(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】窒化ホウ素ナノ材料、及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20240430BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240430BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C01B21/064 M
C08L101/00
C08K3/38
(21)【出願番号】P 2020553926
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042318
(87)【国際公開番号】W WO2020090796
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2018202924
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩也
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107161961(CN,A)
【文献】特開2010-180066(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086226(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107779153(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108641371(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0114903(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103980664(CN,A)
【文献】特開2017-132662(JP,A)
【文献】YAN, H. et al.,Enhanced thermal-mechanical properties of polymer composites with hybrid boron nitride nanofillers,Applied Physics A,2013年11月20日,Vol.114,pp.331-337
【文献】DA SILVA, W. M. et al.,Synthesis of boron nitride nanostructures from catalyst of iron compounds via thermal chemical vapor deposition technique,Physica E,2017年02月07日,Vol.89,pp.177-182
【文献】Junlin SU et al.,“Enhanced thermal conductivity in epoxy nanocomposites with hybrid boron nitride nanotubes and nanosheets”,physica status solidi (a),2013年10月08日,Vol. 210,No. 12,p.2699-2705,DOI: 10.1002/pssa.201330213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
B82Y 30/00
C08K 3/38
C08L 101/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素ナノチューブと、窒化ホウ素ナノシートを含有する窒化ホウ素ナノ材料であって、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm
-1以上で
あり、
前記窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が、3nm以上10nm以下である、窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項2】
前記窒化ホウ素ナノチューブがマルチウォールチューブを含む請求項1に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項3】
前記マルチウォールチューブは、平均直径が4nm以上
10nm以下で、かつ平均長さが100nm以上50μm以下である、請求項2に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項4】
前記窒化ホウ素ナノシートの平均厚さが10nm未満である請求項1~3のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項5】
前記窒化ホウ素ナノシートが、2nm以下の厚さの窒化ホウ素ナノシートを含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項6】
窒化ホウ素ナノ粒子をさらに含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項7】
前記窒化ホウ素ナノ粒子は、粒径が50nm以下の粒子の割合が50質量%以上である請求項6に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料と、樹脂成分とを含有する樹脂組成物。
【請求項9】
前記窒化ホウ素ナノ材料の充填率が、0.5体積%以上40体積%以下である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記窒化ホウ素ナノ材料以外の熱伝導性フィラーをさらに含有する請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放熱部材に使用される窒化ホウ素ナノ材料、及び窒化ホウ素ナノ材料を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、集積された電子部品が熱を発生し、故障の原因となるため、電子部品から発生する熱を機器外部に放熱するための放熱部材が設けられることがある。放熱部材は、例えば、電子部品と、筐体やヒートシンクなどの間に配置される。放熱部材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂成分に、熱伝導性フィラーが配合された樹脂組成物から形成される複合材料からなる。
【0003】
近年、電子機器は、小型化、高性能化が進行しており、電子部品から発生する熱が増大する傾向になり、上記複合材料の放熱性能をさらに向上させることが求められている。そのため、例えば特許文献1では、熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素ナノチューブと、ナノチューブ以外の絶縁性フィラーとを併用して、機械特性を良好にしつつ、放熱性を向上させることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、窒化ホウ素ナノチューブを使用すると、複合材料の熱伝導率が高くなって放熱性能が向上するが、窒化ホウ素ナノチューブが配合された樹脂組成物は粘度が上昇し、作業性が良好にならないことがある。
