(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】潤滑剤用導電剤及び潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20240430BHJP
C10M 149/12 20060101ALI20240430BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20240430BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20240430BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20240430BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240430BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240430BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240430BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M149/12
C10M169/04
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:00 D
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:02
C10N50:10
(21)【出願番号】P 2020178995
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019200616
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾形 和樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209219(JP,A)
【文献】特開2010-7060(JP,A)
【文献】特開2010-195941(JP,A)
【文献】特開2016-196627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位(a)及び炭素数10~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(b)を構成単位として有する共重合体(A)を含有する潤滑剤用導電剤。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは1~20の整数であり、mが2以上の場合の複数あるR
2は同一でも異なっていてもよく、Xはカルボキシル基を2個以上有する化合物(x)から2つのカルボキシル基を除いた残基を表し、M
+はオニウムカチオンを表す。]
【請求項2】
前記共重合体(A)を構成する前記構成単位(a)と前記構成単位(b)とのモル比率(a/b)が0.1~1である請求項1に記載の潤滑剤用導電剤。
【請求項3】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が10,000~100,000である請求項1又は2に記載の潤滑剤用導電剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)を構成する前記構成単位(a)のモル比率が共重合体(A)を構成する構成単位の合計モル数を基準として0.5~60モル%である請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑剤用導電剤。
【請求項5】
前記オニウムカチオンが、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び脂肪族第4級アンモニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑剤用導電剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑剤用導電剤及び基油を含有する潤滑剤組成物。
【請求項7】
さらに増ちょう剤を含有する請求項6に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
前記基油の粘度指数が90以上である請求項6又は7に記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤用導電剤及び潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素等の排気ガスによる環境負荷の低減や化石燃料の枯渇といった問題を解決するため、電気自動車(EV)の実用化が進んでいる。走行用の動力源となる電動駆動部は、モータ及び減速ユニットで構成されており、モータの回転を支持する転がり軸受にはグリース潤滑が使用されている。電動化に伴い、電圧のスイッチングにより発生した漏れ電流が軸受を通して流れると電食を発生させる可能性がある。この問題を解決するため、軸受に使用するグリースに導電性をもたせた導電性グリースを用いることで、周辺部の帯電を防止するという手法が知られている。
【0003】
導電性グリースとしては、カーボンブラックを増ちょう剤及び導電性付与添加剤として添加したもの(特許文献1及び2)、導電剤としてイオン液体を用いたもの(特許文献3)等が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2のようにカーボンブラックを用いた導電性グリースを封入した転がり軸受は、初期においては優れた導電性を示す(内外の軌道輪及び転動体が導電状態となっている)ものの、導電性が経時的に低下して転がり軸受の内外輪間の電気抵抗値が大きくなることがあるという問題点がある。
また、特許文献3のイオン液体を導電剤として用いた導電性グリースは、イオン液体の基油への溶解性が悪く、一部の合成油のみにしか用いることができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-304276号公報
【文献】特開2002-250353号公報
【文献】特開2007-99826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基油への溶解性が高く、導電性の経時的な低下が小さく、さらに耐摩耗性を向上できる潤滑剤用導電剤及びこれを含有する潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される構成単位(a)及び炭素数10~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(b)を構成単位として有する共重合体(A)を含有する潤滑剤用導電剤;該潤滑剤用導電剤及び基油を含有する潤滑剤組成物である。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは1~20の整数であり、mが2以上の場合の複数あるR
2は同一でも異なっていてもよく、Xはカルボキシル基を2個以上有する化合物から2つのカルボキシル基を除いた残基を表し、M
+はオニウムカチオンを表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑剤用導電剤は、基油への溶解性が高く、本発明の潤滑剤組成物は、導電性の経時的な低下が小さく、耐摩耗性を向上できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑剤導電剤は、下記一般式(1)で表される構成単位(a)及び炭素数10~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(b)を構成単位として有する共重合体(A)を含有する。
