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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】生物硝化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20240430BHJP
   C02F 3/08 20230101ALI20240430BHJP
   C02F 3/10 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/08 B
C02F3/10 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020150039
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044423
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】江田 庸宏
(72)【発明者】
【氏名】森川 政幸
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博也
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125555(JP,A)
【文献】特開平10-151495(JP,A)
【文献】特開平11-290882(JP,A)
【文献】特開平6-000490(JP,A)
【文献】特開2004-195333(JP,A)
【文献】特開2017-042714(JP,A)
【文献】特開平10-263560(JP,A)
【文献】特開2009-274020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
C02F1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル水槽を用いた地下水の生物硝化装置であって、
前記パネル水槽を槽本体に用いる生物硝化槽を備え、
前記生物硝化槽は、硝化細菌担持担体を用いて被処理水を生物処理する循環型流動槽であり、
前記生物硝化槽は、前記被処理水を生物処理した処理水を槽外に排出するための流出部を有し、
前記流出部に、筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが接続されていることを特徴とする、
生物硝化装置。
【請求項2】
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが、前記流出部に着脱可能に接続されている、請求項1に記載の生物硝化装置。
【請求項3】
前記パネル水槽は上部マンホールを有し、
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが前記上部マンホールの下方に配置されている、請求項1又は2に記載の生物硝化装置。
【請求項4】
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが、前記生物硝化槽内の前記被処理水の循環型流動の上昇流部又は下降流部に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の生物硝化装置。
【請求項5】
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが持ち部及びガイド部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の生物硝化装置。
【請求項6】
前記硝化細菌担持担体は、一辺の長さが3~10mmの角型スポンジ状担体に硝化細菌を担持させた担体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の生物硝化装置。
【請求項7】
前記硝化細菌担持担体の嵩体積が、前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の生物硝化装置。
【請求項8】
前記流出部が、前記パネル水槽の側壁に設けられた管座取付け部と、前記管座取付け部から前記生物硝化槽内の上方に向けて立ち上がる内部排出管と、前記管座取付け部から前記生物硝化槽外の上方に向けて立ち上がる外部排出管とを含み、
前記内部排出管の前記管座取付け部とは反対側の端部に前記ウェッジワイヤー・スクリーンが取り付けられ、
前記内部排出管の底部と前記外部排出管の底部とは前記管座取付け部を介して、又は経由して、連絡し、前記内部排出管と前記外部排出管とによってU字管を形成している、
請求項1~7のいずれか1項に記載の生物硝化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物硝化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水はアンモニア態窒素を含む場合がある。飲料水中に含まれるアンモニア態窒素は、有機物が腐敗・分解する初期の段階で発生するため、汚染指標として扱われてきた。しかし、水質基準に関する省令(昭和53年厚生省令第56号)から削除され、現在の水道水質基準51項目(水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号、平成26年改正))には該当していない。
地下水を飲用として用いる場合、塩素消毒が必須である。地下水がアンモニア態窒素を含むと、アンモニア態窒素に対して8倍から10倍の塩素を消費するだけでなく、塩素濃度管理が難しいことから、塩素消毒の前工程でアンモニア態窒素を除去する処理が一般的となっている。