そこで、本発明は、窒化ホウ素ナノ材料が配合される樹脂組成物の粘度を低く維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることが可能な窒化ホウ素ナノ材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、窒化ホウ素ナノ材料として窒化ホウ素ナノチューブに加えて、窒化ホウ素ナノシートを使用し、かつラマンスペクトルが所定の範囲となるように調整することで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]窒化ホウ素ナノチューブと、窒化ホウ素ナノシートを含有する窒化ホウ素ナノ材料であって、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上である、窒化ホウ素ナノ材料。
[2]前記窒化ホウ素ナノチューブがマルチウォールチューブを含む上記[1]に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[3]前記マルチウォールチューブは、平均直径が4nm以上50nm以下で、かつ平均長さが100nm以上50μm以下である、上記[2]に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[4]前記窒化ホウ素ナノシートの平均厚さが10nm未満である上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[5]前記窒化ホウ素ナノシートが、2nm以下の厚さの窒化ホウ素ナノシートを含有する上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[6]窒化ホウ素ナノ粒子をさらに含有する上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[7]前記窒化ホウ素ナノ粒子は、粒径が50nm以下の粒子の割合が50質量%以上である上記[6]に記載の窒化ホウ素ナノ材料。
[8]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の窒化ホウ素ナノ材料と、樹脂成分とを含有する樹脂組成物。
[9]前記窒化ホウ素ナノ材料の充填率が、0.5体積%以上40体積%以下である上記[8]に記載の樹脂組成物。
[10]前記窒化ホウ素ナノ材料以外の熱伝導性フィラーをさらに含有する上記[8]又は[9]に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の窒化ホウ素ナノ材料によれば、窒化ホウ素ナノ材料が配合される樹脂組成物の粘度を低く維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態を用いて説明する。
[窒化ホウ素ナノ材料]
本発明の窒化ホウ素ナノ材料は、窒化ホウ素ナノチューブ(以下、「BNNT」ともいう)と、窒化ホウ素ナノシート(以下、「BNNS」ともいう)を含有し、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となるものである。
本発明の窒化ホウ素ナノ材料は、BNNT及びBNNSの両方を含有し、かつラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となることで、窒化ホウ素ナノ材料が配合される樹脂組成物の粘度を低く維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることが可能になる。
【0009】
六方晶窒化ホウ素は格子振動によって熱が伝搬するが、一般的な六方晶窒化ホウ素粒子は、例えば数10層から数100層の多数の窒化ホウ素結晶層から構成されているため、層間で格子振動が散乱される特徴を示す。一方、チューブ形状を有するBNNTは熱伝搬の際の格子振動の散乱が少ないため高熱伝導を示すことが知られている。またBNNTは窒化ホウ素結晶層が1又は2以上積層されて構成されるが、積層数が少ないほど、格子振動の散乱が少ないため、より高熱伝導を示す。BNNSは窒化ホウ素結晶層が1又は数層から10層程度積層されて構成されるが、その層数は一般的な窒化ホウ素と比べて少ないため、層間での格子振動の散乱が抑えられより高熱伝導を示す。
【0010】
多層の窒化ホウ素層で形成される一般的な六方晶窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素に由来するラマンスペクトルのピークトップを1365~1368cm-1程度を示す。窒化ホウ素層が数層程度と非常に薄くなることで、ラマンスペクトルのピークトップが高波数側にシフトする。そのため、本発明のように窒化ホウ素由来のピークトップが1369cm-1以上となると、窒化ホウ素ナノ材料は、薄厚のBNNT及びBNNSを一定割合以上で含むことを意味し、それにより樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることができると考えられる。
【0011】
BNNSと比較しBNNTはそのチューブ形状から樹脂組成物にした際、ネットワーク構造をとりやすいため、樹脂組成物やその複合材料の熱伝導を上げるのに効果があるが、一方でチューブの絡まりや凝集等で樹脂組成物の粘度を上昇させ、作業性を悪化させてしまう。一方、BNNSはBNNTと比べ凝集力は小さいので、樹脂組成物の粘度を悪化させることはない。以上から、BNNT単独よりもBNNTとBNNSが混合されている方が樹脂組成物の粘度を上昇させない利点がある。また、本発明のように、窒化ホウ素由来のラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となると、薄膜のBNNTやBNNSを一定割合以上含有していることを意味するため、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることができると考えられる。
【0012】
一方で、窒化ホウ素ナノ材料は、窒化ホウ素由来のピークトップが1369cm-1未満となると、薄厚のBNNT及びBNNSの含有割合が不十分となり、すなわち多層の窒化ホウ素から構成される窒化ホウ素粒子が混在しているため、複合材料の熱伝導率を高くしたりすることが難しくなる。また、窒化ホウ素ナノ材料は、BNNT及びBNNSの両方を含有しないと、上記した低粘度化、及び熱伝導率の向上の両立を図ることが難しくなる。
本発明において、樹脂組成物の粘度及び複合材料の熱伝導率の観点から、窒化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルのピークトップは1370cm-1以上であることが好ましい。
また、窒素化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルのピークトップは、特に限定されないが、窒化ホウ素ナノ材料の特性上、例えば1375cm-1以下である。また、窒素化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルのピークトップは、粘度かつ高熱伝導率の両立の観点から、1370cm-1以上1373cm-1以下がより好ましい。
【0013】
本発明の窒化ホウ素ナノ材料は、BNNT及びBNNSに加えて、窒化ホウ素ナノ粒子(以下、「BNNP」ともいう)をさらに含有してもよい。BNNPはその形状から、BNNTやBNNSと比較し、樹脂組成物における熱伝導への寄与は低いが、BNNTと比較すると凝集力が低いので樹脂組成物の粘度を下げる効果があるため、一定数含有していてもよい。その際、窒化ホウ素ナノ材料は、BNNPを含有していても、上記のように、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上であると、窒化ホウ素ナノ材料が配合される樹脂組成物の粘度を低く維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上させることが可能になる。
