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特許7480035樹脂組成物、硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240430BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240430BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240430BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240430BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240430BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240430BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20240430BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240430BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
G03F7/004 505
G02B5/20 101
H10K59/00
H05B33/02
H05B33/12 E
H05B33/14 A
G09F9/30 349C
G09F9/30 365
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020515785
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006803
(87)【国際公開番号】W WO2020171168
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019028714
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】孫 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】石居 正裕
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘司
(72)【発明者】
【氏名】中壽賀 章
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098353(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047606(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/142087(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027674(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/088531(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0060745(US,A1)
【文献】特開2011-068829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08F 2/00 - 2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスカーボンを含有する黒色粒子と、硬化性化合物とを含有し、
前記黒色粒子は、比重が1.75以下であり、かつ、JIS K 5101-13-1に規定する吸油量が、30ml/100g以上、120ml/100g以下であり、
前記黒色粒子の平均粒子径が、5nm以上、200nm以下であり、
前記黒色粒子の含有量が、20重量%以上、60重量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
黒色粒子の荷重16kNにおける粉体抵抗が、5.0×10-1Ω・cm以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
光学密度が、厚み1μmあたり0.6以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
アモルファスカーボンが、オキサジン樹脂が含有するカーボンに由来するものである、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
オキサジン樹脂が、ナフトオキサジン樹脂である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されたブラックマトリックス。
【請求項8】
基板、及び、請求項に記載のブラックマトリックスを備えるカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項に記載のカラーフィルタを備える液晶表示装置。
【請求項10】
請求項に記載のカラーフィルタを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
ホルムアルデヒド、脂肪族アミン及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液、又は、トリアジン及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液を反応させてオキサジン樹脂粒子を形成する工程と、
前記オキサジン樹脂粒子を加熱処理することにより炭化させてアモルファスカーボンを含有する黒色粒子を得る工程とを有する、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光学密度を有し、長期安定性及び絶縁性にも優れた高品質のカラーフィルタを得ることが可能な樹脂組成物に関する。また、該樹脂組成物の硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶カラーディスプレー等の画像表示装置には、カラー画像を表示するためのカラーフィルタが設けられており、このようなカラーフィルタには、カラーレジスト同士の混色防止や黒色表示時の光漏れ防止のために、ブラックマトリックスと呼ばれる遮光部材が必要とされている。
ブラックマトリックスの材料としては、クロム等の金属薄膜が用いられていたが、金属薄膜は光反射率が高く、また、環境負荷が大きいという問題があった。そのため、ブラックマトリックスの材料としては、チタンブラックやカーボンブラック等の黒色顔料を樹脂中に分散させた樹脂組成物が主流となっている。
【0003】
このような樹脂組成物として、例えば、特許文献1には重合性化合物、バインダーポリマー、光重合開始剤、チタンブラック分散物を含有する重合性組成物が開示されている。また、特許文献2には、重合性化合物、光重合開始剤、カーボンブラックを含有する黒色感光性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/122789号
