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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240430BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240430BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240430BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240430BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240430BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240430BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240430BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240430BHJP
   H10B 43/40 20230101ALI20240430BHJP
【FI】
H01L29/78 301Y
H01L27/088 D
H01L27/088 E
H01L29/50 M
H01L29/78 371
H10B43/27
H10B43/40
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020152066
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046155
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 倫也
(72)【発明者】
【氏名】大島 康礼
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】山際 翔太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広翔
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0075399(US,A1)
【文献】特開2019-201040(JP,A)
【文献】特開2020-031170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0035549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28-21/288
H01L 21/329
H01L 21/336
H01L 21/44-21/445
H01L 21/8229
H01L 21/8239-21/8246
H01L 27/10-27/118
H01L 29/40-29/49
H01L 29/76
H01L 29/772
H01L 29/78
H01L 29/788-29/792
H01L 29/872
H10B 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面領域に設けられカーボン以外の不純物を含むソース層およびドレイン層と、前記ソース層と前記ドレイン層との間の前記基板上に設けられるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられるゲート電極と、前記ソース層または前記ドレイン層に対して前記基板の表面よりも下方に突出するように設けられるコンタクトプラグと、前記コンタクトプラグと前記ソース層または前記ドレイン層との間に設けられ、前記不純物およびカーボンの両方を含む第1エピタキシャル層と、を有するトランジスタと、を備え
前記トランジスタは、P型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、
前記不純物は、ボロンである、半導体装置。
【請求項2】
前記第1エピタキシャル層は、前記基板の表面よりも下方に突出した前記コンタクトプラグを覆うように配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1エピタキシャル層の幅は、前記コンタクトプラグの幅よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1エピタキシャル層の不純物濃度は、1×1021cm-3以上であり、カーボン濃度は、2×1020cm-3以上である、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板の表面領域に設けられカーボン以外の不純物を含むソース層およびドレイン層と、前記ソース層と前記ドレイン層との間の前記基板上に設けられるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられるゲート電極と、前記ソース層または前記ドレイン層に対して前記基板の表面よりも下方に突出するように設けられるコンタクトプラグと、前記コンタクトプラグと前記ソース層または前記ドレイン層との間に設けられ、前記不純物およびカーボンの両方を含む第1エピタキシャル層と、を有するトランジスタと、を備え、
前記トランジスタは、前記ソース層または前記ドレイン層と前記第1エピタキシャル層との間に設けられ、前記第1エピタキシャル層の第1材料とは異なる第2材料の第2エピタキシャル層をさらに有する、半導体装置。
【請求項6】
前記第2エピタキシャル層は、前記ソース層側の前記第2エピタキシャル層および前記ドレイン層側の前記第2エピタキシャル層が、前記ゲート電極の下方のチャネル領域を挟むように配置される、請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1材料は、Siであり、
