桁上に新たに床版を構築する場合がある。このような場合、従来、橋軸方向及び橋幅方向に沿った鉛直面で床版を切断し、床版における鋼桁間の部分を撤去し、ウォータージェット工法により床版における鋼桁上の部分のコンクリートをはつり、ずれ止めを切断し、ケレン作業を行うことによって、床版を撤去していた。ウォータージェット工法によるコンクリートのはつり作業に時間がかかるため、このような合成桁の床版の撤去工法よりも工期を短縮できる様々な合成桁の床版の撤去工法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無端状のワイヤーソーと、ワイヤーソーをガイドするべく、取り付け部材を介して鋼桁の上フランジに支持されたガイド部材とを備える装置が記載されており、床版における鋼桁間の部分を撤去した後、この装置を用いて、床版における鋼桁上の部分の下端近傍を切断することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、床版の上面を走行する進退駆動手段と、床版における鋼桁の上フランジの直上の部分及びスタッドを切断するワイヤーソーやブレード等の第1切削手段と、床版における鋼桁を挟む左右の部分を切断する第2切削手段とを備える装置が記載されており、床版における鋼桁の上フランジの直上の部分と鋼桁を挟む左右の部分とを同時に切削することが記載されている。
【0005】
非特許文献1には、床版における鋼桁間の部分と鋼桁上の部分とを切断せずに、ワイヤーソーを用いて床版における鋼桁の近傍部分を切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-145668号公報
【文献】特開2019-31868号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「日経コンストラクション」、日経BP、2019年11月11日発行、pp.44-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載の合成桁の床版の撤去工法では、鋼桁から切断された床版が落下しないように、床版を鋼桁に仮固定する手段が必要であった。特許文献1及び非特許文献1に記載の方法及び装置では、床版を切断する際にワイヤーソーを水平に維持し、かつワイヤーソーに加わる反力を支持するために、比較的大がかりなガイド・支持部材を必要とした。特許文献2に記載の方法及び装置では、床版の表面に凹凸があるため、鋼桁の上面と切削位置との間の距離が変動し、切削位置の精度の確保が難しかった。また、特許文献2に記載の装置において、鋼桁の上面と平行に床版を切断する切削手段としてブレードを使用すると、切断した部分が自重により撓んでブレードの表面に接触して摩擦によって作業効率が低下する問題があった。
【0009】
このような問題に鑑み、本発明は、撤去中の合成桁の床版の落下防止を比較的容易に行え、床版とブレードの表面との接触を抑制できる合成桁の床版の撤去工法及び装置を提供することを目的とする。本発明のある実施形態は、比較的簡易な構成で、合成桁の床版の切削手段をガイド及び支持し、切削位置の精度を確保できる合成桁の床版を撤去するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある実施形態は、鋼桁(2)の上面から突出するずれ止め(4)を埋設するように構築されたコンクリート造の床版(1)の撤去工法であって、前記床版(1)における前記鋼桁(2)上に位置して前記ずれ止めを含む桁上部分(1b)に対して、橋幅方向に非切削区間(18)が残り、かつ、前記ずれ止め(4)を切断するように、ブレード(13)によって前記橋幅方向の側面から切削し、橋軸方向に沿って延在する切削溝(17)を形成するステップと、前記非切削区間(18)に上下方向に引張力を加えて、前記桁上部分(1b)を前記切削溝に対して上下の部分(1d,1e)に分離して、分離した前記桁上部分における前記切削溝よりも上方の部分(1d)を撤去するステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、非切削区間が桁上部分における切削溝よりも上方の部分を下方の部分に連結しているため、落下防止用の仮設材を設置しなくとも上方の部分の落下を防ぐことができる。また、切削溝の底面近傍においては、非切削区間によって、桁上部分における切削溝よりも上方の部分が下方に変位することを妨げるため、ブレードと桁上部分のコンクリートとの接触を抑制して摩擦抵抗を低減し、切削効率の低下を抑制できる。
