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特許7480040多官能活性エステル化合物、樹脂組成物、硬化物、及び、ビルドアップフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】多官能活性エステル化合物、樹脂組成物、硬化物、及び、ビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/48 20060101AFI20240430BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240430BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20240430BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240430BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C07D209/48 CSP
C08K3/013
C08K5/3417
C08L67/00
C08L101/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020530410
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2020018260
(87)【国際公開番号】W WO2020226118
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019087548
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】新土 誠実
(72)【発明者】
【氏名】大當 悠太
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】林 達史
(72)【発明者】
【氏名】川原 悠子
(72)【発明者】
【氏名】久保 顕紀子
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025955(WO,A1)
【文献】特開2008-001876(JP,A)
【文献】THIRUVASAGAM,P. et al,Synthesis and characterization of new diimide diols and processable poly(esterimide)s derived theref,Polymers & Polymer Composites,2011年,Vol.19, No.9,pp.763-771
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/48
C08K 3/013
C08K 5/3417
C08L 67/00
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする多官能活性エステル化合物。
【化1】
式(1)中、R及びRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、Xは、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の基であり、Yは、2価の有機基であり、nは、1以上5以下の整数である。
【請求項2】
下記式(1)で表され、数平均分子量が1300以上5500以下であることを特徴とする多官能活性エステル化合物。
【化2】
式(1)中、R 及びR は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、Xは、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の基であり、Yは、2価の有機基であり、nは、1以上の整数である。
【請求項3】
前記式(1)中のnが1以上5以下である請求項記載の多官能活性エステル化合物。
【請求項4】
前記式(1)中のYは、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基である請求項1、2又は3記載の多官能活性エステル化合物。
【請求項5】
前記式(1)中のR及びRは、下記式(2)で表される基である請求項1、2、3又は4記載の多官能活性エステル化合物。
【化3】
式(2)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、*は、結合位置である。
【請求項6】
前記式(1)中のXは、酸素原子又は下記式(3)で表される基である請求項1、2、3、4又は5記載の多官能活性エステル化合物。
【化4】
式(3)中、*は、結合位置である。
【請求項7】
硬化性樹脂と、請求項1、2、3、4、5、又は、6記載の多官能活性エステル化合物とを含有する樹脂組成物。
【請求項8】
硬化性樹脂と、下記式(1)で表される多官能活性エステル化合物とを含有する樹脂組成物。
【化5】
式(1)中、R 及びR は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、Xは、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の基であり、Yは、2価の有機基であり、nは、1以上の整数である。
【請求項9】
更に、無機充填剤を含有する請求項7又は8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項7、8又は9記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
請求項7、8又は9記載の樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができる多官能活性エステル化合物に関する。また、本発明は、該多官能活性エステル化合物を用いてなる樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
低収縮であり、接着性、絶縁性、及び、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂等の硬化性樹脂は、多くの工業製品に使用されている。特に、プリント配線板の層間絶縁材料等に用いられる樹脂組成物には、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性が必要となる。このような誘電特性に優れる樹脂組成物として、例えば、特許文献1、2には、硬化性樹脂と、硬化剤として特定の構造を有する化合物とを含有する樹脂組成物が開示されている。しかしながら、このような樹脂組成物は、硬化後の耐熱性と誘電特性とを両立することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-186551号公報
【文献】国際公開2016/114286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができる多官能活性エステル化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該多官能活性エステル化合物を用いてなる樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記式(1)で表される多官能活性エステル化合物である。