構成単位(a)及び(b)はそれぞれ1種でもよく、2種以上併用してもよい。
【化2】
[一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは1~20の整数であり、mが2以上の場合の複数あるR
2は同一でも異なっていてもよく、Xはカルボキシル基を2個以上有する化合物(x)から2つのカルボキシル基を除いた残基を表し、M
+はオニウムカチオンを表す。]
【0010】
一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基である。これらのうち、耐摩耗性の観点から、メチル基が好ましい。
【0011】
一般式(1)における(R2O)は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
R2としては、耐摩耗性及び導電性の観点から、好ましくはエチレン基、並びに1,2-又は1,3-プロピレン基であり、更に好ましくはエチレン基である。
mはアルキレンオキシ基の付加モル数を表し、1~20の整数であり、導電性及び耐摩耗性の観点から、1~10が好ましく、更に好ましくは1~5である。mが大きくなると耐摩耗性が優れ、mが小さくなると導電性が優れる傾向がある。
【0012】
一般式(1)において、Xはカルボキシル基を2個以上有する化合物(x)から2つのカルボキシル基を除いた残基を表す。なお、化合物(x)がシュウ酸である場合、Xは2つのカルボニル基間の結合を表す。共重合体(A)においてXは1種でもよく、2種以上を併用したものであってもよい。
化合物(x)としては、ジカルボン酸{例えば、鎖式飽和ジカルボン酸(x1)、鎖式不飽和ジカルボン酸(x2)、脂環式ジカルボン酸(x3)、芳香族ジカルボン酸(x4)等}、3個以上のカルボキシル基を有する化合物(x5)等が挙げられる。
鎖式飽和ジカルボン酸(x1)としては、炭素数(以下においてCと略記する)2~22の直鎖又は分岐の鎖式飽和ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)等が挙げられる
鎖式不飽和ジカルボン酸(x2)としては、C4~22の直鎖又は分岐の鎖式不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸(x3)としては、C7~14の脂環式ジカルボン酸(例えば、1,3-又は1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸(x4)としては、C8~14の芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-及び4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム及び5-スルホイソフタル酸カリウム等)等が挙げられる。
3個以上のカルボキシル基を有する化合物(x5)としては、C9~20のトリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ナフタレン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸等)等が挙げられる。
化合物(x)としては、耐摩耗性及び導電性の観点から、ジカルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数2~22の鎖式飽和ジカルボン酸(x1)であり、特に好ましくはマロン酸、コハク酸及びグルタル酸、特に好ましくはコハク酸及びグルタル酸である。(x)の炭素数が大きくなると耐摩耗性が優れ、小さくなると導電性が優れる傾向がある。
【0013】
一般式(1)におけるM+はオニウムカチオンであり、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、含リンオニウムカチオン及び含酸素オニウムカチオン等が含まれる。共重合体(A)において、オニウムカチオンは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
含窒素オニウムカチオンには、脂肪族第4級アンモニウム、芳香族第4級アンモニウム、脂環式第4級アンモニウム、アミジニウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、グアニジニウム及びアンモニウムカチオン等が含まれる。
含硫黄オニウムカチオンには、脂肪族第3級スルホニウム、芳香族第3級スルホニウム、脂環式第3級スルホニウム等が含まれる
含リンオニウムカチオンには、脂肪族第4級ホスホニウム、芳香族第4級ホスホニウム、脂環式第4級ホスホニウム等が含まれる。
含酸素オニウムカチオンには、脂肪族第3級オキソニウム、芳香族第3級オキソニウム、脂環式第3級オキソニウム等が含まれる。
オニウムカチオン(M+)のうち、入手の容易さ及び合成の容易さの観点から、含窒素オニウムカチオンが好ましい。
【0014】
脂肪族第4級アンモニウムとしては、C4~30のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第4級アンモニウムが含まれ、例えば、テトラメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム及びジメチルジデシルアンモニウム等が挙げられる。
【0015】
芳香族第4級アンモニウムとしては、C6~30のものが含まれ、例えば、トリメチルフェニルアンモニウム及びトリエチルフェニルアンモニウム等が挙げられる。
【0016】
脂環式第4級アンモニウムとしては、C3~30のものが含まれ、例えば、N,N-ジメチルピロジニウム及びN,N-ジエチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0017】
アミジニウムとしては、イミダゾリニウム(C3~30のものが含まれ、例えば、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム及び1,3-ジメチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム(C3~30のモノが含まれ、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウム、1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-エチルイミダゾリウム、1,2,3-トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリウム、1,3-ジメチル-2-フェニルイミダゾリウム、1,3-ジメチル-2-ベンジルイミダゾリウム及び1-ベンジル-2,3-ジメチルイミダゾリウム等)、テトラヒドロピリミジニウム(C4~30のものが含まれ、例えば、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム及び1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム等)、ジヒドロピリミジニウム(C4~30のものが含まれ、例えば、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7,9-ウンデカジエニウム及び8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7,10-ウンデカジエニウム等)等が挙げられる。