【0014】
BNNPは窒化ホウ素が層状に積層し粒状となった粒子であるため、窒化ホウ素の層数が少なくなると、窒化ホウ素に由来するラマンスペクトルのピークトップが高波数側にシフトする。したがって、窒化ホウ素ナノ材料は、BNNPをさらに含有する場合であっても、そのBNNPの粒径を小さくし、構成される窒化ホウ素の層数を少なくすることで、ラマンスペクトルのピークトップを1369cm-1以上とすることが可能になる。
なお、上記ラマンスペクトルのピークトップは、後述する実施例で示すように、窒化ホウ素ナノ材料についてのラマンスペクトルを測定して、1360~1380cm-1において観察された波形から読み取る。
【0015】
(BNNT)
BNNTは、窒化ホウ素から形成されるチューブ状材料である。BNNTの理想的な構造は、六角網目の面がチューブ軸に平行となるように管を形成し、一重管もしくは多重管になるものである。BNNTは、一重管となるものをシングルウォールチューブ、多重管となるものをマルチウォールチューブという。本発明では、BNNTとして、シングルウォールチューブ及びマルチウォールチューブのいずれを使用してもよいが、マルチウォールチューブを使用することが好ましい。マルチウォールチューブを使用することで、チューブ同士が絡まって凝集してしまうのを低減する効果があるためである。
マルチウォールチューブを使用する場合、BNNTは、マルチウォールチューブ単独で使用してもよいし、マルチウォールチューブとシングルウォールチューブを併用してよい。
【0016】
窒化ホウ素ナノチューブは、例えば、平均直径が2nm以上50nm以下で、かつ平均長さが100nm以上50μm以下となるものである。平均直径を上記範囲内とすることで、窒化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルのピークトップを1369cm-1以上にしやすくなる。また、平均直径及び平均長さを上記範囲内とすることで、窒化ホウ素ナノ材料が配合される樹脂組成物の粘度を良好にしつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を高めやすくなる。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、マルチウォールチューブを一定量以上含有させ、かつマルチウォールチューブの分散性を高めやすくなる観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは4nm以上である。また、窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、上記した低粘度化及び熱伝導率の向上の両立を図る観点から、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下である。
また、窒化ホウ素ナノチューブの平均長さは、上記した低粘度化及び熱伝導率の向上の両立を図る観点から、500nm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また、20μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0017】
マルチウォールチューブは、比較的直径が大きくなるものであり、本発明では、例えば、平均直径が4nm以上50nm以下で、かつ平均長さが100nm以上50μm以下となるものを使用する。また、マルチウォールチューブの平均直径は、低粘度化及び熱伝導率の向上の両立を図る観点から、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下である。
マルチウォールチューブの平均長さは、低粘度化及び熱伝導率の向上の両立を図る観点から、500nm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また、20μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0018】
一方で、シングルウォールチューブは、平均直径が比較的小さくなるものであり、例えば、平均直径が2nm以上3nm以下で、かつ平均長さが100nm以上50μm以下となるものである。また、シングルウォールチューブの平均直径は、好ましくは2.5nm以下である。また、シングルウォールチューブの平均長さは、樹脂組成物の低粘度化及び熱伝導率の向上の両立を図る観点から、500nm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また、20μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0019】
なお、BNNTの直径とは、シングルウォールチューブの場合には外径を示し、マルチウォールチューブの場合には最も外側に位置するチューブの外径を意味する。BNNTの直径、及び長さは、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による観察によって得られた画像において測定すればよく、平均直径、及び平均長さとは、任意の50個の算術平均により求めるとよい。
【0020】
(BNNS)
BNNSは、窒化ホウ素から形成され、超極薄の2次元シート構造を有するものであり、例えば、六方晶系窒化ホウ素の層が単層又は複数層積層された構造を有する。
本発明で使用するBNNSは、平均厚さが10nm未満であることが好ましい。平均厚さが10nm未満であると、窒化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となりやすく、窒化ホウ素ナノ材料が配合された樹脂組成物の粘度を低粘度に維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を向上できる。これら観点から、BNNSの平均厚さは、より好ましくは6nm以下、さらに好ましくは4nm以下である。また、BNNSの平均厚さの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。
【0021】
また、BNNSは、厚さが2nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれることが好ましい。2nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれると、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となりやすく、樹脂組成物の低粘度化と、複合材料の熱伝導率の向上の両立を図りやすくなる。
BNNSの大きさは、特に限定されないが、平均最長径が例えば200nm以上3μm以下、好ましくは500nm以上2μm以下である。
なお、BNNSの厚さ及び最長径は、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による観察によって得られた画像において測定でき、各BNNSの平均厚さ、及び平均最長径は、電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めるとよい。
【0022】
(BNNP)
BNNPは、特に限定されないが、例えば、六方晶窒化ホウ素粒子であり、その粒径がナノサイズ(1μm未満)となるものである。BNNPの形状は、特に限定されないが、球形、多角形、不定形状などである。