【0006】
【化1】
【0007】
式(1)中、R及びRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、Xは、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の基であり、Yは、2価の有機基であり、nは、1以上の整数である。
【0008】
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、特定の構造を有する多官能活性エステル化合物を硬化剤として用いることにより、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の多官能活性エステル化合物は、上記式(1)で表される。
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基である。上記R及び上記Rとして置換されていてもよいアリール基を有することにより、得られる樹脂組成物の硬化物が低誘電正接等の誘電特性に優れるものとなる。
【0010】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
上記アリール基が置換されている場合の置換基としては、例えば、脂肪族基等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)中のR及びRは、下記式(2)で表される基であることが好ましい。上記R及び上記Rが下記式(2)で表される基であることにより、本発明の多官能活性エステル化合物を硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物の硬化物が低誘電正接等の誘電特性により優れるものとなる。
【0011】
【化2】
【0012】
式(2)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、*は、結合位置である。
【0013】
上記式(1)中、Xは、それぞれ独立して、異なっていてもよく、酸素原子又は2価の基である。なかでも、上記Xは、酸素原子、スルホニル基、カルボニル基、又は、下記式(3)で表される基であることが好ましく、酸素原子又は下記式(3)で表される基であることがより好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
式(3)中、*は、結合位置である。
【0016】
上記式(1)中、Yは、2価の有機基である。なかでも、上記Yは、置換されていてもよいアリーレン基であることが好ましい。上記Yが置換されていてもよいアリーレン基であることにより、得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性に優れるものとなる。
【0017】
上記式(1)中のYが置換されていてもよいアリーレン基である場合の該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基が置換されている場合の置換基としては、例えば、脂肪族基等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)中のYは、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基であることが好ましい。
【0018】
上記式(1)中、nは、1以上の整数である。上記nは、上記式(1)で表される多官能活性エステル化合物の数平均分子量が後述する範囲となる値となればよいが、1以上5以下であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0019】
本発明の多官能活性エステル化合物の数平均分子量の好ましい下限は1300、好ましい上限は5500である。上記数平均分子量がこの範囲であることにより、本発明の多官能活性エステル化合物は、樹脂成分との相溶性により優れるものとなり、かつ、得られる樹脂組成物の硬化物が低誘電正接等の誘電特性により優れるものとなる。本発明の多官能活性エステル化合物の数平均分子量のより好ましい下限は1400、より好ましい上限は2700、特に好ましい下限は1800である。
なお、本明細書において上記「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、JAIGEL-2H-A(日本分析工業社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明の多官能活性エステル化合物は、得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性及び誘電特性に特に優れるものとなることから、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
本発明の多官能活性エステル化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、下記式(5)で表される酸二無水物と下記式(6)で表されるアミノフェノールと下記式(7)で表されるジカルボン酸と下記式(8-1)で表される芳香族モノカルボン酸及び/又は下記式(8-2)で表される芳香族モノカルボン酸とを反応させる方法等が挙げられる。
具体的には、予め下記式(6)で表されるアミノフェノールを、反応により得られるアミック酸化合物が可溶な溶媒に溶解させ、得られた溶液に下記式(5)で表される酸二無水物を添加して反応させて、アミック酸化合物の溶液を得る。上記溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。次いで、得られたアミック酸化合物の溶液から加熱や減圧等により溶媒を除去、又は、水、メタノール、ヘキサン等の貧溶媒中に投入して再沈殿させることによりアミック酸オリゴマーを回収し、更に、約200℃以上で1時間以上加熱してイミド化反応を進行させ、両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物を得る。その後、得られたイミド化合物を、下記式(7)で表されるジカルボン酸又はそのハロゲン化物とエステル化反応させる。更に、下記式(8-1)で表される芳香族モノカルボン酸若しくはそのハロゲン化物及び/又は下記式(8-2)で表される芳香族モノカルボン酸若しくはそのハロゲン化物とエステル化反応させることにより、本発明の多官能活性エステル化合物を得ることができる。
なお、本発明の多官能活性エステル化合物の数平均分子量は、例えば、以下の方法により、調整することができる。