【0018】
ピリジニウムとしては、C6~20のものが含まれ、例えば、3-メチル-1-プロピルピリジニウム及び1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウム等が挙げられる。
【0019】
ピラゾリウムとしては、C5~15のものが含まれ、例えば、1、2-ジメチルピラゾリウム及び1-n-ブチル-2-メチルピラゾリウム等が挙げられる。
【0020】
グアニジウムとしては、イミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウム(C8~15のものが含まれ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム及び2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム骨格を有するグアニジウム(C8~15のものが含まれ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウム及び2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウム等)、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジウム(C10~20のものが含まれ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム及び2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム等)、ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウム(C10~20のものが含まれ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム及び2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム等)等が挙げられる。
【0021】
含窒素オニウムカチオンのうち、入手の容易さ及び合成の容易さの観点から、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び脂肪族第4級アンモニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくは脂肪族第4級アンモニウムカチオンである。
【0022】
脂肪族第3級スルホニウムとしては、C1~30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第3級スルホニウムが含まれ、例えば、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、エチルジメチルスルホニウム及びジエチルメチルスルホニウム等が挙げられる。
【0023】
芳香族第3級スルホニウムとしては、C6~30のものが含まれ、例えば、フェニルジメチルスルホニウム、フェニルエチルメチルスルホニウム及びフェニルメチルベンジルスルホニウム等が挙げられる。
【0024】
脂環式第3級スルホニウムとしては、C3~30のものが含まれ、例えば、メチルチオラニウム等が挙げられる。
【0025】
脂肪族第4級ホスホニウムとしては、C1~30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第4級ホスホニウムが含まれ、例えば、トリブチルメチルホスホニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム及びトリメチルブチルホスホニウム等が挙げられる。
【0026】
芳香族第4級ホスホニウムとしては、C6~30のものが含まれ、例えば、トリフェニルメチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウム及びトリフェニルベンジルホスホニウム等が挙げられる。
【0027】
脂肪族第3級オキソニウムとしては、C1~30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第4級オキソニウムが含まれ、例えば、トリメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、エチルジメチルオキソニウム及びジエチルメチルオキソニウム等が挙げられる。
芳香族第3級オキソニウムとしては、フェニルジメチルオキソニウム、フェニルエチルメチルオキソニウム及びフェニルメチルベンジルオキソニウム等が挙げられる。
【0028】
本発明において、共重合体(A)は上記一般式(1)で表される構成単位(a)を有するが、共重合体(A)が構成単位(a)を有するものとする方法としては、[1]単量体として下記一般式(2)で表される単量体(ax)を含む単量体成分を重合した後にカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M
+)で置換する方法、[2]単量体(ax)のカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M
+)で置換した単量体(ay)を含む単量体成分を重合する方法、[3]単量体(ax)及び単量体(ay)を含む単量体成分を重合した後にカルボキシル基の一部又は全部をオニウムカチオン(M
+)で置換する方法等が挙げられる。
これらのうち、合成の容易さの観点から、[1]単量体として下記一般式(2)で表される単量体(ax)を含む単量体成分を重合した後にカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M
+)で置換する方法が好ましい。
【化3】
[一般式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは1~20の整数であり、mが2以上の場合の複数あるR
2は同一でも異なっていてもよく、Xはカルボキシル基を2個以上有する化合物(x)から2つのカルボキシル基を除いた残基を表す]
一般式(2)におけるR
1、R
2、m、化合物(x)及びXは上記一般式(1)におけるものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0029】
単量体(ax)は、例えば、公知の方法で(メタ)アクリル酸に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~20モル付加したものに、カルボキシル基を2個以上有する化合物(x)をモノエステル化することにより得ることができる。
【0030】
単量体(ax)としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学(株)製「A-SA」、共栄社化学(株)製「HOA-MS(N)」)、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学社製「SA」、共栄社化学(株)製「ライトエステルHO-MS(N)」)、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学(株)製「ライトアクリレートHOA-HH(N)」)、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸(共栄社化学(株)製「HOA-MPL(N)」)等が市販されており入手可能である。
【0031】