【0012】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記切削溝を形成するステップの前に実施される、前記床版(1)における前記鋼桁(2)の前記橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を前記橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版(1)における前記鋼桁(2)上に位置しない非桁上部分(1a)を撤去するステップを更に備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、桁上部分と非桁上部分とを分離して撤去するため、使用するクレーンを小型化できる。
【0014】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記切削溝(17)を形成するステップにおいて、前記切削溝(17)は、前記橋幅方向の両側面から形成されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、一方の側面からのみ切削溝を形成する場合に比べて、各々の切削溝の深さが浅くなるため、ブレードと桁上部分のコンクリートとの接触を抑制して摩擦抵抗を低減し、切削効率の低下を抑制できる。
【0016】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記ブレード(13)は、第1ブレード(13a)と、前記第1ブレード(13a)よりも薄い第2ブレード(13b)とを含み、前記切削溝(17)を形成するステップは、前記第1ブレード(13a)によって、前記桁上部分(1b)を前記側面から切削して第1切削溝(17a)を形成し、その後、前記非切削区間(18)が残り、かつ前記ずれ止め(4)を切断するように、前記第2ブレード(13b)によって、前記桁上部分(1b)を前記第1切削溝(17a)の底面から切削して第2切削溝(17b)を形成することを含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第2ブレードの第1切削溝を画定するコンクリートへの接触が抑制されるため、切削効率の低下が抑制される。
【0018】
本発明のある実施形態は、鋼桁(2)の上面から突出するずれ止め(4)を埋設するように構築されたコンクリート造の床版(1)を撤去するために、前記床版(1)における前記鋼桁(2)の橋幅方向の外縁又は該外縁よりも外側の部分を橋軸方向に沿って鉛直に切断し、前記床版(1)における前記鋼桁(2)上に位置しない非桁上部分(1a)を撤去した後、前記床版(1)における前記鋼桁(2)上に残っている桁上部分(1b)の側面を切削するための装置(3,103)であって、前記桁上部分(1b)の上面及び1対の前記側面に当接するフレーム(7,107)、及び前記フレーム(7,107)に固定されて前記橋軸方向に延在するレール(8)を含む少なくとも1つのレールユニット(5,105)と、前記床版(1)を切削するブレード(13)及び前記レール(8)を走行する走行部(11)を含むコンクリートカッター(6)とを備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、床版の表面に凹凸があってもレールによってブレードの位置が安定するため、ブレードが鋼桁の上面に当たらないように、桁上部分における鋼桁の上面の近傍をブレードで切削できる。この構成によれば、フレームが桁上部分の上面及び側面に当接する構造であるため、レールユニットの取り付けが容易であり、切削時のブレードに対する反力を得ることができる。また、この構成によれば、非切削区間を残すように、桁上部分を橋幅方向の側面から切削できるため、桁上部分における切削溝よりも上方の部分の落下防止のための仮設材が不要となる。