即ち、下記式(7)で表されるジカルボン酸又はそのハロゲン化物を両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物と反応させる工程において、下記式(7)で表されるジカルボン酸又はそのハロゲン化物と両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物との当量比や反応時間を調整することにより、上記数平均分子量を調整することができる。または、下記式(8-1)で表される芳香族モノカルボン酸若しくはそのハロゲン化物及び/又は下記式(8-2)で表される芳香族モノカルボン酸若しくはそのハロゲン化物とのエステル化反応の前後いずれかでGPCによって精製することもできる。上記式(1)におけるnも同様にして、調整することができる。
【0023】
【化5】
【0024】
式(5)中、Xは、上記式(1)中のXと同じ基である。
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
式(7)中、Yは、上記式(1)中のYと同じ基である。
【0028】
【化8】
【0029】
式(8-1)中、Rは、上記式(1)中のRと同じ基であり、式(8-2)中、Rは、上記式(1)中のRと同じ基である。
【0030】
上記式(5)で表される酸二無水物としては、例えば、3,3’-オキシジフタル酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシルフェノキシ)ジフェニルエーテルの酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-カルボニルジフタル酸二無水物等が挙げられる。なかでも、溶解性、耐熱性、及び、入手性に優れることから、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物が好ましく、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物がより好ましい。
【0031】
上記式(6)で表されるアミノフェノールとしては、例えば、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール等が挙げられる。
【0032】
上記式(7)で表されるジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-オキシビス安息香酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0033】
上記式(8-1)で表される芳香族モノカルボン酸及び上記式(8-2)で表される芳香族モノカルボン酸としては、例えば、1-ナフタレンカルボン酸、2-ナフタレンカルボン酸、1-アントラセンカルボン酸、2-アントラセンカルボン酸、9-アントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、ピレンカルボン酸等が挙げられる。なかでも、2-ナフタレンカルボン酸が好ましい。
【0034】
硬化性樹脂と、本発明の多官能活性エステル化合物とを含有する樹脂組成物もまた、本発明の1つである。本発明の樹脂組成物は、本発明の多官能活性エステル化合物を含有することにより、硬化物が耐熱性及び誘電特性に優れるものとなる。そのため、本発明の樹脂組成物は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、未硬化状態での加工性を向上させる等のために、本発明の目的を阻害しない範囲において、本発明の多官能活性エステル化合物に加えて他の硬化剤を含有してもよい。
上記他の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、チオール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、シアネート系硬化剤、本発明の多官能活性エステル化合物以外の他の活性エステル系硬化剤等が挙げられる。なかでも、本発明の多官能活性エステル化合物以外の他の活性エステル系硬化剤、シアネート系硬化剤が好ましい。
【0036】
上記硬化剤として、本発明の多官能活性エステル化合物のみを用いる場合の本発明の多官能活性エステル化合物の含有量は、硬化性樹脂1当量に対して、好ましい下限が0.3当量、好ましい上限が2.0当量である。上記硬化剤として本発明の多官能活性エステル化合物のみを用いる場合、本発明の多官能活性エステル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が、耐熱性及び誘電特性により優れるものとなる。上記硬化剤として本発明の多官能活性エステル化合物のみを用いる場合の本発明の多官能活性エステル化合物の含有量のより好ましい下限は0.6当量、より好ましい上限は1.5当量である。
また、上記硬化剤として、本発明の多官能活性エステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明の多官能活性エステル化合物の含有量は、硬化性樹脂1当量に対して、好ましい下限が0.05当量、好ましい上限が1.8当量である。上記硬化剤として本発明の多官能活性エステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合、本発明の多官能活性エステル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が、耐熱性及び誘電特性により優れるものとなる。上記硬化剤として本発明の多官能活性エステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明の多官能活性エステル化合物の含有量のより好ましい下限は0.2当量、より好ましい上限は1.2当量である。上記硬化剤として本発明の多官能活性エステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明の多官能活性エステル化合物とその他の硬化剤との合計の含有量は、硬化性樹脂1当量に対して、好ましい下限が0.3当量、好ましい上限が2.0当量である。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、マレイミド樹脂、及び、ベンゾオキサジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。上記硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。上記硬化促進剤を含有することにより、硬化時間を短縮させて生産性を向上させることができる。
【0040】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤、光塩基発生剤、スルホニウム塩系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、貯蔵安定性及び硬化性の観点から、イミダゾール系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤が好ましい。
上記硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