単量体(ax)のカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M+)で置換する方法としては、公知の方法を使用でき、例えば、オニウムカチオン(M+)のモノメチル炭酸塩(M)(例えば、ジデシルジメチルアンモニウムモノメチル炭酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムモノメチル炭酸塩等)等を添加し、必要により脱水、脱炭酸、脱メタノール等を行うことにより容易に置換できる。オニウムカチオン(M+)のモノメチル炭酸塩(M)は、例えば特開2001-316372号公報に記載の方法により製造することができる。
【0032】
共重合体(A)を構成する単量体(ax)の中和率[共重合体(A)を構成する単量体中の(a)及び(ax)の合計モル数に対する(a)のモル数{(a)/((a)+(ax))}×100]は、導電性の観点から、95%以上が好ましい。なお、実施例において、中和率は、共重合体(A1)を構成する単量体(ax)のモル数と中和に用いたオニウムカチオン(M+)のモル数との比率{(M+)/(ax)}×100から算出することができる。
【0033】
共重合体(A)において、構成単位(b)は炭素数10~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b’)(以下において単量体(b’)と略記することがある)に由来する構成単位である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
単量体(b’)としては、炭素数10~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{例えば、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等}、炭素数10~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{(メタ)アクリル酸-2,4,6-トリメチルヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-メチルノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルノニル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルドデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルトリデシル、(メタ)アクリル酸-2-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル、(メタ)アクリル酸-2-オクチルノニル、(メタ)アクリル酸-2-ヘキシルウンデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルペンタデシル、(メタ)アクリル酸-2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸-1-ヘキシルトリデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソイコシル、(メタ)アクリル酸-1-オクチルペンタデシル及び(メタ)アクリル酸-2-デシルテトラデシル等}等が挙げられる。
単量体(b’)としては、導電性、基油溶解性及び耐摩耗性の観点から、炭素数12~26のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。炭素数が大きいほど耐摩耗性及び基油溶解性が優れ、炭素数が小さいほど導電性が優れる傾向がある。
【0034】
共重合体(A)は、構成単位(a)及び(b)以外の構成単位を有していてもよく、上記単量体(ax)、単量体(ay)及び単量体(b’)以外の炭素数1~9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)、窒素原子含有単量体(d)、水酸基含有単量体(e)、リン原子含有単量体(f)、芳香環含有ビニル単量体(g)、不飽和基を2つ以上有する単量体(h)、単量体(i)~(m)を共重合させたものであってもよい。
単量体(c)~(m)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
炭素数1~9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)としては、例えば、炭素数1~9の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル等}、炭素数3~9の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル及び(メタ)アクリル酸2-メチルヘキシル等}等が挙げられる。
【0036】
窒素原子含有単量体(d)としては、以下の単量体(d1)~(d4)が挙げられる。アミド基含有単量体(d1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0037】
ニトロ基含有単量体(d2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0038】
1~3級アミノ基含有単量体(d3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0039】
ニトリル基含有単量体(d4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0040】
窒素原子含有単量体(d)のうち好ましいのは、(d1)及び(d3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
単量体(d)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
水酸基含有単量体(e)
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)[(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-又は3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシイソブチル等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0042】
単量体(e)のうち、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)である。
単量体(e)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
リン原子含有単量体(f)としては、以下の単量体(f1)~(f2)が挙げられる。
【0044】
リン酸エステル基含有単量体(f1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0045】
ホスホノ基含有単量体(f2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0046】
(f)のうち好ましいのは(f1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
単量体(f)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
芳香環含有ビニル単量体(g):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
単量体(g)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