窒化ホウ素ナノ材料において、BNNPは、粒径が50nm以下の粒子の割合が50質量%以上であることが好ましく、その割合は55質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。このように径が小さいBNNPの割合を高くすると、窒化ホウ素ナノ材料は、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となりやすくなり、樹脂組成物を低粘度化しつつ、複合材料の熱伝導率を向上させやすくなる。BNNPにおいて、粒径が50nm以下の粒子の割合は、高ければ高いほどよく、その上限は100質量%である。
BNNPの平均粒径は、特に限定されないが、例えば5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下である。
【0023】
BNNPの粒径は、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による観察によって得られた画像において粒子の最大径を測定すればよい。また、粒径が50nm以下の粒子の割合は、例えば、任意の50個の粒子それぞれの最大径を測定することで得ることができる。また、平均粒径は、任意の50個の粒子の最大径の算術平均により求めるとよい。
【0024】
(各成分の含有量)
本発明の窒化ホウ素ナノ材料においては、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となるように、BNNT,BNNS、及びBNNPの含有量を適宜調整すればよい。
例えば、窒化ホウ素ナノ材料において、BNNTに対するBNNSの含有量の質量比(BNNS/BNNT)は、特に限定されないが、上記した低粘度化、及び熱伝導率の向上の観点などから、例えば20/80以上80/20以下、好ましくは30/70以上70/30以下、より好ましくは40/60以上60/40以下である。
また、窒化ホウ素ナノ材料がBNNPを含む場合には、BNNT及びBNNSの合計量に対する、BNNPの含有量の質量比(BNNP/(BNNT+BNNS))は、例えば、1/99以上50/50以下、好ましくは5/95以上40/60以下、より好ましくは10/90以上40/60以下である。
【0025】
具体的なBNNTの含有量は、例えば20質量%以上80質量%以下、好ましくは25質量%75質量%以下、より好ましくは30質量%70質量%以下であり、BNNSの含有量は、例えば20質量%以上80質量%以下、好ましくは25質量%75質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。また、BNNPの含有量は、例えば0質量%以上50質量%以下、好ましくは0質量%以上40質量%以下、より好ましくは0質量%以上35質量%以下である。なお、これら含有量は、窒化ホウ素ナノ材料全量に対する質量%を意味する。
【0026】
(製造方法)
本発明の窒化ホウ素ナノ材料の製造方法は、特に限定されず、BNNT、BNNS、BNNPをそれぞれ別に合成し、任意の割合で混合させるとよい。その場合、BNNTの合成方法は、特に限定されないが、レーザーアブレーション法、プラズマ法、CVD法、ミリング法などが挙げられる。BNNSの合成方法は、特に限定されないが、CVD法により、銅などの基板上に形成させる方法、多層構造を有する六方晶系窒化ホウ素を超音波などで剥離させる方法などがある。また、BNNPの合成方法は、特に限定されないが、CVD法により合成する方法が挙げられる。
【0027】
BNNT、BNNS、及びBNNPは、製造方法を適宜調整することで、上記したサイズ(直径、長さ、厚さ)を有するものを得ることができる。
BNNTは、例えばCVD法においては、ホウ素粉末と、酸化マグネシウム、酸化鉄等の金属酸化物とを加熱して、酸化ホウ素の蒸気を発生させ、これとアンモニアガスを反応させ、その後、洗浄、遠心分離等により精製されて製造される。この際、加熱温度、酸化鉄等の原料のサイズ、遠心分離の条件等を適宜調整することで、BNNTの直径、長さを適宜調整できる。
BNNSは、例えば超音波剥離する場合、超音波の条件や、超音波を付与する前の六方晶系窒化ホウ素のサイズを適宜調整することで、厚さ及び最長径などを調整できる。また、BNNPは、CVD法では、例えば基板の上に成長させ、その後、洗浄、遠心分離などにより精製されて製造されるが、遠心分離などの条件を適宜調整することで、BNNPの直径を調整できる。
勿論、BNNT、BNNS、及びBNNPのサイズの調整方法は、これらに限定されず、いかなる方法で行ってもよい。
【0028】
また、窒化ホウ素ナノ材料は、BNNT、BNNS、BNNPそれぞれを別々に合成する必要はなく、これらから選択される1種を他の1種以上と合わせて合成してもよい。
例えば、BNNTの合成条件の調整などにより、BNNS,又はBNNS及びBNNPを副生成物として意図的に混在させるとよく、より具体的には、BNNT合成時に、BNNTの一部を開くことによってシート形状にして、BNNSも合わせて合成する方法などが挙げられる。
【0029】
また、BNNT、BNNS,及びBNNPの少なくともいずれかは、適宜表面処理がされてもよい。表面処理は、カップリング剤(例えばシランカップリング剤)などの表面処理剤を、これらの少なくとも1つの表面に付着させてもよい。また、ポリフェニレンビニレンポリマー、ポリチオフェンポリマー、ポリフェニレンポリマー、ポリピロールポリマー、ポリアニリンポリマー、及びポリアセチレンポリマー等の共役ポリマーにより表面を被覆させてもよい。
【0030】
[樹脂組成物]
本発明の窒化ホウ素ナノ材料は、例えば、樹脂と混合され複合材料として使用される。本発明の複合材料を形成するための樹脂組成物は、上記した窒化ホウ素ナノ材料(すなわち、少なくとも窒化ホウ素ナノチューブ及び窒化ホウ素ナノシート)と、樹脂成分とを含むものである。樹脂組成物は、後述するように、例えば、放熱部材を形成することが可能である。本発明の樹脂組成物は、上記した窒化ホウ素ナノ材料を含有することで、低粘度でありながらも、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を高くできる。
【0031】
上記のとおり、樹脂組成物に含有される窒化ホウ素ナノ材料は、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となるものであるが、窒化ホウ素ナノ材料のラマンスペクトルは、樹脂組成物から分離して測定すればよく、例えば、以下の方法で分離できる。
樹脂組成物を600℃のオーブンで3時間焼成することにより、有機成分を完全に気化、除去する。次に、残留物100mgをガラス容器に移し、100mLのN-メチルピロリドン(NMP)を加え、超音波バスで20分攪拌しながら分散させる。分散液を遠心分離機、回転数2000rpm、10分間で分離させ、上澄み部を回収、ろ過することで、窒化ホウ素ナノ材料を単離できる。
【0032】
本発明の樹脂組成物における窒化ホウ素ナノ材料の充填率は、好ましくは0.5体積%以上40体積%以下である。窒化ホウ素ナノ材料は、0.5体積%以上配合することで、複合材料の熱伝導率を高くできる。また、40体積%以下とすることで、樹脂組成物の粘度が必要以上に高くなることを防止できる。熱伝導率を十分に向上させ、かつ樹脂組成物の粘度を低下させて作業性を良好にする観点から、窒化ホウ素ナノ材料の充填率は、より好ましくは4体積%以上35体積%以下、さらに好ましくは10体積%以上30体積%以下である。
