(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】適応型の心臓再同期療法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/365 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61N1/365
(21)【出願番号】P 2020537199
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 US2019012642
(87)【国際公開番号】W WO2019139881
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】スタッドラー,ロバート・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】コーネルセン,リシャルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテーゲマン,ベルトルト
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319776(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291022(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0198291(US,A1)
【文献】特表2008-523902(JP,A)
【文献】特開2002-301039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓再同期(resynchronization)療法を送達するためのシステムであって、前記システムは、
患者内の植え込みのために構成されるリードレスペーシングデバイスであって、
複数の電極、
前記複数の電極を介して心室ペーシングを送達するように構成される信号生成回路、および
心臓の機械的(mechanical)活動を示す信号を生み出すように構成されるセンサ、を備える、リードレスペーシングデバイスと、
処理回路であって、
前記信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、
前記心収縮が融合拍動(fusion beat)であるかどうかを前記1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、
前記決定に基づいて前記心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御するように構成される、処理回路を備え、
前記タイミング間隔の調整が、心房イベントと前記ペーシングデバイスによる心室ペーシングパルスの送達との間のA-V間隔の調整、または心室イベントと前記ペーシングデバイスによる前記心室ペーシングパルスの送達との間のV-V間隔の内の少なくとも1つの調整を結果としてもたらし、
前記システムはさらに、別の植え込み型医療デバイスをさらに備え、前記別の植え込み型医療デバイスが、
前記心房イベントまたは前記心室イベントのうち少なくとも1つを検出し、
前記ペーシングデバイスを制御して、前記心房イベントまたは前記心室イベントの少なくとも1つの検出に応答して、信号を前記ペーシングデバイスに信号を伝達して、前記ペーシングデバイスが前記心室ペーシングパルスを送達するように制御するように構成さ
れ、
前記A-V間隔が、心房ペーシングから心室ペーシングまでの遅延時間を表し、
前記V-V間隔が、右心室ペーシングと、左心室ペーシングの間の遅延時間を表す、
システム。
【請求項2】
前記ペーシングデバイスが、心臓上または心臓内の植え込みのために構成されるハウジングを備え、前記信号生成回路および前記センサのうちの少なくとも一方が前記ハウジング内にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記心室ペーシングが、左心室に送達される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサが、3次元加速度計を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記信号内の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴が、前記心収縮中の前記信号のスロープ、前記
心収縮中の前記信号の振幅、前記心収縮中の前記信号の最大値、前記心収縮中の前記信号の最小値、前記心収縮中の前記最大値と前記最小値との比、または前記心収縮中の前記信号の極性のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記信号内の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴が、前記
心収縮中の発生地点に対する運動(motion)の量または方向のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記信号内の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴が、前記心収縮中の運動の一次軸以外の少なくとも1つの方向における運動の量を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記信号内の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴が、前記心収縮中の運動の一次軸に直交する少なくとも1つの平面における運動の量を含む、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記信号内の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴が、1つまたは複数のテンプレート値に対する前記心収縮中の前記信号の比較から生じる1つまたは複数の値を含み、
前記テンプレート値が、心収縮中の運動信号のスロープ、
心収縮中の運動信号の振幅、心収縮中の信号の最大値、心収縮中の信号の最小値、心収縮中の最大値と最小値との比、心収縮中の信号の極性、または、心尖揺動を含む、運動の一次軸に直交する方向を含む1つもしくは複数の特定の方向における運動の量のうち少なくとも1つを含む、
請求項6~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
第1の心周期における前記ペーシングデバイスによるペーシングパルスの送達に応答して、前記処理回路が、前記信号内の前記第1の心周期の前記心収縮の前記1つまたは複数の特徴を識別し、前記第1の心周期の前記心収縮が融合拍動であるかどうかを前記1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、前記決定に基づいて、前記第1の心周期の次の心周期について前記心室ペーシングの送達の前記タイミング間隔を制御するように構成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記心収縮が融合拍動であるという決定に応答して、前記処理回路が、前記タイミング間隔を調節しないように構成され、前記心収縮が融合拍動ではないという決定に応答して、前記処理回路が、前記タイミング間隔を調節するように構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理回路が、
前記心収縮が内因性収縮であることを前記1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、
前記心収縮が内因性収縮であるという決定に応答して、前記タイミング間隔を減少させるように構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記処理回路が、
前記心収縮のタイミングが完全にペーシングされた収縮であることを前記1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、
前記心収縮が完全にペーシングされた収縮であるという決定に応答して、前記タイミング間隔を増加させるように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記処理回路が、前記別の植え込み型医療デバイスの処理回路を備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項15】
前記別の植え込み型医療デバイスが、心房細動を検出し、前記処理回路が、前記心房細動の検出に応答して、前記心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、前記心収縮が融合拍動であるかどうかを前記1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、前記心室ペーシングの送達の前記タイミング間隔を制御するように構成される、請求項1
4に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理回路が、前記ペーシングデバイス内の処理回路を含む、請求項1~1
5のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、「ADAPTIVE CARDIAC RESYNCHRONIZATION THERAPY」という表題の、2018年1月10日に出願された米国仮特許出願第62/615,689号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、医療デバイスに関し、より詳細には、生理学的状態をモニタし、ペーシング療法を送達する医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]心臓ペースメーカーまたは植え込み型除細動器など、いくつかの種類の植え込み型医療デバイスは、徐脈ペーシング、心臓再同期療法(CRT)、抗頻拍ペーシング(ATP)、および電気除細動/除細動ショックなど、療法的電気信号を患者の心臓に提供する。療法的電気信号は、ペーシング、電気除細動、または除細動のためのパルスまたはショックの形態で心臓に送達され得る。いくつかの場合において、植え込み型医療デバイスは、心臓の内因性の脱分極を感知し、その感知に基づいて心臓への療法的信号の送達を制御し得る。
【0004】
[0004]CRTは、植え込み型医療デバイスによって送達される電気刺激療法の一種である。CRTは、心臓の心室の電気機械的活動を再同期することによって心拍出量を高めることを助け得る。心室脱同期は、うっ血性心不全(CHF)を患う患者において発生し得る。CRTは、実質的に同時の機械的収縮および心室からの血液の吐出という結果を意図して、ペーシング刺激を、両方の心室へ送達すること(時に、両室ペーシングと称される)、または一方の心室へ送達すること(例えば、左心室ペーシングなどの融合ペーシング)を含む。ペーシングは、心室同期性を取り戻すために右心室(RV)および/または左心室(LV)内に送達され得る。
【0005】
[0005]CRTから有益な臨床的有用性を達成することは、一方または両方の心室へのペーシングパルス送達を制御するために使用されるタイミング間隔、例えば、房室(A-V)間隔および/または心室間(V-V)間隔などの、いくつかの療法制御パラメータに依存し得る。A-V間隔は、心室ペーシングパルスのタイミングを、先行する心房イベント、例えば、内因性またはペーシングされた脱分極に対して制御する。V-V間隔は、一方の心室におけるペーシングパルスのタイミングを、他方の心室におけるペーシングされたイベントまたは内因性のイベントに対して制御する。他の療法制御パラメータは、CRTペーシング構成、例えば、融合(単一心室)構成または両室構成、ならびに、2つ以上の電極が利用可能なときの、特定の心室に心室ペーシングを送達するために使用される電極、およびそれらの極性の選択を含む。いくつかの場合において、リードは、複数、例えば、4つの、電極を含み得、その中から1つまたは複数が選択され得る。いくつかの場合において、複数の電極が、所与の腔のために陰極として選択され得る。
【0006】
[0006]医療デバイス技術の進歩は、ますます小さくなる植え込み型デバイスへと向かっている。近年、心臓ペースメーカーは、心腔内に直接植え込むことができるものが導入されている。いくつかの例では、そのようなペースメーカーは、リードレスであり得、カテーテルを使用して心腔内へ送達され得る。そのような小型ペースメーカーは、心臓内ペーシングデバイス(PD)と称され得るが、それらは、いくつかの例では、心外膜上または心臓外に植え込まれ得る。心臓内PDは、例えば、1つまたは複数の他のデバイスを有するシステムの部分として、CRTを送達するように構成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の一実施例は、例えば、適応型の心臓再同期療法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]一般に、本開示は、CRTのための技術を対象とする。より詳細には、本開示は、CRT送達後の収縮の評価に基づいて、CRTを適合させるための、例えば、A-V間隔、V-V間隔、またはCRTのための他の療法制御パラメータを制御するための技術を対象とする。いくつかの例では、適合および収縮評価は、心収縮により変動する信号を生成する運動センサ、例えば、1つまたは複数の加速度計を含む、心臓内PDによって、少なくとも部分的に実施される。評価に基づいて、処理回路は、例えば、収縮が融合拍動であったかどうかを決定し得る。
【0009】
[0008]融合拍動は、典型的には、2つの異なる焦点または源、通常、PDからの外来刺激および自然刺激によって開始される、心筋の脱分極によって形成される波複合によって特徴づけられる。融合拍動は、異なる源からの脱分極が心臓の同じ領域で同時に(またはほぼ同時に)発生するときに起こる。融合の程度は、例えば、同時性の程度に基づいて存在し得、本明細書で使用される場合の融合拍動は、融合の程度が融合として特徴づけられるのに十分であった、例えば、融合の何らかのメトリックがしきい値よりも大きかった拍動を指し得る。
【0010】
[0009]1つの例において、心臓再同期療法を送達するためのシステムは、患者内の植え込みのために構成されるペーシングデバイスを備える。ペーシングデバイスは、複数の電極、複数の電極を介して心室ペーシングを送達するように構成される信号生成回路、および心臓の機械的活動を示す信号を生み出すように構成されるセンサを備える。本システムは、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、この決定に基づいて心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御するように構成される処理回路をさらに備える。
【0011】
[0010]別の例は、ペーシングデバイスによって心臓再同期療法を送達するための方法である。本方法は、ペーシングデバイスを備える医療デバイスシステムの処理回路によって、ペーシングデバイスのセンサから信号を受信するステップであって、該信号が心臓の機械的活動を示す、ステップと、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別するステップと、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定するステップと、この決定に基づいてペーシングデバイスによる心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御するステップとを含む。
【0012】
[0011]他の例は、ペーシングデバイスのセンサから信号を受信するための手段であって、該信号が心臓の機械的活動を示す、手段と、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別するための手段と、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定するための手段と、この決定に基づいてペーシングデバイスによる心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御するための手段とを含む。
【0013】
[0012]他の例は、命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を含み、該命令は、医療デバイスシステムの処理回路によって実行されると、処理回路に、ペーシングデバイスのセンサから信号を受信することであって、該信号が心臓の機械的活動を示す、受信することと、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別することと、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定することと、この決定に基づいてペーシングデバイスによる心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御することとを行わせる。
【0014】
[0013]他の例は、心臓再同期療法を送達するためのシステムを含む。本システムは、患者内の植え込みのために構成されるペーシングデバイスを備える。ペーシングデバイスは、複数の電極、複数の電極を介して左心室に心室ペーシングを送達するように構成される信号生成回路、心臓の機械的活動を示す信号を生み出すように構成される3次元加速度計、および心臓上または心臓内の植え込みのために構成されるハウジングを備え、信号生成回路およびセンサがハウジング内にある。本システムは、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、この決定に基づいて心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御するように構成される処理回路をさらに備え、タイミング間隔は、A-V間隔またはV-V間隔のうちの少なくとも1つを含み、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴は、心収縮中の運動の一次軸以外の少なくとも1つの方向における運動の量を含む。
【0015】
[0014]この概要は、本開示に説明される主題の概観を提供することを目的とする。添付の図面および以下の説明内に詳細に説明される方法およびシステムの排他的または徹底的な説明を提供することは意図されない。本開示の1つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に明記される。
【0016】
[0015]本開示の1つまたは複数の例の詳細は、添付の図面および以下の説明に明記される。本開示の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】[0016]本開示の1つまたは複数の態様に従う、心臓血管外ICD(EV-ICD)システムおよび患者の心腔内に植え込まれるペーシングデバイス(PD)を含む例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な正面図を例証する概念図である。