【文献】特開2012-141605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チタンブラックは比重が3以上と比較的大きいことから、樹脂組成物として利用する場合には保管時に沈降が起こりやすい等、長期安定性に課題があり、また、バンドギャップの大きい酸化チタンの一部を窒化することにより得られるため、褐色に近いものが多く、黒色度が不充分であるという問題がある。また、カーボンブラックは、高い導電性を有するため、ブラックマトリックスが導通し、表示不良の原因となるという問題がある。
【0006】
本発明は、高い光学密度を有し、長期安定性及び絶縁性にも優れた高品質のカラーフィルタを得ることが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該樹脂組成物の硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アモルファスカーボンを含有する黒色粒子と、硬化性化合物とを含有し、前記黒色粒子は、比重が1.75以下であり、かつ、JIS K 5101-13-1に規定する吸油量が、30ml/100g以上、120ml/100g以下である樹脂組成物である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、アモルファスカーボンを含有し、比重及び吸油量が所定の範囲である黒色粒子と硬化性化合物とを組み合わせることで、保存安定性、遮光性、絶縁性に優れたブラックマトリックスを形成することができ、高品質のカラーフィルタを作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
(黒色粒子)
本発明の樹脂組成物は、黒色粒子を含有する。
上記黒色粒子は、アモルファスカーボンを含有するものである。
このようなアモルファスカーボンを含有することで、従来のカーボン系黒色粒子に比べ、作製が容易であるため低コストで得られるだけではなく、より高い球形度と分散性も有するため、高性能の黒色顔料として利用することができる。
【0010】
上記黒色粒子を構成するアモルファスカーボンは、sp2結合とsp3結合が混在したアモルファス構造を有し、炭素からなるものであるが、ラマンスペクトルを測定した場合のGバンドとDバンドのピーク強度比が5.0以下であることが好ましい。
上記アモルファスカーボンをラマン分光で測定した場合、sp2結合に対応したGバンド(1580cm-1付近)及びsp3結合に対応したDバンド(1360cm-1付近)の2つのピークが明確に観察される。なお、炭素材料が結晶性の場合には、上記の2バンドのうち、何れかのバンドが極小化してゆく。例えば、単結晶ダイヤモンドの場合は1580cm-1付近のGバンドが殆ど観察されない。一方、高純度グラファイト構造の場合は、1360cm-1付近のDバンドが殆ど現れない。
本発明では、特にGバンドとDバンドのピーク強度比(Gバンドでのピーク強度/Dバンドでのピーク強度)が5.0以下であることで、形成された黒色粒子の絶縁性が高く維持することができる。
上記ピーク強度比が5.0を超えると、粒子の絶縁性が低下するだけではなく、粒子の比重が高くなり、樹脂組成物の保存安定性が低下することになる。
上記ピーク強度比は0.5以上であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましい。
【0011】
GバンドとDバンドのピーク強度比を調整する方法としては、熱処理時の加熱温度の調整やアモルファスカーボンの原料の選択等が挙げられる。具体的には、熱処理時の加熱温度を高めることにより、Gバンドのピーク強度が増加する傾向にある。
【0012】
上記黒色粒子を構成するアモルファスカーボンは、ラマンスペクトルを測定した場合のGバンドのピークの半値幅の好ましい上限が200cm-1、より好ましい上限が180cm-1である。上記半値幅の下限は特に限定されず、小さいほどよい。
【0013】
上記黒色粒子を構成するアモルファスカーボンは、オキサジン樹脂が含有するカーボンに由来するものであることが好ましい。上記オキサジン樹脂は低温で炭化が可能であることから、コストを低減することが可能となる。
上記オキサジン樹脂は、一般にフェノール樹脂に分類される樹脂であるが、フェノール類とホルムアルデヒドに加えて、更にアミン類を加えて反応させることで得られる熱硬化樹脂である。なお、フェノール類において、フェノール環に更にアミノ基があるようなタイプ、例えば、パラアミノフェノールのようなフェノールを用いる場合には、上記反応でアミン類を加える必要はなく、炭化もしやすい傾向にある。炭化のしやすさでは、ベンゼン環ではなく、ナフタレン環を用いることで、更に炭化しやすくなる。
【0014】
上記オキサジン樹脂としては、ベンゾオキサジン樹脂、ナフトオキサジン樹脂があり、このうち、ナフトオキサジン樹脂は、最も低温で炭化しやすいため好適である。以下にオキサジン樹脂の構造の一部として、ベンゾオキサジン樹脂の部分構造を式(1)に、ナフトオキサジン樹脂の部分構造を式(2)に示す。
このように、オキサジン樹脂とは、ベンゼン環又はナフタレン環に付加した6員環をもつ樹脂のことをさし、その6員環には、酸素と窒素が含まれ、これが名前の由来となっている。
【0015】
【化1】
【0016】
上記オキサジン樹脂を用いることにより、エポキシ樹脂等の他の樹脂に比べてかなり低温で黒色粒子を得ることが可能となる。具体的には200℃以下の温度で炭化が可能である。特に、ナフトキサジン樹脂を用いることで、より低温で炭化させることができる。
このように、オキサジン樹脂を用いて、より低温で炭化させることにより、適当な溶媒において、アモルファスカーボンを含有する黒色粒子を形成することができる。
このような方法でアモルファスカーボンを含有する黒色粒子を形成できる理由については明らかではないが、例えば、オキサジン樹脂としてナフタレンオキサジン樹脂を使用した場合、樹脂中のナフタレン構造が低温加熱によって局部的に繋がり、分子レベルで層状構造が形成されるためであると考えられる。上記層状構造は、高温処理されていないため、グラファイトのような長距離の周期構造までは進展しないため、結晶性は示さない。
得られたカーボンが、グラファイトのような構造であるか、アモルファス構造であるかは、後述するX線回折法によって、2θが26.4°の位置にピークが検出されるか否かにより確認することができる。
また、得られたカーボンがオキサジン樹脂が含有するカーボンに由来するものであるか否かは、IRスペクトルから確認することができる。具体的には、熱処理前の粒子のFT-IRスペクトルにおいて、オキサジン環のCHの対称面外変角振動(wagging mode)に由来するピーク(1334-1337cm-1)と、Ar(芳香環)-O-Cの非対称伸縮振動(the asymmetric stretching mode)に由来するピーク(1232-1237cm-1)が同時に検出されることにより確認できる。
【0017】
上記ナフトオキサジン樹脂の原料として用いられるのは、フェノール類であるジヒドロキシナフタレンと、トリアジンやホルムアルデヒド、アミン類である。これらについては後に詳述する。
【0018】