不飽和基を2つ以上有する単量体(h)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
単量体(h)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(i):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
単量体(i)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
エポキシ基含有単量体(j):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
単量体(j)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ハロゲン元素含有単量体(k):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
単量体(k)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(l):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
単量体(l)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
炭素数1~36のアルコールにアルキレンオキサイド(好ましくはC2~4)を付加(好ましくは1~20モル)させたものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(m)(単量体(m))
単量体(m)において、炭素数1~36のアルコールとしては、直鎖アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ドデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-トリアコンチルアルコール等)、炭素数3~36の分岐アルコール(イソプロパノール及びイソブタノール等)等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上を併用する場合、ブロック状に付加してもよく、ランダム状に付加してもよい。
【0054】
本発明において、共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、例えば、単量体(ax)及び単量体(b’)、必要により上記単量体(c)~(l)を含む単量体成分を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合した共重合体(A1)を得た後に、必要により溶剤を除去し、上記の通り単量体(ax)に由来するカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M+)で置換することにより得られる。
【0055】
前記共重合体(A)を構成する前記構成単位(a)のモル比率は、導電性及び基油溶解性の観点から、(A)を構成する構成単位の合計モル数を基準として、0.5~60モル%が好ましい。
前記共重合体(A)を構成する構成単位(a)と構成単位(b)とのモル比率((a)/(b))は、導電性、基油溶解性及び耐摩耗性の観点から、0.1~1が好ましく、更に好ましくは0.15~0.40である。
【0056】
共重合体(A1)において、単量体(c)~(l)を共重合させる場合の単量体(c)~(l)の合計重量割合は、導電性、耐摩耗性及び基油溶解性の観点から、共重合体(A)を製造する際の単量体成分の合計重量を基準として、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは2~5重量%である。
【0057】
共重合体(A1)を製造する際の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン又は炭素数9~10のアルキルベンゼンなどの芳香族溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン及びオクタンなどの脂肪族炭化水素(炭素数6~18)、2-プロパノール、1-ブタノール又は2-ブタノールなどのアルコール系溶剤(炭素数3~8)、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル及び酢酸ブチルなどのエステル系溶剤及び鉱物油等が使用できる。
【0058】
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビスイソブチレートなど]、過酸化物系触媒[例えばt-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど]等が使用できる。
【0059】
さらに、必要により連鎖移動剤[例えば、アルキル(炭素数2~20)メルカプタンなど]を使用することもできる。
反応温度としては好ましくは50~140℃、更に好ましくは60~130℃である。
また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により得ることもできる。さらに、共重合体(A1)の重合様式としては、ランダム付加重合又は交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
【0060】
単量体(ax)に由来するカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M+)で置換する際の溶剤としては、メタノール、2-プロパノール、1-ブタノール又は2-ブタノールなどのアルコール系溶剤(炭素数1~8)、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤及び酢酸エチルなどのエステル系溶剤等が使用できる。
【0061】
単量体(ax)に由来するカルボキシル基のプロトンをオニウムカチオン(M+)で置換する際の反応温度としては好ましくは50~140℃、更に好ましくは60~80℃である。
【0062】
共重合体(A1)は、基油溶解性の観点から、特定の溶解度パラメーター(以下SP値と略記する)を有するものが好ましい。
SP値の範囲は、好ましくは8.0~11.5(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは8.7~11.0(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは9.0~10.2(cal/cm3)1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineer
ing and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
【0063】
共重合体(A1)のSP値は、構成単位のそれぞれのSP値を計算し、目的のSP値になるように単量体の種類とモル比を採択することにより調整できる。
例えば、単量体(b’)の場合、アルキル基の長さが長くなるほどSP値は小さくなる。
【0064】
共重合体(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)は、導電性及び耐摩耗性の観点から、好ましくは10,000~100,000であり、更に好ましくは40, 000~100,000である。なお、(A)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定することができる。
