(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】患者を透析するときに処置パラメータを変更するための処置レジメンを決定するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61M1/16 110
(21)【出願番号】P 2020533784
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018085222
(87)【国際公開番号】W WO2019121523
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】102017130548.3
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーホーファー、アンドレアス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0274644(US,A1)
【文献】特表2012-521816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来の日d(d=1、…、n)において行われる複数の処置セッション(BS_d)にわたって患者を透析するときに処置パラメータを変更するための処置レジメンを決定するための、血液処理装置を制御もしくは閉ループ制御するための制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスの作動方法であって、前記作動方法は、
前記制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスが、
拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)を決定するように作動するステップと、
前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)が前記複数の将来の処置セッション(BS_d)にわたって達成される遷移性処置レジメンを決定するように作動するステップと
を包含し、
前記遷移性処置レジメンを決定するように作動する前記ステップは、
前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)が、最初(d=1)の処置セッション(BS_d)で達成されるべきであると決定することと、
前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)のための前記患者のターゲット乾燥体重の値(m
dry)を決定すること、または他のターゲット体重値の値を決定することと、
前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)中に限外ろ過によって達成または到達されるべき限外ろ過容量の値(V
UF(d))を決定することと、ここにおいて、前記限外ろ過容量(V
UF(d))が、前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)の終了時に前記ターゲット乾燥体重(m
dry)または前記他のターゲット体重値に到達することを要求される、
前記ターゲット乾燥体重(m
dry)または前記他のターゲット体重値に到達するために前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)において取り出されるべき前記限外ろ過容量の前記値(V
UF(d))が、それだけ数学的に低減されるべきである、限外ろ過容量(V
UF,minus)を、事前に指定することと
を包含するかまたはそれらからなる、作動方法。
【請求項2】
前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)が、-300mmolと+300mmolとの間である、請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)が、0mmolである、請求項1に記載の作動方法。
【請求項4】
前記最初(d=1)の処置セッションに続く複数の処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)において、透析間体重増加に対応する前記限外ろ過容量(V
IDWG)を達成するためにこれらの処置セッションの各々において取り出されるべき前記限外ろ過容量(V
UF(d))が、それぞれ、容量(V
UF,extra)だけ拡張され、
ここにおいて、前記容量(V
UF,extra)は、各処置セッションにおいて、前記ターゲット乾燥体重(m
dry)または前記他のターゲット体重値に到達するために取り出されるべき前記限外ろ過容量の前記値(V
UF(d))が、前記最初(d=1)の処置セッションのためにそれだけ数学的に低減された、前記限外ろ過容量(V
UF,minus)よりも少ない、先行する請求項1~3のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項5】
請求項4の前記ステップは、前記最初(d=1)の処置セッションに続く複数
の連続する処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)について、前記ターゲット乾燥体重(m
dry)または前記他のターゲット値を達成するために取り出されるべき限外ろ過容量の前記値(V
UF(d))が、前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)のためにそれだけ低減された、前記限外ろ過容量(V
UF,minus)を仮定または超過する総容量に、前記複数の処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)にわたって合算される前記容量V
UF,extraが到達するまで繰り返される、請求項4に記載の作動方法。
【請求項6】
前記遷移性処置レジメンを決定するように作動する前記ステップは、
所定の日(d)において設定されるかまたは来るべき処置セッション(BS_d)のための拡散性ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target(d))を、
【数1】
のように決定することを包含するかまたはそれからなり、ここにおいて、
M
diff,target(d)が、前記来るべき処置セッション(BS_d)中に望まれる拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
M
diff,tolerated(d-1)が、前記処置セッションまたは前(d’=d-1)の処置セッション(BS_d’)中に前記患者によって許容される拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
M
diff,minus(d)が、M
diff,tolerated(d-1)がそれだけ数学的に低減された拡散性ナトリウム平衡の決定可能なまたは決定された値に対応する
ことが適用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項7】
【数2】
が適用され、ここにおいて、
M
diff,target(d-1)が、前記来るべき処置セッション(BS_d)に先行する前記処置セッション(BS_d-1)のための望まれる、達成または調整された拡散性ナトリウム平衡の値に対応する
ことが適用される、請求項6に記載の作動方法。
【請求項8】
請求項6の前記ステップは、前記複数
の連続する処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)について、次(d’=d+1)の処置セッション中に望まれるナトリウム平衡の前記値M
diff,target(d)が、前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)を仮定するかまたはそれよりも少なくなるまで繰り返される、請求項6から7の一項に記載の作動方法。
【請求項9】
前記遷移性処置レジメンを決定するように作動する前記ステップは、
前記総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total)が、-300mmolと+300mmolとの間、
または0mmolであるべきであると決定すること
を包含するかまたはそれからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の作動方法を実施するために構成された、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス(150)。
【請求項11】
請求項10に記載の制御デバイス(150)を有する血液処置装置(100)。
【請求項12】
腹膜透析装置、血液透析装置、血液ろ過装置
もしくは血液透析ろ過装置として
、慢性腎置換療法
のための装置として、または持続的腎置換療法のための装置として設計された、請求項11に記載の血液処置装置(100)。
【請求項13】
電解質平衡および/または液体平衡を測定するために血液処置装置(100)の透析器(303)の上流および/または下流に配置されたセンサー(106、108)を有する、請求項11から12のいずれか一項に記載の血液処置装置(100)。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の本発明による作動方法の前記ステップが実施されるようにプログラマブルコンピュータシステムと対話するように構成された、電子的に読取り可能な制御信号を有する、デジタル記憶媒体
、フロッピー(登録商標)ディスク、メモリカード、CD、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクまたは(E)EPROM。
【請求項15】
コンピュータ上でコンピュータプログラム製品が動作しているとき、請求項1から9のいずれか一項に記載の本発明による作動方法の前記ステップを実行するためのプログラムコードが機械可読キャリア上に記憶されたコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
コンピュータ上でコンピュータプログラムが実行されたとき、請求項1から9のいずれか一項に記載の本発明による作動方法の機械実装された前記ステップをプロンプトするためのプログラムコードをもつコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1、9、10および11に記載の方法に関する。それは、請求項12に記載の制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスと、請求項13に記載の血液処置装置とにさらに関する。さらに、本発明は、請求項16に記載のデジタル記憶媒体と、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品と、請求項18に記載のコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において体外血液処置が知られている。それにより、患者の血液が取られ、体外血液回路に沿って、および、たとえば、血液フィルタを通して導かれる。血液フィルタは、血液がそれを通して導かれる血液チャンバと、透析液がそれを通して導かれる透析液チャンバとを備える。両方のチャンバは、半透膜によって互いに分離される。血液と透析液とは、血液フィルタを通して対向流原理によって大部分が案内される。血液は血液フィルタ中で清浄化される。血液フィルタを出ると、透析物と以後呼ばれる、透析液は、使用済みと見なされ、廃棄される。透析物に加えて、廃棄されるべき流体は、血液フィルタ中で血液から取り出された水を備える、ろ液をも備える。ろ液および透析物は、以下では個々にまたは総称して単に排液と呼ばれる。急性の場合に加えて、透析は、末期腎疾患をもつ患者のために特に使用される。