【
図1B】[0017]本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図1Aの例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な側面図を例証する概念図である。
【
図1C】[0018]本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図1Aの例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な横断面図を例証する概念図である。
【
図2】[0019]本開示の1つまたは複数の態様に従う、患者内に皮下挿入または胸骨下挿入される挿入可能な心モニタリング(ICM)デバイス、および患者の心腔内に植え込まれるPDを含む、別の例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な正面図を例証する概念図である。
【
図3】[0020]本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図2に例証されるICMデバイスの例示的な構成を例証する概念図である。
【
図4】[0021]本開示の1つまたは複数の態様に従う、PDの例示的な構成を例証する概念図である。
【
図5】[0022]本開示の1つまたは複数の態様に従う、IMDの例示的な構成を例証する機能ブロック図である。
【
図6】[0023]本開示の1つまたは複数の態様に従う、PDの例示的な構成を例証する機能ブロック図である。
【
図7】[0024]本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図1A内の外部デバイスの例示的な構成を例証する機能ブロック図である。
【
図8】[0025]本開示の1つまたは複数の態様に従う、サーバなどの外部デバイス、ならびにネットワークを介してIMD、PD、および外部デバイスに結合される1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含むシステムを例証するブロック図である。
【
図9】[0026]本開示の1つまたは複数の態様に従う、PDを通じて心臓再同期療法を送達、評価、および調節する例示的なプロセスを例証するフロー図である。
【
図10】[0027]本開示の1つまたは複数の態様に従う、1つまたは複数の心収縮特徴の評価に基づいて心臓再同期療法のパラメータ値を決定するための例示的なプロセスを例証するフロー図である。
【
図11A】[0028]本開示の1つまたは複数の態様に従う、収縮軸を見下ろした、正常洞調律(NSR、内因性拍動)中の心臓運動を例証するプロットである。
【
図11B】[0029]本開示の1つまたは複数の態様に従う、収縮軸を見下ろした、右心室(RV)ペーシング中の心臓運動を例証するプロットである。
【
図12】[0030]本開示の1つまたは複数の態様に従う、心臓運動信号の例示的な特徴を例証する心臓運動のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0031]一般に、本開示は、例えば、心臓内PDを使用した、患者へのCRTの送達に関連した例示的な技術を説明する。そのようなPDの導入、およびその結果としての、経静脈心臓内リードの必要性の除去は、いくつかの利点をもたらす。例えば、皮下ペースメーカーポケットから経静脈で心臓内へ延びるリードと関連付けられた感染症に起因する合併症が除去され得る。「腕回旋症候群」などの他の合併症、リード折損、およびリードとペースメーカーとの接続不良が、心臓内PDの使用により除去される。
【0019】
[0032]いくつかの例では、心室PDは、心房脱分極を検出することができない場合がある。いくつかの例では、別の植え込み型医療デバイス(IMD)が、心房脱分極を検出する。この別のIMDが、信号を心室PDに送信し得る。信号は、心房脱分極のタイミングを示し得るか、または心室ペーシングパルスを送達するためのトリガであり得る。
【0020】
[0033]心室PDまたは別のIMDのうちの一方または両方が、ペーシングされた脱分極または内因性の脱分極などの心房イベントに対してCRTのための心室ペーシングパルスのタイミングを制御するタイミング間隔を維持し得る。CRTを送達するためのいくつかの例示的な技術によると、メモリ、例えば、CRTを送達する心室PD、別のIMD、および/または外部コンピューティングデバイスのメモリが、患者のために決定される、心房イベントと心室イベントとの間の1つまたは複数の間隔、例えば、A-V間隔、の1つまたは複数の値を記憶する。心房または心室イベントは、例として、脱分極または収縮であり得るが、心臓の電気的または機械的活動により変動する、EGM内の任意の位置合わせマーカーまたは他の信号であり得る。いくつかの例では、心室イベントは、感知されたまたは内因性の心室イベントであり、間隔は、A-Vs間隔である。いくつかの例では、メモリは、感知された心房イベントと心室イベントとの間の間隔、例えば、As-Vs間隔、およびペーシングされた心房イベントと心室イベントとの間の間隔、例えば、Ap-Vs間隔の両方の値を記憶する。メモリ内に患者ついて記憶される値は、CRTの送達の前またはその停止中に患者のA-V伝導をモニタすることによって決定され得る。
【0021】
[0034]処理回路、例えば、心室PD、別のIMD、および/または外部コンピューティングデバイスの処理回路は、A-V間隔の選択された値に基づいてCRTの送達を制御し得る。例えば、処理回路は、一方の心室のみが他方の心室の内因性活性化と協調してペーシングされる融合ペーシング、例えば、左心室ペーシングを送達するように心室PDを制御するか、または選択されたA-V間隔値に基づいて両室ペーシングを患者に送達するように2つのPDを制御するかを決定し得る。心拍数に基づいて選択されるA-V間隔値がA-Vs間隔値である例において、処理回路は、選択されたA-Vs値に基づいて、融合または両室ペーシングの送達のタイミングを計るためのA-Vp間隔値をさらに決定し得る。追加的に、または代替的に、PDまたは別のIMDが、一方の心室におけるCRTのための心室ペーシングパルスのタイミングを、他方の心室のペーシングされた脱分極または内因性の脱分極などの別の心室における心室イベントに対して制御するV-V間隔を同様に維持および利用し得る。
【0022】
[0035]CRTは、A-Vおよび/またはV-V間隔値などのCRT制御パラメータの患者特有の値を決定することによって、所与の患者にとってより効果的なものにされ得る。所与の患者にとっての効果的なCRTは、パラメータCRT制御値を決定するために定期的に更新することによって、維持され得る。左心室血行力学変数、血圧測定、または心エコー検査が、患者のためのCRT制御パラメータ値を決定および/または更新するために使用されてきた。しかしながら、そのようなメトリックは、CRTを送達する植え込み型医療デバイスによって、閉ループ様式で容易に評価されない。
【0023】
[0036]CRTの送達を適合するためのいくつかの技術によると、記憶されたA-VまたはV-V間隔値は、CRTの送達を停止し、CRTの送達が停止されている間に、A-VまたはV-V間隔の現在の値(現在の内因性A-V伝導を表す)を測定することによって、認証され、また必要に応じて定期的に更新され得る。CRTの送達の停止は、例として、1つまたは複数の心周期にわたって心室ペーシングを保留すること、内因性A-V伝導が観察され得るようにA-Vp遅延を十分に増大させること、または十分に長いA-Vp遅延で一方の心室をペーシングし、他方の心室において内因性伝導を測定することを指し得る。A-VまたはV-V間隔の記憶された値は、間隔の現在の測定値が記憶された値に十分に類似していない場合には、例えば、記憶されたA-VまたはV-V間隔値を現在の測定値で置き換えることによって、更新され得る。
【0024】
[0037]内因性伝導の観察に基づいたA-Vおよび/またはV-V間隔の定期的な調節に加えて、いくつかの医療デバイスは、定期的な内因性伝導観察に基づいて、ペーシング構成を、例えば、融合ペーシング構成から両室ペーシング構成へ(またはその逆に)自動的に切り替えるように構成され得る。例えば、アイルランド、ダブリンのMedtronic plcから入手可能なAdaptivCRT(商標)を提供するように構成される医療デバイスは、より効率的な生理学的ペーシングを達成するため、および患者の血行動態を改善するために、内因性伝導の定期的観察に基づいてCRT制御間隔およびCRTペーシング構成の両方を自動的に変更するように構成される。融合ペーシングおよび両室ペーシングは、以下にさらに詳細に説明される。ペーシング刺激は、ペーシングパルスまたは連続時間信号であり得るが、ペーシング刺激は、説明を簡単にするために、本明細書ではペーシングパルスと主に称される。AdaptivCRT(商標)アルゴリズムの例は、「ADAPTIVE CARDIAC RESYNCHRONIZATION THERAPY」という表題の、2016年8月2日に出願された、Sambelashviliらに対する米国特許第9,403,019号に説明される。Sambelashviliらに対する米国特許第9,403,019号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。AdaptivCRT(商標)の別の例は、「SYSTEMS AND METHODS FOR LEADLESS CARDIAC RESYNCHRONIZATION THERAPY」という表題の、2017年10月17日に出願された、Sambelashviliに対する米国特許第9,789,319号に説明される。Sambelashviliに対する米国特許第9,789,319号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
[0038]融合ベースのCRT(本明細書では融合ペーシングとも称される)は、内因性の心房-心室(AV)伝導が保たれた状態の患者において、心室機能不全に起因して不規則であり得る患者の心臓の脱分極シーケンスを取り戻すのに有用であり得る。融合ペーシング構成では、医療デバイスは、1つまたは複数の融合ペーシングパルスを心室の一方に送達し、他方には送達しない。医療デバイスは、1つまたは複数の融合ペーシングパルスを後に収縮する心室(V2)へ送達して、V2を早期興奮させ、V2の脱分極を先に収縮する心室(V1)の脱分極と同期させる。V2のペーシングされた心室活性化は、心臓の内因性伝導を原因とするV1の心室活性化と「融合」(または「合併」)し得る。このやり方では、内因性およびペーシング誘起された興奮波面は、V2の脱分極がV1の脱分極と再同期されるように、互いに融合し得る。
【0026】
[0039]本医療デバイスは、融合ペーシングパルスがV2に送達されるべき心房ペースまたは感知イベントに対する時間を示す融合ペーシング間隔に従って、融合ペーシングパルスをV2に送達するように構成され得る。心房感知イベントは、例えば、感知された電気心臓信号のP波であり得、心房ペーシングイベントは、例えば、刺激が心房に送達される時間であり得る。
【0027】
[0040]いくつかの例では、右心室(RV)がV1であり得、左心室(LV)がV2であり得る。他の例では、LVがV1であり得る一方、RVがV2であり得る。本開示は、第1に脱分極する心室V1がRVであり、後に脱分極する心室V2がLVである例を主に指すが、CRTを提供するための本明細書に説明されるデバイス、システム、技術は、第1に脱分極する心室V1がLVであり、後に脱分極する心室V2がRVである例にも当てはまり得る。
【0028】
[0041]いくつかの融合ペーシング技術において、V2へのペーシングパルス(V2P)は、心室活性化(V1S)の感知によって示され得るV1の内因性の脱分極に基づいて決定される融合ペーシング間隔の満了時に送達される。心室活性化は、例えば、感知された電気心臓信号のR波によって示され得る。V2ペーシングパルス(V2P)の送達のタイミングをV1の内因性の脱分極に合わせる融合ペーシング技術の例は、「APPARATUS AND METHODS OF ENERGY EFFICIENT,ATRIAL-BASED BI-VENTRICULAR FUSION-PACING」という表題の、2007年2月20日に出願された、Burnesらに対する米国特許第7,181,286号に説明される。Burnesらに対する米国特許第7,181,286号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
[0042]Burnesらに対する米国特許第7,181,286号によって開示される1つの例では、V2へのペーシングパルス(V2P)は、心房ペースまたは感知イベント(AP/S)後の既定の期間送達され、この既定の期間は、前興奮間隔(PEI)と称される持続時間によって減分される、心房ペースまたは感知イベント(AP/S)と少なくとも1つの以前の心周期のV1感知イベント(V1S)との間の持続時間に実質的に等しい。したがって、融合ペーシング間隔(AP/S-V2P)を決定するために使用され得る1つの例示的な等式:
等式(1):AP/S-V2P=(AP/S-V1S)-PEI
[0043]心周期は、例えば、1つの心臓拍動の始まりと次の心臓拍動との間の時間を含み得る。心房ペースまたは感知イベント(AP/S)とV1感知イベント(V1S)との間の持続時間は、例えば、心房から患者の心臓の第1に収縮する心室への内因性AV伝導時間の測定値であり得る。PEIは、V1およびV2の電気機械的性能の融合を達成するために、V2ペーシングパルスがV1感知イベントに先行する時間の量を示し得る。即ち、PEIは、V1およびV2の電気機械的性能が合併して融合イベントになるように、V2を前興奮させるために必要とされるV2ペーシングパルスの送達からの時間の量を示し得る。いくつかの例では、PEIは、例えば、決定された内因性伝導時間に基づいて、ペーシング療法を送達する医療デバイスによって自動的に決定され得るが、他の例では、PEIは、臨床医によって事前に決定され得る。いくつかの例では、PEIは、プログラムされた値(例えば、約100ms~約200ms、または約10ms~約40msなど、約1ミリ秒(ms)~約250ms以上)であるか、または、測定された内因性A-V2伝導間隔または測定された内因性A-Aサイクル長の約10%などの適応値である。
【0030】
[0044]PEIの大きさは、患者の心拍数、患者の生理学的状態(例えば、虚血状態、心筋梗塞状態、等)によって変化し得る患者の心臓の動的な生理学的伝導状態、ならびに、療法システムの感知電極の場所、療法システムのペーシング電極の場所、および医療デバイスの遅延を処理する内部回路などの療法システムに関連する因子など、様々な因子に基づいて異なり得る。
【0031】
[0045]後に脱分極する心室(V2)へのペーシングパルスの送達のタイミング(時に「融合ペーシング間隔」とも称される)を決定するための別の技術は、Sambelashviliらに対する米国特許出願公開第2010/0198291号に説明され、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。Sambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号によって説明されるいくつかの例では、ペーシングパルスの送達のタイミングは、少なくとも1つの以前の心周期におけるV2の脱分極に基づく。V2の脱分極は、電気心臓信号のR波など、V2におけるイベント(V2S)を感知することによって検出され得る。V2ペーシングパルス(V2P)は、V2の引き起こされた脱分極が、第1に脱分極する心室(V1)の内因性の脱分極との融合において影響を受けるようにタイミングが計られ、結果として心室再同期をもたらす。このやり方では、V2ペーシングパルス(V2P)は、伝導遅延されたV2を前興奮させ得、V2の活性化を内因性伝導からのV1の活性化と融合するのを助け得る。同じ心周期のV2ペーシングパルス(V2P)とV2感知イベント(V2S)との間の時間間隔は、調節PEIと称され得る。
【0032】
[0046]Sambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号により開示されるいくつかの例では、IMDが心房ペースまたは感知イベント(AP/S)に続いてV2ペーシングパルス(V2P)を送達する既定の期間は、調節PEIと称される持続時間によって減分される、心房イベント(感知またはペーシングされる)(AP/S)と少なくとも1つの以前の心周期のV2感知イベント(V2S)との間の持続時間に実質的に等しい。即ち、いくつかの例では、調節PEIは、同じ心周期のV2ペーシングパルス(V2P)の送達とV2感知イベント(V2S)との間の所望の時間間隔である。Sambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号により説明される技術を使用した、融合ペーシングパルスのタイミングを決定するために使用され得る1つの例示的な等式は、以下である。
等式(2):AP/S-V2P=(AP/S-V2S)-調節PEI
[0047]心房ペースまたは感知イベント(AP/S)とV2感知イベント(V2S)との間の持続時間は、房室(A-V)間隔または遅延と称され得る。調節PEIは、V2を前興奮させ、V2およびV1の電気機械性能を合併して融合イベントになるようにV2ペーシングパルス(V2P)を送達するのに望ましいであろう、V2感知イベント(V2S)の前の時間間隔を示し得る。Sambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号によって説明されるいくつかの例では、調節PEIは、同じ心周期のV1感知イベント(V1S)およびV2感知イベント(V2S)に基づくか、心房ペースもしくは感知イベント(AP/S)とV2感知イベントとの間の時間に基づくか、またはそれらの任意の組み合わせに基づく、線形関数である。
【0033】
[0048]例として、調節PEIは、以下のように決定され得る。
等式(3):調節PEI=a(V1S-V2S)+b
[0049]Sambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号によると、等式(3)において、係数「a」および「b」は、臨床医によって選択されるか、または臨床医によって選択される調節PEI値に基づいて決定される、固定の実験係数であってもよい。いくつかの例では、等式(3)の係数「a」は、約1であってもよく、係数「b」は、PEIに実質的に等しくてもよい。この場合、調節PEIは、PEIによって増分される、同じ心周期のV1感知イベント(V1S)とV2感知イベント(V2S)との間の時間間隔に実質的に等しい。その結果、V2ペーシングパルスの送達のタイミングを計るためのAP/S-V2P間隔は、以下のように決定され得る。
等式(4):AP/S-V2P=(AP/S-V2S)-[(V1S-V2S)+PEI)]