上記硬化促進剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記硬化促進剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物の接着性を悪化させることなく硬化時間を短縮させる効果により優れるものとなる。上記硬化促進剤の含有量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は4重量部、更に好ましい下限は0.05重量部、更に好ましい上限は3重量部である。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、更に、無機充填剤を含有することが好ましい。
上記無機充填剤を含有することにより、本発明の樹脂組成物は、接着性、加工性、電気特性、及び、硬化物の耐熱性により優れるものとなる。
【0043】
上記無機充填剤は、シリカ及びアルミナの少なくともいずれかであることが好ましい。上記無機充填剤としてシリカ及びアルミナの少なくともいずれかを含有することにより、本発明の樹脂組成物は、接着性、加工性、電気特性、及び、硬化物の耐熱性により優れるものとなる。上記無機充填剤は、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。
【0044】
上記シリカ及び上記アルミナ以外のその他の無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、クレイ、マイカ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット、ガラス繊維、カーボンファイバー、無機イオン交換体等が挙げられる。
【0045】
上記無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
上記無機充填剤の平均粒子径の好ましい下限は50nm、好ましい上限は5μmである。上記無機充填剤の平均粒子径がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が塗布性や加工性により優れるものとなる。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は75nm、より好ましい上限は3μm、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は2μmである。
なお、上記無機充填剤や後述する流動調整剤の平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置を用いて、上記無機充填剤や流動調整剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。上記粒度分布測定装置としては、例えば、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)等が挙げられる。
【0047】
本発明の樹脂組成物の固形分100重量部中における上記無機充填剤の含有量の好ましい下限は50重量部、好ましい上限は85重量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が接着性、加工性、電気特性、及び、硬化物の耐熱性により優れるものとなる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は55重量部、より好ましい上限は80重量部である。
なお、上記「固形分」は、後述する溶媒を用いる場合は該溶媒を除く樹脂組成物成分の合計を意味する。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の目的で流動調整剤を含有してもよい。
上記流動調整剤としては、例えば、アエロジル等のヒュームドシリカや層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記流動調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
また、上記流動調整剤としては、平均粒子径が50nm未満のものが好適に用いられる。
【0049】
上記流動調整剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が100重量部である。上記流動調整剤の含有量がこの範囲であることにより、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の効果により優れるものとなる。上記流動調整剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、応力緩和、靭性付与等を目的として有機充填剤を含有してもよい。
上記有機充填剤としては、例えば、シリコーンゴム粒子、アクリルゴム粒子、ウレタンゴム粒子、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子、ベンゾグアナミン粒子、及び、これらのコアシェル粒子等が挙げられる。なかでも、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子が好ましい。
上記有機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物の固形分100重量部中における上記有機充填剤の含有量の好ましい上限は300重量部である。上記有機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、優れた接着性等を維持したまま、得られる樹脂組成物の硬化物が靭性等により優れるものとなる。上記有機充填剤の含有量のより好ましい上限は200重量部である。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、難燃剤を含有してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、ベーマイト型水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン系化合物、りん系化合物、窒素化合物等が挙げられる。なかでも、ベーマイト型水酸化アルミニウムが好ましい。
上記難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
上記難燃剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が2重量部、好ましい上限が300重量部である。上記難燃剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が優れた接着性等を維持したまま、難燃性に優れるものとなる。上記難燃剤の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は250重量部である。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂を用いることにより、本発明の樹脂組成物は、流動特性、電気特性、及び、硬化後の耐屈曲性に優れるものとなる。
【0055】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、溶融粘度を調整可能である点から、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。
上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
