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特許7480026磁気共鳴イメージング装置、温度測定装置および温度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、温度測定装置および温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240430BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 ZAA
A61B5/055 331
G01N24/00 600C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020186600
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076262
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 和人
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2015/079921(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0072624(US,A1)
【文献】再公表特許第2014/199793(JP,A1)
【文献】国際公開第2008/126895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定する温度センサと、
少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において、前記温度センサからの出力を除外、または前記温度センサの機能を停止させるセンサ制御部と、
を具備し、
前記センサ制御部は、前記温度センサにより測定された温度データから、前記対象期間の温度データを除外する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記対象期間は、傾斜磁場が印加されている期間を含む、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記対象期間は、前記高周波磁場の印加に起因する過渡応答が発生している期間を含む、請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記対象期間以外の期間で測定された温度データを用いて、前記超電導コイルの推定温度を算出する算出部をさらに具備する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記温度センサに接続される第1スイッチをさらに具備し、
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第1スイッチをオフにする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記温度センサの一端と接続される第2スイッチと、
前記温度センサの他端と接続される第3スイッチと、をさらに具備し、
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記温度センサに電流が流れないように前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを制御する、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第2スイッチは、前記温度センサと並列に接続され、
前記第3スイッチは、一端が前記第2スイッチの一端と接続され、他端が接地され、
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンにする、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記第2スイッチは、一端が前記温度センサの一端と接続され、他端が接地され、
前記第3スイッチは、一端が前記温度センサの他端と接続され、他端が接地され、
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンにする、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定する温度センサと、
一端が前記温度センサの一端に接続され、他端が接地される、コンデンサとダイオードとから形成される第1ダイオードブロックと、
一端が前記温度センサの他端に接続され、他端が接地される、コンデンサとダイオードとから形成される第2ダイオードブロックと、を具備し、
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、高周波磁場および傾斜磁場の少なくとも一方に起因するノイズとなる誘起電圧が前記ダイオードの順方向電圧を超える場合、前記温度センサに電流が流れないように配置される、温度測定装置。
【請求項10】
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、前記温度センサの信号線との接続点と接地との間の距離が、前記高周波磁場と共振しない距離となるように配置される、請求項9に記載の温度測定装置。
【請求項11】
静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定し、
少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において測定された温度データを除外、または温度測定機能を停止させ
測定された前記超電導コイルの温度データから、前記対象期間の温度データを除外する、温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書等に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、温度測定装置および温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導型磁気共鳴イメージング装置(超電導型MRI装置)では、超電導コイルの冷媒として、例えばヘリウムを利用する。しかし、近年のヘリウムの価格の高騰により、MRI装置のライフタイムコストが圧迫されている。