末期腎疾患をもつ患者は、体内に蓄積している毒素と液体とを排出するための能力が限られているかまたは有しない。したがって、これらの患者は、前記蓄積を定期的に除去するかまたは低下させるために透析の体外方法に依存する。したがって、多くの患者の場合、血液透析処置が典型的には週に3回行われる。尿素およびカリウムのような物質の除去に加えて、患者が理想的には透析後に彼の乾燥体重に再び到達するように、血液からの液体除去による液体摂取から生じる患者の水分過剰を低下させることが、透析の本質的タスクである。この条件は、様々な臨床方法によって決定されてよく、それに関してはバイオインピーダンスが現在好ましい。透析処置の間の液体摂取は、生理的制御機構を介した血液中のナトリウム濃度の変化が渇きの感覚を制御するので、食事の塩含有量に密接に結び付けられる。そのように行うのに、体は、個々の生理学に依存する「ナトリウム設定点(sodium setpoint)」を目標とする(Keen, M.L.、およびGotch, F.A.、The association of the sodium “setpoint” to interdialytic weight gain and blood pressure in hemodialysis patients、The International Journal of Artificial Organs/第30巻/第11冊、2007年/ページ971~979)。この「設定点」が、食事を介したまたは透析中の塩取入れを通した塩摂取によって超えられた場合、それは渇きの感触を引き起こす。間接的液体摂取により、ナトリウム濃度(略して、Na濃度)は、次いで、「設定点」に戻される。臨床試験は、透析患者の死亡率が、慢性の水分過剰の度合いと、液体摂取によって引き起こされる相対的な透析間体重獲得または増加の度合いの両方とともに増加することを示している。
【0003】
体において、水は、細胞内空間と、細胞外空間と、間質とにおいて分割され得る、様々な生理的区画の間で分散される(GuytonおよびHall、Textbook of Medical Physiology)。これらの区画の間の分散は、これらの区画中のナトリウム含有量が最もそれに寄与する浸透平衡によって主に決定される。血液透析では、血液と一緒の質量移行と、血液からの液体除去の両方が透析器中で行われる。血液を体に返した後に、体の他の部分からの液体の充填フローにより、および物質濃度の平衡により、新しい平衡状態がそれぞれ生じる。しかしながら、これらのプロセスは、透析を介した血液からの液体の除去が体内水分のフローよりも速くなることを可能にする、一定量の時間を必要とする。それにより引き起こされる血管中の水の容量(または量)の減少により、透析中に血圧は減少し、場合によっては危険な血圧降下が起こり得る。これは、透析器において血液拡散性塩移行の塩濃度を増加させることによって部分的に相殺され得る。この目的のために、透析液中のナトリウム濃度は、それが血液ナトリウム濃度を上回るように選択される。その結果、これは、血液中のモル浸透圧濃度の増加によって、体内水分のフローの増加をもたらす。しかしながら、そのような透析中塩投与は、同時に、体内の塩濃度の増加を、したがって増加した渇きをもたらし、それは、処置セッションの間の期間の間中に、増加した液体摂取によって補償される。しかしながら、これのために、患者の水分過剰は、次の透析セッションにおいて対応してより大きい容量の液体が除去されなければならなくなるように増大される。したがって、そのような透析中塩投与は、可能な場合は回避されるべきである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、特に透析中塩投与がそれによってまたはそれに従って必要とされないかまたはもはや必要とされない、処置レジメン(treatment regimen)を決定および/または適用するための方法を指定することである。
【0005】
さらに、本発明による方法が実施可能である制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス、血液処置装置、好適なデジタル記憶媒体、好適なコンピュータプログラム製品および好適なコンピュータプログラムが指定されるべきである。
【0006】
本発明による目的は、請求項1、9、10および11の特徴を有する方法と、請求項12の特徴を有する制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスと、請求項13の特徴を有する血液処置装置とによって達成される。本発明の目的は、請求項16、17および18によるデジタル記憶媒体、コンピュータプログラム製品およびコンピュータプログラムによってさらに達成される。
【0007】
本発明は、処置レジメンに関係するか、あるいは処置レジメンを決定するための方法、特に、将来の日において行われる複数の将来の処置セッションにわたって患者の透析中に1つの処置パラメータを決定もしくは変更するための、またはいくつかの処置パラメータを変更することによる方法に関係する。
【0008】
本方法は、本明細書では、将来の処置セッションのうちの1つにおいて複数の将来の処置セッション後に必要に応じて到達されるべきである拡散性ナトリウム平衡のターゲット値である、拡散性総ターゲットナトリウム平衡として本明細書で示される値を決定することを包含する。拡散性総ターゲットナトリウム平衡は、したがって、「本方法の目的」である。
【0009】
拡散性ナトリウム平衡およびそれの決定は、それの関係する内容が同じく本出願の主題として参照によってその全体において本明細書によって組み込まれる、たとえばEP 2 413 991 A1およびUS 8,764,987においてそのようなものとして記載されている。
【0010】
拡散性ナトリウム平衡は、血液容量の低減なしに流れている透析物と血液との間の質量、物質または分子の移行を表し得る。このナトリウム拡散の結果として、血液中のナトリウム濃度が変化し、それにより、生理作用(ナトリウム増加の場合は、たとえば、循環の安定化、渇き、ナトリウム減少の場合は、たとえば、血圧降下、痙攣)がもたらされる。
【0011】
拡散性ナトリウム平衡は、たとえば容量低減を伴わない質量移行の結果として理解され得る。
【0012】
この拡散性総ターゲットナトリウム平衡は、好ましくは本発明による方法を使用して計画された最初のまたは後の処置セッションで、しかし本発明による方法または以下で説明される遷移性処置レジメンの少なくとも完了時またはその後に、方法目的として達成されるべきである。
【0013】
拡散性ナトリウム平衡は、たとえば透析器の血液区画と透析液区画との間で測定され得る。代替的に、特に腹膜透析を用いた拡散性ナトリウム平衡は、一方で患者に送出される新鮮な透析液のナトリウム含有量を、他方で同じ処置セッション中に患者から除去される使用済み透析物のナトリウム含有量と比較することによって測定され得る。この測定は、拡散性総ターゲットナトリウム平衡が(ターゲット値として)すでに到達されたかどうかを明らかにし得る。
【0014】
本方法は、処置セッション中に(または複数の将来の処置セッションにわたって、もしくはこれらに続いて)、およびたとえばそれの終了に向けて、拡散性総ターゲットナトリウム平衡がそれによって達成される、遷移性処置レジメンを決定することをさらに包含する。
【0015】
拡散性総ターゲットナトリウム平衡に「到達すること」ならびにそれを「達成すること」は、たとえば処置セッションにおいて前記患者によって許容される拡散性ナトリウム平衡を用いた患者の処置として理解され得る。
【0016】
これにおいて、本発明によれば、たとえば拡散性ナトリウム平衡が、前の処置セッションにおいて患者によって許容されたより高い拡散性ナトリウム平衡、または前記患者がそれに対して使用される拡散性ナトリウム平衡から、より低い望まれる拡散性ナトリウム平衡、すなわち拡散性総ターゲットナトリウム平衡に低減され得るという点で、どのように拡散性総ターゲットナトリウム平衡がいくつかの処置セッションにわたって段階的に準備されるかに関する提案が行われる。したがって、拡散性総ターゲットナトリウム平衡は、元の拡散性ナトリウム平衡または拡散性初期ナトリウム平衡を漸進的に低下させるターゲットであり得る。これにおいて、それぞれ現在の処置日において設定されるかまたは処置によって達成される、拡散性ナトリウム平衡は、拡散性総ターゲットナトリウム平衡に漸進的に接近するか、または複数の処置セッションに続いてそれの値を仮定し得る。
【0017】
代替的に、拡散性総ターゲットナトリウム平衡は、最初の処置セッションにおいてすでに設定されているか、またはそれのために提案され得る。前記設定を患者にとって許容できるものにするために、本発明によれば、以下で説明されるように、患者を救助する処置計画において他のパラメータが適応または変更されてよい。
【0018】
本発明は、患者の透析のための提供される血液処置装置の限外ろ過機能、または限外ろ過機能の使用にさらに関係し、ここにおいて、限外ろ過を使用して患者から除去されるかまたは除去されるべき限外ろ過容量は、処置レジメンを指定するための方法によって決定される。限外ろ過機能は限外ろ過であり得る。限外ろ過機能は、本発明による限外ろ過機能を開始または実施するために構成された、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス、たとえば本発明による制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスを備え得る、本発明による血液処置装置によって行われ得る。
【0019】
本発明は、ナトリウム(もしくは塩化ナトリウム)または透析液にさらに関係するか、あるいは透析液中にそれぞれ混和されたナトリウムまたは塩化ナトリウムを使用することに関係するか、あるいは患者の透析のためにそれぞれ透析液を使用することに関係する。塩化ナトリウムの濃度は、特に透析液では、1つの処置セッションにおいてまたは複数の処置セッションにおいて拡散性ナトリウム平衡を達成するために決定され、ここにおいて、達成されるべき前記拡散性ナトリウム平衡は、処置レジメンを決定するための本発明による方法を使用して決定される。代替または追加として、どのように本発明によるナトリウムまたは本発明による透析液を使用することによって望まれる拡散性ナトリウム平衡が達成されるかまたは達成されるべきかが、処置レジメンを決定するための本発明による方法によって決定される。
【0020】
本発明は、患者の透析処置のための透析液を混合するための方法にさらに関係し、ここにおいて、塩化ナトリウムの濃度は、処置レジメンを決定するための方法を使用して1つまたは複数の処置セッションのために決定される。
【0021】