アンモニア態窒素の除去方法については、アンモニアと塩素との反応から、アンモニア態窒素濃度に対して8倍から10倍以上の塩素を添加して、アンモニア態窒素を窒素ガスとして除去するブレークポイント法が一般的である。しかし、多量の塩素を必要として、処理コストが高いという欠点がある。また、アンモニア態窒素の濃度が高い地下水にはフミン質等の天然有機物の濃度が高いことから、これらの天然有機物と塩素との反応により生成されるトリハロメタン等の消毒副生成物の濃度が高くなるリスクが大きい。
また、物理化学的なアンモニア態窒素の処理方法としては、イオン交換樹脂による除去法がある。最もコストが安い方法としては、生物学的硝化(アンモニア態窒素を除去する方法ではないが生物学的酸化反応によりアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する反応)又は硝化脱窒方法がある。
【0003】
上水処理の分野で生物学的硝化(すなわち生物硝化)が生じることが知られたのは、古くは緩速ろ過の時代からである。緩速ろ過は、珪砂をろ材としてろ過速度4~5m/日の緩やかな速度で下降流ろ過する方式で、1829年英国で考案され、ヨーロッパをはじめとして全世界に普及した。
日本で初めて近代上水施設が導入された京都市の蹴上浄水場では、英国式緩速ろ過装置が採用された。この緩速ろ過装置は、ろ材表面に付着生息する微生物や藻類が原水中の懸濁物や病原菌を含む微生物を付着させてろ過する方式であり、シンプルかつ高性能なろ過装置であった。さらに、原水中にアンモニアが存在すると、硝化細菌が生育し、ろ過作用に加えて生物硝化反応も同時に生じ、より安定的な浄水を生産できるというメリットもあった。しかし、アンモニア態窒素が2mg/Lもの高濃度で存在すると、溶存酸素(DO)を約8mg/L消費し、原水中の溶存酸素の全量を消費してしまい、処理水を嫌気化させて腐敗化させ、不衛生な浄水となるデメリットもあった。戦後の高度化社会となって公害が生じる中、河川中のアンモニア態窒素が2mg/Lを超える環境となり、緩速ろ過が米国式急速ろ過に置き換わった歴史がある。
【0004】
しかし、酸素供給手段と硝化細菌を保持する手段とを講ずれば、安価に生物硝化できることから、各種の生物硝化装置が考案され実用化されている。
特許文献1には、ろ材が粒状ゼオライトであり、酸素供給手段がろ層上部の曝気手段である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献1には、ろ材がアンスラサイトと珪砂であり、酸素供給手段が原水貯槽における曝気手段である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献2には、ろ材がアンスラサイトと珪砂であり、酸素供給手段がろ層上部の気液エゼクターによる気液接触槽である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献3には、ろ材が直径5~7mmの球状繊維ろ材であり、酸素供給手段として充填材式気曝装置を原水貯槽に設けている。
非特許文献4には、ろ材が特殊焼結多孔ろ材であり、酸素供給手段として充填材式気曝装置を原水貯槽に設けている。
なお、特許文献1及び非特許文献1~3に記載された生物硝化装置は下降流ろ過装置であり、非特許文献4に記載された生物硝化装置は上向流ろ過装置である。
上記のような公知例では、装置新設時に積極的な硝化細菌の接種又は硝化細菌を付着したろ材の添加は行われておらず、試運転時に原水及び大気中に浮遊存在する硝化細菌がろ材表面で付着増殖するのを待つものであり、生物硝化処理が可能になるまで、概ね1ヵ月を要するものであった。
【0005】
このような中、本特許出願人は、硝化細菌を担持しやすい紐状繊維を複数本、躯体に固定した生物接触担体を水槽内に浸漬し、水槽を曝気することで生物硝化を促進する装置に係る発明を出願、権利化している(特許文献2)。
【0006】
また、本発明者らは、硝化効率の低下を十分に抑えつつ、硝化細菌担持担体を硝化槽から抜き出すことができる方法として、硝化細菌担持担体200が抜き出し可能な状態で充填された第1の硝化槽10においてアンモニア性窒素を含む被処理水を処理して第1の処理水とし、硝化細菌担持担体200が充填された第2の硝化槽20において第1の処理水を処理して第2の処理水とし、第2の処理水のアンモニア濃度又はアンモニア性窒素濃度を測定し、第1の硝化槽10から硝化細菌担持担体200を抜き出すときには、アンモニア濃度又はアンモニア性窒素濃度があらかじめ設定された閾値以下になった状態があらかじめ設定された時間以上持続した状態において、第1の硝化槽10に充填された硝化細菌担持担体200の50体積%以下を第1の硝化槽10から抜き出すとともに、第1の硝化槽に硝化菌が担持されていない担体を補充する、水処理方法を発明している(特許文献3)。この方法では、第1の硝化槽10からの硝化細菌担持担体200の抜出しは、エアリフトポンプ60の揚水管61に送気管62を通じて圧力空気を導入することにより、第1の硝化槽10内の水密度と揚水管61内の水密度との差に基づき、揚水管61の水吐出管63を通じて、第1の硝化槽10内の被処理水を系外に排出することにより行われる。水流に同伴して、硝化細菌担持担体200はスラリー状となって排出されることになる。
【0007】