上記熱可塑性樹脂の数平均分子量の好ましい下限は2000、好ましい上限は10万である。上記熱可塑性樹脂の上記数平均分子量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が流動特性や電気特性、硬化後の耐屈曲性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。
【0057】
上記熱可塑性樹脂の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記熱可塑性樹脂の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる樹脂組成物が流動特性や硬化後の耐屈曲性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量部以下であることにより、得られる硬化物が耐熱性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含有してもよい。上記溶媒の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶媒は、上記無機充填剤を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶媒は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
上記溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、及び、混合物であるナフサ等が挙げられる。
なかでも、塗工性や貯蔵安定性の観点から、上記溶媒の沸点は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。
なお、上記「沸点」は、101kPaの条件で測定される値、又は、沸点換算図表等で101kPaに換算された値を意味する。
【0060】
本発明の樹脂組成物100重量部中における上記溶媒の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記溶媒の含有量がこの範囲であることにより、本発明の樹脂組成物は、塗工性等により優れるものとなる。上記溶媒の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で反応性希釈剤を含有してもよい。
上記反応性希釈剤としては、接着信頼性の観点から、1分子中に2つ以上の反応性官能基を有する反応性希釈剤が好ましい。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、更に、カップリング剤、分散剤、貯蔵安定化剤、ブリード防止剤、フラックス剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0063】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填剤や必要に応じて添加する溶媒等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。
【0064】
本発明の樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、本発明の樹脂組成物からなる樹脂組成物フィルムを得ることができ、該樹脂組成物フィルムを硬化させて硬化物を得ることができる。本発明の樹脂組成物の硬化物もまた、本発明の1つである。
【0065】
上記硬化性樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含有する場合、本発明の樹脂組成物は、硬化物の25℃から150℃までの温度範囲における線膨張率の好ましい下限が3ppm/℃、好ましい上限が60ppm/℃である。本発明の樹脂組成物は、硬化物が耐熱性により優れるものとなる。上記線膨張率のより好ましい下限は5ppm/℃、より好ましい上限は40ppm/℃、更に好ましい上限は28ppm/℃、特に好ましい上限は25ppm/℃である。
なお、本明細書において上記「線膨張率」は、熱機械分析(TMA)法により昇温速度5℃/分、力33Nの条件で測定される値を示す。また、上記線膨張率の測定に用いる硬化物は、例えば、厚さを約40μmとした上記樹脂組成物フィルムを190℃で90分加熱することにより得ることができる。
【0066】
上記硬化性樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含有する場合、本発明の樹脂組成物は、硬化物の23℃における誘電正接の好ましい上限が0.015である。上記硬化物の23℃における誘電正接が0.015以下であることにより、本発明の樹脂組成物は、多層プリント配線板等の層間絶縁材料に好適に用いることができる。上記硬化物の23℃における誘電正接のより好ましい上限は0.01、更に好ましい上限は0.0035、特に好ましい上限は0.003である。
なお、上記「誘電正接」は、誘電率測定装置及びネットワークアナライザーを用いて5GHzの条件で測定される値である。なお、上記「誘電正接」を測定する硬化物は、厚さを40μmから約200μmとした上記樹脂組成物フィルムを190℃で90分間加熱することにより得ることができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、広い用途に用いることができるが、特に高い耐熱性が求められている電子材料用途に好適に用いることができる。例えば、航空、車載用電気制御ユニット(ECU)用途や、SiC、GaNを用いたパワーデバイス用途におけるダイアタッチ剤等に用いることができる。また、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着剤、プリント配線基板用接着剤、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着剤、銅張積層板、半導体接合用接着剤、層間絶縁材料、プリプレグ、LED用封止剤、構造材料用接着剤等にも用いることができる。
なかでも、本発明の樹脂組成物は、硬化物が低誘電率、低誘電正接であり、誘電特性に優れるため、ビルドアップフィルムに好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができる多官能活性エステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該多官能活性エステル化合物を用いてなる樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0070】
(合成例1(多官能活性エステル化合物Aの作製))