本発明は、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスをさらに包含する。それは、特に本明細書で説明される各実施形態において、および特定の方法ステップにおける、本明細書で開示される特徴の各可能な組合せで、本発明による方法の各々を実行するためにおよび/またはそれの実行をプロンプトするために構成またはプログラムされる。制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、追加または代替として、本方法の結果に基づいて、あるいは本明細書によってまたは本明細書で決定、提供、記憶および/または定義される値またはパラメータに基づいて、血液処置装置を制御または閉ループ制御するように構成またはプログラムされる。
【0022】
制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、本明細書において、特に特許請求の範囲において開示されるような個々の方法ステップまたは方法特徴を実行し、対応して設計、構成および/またはプログラムされた、デバイスを備えるか、またはそれと信号通信中であり得る。これらのデバイスは、それらによって実施されるかまたは実施可能であるステップに従って命名され得る。
【0023】
特に制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、拡散性総ターゲットナトリウム平衡と本明細書で呼ばれる値を決定するためのデバイスを場合によっては備えるか、またはそれと信号通信中である。
【0024】
特に、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、処置セッション中に(または複数の将来の処置セッションにわたって)、およびたとえばそれの終了に向けて、拡散性総ターゲットナトリウム平衡がそれによって達成される、遷移性処置レジメンを決定するためのデバイスを場合によってはさらに備えるか、またはそれに信号通信において接続される。
【0025】
本発明は、血液処置装置にさらに関係する。それは、特にそれとともに制御または閉ループ制御されるべき、本発明による制御デバイスを場合によっては備えるか、またはそれに信号通信において接続される。追加または代替として、血液処置装置は、本発明による方法の結果に基づいて、あるいは本明細書によってまたは本明細書で決定、提供、記憶および/または定義される値またはパラメータに基づいて、血液処置装置を制御または閉ループ制御するように構成またはプログラムされた、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスを備える。
【0026】
電子的に読取り可能な制御信号をもつ、本発明によるデジタルの、特に不揮発性の記憶媒体、特にフロッピー(登録商標)ディスク、メモリカード、CD、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクまたは(E)EPROMは、本発明による方法の、特に機械誘起されたステップがプロンプトされるように、プログラマブルコンピュータシステムと対話し得る。
【0027】
これにおいて、本発明による方法の、特に機械誘起されたステップの、すべて、いくつかまたは一部がプロンプトされ得る。
【0028】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、コンピュータ上でコンピュータプログラム製品が動作したとき、本発明による方法の機械誘起されたステップをプロンプトするための、機械可読記憶媒体上で揮発性であるかまたは保存される、プログラムコードを備える。コンピュータプログラム製品は、本発明によれば、たとえば、データ記憶媒体上に記憶されたコンピュータプログラム、コンピュータプログラムをもつ包括的なシステムとしての組込みシステム(たとえば、コンピュータプログラムをもつ電子デバイス)、コンピュータ実装されたコンピュータプログラムのネットワーク(たとえば、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステムなど)、またはコンピュータプログラムがその上でロード、動作、保存、実行もしくは展開されるコンピュータとして理解されることが可能である。
【0029】
本明細書で使用される「機械可読記憶媒体」という用語は、本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、ソフトウェアおよび/またはハードウェアによって解釈可能であるデータまたは情報を含んでいる媒体を示す。この媒体は、フロッピーディスク、CD、DVD、USBスティック、フラッシュカード、SDカードなどのデータ媒体であり得る。
【0030】
本発明によるコンピュータプログラムは、コンピュータ上でコンピュータプログラムが動作したとき、本発明による方法の、特に機械誘起されたステップをプロンプトするためのプログラムコードを備える。本発明によれば、コンピュータプログラムは、たとえば、プログラムを含んでいる、配布のための準備ができている物理的ソフトウェア製品として理解されることが可能である。
【0031】
本発明による方法の、特に機械誘起されたステップの全部または一部は、本発明によるコンピュータプログラム製品と、本発明によるコンピュータプログラムとによってプロンプトされ得る。
【0032】
本発明による実施形態は、当業者が特定の組合せを技術的に不可能として認識しない限り、任意の組合せで以下の特徴の一部、いくつかまたはすべてを持ち得る。本発明の有利な展開もそれぞれ、従属請求項の主題である。
【0033】
以下のすべてにおいて、「~であり得る」または「~を有し得る」などの表現の使用は、それぞれ、「好ましくは~である」または「好ましくは~を有する」などと同義的に理解されたく、本発明による実施形態を例示することを意図される。
【0034】
本明細書で数値の単語が言及されるときはいつでも、当業者は、それらを数値の下限の表示として認識または理解されたい。それが当業者を明らかな矛盾に導くのでない限り、当業者は、たとえば、「少なくとも1つ」を包含している、「1つ」の指定を理解されたい。この理解はまた、当業者にとってこれが明らかに技術的に可能である場合はいつでも、数値の単語、たとえば、「1つ」が、「厳密に1つ」を代替的に意味し得るという解釈として、本開示によって等しく包含される。両方が、本発明によって包含され、すべての使用される数値の単語に対して本明細書において適用する。
【0035】
本明細書で実施形態が言及されるとき、それは、その場合、本発明による例示的な実施形態を表す。
【0036】
許容される拡散性ナトリウム平衡など、許容される値は、いくつかの実施形態では、たとえば、それが主観的および/または客観的基準を満たす場合、許容されると見なされ得る。
【0037】
このようにして、患者は、たとえば処置の終了後に、現在の処置セッションによってあるいは1つまたは複数の前の処置セッションにおいて到達された拡散性ナトリウム平衡が、彼によって許容されたと指定し得る。代替的に、医師は、彼の経験に基づいて、患者が処置を許容したかどうか、および特に拡散性ナトリウム平衡がそれによって到達されたかどうかを決定し得る。また代替的に、患者と医師は、処置および特に拡散性ナトリウム平衡が許容されたと一緒に結論付け得る。これらの可能性は、主観的基準として計数されるか、またはそれを包含する。
【0038】
さらに、たとえば1つまたは複数の測定可能な情報に基づき得る、客観的基準が適用され得る。これらは、測定値によって測定され得るか、または等級付けによってもしくは他の仕方で分類され得る、バイタルパラメータ、透析後または透析中の症状、めまい、不安の度合いなどを含み得る。
【0039】
本明細書で拡散性ナトリウム平衡が言及されるとき、これは、限定的として理解されるべきではない。ナトリウムが拡散性塩平衡に大部分は影響を及ぼすことがあり、血漿ナトリウムが血液に対して最も大きい浸透作用を有することがあるが、本発明は、しかしながら、代替的に以下のようにさらに理解されるべきである。本明細書で拡散性ナトリウム平衡が言及されるとき、他の塩および/または浸透活性物質も、「ナトリウム平衡」という用語の中に含まれるか、または置換される。「ナトリウム平衡」およびそれに関係するすべての用語の代わりに、本発明によれば、たとえば「塩平衡」が使用されてもよい。
【0040】
たとえば拡散性ナトリウム平衡に関して、本明細書でナトリウムが言及されるとき、これは、別の理由により限定的として理解されるべきではない。ここでは、ナトリウムは、ナトリウムを純物質として、ならびに各ナトリウム塩またはナトリウムを備える塩、たとえば塩化ナトリウムとして表す。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、拡散性ナトリウム平衡、それぞれそれの値を特に段階的に低減するのに役立ち得る。
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、1つまたは複数の処置セッションの限外ろ過容量を特に段階的に低減するのに役立ち得る。
【0042】
本発明は、処置方法にさらに関係し得る。この処置方法は、本発明による方法によって前に決定された処置レジメンに基づいて進行する。本発明によるこの方法は、計画方法として理解され得る。代替的に、本発明は、処置方法に関係しない。
【0043】
処置レジメンを決定するための本発明による方法は、処置の開始の完全に前に、すなわちたとえば最初の処置セッションの前に行われ、完了され得る。それは、代替的に、たとえば最初および最後の処置セッション中に適応され得る。しかしながら、これにおいて、患者との対話は必要とされない。患者は、適応中に処置装置に接続される必要はない。患者の存在は、適応のために必要とされない。血液処置セッションを実行するための血液処置装置の設定は、現在の処置セッション中に変更される必要はない。
【0044】
いくつかの実施形態では、遷移性処置レジメンを決定するステップは、拡散性総ターゲットナトリウム平衡が好ましくは-300mmolと+300mmolとの間である(ここで、正の符号は患者からの除去で使用され、負の符号は患者への投与で使用されることが場合によっては可能であり得る)と、およびさらに好ましくはそれが0mmolであるべきと(たとえば医師によって)決定する部分ステップと、最初の処置セッションのために(たとえばそれぞれの処置セッションの完了時に透析によって追求されるべきであり、および/またはたとえば限外ろ過容量を決定するための処置の基礎として働き得る)患者のターゲット乾燥体重または体重の別のターゲット値の値を(たとえば医師によって)決定するかまたは(たとえば表、患者ファイルなどを使用して)提供する部分ステップと、最初の処置セッション中に限外ろ過(ここでは略して、UF)によって除去されるべき限外ろ過容量の値と、最初の処置セッションの終了に向けてターゲット乾燥体重または体重の他のターゲット値に到達するためにどれが必要とされるかまたは必要とされるであろうかとを(たとえば計算、参照表、患者のファイルによって)決定する部分ステップと、最初の処置セッションのターゲット乾燥体重または体重の他のターゲット値に到達するために除去されるべき限外ろ過容量の値が、それだけ数学的に低減されるべきである、限外ろ過容量を事前に指定する部分ステップとを包含するか、またはそれらからなる。
【0045】