特許文献3に記載された水処理システム1(図1)は気液固の3相流動槽なので、固体、すなわち硝化細菌担持担体200を分離するための固液分離装置12を必要とする。硝化細菌担持担体200として3~5mm角の立方体状スポンジ担体に硝化細菌を担持したものを分離するには、図2に示すようなステンレス製・ウェッジワイヤー・スクリーン300が適している。ウェッジワイヤー・スクリーン300は、逆三角形の断面形状をしたワイヤーであるウェッジワイヤー301をサポート・ロッド302上に等間隔に並べて溶接することによりスリットを形成した、目詰まりが少なく、強靭で高精度であるという特徴を有するスクリーンである。ウェッジワイヤー301の逆三角形の形状は、固形物が通過する際、接触点が小さくスリットが末広がりになっているおかげで、固形物が詰まりにくく、仮に詰まっても逆洗効果が高いため、メンテナンス性も優れている。ウェッジワイヤー・スクリーン300の材質としては、強度及び耐久性に優れ、ランニングコストを低減できることから、ステンレス鋼が標準的である。
一般的に、水処理プラントに用いられる水槽は、処理容量が大きいため、強化コンクリート(RC,Reinforced Concrete)製の水槽が用いられてきた。処理容量が小さい小規模な水処理プラントの場合には、鋼板製の水槽が用いられることもある。
RC製又は鋼板製の水槽に図2に示すようなウェッジワイヤー・スクリーンを取り付けるには、図1に示す破線斜線(固液分離装置12)のように処理水の出口を仕切る形で取り付けることが多い。水槽の壁面とウェッジワイヤー・スクリーン300とのシール性には、分離する固体が3~5mm角の立方体形状であるので、壁面にスライド溝状の隙間を形成するような方式が好ましい。ウェッジワイヤー・スクリーンをスライド溝状の隙間に挿入するには、ウェッジワイヤー・スクリーン本体304a(304b)の四方に額縁上のサポート部材305a(305b)を溶接したサポート部材付きウェッジワイヤー・スクリーン303a(303b)に加工することが好ましい(図3)。ただし、スクリーン面積が大きくなると、その荷重も大きくなり、スライド溝状の隙間を形成する溝及び取付強度に留意する必要がある。従来の水処理プラントで使用する水槽はRC製又は鋼板製であり、アンカーボルトや溶接加工により十分な強度を与えることができる利点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-059705号公報
【文献】特許第6414394号公報
【文献】特開2017-202473号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】神鋼パンテック技報、神鋼パンテック株式会社、2002年、第45巻、第2号、p.16-24
【文献】“地下水を原水とする超高速無薬注生物処理装置”、ユーザーのための凝集・沈降/浮上分離・粒状層ろ過事例集、日本液体清澄化技術工業会、2001年、p.64-67
【文献】黒木省三、杉澤滋;環境技術、2001年、第30巻、第12号、p.18-22
【文献】地下水アンモニア低減システム、株式会社トーケミ、[令和2年8月7日検索]、インターネットURL https://www.tohkemy.co.jp/products/actysomonasu/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アンモニア態窒素を含む地下水を飲用化するための水処理装置においては、水道法(昭和32年法律第177号)に基づく受水槽に給水するまでの水処理プラントの各水槽も受水槽に準じることが要求され、水槽の六面点検が可能であることが必須となっている。このため、RC製の地下設置型水槽では底面の点検ができず、陸上型の水槽を用いることが求められている。現在、一般的に普及している受水槽はFRP製又はステンレス製のパネル水槽である。これらのFRPパネル製水槽及びステンレス製水槽は、通常、プレハブ構造であり、支柱のような補強材の使用を可能な限り抑えて、ユニット状パネルだけで耐圧性及び耐水性を担保している。このため、図4に示すように、パネル部材は、図4に示すように凹凸構造を持ち、貯水した水の水圧を分散させる形状となっている。また、マンホールは法令で定められている直径600mm規模と、小規模なユニット状パネル構造となっている。また、受水槽への配管取付けは、基本的には、給水と排水管と接続することを前提としているため、配管取付け座となる平面部分も狭く、最大200mm程度の配管を取り付けることしかできない。また、それらの配管取付け用平面部分は、ユニット状パネルの特定の部分に制約されている。
パネル水槽の配管取付け座から水平に配管を貫通させて、端部をTSフランジに接続加工して円形スクリーンをボルト締めする構造では、生物接触担体を固液分離する機能を付与できないという、課題を有していた。仮に水槽1面の4カ所の平面部分に管座を設けるとすれば、取付配管が複雑となるという課題を有している。
このような事情から、パネル水槽を用いた生物硝化装置では、ウェッジワイヤー・スクリーンのスクリーン面積の拡大に制約があり、通水量を向上させることが困難であった。
【0011】
本発明は、パネル水槽を用いた生物硝化装置において、固液分離装置の通水量が向上した生物硝化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] パネル水槽を用いた地下水の生物硝化装置であって、
前記パネル水槽を槽本体に用いる生物硝化槽を備え、
前記生物硝化槽は、硝化細菌担持担体を用いて被処理水を生物処理する循環型流動槽であり、
前記生物硝化槽は、前記被処理水を生物処理した処理水を槽外に排出するための流出部を有し、
前記流出部に、筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが接続されていることを特徴とする、
生物硝化装置。
[2] 前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが、前記流出部に着脱可能に接続されている、[1]に記載の生物硝化装置。