上記アモルファスカーボンは、上記オキサジン樹脂を50~800℃の温度で熱処理することにより得られるものであることが好ましい。本発明では、低温で炭化が可能なナフトオキサジン樹脂を用いることで、比較的低温でアモルファスカーボンとすることが可能となる。
このような低温で得られることで、従来に比べて、より低コスト、かつ、簡便なプロセスで作製できるという利点がある。
上記熱処理の温度は100~600℃であることがより好ましい。
【0019】
上記黒色粒子は、カーボン以外の元素を含有してもよい。カーボン以外の元素としては、例えば、窒素、水素、酸素等が挙げられる。このような元素の含有量は、カーボンとカーボン以外の元素との合計に対して、10モル%以下であることが好ましい。
また、窒素含有量は、カーボンとカーボン以外の元素との合計に対して、0.1モル%以上であることが好ましく、5.0モル%以下であることが好ましい。
上記含有量は、X線光電子分光法により測定することができる。
また、上記黒色粒子は、樹脂成分を含有してもよい。
【0020】
上記黒色粒子は、窒素原子を含有することが好ましい。窒素原子を含有することで、純粋なカーボン粒子よりも優れる物性を有する黒色粒子とすることができる。
上記黒色粒子の窒素含有量は、好ましい下限が0.05重量%、より好ましい下限が0.1重量%、好ましい上限が5.0重量%、より好ましい上限が3.0重量%である。
窒素含有量が上記範囲内であると、より優れた物性を有する黒色粒子とすることができる。
上記窒素含有量は、X線光電子分光法により測定することができる。
【0021】
上記黒色粒子は、比重が1.75以下である。比重が1.75以下であることで、高い分散性を得ることができる。上記比重の好ましい下限は1.20、好ましい上限は1.70である。
【0022】
上記黒色粒子は、吸油量が30ml/100g以上、120ml/100g以下である。
上記吸油量が30ml/100g未満であると、黒色粒子と硬化性化合物との親和性が低く、黒色粒子の凝集が起こりやすくなる。その結果、光学密度や塗膜の強度が低下する。ここで、光学密度や塗膜の強度を向上させる方法としては、黒色粒子の含有量を増加させることが考えられる。しかしながら、吸油量が上記下限未満であると、黒色粒子と硬化性化合物との親和性が低いことから、黒色粒子が樹脂組成物中に混合されにくく、黒色粒子を多く配合することが難しくなる。
一方、上記吸油量が120ml/100gを超えると、黒色粒子が硬化性化合物を吸着するため、得られる樹脂組成物の流動性が低下する。その結果、得られる樹脂組成物中において、黒色粒子の分散性が低下し、長期安定性及び光学密度が低下する。
上記吸油量のより好ましい下限は40ml/100g、より好ましい上限は100ml/100gである。
なお、上記吸油量は、JIS K 5101-13-1に準拠して測定することができる。
【0023】
上記吸油量を調整する方法としては、黒色粒子の比表面積、表面状態、細孔分布、細孔サイズ等を適宜調整することが挙げられる。例えば、黒色粒子の比表面積が増加すると、吸油量が上昇する傾向にある。
【0024】
上記黒色粒子の平均粒子径は、好ましい下限が5nm、より好ましい下限が10nm、好ましい上限が300nm、より好ましい上限が200nmである。
上記平均粒子径が上記範囲であると、優れた特性を有する樹脂組成物を形成することができる。
また、上記黒色粒子としては、平均粒子径が異なる2種以上の粒子を併用してもよい。
【0025】
上記黒色粒子は、粒子径の変動係数(CV値)が20%以下であることが好ましい。
上記粒子径のCV値が20%以下であると、黒色粒子の単分散性が良くなり、黒色顔料として利用する場合に粒子を最密充填しやすくなる。その結果、可視光に対する遮蔽効果を高めることが可能となる。
上記粒子径のCV値のより好ましい上限は15%である。なお、下限については特に限定されないが0.5%が好ましい。
粒子径のCV値(%)とは、標準偏差を平均粒子径で割った値を百分率で表したものであり、下記式により求められる数値のことである。CV値が小さいほど粒子径のばらつきが小さいことを意味する。
粒子径のCV値(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
平均粒子径及び標準偏差は、例えば、FE-TEMを用いて測定することができる。
【0026】
上記黒色粒子は、平均球形度が90%以上であることが好ましい。
これにより、本発明の効果を高めることができる。上記平均球形度のより好ましい下限は95%である。
なお、球形度(短径/長径)は、FE-TEMまたはFE-SEMを用いて撮影された電子顕微鏡写真を画像解析装置を用いて、解析処理することにより測定することができ、平均球形度は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の粒子について、球形度の平均値を求めることにより算出することができる。
【0027】
上記黒色粒子の比表面積は、好ましい下限が1.0m/g、より好ましい下限が5.0m/g、好ましい上限が1000m/g、より好ましい上限が800m/gである。
上記比表面積は、窒素ガス等を用いたガス吸着法等により測定することができる。
【0028】
上記黒色粒子は、ゼータ電位(表面電位)が-70~+80mVであることが好ましい。
上記範囲内とすることで、粒子径の均一性に優れ、溶媒中の分散性が良好な黒色粒子とすることが可能となる。
上記ゼータ電位のより好ましい下限は-60mV、より好ましい上限は70mVである。
なお、上記ゼータ電位は、例えば、顕微鏡電気泳動方式ゼータ電位測定装置を用いて、黒色粒子が分散した溶液を測定用セルに注入し、顕微鏡で観察しながら電圧をかけ、粒子が動かなくなった(静止した)時の電位を測定することで求めることができる。
【0029】
上記黒色粒子は、波長400~800nmで測定した全光線反射率の平均が15%以下であることが好ましい。
上記範囲内とすることで、可視光の大部分が黒色粒子に吸収されることから、可視光領域において高い黒色性を発現させることが可能となる。
上記全光線反射率の平均のより好ましい上限は10%である。
なお、上記黒色粒子について、波長400~800nmで全光線反射率を測定した場合、全光線反射率が極大値を示すピークが検出されないことが好ましい。
上記全光線反射率は、例えば、積分球付きの分光光度計を用いて測定することができる。
【0030】
上記黒色粒子は、荷重16kNにおける粉体抵抗が5.0×10-1Ω・cm以上であることが好ましい。
粉体抵抗が上記好ましい下限以上であることで、絶縁性の高い樹脂組成物を得ることができる。
上記荷重16kNにおける粉体抵抗のより好ましい下限は1.0×10Ω・cm、更に好ましい下限は1.0×10Ω・cmである。
【0031】
上記黒色粒子は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって測定した場合、ベンゼン環に由来する質量スペクトル、及び、ナフタレン環に由来する質量スペクトルのうち少なくとも1つが検出されることが好ましい。
このようなベンゼン環、ナフタレン環に由来する質量スペクトルが検出されることで、オキサジン樹脂が含有するカーボンに由来するものであることを確認できると同時に、緻密性の高い粒子を得ることができる。