[0050]等式(3)の「a」および「b」係数に対する他の値が選択され得る。加えて、他の種類の融合ペーシング構成もまた、本明細書に説明される技術に従って使用され得る。例えば、Burnesらに対する米国特許第7,181,286号およびSambelashviliらによる米国特許出願公開第2010/0198291号によって説明される他の融合ペーシング間隔が、本明細書に説明される技術に従って融合ペーシングを制御するためにも使用され得る。CRTの例は、「SYSTEM AND METHOD FOR BI-VENTRICULAR FUSION PACING」という表題の、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hillに対する米国特許第6,871,096号に説明される。
【0034】
[0051]いくつかの例では、融合ペーシングは、左心室ペーシングとして実施される。大半の左心室ペーシングは、電極が左心室自由壁に接近して位置付けられるように冠状静脈洞内へ導入されるリードを介する。左心臓内の心内膜刺激は、例えば、冠状静脈洞リードを使用したペーシングに関連した、左心室電気活性化を向上させることが提案されてきた。心内膜の高電気伝導速度は、心筋のより速くより均一な活性化を可能にする。同時に、左心室刺激部位の最適刺激位置は、冠状静脈洞リード上の電極の場合よりもあまり重要ではなくなり得る。左心室内に植え込まれる心臓内PDは、心臓内の心内膜刺激を提供するように構成され得る。他の例では、心臓外のPDが、心臓内の心内膜刺激を提供するように位置決めされるリード上の電極に結合され得る。
【0035】
[0052]融合ペーシングと対照的に、両室ペーシング構成では、例えば、少なくとも1つの心臓内PDを含む1つまたは複数の医療デバイスは、LVおよびRVの両方にペーシングパルスを送達して、LVおよびRVの収縮を再同期させ得る。両室ペーシング構成では、医療デバイスは、たとえ心臓の内因性AV伝導がなくても、LVおよびRVの収縮を協調させるように刺激を送達し得る。
【0036】
[0053]AdaptivCRT(商標)などの適合型CRTのためのいくつかの提案されたペーシング技術において、ペーシング構成(例えば、融合ペーシングまたは両室ペーシング)およびペーシングパルスのタイミング(例えば、AP/S-V2P間隔などの融合ペーシング間隔、または、AP/S-V1PおよびAP/S-V2P間隔、もしくはAP/S-V1PおよびV1P-V2P間隔などの両室ペーシング間隔)は、より効率的な生理学的ペーシングおよび最適な血行動態を達成するために、定期的な内因性伝導測定に基づいて定期的に調節される。例えば、いくつかの提案された心臓律動管理医療デバイスシステムは、融合ペーシング構成に従ってペーシングを患者の心臓に送達し、内因性AV伝導の損失が検出された場合(例えば、AVブロック)に、両室ペーシング構成へ切り替えることにより、CRTを送達するように構成される。したがって、CRTを適合させるように、例えば、AdaptivCRT(商標)アルゴリズムを実施するように構成される医療デバイスシステムは、患者の心臓がもはや内因性伝導していないという決定に応答して、融合ペーシング構成から両室ペーシング構成へ切り替えるように構成され得る。
【0037】
[0054]いくつかの既存の提案された技術において、医療デバイスシステムは、内因性AV伝導の損失が、A-V間隔決定の部分として実施され得る内因性伝導時間の測定に基づいて検出される場合に、融合ペーシング構成から両室ペーシング構成へ切り替える。例えば、内因性AV伝導の損失は、測定されたA-V1伝導時間(AP/S-V1S)が既定のしきい値よりも大きい(または、いくつかの例では、それよりも大きいか、またはそれに等しい)場合に検出され得る。いくつかの例では、既定のしきい値は、前の内因性伝導時間間隔に基づいて選択される(例えば、特定の数の以前の内因性伝導時間測定の平均値または中央値のパーセンテージであり得る)。他の例では、既定のしきい値は、臨床医によって、例えば、所望のレベルでの心室同期性または心拍出量の維持を結果としてもたらすV1の脱分極時間を示す値であるように選択され得る。
【0038】
[0055]内因性伝導時間を測定するため、CRTペーシングは、心臓律動管理療法なしに患者の心臓が伝導することを可能にするため、およびペーシングパルスの送達と心室活性化の感知との干渉を回避するために、停止され得る。いくつかの例では、ペーシングが心臓の心房に送達される場合、そのようなペーシングは維持され得るが、心室へのペーシングは停止され得る。内因性伝導時間の測定は、例えば、一般的にはA-Vs間隔と称され得る、心房ペースまたは感知イベント(AP/S)とV1感知イベント(V1S)との間の時間として決定され得る。そのような例では、内因性伝導時間測定の決定は、例えば、1分に1回、1時間に1回、または24時間ごとに1回起こり得るが、他の頻度も使用され得る。
【0039】
[0056]内因性伝導時間の決定は、少なくとも1つの心周期にわたる患者の心臓への一部またはすべてのペーシング療法の停止を伴う場合があり、これが、少なくともその1つの心周期の間、心臓の心室の同期の量を減少させ得る。さらには、電気心臓内伝導に基づいた内因性伝導時間の決定は、心筋剛性および収縮特性などの心臓組織特性の説明にはならない場合がある。本明細書に説明されるように、CRTを提供するためのデバイス、システム、および技術は、患者の心臓への電気刺激の送達を停止する必要性、および電気伝導測定への依存を少なくする、または除去すると同時に、タイミング間隔およびペーシング構成などのCRT制御パラメータを適合させることに向けられる。
【0040】
[0057]さらに、心室PDは、それ自体によりCRTを送達することが困難であり得る。例えば、心室PDは、例えば、電極間の比較的小さい距離に起因して、ペーシングされたまたは内因性の心房脱分極を感知し、そこからその心室ペーシングパルスの送達のタイミングを計ることが困難であり得る。心室PDは、同様の理由から、そのペーシングパルスが心室を捕捉したかどうかを検出することが困難であり得る。CRTのための心室ペーシングパルスが意図したように心室を捕捉したかどうかを評価するための特定の既存の技術は、捕捉を検出するためにファーフィールドEGMを利用する。加えて、上に説明されるもののような、CRTのタイミングパラメータを適合させるためのアルゴリズムは、典型的には、CRTの停止中に内因性AV伝導を検出するためにファーフィールド電位図(EGM)を使用する。ファーフィールドEGMは、心室PD、その電極間の比較的小さい距離に起因して、取得可能でない場合がある。
【0041】
[0058]
図1A~
図1Cは、患者14内に植え込まれる例示的な心臓医療デバイスシステム8Aの様々な視点を例証する概念図である。
図1A~
図1Cにおいて同様の番号のついた構成要素は、同様に構成され得、同様の機能性を提供し得る。
図1A~
図1Cに例証されるような医療デバイスシステム8Aは、CRTを評価することおよび適合させることに関して本明細書に説明される技術のうちの1つまたは複数を実施するように構成され得る。
【0042】
[0059]
図1Aは、本開示の1つまたは複数の態様に従う、心臓血管外植え込み型除細動器(ICD)システム4A、および患者14の心腔内に植え込まれるペーシングデバイス(PD)12Aを含む、例示的な心臓医療デバイスシステム8Aが植え込まれた患者の例示的な正面図を例証する概念図である。PD12Aは、例えば、PD12Aのハウジングに搭載された電極を介して電気信号を心臓16Aに提供する、植え込み型リードレスペーシングデバイス(例えば、ペースメーカー、心臓除細動器(cardioverter)、および/または除細動器(defibrillator))であり得る。
【0043】
[0060]
図1A~
図1C、および本明細書内の他の場所に関して、PD12Aは、概して、心臓16Aの腔内に装着されると説明される。即ち、PD12Aは、本開示の様々な部分において、心臓内ペーシングデバイスとして説明される。本開示の態様と一致する他の例では、PD12Aは、心臓16Aの外表面に装着され得、その結果として、PD12Aは、心臓16Aの外側に配設されるが、所望の腔をペーシングすることができる。1つの例において、PD12Aは、心臓16Aの外表面に装着され、PD12Aの1つまたは複数の構成要素が、心臓16Aの心外膜と接触し得る。PD12Aは、概して、心臓内植え込みのためのペーシングデバイスとして説明されるが、PD12Aは、代替的に、心臓16Aの外表面に装着し、心臓外ペーシングデバイスとして動作するように構成され得る。
【0044】
[0061]1つの例において、PD12Aは、心臓の電気活動を感知するため、および/または電気刺激、例えば、融合ペーシングなどのCRTを、心臓に送達するために心臓の左心室内に植え込まれ得る。融合ペーシングは、内因性RV活性化と協調してPD12によりLVのみをペーシングすること伴い得る。代替的に、融合ペーシングは、内因性LV活性化と協調してPD12によりRVをペーシングすることを伴い得る。このシナリオでは、PD12は、右心室上または右心室内に置かれる。
【0045】
[0062]PD12Aは、
図1Aでは、組織を貫通する1つまたは複数の固定要素(例えば、歯、らせん状物など)を介して左心室の壁に装着されて概略的に示される。これらの固定要素は、PD12Aを心臓組織に固定し、電極(例えば、陰極または陽極)を心臓組織と接触状態に保持し得る。PD12A(および
図2のPD12B)は、心臓の尖部に、または心臓の尖部に接近して植え込まれ得る。他の例では、PDは、他の左心室位置、例えば、自由壁または中隔に植え込まれ得る。
【0046】
[0063]PD12Aはまた、1つまたは複数の運動センサ(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、または電界もしくは磁界センサ)を含み得、1つまたは複数の運動センサは、心臓16のこれらの機械的運動から心臓疾患(例えば、心室同期不全または頻脈性不整脈)を検出および/または確認するように構成される。そのようなセンサを使用して検出される心臓の機械的運動はまた、本明細書に説明される技術に従うCRT中の収縮を評価するために使用され得る。PD12Aが心臓16の尖部に、またはその近くに植え込まれる例では、運動センサは、尖部に、またはその近くに対応して位置付けられ得る。PD12Aが、PD12Aの外ハウジングに搭載された2つ以上の電極を含むことから、他のリードまたは構造体が心臓16の他の腔に存在する必要がない。しかしながら、他の例では、医療デバイスシステム8Aは、心臓16のそれぞれの腔(例えば、左心房、右心房)内の、または心臓のそのような腔内の電極にリードによって結合される、追加のPDを含み得る。
【0047】
[0064]ICDシステム4Aは、少なくとも1つの植え込み型心臓除細動リード18A(以後、「除細動リード18A」)に接続されるICD10Aを含む。ICD10Aは、心房細動または心室細動が検出されることに応答して、高エネルギー電気除細動ショックまたは除細動パルスを患者14の心臓16Aに送達するように構成される。電気除細動ショックは、典型的には、細動検出基準が満たされるときに、検出されたR波と同期して送達される。除細動パルスは、典型的には、細動基準が満たされるときに送達され、R波は、ICD10Aによって感知される信号から判別することができない。
【0048】
[0065]
図1AのICD10Aは、胸郭より上の患者14の左側に皮下または筋下に植え込まれ得る。
図1Cは、本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図1Aの例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な横断面図を例証する概念図である。
図1Aの除細動リード18Aは、
図1Aでは胸骨下の場所に、例えば、胸郭および/または胸骨22と心臓との間に、少なくとも部分的に植え込まれ得る。1つのそのような構成では、除細動リード18Aの近位部分が、ICD10Aから胸骨に向かって皮下に延び、リード18Aの遠位部分が、前縦隔36内の胸骨22より下または下方に延びる(
図1Cを参照されたい)。前縦隔36は、横は肋膜39(
図1Cを参照されたい)によって、後方は心膜によって、および前方は胸骨22によって囲まれる。いくつかの場合において、前縦隔36の前壁はまた、胸横筋および1つまたは複数の肋軟骨によって形成され得る。前縦隔36は、大量の疎性結合組織(疎性組織など)、いくつかのリンパ管、リンパ腺、胸骨下筋肉組織(例えば、胸横筋)、内胸動脈の枝、および内胸静脈を含む。1つの例において、除細動リード18Aの遠位部分は、胸骨22の後側に沿って実質的に前縦隔36の疎性結合組織および/または胸骨下筋系内に延びる。除細動リード18Aは、他の胸腔内の場所、例えば、心膜または心臓16Aの他の部分の周辺にありかつそれに隣接するがそれに装着はされず、胸骨22または胸郭より上ではない、隙間、組織、または他の解剖学的特徴を含む、他の非血管性の心膜外の場所に、少なくとも部分的に植え込まれ得る。
【0049】
[0066]他の例では、除細動リード18Aは、他の心外血管の場所に植え込まれ得る。例えば、除細動リード18Aは、
図1Aに示されるように、胸郭より上にICD10Aから患者14の胴体の中心に向かって皮下に延び、胴体の中心近くで屈曲または転向し、胸郭および/または胸骨22より上に上位へ皮下に延び得る。除細動リード18Aは、胸骨22の左もしくは右に横方向にオフセットされ得るか、または胸骨22を越えて位置付けられ得る。除細動リード18Aは、胸骨22に対して略平行に延び得るか、または近位または遠位端のいずれかにおいて胸骨22から横に角度付けされ得る。別の例では、除細動リード18Aおよび/またはペーシングリードもしくは感知リードは、心臓16Aの心膜嚢内、心臓16Aの心膜内、心臓16Aに対して心外膜上に、または別の場所に植え込まれ得る。
【0050】
[0067]
図1Aの除細動リード18Aは、ICD10Aに接続されるように構成されるコネクタを含む近位端と1つまたは複数の電極を含む遠位部分とを有する絶縁性リード本体を含み得る。除細動リード18Aはまた、リード本体内に導電性通路を形成し、電気コネクタと各々の電極を相互接続する1つまたは複数の伝導体を含み得る。
【0051】
[0068]
図1Aの除細動リード18Aは、例証された例においては2つのセクションまたはセグメント20Aおよび20Bを含む、除細動電極を含む。セグメント20Aおよび20Bは、まとめて(または代替的に)本明細書では「除細動電極20」と称される。
図1Aの除細動電極20は、除細動リード18Aの遠位部分に向かって、例えば、患者14の胸骨22に沿って延びる除細動リード18Aの部分に向かって位置決めされる。
図1Aの除細動リード18Aは、除細動電極20Aまたは20Bと、ICD10Aによって形成される、またはICD10A上の、ハウジング電極(または療法ベクトルの他の第2の電極)との間の療法ベクトルが、心臓16Aの心室を実質的にまたがるように、胸骨22の下および/または胸骨22に沿って置かれる。療法ベクトルは、1つの例において、除細動電極20のある点(例えば、除細動電極セクション20Aまたは20Bのうちの一方の中心)からICD10Aのハウジング電極上の点まで延びる線と考えられ得る。
図1Aの除細動電極20の各々は、1つの例において、細長いコイル電極であり得る。いくつかの例では、除細動リードは、単一のコイル除細動電極20など、除細動リード18Aの例証された例における2つの除細動電極20よりも多くの、または少ない除細動電極20を含み得る。
【0052】
[0069]
図1Bは、本開示の1つまたは複数の態様に従う、
図1Aの例示的な医療デバイスシステムが植え込まれた患者の例示的な側面図を例証する概念図である。除細動リード18Aはまた、除細動リード18Aの遠位部分に沿って位置付けられる、感知電極22Aおよび22Bなどの1つまたは複数の感知電極を含み得る。
図1Aおよび
図1Bに例証される例において、感知電極22Aおよび22Bは、除細動電極20Aによって互いから分離される。しかしながら、他の例では、感知電極22Aおよび22Bは、除細動電極20の両遠位、または除細動電極20の両近位であり得る。他の例では、除細動リード18Aは、除細動電極20に対して近位および/または遠位の様々な場所により多くの数またはより少ない数の電極を含み得る。これらの例および/または他の例において、ICD10Aは、別のリード(
図1A~
図1Cには示されない)上に1つまたは複数の電極を含み得る。
【0053】
[0070]ICDシステム4Aは、電極22Aおよび22BとICD10Aのハウジング電極との組み合わせを含む1つまたは複数の感知ベクトルを介して電気信号を感知し得る。例えば、ICD10Aは、感知電極22Aと22Bとの間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を獲得し得るか、感知電極22BとICD10Aの伝導性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を獲得し得るか、感知電極22AとICD10Aの伝導性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を獲得し得るか、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの場合において、ICD10Aは、除細動電極セクション20Aおよび20Bのうちの一方ならびに感知電極22Aおよび22Bのうちの一方、またはICD10Aのハウジング電極を含む感知ベクトルを使用して心臓電気信号を感知し得る。
【0054】
[0071]感知された電気内因性信号は、心筋によって生成され、心周期の間の様々な時間における心臓16Aの脱分極および再分極を示す電気信号を含む。さらには、感知された電気内因性信号は、心臓16Aの機能に関して1つまたは複数の心臓イベントを示し得る。感知された電気信号はまた、PD12Aによって生成され心臓16Aに送達される、電気信号、例えば、ペーシングパルスを含み得る。ICD10Aは、1つまたは複数の感知ベクトルによって感知される電気信号を分析して、心房頻脈、心房細動、心室頻脈、または心室細動などの頻脈性不整脈を検出する。頻脈性不整脈、例えば、心室細動、を検出することに応答して、ICD10Aは、1つまたは複数のコンデンサのバンクなどの記憶素子を充電し始めることができる。記憶素子が十分に充電されていることを決定する際、ICD10Aが、頻脈性不整脈が依然として存在すると決定する場合には、ICD10Aは、除細動リード18Aの除細動電極20を介して1つまたは複数の除細動パルスを心臓16Aの特定の腔に送達し得る。
【0055】
[0072]
図1Aの例では、PD12Aは、心臓16Aの左心室内に植え込まれ、例えばCRTのために、ペーシングパルスを左心室に提供する。例として左心室内に植え込まれると例証されているが、PD12Aは異なる位置にも同様に植え込まれ得ることを理解されたい。例えば、PD12Aは、心外膜上に植え込まれ得る。即ち、心外膜植え込みによると、PD12Aは、心臓16Aの外側に位置決めされ得、1つまたは複数リードを介して、またはリードレス方式で、心臓16Aの左心室に接続され得る。他の例では、PD12Aまたは他のPDは、心臓16Aの他の腔内、またはその外側に植え込まれ得る。
【0056】