そのため、可能な限りヘリウムの容量を少なくした低容量冷媒の採用が望まれる。しかし、ヘリウムの容量が多い、つまり冷媒が十分にあるMRI装置では、超電導コイルの温度上昇があったとしても冷媒の蒸発によって発熱が吸収できる可能性が高いが、低容量冷媒のように冷媒の量が少ないと、外界から熱の侵入によるクエンチが発生する可能性が高まってしまう。
よって、低容量冷媒を用いたMRI装置では、磁石内部の超電導状態を保つため、超電導コイルの温度を管理することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-183472号公報
【文献】特開平01-242052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、温度の推定精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、温度センサとセンサ制御部とを含む。温度センサは、静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定する。センサ制御部は、少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において、前記温度センサからの出力を除外、または前記温度センサの機能を停止させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係るMRI装置を示す概念図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る温度測定回路の概念図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るMRI装置における温度測定処理を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係る温度測定処理の第1例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る温度測定処理の第2例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る温度測定処理の第3例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る温度測定回路の第1の構成例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るMRI装置における温度測定処理を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態に係る温度測定回路の第1の構成例に係る温度測定処理の一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る温度測定回路の第2の構成例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る温度測定回路の第2の構成例に係る温度測定処理の一例を示す図である。
図12図12は、第3の実施形態に係る温度測定回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、温度測定装置および温度測定方法について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行なうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置を示す概念図である。
図1に示すように、MRI装置1は、静磁場磁石101と、磁石管理ユニット2と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路119と、シーケンス制御回路121と、バス123と、インタフェース125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131とを備える。なお、MRI装置1は、静磁場磁石101と傾斜磁場コイル103との間に中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。
【0009】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石である。なお、静磁場磁石101は、略円筒形状に限らず、開放型の形状で構成されてもよい。静磁場磁石101は、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、本実施形態では、超電導コイルを用いた超電導磁石を想定する。
【0010】
傾斜磁場コイル103は、中空の円筒形状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸およびY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0011】
傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)位相エンコード用傾斜磁場およびスライス選択用傾斜磁場を形成する。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場は、撮像断面を決めるために利用される。
【0012】
傾斜磁場電源105は、シーケンス制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0013】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。寝台107は、例えば、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、MRI装置1が設置された検査室内に設置される。
【0014】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路であり、インタフェース125を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向へ移動させる。