本願発明において、ベンゼン環に由来する質量スペクトルとは、77.12付近の質量スペクトルをいい、ナフタレン環に由来する質量スペクトルとは、127.27付近の質量スペクトルをいう。
なお、上記測定は、例えば、TOF-SIMS装置(ION-TOF社製)等を用いて行うことができる。
【0032】
本発明では、X線回折法によって上記黒色粒子を測定した場合、2θが26.4°の位置にピークが検出されないことが好ましい。
上記2θが26.4°の位置のピークは、グラファイトの結晶ピークであり、このような位置にピークが検出されないことで、黒色粒子を形成するカーボンがアモルファス構造であるということができる。
なお、上記測定は、例えば、X線回折装置(SmartLab Multipurpose、リガク社製)等を用いて行うことができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物中の上記黒色粒子の含有量は、好ましい下限が10重量%、より好ましい下限が20重量%、好ましい上限が80重量%、より好ましい上限が60重量%である。
【0034】
上記黒色粒子を製造する方法としては、例えば、トリアジン、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を反応させる工程を有する方法、ホルムアルデヒド、脂肪族アミン、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を反応させる工程を有する方法等が挙げられる。また、樹脂粒子を焼成し、炭化させることでアモルファスカーボンを含有する黒色粒子を作製することもできる。
【0035】
上記したトリアジン、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を反応させる工程を有する方法では、最初にトリアジン誘導体、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を調製する。また、ホルムアルデヒド、脂肪族アミン、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を反応させる工程を有する方法では、最初にホルムアルデヒド、脂肪族アミン、ジヒドロキシナフタレン及び溶媒を含有する混合溶液を調製する。
【0036】
上記ホルムアルデヒドは不安定であるので、ホルムアルデヒド溶液であるホルマリンを用いることが好ましい。ホルマリンは、通常、ホルムアルデヒド及び水に加えて、安定剤として少量のメタノールが含有されている。本発明で用いられるホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒド含量が明確なものであれば、ホルマリンであっても構わない。
また、ホルムアルデヒドには、その重合形態としてパラホルムアルデヒドがあり、こちらの方も原料として使用可能であるが、反応性が劣るため、好ましくは上記したホルマリンが用いられる。
【0037】
上記脂肪族アミンは一般式R-NHで表され、Rは炭素数5以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数5以下のアルキル基としては、以下に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルエチル基、及びシクロブチルメチル基が挙げられる。
分子量を小さくする方が好ましいので、置換基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基などが好ましく、実際の化合物名としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等が好ましく使用できる。最も好ましいものは、分子量が一番小さなメチルアミンである。
【0038】
上記トリアジン誘導体としては、下記式(3)で表される構造を有するものが好ましい。
下記式(3)中、R、R、Rはそれぞれ独立して、脂肪族アルキル基、又は、芳香族を含む有機基を表す。
上記脂肪族アルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましい。
なかでも、高い炭化率を達成することができ、また、緻密性に優れたアモルファスカーボンを含有する黒色粒子を得られることから、R、R、Rがメチル基である1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンを用いることがより好ましい。ここで、炭化率とは、焼成後の残留物の割合を意味する。
【0039】
【化2】
【0040】
上記ジヒドロキシナフタレンとしては、多くの異性体がある。例えば、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
このうち、反応性の高さから、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンが好ましい。さらに1,5-ジヒドロキシナフタレンが最も反応性が高いので好ましい。
【0041】
上記トリアジン誘導体を添加せずに、ホルムアルデヒド、脂肪族アミンを添加する方法を用いる場合、上記混合溶液中におけるジヒドロキシナフタレン、脂肪族アミン、ホルムアルデヒドの比率については、ジヒドロキシナフタレン1モルに対して、脂肪族アミンを1モル、ホルムアルデヒドを2モル配合することが最も好ましい。
反応条件によっては、反応中に揮発などにより原料を失うので、最適な配合比は正確に上記比率とは限らないが、ジヒドロキシナフタレン1モルに対して、脂肪族アミンを0.8~1.2モル、ホルムアルデヒドを1.6~2.4モルの配合比の範囲で配合することが好ましい。
上記脂肪族アミンを0.8モル以上とすることにより、オキサジン環を充分に形成することができ、重合を好適に進めることができる。また1.2モル以下とすることにより、反応に必要なホルムアルデヒドを余計に消費することがないため、反応が順調に進み、所望のナフトオキサジンを得ることができる。同様に、ホルムアルデヒドを1.6モル以上とすることで、オキサジン環を充分に形成することができ、重合を好適に進めることができる。また2.4モル以下とすることで、副反応の発生を低減できるため好ましい。
【0042】
上記混合溶液は、上記2原料又は3原料を溶解し、反応させるための溶媒を含有する。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0043】
上記溶媒としては、単一成分のみを使ってもよく、二種類以上の混合溶媒を使ってもよい。上記溶媒としては、溶解度パラメーター(SP値)が9.0以上であるものを使用することが好ましい。
上記SP値が9.0以上の溶媒としては、エタノール(12.7)、メタノール(14.7)、イソプロパノール(11.5)、1-ブタノール(11.4)、1,3-ブタンジオール(11.2)、1,4-ブタンジオール(12.1)、2,3-ブタンジオール(11.1)、2-メチルペンタン-1,3-ジオール(10.3)、ホルムアミド(19.2)、クレゾール(13.3)、エチレングリコール(14.2)、フェノール(14.5)、水(23.4)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド、12.3)、ジメチルスルホキシド(DMSO、13.0)、メチルエチルケトン(9.3)、ジオキサン(10.3)、酢酸エチル(9.0)、クロロホルム(9.4)、アセトン(10.0)等が挙げられる。