【0020】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記フレーム(7)は、それぞれが前記桁上部分(1b)の上面に当接する上壁(9a)と、前記桁上部分(1b)における対応する前記側面に当接する側壁(9b)と、前記上壁(9a)に取り付けられた固定部(10)とを含む1対のフレーム部材(9)を含み、1対の前記フレーム部材(9)は、前記側壁(9b)の各々が前記桁上部分(1b)における互いに反対側の前記側面に当接した状態で、前記固定部(10)を互いに固定できるように構成されたことを特徴とする。または、本発明のある実施形態は、上記構成において、前記フレーム(107)は、それぞれが前記桁上部分の前記上面に当接する上壁(109a)と、前記桁上部分(1b)における対応する前記側面に当接する側壁(109b)と、前記上壁(109a)に取り付けられた固定部(110)とを含む複数対のフレーム部材(109)を含み、複数対の前記フレーム部材(109)は、前記橋軸方向に互いに離間し、前記側壁(109b)の各々が前記桁上部分(1b)における互いに反対側の前記側面に当接した状態で、前記固定部(110)を互いに固定できるように構成されたことを特徴とする。
【0021】
前者の構成によれば、フレームが1対のフレームを含むため、桁上部分の幅に応じてフレームの幅を調整でき、種種の桁幅を有する鋼桁上の床版に適用できる。後者の構成によれば、フレーム部材の量が前者の構成に比べて少ないため、レールユニットを軽量化できる。
【0022】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記レールは、互いに前記橋幅方向の反対側に1対設けられ、前記コンクリートカッターは、前記レールの各々に少なくとも1つ取り付けられたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、一方の側面からのみ切削溝を形成する場合に比べて、各々の切削溝の深さが浅くなるため、ブレードと桁上部分のコンクリートとの接触を抑制して摩擦抵抗を低減し、切削効率の低下を抑制できる。
【0024】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、互いに前記橋軸方向に連結及び分離可能な2つ以上の前記レールユニット(5,105)を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、1つの桁上部分の切削中に、切削済みの部分のレールユニットを取り外し、取り外したレールユニットをその後に切削されるべき部分に再利用することができる。
【0026】
本発明のある実施形態は、ウェブ(2c)、前記ウェブ(2c)の上下に固定された上フランジ(2a)及び下フランジ(2b)を含む鋼桁の前記上フランジ(2a)の上面から突出するずれ止め(4)を埋設するように構築されたコンクリート造の床版(1)を撤去するために、前記床版(1)における前記鋼桁(2)上に位置して前記ずれ止めを含む桁上部分(1b)の側面を切削するための装置(21)であって、互いに隣り合う2つの前記鋼桁(2)の互いに向かい合う側のそれぞれに取り付けられた支持部材(24)、2つの前記支持部材(24)間に前記上フランジ(2a)と平行に架け渡された平行部材(25)、及び前記平行部材(25)の上面に固定されて橋軸方向に延在するレール(26)を含むレールユニット(22)と、前記床版(1)を切削するブレード(13)及び前記レール(23)を走行する走行部(27)を含むコンクリートカッター(23)とを備えることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、床版の表面に凹凸があってもレールによってブレードの位置が安定するため、ブレードが鋼桁の上面に当たらないように、桁上部分における鋼桁の上面の近傍をブレードで切削できる。また、この構成によれば、非切削区間を残すように、桁上部分を橋幅方向の側面から切削できるため、桁上部分における切削溝よりも上方の部分の落下防止のための仮設材が不要となる。
【0028】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記支持部材は、下端部において前記下フランジに固定されることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、レールユニットが鋼桁の上下のフランジ間に収まって小型化される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、撤去中の合成桁の床版の落下防止を比較的容易に行え、合成桁の床版とブレードの表面との接触を抑制できる合成桁の床版の撤去工法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る工法で撤去中の合成桁の床版を示す斜視図