3-アミノフェノール130.96重量部をN-メチルピロリドン1400mLに溶解させた。得られた溶液に4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物208.20重量部を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させてアミック酸化合物の溶液を得た。得られたアミック酸化合物1mol/Lの酢酸8400mLに加えて析出物を回収した。得られた析出物を300℃で2時間加熱することにより、両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物を得た。得られた両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物8.43重量部とトリエチルアミン3.64重量部とをテトラヒドロフラン60mLに溶解させた。得られた溶液にテレフタロイルクロリド1.22重量部を添加し、25℃で4時間撹拌した後、2-ナフタレンカルボニルクロリド2.63重量部を添加し、更に25℃で18時間撹拌してエステル化反応を進行させた。テレフタロイルクロリド及び2-ナフタレンカルボニルクロリドとしては、東京化成工業社製の試薬を用いた。その後、テトラヒドロフランを除去し、残留した固体を純水で洗浄することで多官能活性エステル化合物Aを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Aは、上記式(4)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Aの数平均分子量は1900であった。
なお、数平均分子量はGPC分析(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:JAIGEL-2H-A、流速:1.0mL/min)によりポリスチレン換算の数平均分子量として求めた。
【0071】
(合成例2(多官能活性エステル化合物Bの作製))
テレフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Bを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Bは、下記式(9)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Bの数平均分子量は2700であった。
【0072】
【化9】
【0073】
(合成例3(多官能活性エステル化合物Cの作製))
テレフタロイルクロリド1.22重量部をイソフタロイルクロリド1.22重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Cを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Cは、下記式(10)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Cの数平均分子量は1900であった。
【0074】
【化10】
【0075】
(合成例4(多官能活性エステル化合物Dの作製))
イソフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例3と同様にして、多官能活性エステル化合物Dを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Dは、下記式(11)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Dの数平均分子量は2700であった。
【0076】
【化11】
【0077】
(合成例5(多官能活性エステル化合物Eの作製))
4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物208.20重量部を4,4’-オキシジフタル酸二無水物124.09重量部に変更し、両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物の使用量を8.43重量部から5.91重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Eを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Eは、下記式(12)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Eの数平均分子量は1500であった。
【0078】
【化12】
【0079】
(合成例6(多官能活性エステル化合物Fの作製))
テレフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例5と同様にして、多官能活性エステル化合物Fを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Fは、下記式(13)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Fの数平均分子量は2100であった。
【0080】
【化13】
【0081】
(合成例7(多官能活性エステル化合物Gの作製))
以下の変更を行ったこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Gを得た。
即ち、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物208.20重量部を4,4’-オキシジフタル酸二無水物124.09重量部に変更し、両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物の使用量を5.91重量部とし、テレフタロイルクロリド1.22重量部をイソフタロイルクロリド1.22重量部に変更した。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Gは、下記式(14)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Gの数平均分子量は1500であった。
【0082】
【化14】
【0083】
(合成例8(多官能活性エステル化合物Hの作製))
イソフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例7と同様にして、多官能活性エステル化合物Hを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Hは、下記式(15)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Hの数平均分子量は2100であった。
【0084】
【化15】
【0085】
(合成例9(多官能活性エステル化合物Iの作製))
2-ナフタレンカルボニルクロリド2.63重量部をベンゾイルクロリド1.94重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Iを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Iは、下記式(16)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Iの数平均分子量は1800であった。
【0086】
【化16】
【0087】
(合成例10(多官能活性エステル化合物Jの作製))
テレフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例9と同様にして、多官能活性エステル化合物Jを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Jは、下記式(17)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Jの数平均分子量は2600であった。