前記第2材料は、SiGeである、請求項または請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記トランジスタの上方に設けられるメモリセルアレイをさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記トランジスタは、前記メモリセルアレイを制御する制御回路の一部である、請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
基板の表面領域にカーボン以外の不純物を導入してソース層およびドレイン層を形成するとともに、前記基板上のゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上のゲート電極を形成し、
前記ソース層または前記ドレイン層に、前記基板の表面から、前記基板の表面よりも低い第1所定位置まで達する第1ホールを形成し、
前記第1ホール内の前記ソース層または前記ドレイン層の上方に半導体結晶をエピタキシャル成長させて、前記不純物およびカーボンの両方がドープされた第1エピタキシャル層を形成し、
前記第1エピタキシャル層上に、前記第1所定位置よりも高く、かつ、前記基板の表面よりも低い第2所定位置から上方に伸びるコンタクトプラグを形成する、ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1ホールを形成する前に、前記ソース層または前記ドレイン層の前記基板上に絶縁層を形成するとともに、前記絶縁層を貫通して前記ソース層または前記ドレイン層に達する第2ホールを形成し、
前記ソース層または前記ドレイン層に、前記第1所定位置まで達し、かつ、前記第2ホールの径よりも大きい径を有する前記第1ホールを形成する、ことをさらに具備する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1エピタキシャル層は、前記不純物およびカーボンの両方をドープしながら半導体結晶をエピタキシャル成長させることによって形成される、請求項10または請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元的にメモリセルを配置して構成された立体型メモリセルアレイを有するNAND型フラッシュメモリが開発されている。このようなメモリ装置において、メモリセルアレイは、それを制御するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路の上方に設けられている場合がある。この場合、メモリセルアレイを形成する際の熱処理工程において、CMOS回路やコンタクトプラグに熱負荷がかかり、CMOSの電気的特性やコンタクト抵抗に悪影響を与える。例えば、P型MOSFET(MOS Field Effect Transistor)の拡散層には、ボロンが不純物として用いられる。コンタクト抵抗を抑制するために、コンタクトプラグと拡散層との接続部分にボロンを大量に注入することが考えられる。しかし、この場合、ボロンがチャネル部に拡散しやすくなり、短チャネル効果が発生しやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-151318号公報
【文献】米国特許公開第2019/0348434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンタクト抵抗を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置は、基板と、トランジスタと、を備える。トランジスタは、ソース層およびドレイン層と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、コンタクトプラグと、第1エピタキシャル層と、を有する。ソース層およびドレイン層は、基板の表面領域に設けられ不純物を含む。ゲート絶縁膜は、ソース層とドレイン層との間の基板上に設けられる。ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられる。コンタクトプラグは、ソース層またはドレイン層に対して基板の表面よりも下方に突出するように設けられる。第1エピタキシャル層は、コンタクトプラグとソース層またはドレイン層との間に設けられ、不純物およびカーボンの両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を示す図。
図2】導電膜が、複数のワード線及び層間の絶縁層を貫通する部分の拡大断面図。
図3】制御回路のP型MOSFETの構成例を示す概略断面図。
図4図3のエピタキシャル層の周辺の一例を示す拡大図。
図5】比較例によるP型MOSFETの構成例を示す概略断面図。
図6】比較例によるP型MOSFETの構成例を示す概略断面図。
図7】比較例によるP型MOSFETの構成例を示す概略断面図。
図8】比較例によるP型MOSFETの構成例を示す概略断面図。
図9】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図10図9に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図11図10に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図12図11に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図13図12に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図14図13に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