なお、本明細書において「充填率」とは、樹脂組成物の全体積に対する、体積%を意味し、例えば、窒化ホウ素ナノ材料の充填率は、樹脂組成物の全体積に対する、窒化ホウ素ナノ材料が占める体積%を意味する。各成分の体積は、各成分の重量と、室温(23℃)における比重により算出可能である。
【0033】
(樹脂成分)
本発明の樹脂組成物に使用する樹脂成分は、樹脂組成物において分散した窒化ホウ素ナノ材料を保持する。樹脂成分は、特に限定されないが、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、オキセタン樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂は、湿気硬化型、熱硬化型、光硬化型のいずれでもよいが、熱硬化型が好ましい。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、及びポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等が挙げられる。
【0034】
また、エラストマー樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム等が挙げられる。これらエラストマー樹脂は、室温(23℃)、常圧(1気圧)で液状となる液状エラストマーであってもよいし、固体状のものであってもよいし、これらの混合物であってもよい。
また、エラストマー樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーも使用できる。
【0035】
樹脂成分としては、シリコーンオイル、プロセスオイルなどの液状樹脂成分でもよい。液状樹脂成分とは、配合時に室温かつ常圧下に液状であり、かつ使用時においても液状ないしゲル状となる成分である。すなわち、液状樹脂成分は、硬化剤などにより硬化されない高分子成分であり、また、硬化されるものであっても硬化後、液状ないしゲル状の高分子成分となるものである。したがって、液状樹脂成分を単独で、又は比較的高い配合割合で使用すると、樹脂組成物から形成される複合材料をペースト状にできる。
樹脂成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記したシリコーンオイルとしては、メチルフェニルシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。シリコーンオイルは、例えば25℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下であり、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは500mPa・s以上900mPa・s以下、さらに好ましくは600mPa・s以上700mPa・s以下である。
なお、本明細書において粘度とは、B型粘度計で直径(φ)48mmのローターを用い、回転速度5rpm、測定温度25℃で測定したものをいい、具体的な測定は、実施例に記載される方法で行うとよい。
【0036】
樹脂成分としては上記した中では、硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂がより好ましい。なお、硬化性樹脂は、一般的に主剤を硬化剤により硬化させることで、硬化する樹脂成分であり、主剤は高分子成分であってもよいし、モノマー成分であってもよい。このよう場合、主剤と硬化剤により樹脂成分が構成される。
また、硬化性樹脂の中でもシリコーン樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましい。硬化性樹脂であるシリコーン樹脂は、縮合硬化型シリコーン樹脂、付加反応硬化型シリコーン樹脂などが好ましく、付加反応硬化型シリコーン樹脂がより好ましい。
【0037】
付加反応硬化型シリコーン樹脂は、主剤となるシリコーン化合物と、主剤を硬化させる硬化剤とからなることが好ましい。主剤として使用されるシリコーン化合物は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基等の炭素数2~6のものが例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。また、主剤として使用されるシリコーン化合物は、アルケニル基を1つ以上有すればよいが、一般的には2つ以上有する。
【0038】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、具体的には、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン、ビニル両末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサンコポリマーなどのビニル両末端オルガノポリシロキサンが挙げられる。
主剤として使用されるシリコーン化合物は、例えば、25℃における粘度が、1000mPa・s以下のものを使用すればよく、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは500mPa・s以上900mPa・s以下、さらに好ましくは600mPa・s以上700mPa・s以下である。
【0039】
付加反応硬化型シリコーン樹脂に使用される硬化剤としては、上記した主剤であるシリコーン化合物を硬化できるものであれば、特に限定されないが、ヒドロシリル基(SiH)を2つ以上有するオルガノポリシロキサンである、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマーなどが挙げられる。これらは、末端にヒドロシリル基を含有していてもよいが、含有していなくてもよい。
硬化剤の25℃における粘度は、好ましくは1000mPa・s以下であり、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは500mPa・s以上900mPa・s以下、さらに好ましくは600mPa・s以上700mPa・s以下である。
上記した主剤や硬化剤の粘度範囲を上記範囲内とすると、樹脂組成物の粘度を低くすることが可能になるため、作業性が良好となる。また、窒化ホウ素ナノ材料、及びその他の熱伝導性フィラーを適切に分散させたうえで、樹脂組成物に多量に配合しやすくなる。
【0040】
上記した硬化性シリコーン樹脂が使用される場合、樹脂組成物には通常、硬化触媒が配合される。硬化触媒としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられ、これらの中では白金系触媒が好ましい。硬化触媒は、シリコーン樹脂の原料となるシリコーン化合物と硬化剤とを硬化させるための触媒である。硬化触媒の配合量は、シリコーン化合物及び硬化剤の合計質量に対して、通常0.1~200ppm、好ましくは0.5~100ppmである。
【0041】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有するエポキシ化合物を使用するとよい。エポキシ化合物としては、例えばビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン型、トリフェノールアルカン型、ビフェニル型、環状脂肪族型、これらのハロゲン化物、これらの水素添加物等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物単独で使用されてもよいが、一般的には、上記エポキシ化合物を主剤とし、さらに硬化剤が加えられたものが使用される。硬化剤としては、重付加型又は触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、ポリメルカプタン、ジシアンジアミド等が挙げられる。また、上記触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。これは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