いくつかの実施形態では、決定することおよび/または割り当てることは、検出すること、入力すること、記憶することおよび/または計算することである。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記検出することは、計算することまたは記憶媒体(表、リストなど)中でルックアップすることである。
【0047】
本方法のいくつかの実施形態では、最後のそれぞれの処置セッション以降の食事取入れにより生じた患者の体重の増加を補償するためにそれぞれ除去されるべきである限外ろ過容量(乾燥体重を達成するために除去されるべきである限外ろ過容量に対応し得る)は、「最初の」セッションとして上記で示された処置セッションに直接または間接的に(すなわち中断なしでまたはありで)続く複数の処置セッションにおいて容量VUF,extraだけそれぞれ増加される。したがって、患者が透析の間に(すなわち最後の処置セッションの終了以降に)飲食することによって獲得したよりも多くの体重が、限外ろ過によって彼から除去される。これにおいて、容量VUF,extraは、乾燥体重mdryまたは体重の他のターゲット値に到達するために除去されるべき限外ろ過容量の値VUF(d)が、最初の(すなわち日d=1における)処置セッションのためにそれだけ数学的に低減された、限外ろ過容量VUF,minusよりもそれぞれ小さい。
【0048】
いくつかの実施形態では、先行する段落において言及されたステップは、複数の、特に連続する将来の処置セッションについて繰り返される。繰り返しは、それぞれそれだけ増加された、複数の処置セッションにわたって合計された容量ΔVUF,extraが、ターゲット乾燥体重または他のターゲット値を達成するために取り出されるべき限外ろ過容量の値が、来るべき処置セッションのためにそれだけ数学的に低減された、限外ろ過容量VUF,minusに今度は到達するかまたはそれを超過する総容量に到達するまで、行われる。
【0049】
いくつかの実施形態では、遷移性処置レジメンを決定するステップは、所定の日のために手配された処置セッションのための拡散性ターゲットナトリウム平衡を、
【0050】
【0051】
として決定するステップを包含するかまたはそれからなり、ここにおいて、
Mdiff,target(d)は、来るべき処置セッションBS_d中に望まれるかまたは決定される拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
Mdiff,tolerated(d-1)は、処置セッションまたは前(d’=d-1)の処置セッション(BS_d’)中に患者によって許容されるかまたは許容されると見なされる拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
Mdiff,minus(d)は、Mdiff,tolerated(d)またはMdiff,target(d)がそれだけ数学的に低減された拡散性ナトリウム平衡の決定可能なまたは決定された値に対応する
ことが適用される。
【0052】
いくつかの実施形態では、
【0053】
【0054】
が適用され、ここにおいて、
Mdiff,target(d-1)は、dの各値について、来るべき処置セッションBS_dに先行する処置セッション(BS_d-1)の望まれる、達成または設定された拡散性ナトリウム平衡の値に対応する
ことがさらに適用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、先行する段落のステップは、複数の、特に連続する処置セッションについて、次の処置セッション中に望まれるかまたは設定される拡散性ナトリウム平衡の値が、拡散性総ターゲットナトリウム平衡に到達するかまたはそれよりも少なくなるまで繰り返される。
【0056】
いくつかの実施形態では、遷移性処置レジメンを決定するステップは、拡散性総ターゲットナトリウム平衡Mdiff,target_totalが、-300mmolと+300mmolとの間にあるべきであり、好ましくはそれが0mmol(「中性拡散性ナトリウム平衡」)であるべきであると決定することを包含するかまたはそれからなる。
【0057】
いくつかの実施形態では、拡散性総ターゲットナトリウム平衡Mdiff,target_totalは、-300mmolと+300mmolとの間にあり、好ましくは、それは0mmolである。
【0058】
いくつかの実施形態では、血液処置装置は、腹膜透析装置、血液透析装置、血液ろ過装置または血液透析ろ過装置として、特に慢性腎置換療法もしくは持続的腎置換療法(CRRT)のための装置として設計される。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明による血液処置装置は、たとえば透析液側上でおよび/または血液側上で電解質平衡および/または液体平衡を測定するために血液処置装置の透析器の上流および/または下流に配置されたセンサーを備える。
【0060】
いくつかの実施形態では、血液処置装置は、さらなるデバイス、特に血液処置装置と対話して本発明による方法を実行するようにプログラムおよび/または構成され得る制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスを備える。
【0061】
いくつかの実施形態では、制御デバイスは、医師またはユーザからの情報に基づいて、来るべき処置セッションのうちの1つまたはいくつかのための、特に透析液の限外ろ過容量またはナトリウム濃度に関係する、処置パラメータを決定し、および/あるいはこれらの処置パラメータに基づいて処置のために処置装置を制御または調整するように構成される。制御または閉ループ制御は、装置、たとえば処置装置によって混合される透析液に、特にそれの組成および/またはそれのナトリウム含有量もしくはナトリウム濃度に場合によっては影響を及ぼし得る。
【0062】
制御デバイスは、医師による入力に基づいて、制御信号として処置装置に向けられた機械信号を送るように構成され得るか、あるいは、それの代替または追加として、記憶されたアルゴリズムに基づいてそのような機械信号を生成するように構成され得る。したがって、医師は、たとえば従われるべき処置レジメンと、適用可能な場合、フレームワーク条件を指定し得、制御デバイスは、個々のまたは特定の処置セッションのための処置パラメータを適応させるかまたは決定し、対応する機械信号を処置装置に送り得る。
【0063】
本発明による制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、オンザフライで、すなわちたとえば処置セッションの過程においてまたはそれと並行して決定または変更され得る。代替的に、それは、処置セッションの開始より前に決定され、記憶されてよく、後で、たとえば将来の処置セッション中に、記憶されるように処理されてよい。
【0064】
制御デバイスは、医師による入力、機械信号の計算のためのアルゴリズムおよび/または機械信号を記憶するかまたはそれらの記憶をプロンプトするように構成され得る。対応する記憶デバイスが本発明によって提供され得る。
【0065】
医師のために、対応する随意で(特に)特別に提供された入力フィールド、スイッチ、コントローラなどが、制御デバイスによって、ディスプレイデバイスによって、および/または血液処置装置のセクションによって備えられ得る。
【0066】
制御デバイスは、たとえばディスプレイを介して、スマートフォンなどの受信機ユニットへの送信を介して、プリントアウトなどを介して、医師またはユーザに、特に透析液の限外ろ過容量、拡散性ナトリウム平衡またはナトリウム濃度に関係する、処置パラメータ、および/あるいは制御デバイスによって適応または決定された処置パラメータを出力するように構成され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、制御デバイスまたは処置装置は、本発明による方法のステップを実行するように構成されたデバイスを備える。これは、本明細書で開示される各ステップについて適用される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、以下の例示的な実施形態の個々のまたは恣意的に組み合わされたステップを包含し得る。
【0069】
患者の乾燥体重mdryと、関連する総体内水分容量VTBW,dryとは、好適な方法によって、たとえばバイオインピーダンス測定によってもしくは臨床方法によっておよび/または人体計測公式を使用することによって決定される。乾燥体重mdryは、透析セッションの終了時に液体除去によって達成されるべきターゲット体重を通常表す。
【0070】
さらに、たとえば透析器の血液区画と透析液区画との間の、それぞれの拡散性ナトリウム平衡Mdiffは、本発明による方法の開始より前にすでに行われており、患者が無症状でありおよび/または許容されると見なされた、前の処置セッションに基づいて決定される。このコンテキストにおいて、以下のパラメータは処置セッションのパラメータであり、それらの各々は、場合によっては考慮に入れられ得る。
・ 処置セッションの日付d:(たとえば2日の処置休止がある)長いまたは(たとえばただ1日の処置休止がある)短い透析間間隔、患者のバイオリズムの変動などにとって重要である。
・ 透析中症状ζ:処置レジメンに対する患者の許容度を示す。
・ 処置セッションの開始より前に測定された血液中のナトリウム濃度としての、透析前血漿ナトリウム濃度cplasma.pre:血液と透析液との間のナトリウム濃度の勾配に関連し、拡散性ナトリウム移行に影響を及ぼし、これは診断パラメータであってもよい。血液サンプルの必要なしのこの決定は、EP 3 183 013 A1に記載されている。他の決定方法も可能である。
・ 透析セッション中の中間透析液ナトリウム
【0071】
【0072】
:血液と透析液との間の勾配が拡散性ナトリウム移行に影響を及ぼす。
【0073】
【0074】
は通常、処置セッション中に一定である。それは、ユーザの調整、ナトリウムプロファイルの変化、または透析液ナトリウムの自動閉ループ制御により、透析セッション中に変動し得る。
・ 透析適用量Kt/VTBW:所与の濃度勾配についての拡散性質量または分子移行の量にとって決定的である。
・ 限外ろ過容量VUF:水分過剰の部分的または完全補償のための液体除去の容量。
【0075】
Kt/Vは、透析有効性を決定するためのパラメータである。Kはクリアランスであり、それは透析の前および後の血液の尿素含有量によって決定される。tは、分での実効透析時間である。たとえば、Vは、血液(体内水分含有量)がその中で循環し得る体質量(体重)の60%に設定され得る。
【0076】
これらのパラメータは、処置セッションごとにパラメータセット
【0077】
【0078】
に組み合わされ得る。他のパラメータセットも本発明によって企図され、特定の処置セッションを記述し得る。
【0079】
透析器の、または腹膜透析における血液区画と透析液区画との間の拡散性ナトリウム平衡Mdiffの決定は、たとえばEP 2 413 991に記載されている。
【0080】
【0081】
tfは、容量要素がcdiの測定点からcdoの測定点への道程のために必要とする、中間フロー時間(すなわち遅延時間)を示す。
【0082】
これにおいて、点cdiおよびcdoは、たとえば、それぞれ、新鮮な腹膜透析液および使用済み腹膜透析液における透析器の上流透析液および下流透析物中のナトリウム濃度を表す。これらは、好適なイオン選択性センサーによって決定され得る。
Qdは、透析器の透析液区画を通る液体フローと、置換法(血液ろ過(HF)、血液透析ろ過(HDF))を用いて場合によっては分岐された液体フローとを備える、新鮮な透析液の総フローを示す。