【0015】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。送信コイル115は、送信回路113からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場に相当する送信RF波を発生する。送信コイル115は、例えば、全身コイルである。全身コイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。全身コイルと傾斜磁場コイル103との間には、これらのコイルを磁気的に分離するための円筒状のRFシールドが設置される。
【0016】
送信回路113は、シーケンス制御回路121の制御により、ラーモア周波数等に対応するRFパルス)を送信コイル115に供給する。
【0017】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。受信コイル117は、例えば、フェーズドアレイコイルである。
【0018】
受信回路119は、シーケンス制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタル化された複素数データであるデジタルのMR信号を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D)変換を実行する。受信回路119は、A/D変換されたデータを標本化(サンプリング)する。これにより、受信回路119は、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、シーケンス制御回路121に出力する。
【0019】
シーケンス制御回路121は、処理回路131から出力された検査プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113および受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。検査プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンス(撮像シーケンスともいう)を有する。検査プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給されるRFパルスの大きさ、送信回路113により送信コイル115にRFパルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。
【0020】
バス123は、インタフェース125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131との間でデータを伝送させる伝送路である。バス123には、ネットワーク等を介して、各種生体信号計測器、外部記憶装置、各種モダリティなどが適宜接続されてもよい。例えば、生体信号計測器として、不図示の心電計がバスに接続される。
【0021】
インタフェース125は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。インタフェース125は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路を有する。なお、インタフェース125が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、インタフェース125は、MRI装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
【0022】
ディスプレイ127は、処理回路131におけるシステム制御機能1311による制御のもとで、画像生成機能1313により生成された各種磁気共鳴画像(MR画像)、撮像および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ127は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0023】
記憶装置129は、画像生成機能1313を介してk空間に充填されたMRデータ、画像生成機能1313により生成された画像データ等を記憶する。記憶装置129は、各種検査プロトコル、検査プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置129は、処理回路131で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置129は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスク等である。また、記憶装置129は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0024】
磁石管理ユニット2は、温度測定回路20と、センサ制御部21と、算出部22とを含む。なお、後述の様に、温度測定回路20と、処理回路131のシステム制御機能1311および算出機能1315により、同様の構成が実現されてもよい。
【0025】
温度測定回路20は、温度センサにより静磁場を発生する静磁場磁石101を形成する1箇所以上の超電導コイルの温度を測定する回路構成を有する。なお、温度測定回路20は、温度測定装置とも呼ぶ。
【0026】
センサ制御部21は、少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において、温度センサからの出力を除外、または温度センサの機能を停止させる。なお、以下では対象期間を不使用期間ともいう。
【0027】
算出部22は、対象期間以外の期間で測定された温度データを用いて、超電導コイルの推定温度を算出する。
【0028】
処理回路131は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM等のメモリ等を有し、MRI装置1を統括的に制御する。処理回路131は、システム制御機能1311と、画像生成機能1313と、算出機能1315とを有する。
【0029】