図2】第1実施形態に係る装置を示す斜視図
図3】第1実施形態の第1変形例に係る装置を示す斜視図
図4】第1実施形態に係る装置による合成桁の床版の切削を示す模式的斜視図
図5】第1実施形態に係る工法の手順の説明図(実施前の床版)
図6】第1実施形態に係る工法の手順の説明図(非桁上部分が撤去された状態)
図7】第1実施形態に係る工法の手順の説明図(桁上部分を切削した状態(A:横断面図、B:側面図))
図8】第1実施形態に係る工法の手順の説明図(桁上部分が剥離した状態)
図9】第1実施形態の第2変形例に係る工法の説明図(A:切削溝を示す合成桁の床版の横断面図、B:ブレードを示す平面図)
図10】第2実施形態に係る工法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0033】
図1は、第1実施形態に係る工法が適用されて撤去される合成桁の床版1を示す。図1における右側は撤去前の状態を示し、左側は床版1における鋼桁2上に位置しない非桁上部分1a(床版1における互いに隣り合う鋼桁2間に位置する部分、及び橋幅方向の端部に位置する鋼桁2よりも橋幅方向の外側に位置する部分)が撤去されて、床版1の鋼桁2の上に配置された桁上部分1bが残り、切削溝17(図6(A)参照)を形成した状態を示す。図2は、第1実施形態に係る合成桁の床版1を撤去するための装置3を示す。
【0034】
図1及び図2に示すように、床版1は、橋軸方向に沿って配置されて横断面視でI字型をなす複数の鋼桁2上に設置されている。鋼桁2の上フランジ2aの上面からずれ止め4が突出しており、ずれ止め4は床版1のコンクリートに埋まっている。ずれ止め4は、頭付きスタッド(図4参照)、馬蹄型ジベル(図2参照(図2では馬蹄型ジベルの上部が切断されている))、形鋼ジベル、孔あき鋼板ジベル等の鋼材からなる。なお、床版1は鉄筋コンクリート造であるが、床版1中の鉄筋の図示は省略している。
【0035】
装置3は、桁上部分1bに取り付けられたレールユニット5と、レールユニット5に走行可能に支持されるコンクリートカッター6とを備える。
【0036】
レールユニット5は、桁上部分1bの上面及び橋幅方向の両側面に当接して、横断面視で概ねコ字状をなすフレーム7と、フレーム7の橋幅方向の外側面に固定されて橋軸方向に延在する1対のレール8とを含む。
【0037】
フレーム7は1対のフレーム部材9を備え、各々のフレーム部材9は、桁上部分1bの上面に当接する上壁9a、及び桁上部分1bにおける橋幅方向の側面に当接する側壁9bを含む横断面視でL字状の部分と、1対のフレーム部材9を互いに固定するために上壁9aの上面に取り付けられた固定部10とを含む。固定部10は、橋軸方向に所定の間隔を置いて複数個設置される。固定部10は、上壁9aの上面に立設されて主面が橋幅方向に直交する板状の立壁10aと、主面が橋軸方向に直交するように配置されて立壁10aの橋軸方向の両端縁と上壁9aの上面とを連結する板状の1対のリブ10bとを含む。立壁10aにはボルト(図示せず)を挿通させる貫通孔10cが設けられている。各々のフレーム部材9に設けられた立壁10aは、対をなすフレーム部材9に設けられた立壁10aに互いの貫通孔10cが橋幅方向に整合するように対向している。側壁9bが桁上部分1bの橋幅方向の側面に当接した状態で、互いに対向する立壁10aの貫通孔10cにボルトを挿通してボルトにナット(図示せず)を締結することにより、1対のフレーム部材9が互いに固定される。フレーム部材9は鋼材からなることが好ましく、上壁9a、立壁10a及びリブ10bは互いに溶接等によって固定される。
【0038】
レール8は、各々のフレーム部材9の側壁9bの橋幅方向の外側の表面に溶接又は締結具(図示せず)による締結等により固定されており、橋軸方向に沿うように、すなわち、鋼桁2と並行に配置される。従って、レール8から鋼桁2の上フランジ2aの上面までの上下方向距離は略一定となる。
【0039】