【0083】
代替的に、ナトリウム濃度を決定するために温度補償された総導電率σが測定されてよく、これから、透析液の組成を考慮に入れて、それぞれの測定点におけるナトリウム濃度が推論され得る。
【0084】
【0085】
この線形関係は、良好な近似で、透析に関連する濃度範囲内で有効であり、ここにおいて、cjは、総導電率に寄与するすべてのイオンの濃度を示し、γjは、それらの知られている特定の導電率を示し、σOfsは、線形化から生起するオフセットを示す。
【0086】
透析器の上流の新鮮な透析液の組成は、使用済み濃縮物と、混合比に関する透析デバイスにおける設定との知識のために知られるが、透析器の下流の使用済み透析物の組成は、透析器中の血液と透析液との間の質量移行のためにアプリオリに知られない。それのために、ナトリウムおよび/またはナトリウムに加えて導電率に寄与するイオンの濃度は、好適な測定方法によって決定されるか、または、EP 2 413 991 A1に記載されているように、透析器の下流の血液と透析物との中の関連するイオンの濃度過程の運動モデルによって決定され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、拡散性ナトリウム平衡Mdiffの特定の値におけるまたはそれを伴う無症状処置のプロビジョンのためのルールが、定義可能で代表的な前の時間期間について、たとえば時系列分析の方法を使用することによって、たとえばパラメータセットΨjから導出され得る。目的は、遷移性位相の処置日dの手順にかかわらず、または前の手順間にあり、したがって本発明による方法を実行する前にある遷移性レジメンにかかわらず、無症状処置を可能にする拡散性ナトリウム平衡Mdiff,tolerated=f(Ψj)の特定の値をヒストリカルデータから決定することであり、ここにおいて、前記方法によって、前の処置レジメン(ここで、レジメン1、すなわちたとえば標準の処置)から、拡散性ターゲットナトリウム平衡を伴う処置が行われる望まれる処置レジメン(ここで、レジメン2、すなわち低減されたまたは閉ループ制御された透析液ナトリウムを伴う処置レジメン)への移行が行われることになる。
【0088】
最も単純な場合、Mdiff,tolerated(レジム1)は、関連する過去の時間期間におけるMdifffの平均値によって提供される。しかしながら、たとえばより高い限外ろ過容量(略して、UF容量)が除去された長い透析間間隔の後の処置日において、症状を回避するためにより高い中間透析液ナトリウムがユーザによって処方されたとき、Mdiffの周期的変動も可能である。同様に、cplasma,preの周期的変動が、患者のバイオリズムにより、週の範囲内で可能である。不変の透析液ナトリウムを用いたcplasma,preの変化は拡散勾配に影響を及ぼすので、それらはMdiffの周期的変動を生じる。
【0089】
Ψjに部分的に関係しない、Mdiffの他の決定が、同様に可能である。
【0090】
いくつかの実施形態では、達成されるべき拡散性ナトリウム平衡Mdiff,target(レジム2)のターゲット値は、患者の意図された処置レジメンのために指定され、本明細書では、前記ターゲット値は、拡散性総ターゲットナトリウム平衡Mdiff,target_totalとして示される。これらの2つのレジメン間の遷移をどのように達成すべきかが本発明によって決定される。この目的のために、計算方法またはルールが本発明によって指定され、それによれば、いくつかの処置セッションを包含する遷移性位相または遷移性レジメンにおいて行われる液体除去は、乾燥体重mdryを達成するために必要とされるUF容量VUF(d)から偏位すべきであり、拡散性ナトリウム平衡は、望まれる拡散性ナトリウム平衡から偏位すべきである。
【0091】
本明細書において行われる記述は、血液(透析)ろ過および腹膜透析にも適用され得る。
【0092】
たとえば、式1(上)は、物質または質量移行中に容量除去がないという趣旨で一般化され得る。したがって、式1は、透析液がオンラインで、すなわち処置機械によって混合される血液ろ過でも不変のままであり、希釈前と希釈後の両方の操作において適用可能である。
【0093】
バッグからの透析液があり、液体除去なしの腹膜透析および血液ろ過では、Mdiff(t)は、実際には式1の積分になるはずである。
【0094】
【0095】
液体除去とともに(すなわち限外ろ過ポンプを使用したまたは浸透による腹膜透析を用いた容量除去とともに)、以下が拡散性総ナトリウム平衡について適用される。
【0096】
【0097】
Vdo=Vdi+VUFでは、結果は、
【0098】
【0099】
になる。
【0100】
知られている注入容量または入口容量Vdiの場合、血液中のナトリウム濃度に変化を引き起こす拡散性ナトリウム平衡は、ここで計算されてもよい。
【0101】
オンライン血液(透析)ろ過法では、透析液のナトリウム濃度と、それに伴って、質量移行を決定するナトリウム濃度勾配とが変動され得るので、拡散性ナトリウム平衡は、(尿素などの)尿毒症毒素の除去から分離される。しかしながら、透析液がバッグに由来する方法では、透析液のナトリウム濃度は最初から決定されている。したがって、ナトリウム移行は、透析物フローまたは処置の持続時間の変動によってのみアクティブに影響を受け得る。同時に、これらの測定も、尿毒症毒素の除去に関係する。
【0102】
代替的に、オプションとして本発明によって提供もされ、たとえば処置プランにおいて提供され得る、異なるナトリウム濃度の透析液をもつバッグの特定の(手動または自動の)変更が可能である。そのような変更は処置セッション中のナトリウム平衡の変動につながるが、バッグおよび透析物フローを変更するための時点は、バッグ成分の知られているナトリウム濃度によるcdoの十分頻繁な測定により、望まれる拡散性ナトリウム平衡が処置の終了時に達成されるように決定され得る。これは、バッグによる血液ろ過と、腹膜透析の両方に適用される。
【0103】
この目的で、バッグ成分のナトリウム濃度とcdoの測定とに関する質量移行の運動モデルの使用は、拡散性ナトリウム平衡を達成するために必要なバッグ変更の時点を決定するのにさらに有利であろう。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、コンピュータ上で動作する。入力のために、入力機能がユーザに提供され得る。本方法または処置命令の結果を表示するために、出力デバイスまたはディスプレイデバイスが提供され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者の1つまたは複数の先行する処置セッションにおいて許容される拡散性ナトリウム平衡として見なされたおよび/または定量化された拡散性ナトリウム平衡の決定または定量化を包含する。
【0106】
いくつかの実施形態では、拡散性ナトリウム平衡は、(「水含有量」に対応する)患者の分布容量VまたはVTBWと、mmol/lでのナトリウム濃度の変化とから決定される。V=40lである典型的な患者では、血漿ナトリウム濃度の1mmol/lだけの透析中増加は、すなわち-40mmolの拡散性ナトリウム平衡を意味する。ナトリウム濃度の透析中変化は、典型的には+/-3mmol/lの間であり、6mmol/lよりも大きい変化は、せいぜい低ナトリウム血症患者にナトリウムを投与するときで、まれである。
【0107】
本発明による一部または全部の実施形態は、上述のおよび/または以下で述べられる利点の1つ、いくつかまたはすべてを含み得る。
【0108】
本発明の利点は、透析中の複雑化を回避するために相対血液容量などの値の測定もそれの過程の測定も必要としない、それの容易な実装である。
【0109】
そのような値が測定される必要がないので、透析機械上でこの目的のために、特に適応型血液チュービングシステムなど、たとえば光センサーまたは超音波センサーの形態における、どんな、場合によっては追加のデバイスのプロビジョンの必要もない。
【0110】
実際には、現在の相対血液容量またはそれの変化率は、個々に定義された患者のしきい値と定期的に比較され、このしきい値が超えられたとき、液体除去の率が低減される。これは、永続的に透析の終了時に、除去された液体の容量が計画されたものよりも少なく、したがって乾燥体重に到達しないことにつながり得る。これらの状況は、本発明によって有利に回避される。
【0111】
典型的には、従来技術では、相対血液容量の降下に対する反応は、透析液ナトリウムの増加である。これは、患者への(増加された)塩取入れにつながり、したがって、透析液ナトリウムと塩取入れの両方を低減するという当初の目的は達成されない。やはり、これらの状況は、少なくとも中期的には、本発明によって有利に回避される。
【0112】
有利には、本発明によれば、いくつかの有利な実施形態において、やはり透析機械における追加のデバイスまたは特に適応されたチューブシステムなしに、遷移性位相または遷移性レジメンの後に、望まれる新しい処置レジメンが可能な限り無症状で達成されるような仕方で、いくつかの連続する処置にわたって、異なる処置レジメンの間の遷移、または新しい処置レジメンと拡散性総ターゲットナトリウム平衡とを伴う処置を手動でまたは自動的に展開することを可能にする、方法および装置がさらに提示される。
【0113】
有利には、本発明による方法は、透析液中のナトリウム濃度が、透析器中で血液と透析液との間の拡散勾配がもはやなくなるように選定され得ることを実現し得る。これは、たとえばEP 2 413 991 A1に記載されているように、ナトリウム濃度の自動個別化を可能にする。
【0114】
また、センター固有の固定ナトリウム濃度を伴う、前の処置レジメンにおいて患者が処置された場合でも、透析液中のナトリウム濃度の個別化が可能であることが、有利であり得る。
【0115】
本発明による方法の利点は、透析液ナトリウムのそれよりも定期的に著しく低い、血漿ナトリウム濃度を伴う患者において特に明らかである。前記患者では、透析液ナトリウムの今や可能な個別化は、透析液ナトリウムの低減につながる。同じことは、追求される透析センターの透析液ナトリウムの標準が、外部要件により、たとえば概して患者への透析中の塩取入れを低減するための努力により、概して低減されるときに起こる。
【0116】
手動指定により、または著しくより高い透析液ナトリウムを伴った前の処置の後の自動個別化によって、今や透析液ナトリウムが低減された場合、患者にとって有利に、以下の不都合な組合せが省略される。前の処置では、血漿ナトリウムと比較して増加された透析液ナトリウムのために、透析中の塩取入れが起こり、それにより、増加された液体取入れがもたらされ、これが今や、増加された液体除去によって現在の透析において補償されるべきである。しかしながら、透析液ナトリウムの同時低減により、今度は、血管への体内水分のフローのための浸透サポートが欠如している。このようにして、増加された限外ろ過容量(略して、UF容量)と、低減された透析液ナトリウムとのそのような同時発生では、患者は、血圧降下および痙攣などの透析中症状に対して特に脆弱である。本発明による方法を使用すると、その結果は、有利に回避されるかまたは低減され得る。
【0117】
本発明によるいくつかの実施形態では、本発明による方法を用いて達成可能なすべての利点は、本発明による装置を用いても低下しない様式で達成され得る。
【0118】