上記SP値が9.0以上の溶媒としては、SP値が9.0~15.0である溶媒がより好ましい。また、上記溶媒を単一成分のみを使う場合は、沸点が50~300℃であることが好ましい。沸点が50~250℃、かつ、SP値が9.0以上である溶媒を含有することが更に好ましい。
【0044】
また、上記溶媒が2種類以上の溶媒から構成される混合溶媒である場合、上記混合溶媒は、沸点100℃以上の溶媒を含有することが好ましい。これにより、平均球形度の高い黒色粒子を得ることができる。
【0045】
上記混合溶液中の溶媒の添加量は特に限定されないが、ジヒドロキシナフタレン、トリアジン誘導体、脂肪族アミン、ホルムアルデヒドを含む原料(溶質)を100質量部とした場合は、通常300~200000質量部で配合することが好ましい(溶質のモル濃度1.0M~0.001Mに相当)。上記溶媒の添加量を300質量部以上とすることで、溶質の溶解性が高くなり、200000質量部以下とすることで、濃度が適度なものとなることで反応が進行しやすくなる。
【0046】
上記黒色粒子の製造方法では、上記混合溶液を反応させる工程を行う。上記製造方法では、反応を進行させることにより、ナフトオキサジン樹脂等のオキサジン樹脂が形成された後、アモルファスカーボンを含有する黒色粒子を作製することができる。
例えば、上記ジヒドロキシナフタレン、トリアジン誘導体、脂肪族アミン、ホルムアルデヒドを含有する混合溶液を反応させる方法では、加温を続けることで、作製されたオキサジン環が開き、重合が起こると分子量が増加し、いわゆるナフトキサジン樹脂となる。
また、粒子の作製を均一に行うためには、反応時に粒子が分散された状態が好ましい。分散方法としては、撹拌、超音波、回転など公知の方法が利用できる。また、分散状態を改善するために、適当な分散剤を添加しても良い。
【0047】
上記混合溶液を反応させる工程は、1段階で行ってもよく、2段階に分けて行っても良い。
上記2段階に分けて行う方法としては、上記混合溶液を反応させてオキサジン樹脂粒子を形成する工程と、形成されたオキサジン樹脂粒子を所定の温度で加熱処理することにより炭化させる工程を有することが好ましい。
上記オキサジン樹脂粒子を形成する工程は、室温でも反応が徐々に進行するが、反応を効率的に進行させるためには、50~350℃の温度で行うことが好ましい。また、反応時間は、温度によって調整可能であり、通常30分から20時間であることが好ましい。上記条件での反応によって、球状のオキサジン樹脂粒子が得られる。この工程で得られたオキサジン樹脂粒子は、反応条件によって、緑色、茶色、または黒色を示す。
なお、オキサジン樹脂粒子の粒子径は、溶液の濃度、反応温度、原料のモル比および撹拌条件などのパラメータによって調整することができる。
また、溶媒の沸点以上の温度で反応する場合は、反応を加圧容器中で行うことが好ましい。
【0048】
上記形成されたオキサジン樹脂粒子を所定の温度で加熱処理することにより炭化させる工程において、加熱温度は150~800℃が好ましい。加熱処理時間は特に限定されないが、炭化の完全性と経済的な観点から、1~30時間が好ましい。これにより、ナフトキサジン樹脂が炭化されてアモルファスカーボンを含有する黒色粒子とすることができる。通常の樹脂では、炭化させるためにより高い温度が必要であるが、本発明では、低温で炭化が可能なオキサジン樹脂を用いていることから、150℃のような低温でもアモルファスカーボンとすることが可能となる。
上記加熱処理は、空気中で行ってもよく、真空状態で行ってもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。熱処理温度が200℃以上の場合は、不活性ガス雰囲気の方がより好ましい。
【0049】
なお、上記加熱処理することにより炭化させる工程の前に、熱風や真空乾燥等により溶媒を乾燥除去する乾燥工程を有してもよい。加熱乾燥方法についても特に制限はない。
【0050】
(硬化性化合物)
本発明の樹脂組成物は、硬化性化合物を含有する。
上記硬化性化合物は、熱硬化性化合物であってもよく、光硬化性化合物であってもよいが、光硬化性化合物が好ましく用いられる。
【0051】
上記硬化性化合物としては、例えば、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物、ポリイミド化合物、アリルアルコール誘導体等が挙げられる。上記硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化性化合物は、分子量が10000未満のものであってもよく、分子量が10000以上のものであってもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
上記スチレン化合物としては、例えば、スチレン系モノマーの単独重合体、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o-スチレン、m-スチレン、p-スチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,4-ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0053】
上記フェノキシ化合物としては、例えば、エピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は、2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。
具体的には、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有するものが挙げられる。
【0054】
上記オキセタン化合物としては、例えば、アリルオキシオキセタン、フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0055】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0056】
上記エピスルフィド化合物としては、エポキシ化合物のエポキシ基をエピスルフィド基に変換することにより得られるエピスルフィド化合物等が挙げられる。
【0057】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のフタルイミドアクリレート類や各種イミドアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
また、上記エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0058】
上記アリルアルコール誘導体としては、例えば、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、グリセリン1,3-ジアリルエーテルトリメチロールプロパンジアリルエーテル等のジアリル化合物、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル等のトリアリル化合物、テトラアリルピロメリテート等のテトラアリル化合物等が挙げられる。