処理回路131の各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置129へ記憶されている。処理回路131は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置129から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路131は、図1の処理回路131内に示された複数の機能等を有することになる。
【0030】
なお、図1においては単一の処理回路131にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路131を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0031】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0032】
プロセッサは、記憶装置129に保存されたプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。なお、記憶装置129にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路113、受信回路119、シーケンス制御回路121等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0033】
処理回路131は、システム制御機能1311により、MRI装置1を制御する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従ってMRI装置1の各回路を制御する。例えば、処理回路131は、システム制御機能1311により、インタフェース125を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて、検査プロトコルを記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、撮像条件に基づいて、検査プロトコルを生成してもよい。処理回路131は、検査プロトコルをシーケンス制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0034】
処理回路131は、システム制御機能1311により、励起パルスシーケンスに従って励起パルスを印加し、傾斜磁場を印加するように制御する。処理回路131は、システム制御機能1311により、励起パルスシーケンスを実行後、各種データ収集用のパルスシーケンスであるデータ収集シーケンスに従って、被検体PからのMR信号を収集し、MRデータを生成する。システム制御機能1311は、センサ制御部21と同様の処理を行う機能を有してもよい。
【0035】
処理回路131は、画像生成機能1313により、リードアウト傾斜磁場の強度に従って、k空間のリードアウト方向に沿ってMRデータを充填する。処理回路131は、k空間に充填されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を生成する。例えば、処理回路131は、複素のMRデータから絶対値(Magnitude)画像を生成することが可能である。また、処理回路131は、複素のMRデータにおける実部データと虚部データとを用いて位相画像を生成することが可能である。処理回路131は、絶対値画像および位相画像などのMR画像を、ディスプレイ127や記憶装置129に出力する。
【0036】
処理回路131は、磁石管理ユニット2から温度データを取得できる場合、算出機能1315により、磁石管理ユニット2に含まれる算出部22と同様に、超電導コイルの推定温度を算出する。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る温度測定回路20の概念図について図2を参照して説明する。
図2は、Z軸方向から見た架台の断面図であり、静磁場磁石101、傾斜磁場コイル103、送信コイル115の断面がそれぞれ示される。また、図2には、静磁場磁石101内に一部が隣接して配置される、温度測定回路20の等価回路の概念も併せて図示される。
【0038】
静磁場磁石101は、架台内に配置される複数のコイルブロックが接続された超電導コイル1011により形成される。超電導コイル1011は、液体ヘリウムが含まれる冷媒容器(図示せず)内に浸される。液体ヘリウムは、気化しないように極低温冷凍機(図示せず)によって冷却されることで、超電導コイル1011の超電導状態が保たれる。
【0039】
低容量冷媒の場合は、サーモサイフォンと呼ばれる閉ループ構造内に冷媒を封じ込め、閉ループの流路によって伝熱冷却すればよい。または、伝熱材のみで冷凍機のコールドヘッドから吸熱する伝導冷却方式で、冷媒を使わずに実現してもよい。
【0040】
温度測定回路20は、抵抗値Rを有する抵抗型センサである温度センサ201、抵抗値R0を有する基準抵抗202を含む。温度センサ201は、静磁場磁石101内で超電導コイル1011に近接して配置される。なお、図2の例では、温度センサ201を1つ配置する例を示すが、複数の温度センサ201を配置してもよい。複数の温度センサ201を配置することで、超電導コイル1011の局所的な温度上昇も検出できる。
【0041】
超電導コイル1011の温度の測定方法は、温度センサ201と基準抵抗202との電圧を測定し、電圧値の変動から温度を算出すればよい。温度センサ201の抵抗値は、温度に応じて変化するため、計測される電圧値も変化することになる。よって、基準電圧V0を基準として温度センサ201および基準抵抗202にかかる電圧を測定した測定電圧Vmと、抵抗値と温度との対応関係とを参照することで、超電導コイル1011の温度および温度変化を測定できる。
【0042】
温度測定回路20による温度の測定方法は上述の通りであるが、実際には、MRI装置1の撮像中は、高周波磁場であるRFパルスが被検体に印加されることによる電磁誘導(誘起電圧)が温度センサ201にノイズとして発生する。このような高周波磁場に起因するノイズは、温度測定のための測定電圧よりも条件によっては数十倍以上高い電圧のノイズとして測定値に重畳されるため、温度の測定精度を大きく劣化させる。よって、本実施形態に係るMRI装置では、このようなノイズを除去する制御が実行される。
【0043】
具体的に、第1の実施形態に係るMRI装置における温度推定処理について図3のフローチャートを参照して説明する。