以下で、本発明について、同じ参照番号は同様のまたは同じ構成要素を指している添付の図に関して、例示的に説明される。以下が適用される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】第1の実施形態における体外血液回路を有する本発明による血液処置装置からの簡略図。
【
図2】本発明による実施形態における拡散性ナトリウム平衡からの偏位のトラッキングのシミュレーションを示す図。
【
図3】本発明による別の実施形態におけるUF容量からの偏位のトラッキングの別のシミュレーションを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0120】
図1は、体外血液回路300と、排液バッグ400を有する単に示された排出ホースシステムとに接続された、本発明による血液処置装置100の大幅に簡略化された図を示す。
【0121】
体外血液回路300は、第1のライン301、ここでは動脈ラインセクションを備える。
【0122】
第1のライン301は、血液処置装置、ここでは例示的に血液フィルタまたは透析器303と流体連通している。血液フィルタ303は、大部分が半透過性の膜303cによって互いに分離されている、透析液チャンバ303aと、血液チャンバ303bとを備える。
【0123】
体外血液回路300は、少なくとも第2のライン305、ここでは静脈ラインセクションをさらに備える。第1のライン301ならびに第2のライン305の両方は、患者の脈管系(図示されず)への接続として働くことができる。
【0124】
第1のライン301は、場合によっては、ライン301をブロックするかまたは閉じるための(第1の)ホースクランプ302と接続される。第2のライン305は、場合によっては、ライン305をブロックするかまたは閉じるための(第2の)ホースクランプ306と接続される。
【0125】
図1において、それのデバイスの一部のみによって、単に概略的に表されている、血液処置装置100は、血液ポンプ101を備える。患者の処置中に、血液ポンプ101は、血液フィルタまたは透析器303のほうへbl300を搬送する。これは、図の各々においてフローの方向を概して示すために使用される、小さい矢印によって示されている。
【0126】
新鮮な透析液は、ローラーポンプとしてまたはさもなければ閉塞ポンプとして設計され得る透析液用のポンプによって、ソース200から透析液入口ライン104に沿って透析液チャンバ303aにポンピングされる。透析液は、ろ液によって場合によっては濃縮された透析物としてたらい600の方向に透析液チャンバ303aを出て、本明細書では排液と呼ばれる。
【0127】
ソース200は、たとえばバッグまたはコンテナであり得る。ソース200はまた、たとえば血液処置装置100の液圧出力または接続など、オンラインでおよび/または連続的に生成または混合された液体がそれを通って提供される、流体ラインであり得る。
【0128】
代用物をもつさらなるソース201が場合によっては提供され得る。それは、ソース200に対応するか、または別個のソースであり得る。この代用物は、たとえば随意のバッグ加熱H1において、場合によっては加熱され得る。
【0129】
上述の血液ポンプ101に加えて、
図1における配置は、純粋に随意には、随意の各場合における、一連のさらなるポンプ、すなわち代用物用のポンプ111、透析液用のポンプ121、および排水用のポンプ131をさらに備える。
【0130】
ポンプ121は、ソース200、たとえばバッグからの透析液を、バッグH2をもつ随意の既存のバッグヒーターを介して、透析物液体入口ライン104を介して、透析器303に供給するために提供される。
【0131】
このように供給された透析液は、ポンプ131によってサポートされる透析物出口ライン102を介して透析器303から出て、廃棄され得る。
【0132】
血液ポンプ101の上流に、随意の動脈センサーPS1が提供される。患者の処置中に、それは、動脈ラインにおける圧力を測定する。
【0133】
血液ポンプ101の下流に、しかし血液フィルタ303の上流に、および提供される場合、ヘパリンのための追加サイト25の上流に、さらなる随意の圧力センサーPS2が提供される。それは、血液フィルタ303(「前置血液ろ過器(pre-hemofilter)」)の上流の圧力を測定する。
【0134】
同じく、血液フィルタ303のろ液圧力または膜圧力を測定するためのさらなる圧力センサーが、血液フィルタ303の下流に、しかしながら好ましくは透析物出口ライン102におけるポンプ131の上流に、PS4として提供され得る。
【0135】
血液フィルタ303を出た血液は、換気デバイス31を備えてよく、さらなる圧力センサーPS3と流体連通していることが可能である、随意の静脈血チャンバ29を通過する。
【0136】
図1に示されている例示的な配置は、制御または閉ループ制御デバイス150を備える。それは、血液処置装置100を制御または調整するために、本明細書で参照される構成要素のいずれかに、特にまたは少なくとも血液ポンプ101にケーブルまたはワイヤレス信号通信していてよい。それは、本明細書で説明される方法を行うように場合によっては構成される。
【0137】
本明細書で示される本実施形態の代替として、血液処置装置は、酸性濃縮物、重炭酸塩成分および逆浸透水を含み得る複数の成分からなる透析液のオンライン混合のためのデバイスを備え得る。
【0138】
オンライン混合のためのデバイスを使用すると、制御デバイス150によって制御される、透析液のナトリウム含有量の変動が、いくつかの限界内で可能である。
【0139】
さらに、血液処置装置100は、透析器303から出入りする流れる透析物フローの正確な平衡のためのデバイスを場合によっては備える。
【0140】
血液処置装置100は、平衡回路からの、ユーザによっておよび/または制御デバイス150によってあらかじめ決定された、液体容量VUFの正確な除去のための、限外ろ過ポンプ131などのデバイスをさらに備える。
【0141】
センサー106および108は、いくつかの実施形態では温度補償される、導電率と、透析器303の上流および下流の液体フローとを決定するために働く。センサー106、108はまた、較正ポンプ、平衡チャンバおよび圧力センサーなど、同じ効果を有する好適なアクチュエータの組合せであり得る。温度補償された導電率の随意の決定の代わりに、イオン選択性測定のためのデバイスも場合によっては可能である。
【0142】
センサー106および108の測定に基づいて、制御デバイス150は、いくつかの実施形態では、電解質および/または液体平衡を決定する。また、制御デバイス150は、場合によっては、ユーザ指定および記憶されたアルゴリズムに基づいて、進行中のまたは現在の処置において達成されるべき、電解質および液体平衡のデフォルト値、特に拡散性ターゲットナトリウム平衡Mdiff,target(d)および/または拡散性総ターゲットナトリウム平衡Mdiff,target_totalを決定する。
【0143】
計算値および/または進行の処置のユーザ指定および/または表示は、随意のユーザインターフェース(図示されず)を介して可能である。
【0144】
内部または外部コンピューティングユニットおよび/または記憶ユニット(図示されず)も提供され得る。それは、現在の電解質および液体平衡を計算するために必要なヒストリカルデータを記憶し評価することが可能であり得る。これにおいて、たとえば、それは、制御デバイス150中で実行される計算のための生データのみを提供し得る。代替的に、コンピューティングユニットおよび/または記憶ユニット(図示されず)中の計算はまた、コンピューティングユニットおよび/または記憶ユニット(図示されず)からの最終結果のみがガイドライン指定の形態で制御デバイス150に送信されるように、たとえばその中で実装されたアルゴリズムに基づいて、すでに行われていてもよい。
【0145】
本発明による血液処置装置は
図1では血液(透析)ろ過のための装置として示されているが、腹膜透析装置も、図によって特に示されていなくても、本発明によって企図される。
【0146】
図2および
図3は、シミュレーションにおいて、患者が、いくつかの日dの遷移期間にわたって、
図2および
図3において、患者の血漿ナトリウムに対して高い透析液ナトリウムを伴う日5(を含んでそれ)まで患者が処置されている前のレジメン、処置レジメン1から、低いかまたは前記患者の血漿ナトリウムに適応された透析液ナトリウムを備える、望まれるかまたは新しい処置レジメン、レジメン2へと、どのように段階的に連続的にまたは漸進的に移行されるかを示し、このレジメン2は、日19(
図2)および日27(
図3)において開始する。
【0147】
モデル患者は、40lの分布容量V
TBWを有し、毎日食事を通して140mmolのNaClを摂取し、週に3回(たとえば月曜日、水曜日、金曜日)透析され、各処置セッションの間に多量の液体を飲むので、彼の血漿ナトリウムが、次の透析または処置セッションの前に130mmol/lの設定点に到達する、と仮定される。
シミュレーションでは、4回目の処置(すなわち、月曜日と水曜日との間または水曜日と金曜日との間など、1つの透析なし日ではなく、2つの透析なし日(土曜日および日曜日)がある、長い間隔の後の、d=1に対応する、すなわち月曜日の、日8)の開始まで、前の処置レジメンまたは標準のレジメンが、以下のように仮定される。透析液ナトリウムの固定の濃度により、患者の血漿ナトリウムは、彼の処置のための典型的な透析効率の考慮の下に、約130~138mmol/lに上げられる。本明細書に関連する拡散性塩移行は、血液処置装置100のセンサー106、108を使用して決定される。UF容量V
UFは、それぞれ、塩摂取によってトリガされる液体供給が、処置セッション間で再び完全に平衡されるように調整される。したがって、レジメン1におけるUF容量と透析前水分過剰は、同等である。このようにして、患者は、各処置レジメンの終了時に彼の乾燥体重m
dryに到達する。この前の処置セッションは、患者によって症状なしで許容された。乾燥体重m
dryと透析中拡散性NaCl除去との値は、この前の処置レジメン1中に記憶される。1週間にわたるM
diffの平均化は220mmolの拡散性ナトリウム注入を生じ(
図2および
図3の下の図を参照されたい)、したがって、この場合は次のようになる。
【0148】
【0149】
図2は、本発明による方法のシミュレーションにおける拡散性ナトリウム平衡からの偏位のトラッキングを示す。
【0150】
図2(上)は、処置日dをも含む、連続する日にわたって血漿ナトリウム[mmol/l]を示し、ここにおいて、血漿の透析前ナトリウムは小さい菱形によって示され、透析後血漿は正方形によって示される。
【0151】
図2(中)は、連続する日にわたって限外ろ過容量UF[l]を示す。これにおいて、限外ろ過容量UF[l]は、処置の各日におけるそれぞれの透析中体重増加に対応する。
【0152】
図2(下)は、それぞれ、連続する日にわたって拡散性ナトリウム平衡を示す。
【0153】
図2は、望まれる拡散性総ターゲットナトリウム平衡M
diff,target_totalの例として拡散性透析中ナトリウムゼロ平衡の段階的達成を示している。
図2では、透析液ナトリウムは段階的に適応される。
【0154】
患者のために、医師は、各処置セッションにおけるMdiff,target(d)が、それぞれの前の処置セッションBS_d-1において許容された拡散性ナトリウム平衡Mdiff,tolerated(d-1)から、どんな量だけ、遷移性処置レジメンにおける平衡ターゲットのほうへ偏位されるべきであるかを決定する。