【0059】
また、上記硬化性化合物としては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル化合物等のエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を用いることが好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。効果的に反応を進行させ、硬化物の発泡、剥離及び変色をより一層抑制する観点からは、(メタ)アクリロイル基が好ましい。上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0060】
本発明の樹脂組成物中の上記硬化性化合物の含有量は、好ましい下限が5重量%、より好ましい下限が10重量%、好ましい上限が90重量%、より好ましい上限が85重量%である。
【0061】
(硬化剤)
本発明の樹脂組成物は、更に、熱硬化剤、光硬化剤等の硬化剤を含有していてもよい。
【0062】
上記熱硬化剤としては、上記熱硬化性化合物を硬化させることができる熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤等が挙げられる。熱硬化剤は、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記アミン硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
上記イミダゾール硬化剤としては、例えば、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。
上記酸無水物硬化剤としては、例えば、芳香族骨格を有する酸無水物やその水添加物、変性物等が挙げられる。具体的には、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0064】
上記光硬化剤としては、光の照射により上記光硬化性化合物を硬化させることができるものを用いることができる。
上記光硬化剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α-アミノアルキルフェノン、オキシム、及び、これらの誘導体が挙げられる。これらは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
ベンゾフェノン系光硬化剤としては、o-ベンゾイル安息香酸メチル及びミヒラーズケトン等が挙げられる。ベンゾフェノン系光硬化剤の市販品としては、EAB(保土谷化学社製)等が挙げられる。
【0066】
アシルフォスフィンオキサイド系光硬化剤の市販品としては、Lucirin TPO(BASF社製)、及びイルガキュア819(チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0067】
チオキサントン系光硬化剤の市販品としては、イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0068】
アルキルフェノン系光硬化剤の市販品としては、ダロキュア1173、ダロキュア2959、イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア651(BASF社製)、及びエサキュア1001M(Lamberti社製)等が挙げられる。
【0069】
本発明の樹脂組成物中の上記硬化剤の含有量は、好ましい下限が0.1重量%、より好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%、より好ましい上限が5重量%である。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、更に、溶媒を含有していてもよい。
上記溶媒としては、例えば、水や、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の親水性溶媒と水との混合溶媒が挙げられる。なかでも、水のみを用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物における上記溶媒の含有量は特に限定されず、塗布方法等に適した粘度となるように適宜設定されるが、固形分濃度が100~50重量%となる量が好ましく、98~65重量%となる量がより好ましい。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、黒色粒子の分散性を向上させるために、分散剤を含有していてもよい。
上記分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及び、これらの塩が挙げられる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物によるパターンと基板との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を含有していてもよい。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、反応障害を軽減するために反応助剤を含有していてもよい。上記反応助剤を用いることにより、光照射したときの効果速度を向上させることができる。
上記反応助剤としては、例えば、アミン系反応助剤、ホスフィン系反応助剤、スルホン酸系反応助剤等を用いることができる。
上記アミン系反応助剤としては、例えば、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
上記ホスフィン系反応助剤としては、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
上記スルホン酸系反応助剤としては、例えば、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート等が挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、光学密度が厚み1μmあたり0.6以上であることが好ましい。
上記光学密度が0.6以上であると、黒色度を充分に高くして、光の漏れや拡散を充分に抑制することができる。
上記光学密度は、1.0以上であることがより好ましい。
上記光学密度は、例えば、透過濃度計を用いて測定することができる。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、その他のカップリング剤、熱重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0076】
本発明の樹脂組成物を作製する方法としては、例えば、黒色粒子及び硬化性化合物、更に必要に応じて配合される硬化剤、溶媒等のその他添加剤とを、撹拌機を用いて混合する方法等が挙げられる。また、均一な混合物となるように、攪拌後、フィルタを用いてろ過を行うことが好ましい。