ステップS301では、撮像シーケンスに従って撮影が開始される。
ステップS302では、温度センサ201が、超電導コイル1011の温度を測定することで、温度データが取得される。また、温度測定回路20において温度を測定した時刻情報を取得できる場合、温度測定回路20は、温度センサ201の測定値と当該測定値を得た時刻を示す時刻情報とを含めた温度データを取得してもよい。
【0044】
ステップS303では、センサ制御部21が、例えばシーケンス制御回路121から撮像シーケンス情報を取得する。
ステップS304では、センサ制御部21が、撮像シーケンス情報に基づき不使用期間を決定する。具体的には、センサ制御部21は、少なくともRFパルスが印加されている期間を不使用期間として決定する。不使用期間の決定方法としては、例えば、撮像シーケンス情報からRFパルスの印加の幅とタイミングとが参照されることで、RFパルスを印加している期間が算出できるため、当該期間を不使用期間として決定されればよい。
【0045】
ステップS305では、センサ制御部21が、不使用期間に取得した温度データを除去する。センサ制御部21は、取得されている温度データのうち、不使用期間の温度データを除去した残りのデータを算出部22に送る。
ステップS306では、算出部22が、ステップS305において不使用期間の温度データが除去された残りの温度データから、超電導コイル1011の推定温度を算出する。
【0046】
次に、第1の実施形態に係る温度測定処理の第1の具体例について図4を参照して説明する。
図4(a)は、RFパルスの印加期間401を示す時系列データであり、図4(b)は、温度測定回路20による測定電圧の時系列データであり、図4(c)は、不使用期間を設定した場合の測定電圧の時系列データを示す。
【0047】
超電導コイル1011は一定温度に冷却されているため、温度測定回路20の温度センサ201の抵抗値はおおよそ一定値となることから、測定電圧の時系列データはおおよそ一定値を示すはずである。しかし、RFパルスの印加期間401では、RFパルスの高周波磁場に起因するノイズが温度測定回路20で測定値に重畳されるため、測定値に誤差が生じる。
【0048】
よって、RFパルスを印加している期間を不使用期間402として設定し、不使用期間402に測定された温度データを除去する、つまり不使用期間402に測定された温度データをマスクする。これにより、ノイズの影響がある期間に測定された温度データを用いずに、ノイズの影響がない期間に測定された温度データから、超電導コイル1011の推定温度を算出することができる。
【0049】
なお、RFパルス印加後に測定された温度データには、温度測定回路20の信号線およびケーブルのインダクタンス分または抵抗分によって、RFパルスに起因するノイズの影響が真値に戻るまでに過渡応答が発生する可能性がある。よって、当該過渡応答の期間を考慮してもよい。
【0050】
過渡応答を考慮した、MRI装置1の温度測定処理の第2の具体例について図5を参照して説明する。
図5は、図4と同様に、上から順に、(a)RFパルスの印加期間を示す時系列データ、(b)測定電圧の時系列データ、および(c)不使用期間を設定した場合の測定電圧の時系列データである。
【0051】
図4と異なり、RFパルスの印加期間401を過ぎても、過渡応答により測定値にふらつきが生じている期間がある。当該期間が過渡応答期間501であるため、RFパルスの印加期間401と過渡応答期間501とを合計した期間を不使用期間502として決定すればよい。
【0052】
なお、過渡応答期間501は、タイプテストなどで決定してもよい。また、過去に取得された温度データ(または測定電圧)に基づき、RFパルスの印加が終了してから温度(または測定電圧)がRFパルスの印加前の一定値に戻るまでの期間を過渡応答期間501として決定してもよい。
【0053】
RFパルスは高周波磁場を発生するため、温度測定回路20に重畳されるノイズが多く発生し得るが、高周波磁場ではない傾斜磁場であっても、傾斜磁場を印加することで大きなエネルギーが発生する。そのため、温度測定回路20で測定される信号全体が底上げされる等のS/N比の劣化をもたらす可能性がある。さらに、傾斜磁場を印加する際の装置の振動により、ノイズが発生し、発生したノイズが温度センサ201の測定値に重畳される可能性もある。
【0054】
そこで、RFパルスに加え、傾斜磁場を印加している期間も不使用期間として設定してもよい。傾斜磁場を考慮した、MRI装置1の温度測定処理の第3の具体例について図6を参照して説明する。
図6(a),(c),(d)は、図4(a),(b),(c)とそれぞれ同様である。図6(b)は、傾斜磁場の印加期間601を示す時系列データである。
【0055】
図6に示すように、RFパルスまたは傾斜磁場の少なくともどちらか一方が印加されている期間が不使用期間602として設定されればよい。
なお、ファンクショナルMRI(fMRI)のような長時間の撮影など、RFパルスおよび傾斜磁場が印加される期間が長い撮像シーケンスでは、不使用期間602の温度データを除去してしまうと、超電導コイル1011の推定温度を算出するための残りの温度データ数が少なくなってしまう可能性もある。このような場合、撮像シーケンス中に温度測定のためのブランク期間を設けてもよい。温度測定回路20は、RFパルスおよび傾斜磁場が印加されない当該ブランク期間において超電導コイル1011の温度を測定して温度データを取得することで、推定温度を算出するための温度データのデータ数を確保できる。さらに、撮像シーケンス中ではなく、検査プロトコルと次の検査プロトコルとの間で、温度センサ201が超電導コイル1011の温度を測定し、温度測定回路20が温度データを取得してもよい。
【0056】
また、RFパルスの印加期間401および傾斜磁場の印加期間601に関わらず、推定温度を算出するためのデータ数が不十分であり、測定値のS/N比が確保できない場合は、算出部22が、不使用期間以外で取得した温度データ時間平均を算出することでS/N比も向上させてもよい。
【0057】