図15】第1実施形態によるコンタクトホールおよびホールの形状の一例を示す模式図。
図16】第2実施形態によるP型MOSFETの構成例を示す断面図。
図17】制御回路のN型MOSFETおよびP型MOSFETの構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、半導体基板の上下方向は、半導体素子が設けられる面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を示す図である。なお、図1においては、図を見易くするために、メモリホール113内に形成された絶縁膜以外の絶縁部分については図示を省略している。また、以下の実施形態では半導体としてシリコンを例示するが、シリコン以外の半導体を用いてもよい。
【0009】
また、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、半導体基板10の主面に対して平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向の双方に対して直交する方向をZ方向とする。複数のワード線WLはZ方向に積層されている。
【0010】
半導体基板10の表面領域には、メモリセルアレイMCAを制御する制御回路101が設けられている。制御回路101は、例えば、CMOS回路で構成されている。CMOS回路は、半導体基板10の表面領域に設けられたP型ウェルまたはN型ウェルに設けられていてもよい。制御回路101の上方には、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイMCAが設けられている。
【0011】
制御回路101の上方にあるポリシリコン層102上には、複数のNANDストリングNSが形成されている。具体的には、ポリシリコン層102上には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層110と、ワード線WLとして機能する複数の配線層111(ワード線WL0~WL7)と、セレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層112とが形成されている。
【0012】
配線層110は、例えば4層で形成され、複数のNANDストリングNSで共通のセレクトゲート線SGSに電気的に接続され、2つの選択トランジスタST2のゲート電極として機能する。
【0013】
配線層111は、例えば8層で形成され、層ごとに共通のワード線WLに電気的に接続されている。
【0014】
配線層112は、例えば4層で形成され、NANDストリングNSごとに対応するセレクトゲート線SGDに接続され、各々が1つの選択トランジスタST1のゲート電極として機能する。
【0015】
メモリホール113は、配線層110、111、112を貫通し、ポリシリコン層102に達するように形成されている。メモリホール113の側面には、ブロック絶縁層114、電荷蓄積膜115、及びゲート絶縁膜116が順に形成されている。メモリホール113内には、導電膜117が埋め込まれている。導電膜117は、NANDストリングNSの電流経路として機能する。導電膜117の上端には、ビット線BLとして機能する配線層118が形成されている。
【0016】
以上のように、ポリシリコン層102上には、選択トランジスタST2、複数のメモリセルトランジスタMT0~MT7、及び選択トランジスタST1が順に積層されており、1つのメモリホール113が、1つのNANDストリングNSに対応している。メモリセルトランジスタMT0~MT7は、導電膜117とワード線WL0~WL7との交差部分に対応して設けられている。
【0017】
以上の構成は、図1を記載した紙面の奥行き方向に複数配列されている。これにより、三次元的に配列されたメモリセルトランジスタを有するメモリセルアレイMCAが構成される。
【0018】
図2は、導電膜117が、複数のワード線WL及び層間の絶縁層25を貫通する部分の拡大断面図である。図2では、図1では省略した導電層WL間の絶縁層を絶縁層25として表している。
【0019】
各導電層WLと導電膜117との間には、導電層WL側から順にブロック絶縁層114、電荷蓄積膜115及びゲート絶縁膜116が設けられている。ブロック絶縁層114は導電層WLに接し、ゲート絶縁膜116は導電膜117に接し、ブロック絶縁層114とゲート絶縁膜116との間に電荷蓄積膜115が設けられている。
【0020】
導電膜117はチャネルとして機能し、導電層WLはコントロールゲートとして機能し、電荷蓄積膜115は導電膜117から注入される電荷を蓄積するデータ記憶層として機能する。すなわち、導電膜117と各導電層WLとの交差部分に、チャネルの周囲をコントロールゲートが囲んだ構造のメモリセルが形成されている。
【0021】
本実施形態に係る半導体装置は、データの消去・書き込みを電気的に自由に行うことができ、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。例えば、メモリセルはチャージトラップ構造のメモリセルである。電荷蓄積膜115は、電荷(電子)を閉じこめるトラップを多数有し、例えばシリコン窒化膜である。ゲート絶縁膜116は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜115に導電膜117から電荷が注入される際、または電荷蓄積膜115に蓄積された電荷が導電膜117へ拡散する際に電位障壁となる。ブロック絶縁層114は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜115に蓄積された電荷が、導電層WLへ拡散するのを防止する。半導体装置は、例えば、NAND型フラッシュメモリでよい。
【0022】