[3] 前記パネル水槽は上部マンホールを有し、
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが前記上部マンホールの下方に配置されている、[1]又は[2]に記載の生物硝化装置。
[4] 前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが、前記生物硝化槽内の前記被処理水の循環型流動の上昇流部又は下降流部に配置されている、[1]~[3]のいずれかに記載の生物硝化装置。
[5] 前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが持ち部及びガイド部を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の生物硝化装置。
[6] 前記硝化細菌担持担体は、一辺の長さが3~10mmの角型スポンジ状担体に硝化細菌を担持させた担体である、[1]~[5]のいずれかに記載の生物硝化装置。
[7] 前記硝化細菌担持担体の嵩体積が、前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満である、[1]~[6]のいずれかに記載の生物硝化装置。
[8] 前記流出部が、前記パネル水槽の側壁に設けられた管座取付け部と、前記管座取付け部から前記生物硝化槽内の上方に向けて立ち上がる内部排出管と、前記管座取付け部から前記生物硝化槽外の上方に向けて立ち上がる外部排出管とを含み、
前記内部排出管の前記管座取付け部とは反対側の端部に前記ウェッジワイヤー・スクリーンが取り付けられ、
前記内部排出管の底部と前記外部排出管の底部とは前記管座取付け部を介して、又は経由して、連絡し、前記内部排出管と前記外部排出管とによってU字管を形成している、
[1]~[7]のいずれかに記載の生物硝化装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パネル水槽を用いた生物硝化装置において、固液分離装置の通水量が向上した生物硝化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、特許文献3の水処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2図2は、ウェッジワイヤー・スクリーンの一例を示す図面代用写真である。
図3図3は、サポート部材付きウェッジワイヤー・スクリーンの一例を示す概略構成図である。(A)角型サポート部材付きウェッジワイヤー・スクリーン、(B)丸型サポート部材付きウェッジワイヤー・スクリーン。
図4図4は、パネル水槽のパネル部材の一例を示す概略構成図である。(A)正面図、(B)側面図。
図5図5は、本発明の生物硝化装置の一例を示す概略構成図である。
図6図6は、本発明の生物硝化装置における固液分離装置、内部排出管及び管座取付け部を示す概略構成図である。
図7図7は、本発明の生物硝化装置におけるウェッジワイヤー・スクリーンを示す概略構成図である。
図8図8は、本発明の生物硝化装置におけるウェッジワイヤー・スクリーンを示す図面代用写真である。(A)生物硝化槽内からウェッジワイヤー・スクリーンを斜め上方に見た写真、(B)マンホールから生物硝化槽内のウェッジワイヤー・スクリーンをのぞき込んで見た写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、その両端の数値をその数値範囲に含む。
本発明において、「A又はB」とは、AとBのうちいずれか一方を意味する。
本発明において、気体の体積は、0℃、101.325kPaにおける体積である。
本発明において、「パネル水槽」とは、複数の多角形のパネル(薄板パネル等)を液密に接合した貯水槽を意味する。
本発明において、「アンモニア態窒素」とは、水中においてアンモニア(分子)の形態で存在する窒素及びアンモニウムイオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「硝酸態窒素」とは、水中において硝酸イオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「亜硝酸態窒素」とは、亜硝酸イオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「担体」とは、微生物を担持するための基材を意味する。特に、生物硝化処理に用いる硝化細菌を担持した担体を「硝化細菌担持担体」という。
【0016】
〈生物硝化装置〉
以下では、本発明の生物硝化装置の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明は後述する実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示す場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なるときがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例に過ぎない。
【0017】
図5は、直列に接続された2つの生物硝化槽を備える生物硝化装置例を示す概略構成図である。
生物硝化装置402は、被処理水供給流路500を通って原水貯槽(図示略)から供給された被処理水を曝気して前曝気処理水とする前曝気槽410と、前曝気処理水移送流路501を通って前曝気槽410から移送された前曝気処理水を処理して第1の処理水とする第1の生物硝化槽420と、第1の処理水移送流路502を通って第1の生物硝化槽420から移送された第1の処理水を処理して第2の処理水とする第2の生物硝化槽430と、被処理水供給流路500の途中に設けられた移送ポンプ461と、被処理水供給流路500の途中に設けられ、前曝気槽410に供給される被処理水の水量を測定する水流量測定装置462と、後述する曝気装置のブロワ及び空気量調整手段、移送ポンプ461、水流量測定装置462に電気的に接続された制御装置(図示略)とを備える。