熱硬化性樹脂は、1液硬化型、2液硬化型のいずれでもよい。2液硬化型では、上記した主剤を含む1液と、硬化剤を含む2液とを混合して、樹脂組成物を調製するとよい。なお、2液硬化型の場合、窒化ホウ素ナノ材料は、1液及び2液の一方に配合されていてもよいし、両方に配合されていてもよい。後述するその他の熱伝導性フィラーも同様である。
【0043】
樹脂組成物における樹脂成分の充填率は、樹脂組成物全量に対して、例えば5体積%以上95体積%以下、好ましくは10体積%以上90体積%以下、より好ましくは15体積%以上85体積%以下である。樹脂成分の体積割合がこれら下限値以上であると、樹脂成分に分散された窒化ホウ素ナノ材料や、その他の熱伝導性フィラーを、樹脂成分により保持でき、樹脂組成物により形成される複合材料を一定の形状を維持できるようになる。また、樹脂組成物が必要以上に高粘度化されることも防止できる。また、これら上限値以下とすることで、窒化ホウ素ナノ材料や、その他の熱伝導性フィラーを一定量以上樹脂組成物に配合でき、熱伝導率を高くできる。
【0044】
(その他の熱伝導性フィラー)
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性フィラーとして、上記した窒化ホウ素ナノ材料以外の熱伝導性フィラー(以下、「その他の熱伝導性フィラー」ともいう)をさらに含有してもよい。その他の熱伝導性フィラーを含有すると、その他の熱伝導性フィラーの間に窒化ホウ素ナノ材料が入り込み、橋渡しによる効果で熱伝導性をさらに向上させることが可能になる。
その他の熱伝導性フィラーは、電気伝導率の低い絶縁性フィラーが好ましく、具体的には、体積抵抗率が106Ω・cm以上のフィラーが使用されるとよい。その他の熱伝導性フィラーとして、絶縁性フィラーを使用すると、樹脂組成物から形成される複合材料を電気機器に使用しても、異常動作などが生じにくくなる。
【0045】
その他の熱伝導性フィラーとしては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属炭酸塩、炭素系材料などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウム、窒化ホウ素などが挙げられる。なお、窒化ホウ素は、直径、厚さ、長さなどのいずれもがマイクロオーダー(すなわち、粒径、厚さ、長さなどのいずれもが1μm以上となる)となるものであり、上記した窒化ホウ素ナノ材料以外の窒化ホウ素である。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、ベーマイトなどの酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。金属炭酸塩としては、合成マグネサイト、マグネシウム炭酸塩などが挙げられる。炭素系材料としては、例えば、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが挙げられる。また、ケイ酸塩鉱物であるタルクなども使用できる。
これらその他の熱伝導性フィラーは、単独で使用してもよいが、2種類以上併用してもよい。
【0046】
その他の熱伝導性フィラーの熱伝導率は、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは8W/m・K以上であり、より好ましくは15W/m・K以上、さらに好ましくは20W/m・K以上である。また、その他の熱伝導性フィラーの熱伝導率の上限値は、特に限定されないが、例えば3000W/m・Kであり、1000W/m・Kでもよい。
【0047】
その他の熱伝導性フィラーは、熱伝導性及び絶縁性の観点から、アルミナなどの酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、合成マグネサイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、ダイヤモンド、窒化ホウ素などが好ましく、より好ましくは酸化アルミニウムである。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
その他の熱伝導性フィラーは、表面処理されてもよい。その他の熱伝導性フィラーは、表面処理されることで、樹脂成分になじみやすくなり、樹脂成分中に窒化ホウ素ナノ材料とともに、均一に分散されやすくなる。
その他の熱伝導性フィラーは、シラン化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、リン酸化合物などの表面処理剤で表面処理され、好ましくはシラン化合物により表面処理される。シラン化合物は、公知のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0049】
その他の熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、板状、鱗片状、針状、繊維状、チューブ状、球状、破砕形状、不定形状などのいずれでもよい。
その他の熱伝導性フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下である。これら範囲内とすることで、樹脂組成物の粘度を必要以上に上昇させることなく、複合材料の熱伝導性を向上させやすくなる。また、これら上限値以下とすることで、その他の熱伝導性フィラーを高充填としても、フィラーが均一に分散しないなどの不具合が生じにくくなる。
なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。
【0050】
樹脂組成物におけるその他の熱伝導性フィラーの充填率は、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下である。これら上限値以下とすることで、樹脂組成物に一定量以上の樹脂成分と窒化ホウ素ナノ材料を配合できるので、熱伝導性を向上させつつ、窒化ホウ素ナノ材料を樹脂成分により適切に保持できる。また、その他の熱伝導性フィラーを含有する場合、その充填率は、特に限定されないが、その他の熱伝導性フィラーを配合した効果を発揮させるために、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。
【0051】
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、分散剤、キレート剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の放熱部材用の樹脂組成物に一般的に使用される添加剤を含有してもよい。また、樹脂組成物に、熱硬化性樹脂を使用する場合には、反応遅延剤を含有させてもよい。
また、本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有し、溶剤により希釈してもよい。ただし、溶剤により希釈する場合には、上記各成分の充填率は、溶剤を除いて算出するものとする。
【0052】