[0073]PD12Aは、心臓16Aの左心室の利用可能な容積内にフィットするように、または心臓16Aの左心室の壁に、例えば、心臓16Aの左心室の尖部もしくはその近くに、装着可能であるように、寸法を有するように構築され得る。より小さいサイズのPD12Aはまた、心臓16A内に形成される血栓のリスクを低減し得る。いくつかの例では、PD12Aは、ICD10AのEGM感知能力を活用することができ、したがって、EGM感知回路を含まなくてもよい。そのようなものとして、PD12Aは、電気心臓イベントについて通常のEGM感知が実施されるシナリオよりも小さい容量のバッテリを利用し得る。
【0057】
[0074]例えば、ICD10Aは、心房脱分極またはP波など、心臓16Aの電気活動を感知し、いつPD12Aが1つまたは複数のペーシング信号(例えば、パルス)を心臓16Aの左心室に送達すべきかを決定するように構成され得る。次いで、ICD10Aは、送達されることになるペーシングパルスと関連付けられたタイミング情報を提供するために制御信号をPD12Aに伝送し得る。タイミング情報は、上に説明されるように、例えばICD10Aおよび/またはPD12Aの処理回路によって決定され得る、1つまたは複数の記憶されたA-VまたはV-V間隔に基づいて決定され得る。ICD10Aから制御信号を受信すると、PD12Aは、受信した制御信号によって示されるタイミング情報に従ってペーシング信号またはパルスを送達し得る。ICD10AおよびPD12Aは、PD12Aが、電源オン状態で制御信号を受信する通信回路を動作させる時間量を制限するために、伝送スケジューおよび通信スケジュールを使用して動作し得る。
【0058】
[0075]いくつかの例では、ICD10Aはまた、除細動リード18Aの感知電極22Aおよび/または22Bを使用して、ペーシング信号をCRTの部分として提供し得る。他の例では、ICD10Aは、心臓16Aの右心房および右心室内に配設されるように構成される、それぞれの電極を持つ1つまたは複数の心臓内リードに結合され得、PD12Aと一緒に、これらの心臓内リードを介してペーシングパルスをCRTの部分として送達し得る。他の例では、PD12Aのような追加のPDが、心臓16Aの右心房および/または右心室内に配設され得る。心臓16Aの右心房および/または右心室内内に置かれる任意のPDは、ICM10Aによって同様に制御され得る。代替的に、右心房および/または右心室内の一方または両方のPDが、心臓16Aの左心室内に配設されるPD12Aに制御信号を提供し得る。
【0059】
[0076]別の例では、左心室に植え込まれるPD12Aおよび/または右心室もしくは他の心腔に植え込まれるPDは、徐脈ペーシング療法、抗頻拍ペーシング(ATP)、および/またはショック後ペーシングなどの他のペーシング療法を心臓16Aに送達するように構成され得る。例えば、右心室内または右心室上に植え込まれるPD12AまたはPDは、本明細書に説明される技術に従ってICD10Aから受信される制御信号に基づいて心房脱分極に対してタイミングが合わせられるA-V同期徐脈ペーシング療法を送達し得る。
【0060】
[0077]ここでも、いくつかの例では、PD12Aは、EGM感知回路を含まなくてもよい。他の例では、PD12Aは、PD12Aのハウジングに搭載された電極を使用して電気信号を感知することができる場合がある。これらの電気信号は、心筋によって生成され、心周期の間の様々な時間における心臓16Aの脱分極(例えば、心室脱分極もしくはR波、または心房脱分極もしくはP波)および再分極(例えば、心室再分極またはT波)を示す電気信号であり得る。PD12Aは、感知した電気信号を分析して、心室頻脈もしくは心室細動などの頻脈性不整脈、徐脈性不整脈、またはショックさえも検出し得る。これらの疾患の検出に応答して、PD12Aは、例えば、不整脈またはショックの種類に応じて、別のデバイスからの情報ありまたはなしで、徐脈ペーシング療法またはショック後ペーシングを送達し始め得る。いくつかの例では、PD12Aは、既定の期間にわたってまたは既定の数の通信ウィンドウを超えてICM10Aからの制御信号を検出できないことに応答して、不整脈を検出するだけであり得る。
【0061】
[0078]
図1Aは、胸骨下ICDシステム4AおよびPD12Aの文脈で例証および説明されるが、本開示の1つまたは複数の態様に従う技術は、他の医療デバイスシステムに適用可能であり得る。本開示の技術を実装し得る別の医療デバイスシステム8の例は、
図2に示され、
図2に関して以下にさらに詳細に論じられる。別の例では、血管外ICD(EV-ICD)システムの代わりに、心室心臓内リードに結合される皮下または筋下ペーシングデバイスが患者内に植え込まれ得る。この様式では、ペーシングデバイスは、心臓内リードを介してペーシングパルスを心臓16Aの右心室に提供し得、またペーシングパルスを心臓16Aの左心室に提供するようにPD12Aを制御し得る。別の例では、電極を持つ心室心臓内リードに結合される皮下または筋下ペーシングデバイスは、例えば、そのリードにより、別のリードにより、またはワイヤレスで、運動センサに結合され得、CRT中の収縮を評価するための本開示の技術を実装し得る。そのようなものとして、いくつかの例では、センサは、左心内膜リードなど、心内膜リードの一部として含まれ得る。
図1A~
図1Cおよび
図2の例は、例証の目的のためのものであり、本明細書に説明される技術を制限するといかようにも見なされるべきではない。
【0062】
[0079]外部デバイス24は、ICD10Aおよび/またはPD12Aと通信するように構成され得る。外部デバイス24がICD10AまたはPD12Aの一方のみと通信する例において、非通信のデバイスは、外部デバイス24と通信しているデバイスから命令を受信し得るか、またはそこにデータを伝送し得る。いくつかの例では、外部デバイス24は、ハンドヘルドコンピューティングデバイス、コンピュータワークステーション、またはネットワーク化したコンピューティングデバイスのうちの1つまたは複数を含み得るか、これらであり得るか、またはこれらの部分であり得る。外部デバイス24は、ユーザからの入力を受信するように、構成される、または別途動作可能である、ユーザインタフェースを含み得る。他の例では、外部デバイス24は、ネットワーク化したコンピューティングデバイスを介するなど、遠隔で中継されるユーザインタラクションを処理し得る。外部デバイス24は、ユーザがPD12Aおよび/またはICD10Aと通信することができるようにユーザインタラクションを処理し得る。例えば、外部デバイス24は、インテロゲーション要求を送信し療法送達データを取得するため、療法を規定する療法パラメータを更新するため、PD12Aおよび/もしくはICD10Aの間の通信を管理するため、またはPD12Aおよび/もしくはICD10Aに関する任意の他の活動を実施するために、ユーザ入力を処理し得る。ユーザは、典型的には、医師、技師、外科医、電気生理学者、または他の医療従事者であるが、いくつかの例では、ユーザは患者14であってもよい。
【0063】
[0080]外部デバイス24はまた、ユーザが、PD12Aおよび/またはICD10Aがどのように電気信号を感知し(例えば、心電図(EGM))、不整脈(例えば、頻脈性不整脈)を検出し、療法(例えば、CRT)を送達し、心臓医療デバイスシステム8Aの他のデバイスと通信するかを規定することを可能にし得る。例えば、外部デバイス24は、頻脈性不整脈検出パラメータを変更するために使用され得る。別の例では、外部デバイス24は、療法パラメータを管理するために使用され得る。PD12AおよびICD10Aが互いと通信するように構成されるとき、外部デバイス24は、PD12AとICD10Aとの間の通信プロトコルを変えるために使用され得る。例えば、外部デバイス24は、PD12Aおよび/またはICD10Aに、単方向通信と双方向通信とで切り替えるように、ならびに/またはPD12Aおよび/もしくはICD10Aのどちらが不整脈の初期検出を担うかを変更するように命令し得る。
【0064】
[0081]外部デバイス24はまた、ユーザが、CRTのためのA-Vおよび/またはV-V間隔をプログラムすることを可能にし得る。例えば、外部デバイス24Aは、ユーザが、A-V間隔を選択し、選択したA-V間隔に基づいて、検出されたP波の後の特定の時間において心室ペーシングパルスを送達するようにPD12AをトリガするようにICD10Aをプログラムするか、選択したA-V間隔に基づいて、ICD10Aからのトリガ信号の後の特定の時間において心室ペーシングパルスを送達するようにPD12Aをプログラムすることを可能にし得る。外部デバイス24はまた、または代替的に、ウィンドウの持続、ウィンドウのレート、同期化信号のレート、1つまたは複数のデバイスが通信を再確立しようとする前の通信における許容期間、および他のそのようなパラメータなど、通信を規定するパラメータを調節するように構成され得る。外部デバイス24はまた、ユーザが、運動信号内の心収縮の特徴を識別し、本開示の技術に従って、心収縮が融合拍動であるか、または内因性拍動もしくは完全にペーシングされた拍動などの別の種類の拍動であるかを、1つまたは複数の特徴に基づいて決定するように、例えばICD10A、PD12A、および/または外部デバイス24の処理回路によって使用されるパラメータをプログラムすることを可能にし得る。
【0065】
[0082]外部デバイス24は、当該技術分野において知られている任意の技術を使用するワイヤレス通信によりPD12Aおよび/またはICDシステム4Aと通信し得る。通信技術の例は、例えば、独自または非独自の無線周波数(RF)テレメトリ、誘導的テレメトリ、音響、および組織伝導通信(TCC)を含み得るが、他の技術も企図される。TCCの間、電流は、伝送デバイスの2つ以上の電極の間の組織を貫通する。電気信号は、拡散し、受信デバイスの2つの電極の間に発生する電圧を測定することによって、ある距離のところで検出され得る。
【0066】
[0083]いくつかの例では、PD12AおよびICD10Aは、不整脈の適切な検出および/またはペーシング療法の適切な送達を促進するために通信に従事し得る。通信は、それぞれのスケジュールに従って、一方のデバイスが通信メッセージを伝送するように構成され、他方のデバイスがそれらのメッセージを受信するように構成されるという単方向通信を含み得る。通信は、代わりに、各デバイスが通信メッセージを伝送および受信するように構成されるという双方向通信を含み得る。PD12AおよびICD10Aの両方は、患者14が必要とし得る療法に基づいて単方向通信モードと双方向通信モードとでトグルするように構成され得る。通信は、TCCまたは他の通信信号、例えば、RF通信信号を介し得る。
【0067】
[0084]PD12Aは、PD12AがCRTまたは別の療法を患者14に送達するかどうかを少なくとも部分的に決定し得るが、PD12Aは、いくつかの例では、ICD10Aからのリクエストを受信することに応答して、およびPD12Aによるいかなるさらなる分析もなしに、1つまたは複数の機能を実施し得る。この様式では、ICD10Aは、マスターデバイスとしての機能を果たし得、PD12Aは、スレーブデバイスとしての機能を果たし得る。
【0068】
[0085]ICD10AおよびPD12Aは、CRTおよび他のペーシング療法を提供するために連携通信を実施し得るが、これらの医療デバイスは、本明細書に説明される伝送および通信スケジュールを使用して他の療法を患者14に提供し得る。例えば、ICD10Aは、心房脱分極(即ち、P波)を検出し、ICD10Aの機能性にCRTを追加するためにペーシング信号をいつ送達すべきかを左心室(LV)内のリードレスペーサー(例えば、PD12A)に伝える制御信号伝送する、皮下、胸骨下、または経静脈デバイス(
図1Aに関しては胸骨下デバイスとして論じられる)であり得る。別の例では、任意のデバイスが、患者14の胴体内に皮下に植え込まれて、心房脱分極(P波)を検出し、制御信号を左心室内のPD12Aまたは両心室内のPDに伝送して、心房脱分極の発生にタイミングを合わせてCRTまたは他の形態の心室ペーシングを心臓16Aに送達し得る。
【0069】
[0086]別の例では、2つのPD(例えば、
図1Aに例証されるPD12Aを含む)は、右心室内の1つのPDによる心房感知(VDD)による心室ペーシング中、通信状態にあり、P波を検出して、ペーシング信号を右心室に送達し、かつ右心室から活動を感知し、TCCまたは他の信号を左心室内のPD12Aに送信して、心房同期両室(bi-V)ペーシングを実施するためにペーシング信号を送達し得る。このペーシングモードは、右心室に植え込まれるPDが、感知を提供し得、およびデバイス間のTCC信号が失われる場合に心室イベント抑制(VVI)ペーシング療法によるバックアップ心室ペーシングおよび感知を提供することが理由で、PVCに続くT波におけるペーシングを回避し得る。
【0070】
[0087]
図2は、本開示の1つまたは複数の態様に従う、患者内に皮下挿入または胸骨下挿入される挿入可能な心モニタリング(ICM)デバイス10B、および患者14の心外膜上または心腔内のいずれかに植え込まれるPD12Bを含む、別の例示的な医療デバイスシステム8Bが植え込まれた患者14の例示的な正面図を例証する概念図である。
図1A~
図1Cの構成要素と同様の番号を有する
図2に例証される構成要素は、同様に構成され得、
図1A~
図1Cに例証される同様に番号付けされた構成要素に類似する機能性を提供し得る。
図2の医療デバイスシステム8Bは、PD12Bの動作を最適化すること、ならびに、任意の対応するレポートまたはアラートを生成することを含む、様々な形態の診断データを収集、測定、および記憶することに関して本明細書に説明される技術のうちの1つまたは複数を実施するために、ICM10BまたはPD12Bの心臓信号感知能力を活用し得る。特定の場合において、ICM10BまたはPD12Bは、収集した診断データを直接分析し、任意の対応するレポートまたはアラートを生成し得る。しかしながら、いくつかの場合において、ICM10BまたはPD12Bは、診断データを外部デバイス24に送信し得る。いくつかの例では、ICM10Bは、アイルランド、ダブリンのMedtronic plcから入手可能なReveal LINQ(商標)ICMの形態をとり得る。
【0071】
[0088]
図1A~
図1Cの医療デバイスシステム8Aおよび
図2の医療デバイスシステム8Bは各々、本開示の、CRT適合技術ならびにCRT診断データの表化および報告技術を実施するように構成され得る。そのようなものとして、本開示のCRT適合技術および報告技術は、全体的に「医療デバイスシステム8」、例としてICD10AおよびICM10Bを含み得る「植え込み型医療デバイス(IMD)10」、ならびに/または「PD12」によって実施されるとして以後説明されるが、説明される技術は、
図1A~
図1Cまたは
図2に例証されるそれぞれの対応するシステム/デバイスによって実施され得ることを理解されたい。本開示の様々な態様によると、医療デバイスシステム8および/またはそれらの構成要素は、心臓16の活動を検出し、記憶された間隔、例えば、A-VまたはV-V間隔に基づいて、そのような活動に、タイミングを合わせた関係でペーシング療法を送達するように構成され得る。例として、医療デバイスシステム8は、本開示に説明される技術に従って適合される間隔情報、または他のプログラミングもしくは診断データを、
図1A~
図1Cおよび
図2に例証される構成要素に含まれる1つもしくは複数のメモリデバイスに、および/または医療デバイスシステム8の例証される構成要素のうちの1つもしくは複数に通信可能に別途結合されるメモリデバイスに記憶し得る。
【0072】
[0089]上に説明されるように、IMD10は、様々な例において、胸骨下に、皮下に、または患者14の体内の他の場所に植え込まれ得る異なる種類の心臓モニタリング(およびいくつかの場合には療法)デバイスを表し得る。これらの実装形態のいずれかにおいて、IMD10は、インタフェースハードウェア、および心臓16の心周期の関数として変化する心臓信号を感知する感知回路を含む。例えば、IMD10の感知回路は、心周期の関数として変化する心臓信号に基づいて、心臓脱分極および/または機械的心収縮イベントのタイミングを検出し得る。
【0073】
[0090]そのような感知回路からの信号に基づいて、または他の情報(例えば、ペーシングパルスの送達を示す)に基づいて、IMD10の処理回路は、心房および/もしくは心室脱分極(ペーシングされたまたは内因性)の発生、または他の心房もしくは心室イベントもしくは基準を検出し、そこからA-VもしくはV-Vタイミング間隔の始まりもしくは終わりを設定し得る。脱分極の検出に応答して、処理回路は、CRTのための心室ペーシングパルスを送達するようにPD12をトリガし得る。CRTのための心室ペーシングパルスの送達は、記憶されたA-VまたはV-V間隔、および検出された心房または心室脱分極が発生した時間に基づいて、タイミングが合わせられ得る。
【0074】
[0091]本開示の技術によると、PD12内の、またはPD12に結合される運動センサ、例えば、3軸加速度計は、CRTの送達中、収縮を含む心臓の機械的活動を示す信号を生成し得る。本開示の技術によると、例えば、PD12、IMD10、外部デバイス24、および/または本明細書に説明される任意のデバイスの、処理回路は、運動信号により心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、心収縮が、融合拍動、内因性拍動、または完全にペーシングされた拍動のうちの1つであるかどうかを、1つまたは複数の特徴に基づいて決定し得る。融合拍動が望ましく、処理回路は、他の種類の拍動のうちの1つまたは複数の検出に基づいて融合拍動を達成するために、CRTペーシング制御パラメータ値、例えば、A-V、V-V、または他のタイミング間隔を適合させ得る。処理回路はまた、異なる種類の拍動(例えば、融合対非融合)の回数に基づいて診断情報を生成し得、これがユーザに報告され得る。診断情報は、融合拍動である、または別途心臓を効果的に補足した、拍動の量、例えば、パーセンテージを示す1つまたは複数のメトリックの値を含み得る。
【0075】
[0092]
図3は、
図2に例証されるICM10Bの例示的な構成を例証する概念図である。
図3に示される例では、ICM10Bは、ハウジング32、近位電極34、および遠位電極36を有するモニタリングデバイスとして具現化され得る。ハウジング32は、第1の主要面38、第2の主要面40、近位端42、および遠位端44をさらに含み得る。ハウジング32は、ICM10Bの内側に位置付けられる電気回路を囲み、中に含まれる回路を体液から保護する。電気フィードスルーは、電極34および36の電気接続を提供する。
【0076】
[0093]
図3に示される例では、ICM10Bは、長さL、幅W、および厚さまたは深さDによって規定され、細長い直角プリズムの形態をとり、長さLは、幅Wよりもはるかに大きく、そして幅Wは深さDよりも大きい。1つの例において、深さDよりも大きい幅WというICM10Bの幾何学的形状は、ICM10Bが低侵襲手技を使用して患者の皮膚の下に挿入され、挿入中に所望の配向に留まることを可能にするために選択される。例えば、
図3に示されるデバイスは、挿入後にデバイスを正しい配向に維持する長手方向軸に沿って径方向非対称(とりわけ、長方形)含む。例えば、1つの例では、近位電極34と遠位電極36との間隔は、30ミリメートル(mm)~55mm、35mm~55mm、および40mm~55mmの範囲にあり得、また25mm~60mmの任意の範囲または個々の間隔であり得る。