図3は、制御回路101のP型MOSFETの構成例を示す概略断面図である。P型MOSFET(以下、単に、トランジスタともいう)は、半導体基板10と、ドレイン層20と、ソース層21と、ゲート絶縁膜30と、ゲート電極40と、GC(Gate Conductor)42と、エピタキシャル層50と、コンタクトプラグ70と、保護膜80と、層間絶縁膜90と、ライナー膜92と、を備えている。トランジスタは、メモリセルアレイMCAを制御する制御回路を構成するCMOSの一部として設けられている。また、図1で説明したように、制御回路101内のトランジスタの上方に、メモリセルアレイMCAが設けられている。
【0023】
半導体基板10は、例えば、P型シリコン基板であり、その表面領域には、P型ウェルまたはN型ウェルが設けられていている。P型MOSFETはN型ウェルに設けられ、N型MOSFETはP型ウェルに設けられる。本実施形態においてトランジスタは、P型MOSFETであるので、半導体基板10のうちN型ウェルの表面領域に設けられている。
【0024】
ドレイン層20およびソース層21は、半導体基板10のN型ウェルに設けられ、不純物を含む拡散層である。不純物は、例えば、ボロン(B)である。トランジスタがN型MOSFETの場合には、ドレイン層20およびソース層21は、半導体基板10のP型ウェルに設けられ、不純物は、例えば、燐(P)または砒素(As)である。
【0025】
ゲート絶縁膜30は、ドレイン層20とソース層21との間にある半導体基板10上に設けられている。ゲート絶縁膜30には、例えば、シリコン酸化膜、あるいは、シリコン酸化膜よりも比誘電率の高い高誘電体材料を用いている。
【0026】
ゲート電極40は、ゲート絶縁膜30上に設けられている。ゲート電極40には、例えば、ドープトポリシリコン、金属等の導電性材料が用いられている。
【0027】
GC42は、ゲート電極40上に設けられている。GC42には、例えば、タングステン等の導電性材料が用いられている。
【0028】
エピタキシャル層50は、コンタクトプラグ70とソース層21またはドレイン層20との間に設けられ、不純物としてボロンおよびカーボン(C)の両方がドープされたドープトエピタキシャルシリコン層である。例えば、エピタキシャル層50のボロン濃度は、1×1021cm-3以上であり、カーボン濃度は、2×1020cm-3以上である。また、エピタキシャル層50は、ボロンおよびカーボンを導入しながらエピタキシャル成長させたシリコン単結晶層である。カーボンが含まれることによって、ボロンの拡散が抑制され、エピタキシャル層50内のボロン濃度を高く維持することができる。これにより、エピタキシャル層50自体の抵抗を低く維持することができ、また、ボロンがチャネル領域10cに拡散することにより短チャネル効果の発生を抑制することができる。短チャネル効果が発生すると、トランジスタ特性が劣化してしまう。
【0029】
コンタクトプラグ70は、エピタキシャル層50上に設けられている。また、コンタクトプラグ70は、ソース層21またはドレイン層20に対して半導体基板10の表面Fよりも下方に突出するように設けられる。尚、エピタキシャル層50の形状およびコンタクトプラグ70の形状の詳細については、図4を参照して、後で説明する。
【0030】
コンタクトプラグ70は、バリアメタル層72と、プラグ73とを備えている。尚、コンタクトプラグ70は、バリアメタル層72とエピタキシャル層50との間に設けられるシリサイド層をさらに備えていてもよい。シリサイド層は、バリアメタル層72の金属とエピタキシャル層50のシリコンとが反応して形成される。
【0031】
バリアメタル層72は、エピタキシャル層50上のコンタクトホールCHの内壁に薄く設けられている。バリアメタル層72には、例えば、TiまたはTiNが用いられている。この場合、シリサイド層は、TiSi(チタンシリサイド)となる。エピタキシャル層50からボロンおよびカーボンが拡散すると、シリサイド層は、B、Cを含むTiSiとなる。
【0032】
プラグ73は、コンタクトホールCH内に充填される。プラグ73には、例えば、W(タングステン)が用いられる。
【0033】
保護膜80は、GC42の上面に設けられており、GC42を保護する。保護膜80には、例えば、シリコン窒化膜等の絶縁性材料が用いられる。
【0034】
層間絶縁膜90は、ゲート電極40の側面および保護膜80の上方に設けられている。層間絶縁膜90には、コンタクトホールCHが設け得られており、その内部にコンタクトプラグ70が設けられている。層間絶縁膜90には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜が用いられる。
【0035】
コンタクトプラグ70は、制御回路101の他の素子またはメモリセルアレイMCAに電気的に接続されている。コンタクトプラグ70は、基板10と、メモリセルアレイMCAとの間に含まれる。
【0036】
ライナー膜92は、半導体基板10、ゲート電極40および保護膜80を被覆するように設けられる。トランジスタがP型MOSFETである場合、ライナー膜92はチャネル領域10cに圧縮応力を印加して、キャリア移動度(正孔の移動度)を向上させることができる。また、トランジスタがN型MOSFETである場合、ライナー膜92はチャネル領域10cに引っ張り応力を印加して、キャリア移動度(電子の移動度)を向上させることができる。ライナー膜92には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁性材料が用いられる。
【0037】
尚、トランジスタは、P型MOSFETであるが、N型MOSFETであってもよい。ただし、P型不純物としてのボロンは、N型不純物としての燐や砒素よりも拡散し易いため、熱負荷による短チャネル効果およびコンタクト抵抗の上昇等の悪影響は、P型MOSFETにおいて比較的大きい。従って、本実施形態では、トランジスタをP型MOSFETとして説明を進める。
【0038】