前曝気槽410を省略して原水である被処理水が第1の生物硝化槽420に直接流入するようにしてもよい。
【0018】
(被処理水)
被処理水は、アンモニア態窒素を含む地下水である。
【0019】
(前曝気槽)
前曝気槽410は、パネル水槽である槽本体411と、槽本体411の底部に送入された曝気装置413とを備える。
パネル水槽である槽本体411は上部マンホールを有することが好ましい。
【0020】
前曝気槽410に接続された被処理水供給流路500の途中に設けられた移送ポンプ461及び水流量測定装置40によって、前曝気槽410に流入する被処理水の流量が制御される。すなわち、生物硝化装置402では、移送ポンプ461及び水流量測定装置40と、これらに電気的に接続された制御装置(図示略)とは、前曝気槽410における被処理水の滞留時間を制御する制御機構を構成する。
水流量測定装置40としては、例えば、ローターメータ又は電磁流量計が挙げられる。
生物硝化装置402において、前記制御機構により、被処理水の滞留時間が制御される。
【0021】
曝気装置413は、槽本体411の底部に位置する散気部414と、散気部414に空気を供給する空気供給部415と、空気供給部415の途中に設けられた空気量調整手段417とを備える。
散気部414としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管又は散気筒が挙げられる。
空気量調整手段417としては、例えば、ゲート弁又はバタフライ弁が挙げられる。
前曝気槽410における曝気量は、特に限定されない。
【0022】
(第1の生物硝化槽)
第1の生物硝化槽420は、パネル水槽である槽本体421と、硝化細菌担持担体600と第1の処理水とを分離するための固液分離装置422と、固液分離装置422が一端に接続された内部排出管428と、内部排出管428の他端が接続される管座取付け部429と、槽本体421の底部に送入された曝気装置423とを備える、いわゆる流動床型生物硝化槽である。
パネル水槽である槽本体421は上部マンホールを有することが好ましい。
【0023】
曝気装置423は、槽本体421の底部に位置する散気部424と、散気部424に空気を供給する空気供給部425と、空気供給部425の途中に設けられたブロワ426と、散気部424とブロワ426との間の空気供給部425の途中に設けられた空気量調整手段427とを備える。
散気部424としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管及び散気筒が挙げられる。
空気量調整手段427としては、例えば、ゲート弁及びバタフライ弁が挙げられる。
第1の生物硝化槽420における曝気量は、特に限定されない。
【0024】
内部排出管428は、管座取付け部429から第1の生物硝化槽420の被処理水中に延びており、管座取付け部429とは反対側の端に固液分離装置422が取り付けられている(図6)。
内部排出管は、管座取付け部429から第1の生物硝化槽420の被処理水中に立ち上がることが好ましい。
【0025】
(第2の生物硝化槽)
第2の生物硝化槽430は、パネル水槽である槽本体431と、硝化細菌担持担体700と第2の処理水とを分離するための固液分離装置432と、固液分離装置432が一端に接続された内部排出管438と、内部排出管438の他端が接続される管座取付け部439と、管座取付け部439に一端が接続された外部排出管503と、槽本体431の底部に送入された曝気装置433とを備える、いわゆる流動床型生物硝化槽である。
パネル水槽である槽本体431は、上部マンホールを有することが好ましい。
【0026】
曝気装置433は、槽本体431の底部に位置する散気部434と、散気部434に空気を供給する空気供給部35と、空気供給部35の途中に設けられたブロワ436と、散気部434とブロワ436との間の空気供給部35の途中に設けられた空気量調整手段437とを備える。
散気部434としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管及び散気筒が挙げられる。
空気量調整手段437としては、例えば、ゲート弁及びバタフライ弁が挙げられる。
第2の生物硝化槽430における曝気量は、特に限定されない。
【0027】
内部排出管438は、管座取付け部429から第2の生物硝化槽430の被処理水中に延びており、管座取付け部439とは反対側の端に固液分離装置432が取り付けられている(図6)。
内部排出管438の底部と外部排出管503の底部とは管座取付け部を介して、又は経由して、連絡し、内部排出管438と外部排出管503とによってU字管を形成することが好ましい。
【0028】
(制御装置)
制御装置は、インターフェイス部(図示略)、記憶部(図示略)、処理部(図示略)、判定部(図示略)、制御部(図示略)等を備える。
【0029】
インターフェイス部は、曝気装置のブロワ及び空気量調整手段、移送ポンプ461、水流量測定装置462等と制御部との間を電気的に接続するものである。
【0030】
記憶部は、生物硝化装置402の運転条件等を記憶するものである。
処理部は、水流量測定装置462で測定された被処理水の水量から前曝気槽410での被処理水の滞留時間の算出等の演算を行うものである。
判定部は、処理部で算出された前曝気槽410での被処理水の滞留時間があらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された範囲内であるか否かの判定等を行うものである。