【0077】
[0094]加えて、ICM10Bは、30mm~約70mmの範囲にわたる長さLを有し得る。他の例では、長さLは、40mm~60mm、45mm~60mmの範囲にわたり得、約30mm~約70mmの任意の長さまたは長さの範囲であり得る。加えて、主要面38の幅Wは、3mm~10mmの範囲にわたり得、3mm~10mmの任意の単一または範囲の幅であり得る。ICM10Bの深さDの厚さは、2mm~9mmの範囲にわたり得る。他の例では、ICM10Bの深さDは、2mm~5mmの範囲にわたり得、2mm~9mmの任意の単一または範囲の深さであり得る。
【0078】
[0095]さらには、本開示の例に従うICM10Bは、植え込みの容易さおよび患者快適さのために設計された幾何学的形状およびサイズを有する。本開示に説明されるICM10Bの例は、3立方センチメートル(cm)以下の体積、1.5立方センチメートル以下、または3~1.5立方センチメートルの任意の体積を有し得る。加えて、
図3に示される例では、近位端42および遠位端44は、患者の皮膚の下に挿入された後の不快感および周囲組織への刺激を低減するために丸みを帯びている。いくつかの例では、ICM10Bを挿入するための器具および方法を含め、ICM10Bは、例えば、「SUBCUTANEOUS DELIVERY TOOL」という表題の、2014年9月18日に公開された米国特許公開第2014/0276928号に説明されるように構成される。Vanderpoolらに対する米国特許公開第2014/0276928号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、ICM10Bは、例えば、「METHOD AND APPARATUS FOR DETERMINING A PREMATURE VENTRICULAR CONTRACTION IN A MEDICAL MONITORING DEVICE」という表題の、2016年10月27日に公開された米国特許公開第2016/0310031号に説明されるように構成される。Sarkarに対する米国特許公開第2016/0310031号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
[0096]
図3に示される例では、一旦患者内に挿入されると、第1の主要面38は、患者の皮膚に向かって外方に向く一方、第2の主要面40は、第1の主要面38の反対に位置付けられる。結果として、第1および第2の主要面は、患者14Aの矢状軸に沿った方向に向き得(例えば、
図2を参照されたい)、この配向は、ICM10Bの寸法に起因して植え込み時に一貫して達成され得る。加えて、加速度計、または加速度計の軸が、矢状軸に沿って配向され得る。
【0080】
[0097]近位電極34および遠位電極36は、心臓信号、例えば、心臓EGM信号を、筋下または皮下であり得る胸部内または胸部外で、感知するために使用され得る。EGM信号は、ICM10Bのメモリに記憶され得、EGMデータは、統合アンテナ52を介して、別の植え込み型デバイスまたは外部デバイス14Aなどの外部デバイスであり得る別の医療デバイスに伝送され得る。いくつかの例では、電極34および36は、追加的にまたは代替的に、例えば、任意のEGM、脳波図(EEG)、筋電図(EMG)、または神経信号であり得る、目的の任意の生体電位信号を、任意の植え込み場所から感知するために使用され得る。
【0081】
[0098]
図3に示される例では、近位電極34は、近位端42に近く、遠位電極36は、遠位端44に近い。この例では、遠位電極36は、平らにされた外向きの表面に限定されない。遠位電極36は、第1の主要面38から丸みを帯びた縁46および/または端表面48の周り、ならびに第2の主要面40上まで延び得、その結果として、電極36は3次元湾曲構成を有する。
図3に示される例では、近位電極34は、第1の主要面38に位置付けられ、実質的に平坦の外向きである。しかしながら、他の例では、近位電極34は、
図3の遠位電極36に関して例証される3次元湾曲構成を利用し得、3次元近位電極をもたらす。依然として他の例では、遠位電極36は、近位電極34に関して
図3に示されるもののような、第1の主要面38に位置付けられる実質的に平坦の外向きの電極を利用し得る。
【0082】
[0099]様々な電極構成は、近位電極34および遠位電極36が第1の主要面38および第2の主要面40の両方に位置付けられる構成を可能にする。
図3に示される構成などの他の構成では、近位電極34または遠位電極36のうちの一方のみが、両方の主要面38および40に位置付けられる。依然として他の構成では、近位電極34および遠位電極36の両方が、第1の主要面38または第2の主要面40のうちの一方に位置付けられる(即ち、近位電極34が第1の主要面38に位置付けられる一方、遠位電極36は第2の主要面40に位置付けられる)。別の例では、ICM10Bは、デバイスの近位端および遠位端に、またはその近くにおいて、主要面38および40の両方に電極を含み得、その結果として、合計で4つの電極がICM10B上に含まれる。電極34および36は、複数の異なる種類の生体適合性の導電材料、例えば、ステンレス鋼、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金で形成され得、窒化チタンまたはフラクタル窒化チタンなど、1つまたは複数のコーティングを利用し得る。
【0083】
[0100]
図3に示される例では、近位端42は、近位電極34、統合アンテナ52、マイグレーション防止突出部54、および/または縫合穴56のうちの1つまたは複数を含むヘッダーアセンブリ50を含む。統合アンテナ52は、近位電極34と同じ主要面(即ち、第1の主要面38)に位置付けられ、また、ヘッダーアセンブリ50の部分として含まれる。統合アンテナ52は、ICM10Bがデータを伝送および/または受信することを可能にする。他の例では、統合アンテナ52は、近位電極34と反対の主要面に形成され得るか、またはICM10Bのハウジング32内に組み込まれ得る。
図3に示される例では、マイグレーション防止突出部54は、統合アンテナ52に隣接して位置付けられ、デバイスの長手方向の動きを防ぐために第1の主要面38から離れる方に突き出る。
図3に示される例では、マイグレーション防止突出部54は、第1の主要面38から離れる方に延びる複数(例えば、9つ)の小さい隆起または突起を含む。
【0084】
[0101]上で論じられるように、他の例では、マイグレーション防止突出部54は、近位電極34および/または統合アンテナ52とは反対の主要面に位置付けられ得る。加えて、
図3に示される例では、ヘッダーアセンブリ50は、縫合穴56を含み、これが挿入後の動きを防ぐためにICM10Bを患者に固定する別の手段を提供する。示される例では、縫合穴56は、近位電極34に隣接して位置付けられる。1つの例において、ヘッダーアセンブリ50は、ポリマー材料またはプラスチック材料製の成形ヘッダーアセンブリであり、これは、ICM10Bの主要部分に統合され得るか、またはそこから分離可能であり得る。
【0085】
[0102]
図4は、
図1AのPD12Aまたは
図2のPD12Bのいずれかまたは両方に対応し得る、例示的なPD12を例証する概念図である。
図4に示されるように、PD12は、ケース50、キャップ58、電極60、電極52、固定機序62、フランジ54、および開口部56を含む。ケース50およびキャップ58は一緒に、PD12のハウジングと見なされ得る。この様式では、ケース50およびキャップ58は、PD12内の様々な電気構成要素を包囲し保護し得る。ケース50は、実質的にすべての電気構成要素を包囲し得、またキャップ58は、ケース50を密封し、PD12の密閉式ハウジングを作成し得る。PD12は、全体的に、1つまたは複数の電極を含むと説明されるが、PD12は、典型的には、電気信号(例えば、CRTなどの療法)を送達するおよび/または少なくとも1つの感知ベクトルを提供するために、少なくとも2つの電極(例えば、電極52および60)を含み得る。電極52および60は、ケース50およびキャップ58によって作成されるハウジングに搭載される。この様式では、電極52および60は、リードレス電極と見なされ得る。
【0086】
[0103]
図4の例では、電極60は、キャップ58の外面に配設される。電極60は、植え込みの際に心臓組織に接触するように位置決めされる円形電極であり得る。電極52は、ケース50の外面に配設されるリングまたは円筒電極であり得る。ケース50およびキャップ58の両方は、電気絶縁性であり得る。CRTまたは他の適切な心臓療法(徐脈ペーシング、ATP、ショック後ペーシングなど)を送達するため、電極60は陰極として使用され得、電極52は陽極として使用され得るか、またはその逆である。しかしながら、電極52および60は、任意の刺激構成で使用され得る。加えて、電極52および60は、心筋からの内因性電気信号を検出するために使用され得る。他の例では、PD12は、3つ以上の電極を含み得、各電極が、療法を送達し得、および/または内因性信号を検出し得る。PD12によって送達されるCRTおよび他のペーシングは、電気刺激が、心筋の非常に近くまたは心筋において、代替デバイスと比較して比較的低いエネルギーレベルで発生するため、患者14にとって「無痛」であり得るか、または患者14によって検出不可能でさえあり得る。
【0087】
[0104]固定機序62は、PD12を心臓組織に装着し得る。固定機序62は、能動的な固定歯、ねじ、クランプ、接着部材、またはデバイスを組織に装着する任意の他の種類のものであり得る。
図4の例に示されるように、固定機序62は、予め形成された形状を保持する記憶材料で構築され得る。植え込み中、固定機序62は、組織に穴を開けるために前に曲げられ、ケース50の方へ曲げ戻され得る。この様式では、固定機序62は、標的組織内に埋め込まれ得る。
【0088】
[0105]フランジ54は、PD12の連結または摘出を可能にするためにケース50の一端に提供され得る。例えば、縫合または他のデバイスは、フランジ54の周りにおよび/または開口部56を通って挿入され、組織に装着され得る。この様式では、フランジ54は、固定機序62が機能しなくなった場合にPD12を心臓16内に連結または保持するために、二次的な装着構造を提供し得る。フランジ54および/または開口部56はまた、PDが患者14から外植される(または除去される)必要があると、そのような行為が必要と見なされる場合、PD12を摘出するために使用され得る。
【0089】
[0106]別の例では、PD12は、心臓16の外側、例えば、近くに植え込まれる、または心臓16の心外膜に装着されるように構成され得る。融合ペーシングPD12のハウジングに搭載される電極は、心外膜、および/または療法を提供するのに十分な場所に(例えば、左および/または右心室の外表面に)心外膜と接触して置かれる1つまたは複数の電極、と接触して置かれ得る。任意の例において、IMD10は、心臓16の内側または外側に植え込まれる1つまたは複数のリードレスまたはリード付きデバイスと通信し得る。
【0090】
[0107]
図5は、本開示の1つまたは複数の態様に従って構成されるIMD10の例示的な構成を例証するブロック図である。
図5のIMD10は、様々なユースケースシナリオにおいて、
図1A~
図1CのICD10Aまたは
図2のICM10Bの例を表す。IMD10は、除細動電極20(
図1A~C)、感知電極22(
図1A~C)、ICD10Aの1つもしくは複数のハウジング電極(
図1A~C)、または電極34および36(
図3)に対応し得る2つ以上の電極71A~N(まとめて「電極71」)を含む。
【0091】
[0108]IMD10は、感知回路76を制御するための処理回路70、通信回路78、(任意選択的に)スイッチング回路72、メモリ82、および(任意選択的に)療法生成回路80を含み得る。スイッチング回路72および療法生成回路80の任意選択の特性は、
図5において、任意選択の態様を示すために破線の境界線を使用して示される。1つの例として、療法生成回路80は、ICMとして構成されるIMDのいくつかの実施形態が療法を送達しないことが理由で任意選択として示される。スイッチング回路72は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)またはバイポーラトランジスタなどの1つまたは複数のスイッチを含み得る。処理回路70は、1つまたは複数の生理学的電気信号を感知するために電極71の選択されたグループを感知回路76に接続するようにスイッチング回路72を制御し得る。
【0092】
[0109]感知回路76は、2つ以上の電極71の選択された組み合わせから心臓電気信号を受信し、心臓組織の脱分極および再分極に付随する心臓イベントを感知するように構成される。感知回路76は、1つまたは複数の感知チャネルを含み得、1つまたは複数の感知チャネルの各々が、例えば、1つまたは複数の心房および/または心室感知チャネルなどの、心臓16の特定の腔の電気活動を検出するために、電極71のそれぞれの組み合わせに選択的に結合され得る。各感知チャネルは、心臓イベント、例えば、P波およびR波を検出するために、それぞれの感知チャネルに結合される選択された電極から受信される心臓電気信号の増幅、フィルタリング、および整流を行うように構成され得る。例えば、各感知チャネルは、電極の選択された対から受信される信号をフィルタリングおよび増幅するための1つまたは複数のフィルタおよび増幅器を含み得る。結果として生じる心臓電気信号は、心臓電気信号が感知しきい値を越えるときに心臓イベントを検出する心臓イベント検出回路に渡され得る。心臓イベント検出回路は、整流器、フィルタおよび/もしくは増幅器、センス増幅器、比較器、ならびに/またはアナログデジタル変換器を含み得る。感知回路76は、目的の腔内の心臓イベント、例えば、P波またはR波を感知することに応答して、処理回路70に標示を出力し得る。この様式では、処理回路70は、検出されたP波およびR波の発生に対応する検出された心臓イベント信号を受信し得る。検出されたR波の標示は、心室不整脈発作を検出するために処理回路70によって使用され得、検出されたP波の標示は、心房不整脈発作を検出するために処理回路70によって使用され得る。感知回路76はまた、1つまたは複数のデジタル化EGM信号を、分析のため、例えば、心臓律動区別における使用のため、および形態素解析のために、処理回路70に渡し得る。
【0093】
[0110]通信回路78は、連続したおよび/またはパルス状の通信波形を、生成および変調するため、およびいくつかの場合においては受信および復調するための回路を含み得る。通信回路78は、アンテナ(図示せず)を介したRF信号、または電極71を介したTCC信号の一方または両方を伝送および/または受信するように構成され得る。
図5には示されないが、通信回路78は、TCCのためのスイッチング回路72を介して、選択された2つ以上の電極71に結合され得る。
【0094】
[0111]いくつかの例では、処理回路70は、ペーシング、電気除細動、または除細動パルスなどの療法パルスを心臓に送達するために電極71を療法生成回路80に接続するようにスイッチング回路72を制御し得る。療法生成回路80は、電極71に電気的に結合可能であり、電気療法を生成し、電極71の選択された組み合わせを介して心臓16に送達するように構成される。療法生成回路80は、充電回路、ならびに1つもしくは複数の高電圧コンデンサおよび/または1つもしくは複数の低電圧コンデンサなどの1つまたは複数の電荷蓄積デバイスを含み得る。スイッチング回路72は、コンデンサが電極71の選択された組み合わせに放電されるときを制御し得る。療法生成回路80および/または処理回路70は、周波数、振幅、および療法パルスの他の特徴を制御し得る。療法生成回路80は、スイッチング回路72が療法生成回路80を電極71に接続するときに、療法パルスを電極71に送達し得る。
【0095】
[0112]処理回路70は、スイッチング回路72の1つまたは複数のスイッチの制御端子に制御信号を送信することによってスイッチング回路72を制御し得る。制御信号は、スイッチング回路72のスイッチがスイッチの負荷端子間に電気を通すかどうかを制御し得る。スイッチング回路72がMOSFETスイッチを含む場合、制御端子はゲート端子を含み得、負荷端子は、ドレイン端子およびソース端子を含み得る。
【0096】
[0113]処理回路70は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の等価の集積もしくは離散論理回路、ならびにそのような構成要素の任意の組み合わせを含む、様々な種類のハードウェアを含み得る。用語「処理回路」は、一般的に、前述の論理回路のうちのいずれかを、単独でもしくは他の論理回路と組み合わせて、または任意の他の等価の回路を、指し得る。処理回路70は、本明細書に説明されるアルゴリズムのうちの1つまたは複数を明記するファームウェアおよび/またはソフトウェアを実施するように構成され得るハードウェアを表す。メモリ82は、処理回路70によって実行されると、IMD10および処理回路70に本明細書内のIMD10および処理回路70のものとされる様々な機能を実施させる、コンピュータ可読命令を含む。メモリ82は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または任意の他のデジタルメディアなど、任意の揮発性、不揮発性、磁気、光学、または電気媒体を含み得る。
【0097】
[0114]いくつかの例では、処理回路70は、感知回路76からP波もしくは他の心房イベント(またはR波もしくは他の心室イベント)の発生の標示を受信するか、または、当該技術分野において知られている様々な技術のいずれかを使用して感知回路から受信されるファーフィールドEGM信号の処理によってP波もしくは心房イベントの発生を識別する。心房または心室イベントに応答して、処理回路70は、信号を心臓内PD12に伝送するように通信回路78を制御し得る。信号は、A-VまたはV-V間隔などのタイミング間隔の満了前に内因性の心室脱分極がない限り、心臓内PD12にCRTための心室ペーシングパルスを送達させる。上に説明されるように、IMD10および心臓内PD12の一方または両方が、A-V間隔またはV-V間隔に基づいてCRTの送達を制御する調節可能なタイミング間隔を記憶し得る。IMD10は、そのような間隔をメモリ82に記憶し得る。
【0098】
[0115]いくつかの例では、IMD10の処理回路70は、心臓の機械的活動、例えば、収縮中の心臓内での心臓内PDおよびそのセンサの運動を示す、心臓内PD12のセンサからの運動信号を受信し得る。処理回路70は、本明細書に説明される技術によると、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定し、この決定に基づいてPD12によるCRTのための心室ペーシングの送達のためのタイミング間隔または他の制御パラメータ値を制御し得る。処理回路70は、メモリ82に記憶される、および、例えば、いつ信号をPD12に伝送するか、または心室ペーシングパルスを送達するようにいつPDに指示するかを決定するために処理回路によって使用される、タイミング間隔を制御し得る。処理回路70は、通信回路78を介して信号を心臓内PD12に伝送して、心臓内PDによって使用されるタイミング間隔を調節し得る。処理回路70はまた、CRTの有効性を示すもう1つのメトリックの値を、本明細書に説明される技術に従う、CRT中の収縮が融合拍動であるかどうかの決定に基づいて、決定し得る。