図4は、図3のエピタキシャル層50およびその周辺の一例を示す拡大図である。
【0039】
上記のように、コンタクトプラグ70は、半導体基板10の表面Fよりも下方に突出するように設けられている。コンタクトプラグ70は金属であるため、抵抗が比較的低い。従って、コンタクトプラグ70を長くするほど、コンタクト抵抗を抑制することができる。
【0040】
また、エピタキシャル層50は、半導体基板10の表面(面F)よりも下方に突出したコンタクトプラグ70を覆うように配置される。エピタキシャル層50は、高濃度のボロンを含むため、ソース層21またはドレイン層20よりも抵抗が低い。これにより、抵抗が比較的低いエピタキシャル層50で、コンタクトプラグ70と、ソース層21またはドレイン層20と、を電気的に接続させることができる。また、エピタキシャル層50は、面Fよりも下方の位置でコンタクトプラグ70の底部を覆うため、半導体基板10とのコンタクト表面積を向上させることができる。この結果、コンタクト抵抗を抑制することができる。また、コンタクト部分において、より均一に電流を流れやすくすることもできる。
【0041】
また、エピタキシャル層50の幅は、コンタクトプラグ70の幅よりも大きい。幅は、コンタクトプラグ70に垂直な方向(図4の横方向)の距離である。すなわち、半導体基板10の上方から見たエピタキシャル層50の外縁は、コンタクトプラグ70の外縁よりも外側にある。これは、後で説明するように、コンタクトホールCHの底部から、コンタクトホールCHに垂直な方向(面Fに平行な方向)に半導体基板10がエッチングされるためである(図12を参照)。また、エピタキシャル層50は、上記の形状により、コンタクトプラグ70からチャネル領域10c側に伸びるように設けられている。エピタキシャル層50は、抵抗が比較的低いため、コンタクトプラグ70からチャネル領域10cまでの電流パス(電流経路)における寄生抵抗を抑制することができる。この結果、コンタクト抵抗をさらに抑制することができるとともに、オン電流を向上させることができる。
【0042】
ここで、図3において、dCSは、コンタクトプラグ70の径を示す。dwidthは、コンタクト層であるエピタキシャル層50の幅を示す。ddepthは、コンタクト層であるエピタキシャル層50の深さを示す。drecessは、コンタクトホールCHの底部から、コンタクトホールCHに垂直な方向に伸びるエピタキシャル層50の距離を示す。dCS-GCは、コンタクトプラグ70からGC42までの距離を示す。
【0043】
上記のように、エピタキシャル層50の幅は、コンタクトプラグ70の幅よりも大きいことが好ましい。すなわち、dCS<dwidthであることが好ましい。また、エピタキシャル層50の幅は、コンタクトプラグ70とゲートとの位置関係によって調整される。比較的高濃度のボロンを含むエピタキシャル層50は、低抵抗の電流パスとして機能する。しかし、エピタキシャル層50がチャネル領域10cに近づき過ぎると、エピタキシャル層50内のボロンがチャネル領域10cに拡散することによる短チャネル効果が発生しやすくなってしまう。従って、drecessは、例えば、dCS-GC/2>drecessを満たすことが好ましい。
【0044】
図5図8は、比較例によるP型MOSFETの構成例を示す概略断面図である。以下では、図3に示す構造でのコンタクト抵抗と、図5図8の構造でのコンタクト抵抗と、の比較について説明する。尚、コンタクト抵抗値自体はコンタクトの断面積によって変化する。従って、本実施形態において、コンタクト抵抗値は正規化した値で示している。
【0045】
図3に示す本実施形態によるコンタクト構造の場合、コンタクトプラグ70からソース層21またはドレイン層20までのコンタクト抵抗は、約232ohmであった。また、オン電流は、約115μA/μmであった。
【0046】
図5に示すコンタクト構造は、ソース層21またはドレイン層20とエピタキシャル層50との間にアンドープトエピタキシャル層52が設けられる。アンドープトエピタキシャル層52は、アンドープトエピタキシャルシリコン層であり、不純物を導入せずにエピタキシャル成長させたシリコン単結晶層である。従って、アンドープトエピタキシャル層52は、エピタキシャル層50よりも不純物濃度が低く、抵抗が高い。アンドープトエピタキシャル層52は、エピタキシャル層50における結晶状態の向上、および、ボロンの拡散抑制のために設けられている。
【0047】
アンドープトエピタキシャル層52は、半導体基板10の表面Fよりも高い位置まで設けられている。また、アンドープトエピタキシャル層52上にエピタキシャル層50が設けられ、エピタキシャル層50上にコンタクトプラグ70が設けられている。従って、図5に示すコンタクト構造は、図3に示すコンタクト構造と比較して、コンタクトプラグ70の底部の位置は面Fより高い位置である。また、エピタキシャル層50の幅およびアンドープトエピタキシャル層52の幅は、コンタクトプラグ70の幅と略同じである。また、アンドープトエピタキシャル層52は、比較的高い抵抗(寄生抵抗)を有するため、コンタクト抵抗の増大につながる。図5に示すコンタクト構造のその他の構成は、図3の構成と同様である。図5に示すコンタクト構造の場合、コンタクトプラグ70からドレイン層20またはソース層21までのコンタクト抵抗は、約880ohmであった。また、オン電流は、約95μA/μmであった。
【0048】
図6に示すコンタクト構造は、図5のそれに対してアンドープトエピタキシャル層52が設けられていない。抵抗が比較的高いアンドープトエピタキシャル層52が設けられないため、図5に示す構造に比べて、コンタクト抵抗を向上させることができると考えられる。図6に示すコンタクト構造のその他の構成は、図5の構成と同様である。また、図6では、エピタキシャル層50の幅は、コンタクトプラグ70の幅と略同じである。従って、図6に示すエピタキシャル層50は、図3に示すコンタクト構造に比べてコンタクト表面積が小さく、コンタクト抵抗が大きくなってしまう。図6に示すコンタクト構造の場合、コンタクトプラグ70からドレイン層20またはソース層21までのコンタクト抵抗は、約706ohmであった。また、オン電流は、約90μA/μmであった。