本発明の樹脂組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは900mPa・s以下、さらに好ましくは700mPa・s以下である。樹脂組成物の粘度がこれら上限値以下であると、樹脂組成物から放熱部材などを形成するときの作業性が良好となる。また、樹脂組成物の25℃における粘度の下限値は、特に限定されないが、例えば50mPa・sである。
【0053】
(樹脂組成物の調製)
本発明の樹脂組成物は、窒化ホウ素ナノ材料及び樹脂成分、さらには、必要に応じて配合されるその他の熱伝導性フィラー、添加剤などを混合して調製するとよい。これら成分を混合する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂成分に、窒化ホウ素ナノ材料、さらには、必要に応じて配合されるその他の熱伝導性フィラー、添加剤などを添加し、その後攪拌ないし混練などすることで調製するとよい。樹脂組成物を調製する際、予めBNNT及びBNNS、又はBNNT、BNNS及びBNNPを混合して得た窒化ホウ素ナノ材料を樹脂成分に添加してもよいが、BNNT及びBNNS、又はBNNT、BNNS及びBNNPをそれぞれ別個に樹脂成分に添加してもよい。
また、2液硬化型の硬化性樹脂の場合には、上記したように、予め用意した1液と、2液とを混合することで調製するとよい。1液、2液それぞれを用意する際も同様に、1液及び2液それぞれを構成する各種成分を混合して調製するとよい。
【0054】
本発明では、上記したように、樹脂組成物により、樹脂と窒化ホウ素ナノ材料とを含む複合材料が形成される。複合材料は、例えば、樹脂成分が硬化性樹脂を含む場合には、上記樹脂組成物を所定の形状に加工した後、適宜加熱などして硬化させることで所定の形状に成形される。樹脂組成物は、例えば、塗布、キャスティング、ポッティング、押出成形などにより、薄膜状、層状、シート状、ブロック状、不定形状などに成形されるとよい。
樹脂成分が硬化性樹脂を含む場合、樹脂組成物は、その硬化性樹脂の種類によって、加熱または光照射されたり、湿気存在下に放置されたりことで硬化されるとよい。また、2液硬化型の熱硬化性樹脂である場合には、1液と2液を混合することで硬化させてもよい。また、樹脂成分が硬化性樹脂を含む場合以外でも、樹脂組成物を所定の形状に加工して使用するとよい。
【0055】
本発明の複合材料は、例えば電気機器内部において使用される。本発明の複合材料は、高い熱伝導性を有することから、電気機器内部において放熱部材として使用できる。より具体的には、放熱部材は、電子部品の上に配置されて、電子部品で発生した熱を放熱するために使用される。
また、本発明の複合材料は、2つの対向する部材の間の隙間を埋めるように配置されて使用されてもよい。2つの対向する部材は、例えば、一方が電子部品で、他方が電子部品から熱を逃がすためのヒートシンク、電子機器の筐体、基板などのいずれかであるとよい。
さらに、本発明の放熱部材は、基板の一部として使用されてもよく、例えば、アルミニウム、銅などの金属ベース板の上に層状に形成されて使用されてもよい。また、その場合には、複合材料の上には、リードフレームなどの導電層が取り付けられるとよい。
【実施例】
【0056】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
本発明における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
<ラマンスペクトル>
得られた窒化ホウ素ナノ材料についてラマンスペクトルを測定した。ラマンスペクトルは、顕微ラマン分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名「Almega」)を使用して波数校正を実施した後に、レーザー波長532nm、出力100%、対物レンズ100倍、アパーチャ100μmピンホール、露光時間1秒、積算32回、測定範囲4230~78cm-1の条件で測定した。そして、1360~1380cm-1において観察された波形のピークトップ値を読み取った。
【0058】
<比熱伝導>
得られた樹脂組成物を、表面が離型処理されたPETシートの離型処理面上に塗工し、90℃のオーブン内にて10分間加熱させることで、PETシートの一方の面に厚さ200μmの樹脂組成物層を形成した積層シートを得た。得られた積層シートから離型PETシートを剥離し、更に銅箔及びアルミニウム板によって、樹脂組成物層を挟み、温度140℃、圧力4MPaの条件で真空プレス成型を行うことにより、銅箔/樹脂組成物層/アルミニウム板の積層構造を有する積層体を得た。積層体を10mm×10mmにカットした後、両面にカーボンブラックをスプレーして測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、レーザーフラッシュ法を用いて熱伝導率を測定し、以下の基準で評価した。なお、熱伝導率の測定においては、積層体を3つ用意し、それぞれの積層体内の3箇所から切り出して得られた、合計9個の測定サンプルそれぞれについて熱伝導率を測定して、平均値を求めた。
AA:熱伝導率が比較例1の3倍以上であった。
A:熱伝導率が比較例1の1.5倍以上3倍未満であった。
B:熱伝導率が比較例1の0.9倍以上1.5倍未満であった。
C:熱伝導率が比較例1の0.8倍以上0.9倍未満であった。
D:熱伝導率が比較例1の0.6倍以上0.8倍未満であった。
DD:熱伝導率が比較例1の0.6倍未満であった。
【0059】
<粘度>
粘度は、B型粘度計(「VISCOMETER TV-22」、東機産業社製、使用ローターφ48mm、設定温度25℃)を用いて、回転数5rpmにおいて測定した粘度(mPa・s)である。本実施例、比較例では、得られた樹脂組成物について粘度を測定して、以下の評価基準で評価した。
A:700mPa・s以下であった。
B:700mPa・sより大きく900mPa・s以下であった。
C:900Pa・sより大きく1000mPa・s以下であった。
D:1000mPa・sを超えていた。
【0060】
[窒化ホウ素ナノ材料の調製]
(BNNT(A))
窒化ホウ素製のるつぼに、2:2:1のモル比でホウ素、酸化マグネシウム及び平均粒子径50nmの酸化鉄を入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1500℃に加熱した(加熱工程1)。加熱工程1で得た生成物にアンモニアガスを導入して、1400℃で5時間加熱した(加熱工程2)。
得られた白色固体を濃塩酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した後、600rpmの回転速度で10分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノチューブ であるBNNT(A)を得た。得られたBNNT(A)は、平均直径が5nm、平均長さが2μmであり、マルチウォールチューブからなるものであった。
【0061】
(BNNT(B))
窒化ホウ素製のるつぼに、2:1:1.5のモル比でホウ素、酸化マグネシウム及び平均粒子径10nmの酸化鉄を入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した(加熱工程1)。加熱工程1で得た生成物にアンモニアガスを導入して、1350℃で3時間加熱した(加熱工程2)。
得られた白色固体を濃塩酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した後、3000rpmの回転速度で60分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノチューブであるBNNT(B)を得た。得られたBNNTは、平均直径が2nm、平均長さが2μmであり、シングルウォールチューブからなるものであった。