<(A)のMwの測定条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,1 00、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0065】
本発明の潤滑剤用導電剤は、上記共重合体(A)を含有していればよく、共重合体(A)以外にカーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック及びイオン液体など含有してもよい。導電性の経時安定性の観点から、共重合体(A)のみからなるものが好ましい。
【0066】
本発明の潤滑剤用導電剤は、基油への溶解性が高く、導電性の経時的な低下が小さく、耐摩耗性を向上できるので、グリース及び潤滑油等の潤滑剤に導電性を付与するための潤滑剤用導電剤として用いることができる。特に、転がり軸受用等の帯電防止が要求される用途(内燃機関及び工作機械等)のグリースに導電性を付与するための潤滑剤用導電剤として有用である。
【0067】
本発明の潤滑剤組成物は、上記本発明の潤滑剤用導電剤及び基油を含有する。
基油としては特に限定されないが、例えば、溶剤精製油、高度水素化精製油、炭化水素系合成潤滑油、エステル系合成潤滑油、ナフテン油等が挙げられる。
基油の100℃の動粘度は、粘度指数向上の観点から、1~15mm2/sであることが好ましく、更に好ましくは2~5mm2/sである。
基油の40℃の動粘度は、粘度指数向上の観点から、10~1500mm2/sであることが好ましく、更に好ましくは10~1000mm2/sである。
基油の粘度指数の下限は、粘度指数向上の観点から、90であることが好ましく、更に好ましくは100である。粘度指数の上限は、実行温度域での高温高剪断下での粘度(以下、HTHS粘度と略記する)の観点から、150が好ましく、更に好ましくは145である。
基油のSP値は、共重合体(A)の基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~11.0(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは7.5~10.5(cal/cm3)1/2、特に好ましくは8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、最も好ましくは8.0~9.8(cal/cm3)1/2である。
【0068】
潤滑剤組成物中の共重合体(A)の含有量は、潤滑剤組成物の導電性の経時安定性、(A)の基油への溶解性、導電性及び耐摩耗性の観点から、潤滑剤組成物の重量を基準として、1~15重量%が好ましく、更に好ましくは1~10重量%である。(A)の含有量が多いほど導電性及び耐摩耗性は良好になる傾向にあり、(A)の含有量が少ないほど潤滑剤組成物の導電性の経時安定性が良好になる傾向にある。なお、潤滑剤組成物の導電性の経時安定性とは、作成直後の導電性と時間経過後の導電性との比率(時間経過後/作成直後)が小さく、1に近いことを意味する。
【0069】
本発明の潤滑剤組成物は、増ちょう剤を含有してもよい。増ちょう剤を含有した潤滑剤組成物をグリースということもある。増ちょう剤の種類は特に限定されるものではなく、グリースにおいて一般的に使用される増ちょう剤を問題なく使用することができる。例えば、石けん類{炭素数8~32の脂肪酸(飽和直鎖脂肪酸、不飽和直鎖脂肪酸、飽和分岐脂肪酸及び不飽和分岐脂肪酸等)の金属塩が含まれ、具体的には、アルミニウム石けん、バリウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん等の金属石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の金属複合石けん等}、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ポリウレア等のウレア化合物や、シリカゲル、ベントナイト等の無機系化合物も好適に使用可能である。さらに、ウレタン化合物、ウレア・ウレタン化合物、テレフタルアミド酸ナトリウム等も好適に使用可能である。これらの増ちょう剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
増ちょう剤の含有量は、ちょう度の観点から、潤滑油組成物の重量を基準として、5~25重量%が好ましく、さらに好ましくは10~20重量%である。
【0070】
本発明の潤滑剤組成物には、必要により、さらに酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤及び固体潤滑剤等を含有してもよい。
【0071】
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤や、アルキルジフェニルアミン(アルキル基は炭素数4~20のもの)、トリフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フェニチアジン、アルキル化フェノチアジンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
防錆剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどを挙げることができる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾールやベンゾイミダゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
極圧剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩などのリン系化合物;スルフィド類、ジスルフィド類などの硫黄系化合物;塩素化パラフィン、塩素化ジフェニルなどの塩素系化合物;ジアルキルジチオリン酸亜鉛;およびジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンなどの有機金属化合物などを挙げることができる。
【0075】
油性剤としては、例えば高級アルコール、多価アルコール、多価アルコールエステル、脂肪族エステル、脂肪族アミン、脂肪酸モノグリセライドなどを挙げることができる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
固体潤滑剤としては、例えば二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化シランなどを挙げることができる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑剤組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑剤組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【0078】
本発明の潤滑剤組成物は、導電性の経時的な低下が小さく、耐摩耗性が良好であるので、グリース及び潤滑油として好適に用いることができる。特に、内燃機関及び工作機械などの帯電部周辺の軸受(転がり軸受等)又は摺動部等の帯電防止が要求される用途のグリースとして有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<製造例1>
撹拌式オートクレーブにジデシルメチルアミン311重量部、炭酸ジメチル90重量部および溶媒としてメタノール64重量部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた後、メタノールを加えて55重量%のジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(M1)を含むメタノール溶液581重量部を得た。