【0049】
図7に示すコンタクト構造は、図5のそれに対してコンタクトプラグ70の底部が低い位置になるように設けられている。抵抗が比較的低いコンタクトプラグ70およびエピタキシャル層50が伸びて、ソース層21またはドレイン層20に近づくため、図5に示す構造に比べて、コンタクト抵抗を抑制させることができると考えられる。図7に示すコンタクト構造のその他の構成は、図5の構成と同様である。また、図7では、エピタキシャル層50の幅は、コンタクトプラグ70の幅と略同じである。従って、図7に示すエピタキシャル層50は、図3に示すコンタクト構造に比べてコンタクト表面積が小さく、コンタクト抵抗が大きくなってしまう。図7に示すコンタクト構造の場合、コンタクトプラグ70からソース層21またはドレイン層20までのコンタクト抵抗は、約800ohmであった。
【0050】
図8に示すコンタクト構造は、図5のそれに対してボロンおよびカーボンの導入方法が異なる。図8では、エピタキシャル成長によるエピタキシャル層50の形成は行われずに、アンドープトエピタキシャル層52が形成される。その後、ボロンおよびカーボンをイオン注入法でアンドープトエピタキシャル層52に向けて導入している。従って、図8に示すボロンおよびカーボンの分布54は、図3および図5図7とは異なっている。これは、イオン注入法では、エピタキシャル成長よりも、不純物の濃度の空間的な制御が困難なためである。例えば、所望の位置でボロンを高濃度にドープ使用とすると、さらに深い位置にもドープされてしまい、リークや短チャネル効果が発生してしまう可能性がある。また、イオン注入法では、アンドープトエピタキシャル層52の結晶状態を悪化させる可能性がある。また、イオン注入法では、図3に示すような、コンタクトプラグ70の側面付近にボロンおよびカーボンを導入することが困難でもある。図8に示すコンタクト構造のその他の構成は、図5の構成と同様である。図8に示すコンタクト構造の場合、コンタクトプラグ70からソース層21またはドレイン層20までのコンタクト抵抗は、約800ohmであった。
【0051】
このように、図3に示す本実施形態によるコンタクト構造は、コンタクトプラグ70が面Fよりも下方に突出するように設けられ、エピタキシャル層50がコンタクトプラグ70の底部を覆うように設けられる。また、エピタキシャル層50がコンタクトプラグ70からチャネル領域10cに向けて伸びるように設けられている。これにより、図3のコンタクト構造は、図5図8のコンタクト構造に比較して、コンタクト抵抗を低く抑制することができる。また、図3のコンタクト構造は、オン電流を向上させることができ、トランジスタのスイッチング特性の向上、および、制御回路100の動作の高速化につながる。
【0052】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法を説明する。
【0053】
図9図14は、第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。図9図14では、トランジスタとしてP型MOSFETの製造方法を示す。
【0054】
まず、図9に示すように、半導体基板10上に、ボロン等の不純物を半導体基板10の表面領域に導入し、ドレイン層20およびソース層21を半導体基板10の表面領域に形成する。
【0055】
次に、図10に示すように、半導体基板10上にゲート絶縁膜30を形成する。ゲート絶縁膜30は、熱酸化法により形成されたシリコン酸化膜でもよく、堆積法によって形成された高誘電体材料であってもよい。次に、ゲート絶縁膜30上にゲート電極40の材料が堆積される。次に、ゲート電極40上にGC42および保護膜80を形成する。堆積した複数の積層膜を、リソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)法等を用いて形状加工することにより、図10に示す構造が得られる。
【0056】
次に、ゲート電極40および半導体基板10上に層間絶縁膜90およびライナー膜92を堆積する。層間絶縁膜90は、例えば、TEOS(Tetraethoxysilane)等を用いたシリコン酸化膜でよい。次に、リソグラフィ技術およびRIE法等を用いて、図11に示すように、層間絶縁膜90にコンタクトホールCHを形成する。コンタクトホールCHは、層間絶縁膜90を貫通してドレイン層20およびソース層21に達するように形成される。尚、コンタクトホールCHの形成後にウェット工程を行って、自然酸化膜を除去してもよい。
【0057】
次に、図12に示すように、ソース層21またはドレイン層20に、半導体基板10の表面Fから、半導体基板10の表面Fよりも低い所定位置P1まで達するホール10hを形成する。すなわち、半導体基板10をエッチングして、ホール10hを形成する。より詳細には、HClガスを流して半導体基板10をエッチングする。これにより、図12に示すように、下方向だけでなく、横方向(面Fに平行な方向)にも半導体基板10をエッチングすることができ、コンタクトホールCHの径よりも大きい径を有するホール10hを形成することができる。
【0058】
図15は、第1実施形態によるコンタクトホールCHおよびホール10hの形状の一例を示す模式図である。
【0059】