ホルムアルデヒド、脂肪族アミン及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液、又は、トリアジン及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を反応させてオキサジン樹脂粒子を形成する工程と、前記オキサジン樹脂粒子を加熱処理することにより炭化させてアモルファスカーボンを含有する黒色粒子を得る工程とを有する樹脂組成物の製造方法もまた本発明の1つである。
【0077】
本発明の樹脂組成物を硬化させることで硬化物を作製することができる。
このような硬化物もまた本発明の1つである。
また、本発明の樹脂組成物は、カラーフィルタに形成されるブラックマトリックス材料として好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物から形成されたブラックマトリックスもまた本発明の1つである。また、基板、及び、本発明のブラックマトリックスを備えるカラーフィルタもまた本発明の1つである。
【0078】
本発明の樹脂組成物を用いて本発明のブラックマトリックスを形成する方法の一例を以下に説明する。
まず、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート等からなる基板上に、本発明の樹脂組成物を、ロールコータ、リバースコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の接触型塗布装置や、スピンコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて塗布する。
次いで、塗布された樹脂組成物を、例えば、真空乾燥装置を用いて室温にて減圧乾燥し、その後、ホットプレートやオーブンにて80℃以上120℃以下、好ましくは90℃以上100℃以下の温度にて60秒間以上180秒間以下で乾燥する方法等により乾燥させて塗膜を形成する。
得られた塗膜に、ネガ型のマスクを介して紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。なお、活性エネルギー線を照射する前に、得られた塗膜とネガ型のマスクに近赤外線を照射して、近赤外線アライメントによる両者の位置合わせを行うことが好ましい。
照射するエネルギー線量は、用いる本発明の樹脂組成物の組成によっても異なるが、100~2000mJ/cmであることが好ましい。
露光後の塗膜を、アルカリ水溶液により現像することによって所望の形状にパターニングする。上記アルカリ水溶液による現像方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、パドル法等を用いることができる。現像液として用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
一般に、このようなアルカリ水溶液からなる現像液を使用した場合、現像後に純水で洗浄(リンス)して余剰の現像液を除去する。
現像後のパターンに対して、必要に応じて、220℃~250℃程度、好ましくは230℃~240℃程度でポストベークを行う。この際、ポストベークに先立って、形成されたパターンを全面露光することが好ましい。
以上により、所定のパターン形状を有するブラックマトリックスを形成することができる。
【0079】
また、上述した本発明のブラックマトリックスを形成する方法の操作を、赤色顔料が分散された感光性樹脂組成物、緑色顔料が分散された感光性樹脂組成物、及び、青色顔料が分散された感光性樹脂組成物についても行い、各色の画素パターンを形成することで、本発明のカラーフィルタを形成することができる。
上記赤色顔料が分散された感光性樹脂組成物、上記緑色顔料が分散された感光性樹脂組成物、及び、上記青色顔料が分散された感光性樹脂組成物は、従来公知のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、本発明のブラックマトリックスによって区画された各領域に赤色、緑色、及び、青色の各色のインクをインクジェットノズルから吐出し、溜められたインクを熱又は光で硬化させる方法によっても製造することもできる。
【0080】
本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置の部材として好適に用いることができる。本発明のカラーフィルタを備える液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置もまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、高い光学密度を有し、長期安定性及び絶縁性にも優れた高品質のカラーフィルタを得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物の硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0083】
(実施例1)
1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-DHN、東京化成社製)1.0gと、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(東京化成社製)0.8gを1-ブタノール10gに順次溶解し、1-ブタノール混合溶液を作製した。
また、1,4-ジオキサン160gとイオン交換水10gとを混同して水溶液を作製し、得られた水溶液を40℃に保持し攪拌しながら、6時間かけて上記1-ブタノール混合溶液を滴下し、更に3時間攪拌を続け、粒子分散液を作製した。
上記粒子分散液に更にイオン交換水180gと1-ブタノール180gとを添加した後、溶媒を除去して粒子を回収した。
上記粒子の赤外吸収スペクトルをフーリエ変換赤外分光(FT-IR、NICOLET 6700)で測定した。その結果、オキサジン環のCHの対称面外変角振動(wagging mode)に由来するピーク(1334-1337cm-1)と、ナフタレン環-O-Cの非対称伸縮振動(the asymmetric stretching mode)に由来するピーク(1232-1237cm-1)が同時に検出された。これにより、粒子内に、ナフトオキサジンを含有することが確認された。
上記粒子を真空雰囲気において、200℃で2時間熱処理することで、黒色粒子としてアモルファスカーボン粒子を得た。
【0084】
得られたアモルファスカーボン粒子のFE-SEM像を画像解析ソフト(WINROOF、三谷商事社製)を用いて解析することにより、平均粒子径を測定した。また、標準偏差を算出し、得られた数値から粒子径の変動係数(CV値)を算出した。更に、粒子の最小径と最大径の比から球形度を求め、平均球形度を算出した。平均粒子径は90nm、粒子径のCV値は15%、球形度は0.99であった。また、上記粒子の比表面積をBET吸着法を用いた測定したところ、20m/gであった。
【0085】
また、X線回折装置(SmartLab Multipurpose、リガク社製)を用い、X線波長:CuKα1.54A、測定範囲:2θ=10~70°、スキャン速度:4°/min、ステップ:0.02°の条件で測定したところ、θ=26.4°の位置にピークが検出されなかった。
更に、X線光電子分光法(XPS)によって、上記アモルファスカーボン粒子の元素組成を測定したところ、炭素(C)、酸素(O)以外に、窒素(N)も検出され、三元素の合計に対する窒素の含有量が4.5モル%であった。