以上に示した第1の実施形態によれば、センサ制御部は、不使用期間に取得された温度データを、超電導コイルの推定温度を算出するためのデータ群から除去する。これにより、RFパルスまたは傾斜磁場が印加されることにより発生するノイズの影響を受けない温度データに基づいて、超電導コイルの推定温度を算出でき、超電導コイルの温度の推定精度を向上させることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、温度測定回路20にスイッチを設け、不使用期間における温度データを物理的に取得しないようにする点が第1の実施形態とは異なる。
【0059】
第2の実施形態に係る温度測定回路20の第1の構成例について図7を参照して説明する。
図7は、図2と同様にZ軸方向から見た架台の断面図である。第2の実施形態に係る温度測定回路20は、温度センサ201と、基準抵抗202と、スイッチ701と、スイッチ制御回路702とを含む。
【0060】
スイッチ701は、温度センサ201と基準抵抗202との間に接続される。スイッチ701が、スイッチ制御回路702によりオンオフ制御されることで、温度センサ201への電流の導通または遮断を実現する。スイッチ701は、例えば水銀リレーを用いて形成されることを想定するが、これに限らず、微弱電流をスイッチのオン時に導通できる構成であればよい。
【0061】
スイッチ制御回路702は、例えばシーケンス制御回路121またはセンサ制御部21から撮像シーケンス情報を受け取り、撮像シーケンス情報に含まれるRFパルスおよび/または傾斜磁場の印加期間に関する情報を参照し、スイッチ701のオンオフを制御する。なお、センサ制御部21から情報を受け取る場合は、撮像シーケンス情報全体ではなく、撮像シーケンス情報からセンサ制御部21により抽出されたRFパルスおよび/または傾斜磁場の印加期間に関する情報を受け取ってもよい。
【0062】
スイッチ制御回路702は、ここでは温度測定回路20に含まれる場合を想定するが、磁石管理ユニット2に存在してもよいし、磁石管理ユニット2とは別に存在してもよい。すなわち、撮像シーケンス情報に基づいて、スイッチ701をオンオフ制御可能であれば、どこに存在してもよい。また、スイッチ制御回路702の代わりに、センサ制御部21がスイッチ制御回路702の機能を実行するように構成されてもよい。
【0063】
次に、第2の実施形態に係るMRI装置1の温度測定処理について図8のフローチャートを参照して説明する。図8のフローチャートでは、1つの撮像シーケンスにおける温度測定処理を示す。
【0064】
ステップS801では、スイッチ制御回路702は、撮影開始前に撮像シーケンス情報を取得する。
ステップS802では、撮像シーケンスに従って撮影が開始される。
【0065】
ステップS803では、温度測定回路20が、温度データを取得する。
ステップS804では、スイッチ制御回路702が、撮像シーケンス情報に基づいて、RFパルスまたは傾斜磁場が印加中の期間であるか否かを判定する。RFパルスまたは傾斜磁場が印加中の期間に該当する場合は、ステップS805に進み、RFパルスまたは傾斜磁場が印加されていない期間であれば、ステップS806に進む。
【0066】
ステップS805では、RFパルスまたは傾斜磁場が印加中の期間であるため、温度測定回路20により測定が行われないように、スイッチ制御回路702がスイッチ701をオフにする。なお、スイッチが既にオフとなっている場合は、そのままスイッチを切り換えなくてもよい。
【0067】
ステップS806では、RFパルスまたは傾斜磁場が印加されていない期間であるため、温度測定回路20により測定が行われないように、スイッチ制御回路702が、スイッチ701をオンにする。なお、スイッチが既にオンとなっている場合は、そのままスイッチを切り換えなくてもよい。
【0068】
ステップS807では、算出部22が、温度測定回路20により取得された温度データから、超電導コイル1011の推定温度を算出する。
【0069】
次に、第2の実施形態に係る温度測定回路20の第1の構成例における温度測定処理の一例について図9を参照して説明する。
図9(a)は、RFパルスの印加期間401を示す時系列データであり、図9(b)は、スイッチ701の制御状態を示す時系列データであり、図9(c)は、測定電圧の時系列データである。
【0070】
図9に示すように、スイッチ制御回路702によりRFパルスの印加期間401にスイッチ701がオフとなり、温度センサ201に電流が流れないため、温度が測定されない。一方、RFパルスの印加期間401にスイッチ701がオンとなり、温度センサ201に電流が流れ、温度が測定される。
【0071】
なお、スイッチ制御回路702は、RFパルスに限らず、第1の実施形態に示した過渡応答期間501および傾斜磁場の印加期間601にスイッチ701をオフとしてもよい。
これにより、温度測定回路20は、RFパルスまたは傾斜磁場に起因するノイズの影響を受けずに温度を測定することができるため、測定される温度の精度を向上させることができる。
【0072】
次に、第2の実施形態に係る温度測定回路20の第2の構成例について図10を参照して説明する。
図10は、図7と同様にZ軸方向から見た架台の断面図である。第2の実施形態の変形例に係る温度測定回路20は、温度センサ201と、基準抵抗202と、第1スイッチ1001と、第2スイッチ1002と、第3スイッチ1003と、スイッチ制御回路1004とを含む。
【0073】
第1スイッチ1001は、スイッチ701と同様の構成であればよく、温度センサ201と基準抵抗202との間に接続される。スイッチ701が、スイッチ制御回路702によりオンオフ制御されることで、電流の導通または遮断を実現する。
【0074】
第2スイッチ1002は、温度センサ201と並列に接続される。
第3スイッチ1003は、一端が第2スイッチ1002の第1スイッチ1001側の一端に接続され、他端が接地される(GNDに接続される)。第2スイッチ1002および第3スイッチ1003についてもスイッチ701と同様の構成で実現されればよい。なお、電圧源V0がスイッチ1002,1003によってGNDに接続されるため、電源側に適切な電流制限機構を設けておくことが望ましい。
【0075】
スイッチ制御回路1004は、スイッチ制御回路702と同様であり、撮像シーケンス情報を受け取り、撮像シーケンス情報に含まれるRFパルスおよび/または傾斜磁場の印加期間に関する情報を参照し、温度を測定するときは、第1スイッチ1001をオンにし、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003をオフにするように制御する。これにより、温度センサ201に電流が流れ、接地側には電流が流れない。