【0099】
[0116]CRTの有効性を例証するための既存の技術は、ペーシングされる拍動のパーセンテージを決定することを含む。しかしながら、そのような技術は、ペーシングされた拍動が心臓を捕捉することに成功したかどうかについては説明しない。アイルランド、ダブリンのMedtronic plcから入手可能なEffectivCRT(商標)アルゴリズムを実装するIMDは、例えば、左心室ペーシング陰極から右心室コイル電極まで、そのような電極を含むシステムにおいてなど、特に観察ベクトルにおける、結果として生じる心臓信号のモルフォロジーに基づいて、心臓を捕捉することに実際に効果的であったCRTペーシングのパーセンテージまたは他の量を決定する。EffectivCRT(商標)の例は、「EFFECTIVE CAPTURE TEST」という表題の、2014年6月10日に出願された、Ghoshらに対する米国特許第8,750,998号に説明される。Ghoshらに対する米国特許第8,750,998号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。心房細動中の効果的なCRTを維持するためにEffectivCRT(商標)アルゴリズムを使用する別の例は、「MODULATE PACING RATE TO INCREASE THE PERCENTAGE OF EFFECTIVE VENTRICULAR CAPTURE DURING ATRIAL FIBRILLATION」という表題の、2014年9月18日に公開された、Luらに対する米国特許公開第2014/0277245号に説明される。Luらに対する米国特許公開第2014/0277245号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
[0117]
図6は、
図1A~
図1CのPD12Aまたは
図2のPD12Bに対応し得る、PD12の例示的な構成を例証する機能ブロック図である。例証された例において、PD12は、処理回路90、メモリ92、療法生成回路96、感知回路98、運動センサ100、および通信回路94を含む。メモリ92は、処理回路90によって実行されると、本明細書内ではPD12および処理回路90のものとされる様々な機能(例えば、心臓の機械的活動、例えば、収縮中の心臓内での心臓内PDおよびセンサ100の運動を示すセンサ100からの運動信号を分析すること、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別すること、心収縮が融合拍動であるかどうかを1つまたは複数の特徴に基づいて決定すること、決定に基づいて、療法生成回路96によるCRTのための心室ペーシングの送達のタイミング間隔を制御すること、および決定に基づいて、CRTの有効性を示すもう1つのメトリックの値を決定すること)をPD12および処理回路90に実施させるコンピュータ可読命令を含む。メモリ92は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または任意の他のデジタルもしくはアナログ媒体など、任意の揮発性、不揮発性、磁気、光学、または電気媒体を含み得る。
【0101】
[0118]処理回路90は、マイクロプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または等価の離散もしくはアナログ論理回路のうちの任意の1つまたは複数を含み得る。いくつかの例では、プロセッサ90は、1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、1つもしくは複数のコントローラ、1つもしくは複数のDSP、1つもしくは複数ASIC、または1つもしくは複数FPGA、ならびに他の離散もしくは集積論理回路の任意の組み合わせなど、複数の構成要素を含み得る。本明細書内では処理回路90のものとされる機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせとして具現され得る。
【0102】
[0119]処理回路90は、メモリ92に記憶され得る療法パラメータに従って刺激療法を心臓16に送達するように療法生成回路96を制御する。例えば、処理回路90は、療法パラメータによって指定される振幅、パルス幅、周波数、または電極極性を有する電気パルスを送達するように療法生成回路96を制御し得る。この様式では、療法生成回路96は、電極52および60を介してペーシングパルス(例えば、CRTのための融合ペーシング)を心臓16に送達し得る。PD12は、2つの電極、例えば、電極52および60のみを含み得るが、PD12は、他の例では、3つ以上の電極を利用し得る。PD12は、療法を送達する、および/または患者14から電気信号を検出するために、電極の任意の組み合わせを使用し得る。
【0103】
[0120]療法生成回路96は、PD12のハウジングに搭載された電極52および60に電気的に結合される。例証された例では、療法生成回路96は、電気刺激療法を生成して心臓16に送達するように構成される。例えば、療法生成回路96は、電極52および60を介して心臓16内の心筋の一部分にパルスを送達し得る。いくつかの例では、療法生成回路96は、ペーシング刺激を電気パルスの形態で送達し得る。他の例では、信号発生器が、これらの種類の刺激のうちの1つまたは複数を、正弦波、方形波、または他の実質的に連続した時間信号など、他の信号の形態で送達し得る。療法生成回路96は、充電回路、および1つまたは複数コンデンサなどの1つまたは複数の電荷蓄積デバイスを含み得る。スイッチング回路(図示せず)は、コンデンサが電極52および60にいつ放電されるかを制御し得る。
【0104】
[0121]感知回路98は、心臓16の電気活動、インピーダンス、または別の電気現象をモニタするために、電極52および60のうちの少なくとも一方からの信号をモニタする。感知は、心拍数もしくは心拍変動を決定するため、または心室同期不全、不整脈(例えば、頻脈性不整脈)、もしくは他の電気信号を検出するために行われ得る。感知回路98は、心臓活動を感知するために使用される電極極性を選択するためにスイッチング回路を含み得る。3つ以上の電極を有する例では、処理回路90は、センス電極として機能する、即ち、感知構成を選択する電極を、感知回路98内のスイッチング回路を介して選択し得る。感知回路98は、1つまたは複数の検出チャネルを含み得、1つまたは複数の検出チャネルの各々が、心臓信号の検出のための選択された電極構成に、その電極構成を介して結合され得る。例えば、1992年6月2日に出願された、「APPARATUS FOR MONITORING ELECTRICAL PHYSIOLOGIC SIGNALS」という表題の、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Keimelらに対する米国特許第5,117,824号に説明されるように、いくつかの検出チャネルは、R波などの心臓イベントを検出し、そのようなイベントの発生の標示を処理回路90に提供するように構成され得る。処理回路90は、データ/アドレスバスを介して信号を提供することによって、感知回路98の機能性を制御し得る。
【0105】
[0122]特定の種類の心臓律動(心臓イベントの種類)を検出および識別することに加えて、感知回路98はまた、電位図または心臓イベントの他の時間ベースの標示を生成するために、検出された内因性信号をサンプリングし得る。処理回路90はまた、他の心室に植え込まれるPDなど、例えば、心臓16の異なる腔に植え込まれる異なるPDからのペーシングパルスの送達を協調させることが可能であり得る。例えば、処理回路90は、感知回路98を介した他のPDからの送達パルスを識別し、パルスタイミングを更新し得る。他の例では、PDは、通信回路94および/または搬送波(刺激波形など)を通じた命令を介して互いと通信し得る。
【0106】
[0123]メモリ92は、様々な動作パラメータ、療法パラメータ、感知および検出されたデータ、ならびに患者14の療法および治療に関連した任意の他の情報を記憶するように構成され得る。
図6の例では、メモリ92は、感知されたEGM、運動センサ100から受信される信号、IMD10からの通信、CRTペーシングパルスのタイミングを制御するタイミング間隔または他のCRT制御パラメータ値などの療法パラメータ値、CRT中の心収縮が融合であったかまたは他の拍動であったかを示す情報、およびCRT有効性を示す1つまたは複数のメトリックの値を記憶し得る。いくつかの例では、メモリ92は、データが、IMD10、別の植え込まれたデバイス、または外部デバイス24にアップロードされ得るまでデータを記憶するための一時バッファとしての機能を果たし得る。
【0107】
[0124]運動センサ100は、PD12のハウジング内に含まれ得、1つもしくは複数の加速度計、ジャイロスコープ、電界もしくは磁界センサ、またはPD12の運動および/もしくは位置を検出することができる他のデバイスを含み得る。例えば、運動センサ100は、空間内の任意の方向の加速を検出するように構成される3軸加速度計(3次元加速度計)を含み得る。特に、3軸加速度計は、心臓イベントおよび/またはノイズを示すものであり得るPD12運動を検出するために使用され得る。例えば、処理回路90は、不整脈を確認または検出するために運動センサ100からの加速度をモニタし得る。PD12は心臓16の腔壁と共に動き得るため、加速度における検出された変化はまた、収縮を示すものであり得る。したがって、PD12は、センサ100からの信号に基づいて、心拍数を識別し、感知回路98を介して感知される心室同期不全を確認するように構成され得る。
【0108】
[0125]処理回路90が、CRTのための心室ペーシングパルスを送達するように療法生成回路96を制御するとき、処理回路90は、心収縮により変動する信号を生成するように運動センサ100も制御し得る。いくつかの例では、運動センサ100は、信号を実質的に連続的に生成し得る。心室ペーシングパルスが送達される各心周期の間、処理回路90は、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴を識別し得る。処理回路90は、収縮が融合拍動であるか、または他の種類の拍動、例えば、内因性の拍動もしくは完全にペーシングされた拍動であるかを、1つまたは複数の特徴に基づいて決定し得る。
【0109】
[0126]心収縮の1つまたは複数の特徴は、例として、心収縮中の運動信号のスロープ、収縮中の運動信号の振幅、心収縮中の信号の最大値、心収縮中の信号の最小値、心収縮中の最大値と最小値との比、または心収縮中の信号の極性のうちの1つまたは複数を含み得る。
図11Aおよび
図11Bに関してなど、以下により詳細に説明されるように、信号内の心収縮の1つまたは複数の特徴は、収縮中の、発生地点に対する運動の量または方向のうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの例では、運動の量は、心収縮中の運動の一次軸以外の少なくとも1つの方向にある、例えば、心収縮中の運動の一次軸に直交する少なくとも1つの平面における運動の量である。いくつかの例では、目的の運動は、心収縮中の運動の一次軸に直交する平面における径方向運動であり得る。
【0110】
[0127]1つまたは複数のセンサ100が加速度計以外である例において、本明細書に説明される技術を使用して心収縮を評価するために使用される特徴は、加速度計によって提供されるものと同じであるか、または異なり得る。例えば、ジャイロスコープは、加速度計によって提供されるものとは異なる回転機械情報を提供し得るが、収縮を評価するために同様に使用され得る。例えば、テンプレート信号または値は、そのような信号に基づいて決定され、現在の信号または値と比較され得る。
【0111】
[0128]比較的健康な心臓の左心室収縮中、すべての左心室壁は、同期的に、および同様の力で、短くなる。そのような収縮は、房室平面および左心室尖部を互いに向かって引っ張る。房室平面および左心室尖部の互いに向かう動きが、心収縮中の運動の一次軸を規定する。
【0112】
[0129]すべての左心室壁の完全に同期した活性化の場合、尖部において合計力平衡が存在し、結果として生じる尖部の径方向運動成分は最小限であるか、または存在しない。対照的に、非同期収縮中、「心尖揺動」(例えば、まず自由壁に向かい、後に隔膜に向かう、収縮期中の尖部の動き)、または一次軸に直交する方向における尖部もしくは他の心臓組織の他の運動が観察され得る。いくつかの研究は、心尖揺動の観察が、その後のCRT反応の前兆となるということを示している。心尖揺動は、心エコー検査によって測定されてきた。例えば、「4チャンバービュー」から、尖部は、収縮期の間、左心室の側壁または自由壁に向かって5mm動く。4チャンバービューは、心臓の2次元標準化心エコー視覚表示である。4チャンバービューは、(左)心腔の尖部から心臓を視覚表示する。心臓を通る視覚表示平面は、4つすべての心腔(右心房、左心房、右心室、および左心室)が同時に視覚表示されるようなやり方で、心臓の尖部から向けられる。
【0113】
[0130]尖部またはその近くに位置付けられた運動センサ100は、例えば、PD12がその場所に植え込まれることから、心尖揺動を検出するように構成され得る。しかしながら、他の場所、例えば、心室自由壁または隔膜に植え込まれた運動センサ100はまた、心収縮中の運動の一次軸以外の方向における運動を検出し得る。さらに、運動センサ100は、心周期の原点から離れる任意の径方向における運動または変位を検出し得る。
【0114】
[0131]いくつかの例では、信号内の心収縮の1つまたは複数の1つまたは複数の特徴は、1つまたは複数のテンプレートに対する心収縮中の信号の比較から生じる1つまたは複数の値を含む。そのような値は、信号テンプレート間の差を含み得、これは、信号が、テンプレートに「一致するか」、例えば、テンプレートに十分に類似するかどうかを決定するためにしきい値と比較され得る。1つまたは複数テンプレートは、メモリ92(またはシステム8の別のメモリ)に記憶され得る。1つまたは複数テンプレートは、特定の患者の既知の分類、または1つもしくは複数の類似する患者の母集団からの既知の分類のいずれかの1つまたは複数の以前の拍動中の運動信号に基づいて(所与の分類の複数の既知の拍動について信号を平均することによってなど)、処理回路90または他の処理回路によって生成され得る。1つまたは複数のテンプレートは、内因性拍動テンプレート、完全にペーシングされた拍動テンプレート、または融合拍動テンプレートのうちの1つまたは複数を含み得、処理回路は、所与の収縮を、テンプレートが信号に最も一致する融合拍動、内因性拍動、または完全にペーシングされた拍動のうちの1つとして特徴づけ得る。
【0115】
[0132]さらには、テンプレートは、収縮中の1つまたは複数のセンサからの、いくつかの値を表す、1つまたは複数の実質的に連続した時間信号(またはそのような信号の部分)の形態をとる必要はない。むしろ、テンプレートは、本明細書に開示される収縮特徴のうちの任意の1つまたは複数についてのテンプレート値の形態をとり得る。しかし、テンプレート値は、テンプレート信号に基づいて決定されること、あるいは、特定の患者の既知の分類、または1つもしくは複数の類似する患者の母集団からの既知の分類のいずれかからの1つまたは複数の以前の拍動中に収集される運動信号から別途決定されること(所与の分類の複数の既知の拍動について信号を平均することによってなど)を必ずしも必要としない。テンプレート値は、例として、心収縮中の運動信号のスロープ、収縮中の運動信号の振幅、心収縮の信号の最大値、心収縮中の信号の最小値、心収縮中の最大値と最小値との比、心収縮中の信号の極性、または、心尖揺動を含み得る、運動の一次軸に直交などの1つもしくは複数の特定の方向における運動の量、といった値を含み得る。テンプレートは、複数の収縮特徴についてのテンプレート値を含み得る。心臓内PD12の処理回路90の文脈において説明されるが、本明細書に説明される任意の1つまたは複数のデバイスの処理回路は、収縮を分類するためにテンプレートを同様に使用し得る。
【0116】
[0133]通信回路94は、本明細書に説明されるように、外部デバイス24またはIMD10などの別のデバイスとTCCまたはRF信号を介して通信するための、任意の好適なハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、通信回路94は、電極52および60を介したIMD10とのTCC通信のために構成され得る。PD12は、IMD10を介して外部デバイス24と通信し得るか、または、通信回路94は、例えば、アンテナを介した、外部デバイス24とのRF通信のために構成され得る。いくつかの例では、PD12は、アイルランド、ダブリンのMedtronic plcによって開発されたMedtronic CareLink(登録商標)ネットワークなどのネットワーク、または患者14を臨床医と繋ぐ何らかの他のネットワークとさらに通信し、それを通じてアラートを出すために、外部デバイス24に信号を送り得る。PD12は、自発的に、またはユーザからのインテロゲーション要求に応答して、情報をネットワークに伝送し得る。
【0117】
[0134]本明細書に説明されるように、PD12の構成には多数の変形形態が存在し得る。1つの例において、PD12は、患者14の心臓16内に植え込まれるように構成されるハウジング、ハウジングに結合される1つまたは複数の電極(例えば、電極52および60)、ハウジングを心臓16の組織に装着するように構成される固定機序62、1つまたは複数の電極を介して患者14の心臓16からの電気信号を感知するように構成される感知回路98、および1つまたは複数の電極を介して患者14の心臓16に療法を送達するように構成される信号生成回路96を含む。PD12はまた、CRTを心臓16に送達するようにPD12に要求するIMD10からの通信メッセージを受信するように構成される処理回路90を含み得、IMD10は、患者14の胸郭の外側に植え込まれるように構成される。処理回路90はまた、感知した電気信号に基づいて、CRTを心臓16に送達すべきかどうかを決定し、その決定に応答して、CRT療法を送達するように信号生成回路96に命令するように構成され得る。例えば、処理回路90は、感知回路98が、タイミング間隔、例えば、A-V間隔の満了の前に内因性R波の検出を示す場合、特定の心周期の間、CRTペーシングパルスの送達を保留し得る。処理回路90が、ペーシングパルスを送達するように信号生成回路96を制御する場合、処理回路90または1つもしくは複数の他のデバイスの他の処理回路は、本明細書に説明されるように、運動センサ100からの信号を分析して心収縮を分類し得る。
【0118】
[0135]
図7は、外部デバイス24の例示的な構成を例証する機能ブロック図である。