互いに橋軸方向に連結及び分離可能な2つ以上のレールユニット5を用いてもよい。この場合、桁上部分1bの切削が終わった区間に取り付けられているレールユニット5を取り外し、取り外したレールユニット5を設置済みのレールユニット5の反対側に連結して、その後に切削されるべき区間のためのレールユニット5として再利用してもよい。
【0040】
図3は、第1実施形態の第1変形例を示す。この第1変形例に係る装置103は、上記の主例に対してレールユニット105が相違し、その他の構成においては上記の実施形態と同様である。共通する構成については、主例と同じ符号を付し、説明を省略する。レールユニット105は、桁上部分1bの上面及び橋幅方向の両側面に当接するフレーム107と、フレーム107の橋幅方向の外側面に固定されて橋軸方向に延在する1対のレール8とを含む。
【0041】
フレーム107は、複数対のフレーム部材109を備え、複数対のフレーム部材109は、橋軸方向に所定の距離をおいて互いに離間している。各々のフレーム部材109は、桁上部分1bの上面に当接する上壁109a、及び桁上部分1bにおける橋幅方向の側面に当接して上下方向の中間部分で上壁109aに連結する側壁109bを含む横断面視でT字状の部分と、上壁109aと側壁109bとの連結を補強するべく上壁109aの上面と側壁109bの内側面とに連結したリブ109cと、対をなすフレーム部材109を互いに固定するために上壁109aの上面に取り付けられた固定部110とを含む。固定部110は、上壁9aの上面に立設されて主面が橋幅方向に直交する板状の立壁110aと、主面が橋軸方向に直交するように配置されて立壁110aの橋軸方向の両端縁と上壁109aの上面とを連結する板状の1対のリブ110bとを含む。立壁110aにはボルト110dを挿通させる貫通孔(図示せず)が設けられている。各々のフレーム部材109に設けられた立壁110aは、対をなすフレーム部材109に設けられた立壁110aに互いの貫通孔(図示せず)が橋幅方向に整合するように対向している。側壁109bが桁上部分1bの橋幅方向の側面に当接した状態で、互いに対向する立壁110aの貫通孔(図示せず)にボルト110dを挿通してボルト110dにナット(図示せず)を締結することにより、対をなすフレーム部材109が互いに固定される。フレーム部材109は鋼材からなることが好ましく、上壁109a、側壁109b及びリブ109cは互いに溶接等によって固定され、上壁109a、立壁110a及びリブ10bも互いに溶接等によって固定される。
【0042】
レール8は、各々のフレーム部材109の側壁109bの橋幅方向の外側の表面に溶接又は締結具(図示せず)による締結等により固定されており、橋軸方向に沿うように、すなわち、鋼桁2と並行に配置される。従って、レール8から鋼桁2の上フランジ2aの上面までの上下方向距離は略一定となる。
【0043】
第1変形例に係るレールユニット105は、主例のレールユニット5と同様に、互いに橋軸方向に連結及び分離可能な2つ以上のレールユニット105を組み合わせて使用されてもよい。
【0044】
第1変形例に係るレールユニット105は、主例のレールユニット5に比べて鋼材量が少ないため、軽量化される。
【0045】
図2図4に示すように、コンクリートカッター6は、各々のレール8に対して1つずつ取り付けられ、レール8に走行可能に支持される走行部11と、走行部11に固定されたブレードカバー12と、橋幅方向の外側がブレードカバー12内に収容されてブレードカバー12に回転可能に支持されたブレード13と、ブレード13の橋幅方向の位置を変更するためのハンドル14と、ブレード13を回転させるためのモーター15とを含む。走行部11は、レール8を上下に挟むように配置された2対の車輪11aと、車輪11aを回転可能に支持するブロック11bと、ブロック11bから橋幅方向の外側に延出してブレードカバー12が固定された支柱11cとを含む。
【0046】
走行部11にレール8を走行させながらブレード13を回転させることにより、桁上部分1bの側面を切削することができる。
【0047】
図5図8を参照して、合成桁の床版1の撤去工法を説明する。
【0048】