【0062】
(BNNS(A))
最長径1μmの窒化ホウ素を、5Mの水酸化ナトリウム水溶液において20kHz超音波で72時間分散させた。分散液を3000rpmの回転速度で60分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノシートであるBNNS(A)を得た。得られたBNNSは、平均厚さが2nm、平均最長径が1μmであった。
【0063】
(BNNS(B))
最長径1μmの窒化ホウ素を、5Mの水酸化ナトリウム水溶液において20kHz超音波で24時間分散させた。分散液を2000rpmの回転速度で20分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノシートであるBNNS(B)を得た。得られたBNNSは、平均厚さが10nm、平均最長径が1μmであった。
【0064】
(BNNP(A))
低温ファーネスでアンモニアボランを700℃で加熱させ気化させ、気化させたものを窒化キャリアガスによって高温ファーネスに輸送して1350℃で加熱した。高温ファーネスに設置したサファイア基板上に生成した粉体を、30質量%の硝酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。次に、10000rpmの回転速度で60分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノ粒子である BNNP(A)を得た。得られたBNNP(A)は、粒径が50nm以下の粒子は70質量%であり、平均粒径が45nmであった。
【0065】
(BNNP(B))
低温ファーネスでアンモニアボランを700℃で加熱させ気化させ、気化させたものを窒化キャリアガスによって高温ファーネスに輸送して1350℃で加熱した。高温ファーネスに設置したサファイア基板上に生成した粉体を、30質量%の硝酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。9000rpmの回転速度で30分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノ粒子であるBNNP(B)を得た。得られたBNNPは、粒径が50nm以下の粒子が60質量%であり、平均粒径が55nmであった。
【0066】
(BNNP(C))
低温ファーネスでアンモニアボランを700℃で加熱させ気化させ、気化させたものを窒化キャリアガスによって高温ファーネスに輸送させ1350℃で加熱した。高温ファーネスに設置したサファイア基板上に生成した粉体を、30質量%の硝酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。次に、5000rpmの回転速度で20分間遠心分離させ、上澄み液を採取した。得られた液を濾過、乾燥させ、窒化ホウ素ナノ粒子であるBNNP(C)を得た。得られたBNNP(C)は、粒径が50nm以下の粒子は30質量%であり、平均粒径が80nmであった。
【0067】
[実施例1]
まず、BNNT(A)とBNNS(A)を1:1の質量割合で混合して窒化ホウ素ナノ材料を得た。
次に、樹脂成分として、付加反応型シリコーン樹脂の主剤を構成するビニル両末端オルガノポリシロキサン(25℃での粘度が300mPa・s)2質量部に対して、窒化ホウ素ナノ材料を8質量部加え、さらに反応遅延剤0.01質量部、白金触媒を触媒量添加して、樹脂組成物の1液を調製した。また、付加反応型シリコーン樹脂の硬化剤を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(25℃での粘度が400mPa・s)2質量部に対して、窒化ホウ素ナノ材料を8質量部加え、樹脂組成物の2液を調製した。
1液と、2液を質量比(1液/2液)1:1で混合して、樹脂組成物を作製して評価した。その結果を表1に示す。なお、樹脂組成物における窒化ホウ素ナノ材料の充填率は、20体積%、樹脂成分の充填率は80体積%であった。
【0068】
[実施例2]
窒化ホウ素ナノ材料を、BNNT(A)とBNNS(A)を1:3の質量割合で混合して得た点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0069】
[実施例3]
窒化ホウ素ナノ材料を、BNNT(A)とBNNS(A)とBNNP(A)を1:1:1の質量割合で混合して得た点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0070】
[実施例4]
1液における窒化ホウ素ナノ材料の量を2質量部に変更し、2液における窒化ホウ素ナノ材料の量を2質量部に変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。樹脂組成物における窒化ホウ素ナノ材料の充填率は5体積%、樹脂成分の充填率は95体積%であった。
【0071】
[実施例5]
樹脂成分として、エポキシ樹脂(商品名「エピコート828US」、三菱ケミカル社製)100質量部に対して、熱硬化剤としてジシアンジアミド(東京化成工業社製)30質量部、及び分散剤(商品名「KBM403」、信越シリコーン社製)1質量部を加えて、樹脂混合物を調製した。この樹脂混合物54.2質量部に対して、実施例1と同様に作製した窒化ホウ素のナノ材料を加え、遊星撹拌機を用いて25℃で5分間攪拌することにより、樹脂組成物を得た。樹脂組成物の評価結果を表1に示す。なお、樹脂組成物における窒化ホウ素ナノ材料の充填率は20体積%、樹脂成分の充填率は80体積%であった。
【0072】
[実施例6]
1液における窒化ホウ素ナノ材料の量を0.5質量部に変更し、さらにアルミナ粒子を71.8質量部配合するとともに、2液における窒化ホウ素ナノ材料の量を0.2質量部に変更し、さらにアルミナ粒子を20質量部配合した点を除いて実施例1と同様に実施した。樹脂組成物における窒化ホウ素ナノ材料の充填率は1体積%、アルミナ粒子の充填率は75体積%、樹脂成分の充填率は24体積%であった。なお、アルミナ粒子としては、平均粒径9μmの商品名「AS50」(昭和電工社製)を使用した。
【0073】
[比較例1~5]
表1に示すとおりに、窒化ホウ素ナノ材料として、BNNT、BNNS,BNNPのいずれかを単独で使用した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0074】
[比較例6~8]
窒化ホウ素ナノ材料を、表1に示すとおりに混合して得たものに変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0075】
[比較例9]
窒化ホウ素ナノ材料を、表1に示すとおりに混合して得たものに変更した点を除いて実施例5と同様に実施した。
【0076】
【表1】
※MWはマルチウォールチューブを、SWはシングルウォールチューブであることを示す。
【0077】
表1に示すとおりに、各実施例では、窒化ホウ素ナノ材料がBNNTとBNNSを含み、かつラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1以上となることで、樹脂組成物の粘度を低く維持しつつ、樹脂組成物から形成される複合材料の熱伝導率を良好にすることができた。
それに対して、各比較例では、窒化ホウ素ナノ材料がBNNT及びBNNSの一方又は両方を含まず、或いは、ラマンスペクトルのピークトップが1369cm-1未満となったため、樹脂組成物の低粘度化と、複合材料の熱伝導率の向上を両立できなかった。