図7に示されるように、外部デバイス24は、処理回路110、メモリ112、ユーザインタフェース114、および通信回路116を含み得る。外部デバイス24は、PD12および/またはIMD10との通信、例えば、PD12および/またはIMD10のプログラミングのための専用ソフトウェアを有する専用ハードウェアデバイスであってもよい。代替的に、外部デバイス24は、外部デバイス24がPD12および/もしくはIMD10をプログラムすること、ならびに/またはPD12および/もしくはIMD10と別途通信することを可能にするアプリケーションを実行する市販品のコンピューティングデバイスであってもよい。
【0119】
[0136]ユーザは、PD12および/またはIMD10の動作パラメータを構成し、PD12および/またはIMD10からデータを取得するために外部デバイス24を使用し得る。1つの例において、外部デバイス24は、PD12およびIMD10の両方と直接通信し得る。他の例では、外部デバイス24は、PD12およびIMD10のうちの一方と通信し得、そのデバイスが、任意の命令または情報を他方のデバイスへ、または他方のデバイスから中継し得る。臨床医は、ユーザインタフェース114を介して外部デバイス24と対話し得、ユーザインタフェース114は、グラフィカルユーザインタフェースをユーザに提示するためにディスプレイを、およびユーザからの入力を受信するためのキーパッドまたは別の機序を含み得る。加えて、ユーザは、ショックが送達されていること、任意の他の療法が送達されていること、または患者14の処置に関連した任意の問題点もしくは問題を示す、IMD10からのアラートまたは通知を受信し得る。
【0120】
[0137]処理回路110は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、プログラマブル論理回路等の形態をとり得、本明細書内で処理回路110のものとされる機能は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせとして具現化され得る。メモリ112は、本明細書内では外部デバイス24に帰せられる機能性を処理回路110に提供させる命令、および本明細書内では外部デバイス24に帰せられる機能性を提供するために処理回路110によって使用される情報を記憶し得る。メモリ112は、RAM、ROM、CD-ROM、ハードもしくはフロッピー磁気ディスク、EEPROM等など、任意の固定式またはリムーバブルの磁気、光学、または電気媒体を含み得る。メモリ112はまた、メモリ更新を提供するために使用され得るか、またはメモリ容量を増大させる、リムーバブルメモリ部を含み得る。リムーバブルメモリはまた、患者データが別のコンピューティングデバイスに容易に転送されること、または外部デバイス24が別の患者のための療法をプログラムするために使用される前に取り外されることを可能にし得る。
【0121】
[0138]外部デバイス24は、RF通信または近位誘導的インタラクションを使用するなどして、PD12および/またはIMD10とワイヤレスで通信し得る。このワイヤレス通信は、内部アンテナまたは外部アンテナに結合され得る通信回路116により可能である。外部デバイス24に結合される外部アンテナは、
図1に関して上に説明されるように、心臓16の上、または意図する移植片の場所に置かれ得るプログラミングヘッドに対応し得る。通信回路116は、
図5の通信回路78のような回路によって構成され得る。
【0122】
[0139]通信回路116はまた、ワイヤレス通信技術、または有線接続を通じた直接通信を介して別のコンピューティングデバイスと通信するように構成され得る。外部デバイス24と別のコンピューティングデバイスとの通信を促進するために用いられ得るローカルワイヤレス通信技術の例は、802.11またはBluetooth仕様セットに従うRF通信、例えば、IrDA標準に従う、赤外線通信、または他の標準もしくは専売テレメトリプロトコルを含む。外部デバイス24と通信状態にある追加のコンピューティングデバイスは、IMD10および/またはPD12から取得される情報を処理することができるサーバなどのネットワーク化デバイスであってもよい。
【0123】
[0140]いくつかの例では、処理回路110は、通信回路116を使用したPD12との直接または間接通信を介してPD12のセンサ100から信号を受信し得る。信号を使用して、処理回路110は、全体または部分が、信号に基づいて拍動を融合または他のものとして分類すること、拍動の分類に基づいて、PD12によるCRTの送達のタイミングを計るためのIMD10および/またはPD12により使用されるタイミング間隔または他の制御パラメータ値を制御すること、ならびに融合拍動であった拍動の量、したがって、CRTの有効性、を示す1つまたは複数のメトリックの値を決定すること、のうちの1つまたは複数を含む、CRTを適合させ評価するための本明細書に説明される方法のうちのいずれかを実施し得る。いくつかの例では、処理回路110は、運動信号以外の収縮の特徴についての値、または特徴値以外の拍動の分類を受信し、受信した特徴または分類情報を使用して、本明細書に説明される方法のいくつかの部分を実施し得る。
【0124】
[0141]
図8は、1つの例に従う、サーバなどの外部デバイス142、ならびに、ネットワーク150を介してIMD10、PD12、および外部デバイス24に結合される、1つまたは複数のコンピューティングデバイス144A~144Nを含む、システム140を例証するブロック図である。この例では、IMD10は、通信回路を使用して、第1のワイヤレス接続を介して外部デバイス24と通信し、第2のワイヤレス接続を介してアクセスポイント152と通信する。PD12は、通信回路を使用して、第1のワイヤレス接続を介して外部デバイス24と通信し、第2のワイヤレス接続を介してアクセスポイント152と通信する。IMD10およびPD12は、共有の第3のワイヤレス接続を介して互いと通信する。
図8の例では、アクセスポイント152、外部デバイス24、外部デバイス142、およびコンピューティングデバイス144A~144Nは、相互接続され、ネットワーク150を通じて互いと通信することができる。いくつかの場合において、アクセスポイント152、外部デバイス24、外部デバイス142、およびコンピューティングデバイス144A~144Nのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のワイヤレス接続を通じてネットワーク150に結合され得る。IMD10、PD12、外部デバイス24、外部デバイス152、およびコンピューティングデバイス144A~144Nは、各々、本明細書に説明されるものなどの様々な機能および動作を実施し得る、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、プログラマブル論理回路等などの1つまたは複数の処理回路を備え得る。
【0125】
[0142]アクセスポイント152は、電話ダイヤルアップ、デジタル加入者線(DSL)、またはケーブルモデム接続など、様々な接続のいずれかを介してネットワーク150に接続するデバイスを備え得る。他の例では、アクセスポイント152は、有線またはワイヤレス接続を含む異なる形態の接続を通じてネットワーク150に結合され得る。いくつかの例では、アクセスポイント152は、外部デバイス24、PD12、および/またはIMD10と通信し得る。アクセスポイント152は、患者14と同一場所に位置付けられ得る(例えば、患者14と同じ室内または同じ敷地内)か、または患者14から遠隔に配置され得る。例えば、アクセスポイント152は、患者の自宅に位置付けられるホームモニタであり得るか、または患者14による持ち運びのためにポータブルである。
【0126】
[0143]動作中、IMD10および/またはPD12は、様々な形態の診断データを収集、測定、および記憶し得る。例えば、IMD10および/またはPD12は、EGMおよび運動信号を収集し、異なるCRT構成およびA-V間隔を決定し得る。特定の場合において、IMD10および/またはPD12は、収集した診断データを直接分析し、任意の対応するレポートまたはアラートを生成し得る。しかしながら、いくつかの場合において、IMD10および/またはPD12は、遠隔処理および分析のために、外部デバイス24、アクセスポイント152、および/または外部デバイス142に、ワイヤレスで、またはアクセスポイント152およびネットワーク150を介してのいずれかで、診断データを送信し得る。例えば、IMD10および/またはPD12は、外部デバイス24に、内因性AV伝導の損失またはCRT捕捉(融合)が検出されたかどうかを示すデータを送信し得る。外部デバイス24は、データを分析した後に、レポートまたはアラートを生成し得る。
【0127】
[0144]別の例では、IMD10および/またはPD12は、アクセスポイント152およびネットワーク150を介して、外部デバイス142に、収集したEGMおよび運動信号データ、システム保全性標示、ならびに任意の他の関連した生理学的データまたはシステムデータを提供し得る。外部デバイス142は、1つまたは複数の処理回路148を含む。いくつかの場合において、外部デバイス142は、そのようなデータを要求し得、いくつかの場合において、IMD10および/またはPD12は、そのようなデータを自動的または定期的に外部デバイス142に提供し得る。入力/出力デバイス146を介して診断データを受信すると、外部デバイス142は、そのデータを分析し、変更されたCRTパラメータの潜在的必要性があり得るという決定時に、またはCRTの有効性を示すために、レポートまたはアラートを生成することができる。
【0128】
[0145]1つの例において、外部デバイス142は、IMD10、PD12、および/または外部デバイス24から収集された情報のための安全な記憶場所を備え得る。この例では、ネットワーク150は、インターネットネットワークを含み得、臨床医などの訓練を受けた専門家は、コンピューティングデバイス144A~144Nを使用して外部デバイス142上の記憶されたデータに安全にアクセスし得る。例えば、訓練を受けた専門家は、外部デバイス142上の記憶された情報にアクセスするためにユーザ名およびパスワードを入力する必要があり得る。1つの実施形態において、外部デバイス142は、アイルランド、ダブリンのMedtronic plcによって提供されるMedtronic CareLink(登録商標)サーバであってもよい。
【0129】
[0146]いくつかの例では、アクセスポイント152、サーバ142、またはコンピューティングデバイス144のうちの1つまたは複数の処理回路およびメモリ、例えば、サーバ142の処理回路148およびメモリは、IMD10および/またはPD12の処理回路およびメモリに帰せられる一部またはすべての機能性を提供するように構成され得る。例えば、サーバ142は、ネットワーク150ならびにアクセスポイント152および外部デバイス234のうちの1つまたは複数を介したPD12との通信を介してPD12のセンサ100から信号を受信するように構成され得る。信号を使用して、処理回路146は、全体または部分が、信号に基づいて拍動を融合または他の拍動として分類すること、拍動の分類に基づいて、PD12によるCRTの送達のタイミングを計るためのIMD10および/またはPD12により使用されるタイミング間隔または他の制御パラメータ値を制御すること、ならびに融合拍動であった拍動の量、したがって、CRTの有効性、を示す1つまたは複数のメトリックの値を決定すること、のうちの1つまたは複数を含む、CRTを適合させ評価するための本明細書に説明される方法のうちのいずれかを実施し得る。外部デバイス142は、ネットワーク150を介して、CRTのための心室ペーシングパルスタイミングを制御するタイミング間隔についての更新された値をIMD10および/またはPD12に通信し得る。いくつかの例では、IMD10および/またはPD12へのそのような通信は、コンピューティングデバイス144を介して認証のために臨床医へ更新された値を提示した後であり得る。いくつかの例では、外部デバイス142の処理回路148は、本明細書に説明される技術を使用してCRTの有効性を示す1つまたは複数のメトリックの値を決定し得るか、またはそのような値をコンピューティングデバイス144を介して臨床医に別途報告し得る。いくつかの例では、処理回路148は、運動信号以外の収縮の特徴、または特徴以外の拍動の分類を受信し、受信した特徴または分類情報を使用して、本明細書に説明される方法のいくつかの部分を実施し得る。
【0130】
[0147]
図9は、本開示の1つまたは複数の態様に従う、PD12を通じてCRTを送達するための例示的なプロセスを例証するフロー図である。
図8は、融合ペーシングなどのCRTが、患者内に存在する心室同期不全に対処するために、IMD10と通信状態にあるPD12を通じて心臓組織に送達される方法200を例証する。方法200は、IMD10およびPD12が患者内に植え込まれている間、またはその後に開始する。方法200は、マスタースレーブ通信モードにあるIMD10およびPD12を使用し得るが、他の通信手段も同様に適用され得る。追加的に、方法200は、PD12が左心室の内壁に固着され、IMD10とワイヤレス通信状態にある例に限定されない。他の構成が使用され得る。例えば、LVの代わりにRVが融合ペーシングを受け得る。追加的に、PD12は、LVおよび/またはRVの外壁に置かれ得る。さらには、PD12、およびPD12の処理回路90が、
図9の例に例証されるいくつかの機能を実施する例の文脈で説明されるが、他の例では、これらの機能のうちの1つまたは複数は、IMD10、外部デバイス24、外部デバイス142、またはコンピューティングデバイス144など、PD12と通信する1つまたは複数の他のデバイスによって、例えば、そのようなデバイスの処理回路によって、実施され得る。
【0131】
[0148]例示的な方法200によると、運動信号が、例として、加速度計またはジャイロスコープであり得る、センサ100から、PD12の処理回路90によって受信される(202)。ここでも、本明細書に論じられるように、運動信号は、IMD10、外部デバイス24、外部デバイス142、およびコンピューティングデバイス144を含むがこれらに限定されない、他のデバイスの処理回路によって受信され得る。そのようなデバイスにおける処理回路は、運動信号を受信することができる。さらに、運動信号は、いくつかの例では、2つ以上の運動信号、例えば、多軸加速度計の2つ以上の軸の各々についての信号であってもよい。
【0132】
[0149]処理回路90は、運動信号内の収縮を識別し(204)、収縮の特徴を識別する(206)。収縮は、送達された心室ペーシングパルスに対する予測されるタイミング関係にある特定の振幅の識別に基づいて識別される。収縮の特徴は、例えば、運動の量もしくは大きさ、または、収縮中の運動の一次軸に直交する平面においてなど、ある方向における変位を含み得る。いくつかの例では、運動の量は、収縮中の様々な時間点における、収縮の発生地点からの距離の合計によって、あるいは、発生地点からの最大距離または別の1つもしくは複数の距離によって特徴づけられ得る。収縮信号の例示的な特徴は、
図12に関してさらに詳細に例証および説明される。
【0133】
[0150]処理回路90は、収縮の識別された特徴を1つまたは複数の基準と比較し、これは、本明細書に説明されるように、特徴の1つまたは複数のテンプレート値との比較を含み得る(208)。比較に基づいて、処理回路90は、収縮を、融合拍動または別の拍動として分類し得る。例証された例では、処理回路90は、収縮を、融合拍動、完全にペーシングされた拍動、または内因性拍動として特徴づける(210)。PD12は、各ペーシング後の心収縮を解析し、これをペーシングタイミングのその後の最適化のために使用し得る。
【0134】
[0151]完全にペーシングされた拍動は、一方の心室に送達される心室ペーシングパルスが、他方の心室からの内因性の脱分極と融合するのではなく、他方の心室を捕捉した拍動を指し得る。完全にペーシングされた拍動は、ペーシングパルスが送達されるのが早すぎたことを示唆する。完全にペーシングされた拍動としての収縮の分類に応答して、処理回路は、CRTペーシングのためのタイミング間隔、例えば、A-LV間隔などのA-V間隔を増大させ得る(212)。他の例では、完全にペーシングされた拍動としての収縮の分類に応答して、処理回路は、V-V間隔を減少させることによってなど、A-LV間隔を増大させることによる以外の様式で、LVの前興奮の程度を減少させ得る。例えば、処理回路は、A-V間隔を約10ms増大させ得るか、またはV-V間隔を約10ms減少させ得る。
【0135】
[0152]CRTのための心室ペーシングパルスの送達後の内因性拍動(偽融合とも称される)の発生は、ペーシングパルス送達されるのが遅すぎたことを示唆する。偽融合は、ペーシングからの最小限の寄与で、または寄与なしに、内因性電気活動のほぼ全体を通じた心臓組織の電気活性化を伴う。融合は、典型的には、2つの異なる焦点、通常、PDからの外来刺激および自然刺激、によって開始される心筋の脱分極によって形成される波複合により特徴づけられる一方、偽融合は、典型的には、自然刺激によって開始される心筋の脱分極によって形成される波複合により特徴づけられるが、脱分極に寄与しない外来刺激が、自然の波複合にペーシングアーチファクトを追加する。
【0136】
[0153]偽融合は、ペーシングパルスが心室ペーシング中に自然発生のQRS複合と完全に一致するときに起こる。電極周辺の組織がすでに自然発生的に脱分極しており、その不応期にある場合、ペーシング刺激は非効果的であり得る。心臓EGMに基づいて偽融合拍動を検出するための技術が提案されてきた。しかしながら、本開示の技術によると、偽融合拍動は、運動信号の1つまたは複数の特徴に基づいて検出され得る。
【0137】
[0154]内因性拍動としての収縮の分類に応答して、処理回路は、CRTペーシングのためのタイミング間隔、例えば、A-LV間隔などのA-V間隔を減少させ得る(214)。他の例では、内因性拍動としての収縮の分類に応答して、処理回路は、V-V間隔を増大させることによってなど、A-LV間隔を減少させることによる以外の様式で、LVの前興奮の程度を増大させ得る。例えば、処理回路は、A-V間隔を約10ms減少させ得るか、またはV-V間隔を約10ms増大させ得る。両室ペーシングが送達されるような例など、いくつかの例では、V-V間隔は、本明細書に説明されるように維持および調節され得る。例えば、LVペーシング場所の近くに遅延された伝導がある場合、ペーシングされたRV活性化は、LVが「ヘッドスタート」を与えられない限り、ペーシングされたLV活性化より優位に立つ(例えば、最終的に不十分な融合)。この場合、V-V遅延は、LVを前興奮させるように設定および修正され得る。
【0138】
[0155]
図9に例証されるていないが、処理回路90はまた、感知回路98からのR波標示の受信、およびペーシングパルスの送達の保留に基づいて、タイミング間隔を減少させ得る(または心室の前興奮の程度を別途増大させ得る)。この減少は、ペーシングパルスが内因性として分類される収縮によって送達されるときに適用される減少と同じであり得るか、または異なり得る。例えば、処理回路は、A-V間隔を約10ms減少させ得る(またはV-V間隔を約10ms増大させる)。
図9によって例証されるように、処理回路90は、収縮を融合拍動として分類することに基づいて、タイミング間隔を変更せずにしておくことができる。