【0081】
<製造例2>
耐熱容器に、基油(ポリαオレフィン、100℃の動粘度:4.1mm2/s、粘度指数:138)50重量部と、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート16重量部とを加え、攪拌しながら、約90℃まで加熱したのち、オクタデシルアミン34重量部を加え、約60分間反応させた。その後、攪拌しながら160℃に加熱したのち、60℃まで冷却して、増ちょう剤であるウレア化合物を50重量%含有するウレア化合物含有基油溶液を得た。
【0082】
<製造例3>
セバシン酸無水物184重量部(1モル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート116重量部(1モル)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.20重量部、酢酸ナトリウム0.60重量部を仕込み、70~80℃の条件にて反応させ、2-アクリロイロキシエチル-セバシン酸(ax-5)を得た。
【0083】
<製造例4>
オクタデカン二酸無水物296g重量部(1モル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート116重量部(1モル)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.20重量部、酢酸ナトリウム0.60重量部を仕込み、70~80℃の条件にて反応させ、カルボキシル基含有アクリレート(ax-6)を得た。
【0084】
<製造例5>
コハク無水物100重量部(1モル)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(日油社製、「ブレンマーAP-800」)841重量部(1モル)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.20重量部、酢酸ナトリウム0.60重量部を仕込み、70~80℃の条件にて反応させ、カルボキシル基含有アクリレート(ax-7)を得た。
【0085】
<比較製造例1>
2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学(株)製、「A-SA」)100重量部、製造例1で得たジデシルジメチルアンモニウム・メチル炭酸塩のメタノール溶液338重量部(0.46モル部)、酢酸エチル41重量部を加え、撹拌しながら70℃に昇温し、同温度で2時間反応を行った。同温度、減圧下で(0.027~0.040MPa)で酢酸エチル及びメタノールを2時間かけて除去し、ジデシルジメチルアンモニウム・2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(Z’-1)を得た。
【0086】
<比較製造例2>
2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学(株)製、「A-SA」)100重量部、55重量%の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩を含むメタノール溶液(特開2001-316372号公報に記載の方法に従って得たもの)157重量部(0.46モル部)、酢酸エチル80重量部を加え、撹拌しながら70℃に昇温し、同温度で2時間反応を行った。同温度、減圧下で(0.027~0.040MPa)で酢酸エチル及びメタノールを2時間かけて除去し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(Z’-2)を得た。
【0087】
<実施例1>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル115重量部、表1に記載した各種単量体の配合物100重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。
120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)、未反応の単量体及び酢酸エチルを2時間かけて除去し、カルボキシル基を有する共重合体(A1-1)を得た。
得られた共重合体(A1-1)100重量部、製造例1で得たジデシルジメチルアンモニウム・メチル炭酸塩(M1)のメタノール溶液40重量部(0.055モル部)、酢酸エチル41重量部を加え、撹拌しながら70℃に昇温し、同温度で2時間反応を行った。同温度、減圧下で(0.027~0.040MPa)で酢酸エチル及びメタノールを2時間かけて除去し、本発明の共重合体(A-1)を含む潤滑剤用導電剤を得た。
【0088】
<実施例2~15>
表1に記載した各成分を用い、本発明の共重合体(A-2)~(A-15)を含有する潤滑剤用導電剤(Z-2)~(Z-15)を得た。各成分の数値は重量部を示す。
【0089】
【0090】
表1に記載の各種の単量体は、以下に記載した通りである。なお、(M1)~(M3)の量はメタノール及び水を除いた純分の量で記載した。
(ax-1):2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学(株)製、「A-SA」、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=コハク酸、X=エチレン基(CH2CH2))
(ax-2):2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学(株)製、「SA」、一般式(1)におけるR1がメチル基、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=コハク酸、X=エチレン基)
(ax-3):2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学(株)製、「ライトアクリレートHOA-HH(N)」、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=シクロヘキサンジカルボン酸、X=シクロヘキシレン基)
(ax-4):2-アクリロイルオキシエチル-フタル酸(共栄社化学(株)製、「HOA-MPL(N)」、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=フタル酸、X=フェニレン基)
(ax-5):2-アクリロイルオキシエチル-セバシン酸(製造例3で得たもの、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=セバシン酸、X=オクチレン基)
(ax-6):2-アクリロイルオキシエチル-オクタデカン二酸(製造例4で得たもの、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はエチレン基、m=1、化合物(x)=オクタデカン二酸、X=ヘキサデシレン基)
(ax-7):カルボキシル基含有アクリレート(製造例5で得たもの、一般式(1)におけるR1が水素原子、R2はプロピレン基、m=13、化合物(x)=コハク酸、X=エチレン基)
(b-1):アクリル酸n-ドデシル
(b-2):メタクリル酸n-ドデシル
(b-3):メタクリル酸2-オクチルドデシル
(b-4):メタクリル酸2-デシルテトラデシル
(M1):ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩の55重量%メタノール溶液(製造例1で得たもの、分子量=402)