制御部は、判定部における判定結果、記憶部に記憶された生物硝化装置402の運転条件等に基づいて、生物硝化装置402の制御を行うものである。例えば、あらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された被処理水の水量に基づいて移送ポンプ461を制御したり、あらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された空気量に基づいて曝気装置413(423)のブロワ416(426)及び空気量調整手段417(427)を制御したりするものである。
【0031】
処理部、判定部及び制御部は、専用のハードウエアによって実現されるものであってもよく、メモリ及び中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部、判定部及び制御部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによってその機能を実現させるものであってもよい。
制御装置には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されていてもよい。入力装置としては、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスが挙げられ、表示装置としては、液晶表示装置、CRT等が挙げられる。
【0032】
(硝化細菌担持担体)
生物硝化装置402における硝化細菌担持担体600及び硝化細菌担持担体700は、担体の表面に硝化細菌が担持されたものである。担体が多孔質である場合は、担体の内部(孔内)に硝化細菌が担持されていてもよい。
【0033】
前記担体の形状は、特に限定されないが、例えば、直方体(立方体を含む)、球体、筒体及び糸状体からなる群から選択される少なくとも1種である。前記担体として、2種以上の形状のものを併用してもよい。また、前記担体の形状が直方体又は筒体である場合、角が欠けていたり、丸みを持っていたりしてもよい。また、前記担体の形状が球体である場合、真球体でなくてもよい。前記担体の形状は、角型、すなわち、略直方体が好ましい。ここで、略直方体とは、全ての面が長方形(正方形を含む)からなる六面体に限定されず、基本的に6つの面で構成された六面体であり、角の欠けた形状や、角に丸みを持たせた形状であってもよい。前記担体の形状が角型である場合、一辺の長さは、特に限定されないが、3~10mmが好ましく、3~7mmがより好ましく、3~5mmがさらに好ましい。角型担体の一辺の長さが3~10mmであると、担体の質量あたりの表面積をより大きくすることができ、硝化細菌の担持量をより多くすることができるので、硝化性能をより向上できる。
【0034】
前記担体としては、担体の表面及び内部に硝化細菌を担持できることから、多孔質のものが好ましい。多孔質担体であると、担体の表面のみならず内部にも硝化細菌を担持できるので、より多くの硝化細菌を担持でき、硝化性能がより向上する。
また、多孔質担体としては、硝化細菌の担持を良好に維持でき、かつポンプ及び配管の損傷を最小限に抑制できることから、スポンジ状担体がより好ましい。ここで、「スポンジ」とは、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかい物質を意味する。
スポンジ状担体の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレンゴム及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、耐久性が良好でることから、ポリウレタンが好ましい。前記スポンジ状担体の材料は2種以上を併用してもよい。
【0035】
第1の生物硝化槽420における硝化細菌担持担体600の嵩体積は、第1の生物硝化槽420の有効容積の60体積%未満が好ましい。
第2の生物硝化槽430における硝化細菌担持担体700の嵩体積は、第2の生物硝化槽430の有効容積の60体積%未満が好ましい。
第1の生物硝化槽420における硝化細菌担持担体600の嵩体積及び第2の生物硝化槽430における硝化細菌担持担体700の嵩体積の合計は、第1の生物硝化槽420の有効容積及び第2の生物硝化槽430の有効容積の合計の60体積%未満が好ましい。
第1の生物硝化槽420における硝化細菌担持担体600の嵩体積及び第2の生物硝化槽430における硝化細菌担持担体700の嵩体積が、第1の生物硝化槽420及び第2の生物硝化槽430のそれぞれの有効容積の60体積%未満であると、硝化細菌担持担体600、硝化細菌担持担体700がそれぞれの槽内を流動しやすく、硝化細菌の増殖に必要な酸素が硝化細菌に充分に供給されるので、硝化性能を向上しやすい。
【0036】
硝化細菌としては、アンモニア態窒素の生物硝化に用いられる公知の硝化細菌が挙げられる。硝化細菌とは、Nitrosomonas属細菌、Nitrosococcus属細菌及びNitrosospira属細菌等のアンモニア酸化細菌(亜硝酸生成細菌)並びにNitrobacter属細菌及びNitrospira属細菌等の亜硝酸酸化細菌(硝酸生成細菌)の総称である。硝化細菌は、通性好気化学合成独立栄養であり、アンモニア態窒素及び炭酸を基質とする。硝化細菌は炭酸を唯一の炭素源として増殖可能であるが、その増殖速度は極めて小さい。したがって、生物硝化反応を高く保持するためには、硝化細菌を槽内に大量に保持する操作が必要となる。そのため、硝化細菌を、浮遊菌体ではなく担体に担持した状態で保持することが好ましい。