一方、温度を測定しないときは、スイッチ制御回路1004は、第1スイッチ1001をオフにし、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003をオンにするように制御する。これにより、温度センサ201には電流が流れず、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003を介して接地側に電流が流れる。
なお、第2スイッチ1002の一端は基準電圧V0側の信号線に接続され、他端が接地されてもよい。
【0076】
次に、第2の実施形態に係る温度測定回路20の第2の構成例に係る温度測定処理の一例について図11を参照して説明する。
図11(a)は、RFパルスの印加期間401を示す時系列データであり、図11(b)は、第1スイッチ1001の制御状態を示す時系列データであり、図11(c)は、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003の制御状態を示す時系列データであり、図11(d)は、測定電圧の時系列データである。
【0077】
図11に示すように、スイッチ制御回路1004によりRFパルスの印加期間401に第1スイッチ1001がオフとなる一方、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003がオンとなる。これにより、温度が測定されない。一方、RFパルスの印加期間401以外の期間では、スイッチ1001がオンとなり、第2スイッチ1002および第3スイッチ1003がオフとなる。これにより、温度センサ201により温度が測定される。
【0078】
なお、スイッチ制御回路1004は、RFパルスに限らず、第1の実施形態に示した過渡応答期間501および傾斜磁場の印加期間601で温度を測定しないように、過渡応答期間501および傾斜磁場の印加期間601において、第1スイッチ1001をオフとし、第2スイッチおよび第3スイッチをオンとしてもよい。
【0079】
以上に示した第2の実施形態によれば、温度測定回路にスイッチを配置し、RFパルスまたは傾斜磁場が印加される期間にスイッチをオンオフ制御し、温度センサに電流が流れないように設定する。これにより、温度センサは、RFパルスまたは傾斜磁場に起因するノイズの影響を受けずに温度を測定することができるため、測定される温度の精度を向上させることができる。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る温度測定回路20について図12を参照して説明する。
図12は、図7と同様にZ軸方向から見た架台の断面図である。第3の実施形態に係る温度測定回路20は、温度センサ201と、基準抵抗202と、第1ダイオードブロック1201と、第2ダイオードブロック1202とを含む。
【0081】
第1ダイオードブロック1201は、コンデンサと、極性が異なりかつ並列に接続される2つのダイオード(以下、クロスダイオードともいう)とを含む。第1ダイオードブロック1201は、一端が温度センサ201の一端に接続され、他端が接地される。
【0082】
第2ダイオードブロック1202は、第1ダイオードブロック1201と同一の構成を有する。第2ダイオードブロック1202は、一端が温度センサ201の他端に接続され、他端が接地される。
【0083】
なお、図10に示す第2スイッチ1002および第3スイッチ1003と同様に、第1ダイオードブロック1201が温度センサ201と並列に接続され、第2ダイオードブロック1202の一端が第1ダイオードブロック1201の一端に接続され、他端が接地されてもよい。
【0084】
第1ダイオードブロック1201および第2ダイオードブロック1202はそれぞれ、ダイオードの順方向電圧以上のノイズのエネルギーが温度測定回路20に発生した場合、電流が接地側に流れる(GND側に流れる)。一方、ノイズのエネルギーがダイオードの順方向電圧未満である場合、第1ダイオードブロック1201および第2ダイオードブロック1202には電流が流れず、特に動作をしない素子として振る舞う。
【0085】
すなわち、クロスダイオードは、RFパルスによる高周波磁場および傾斜磁場に起因するノイズが温度測定回路20に発生した場合は、温度センサ201に電流が流れないよう電流を接地側に逃がすことでスイッチの役割を果たすことができる。よって、温度センサ201への電流を遮断できるため、温度測定回路20では温度が測定されない。
【0086】
一方、ノイズが温度測定回路20に発生していない通常時は、第1ダイオードブロック1201および第2ダイオードブロック1202には電流が流れないため、温度センサ201に電流が流れ、温度測定回路20では温度が測定される。
【0087】
なお、第1ダイオードブロック1201および第2ダイオードブロック1202はそれぞれ、温度センサ201の信号線の接続点から接地との距離が、RFパルスと共振しない距離となるように配置される。例えば、温度センサ201から引き出される信号線の接続点と接地との間の距離が、RFパルスの共鳴周波数の2分の1波長、4分の1波長とならないように配置される。より具体的には、例えば共鳴周波数の4分の1波長よりも短い距離となるように配置されればよい。
【0088】
以上に示した第3の実施形態によれば、ダイオードの順方向電圧以上のノイズのエネルギーが温度測定回路に発生した場合、電流が接地側に流れるように、温度測定回路にクロスダイオードブロックを配置する。これにより、第2の実施形態のようなスイッチおよびスイッチ制御回路を用いずに、閾値以上のノイズが発生した場合に、温度センサへのエネルギーの流れ込みを防ぐことができる。よって、第2の実施形態と同様に、RFパルスの高周波磁場および傾斜磁場の影響を受ける期間は温度を測定せず、高周波磁場および傾斜磁場の影響を受けない期間でのみ温度を測定することができるため、超電導コイルの温度の推定精度を向上させることができる。本実施形態では周波数の低い傾斜磁場のノイズを低減することは難しいが、傾斜磁場起因のノイズが十分に小さい場合や傾斜磁場起因のノイズの周波数が十分に高い場合は、特別な制御回路なしに高周波磁場起因のノイズの影響を低減できる。