【0155】
概して、これは、各処置日dのために、この仕方または別の仕方のいずれかで、ターゲット値を生じる。前記値は、拡散性透析中ナトリウム平衡について次の通りであり得る。
【0156】
【0157】
最も単純な場合、Mdiff,minus(d)は一定値であり得る。この量は、透析後血漿ナトリウムの濃度cplasma,postの(mmolもしくはgでの)絶対量または予想される変化として表され得る。たとえば、許容された前の処置レジメン(レジメン1)において到達された最終値から1.0mmol/lだけの、透析セッションの終了時における血漿ナトリウム濃度(すなわち透析後血漿ナトリウム濃度cplasma,post)の偏位が、無症状で可能であると、医学的に仮定され得る。この場合、それは、
【0158】
【0159】
になるはずであり、したがって、それは、本例では40mmolである。
【0160】
望まれる処置レジメン(レジメン2)への近似は、その場合、たとえば、イタレーションから、次のような結果になる。
【0161】
【0162】
このイタレーションは、以下が適用されるまで繰り返される。
【0163】
【0164】
しかしながら、概して、たとえば前の処置レジメン(レジメン1)におけるMdiff,tolerated(d)の振動の場合、Mdiff,target(レジム2)を近似するときにMdiff,tolerated(d)の複雑な過程が起こり得る。
【0165】
(日8で開始する)遷移性位相または遷移性レジメンでは、透析液ナトリウムの固定指定の代わりに、血液と透析液との間の塩移行の平衡に基づく透析液ナトリウムの調整が、EP 2 413 991 A1に記載されているように、今度は活動化される。この調整は、好ましくは連続的に、透析器303において塩平衡を測定し、それぞれ現在の処置セッションBS_dの終了時に、この処置セッションの塩移行のための所定のターゲット値Mdiff,target(d)が到達されるような仕方で透析液ナトリウムを調整する。本例では透析中拡散性塩取入れが常により小さくなるので、血漿ナトリウムは、処置セッション中にセッションごとにより少なく増加する。患者は、(すなわち2つの連続する処置セッション間の)透析間体重増加と、したがって後続の処置セッションにおいて処方されるべきUF容量VUF(d)とが連続的に減少するように、生理的反応として処置セッション間により少なく飲む必要がある。このようにして、知られている関連する症状を伴う、透析中拡散性塩取入れの急激な中断との、高いUF容量の上記で説明された危険な同時発生が、回避される。
【0166】
(日19から開始する)遷移性位相または遷移性レジメンの終了時に、透析中拡散性塩取入れがなく、低いUF容量を伴う新しい浸透平衡が、新しいレジメン(望まれる処置レジメン)において達成される。
【0167】
図3は、本発明による方法の別のシミュレーションにおけるUF容量の偏位のトラッキングを示す。
【0168】
図3(上)は、処置日dをも包含する連続する日にわたって血漿ナトリウム[mmol/l]を示し、ここにおいて、血漿の透析前ナトリウムは小さい菱形によって示され、透析後血漿は正方形によって示される。
【0169】
図3(中)は、連続する日にわたって、(小さい菱形によって示される)限外ろ過容量UF[l]と、(正方形によって示される)水分過剰とを示す。
【0170】
図3(下)は、それぞれ、連続する日にわたって拡散性ナトリウム平衡を示す。
【0171】
図3では、透析物ナトリウムは、すでに日8(を含んでそれ)から、さらに続いて、本発明による方法の最後の処置セッションまで、血漿ナトリウムに適応される。これによって、限外ろ過容量UF[l]が段階的にトラッキングされる。
【0172】
このようにして、
図3は、透析中拡散性塩取入れの中断との、高いUF容量の危険な同時発生を回避するための別の仕方を示している。この手順は、処置日d=1において塩取入れを停止するとき、患者が処置セッションの終了時に彼の乾燥体重m
dryに到達するであろう通常の設定とは逆に、UF容量V
UFを減少させることを提案する(
図3参照)。しかしながら、この低減は、患者が処置セッションBS_dの終了時に彼の乾燥体重m
dryに到達しないことを引き起こす。代わりに、欠落した限外ろ過容量は、(d=2、…、nである)後続の処置セッションBS_dにわたって分散され、それにおいては、透析間体重増加V
IDWGの平衡に加えて、関連する水分過剰V
OHが漸進的に低減される。
【0173】
開始においておよび/または遷移性位相もしくは遷移性レジメン中に行われる必要があるUF容量VUFの低減は、様々な生理学的モデルによって決定され得る。
【0174】
最も単純には、液体の容量は、前の処置セッションにおいて拡散的に投与された塩の量について計算されるかまたは他の方法で(たとえば表を介して)決定され、液体のこの容量は、血漿ナトリウムの濃度が不変のままであるように塩取入れを補償する。Mdiff,tolerated(レジム1)とcplasma,pre(レジム1)とが、場合によってはパラメータコンスタレーションΨjに応じて、レジメン1において決定された場合、UF容量の低減VUF,minusは次のようになる。
【0175】
【0176】
代替的に、たとえば細胞内容量と細胞外容量との間の浸透容量シフトを決定するモデル(GuytonおよびHall、Textbook of Medical Physiologyを参照されたい)が可能である。
【0177】
細胞外容量および細胞内容量VECおよびVIC、ならびに総体内水分容量VTBWおよび水分過剰VOHを決定するために、透析前バイオインピーダンス測定が使用される。
【0178】
総体内水分容量VTBWについて、以下が適用される。
【0179】
【0180】
塩化ナトリウムのみがモル浸透圧濃度に寄与するという簡略化を考慮すると、後者は、各区画(ECおよびIC)において、それぞれのナトリウム濃度の2倍に等しい。
【0181】
【0182】
浸透平衡では、以下が適用される。
【0183】
【0184】
固定の総体内水分容量では、総体内水分TBW中のモル浸透圧濃度は、透析によって引き起こされるナトリウムの量の変化により、Mdiffだけ変化する。
【0185】
【0186】
新しい浸透平衡では、
【0187】
【0188】
であるので、
【0189】
【0190】
が適用され、それとともに、細胞外容量は、
【0191】
【0192】
だけ変化する。
【0193】
このようにして、拡散性透析中塩取入れの完全な省略においては、UF容量は、VUF,minus=ΔVECだけ低減されなければならない。
【0194】
説明された、大幅に簡略化された浸透モデルは、他の浸透活性物質、ならびに限外ろ過による容量および物質除去を含むように拡張され得る。
【0195】
(
図2または
図3の日8に対応する)遷移性位相または遷移性レジメンの日d=1における最初の処置セッションBS_dにおいて、容量取出しがV
UF,minusだけ低減されたとき、患者は、透析セッションの終了時におよそV
UF,minus水分過剰になる。この水分過剰は、後続の透析セッションにおいて段階的に低減される。
【0196】
この目的のために、たとえばアプリオリに、液体容量VUF,extraが患者のために決定され得る。前記液体容量VUF,extraは、各透析セッションにおいて患者からさらに取り出されるべきであり、それは、すなわち、透析間体重増加のすでに要求された平衡VUFに加えてさらに取り出されることになる。
【0197】
これは、固定値であるか、または最大許容限外ろ過容量VUF,maxに関して決定された値、たとえば前の処置レジメン、レジメン1におけるパラメータセットΨjの時系列分析から決定された値であり得る。
【0198】
代替的に、この容量VUF,extraは、たとえば相対血液容量RBVを観測することによって、動的に決定されてよく、ここにおいて、各処置では、特に計算された、RBVの臨界値、VUF,extraの最大値、または乾燥体重mdryのいずれかが到達されるまで、可能な限り多くの容量が取り出される。VUF,extraの最大値は、たとえば患者固有またはセンター固有の定義であり得る。それはユーザによって指定され得る。最大値は、指定された限外ろ過容量と、処置の持続時間とによって決定される、最大限外ろ過率が到達された場合に到達され得る。代替的に、最大限外ろ過率は、透析機械によって技術的に制限されてよいか、または医療的理由のために制限されることになる。後者のオプションの例は、たとえば10ml/分/kg体重である。
【0199】
基本的に、UF容量VUFを処方するために、前の処置日d-1における透析の終了と、処置日dにおける透析の開始との間の透析間体重増加または液体増加VIDWGが必要とされる。
【0200】
【0201】
前の処置レジメン(レジメン1)における患者が、処置日d-1における透析セッションの終了時に彼の乾燥体重mdryに到達した場合、彼は、後続の処置日dにおいても処方VUF=VIDWGによってそれに到達することになる。
【0202】
以下は、処置日dにおける患者の透析前水分過剰VOHについて適用される。
【0203】
【0204】
したがって、m(d)は、透析セッションの開始前の日dにおける患者の体重に対応する。
【0205】
図3では、例として、V
UF,extra=0.2l
の固定値における乾燥体重m
dryへの線形復帰が示されている。
【0206】
たとえば拡散性ナトリウムゼロ平衡(Mdiff,target_total=0mmol/l)が処方された、遷移性レジメン(または遷移性位相)の最初の日d=1において、低減されたUF容量
【0207】
【0208】
が処方される。(d=1である)この処置セッションBS_dから開始する患者への省略された透析中塩供給により、この処置セッションから開始する液体取入れは、透析間間隔において(すなわち処置セッションBS_d+1まで)すでに低減されており、透析中栄養の塩含有量または患者によって摂取される塩含有量によってのみ決定される。しかしながら、患者が処置の終了時にVUF,minusだけ依然として水分過剰であったので、後続の処置日d+1において決定される透析間液体増加VIDWGは、測定可能な水分過剰VOHよりも少ない。今度は、d=1、d=2、d=3などである、極めて多くの処置セッションBS_dにわたって、後続の透析セッションのうちの1つの終了時における水分過剰VOHが完全に枯渇されるまで、すなわち患者が最終的に彼の乾燥体重mdryに到達するまで、処方されるUF容量
【0209】
【0210】
がある。
【0211】
遷移性レジメン(または遷移性位相)(日27)の終了時に、患者が、透析中拡散性塩供給なしに将来の透析セッションの終了時に彼/彼女の乾燥体重m
dryに到達する、新しい平衡状態が、
図3において中央に示されているように、今や、望まれる処置レジメン(レジメン2)において達成される。
【0212】
一方では、
図2において例示的に説明されたような、拡散性塩供給の段階的低減と、他方では、
図3において例示的に説明されたような、遷移性位相の開始におけるUF容量の初期低減、およびそれに続く乾燥体重への復帰との、両方の方法は、互いに組み合わされてよい。
【0213】