硝化細菌の担体への担持方法としては、例えば、既存の水処理システムの硝化槽に担体を投入して、担体の表面等に硝化細菌を増殖させる方法が挙げられる。
【0037】
(固液分離装置)
生物硝化装置402における固液分離装置422(432)は、筒状のウェッジワイヤー・スクリーンである(図7)。
前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーン422は、生物硝化槽において処理した処理水を槽外に排出するための流出部に、好ましくは着脱可能に接続されている。
図7に示すウェッジワイヤー・スクリーン422は、ウェッジワイヤー・スクリーン本体422aはウェッジワイヤーが水平方向に、サポート・ロッドが垂直方向に配置されたものである。ウェッジワイヤーにより形成されるスリットは横方向に並んでいる。
筒状のウェッジワイヤー・スクリーンのスクリーン表面積は、例えば、直径250mm×長さ400mmで、300,000mm程度にもなり、従来のパネル部材に取り付ける平面型のウェッジワイヤー・スクリーンのスクリーン表面積の50,000mm程度と比べて圧倒的に大きなスクリーン面積を確保できる。
パネル水槽である生物硝化槽は、上部マンホールを有することが好ましく、上部マンホールの下方に前記筒状のウェッジワイヤー・スクリーンが配置されていることが好ましい。
ウェッジワイヤー・スクリーンは、ウェッジワイヤー・スクリーン本体422aに加えて、ガイド部422b、持ち部422cを有することが好ましい(図7)。
ガイド部422bがあると、内部排出管428にウェッジワイヤー・スクリーンを脱着しやすい。
持ち部422cがあると、パネル水槽の上部マンホールから、ウェッジワイヤー・スクリーンのメンテナンスをしやすくなる。
図8にウェッジワイヤー・スクリーンの使用中の状況を示す写真を挙げる。Aは、生物硝化槽内からウェッジワイヤー・スクリーンを斜め上方に見た写真であり、Bは、マンホールから生物硝化槽内のウェッジワイヤー・スクリーンをのぞき込んで見た写真である。
筒状のウェッジワイヤー・スクリーンの外径及び長さを任意に設定することによりスクリーン面積を任意に設定できる利点を有している。
筒状のスクリーン構造とすることにより、分離必要面積を十分大きく取れることにより、固液分離装置を1カ所に設定できることと、マンホールに位置した部分に、着脱可能な構造の固液分離機能を付与させることが可能となる。
また、この筒状のウェッジワイヤー・スクリーンを気液個3相流動層を構成する循環流動流れの上昇流部、又は下降流部に設置することで、スポンジ状担体がスクリーン表面に押し付けられて閉塞する現象を最小にすることができる。
筒状のウェッジワイヤー・スクリーンと連結される排出管はパネル水槽の菅座取付け部を介して外部の排出管とU字管構造として、排出管が満管状態に維持することにより、水槽内部の排出管に浮力を発生させず、菅座取付部に上向きの応力を発生させない構造とすることができる。
【0038】
〈生物硝化方法〉
生物硝化装置402を用いた生物硝化方法の一例について説明する。
【0039】
(前曝気処理)
被処理水供給流路500の途中に設けられた移送ポンプ461を稼働させて、被処理水を、原水貯槽(図示略)から被処理水供給流路500を通って前曝気槽410に供給し、被処理水を前曝気槽410に貯める。
被処理水は、アンモニア態窒素を含む地下水である。
【0040】
前曝気槽410に、被処理水の滞留時間が所定時間となるように、制御機構、すなわち、制御装置(図示略)に電気的に接続された移送ポンプ461及び水流量測定装置462によって水量を制御しながら、被処理水の供給を続ける。
【0041】
前曝気槽410に被処理水を供給しつつ、曝気装置413を駆動させて、散気部414から前曝気槽410内に空気をあらかじめ設定された空気量で散気する。
曝気装置413の散気部414から散気される空気量は、空気量調整手段417によって任意の空気量に調整(制御)できる。前記空気量(曝気量)は、槽あたり、20m/m/h以上になるように調整(制御)することが好ましい。
【0042】
(生物硝化処理)
前曝気槽410の被処理水を、前曝気処理水移送流路501を通って第1の生物硝化槽420に移送し、前曝気処理水を第1の生物硝化槽420に貯める。さらに、第1の生物硝化槽420の前曝気処理水を、第1の処理水移送流路502を通って第2の生物硝化槽430に移送し、第1の処理水を第2の生物硝化槽430に貯める。
【0043】
既存の生物硝化装置から抜き出された硝化細菌担持担体600を、生物硝化装置402の生物硝化槽420に、同様に既存の生物硝化装置から抜き出された硝化細菌担持担体700を第2の生物硝化槽430に投入する。
第1の生物硝化槽420における硝化細菌担持担体600の嵩体積は、第1の生物硝化槽420の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましい。
第2の生物硝化槽430における硝化細菌担持担体700の嵩体積は、第2の生物硝化槽430の有効容積の60体積%未満が好ましい。
第1の生物硝化槽420における硝化細菌担持担体600の嵩体積及び第2の生物硝化槽430における硝化細菌担持担体700の嵩体積の合計は、第1の生物硝化槽420の有効容積及び第2の生物硝化槽430の有効容積の合計の60体積%未満が好ましい。
【0044】
前曝気槽410から排出された前曝気処理水を、前曝気処理水移送流路501を通って第1の生物硝化槽420に移送しつつ、曝気装置423を駆動させて、散気部424から第1の生物硝化槽420内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第1の生物硝化槽420の底部から空気を散気すると、第1の生物硝化槽420内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第1の生物硝化槽420で硝化細菌担持担体600が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、特に限定されないが、0.1~0.5m/sが好ましい。