床版1に対して、非桁上部分1aを撤去するべく、非桁上部分1aを仮設部材16で支持した状態で、作業員は、コンクリートカッター等の切断装置(図示せず)を用いて非桁上部分1aと桁上部分1bとの境界1cを橋軸方向に沿って鉛直切断する(図5)。また、必要に応じて、床版1をクレーン(図示せず)により荷揚げ可能な重量、かつトラック等の運搬機械(図示せず)により運搬可能な重量及び大きさに分割するべく、切断装置を用いて床版1を橋幅方向に沿って鉛直切断する。非桁上部分1aと桁上部分1bとの境界1cは、鋼桁2の上フランジ2aの橋幅方向の外縁に又は外縁よりもわずかに外側に設定される。クレーンの吊り上げ能力や運搬機械への積載の仕方等に応じて、非桁上部分1aと桁上部分1bとの境界1cに加えて、非桁上部分1aの橋幅方向の中間部の1ヵ所以上を橋軸方向に鉛直切断してもよい。
【0049】
作業員は、分割された非桁上部分1aを、クレーンにて吊り上げ、運搬機械に載せて搬出する。鋼桁2上には、桁上部分1bが残される(図6)。装置3が桁上部分1bに設置される(図2参照)。
【0050】
回転しながら橋軸方向に移動するブレード13(図4参照)によって桁上部分1bは橋幅方向の両側面から切削され、桁上部分1bの下端近傍に切削溝17が形成される(図7)。このとき、ずれ止め4は、ブレード13によって切断される。両側面に形成された切削溝17は、互いに同じ高さに位置する。桁上部分1bの2つの切削溝17と同じ高さの部分における2つの切削溝17の間には、橋幅方向に切削されていない非切削区間18が残る。非切削区間18は、ずれ止め4が上下に延在しておらず、桁上部分1b及び装置3の重量によって破壊しない程度の幅を有する。非切削区間18は、桁上部分1bの中央に位置することが好ましいが、中央からずれていてもよい。ブレード13による切削溝17の形成は、乾式でもよく、湿式でもよい。
【0051】
次に、作業員は、桁上部分1bの切削溝17よりも上方の部分1dに吊り具19を固定し、吊り具19をクレーンに連結する。その後、切削溝17に小型ジャッキ(図示せず)等を挿入して、非切削区間18に上下方向に引張力を加えることにより、又は、一方の切削溝17にくさびを打ち込んでモーメントを与えて非切削区間18に上下方向に引張力を加えることにより、非切削区間18にひび割れを生じさせ、切削溝17よりも上方の部分1dを下方の部分1eから剥離する(図8)。従って、上記の切削溝17を形成する段階において、非切削区間18が小型ジャッキやくさびによってひび割れを生じさせることができる程度の幅になるように非切削区間18を形成する必要がある。吊り具19として、レールユニット5を転用してもよく、この場合、レールユニット5はボルト等によって桁上部分1bにおける切削溝17よりも上方の部分1dに固定される。
【0052】
桁上部分1bにおける切削溝17よりも上方の部分1dをクレーンにて吊り上げ、運搬機械に載せて搬出する。
【0053】
ショットブラスト装置等により、桁上部分1bにおける切削溝17よりも下方の部分1eのコンクリートを除去し、切断されたずれ止め4を除去するとともに、新たなずれ止め4を上フランジ2aの上面に取り付ける。下方の部分1eが薄い場合、例えば、30mm以下の場合、下方の部分1eのコンクリートの除去を省略してもよい。
【0054】
上フランジ2a及びずれ止め4の防錆処理を行い、新たな床版を構築する。
【0055】
第1実施形態の作用効果について説明する。
【0056】
コンクリートカッター6で切削し、小型ジャッキで桁上部分1bの上方の部分1dを下方の部分1eから分離するため、ウォータージェット工法で桁上部分1bを破壊する場合に比べて工期を短縮できる。
【0057】
非切削区間18が桁上部分1bの落下防止構造となるため、桁上部分1bの切削中に桁上部分1bを仮固定する仮設材を設ける必要がなく、施工の安全性を確保し、仮設費を削減でき、工期を短縮できる。切削溝17を桁上部分1bの橋幅方向の両側面から設けることにより、片方の側面のみに切削溝17を設けた場合に比べて、各々の切削溝17の深さが浅くなり、ブレード13の表面とコンクリートとの摩擦が低減され、切削効率の低下を抑制できる。
【0058】
レール8を使用するため、桁上部分1bの上面に凹凸があっても、桁上部分1bの上面と切削溝17との間の上下方向距離を一定に保つことができ、鋼桁2の上フランジ2aに接触しないように、切削位置を鋼桁2の上フランジ2aに近づけて精度よく切削溝17を形成することができる。
【0059】
互いに橋軸方向に連結及び分離可能な2つ以上のレールユニット5を用いて、桁上部分1bの切削が終わった区間に取り付けられているレールユニット5を取り外した後、取り外したレールユニット5を設置済みのレールユニット5における橋軸方向の反対側に連結するように、その後に切削されるべき区間に再設置することにより、必要なレール8の総延長に対して、実際に使用するレールユニット5のレール8の実延長を短くすることができる。