また、得られた粒子をラマン測定したところ、そのGバンドとDバンドの比が0.8であった。
【0086】
得られた粒子について、TOF-SIMS 5型装置(ION-TOF社製)を用いて、飛行時間型二次イオン質量分析法(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry,TOF-SIMS)によるベンゼン環に由来する質量スペクトル(77.12付近)、及び、ナフタレン環に由来する質量スペクトル(127.27付近)の確認を行った。その結果、ベンゼン環に由来する質量スペクトルとナフタレン環に由来する質量スペクトルが検出された。なお、TOF-SIMS測定は、下記のような条件で行った。また、空気中や保管ケースに由来するコンタミをできるだけ避けるために、サンプル作製後に、シリコンウェハー保管用クリーンケースにて保管した。
≪測定条件≫
一次イオン:209Bi+1
イオン電圧:25kV
イオン電流:1pA
質量範囲:1~300mass
分析エリア:500×500μm
チャージ防止:電子照射中和
ランダムラスタスキャン
【0087】
また、積分球付きの分光光度計(日本分光社製、V-760)を用いて、上記アモルファスカーボン粒子の粉体の拡散反射スペクトルを測定したところ、可視光領域(波長400~800nm)での全光線反射率の平均が12%であった。また、上記領域において、吸収ピークが観察されなかった。
【0088】
硬化性化合物として、表1に示す化合物を用い、表1に示す割合で混合した。
更に、硬化剤として、イルガキュア907(BASF社製)を用い、表2に示す割合で、各材料を室温で混合し、樹脂組成物を得た。
【0089】
(実施例2)
1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン0.8gの代わりに、濃度40%のメチルアミン0.968gと濃度37%のホルムアルデヒド2.023gとを用いた以外は実施例1と同様にして、粒子分散液を得た。
実施例1と同様にして、粒子がナフトオキサジン樹脂を含有することを確認した。
得られた粒子を窒素雰囲気において500℃で2時間加熱処理した以外は、実施例1と同様にして黒色粒子を得た。
実施例1と同様に測定したところ、黒色粒子の平均粒子径は50nm、比表面は400m/g、比重は1.7、窒素の含有量は1.5モル%、可視光領域(波長400~800nm)での全光線反射率の平均は3%であった。また、θ=26.4°の位置にピークが検出されなかった。
得られた粒子をラマン分光で分析したところ、GバンドとDバンドの比が2.1であった。
得られた黒色粒子を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0090】
(比較例1)
アモルファスカーボン粒子に代えて、チタンブラック(三菱マテリアル社製、平均粒子径:90nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0091】
(比較例2)
アモルファスカーボン粒子に代えて、カーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、EC600JD、平均粒子径:34nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0092】
(比較例3)
アモルファスカーボン粒子に代えて、黒鉛粒子(平均粒子径:8μm)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0093】
(評価方法)
(1)吸油量
JIS K 5101-13-1に準拠し、実施例1で得られたアモルファスカーボン粒子について、試料1gを測定板(厚み3mmのソーダガラス板)上の中央部に取り、精製あまに油をビュレットから1回に1滴ずつ、徐々に試料の中央に滴下し、都度全体をパレットナイフで充分に練り合わせた。
精製あまに油の滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となった後、更に滴下及び練り合わせを繰り返し、精製あまに油を1滴滴下することで急激に軟化する直前の終点とした。なお、終点に達するまでの操作時間は10分程度となるように調整した。
終点に達した際のビュレットからの精製あまに油の滴下量を読み取り、試料100g当たりの滴下量に換算して吸油量とした。
実施例2で得られたアモルファスカーボン粒子、比較例1で用いたチタンブラック、比較例2で用いたカーボンブラック、比較例3で用いた黒鉛粒子についても同様に吸油量を測定した。
【0094】
(2)比重
実施例1で得られたアモルファスカーボン粒子の比重を、乾式自動密度計(島津製作所社製、アキュピックII134)を用いて測定した(サンプル量:0.2g)。
また、実施例2で得られたアモルファスカーボン粒子、比較例1で用いたチタンブラック、比較例2で用いたカーボンブラック、比較例3で用いた黒鉛粒子についても同様に比重を測定した。
【0095】
(3)粉体抵抗
実施例1で得られたアモルファスカーボン粒子の体積抵抗率を、粉体抵抗測定システム(三菱化学アナリテック社製)を用いて、荷重16kNでの粉体抵抗を測定した。
また、実施例2で得られたアモルファスカーボン粒子、比較例1で用いたチタンブラック、比較例2で用いたカーボンブラック、比較例3で用いた黒鉛粒子についても同様に粉体抵抗を測定した。
【0096】
(4)塗布膜の光学密度(OD値)
(塗布膜の形成)
実施例1、2及び比較例1~3で得られた樹脂組成物を、シランカップリング剤処理を施したスライドガラス上にナイフコーターで塗布した後、波長365nmの紫外線を強度6000mJ/cmで照射して硬化させ、塗布膜を得た。
【0097】
(光学密度の測定)
得られた塗布膜について、透過濃度計(エックスライト社製、「Model301」)を用いて光学密度(OD値)を測定した。
なお、比較例2については、硬化後の組成物の密着性が悪く、ガラス状から粉末状の硬化物が脱落し、塗布膜を形成することができなかったため、評価を行うことができなかった。
また、比較例3については、樹脂組成物の沈降がひどく、評価できるほどの塗布膜の作製ができなかったため、評価を行うことができなかった。
【0098】
(5)放置(沈降)安定性
実施例1、2及び比較例1、3で得られた樹脂組成物について、2mlを口内径7.2mm×胴径16.5mm×高さ40mmのガラス瓶に入れ、23℃にて72時間静置した。その際のアモルファスカーボン粒子、チタンブラック、カーボンブラックの状態を目視により観察し、以下の基準により評価した。なお、比較例2については、評価を行わなかった。
〇:沈降が確認されなかった。
×:沈降が確認され、ガラス瓶上部に透明な層が確認された。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、高い光学密度を有し、長期安定性及び絶縁性にも優れた高品質のカラーフィルタを得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物の硬化物、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び樹脂組成物の製造方法を提供することができる。