コンタクトホールCHの形状は、略円柱状である。一方、ホール10hの形状は、略四角錐状である。これは、HClガスを用いた異方性エッチングにより、シリコンの(111)面がでやすくなるためである。従って、ホール10hは、(111)面に覆われた形状になる。ホール10hを覆う面は(111)と等価な面であればよく、例えば(-1-11)、(1-1-1)、(-11-1)、(111)の4つの面で略四角錐を形成する。(111)面は基板表面(001)面から53°傾いた表面だが、深さ方向のエッチング速度と横方向のエッチング速度とのバランスで45~60°の間で変化することもある。コンタクトホールCHは直方体状やスリット状であってもよく、コンタクトホールCHの形状によってホール10hを覆う面の形状は変化する。例えばコンタクトホールCHがスリット状なら、ホール10hは略三角柱状になる。
【0060】
次に、図13に示すように、エピタキシャル成長法を用いてエピタキシャル層50をコンタクトホールCHおよびホール10h内のソース層21またはドレイン層20の上方に形成する。エピタキシャル層50は、ボロンおよびカーボンの両方をドープしながらエピタキシャル成長させたドープトシリコン結晶層である。例えば、ボロン濃度は、1×1021cm-3以上であり、カーボン濃度は、2×1020cm-3以上である。これにより、ボロンおよびカーボンを含有するエピタキシャル層50が形成される。このとき、エピタキシャル層50の上面は、例えば、(001)面を有するようにエピタキシャル成長する。また、エピタキシャル層50は、半導体基板10の表面である面F付近まで形成される。尚、コンタクトプラグ70の形成時に、エピタキシャル層50の上面が低くなる場合があり、図4に示す例では、エピタキシャル層50の上面は、扇状に窪んでいる。従って、コンタクトプラグ70の底部が面Fより低い位置になる範囲内で、エピタキシャル層50が面Fよりもわずかに高い位置まで形成されてもよい。
【0061】
尚、図12および図13の工程は、連続して実行される。すなわち、エピタキシャル成長装置に半導体基板10を投入後、半導体基板10のHCl異方性エッチングにより(111)面を有するホール10hを形成し、その場で(in-situ)エピタキシャル層50を成膜してホール10hを埋め戻している。(111)面を有するホール10hの形成とエピタキシャル層50の埋め戻しとを連続して実行することにより、ホール10hの界面に抵抗の上昇要因となる不純物層やダメージ層を残さず、低抵抗でオン電流が大きいCMOS素子を形成することができる。半導体装置1が半導体基板10とエピタキシャル層50との界面にシリコンの(111)面を有することで、低抵抗でオン電流の大きいCMOS素子が得られる。
【0062】
また、エピタキシャル層50は、不純物およびカーボンの両方をドープしながら半導体結晶をエピタキシャル成長させることによって形成されることが好ましい。これにより、熱負荷がかかっても、エピタキシャル層50内のボロンを高濃度に保つことができ、耐熱性を向上させることができる。
【0063】
次に、図14に示すように、GC42に達するコンタクトホールCHaを形成する。また、コンタクトホールCH、CHa内に金属材料を形成することによって、エピタキシャル層50上のコンタクトプラグ70およびGC42上のコンタクトプラグ70aが並行して形成される。コンタクトプラグ70は、所定位置P1よりも高く、かつ、半導体基板10の表面Fよりも低い所定位置P2から上方に伸びるように形成される。例えば、バリアメタル層72をコンタクトホールCH内に薄く形成し、さらにコンタクトホールCH内にプラグ73を充填する。バリアメタル層72には、例えば、TiまたはTiNが用いられる。プラグ73には、例えば、タングステンが用いられる。これにより、バリアメタル層72およびプラグ73からなるコンタクトプラグ70が形成される。これにより、図3に示すトランジスタの構造が得られる。その後、トランジスタ(ゲート電極40)の上方に、図1に示すメモリセルアレイMCAが形成されてもよい。このとき、メモリセルアレイMCAの形成工程における熱負荷によって、バリアメタル層72とエピタキシャル層50との間には、TiSi等のシリサイド層が形成されてもよい。
【0064】
以上のように、第1実施形態によれば、コンタクトプラグ70は、ソース層21またはドレイン層20に対して前記基板の表面よりも下方に突出するように設けられる。また、エピタキシャル層50は、コンタクトプラグ70とソース層21またはドレイン層20との間に設けられる。これにより、コンタクト抵抗を抑制することができる。
【0065】
また、トランジスタの上方には、メモリセルアレイMCAが設けられている。これは、メモリセルアレイMCAがトランジスタの横に設けられる場合よりも、チップ面積を抑制することができ、また、チップ面積当たりのメモリセルアレイMCAの数(セル密度)を向上させることができるためである。しかし、この場合、コンタクトプラグ70を形成した後に、メモリセルアレイMCAを形成する必要がある。従って、メモリセルアレイMCAを形成する際の熱処理工程において、制御回路101およびコンタクトプラグ70に熱負荷がかかってしまう。この熱負荷により、エピタキシャル層50および拡散層等に含まれる不純物のボロンが拡散しやすくなってしまう。ボロンの拡散は、コンタクトプラグ70と電気的に接続されるエピタキシャル層50におけるボロン濃度の減少による、コンタクト抵抗の上昇につながる。
【0066】
通常、コンタクト抵抗を抑制する方法として、ボロンを大量に注入してボロン濃度を高くすることが知られている。しかし、ボロンが大量に注入されると、チャネル領域10cにボロンが拡散することによる短チャネル効果が発生しやすくなってしまう。
【0067】
これに対して、第1実施形態では、ボロンの注入量を増やすことなく、コンタクト抵抗を抑制することができる。また、エピタキシャル層50に含まれるカーボンによって、比較的高濃度のボロンが含まれるエピタキシャル層50内からボロンが拡散することを抑制することができる。従って、熱負荷による短チャネル効果およびコンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。これにより、コンタクト抵抗を低減させるとともにボロン拡散に対する耐熱性を向上させることができる。この結果、制御回路101の特性を向上させることができ、また、より高容量のメモリ装置を形成することができる。