【0088】
【化17】
【0089】
(合成例11(多官能活性エステル化合物Kの作製))
テレフタロイルクロリド1.22重量部をイソフタロイルクロリド1.22重量部に変更し、2-ナフタレンカルボニルクロリド2.63重量部をベンゾイルクロリド1.94重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、多官能活性エステル化合物Kを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Kは、下記式(18)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Kの数平均分子量は1800であった。
【0090】
【化18】
【0091】
(合成例12(多官能活性エステル化合物Lの作製))
イソフタロイルクロリドの配合量を1.62重量部に変更したこと以外は合成例11と同様にして、多官能活性エステル化合物Lを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Lは、下記式(19)で表される化合物を含むことを確認した。また、得られた多官能活性エステル化合物Lの数平均分子量は2600であった。
【0092】
【化19】
【0093】
(合成例13(多官能活性エステル化合物Mの作製))
3-アミノフェノール130.96重量部をN-メチルピロリドン1400mLに溶解させた。得られた溶液に4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物208.20重量部を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させてアミック酸化合物の溶液を得た。得られたアミック酸化合物1mol/Lの酢酸8400mLに加えて析出物を回収した。得られた析出物を300℃で2時間加熱することにより、両末端にフェノール性水酸基を有するイミド化合物を得た。
得られたイミド化合物8.43重量部とトリエチルアミン4.86重量部とをテトラヒドロフラン130mLに溶解させた。得られた溶液に2-ナフタレンカルボニルクロリド4.80重量部を添加し、25℃で4時間撹拌してエステル化反応を進行させた。その後、テトラヒドロフランを減圧除去し、多官能活性エステル化合物Mを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Mは、下記式(20)で表される化合物を含むことを確認した。
【0094】
【化20】
【0095】
(合成例14(多官能活性エステル化合物Nの作製))
撹拌機、還流冷却器、ディーンスタークの水分離器を備えた容器を用いて、3-アミノフェノール21.8重量部をN-メチルピロリドン100mLに溶解させた。得られた溶液に4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物52.0重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。得られた溶液に、トルエン100mLを添加した後、150℃で水が発生しなくなるまで、4時間還流を行った。反応終了後、得られた溶液から、エバポレーターを用いてトルエンを除去した溶液を純水800mLに適下し、析出物を濾別した。
更に得られた析出物70.3重量部とトリエチルアミン20.2重量部をN-メチル-2-ピロリドン200mLに溶解させた。得られた溶液にベンゾイルクロリド28.1重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を純水800mLに適下し、析出物を濾別した後、真空乾燥を行い多官能活性エステル化合物Nを得た。
なお、H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、多官能活性エステル化合物Nは、上記式(1)で表されないことを確認した。
【0096】
(実施例1~12、比較例1~3)
表1、2に記載された配合比の各材料に溶媒としてシクロヘキサノンを加え、撹拌機を用いて1200rpmで4時間撹拌し、樹脂組成物を得た。なお、表1、2の組成には、溶媒を除く固形分について記載した。
アプリケーターを用いて、得られた樹脂組成物を厚み25μmのPETフィルムの離型処理面上に塗工した。PETフィルムとしては、XG284(東レ社製)を用いた。その後、100℃のギアオーブン内で2.5分間乾燥し、溶媒を揮発させた。このようにして、PETフィルムと、該PETフィルム上に厚さが40μmであり、溶媒の残量が1.0重量%以上、7.0重量%以下である樹脂組成物層とを有する未硬化積層フィルムを得た。
【0097】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムについて以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0098】
(耐熱性)
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムを190℃で90分間加熱した後、基材PETフィルムを剥離し、硬化物を得た。得られた硬化物について、熱機械分析装置を用い、昇温速度5℃/分、力33Nの条件で25℃から150℃までの温度範囲における線膨張率を測定した。熱機械分析装置としては、TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いた。
線膨張率が25ppm/℃以下であった場合を「○」、25ppm/℃を超え28ppm/℃以下であった場合を「△」、28ppm/℃を超えた場合を「×」として耐熱性を評価した。
【0099】
(誘電特性)
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムを190℃で90分間加熱した後、基材PETフィルムを剥離し、硬化物を得た。得られた硬化物を幅2mm、長さ100mmの大きさに裁断した。裁断された硬化物について、空洞共振摂動法誘電率測定装置及びネットワークアナライザーを用いて、空洞共振法で23℃、周波数5GHzの条件にて誘電正接を測定した。空洞共振摂動法誘電率測定装置としては、CP521(関東電子応用開発社製)を用い、ネットワークアナライザーとしては、N5224A PNA(キーサイトテクノロジー社製)を用いた。
誘電正接が0.0025以下であった場合を「◎」、0.0025を超え0.003以下であった場合を「○」、0.003を超え0.0035以下であった場合を「△」、0.0035を超えた場合を「×」として誘電特性を評価した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができる多官能活性エステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該多官能活性エステル化合物を用いてなる樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することができる。