曝気装置423の散気部424から散気される空気量は、空気量調整手段427によって任意の空気量に調整(制御)できる。
【0045】
第1の生物硝化槽420から固液分離装置422を通って排出された第1の処理水を、第1の処理水移送流路502を通って第2の生物硝化槽430に移送しつつ、曝気装置433を駆動させて、散気部434から第2の生物硝化槽430内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第2の生物硝化槽430の底部から空気を散気すると、第2の生物硝化槽430内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第2の生物硝化槽430で硝化細菌担持担体600が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、特に限定されないが、0.1~0.5m/sが好ましい。
曝気装置433の散気部434から散気される空気量は、空気量調整手段437によって任意の空気量に調整(制御)できる。
【0046】
第1の生物硝化槽420においては、酸素を含む空気が曝気装置423の散気部424から供給される。第1の生物硝化槽420内に酸素が供給されると、前曝気処理水中のアンモニア態窒素は、第1の生物硝化槽420内で硝化細菌担持担体600の硝化細菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア態窒素を含む被処理水を生物硝化槽420で処理して第1の処理水とする。
第2の生物硝化槽430においては、酸素を含む空気が曝気装置433の散気部434から供給される。第2の生物硝化槽430内に酸素が供給されると、第1の処理水中のアンモニア態窒素は、第2の生物硝化槽430内で硝化細菌担持担体700の硝化細菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア態窒素を含む被処理水を第2の生物硝化槽430で処理して第2の処理水とする。
なお、アンモニア態窒素は、次式に示すように、2段階反応により生物硝化される。
(1) 2NH+3O → 2H+2NO +2H
(2) 2NO +O → 2NO
式(1)はアンモニア酸化細菌による反応であり、式(2)は亜硝酸酸化細菌による反応である。
式(1)と式(2)をまとめると、式(3)となる。
(3) 2NH+4O → 2H+2HO+2NO
すなわち、2モルのアンモニアと4モルの酸素とが反応して、2モルの硝酸イオンが生成する。
【0047】
第2の生物硝化槽430から固液分離装置432を通って排出された第2の処理水は、外部排出管503を通って生物硝化装置402の外部に排出される。
【0048】
[作用効果]
固液分離装置として筒状のウェッジワイヤー・スクリーンを採用したことにより、従来の平面状のウェッジワイヤー・スクリーンに比べてスクリーン面積を極めて大きくすることができ、通水量を著しく向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の生物硝化装置は、優れた硝化性能を発揮し、固液分離装置の通水量を大きくすることができることから、飲料水用の浄化処理施設において利用するのに適している。
【符号の説明】
【0050】
1…水処理システム、10…第1の硝化槽、11…槽本体、12…固液分離装置、13…散気装置、14…散気部、15…空気供給管、16…ブロア、17…空気量調整手段、20…第2の硝化槽、21…槽本体、22…固液分離装置、23…散気装置、24…散気部、25…空気供給管、26…ブロア、27…空気量調整手段、30…イオン交換装置、40…水流量測定装置、50…濃度測定装置、60…エアリフトポンプ、61…揚水管、62…送気管、63…水吐出管、100…被処理水供給流路、101…第1の処理水移送流路、102…第2の処理水移送流路、103…第3の処理水移送流路、104…迂回流路、200…硝化細菌担持担体、300…ウェッジワイヤー・スクリーン、301…ウェッジワイヤー、302…サポート・ロッド、303a,303b…サポート部材付きウェッジワイヤー・スクリーン、304a,304b…ウェッジワイヤー・スクリーン本体、305a,305b…サポート部材、306…パネル部材、307…平坦部、308…凹凸部、402…生物硝化装置、410…前曝気槽、411…槽本体、413…曝気装置、414…散気部、415…空気供給部、416…ブロワ、417…空気量調整手段、420…第1の生物硝化槽、421…槽本体、422…固液分離装置、422a…ウェッジワイヤー・スクリーン本体、422b…ガイド部、422c…持ち部、423…曝気装置、424…散気部、425…空気供給部、426…ブロワ、427…空気量調整手段、428…内部排出管、429…管座取付け部、430…第2の生物硝化槽、431…槽本体、432…固液分離装置、433…曝気装置、434…散気部、435…空気供給部、436…ブロワ、437…空気量調整手段、438…内部排出管、439…管座取付け部、461…移送ポンプ、462…水流量測定装置、500…被処理水供給流路、501…前曝気処理水移送流路、502…第1の処理水移送流路、503…外部排出管、600…硝化細菌担持担体、700…硝化細菌担持担体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8