【0068】
尚、トランジスタは、必ずしもメモリセルアレイMCAの下方に設けられていなくてもよい。
【0069】
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態によるP型MOSFETの構成例を示す断面図である。第2実施形態は、エピタキシャル層60が設けられる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0070】
トランジスタは、エピタキシャル層60をさらに有する。
【0071】
エピタキシャル層60は、ソース層21またはドレイン層20とエピタキシャル層50との間に設けられ、エピタキシャル層50の第1材料とは異なる第2材料が用いられる。すなわち、エピタキシャル層50の外周にエピタキシャル層60が設けられている。第1材料は、例えば、Siである。第2材料は、例えば、SiGeである。SiGeのGe濃度は、例えば、約1%~約10%である。また、エピタキシャル層60は、不純物をさらに含む。不純物は、例えば、ボロンである。
【0072】
また、エピタキシャル層60は、ソース層21側のエピタキシャル層60およびドレイン層20側のエピタキシャル層60が、ゲート電極40の下方のチャネル領域10cを挟むように配置される。エピタキシャル層60のSiGeは、Siよりも格子定数が大きい。これにより、チャネル領域10cに圧縮応力を印加することができる。この結果、チャネル領域10cおけるキャリア移動度(正孔の移動度)を向上させることができる。また、第2材料(SiGe)はチャネル領域10cに対して歪みを与えるように選択されればよい。
【0073】
ここで、dSiGeは、エピタキシャル層60の膜厚を示す。すなわち、dSiGeは、エピタキシャル層50の底部からエピタキシャル層60の底部までの距離でもある。
【0074】
エピタキシャル層60の膜厚は、例えば、総膜厚の半分以下であることが好ましい。すなわち、ddepth/2>dSiGeであることが好ましい。
【0075】
尚、トランジスタがN型MOSFETである場合、例えば、エピタキシャル層60の材料には、SiGeに代えてSiCまたはSiNが用いられてもよい。SiCおよびSiNは、Siよりも格子定数が小さい。これにより、N型MOSFETのチャネル領域10cに引っ張り応力を印加することができ、キャリア移動度(電子の移動度)を向上させることができる。また、エピタキシャル層60内の不純物は、例えば、燐または砒素である。
【0076】
エピタキシャル層60は、図12に示す工程の後に形成される。すなわち、エピタキシャル層50を形成する前に、ホール10h内のソース層21またはドレイン層20の上方に半導体結晶をエピタキシャル成長させて、エピタキシャル層50の第1材料とは異なる第2材料のエピタキシャル層60を形成すればよい。
【0077】
第2実施形態による半導体装置1のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第2実施形態による半導体装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図17は、制御回路101のN型MOSFETおよびP型MOSFETの構成例を示す断面図である。第3実施形態は、エピタキシャル層50を有するN型MOSFETが設けられる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0079】
図17に示す例では、CMOS回路に含まれるN型MOSFETおよびP型MOSFETの両方において、第1実施形態で説明したように、コンタクトプラグ70およびエピタキシャル層50が設けられている。また、N型MOSFETとP型MOSFETとの間には、例えば、絶縁層94が設けられている。絶縁層94は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)であり、N型MOSFETのP型ウェルとP型MOSFETのN型ウェルとを隔離する。
【0080】
第1実施形態で説明したように、N型MOSFETにおいて、エピタキシャル層50の不純物は、例えば、燐または砒素である。また、エピタキシャル層50には、P型MOSFETと同様に、高濃度の不純物が含まれていることが好ましく、また、カーボンが含まれることにより、不純物の拡散を抑制することができるため、より好ましい。
【0081】
このように、第3実施形態では、N型MOSFETおよびP型MOSFETの両方において、コンタクト抵抗を抑制することができる。
【0082】
第3実施形態による半導体装置1のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第3実施形態による半導体装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3実施形態による半導体装置1に第2実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、エピタキシャル層60がN型MOSFETおよびP型MOSFETの両方に設けられていてもよい。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
10 半導体基板、10c チャネル領域、10h ホール、20 ドレイン層、21 ソース層、30 ゲート絶縁膜、40 ゲート電極、50 エピタキシャル層、60 エピタキシャル層、70 コンタクトプラグ、80 保護膜、90 層間絶縁膜、92 ライナー膜、CH コンタクトホール、F 面、MCA メモリセルアレイ、P1 所定位置、P2 所定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17