【0089】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、温度の推定精度を向上させることができる。
【0090】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0091】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0092】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0093】
(付記1)
静磁場磁石を形成する超電導コイルの温度を測定する温度センサと、
少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において、前記温度センサからの出力を除外、または前記温度センサの機能を停止させるセンサ制御部と、
を具備する磁気共鳴イメージング装置。
【0094】
(付記2)
前記対象期間は、傾斜磁場が印加されている期間を含んでもよい。
【0095】
(付記3)
前記対象期間は、前記高周波磁場の印加に起因する過渡応答が発生している期間を含んでもよい。
【0096】
(付記4)
前記対象期間以外の期間で測定された温度データを用いて、前記超電導コイルの推定温度を算出する算出部をさらに含んでもよい。
【0097】
(付記5)
前記センサ制御部は、前記温度センサにより測定された温度データから、前記対象期間の温度データを除外してもよい。
【0098】
(付記6)
前記磁気共鳴イメージング装置は、前記温度センサに接続される第1スイッチをさらに含んでもよい。
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第1スイッチをオフにしてもよい。
【0099】
(付記7)
前記磁気共鳴イメージング装置は、前記温度センサの一端と接続される第2スイッチと、
前記温度センサの他端と接続される第3スイッチと、をさらに含んでもよい。
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記温度センサに電流が流れないように前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを制御してもよい。
【0100】
(付記8)
前記第2スイッチは、前記温度センサと並列に接続されてもよい。
前記第3スイッチは、一端が前記第2スイッチの一端と接続され、他端が接地されてもよい。
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンにしてもよい。
【0101】
(付記9)
前記第2スイッチは、一端が前記温度センサの一端と接続され、他端が接地されてもよい。
前記第3スイッチは、一端が前記温度センサの他端と接続され、他端が接地されてもよい。
前記センサ制御部は、前記対象期間に前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンにしてもよい。
【0102】
(付記10)
静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定する温度センサと、
一端が前記温度センサの一端に接続され、他端が接地される、コンデンサとダイオードとから形成される第1ダイオードブロックと、
一端が前記温度センサの他端に接続され、他端が接地される、コンデンサとダイオードとから形成される第2ダイオードブロックと、を含み、
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、高周波磁場および傾斜磁場の少なくとも一方に起因する電位変動および電磁誘導の少なくとも一方がダイオードの順方向電圧を超える場合、前記温度センサに電流が流れないように配置される、温度測定装置。
【0103】
(付記11)
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、前記温度センサの信号線との接続点と接地との間の距離が、前記高周波磁場と共振しない距離となるように配置されてもよい。
【0104】
(付記12)
静磁場を発生する磁石を形成する超電導コイルの温度を測定し、
少なくとも高周波磁場が印加されている期間を含む対象期間において測定された温度データを除外、または温度測定機能を停止させる、温度測定方法。
【0105】
(付記13)
前記第1ダイオードブロックは、前記温度センサと並列に接続されてもよい。
前記第2ダイオードブロックは、一端が前記温度センサの一端に接続され、他端が接地されてもよい。
【0106】
(付記14)
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、クロスダイオードを含んでもよい。
【0107】
(付記15)
前記第1ダイオードブロックおよび前記第2ダイオードブロックは、前記温度センサの信号線との接続点と接地との間の距離が、前記高周波磁場の共鳴周波数の4分の1波長よりも短い距離に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 MRI装置
2 磁石管理ユニット
20 温度測定回路
21 センサ制御部
22 算出部
101 静磁場磁石
103 傾斜磁場コイル
105 傾斜磁場電源
107 寝台
109 寝台制御回路
111 ボア
113 送信回路
115 送信コイル
117 受信コイル
119 受信回路
121 シーケンス制御回路
123 バス
125 インタフェース
127 ディスプレイ
129 記憶装置
131 処理回路
201 温度センサ
202 基準抵抗
401,601 印加期間
402,502,602 不使用期間
501 過渡応答期間
701 スイッチ
702,1004 スイッチ制御回路
1001 第1スイッチ
1002 第2スイッチ
1003 第3スイッチ
1011 超電導コイル
1071 天板
1201 第1ダイオードブロック
1202 第2ダイオードブロック
1311 システム制御機能
1313 画像生成機能
1315 算出機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12