【0139】
[0156]
図9の例に例証されるように、処理回路90はまた、収縮の分類に基づいて、例えばメモリ92に記憶される収縮データを更新し得る(216)。収縮データは、融合拍動を結果としてもたらすペーシングされた心周期のパーセンテージまたは他の量など、CRTの有効性を示す1つまたは複数のメトリックの値を含み得る。様々な例において、記憶された心収縮データは、IMD10、PD12、外部デバイス24、外部デバイス152、およびコンピューティングデバイス144A~144Nを含むがこれらに限定されない、いくつかの場所にあり得る。いくつかの例では、記憶された収縮データは、ユーザへの提示のために、外部デバイス24、外部デバイス142、またはコンピューティングデバイス144に提供され得る。
【0140】
[0157]
図9の例示的な方法は、拍動ごとに、例えば、PD12がペーシングパルスを送達する各心周期にわたって、または、時間期間スケジュールおきのYのうちのXサイクルもしくはXサイクルに従うなど、少ない頻度で、またはユーザからの命令に応答して、実施され得る。例えば、
図9の方法は、10サイクルのうちの1サイクル、または毎分1サイクルにわたって、実施され得る。
【0141】
[0158]他の例では、
図9の方法は、例えば、IMD10による、心房細動(AF)の検出に応答して実施され得る。損なわれていないAV伝導を伴う患者内でのAF中、AVノードを通過する無作為のインパルスは、心室の無秩序な活性化タイミングを結果としてもたらす。結果として、AF中に一貫したペーシングタイミングおよび高品質のCRTを維持することは非常に困難である。特定の例では、IMD10は、P波についてモニタし、適時にペーシングするようにPD12に命令する。AFが始まると、IMD10は、AFを検出し、患者がAFにあるということをPD12に通信し得る。この通信に応答して、PD12は、運動信号の分析を含む
図9の例示的な方法を開始して、効果的なペーシングタイミングを維持し、AF中にCRTを捕捉し得る。
【0142】
[0159]AFが検出される例において、ペーシングは、心房トラッキングモードから非心房トラッキングモードへと切り替わり得る。非心房トラッキングモードでは、心室ペーシングの送達を制御するために使用されるタイミング間隔は、前の心周期のペーシングされたまたは内因性の心室脱分極からの補充収縮間隔である。心房同期心室ペーシングがIMD10からの信号に基づいて心臓内PD12によって送達される例では、IMD10は、送信を停止し得、および/またはPD12は、AFに応答するそのような信号を無視し得る。
【0143】
[0160]
図9の方法は、AF中に実施され得るが、間隔を増大させること(212)または減少させること(214)は、補充収縮間隔を指し得る。AF中に補充収縮間隔を増大または減少させる例示的な量は、約10ms~約50msである。このシナリオでは、処理回路はまた、速すぎるペーシングを避けるために、完全にペーシングされた拍動の検出(212)に応答して、比較的小さい量、例えば、約10msほど補充収縮間隔を増大させ得る。
【0144】
[0161]いくつかの例では、医療デバイスシステム8は、IMD10としてEV-ICDおよびPD12としてLVペーシングデバイスを備える心臓再同期療法除細動器(CRT-D)システムである。EV-ICDは、P波を感知し、P波のタイミングをLVペーシングデバイスに通信し、LVペーシングデバイスが、ペーシングの最良のA-V遅延を決定する。選択されたA-V遅延が長すぎた場合、LVペーシングデバイスは、内因性の脱分極(例えば、感知されたイベント)を感知することができるか、または偽融合が発生したことを、速度計を通じて決定することができる。これは、将来のA-V間隔が短縮される必要があることを暗示する。LVペーシングデバイスは、偽融合または感知されたイベントを回避する最長のA-V間隔を達成するためにタイミング間隔を自動的に調節することができ、こうして融合を維持する。いくつかの例では、ペーシングデバイスはまた、最適な融合加速度計パターンよりも、完全にペーシングされた加速度計パターンを観察することによってあまりにも短いA-V間隔を区別し得る。これは、将来のA-V間隔を増大させる必要性を暗示する。この方法は、たまに起こるペーシングされた拍動のスキッピングを回避し、機械的収縮の直接測定を使用し、拍動ごとのA-V間隔を調節することができる。
【0145】
[0162]別の例では、PD12は、効果的な捕捉がそのLV EGMに基づいて発生するかどうかを決定することができない場合がある(ペーシングデバイスからのEGMは、ニアフィールドであるが、ファーフィールドEGMは、効果的な捕捉をより良好に解析し得る)。しかしながら、PD12には、3次元加速度計またはジャイロスコープなどの運動センサ100が装備される。加速度計は、機械的収縮パターンに関するフィードバックを提供する。ペーシングデバイスは、内因性拍動について、および別個に、効果的な捕捉拍動について、加速度計パターンを学習することができる。AF中、ペーシングデバイスがペースを送達するが、内因性加速度計パターンが見られる場合、これは、偽融合が発生したことを示唆し、AF伝導をオーバードライブするためにペーシングレートを増大させる必要性を示唆する。ペーシングデバイスが内因性心室活性化を感知する場合、これもまた、ペーシングレートを増大させる必要性を示唆する。代替的に、ペーシングデバイスが、(加速度計を介して)ペースの後に効果的な捕捉拍動を感知する場合、これは、効果的な捕捉が発生していること、および将来のペーシングレートが、速すぎるペーシングを回避するために少量減少され得ることを示唆する。この拍動ごとのアセスメントおよびペーシングレートの調節は、ペーシングレートを最小限にすることを試みると同時に、AF中の最大の効果的な捕捉を結果としてもたらす。
【0146】
[0163]方法200は、左心室内に置かれるPD12に関して説明されるが、当業者は、本開示が、IMD10がPD12と組み合わせて使用される多くの異なる実施形態に適用され得ることを理解する。例えば、PD12は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2013年5月6日に出願された、「IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE SYSTEM HAVING IMPLANTABLE CARDIAC DEFIBRILLATOR SYSTEM AND SUBSTERNAL LEADLESS PACING DEVICE」という表題の米国仮特許出願第61/819,946号(代理人整理番号C0005682.USP1)、2013年5月6日に出願された、「ANCHORING AN IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE WITHIN A SUBSTERNAL SPACE」という表題の米国仮特許出願第61/820,024号(代理人整理番号C0005684.USP1)、ならびに2013年5月6日に出願された、「SYSTEMS AND METHODS FOR IMPLANTING A MEDICAL ELECTRICAL LEAD WITHIN A SUBSTERNAL SPACE」という表題の米国仮特許出願第61/820,014号(代理人整理番号C0005685.USP1)に説明されるように、心臓の腔内または胸骨下/胸骨後に植え込まれ得、これら特許のすべてが参照により本明細書に組み込まれる。IMDは、患者の血管系および/または心臓内にいかなるリードも植え込まれることなく、患者にショックを送達するように構成される、
[0164]
図10は、1つまたは複数の心収縮特徴の評価に基づいて心臓再同期療法のパラメータ値を決定するための例示的なプロセスを例証するフロー図である。方法300は、マスタースレーブ通信モードにあるIMD10およびPD12を使用し得るが、他の通信手段も同様に適用され得る。追加的に、方法200に類似して、方法300は、PD12が左心室の内壁に固着され、IMD10とワイヤレス通信状態にある例に限定されない。他の構成が、
図9の方法200により論じられるように使用され得る。さらには、PD12、およびPD12の処理回路90が、
図10の例に例証されるいくつかの機能を実施する例の文脈で説明されるが、他の例では、これらの機能のうちの1つまたは複数は、IMD10、外部デバイス24、外部デバイス142、またはコンピューティングデバイス144など、PD12と通信する1つまたは複数の他のデバイスによって、例えば、そのようなデバイスの処理回路によって、実施され得る。
【0147】
[0165]
図10は、本明細書に説明される技術を使用して異なるパラメータ値に従うCRTの送達から生じる収縮をモニタしながら、1つまたは複数のCRT制御パラメータの複数の値をテストするための例示的な方法を例証する。所望の収縮を提供するCRT制御パラメータの値、例えば、1つまたは複数の収縮特徴の所望の値は、CRT療法の進行中の送達のために選択され得る。
図10の例示的な方法は、システム8の植え込みのすぐ後に、病院訪問時に、および/または遠隔コマンドに応答してもしくは定期的に自動で、実施され得る。
【0148】
[0166]
図10の例によると、例えば、AV遅延、VV遅延、およびペーシング構成を含む、1つまたは複数のパラメータについての値(値の範囲など)は、テストするためにCRTパラメータ空間から選択される(302)。パラメータ空間が一旦確立されると、パラメータ値空間からのパラメータ値がテストされる(304)。
【0149】
[0167]
図9のステップ206に類似して、処理回路90は、収縮の特徴を識別する(306)。収縮は、送達された心室ペーシングパルスに対する予測されるタイミング関係にある特定の振幅の標示に基づいて識別され得る。収縮の特徴は、例えば、運動の量もしくは大きさ、または、収縮中の運動の一次軸に直交する平面においてなど、ある方向における変位を含み得る。いくつかの例では、運動の量は、収縮中の様々な時間点における、収縮の発生地点からの距離の合計によって、あるいは、発生地点からの最大距離または別の1つもしくは複数の距離によって特徴づけられ得る。収縮信号の例示的な特徴は、
図12に関してさらに詳細に例証および説明される。
【0150】
[0168]処理回路90は、本明細書に説明されるように、パラメータ値空間から選択されたパラメータ値と関連した特徴値を記憶する(308)。値は、ローカルに記憶され得るか、タイミングを直接調節するために閉ループ方式で使用され得るか、または何らかの種類の制御ユニットに有線またはワイヤレスで通信され得るかのいずれかである。
【0151】
[0169]すべての値がテストされていない場合(310)、本方法は、ステップ304における方法の始まりへと戻り、パラメータ値空間から次のパラメータ値を選択し得る。パラメータ値空間からのパラメータのすべてがテストされると(310)、所望の収縮特徴値、例えば、最小の径方向変位、を有するパラメータ値が選択され得る(312)。
【0152】
[0170]
図9および
図10の例示的な技術は、左心室に植え込まれるPD12の文脈において主に説明されるが、他の例示的な医療デバイスが、CRT制御パラメータ値の有効性を評価するための技術を実施し得る。例えば、心臓外ペースメーカーは、1つまたは複数のリードの電極を通じて心室ペーシングを送達し得る。このペースメーカーはまた、心収縮中に運動信号を受信するために、例えば、リードによって、またはワイヤレスで、運動センサに結合され得る。
【0153】
[0171]
図11Aおよび
図11Bは、ペーシングデバイスから実際の人間の3次元加速度計データを(1=地球の重力である単位で)示す。
図11Aは、収縮軸を見下ろした、正常洞調律(NSR、内因性拍動)を例証するプロットである。軸は、ペーシングデバイスの加速度計軸から変換されており、その結果として、収縮期収縮の一次軸は、ここでは、画像の平面から外へ向く軸に沿う。したがって、画像の平面は、一次収縮期収縮に直交する加速度計成分を示す。
図11Bは、収縮軸を見下ろした、右心室(RV)ペーシングを例証するプロットである。
図11Aおよび
図11Bは各々、1つの心周期を示す。
図11Aでは、収縮の発生地点は、参照項目番号410Aにより識別され、心周期の収縮期部分は、参照項目番号420Aにより識別され、心周期の拡張期部分は、参照項目番号430Aにより識別される。
図11Bでは、収縮の発生地点は、参照項目番号420Bにより識別され、心周期の収縮期部分は、参照項目番号420Bにより識別され、心周期の拡張期部分は、参照番号430Bにより識別される。
図11Bは、RVペーシングされた拍動が同期不全の収縮を引き起こすことが理由で、RVペーシングされた拍動がこの直交平面において
図11A(内因性(NSR)拍動)よりも大きい収縮期運動を有することを示す。収縮期収縮の一次軸以外の方向、例えば軸に直交する平面、における運動の量を決定することにより、同期不全の程度が推測され得る。いくつかの例では、運動の量は、心周期の収縮期部分の間の様々な地点における起源からの距離の合計であってもよい。同期不全の運動の量は、本開示の技術に従って、融合(A-V間隔が申し分ない)を、内因性の脱分極(A-V間隔が長すぎる)および完全にLVペーシングされた拍動(A-V間隔が短すぎる)などの他の種類の拍動から区別するために使用される得る。
【0154】
[0172]
図12は、本開示の1つまたは複数の態様に従う、心臓運動信号の例示的な特徴を例証する心臓運動の概念プロットである。
図12は、運動の一次収縮軸を見下ろした、心周期の1つの収縮期部分600の例を例証するプロットを示す。ベクトル620A、620B、および620C(まとめて「ベクトル620」)は、一次収縮軸に沿っているもの以外の方向における収縮610の起源からの運動または変位、例えば、心尖揺動に起因するなど、一次軸に直交する平面における径方向運動を例証する。3つのベクトル620が
図12に例証されるが、処理回路は、本明細書に説明されるように心収縮の特徴を決定するために、より多くのまたは少ないベクトル620を決定し得る。
図12は、収縮610の起源からベクトル620Aを用いて大きい収縮期運動を有する拍動を示す。収縮期収縮の一次軸以外の方向における運動の量、例えば、ベクトル620の最大値、合計、または平均は、例えば、心収縮の特徴の値として、同期不全の程度を推測するために使用され得る。ベクトル620Bおよび620Cなど、収縮610の起源までの距離が短いベクトルは、同期不全の収縮がないことを示すために使用され得る。その一方で、ベクトル620Aなど、収縮610の起源までの距離が長いベクトルは、同期不全の収縮を示し得る。
【0155】
[0173]本開示はまた、本明細書に説明される機能および技術のいずれかをプロセッサに実施させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を企図する。コンピュータ可読記憶媒体は、RAM、ROM、NVRAM、EEPROM、またはフラッシュメモリなど、任意の揮発性、不揮発性、磁気、光学、または電気媒体の例示的な形態をとり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的と称され得る。患者プログラマもしくは臨床医プログラマなどのプログラマ、または他のコンピューティングデバイスはまた、容易なデータ転送またはオフラインデータ分析を可能にするために、より携帯型のリムーバルメモリタイプを含み得る。
【0156】
[0174]加えて、本明細書に説明されるシステムは、人間の患者の治療に限定されない場合があるということに留意されたい。代替の例では、本システムは、人間以外の患者、例えば、霊長類の動物、イヌ、ウマ、豚およびネコにおいて実施され得る。これらの他の動物は、本開示の主題から利益を得ることができる臨床または研究療法を受けることができる。
【0157】
[0175]IMD10、PD12、外部デバイス24、および様々な構成要素部品に帰せられるものを含む、本開示に説明される技術は、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。例えば、本技術の様々な態様は、医師もしくは患者プログラマなどのプログラマ、刺激装置、遠隔サーバ、または他のデバイスにおいて具現化される、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の等価の集積もしくは離散論理回路、ならびにそのような構成要素の任意の組み合わせを含む、1つまたは複数のプロセッサ内に実装され得る。用語「プロセッサ」または「処理回路」は、全体的に、単独のもしくは他の論理回路と組み合わせた、前述の論理回路のうちのいずれか、または任意の他の等価の回路を指し得る。
【0158】
[0176]そのようなハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアは、本開示に説明される様々な動作および機能をサポートするために、同じデバイス内または別個のデバイス内に実装され得る。例えば、本明細書に説明される技術またはプロセスのいずれかは、1つのデバイス内で実施され得るか、または、IMD10、PD12、外部デバイス24など、2つ以上のデバイス間で、少なくとも部分的に分散され得る。加えて、説明されたユニット、モジュール、または構成要素のいずれかは、離散だが相互運用可能な論理デバイスとして、一緒にまたは別個に、実装され得る。モジュールまたはユニットとしての異なる特徴の描写は、異なる機能面を強調することを目的とし、そのようなモジュールまたはユニットが、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを必ずしも暗示しない。むしろ、1つまたは複数のモジュールまたはユニットと関連付けられた機能性は、別個のハードウェアもしくはソフトウェア構成要素によって実施され得るか、または共通もしくは別個のハードウェアもしくはソフトウェア構成要素内に統合され得る。
【0159】
[0177]本開示に説明される技術はまた、命令で符号化されるコンピュータ可読記憶媒体を含む製造品において具現化または符号化され得る。符号化されるコンピュータ可読記憶媒体を含む製造品内に埋め込まれるかまたは符号化される命令は、コンピュータ可読記憶媒体内に含まれるかまたは符号化される命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されるときなど、1つまたは複数のプログラマブルプロセッサ、または他のプロセッサに、本開示に説明される技術のうちの1つまたは複数を実施させ得る。例示的なコンピュータ可読記憶媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、プログラマブルリードオンリメモリ(PROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク、コンパクトディスクROM(CD-ROM)、フロッピーディスク、カセット、磁気媒体、光学媒体、または任意の他のコンピュータ可読記憶デバイスもしくは有形コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0160】
[0178]様々な例が説明されてきた。これらの例および他の例は、以下の特許請求項の範囲内である。