【0060】
レールユニット5のフレーム7が、横断面視でコ字形状をなし、桁上部分1bの上面及び橋幅方向の両側面に当接させる構造であるため、フレーム7の取り付けが容易である。また、フレーム7が橋幅方向に分割された1対のフレーム部材9から構成されるため、1対のフレーム部材9の互いの間の橋幅方向の距離を調整することにより、レールユニット5は、桁上部分1bの幅が異なる他の鋼桁2や、他の橋梁の床版1の撤去に再利用できる。
【0061】
フレーム7が横断面視でコ字形状をなし桁上部分1bの両側面に当接しているため、切削溝17を形成する際のブレード13に対する橋幅方向の反力を得ることができる。また、フレーム7と桁上部分1bとの互いの摩擦力によって、切削溝17を形成する際のブレード13に対する橋軸方向の反力を得ることができる。橋軸方向の反力が足りない場合は、フレーム7をボルト等の締結具や万力等により桁上部分1bに固定して、必要な反力を得ることができる。
【0062】
次に図9を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。第2変形例にかかる装置3は、各々のレール8に対してコンクリートカッター6が2つ取り付けられている(図9(B)では、ブレード13以外の装置3の図示を省略している)。
【0063】
進行方向の前方に位置するコンクリートカッター6には、第1ブレード13aが設けられており、進行方向の後方に位置するコンクリートカッター6には、第1ブレード13aと略同じ上下方向位置に、第1ブレード13aよりも薄い第2ブレード13bが設けられている。第2ブレード13bは、第1ブレード13aよりも大きい半径を有することが好ましく、第2ブレード13bの橋幅方向の内側の端縁は、第1ブレード13aの橋幅方向の内側の端縁よりも内側に位置する。
【0064】
切削溝17は、第1ブレード13aによって形成される第1切削溝17aと、第2ブレード13bによって形成される第2切削溝17bとを含む。作業員は、第1ブレード13aによって橋幅方向の側面から桁上部分1bにおけるずれ止め4よりも橋幅方向の外側に位置する部分を切削して第1切削溝17aを形成する。その後、第2ブレード13bによって、非切削区間18が残り、かつずれ止め4を切断するように、第1切削溝17aの底面から桁上部分1bを切削して第2切削溝17bを形成する。厚い第1ブレード13aによって浅い第1切削溝17aを形成した後、薄い第2ブレード13bによって深い第2切削溝17bを形成することにより、ブレード13と桁上部分1bのコンクリートとの接触による摩擦抵抗を抑制し、切削効率の低下を抑制することができる。
【0065】
次に図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0066】
合成桁の床版1を撤去するための装置21は、鋼桁2に取り付けられたレールユニット22と、レールユニット22を走行可能なコンクリートカッター23とを備える。鋼桁2は、横断面視でI字方をなし、ウェブ2cと、ウェブ2cの上端に固定された上フランジ2aと、ウェブ2cの下端に固定された下フランジ2bとを含む。
【0067】
レールユニット22は、互いに隣り合う2つの鋼桁2の間に配置される。レールユニット22は、下端部において下フランジ2bに固定される少なくとも1対の支持部材24と、上フランジ2aと平行に1対の支持部材24間に架け渡された平行部材25と、平行部材25の上面に固定されて橋軸方向に延在するレール26とを含む。
【0068】
支持部材24は、互いに隣り合う鋼桁2の各々に対して橋軸方向に所定の間隔で複数配置される柱状の部材である。対をなす支持部材24の各々は、互いに隣り合う2つの鋼桁2の互いに対向する側に配置されて、下端部において下フランジ2bの上面にボルト及びナットやクランプ等の固定具(図示せず)により固定される。支持部材24として、複数対の柱状の部材に代えて、1対又は複数対の橋幅方向に直交して橋軸方向に延在する板状の部材を使用してもよい。
【0069】
平行部材25は、橋幅方向の両端部において支持部材24の上端部に固定された板状の部材である。平行部材25として、板状の部材に代えて、橋軸方向に所定の間隔で配置された複数の橋幅方向の両端部が支持部材24に固定された梁状の部材を使用してもよい。