塩供給の低減または乾燥体重への復帰の線形分布に加えて、より複雑なアルゴリズムが本発明によって包含される。周期性が認識された場合、たとえば前の処置レジメンにおける拡散性塩取入れを分析したとき、たとえば、塩取入れが、長い透析間隔の後に、短い間隔内のものから偏位することが認識された場合、この分析は、拡散性塩取入れの指定に移行され得る。同様に、乾燥体重への復帰は、線形以外の(そうではなくたとえば指数形の)様式で行われるか、あるいは長いまたは短い間隔の存在を考慮に入れて行われてよい。たとえば、それは、長い間隔の後にとにかく増加しているUF容量が、さらに増加されないように、乾燥体重への復帰が、短い間隔の後にのみ実現されるという点にあってよい。
【0214】
本発明による方法のさらなる変更形態では、腹部における腹膜透析液の滞留時間が、いくつかの処置セッションにわたって変化する。したがって、遷移性処置レジメンを設定することは、導入される流体の様々な滞留時間を設定することを包含するか、またはそのように設定することである。滞留時間は拡散性ナトリウム平衡に関係する。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
将来の日d(d=1、…、n)において行われる複数の処置セッション(BS_d)にわたって患者を透析するときに処置パラメータを変更するための処置レジメンを決定するための方法であって、前記方法は、
拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total
)を決定するステップと、
前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total
)が前記複数の将来の処置セッション(BS_d)にわたって達成される遷移性処置レジメンを決定するステップと
を包含する、方法。
[C2]
前記遷移性処置レジメンを決定する前記ステップは、
好ましくは-300mmolと、+300mmol、より好ましくは0mmolとの間にある、前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total
)が、最初(d=1)の処置セッション(BS_d)で達成されるべきであると決定することと、
前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)のための前記患者のターゲット乾燥体重の値(m
dry
)または別の体重ターゲット値を決定することと、
前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)中に限外ろ過によって達成または到達されるべき限外ろ過容量の値(V
UF
(d))を決定することと、ここにおいて、前記限外ろ過容量(V
UF
(d))が、前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)の終了時に前記ターゲット乾燥体重(m
dry
)または前記他のターゲット体重値に到達することを要求される、
前記ターゲット乾燥体重(m
dry
)または前記他のターゲット体重値に到達するために前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)において取り出されるべき前記限外ろ過容量の前記値(V
UF
(d))が、それだけ数学的に低減されるべきである、限外ろ過容量(V
UF,minus
)を、事前に指定することと
を包含するかまたはそれらからなる、C1に記載の方法。
[C3]
前記最初(d=1)の処置セッションに続く複数の処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)において、透析間体重増加に対応する前記限外ろ過容量(V
IDWG
)を達成するためにこれらの処置セッションの各々において取り出されるべき前記限外ろ過容量(V
UF
(d))が、それぞれ、容量(V
UF,extra
)だけ拡張され、
ここにおいて、前記容量(V
UF,extra
)は、各処置セッションにおいて、前記ターゲット乾燥体重(m
dry
)または前記他のターゲット体重値に到達するために取り出されるべき前記限外ろ過容量の前記値(V
UF
(d))が、前記最初(d=1)の処置セッションのためにそれだけ数学的に低減された、前記限外ろ過容量(V
UF,minus
)よりも少ない、C2に記載の方法。
[C4]
C3の前記ステップは、前記最初(d=1)の処置セッションに続く複数の、特に連続する処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)について、前記ターゲット乾燥体重(m
dry
)または前記他のターゲット値を達成するために取り出されるべき限外ろ過容量の前記値(V
UF
(d))が、前記最初(d=1)の処置セッション(BS_d)のためにそれだけ低減された、前記限外ろ過容量(V
UF,minus
)を仮定または超過する総容量に、前記複数の処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)にわたって合算される前記容量V
UF,extra
が到達するまで繰り返される、C3に記載の方法。
[C5]
前記遷移性処置レジメンを決定する前記ステップは、
所定の日(d)において設定されるかまたは来るべき処置セッション(BS_d)のための拡散性ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target
(d))を、
【数28】
のように決定することを包含するかまたはそれからなり、ここにおいて、
M
diff,target
(d)が、前記来るべき処置セッション(BS_d)中に望まれる拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
M
diff,tolerated
(d-1)が、前記処置セッションまたは前(d’=d-1)の処置セッション(BS_d’)中に前記患者によって許容される拡散性ナトリウム平衡の値に対応し、
M
diff,minus
(d)が、M
diff,tolerated
(d-1)がそれだけ数学的に低減された拡散性ナトリウム平衡の決定可能なまたは決定された値に対応する
ことが適用される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
[C6]
【数29】
が適用され、ここにおいて、
M
diff,target
(d-1)が、前記来るべき処置セッション(BS_d)に先行する前記処置セッション(BS_d-1)のための望まれる、達成または調整された拡散性ナトリウム平衡の値に対応する
ことが適用される、C5に記載の方法。
[C7]
C5の前記ステップは、前記複数の、特に連続する処置セッション(d=2、…、nであるBS_d)について、次(d’=d+1)の処置セッション中に望まれるナトリウム平衡の前記値M
diff,target
(d)が、前記拡散性総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total
)を仮定するかまたはそれよりも少なくなるまで繰り返される、C5から6の一項に記載の方法。
[C8]
前記遷移性処置レジメンを決定する前記ステップは、
前記総ターゲットナトリウム平衡(M
diff,target_total
)が、-300mmolと、+300mmol、好ましくは0mmolとの間にあるべきであると決定すること
を包含するかまたはそれからなる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
[C9]
患者を透析するための提供された血液処置装置の限外ろ過機能の使用であって、ここにおいて、限外ろ過によって前記患者から取り出されるかまたは取り出されるべき前記限外ろ過容量が、C1から8のいずれか一項に記載の方法によって決定される、使用。
[C10]
患者を透析するための、透析液中に混和された、塩化ナトリウムの使用であって、塩化ナトリウムの濃度が、いくつかの処置セッションにおいて、C1から8のいずれか一項に記載の方法によって決定される拡散性ナトリウム平衡を達成するために決定される、使用。
[C11]
患者の透析処置のための透析液を混合するための方法であって、前記透析液によって備えられる塩化ナトリウムの濃度が、C1から8のいずれか一項に記載の方法によって1つまたはいくつかの処置セッションのために決定される、方法。
[C12]
C1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するために構成された、および/あるいはC1から11のいずれか一項に記載の方法の結果に基づいて、またはここでもしくはここにおいて決定、提供もしくは指定された値もしくはパラメータに基づいて血液処置装置(100)を制御もしくは閉ループ制御するために構成された、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス(150)。
[C13]
C12に記載の制御デバイス(150)を有する血液処置装置(100)。
[C14]
腹膜透析装置、血液透析装置、血液ろ過装置または血液透析ろ過装置として、特に慢性腎置換療法もしくは持続的腎置換療法のための装置として設計された、C13に記載の血液処置装置(100)。
[C15]
電解質平衡および/または液体平衡を測定するために血液処置装置(100)の透析器(303)の上流および/または下流に配置されたセンサー(106、108)を有する、C13から14のいずれか一項に記載の血液処置装置(100)。
[C16]
C1から11のいずれか一項に記載の本発明による方法の前記ステップが実施されるようにプログラマブルコンピュータシステムと対話するように構成された、電子的に読取り可能な制御信号を有する、デジタル記憶媒体、特にフロッピー(登録商標)ディスク、メモリカード、CD、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクまたは(E)EPROM。
[C17]
コンピュータ上でコンピュータプログラム製品が動作しているとき、C1から11のいずれか一項に記載の本発明による方法の前記ステップを実行するためのプログラムコードが機械可読キャリア上に記憶されたコンピュータプログラム製品。
[C18]
コンピュータ上でコンピュータプログラムが実行されたとき、C1から11のいずれか一項に記載の本発明による方法の機械実装された前記ステップをプロンプトするためのプログラムコードをもつコンピュータプログラム。
【0215】
【符号の説明】
【0216】
25 ヘパリンのための追加点(随意)
29 静脈血チャンバ(随意)
31 換気デバイス
100 血液処置装置
101 血液ポンプ
102 透析物出口ライン、排液入口ライン
104 透析液入口ライン
106 センサー
108 センサー
111 代用物用のポンプ
121 透析液用のポンプ
131 透析物または排水用のポンプ
150 制御デバイスまたは閉ループ制御デバイス
200 透析液を含んでいるソース
201 代用物を含んでいるソース、随意
300 体外血液回路
301 第1のライン(動脈ラインセクション)
302 (第1の)チューブクランプ
303 血液フィルタまたは透析器
303a 透析液チャンバ
303b 血液チャンバ
303c 半透膜
305 第2のライン(静脈ラインセクション)
306 (第2の)チューブクランプ
400 排液バッグ
600 シンクまたはたらい
H1 バッグ(代用物)を用いたバッグ加熱
H2 バッグ(透析液)を用いたバッグ加熱
PS1、PS2 動脈圧力センサー(随意)
PS3 圧力センサー(随意)
PS4 フィルタ圧力を測定するための圧力センサー