(M2):1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩の55重量%メタノール溶液(合成方法は特開2001-316372号公報に記載の方法に従った、分子量=187)
(M3):トリブチルメチルホスホニウム・モノメチル炭酸塩(分子量=292)の50重量%溶液(水:メタノール=3:2)、シグマアルドリッチ社製
【0091】
実施例1~15で得た潤滑油用導電剤(Z-1)~(Z-15)及び参考例として下記(Z’-1)~(Z’-2)について、下記に従って基油溶解性を評価した。結果を表1に示す。
(Z’-1):ジメチルジデシルアンモニウム・2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(比較製造例1で得たもの)
(Z’-2):1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(比較製造例2で得たもの)
【0092】
<基油溶解性>
潤滑油用導電剤(Z-1)~(Z-15)をそれぞれ5重量部、(Z’-1)を3.7重量部又は(Z’-2)2.2重量部を、それぞれの100重量部の下記基油1~4に添加して混合して評価した。
基油1:Yubase4(SKルブリカンツ社製)(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、粘度指数:122)
基油2:Yubase3(SKルブリカンツ社製)(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.1mm2/s、粘度指数:112)
基油3:ドデカン二酸ジ(2-エチルヘキシル)エステル(田岡化学工業(株)製、製品名「DODN」、SP値:8.85(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.7mm2/s、粘度指数:169)
基油4:アジピン酸ジイソデシルエステル(大八化学工業(株)製、製品名「DIDA」、SP値:8.97(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.7mm2/s、粘度指数:156)
[評価基準]
○:外観が均一であり、不溶解物がない
×:外観が不均一であり、不溶解物が認められる
【0093】
<実施例16~37、比較例1~4>
表2又は3に示す配合割合で、各成分を常温(25℃)で均一混合して本発明の潤滑剤組成物であるグリース(N-1)~(N-22)及び比較用のグリース(N’-1)~(N’-4)を調製した。また、得られたグリースを用いて、体積抵抗率、安定性試験及び摩耗痕深さの評価を行った。結果を表2及び3に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
なお、表2及び3において、各成分は下記を用いた。なお、増ちょう剤の含有量は基油を除いた純分の量として記載した。
<増ちょう剤>
ウレア化合物含有基油溶液:製造例2で得たもの
<潤滑剤用導電剤>
(Z-1)~(Z-15):実施例1~15で得たもの
(Z’-1)~(Z’-2):比較製造例1又は2で得たもの
カーボンブラック:シグマアルドリッチ社製
<基油>
基油1:Yubase4(SKルブリカンツ社製)(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:4.2mm2/s、40℃の動粘度:19.6mm2/s、粘度指数:122)
基油2:Yubase3(SKルブリカンツ社製)(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.1mm2/s、40℃の動粘度:12.4mm2/s、粘度指数:112)
基油3:ドデカン二酸ジ(2-エチルヘキシル)エステル(田岡化学工業(株)製)、製品名「DODN」、SP値:8.85(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.7mm2/s、40℃の動粘度:13.7mm2/s、粘度指数:169)
基油4:アジピン酸ジイソデシルエステル(大八化学工業(株)製、製品名「DIDA」、SP値:8.97(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.7mm2/s、40℃の動粘度:14.2mm2/s、粘度指数:156)
【0097】
<初期の体積抵抗率>
1.5cm×2cmの2つの銅板間に厚さ1cmのグリースを挟み抵抗値を測定試料厚さと電極面積から体積抵抗率を測定した。測定にはHIOKI社製 DSM-8104ディジタル超絶縁/微小電流計を使用した。結果を「×107Ω・cm」として、表2及び3に示す。なお、潤滑剤組成物が導電性を保ち、その性能を発揮するためには、体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以下であることが好ましい。
【0098】
<安定性試験>
下記条件にて回転装置のついた試験機を用いて安定性試験を行い、200時間経過後、400時間経過後及び800時間経過後の体積抵抗率(Ω・cm)を確認した。結果を「×107Ω・cm」として、表2及び3に示す。さらに、導電性の経時安定性の指標として、初期の体積抵抗率と800時間経過後の体積抵抗率とから変化率(800時間/初期)を算出した。変化率(800時間/初期)は1に近い方が好ましい。
[試験条件]
温度:130℃
荷重(ロード負荷):Fr=1960N〔200kgf〕
回転数:100回/分
【0099】
<摩耗痕深さ>
下記測定機器を用いて、試験条件はボール-オンプレートの条件で行った。
機器:振動摩擦摩耗試験機(オプチモール社製 SRV試験機)
試験片(摩擦材):SUJ-2
プレート:φ24×6.9mm
ボール:φ10mm
温度:100℃
荷重:200N
振幅:1.0mm
振動数:50Hz
試験時間:試験開始60分後を測定
☆:摩耗痕深さが0.0μm以上0.15μm未満
◎:摩耗痕深さが0.15μm以上0.3μm未満
○:摩耗痕深さが0.3μm以上0.6μm未満
×:摩耗痕深さが0.6μm以上
【0100】
表1の結果から、本発明の潤滑剤用導電剤は種々の基油への溶解性が高いことがわかる。また、表2及び3の結果から、本発明の潤滑剤用導電剤を含有する潤滑剤組成物(グリース)は、体積抵抗率が低くかつ安定性試験後の体積抵抗率の変化が小さいことがわかる。また、本発明の潤滑剤用導電剤を含有する潤滑剤組成物(グリース)を用いた場合、摩耗痕深さが0.6μm未満であり、耐摩耗性にも優れることがわかる。
一方、潤滑剤用導電剤を含有しない比較例1、及び基油1への溶解性が低い潤滑剤用導電剤(Z’-1)又は(Z’-2)を含有する比較例2又は3の潤滑剤組成物(グリース)は、体積抵抗率が高く、導電性が低いことがわかる。また、潤滑剤用導電材としてカーボンブラックを含有する比較例4の潤滑剤組成物(グリース)は、初期の体積抵抗率は低いものの、安定性試験後の体積抵抗率が高く、導電性が経時的に低下することがわかる。さらに比較例1及び4は耐摩耗性も不良であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の潤滑剤用導電剤は、基油への溶解性が高く、導電性の経時的な低下が小さく、耐摩耗性を向上できるので、グリース及び潤滑油等の潤滑剤に導電性を付与するための潤滑剤用導電剤として用いることができる。特に、種々の内燃機関及び工作機械などの帯電部周辺の軸受または摺動部に使用されるグリースに導電性を付与するための導電剤として好適である。また、本発明の潤滑剤組成物は、グリース及び潤滑油として好適に用いることができ、特に、内燃機関及び工作機械などの帯電部周辺の軸受(転がり軸受等)又は摺動部等の帯電防止が要求される用途のグリースとして有用である。