【0070】
レール26は、溶接や締結具によって平行部材25の上面に固定されて橋軸方向に延在する。従って、レール26は、鋼桁2と平行である。レール26は、1対の鋼桁2上の桁上部分1bに対応するように2組設けられる。
【0071】
コンクリートカッター23は、各組のレール26に対して取り付けられ、レール8を走行する走行部27と、走行部27に固定されたブレードカバー12と、橋幅方向の外側がブレードカバー12内に収容されてブレードカバー12に回転可能に支持されたブレード13とを含む。なお、図10においては図示を省略するが、コンクリートカッター23は、第1実施形態のコンクリートカッター6と同様に、ブレード13の橋幅方向の位置を変更するためのハンドル14と、ブレード13を回転させるためのモーター15とを更に含み(図2参照)、走行部27は、互いの取り付ける向きは異なるが、第1実施形態の走行部11の車輪11a、ブロック11b及び支柱11c(図2参照)に相当する構成を含む。
【0072】
第2実施形態に係る装置21を用いた合成桁の床版1の撤去工法について説明する。
【0073】
作業員は、鋼桁2の下フランジ2bの上面に支持部材24及び平行部材25を組み立て、平行部材25の上面にレール26を設置する。次に、作業員は、レール26にコンクリートカッター23を設置する。
【0074】
回転しながら橋軸方向に移動するブレード13によって桁上部分1bは橋幅方向の片側から切削され、桁上部分1bの下端近傍に切削溝17が形成される。このとき、ずれ止め4は、ブレード13によって切断される。桁上部分1bにおける橋幅方向の反対側には、非切削区間18が残る。非切削区間18は、ずれ止め4が上下に延在しておらず、桁上部分1b及び装置3の重量によって破壊しない程度の幅を有する。
【0075】
次に、作業員は、小型ジャッキやくさび(図示せず)により、非切削区間18に上下方向に引張力を加えることによって、非切削区間18にひび割れを生じさせ、桁上部分1bを上下に分離させる。その後、クレーン等にて、分離した床版1の上部を撤去し、運搬機械に載せて搬出する。分離した床版1を比較的小型のクレーンで吊り上げ可能にするためや、分離した床版1を運搬しやすい大きさにするため、切削溝17を形成する前、又は後に、作業員は、コンクリートカッター等の切断装置(図示せず)を用いて非桁上部分1aと桁上部分1bとを互いに分離させ、これらを別々にクレーン等にて撤去してもよい。その後、作業員は、第1実施形態と同様の処理を行う。
【0076】
第2実施形態は、コンクリートカッター23で切削することによる工期短縮、非切削区間18が落下防止構造となること、レール26を使用することによる切削溝17の形成の精度向上等の作用効果を有する点では、第1実施形態と同様である。レールユニット22が、上フランジ2a及び下フランジ2b間に収まる大きさになる。
【0077】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1実施形態及びその変形例においてコンクリートカッターを桁上部分の側面の一方にのみ配置し、切削溝を一方の側面のみから形成し、被切削区間を他方の側面の側の端部に設けてもよい。固定部は、ボルト及びナットによる締結ではなく、他の固定手段を使用すること、例えば、万力で2つの立壁を挟むこと等によって互いに固定されてもよい。第2実施形態に、第1実施形態の第1変形例のレールユニット、並びに/又は、第2変形例の第1ブレード及び第2ブレードを適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:合成桁の床版
1a:非桁上部分
1b:桁上部分
2:鋼桁
2a:上フランジ
2b:下フランジ
2c:ウェブ
3,21,103:装置
4:ずれ止め
5,22,105:レールユニット
6,23:コンクリートカッター
7,107:フレーム
8,24:レール
9,109:フレーム部材
9a,109a:上壁
9b,109b:側壁
10,110:固定部
11:走行部
13:ブレード
13a:第1ブレード
13b:第2ブレード
17:切削溝
17a:第1切削溝
17b:第2切削溝
18:非切削区間
24:支持部材
25:平行部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10