(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/115 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
H01R13/115 Z
(21)【出願番号】P 2021017476
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】平郡 克吉
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082158(JP,A)
【文献】特開昭61-237375(JP,A)
【文献】特開平05-335044(JP,A)
【文献】特開2000-353562(JP,A)
【文献】特開2014-170659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/05
H01R 13/10-13/11
H01R 13/115
H01R 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子のタブ部が挿入される筒状部と、
該筒状部の軸方向に延びて形成された複数の弾性片と、を備え、
前記複数の弾性片は、基端が前記筒状部の一つの壁に連続し、自由端が前記一つの壁の内面に対向して延びる片持ち梁状に形成されているとともに、幅方向に並んで設けられる主弾性片と側方弾性片とを有し、
前記主弾性片は、前記自由端側から幅方向に延出して、前記側方弾性片と前記一つの壁との間に位置する支持片を有していることを特徴とする雌端子。
【請求項2】
前記主弾性片の幅寸法は、前記側方弾性片の幅寸法より大きいことを特徴とする請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記筒状部には、前記一つの壁から突出し、前記複数の弾性片が変位した際に、前記支持片に当接可能な位置にある過大変位防止片が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、多種多様な電子機器が搭載され、電子機器に電力や制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスが配索されている。ワイヤハーネスは、複数の電線と、コネクタと、を備え、このコネクタを電子機器のコネクタや他のワイヤハーネスのコネクタに嵌合させることで、電子機器や他のワイヤハーネスに接続される。
【0003】
このようなコネクタを構成する端子として、特許文献1には、雌型の端子金具(以下、雌端子と記す)が開示されている。特許文献1に開示された雌端子は、角筒状に形成されて、雄型の端子金具のタブが挿入される接続部と、電線の端末に圧着接続されるバレル部と、を備える。接続部の内部には、接続部を構成する底壁の前縁から折り返されて(以下では「湾曲状折り返し部」と記す)、後方かつ斜め上方に延びて形成された弾性接触片が収容されている。この弾性接触片は、先端縁から基端(湾曲状折り返し部)側に2本のスリットが切り込み形成されていることによって、3本の弾性接触片が幅方向に並んで形成されている。これらの弾性接触片は、湾曲状折り返し部を支点として先端側が上下するように独立して弾性変位可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の雌端子における3本の弾性接触片は、接続部の幅寸法内で分割されて設けられており、1つ1つの弾性接触片の幅寸法は狭く、強度が弱いものとなっている。ここで、例えば、従来の雌端子を取り扱っている際に、各弾性接触片に過大な外力が加わった場合に、各弾性接触片は、湾曲状折り返し部を支点とするようにして弾性変形し、弾性変形限界を超えると、湾曲状折り返し部が塑性変形する虞がある。各弾性接触片の湾曲状折り返し部が塑性変形してしまうと、各弾性接触片のバネ性が失われ、雌端子と雄端子の電気接続信頼性の低下を招いてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、雄端子に対する電気的接続信頼性の低下が防止される雌端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、雄端子のタブ部が挿入される筒状部と、該筒状部の軸方向に延びて形成された複数の弾性片と、を備え、前記複数の弾性片は、基端が前記筒状部の一つの壁に連続し、自由端が前記一つの壁の内面に対向して延びる片持ち梁状に形成されているとともに、幅方向に並んで設けられる主弾性片と側方弾性片とを有し、前記主弾性片は、前記自由端側から幅方向に延出して、前記側方弾性片と前記一つの壁との間に位置する支持片を有していることを特徴とする雌端子である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、支持片が設けられていることにより、側方弾性片に単独で外力が加わった場合に、側方弾性片は、主弾性片と共に弾性変形することで外力が分散されるから、側方弾性片が塑性変形を起こすことを抑制できる。これにより、側方弾性片のバネ性が失われることが抑制され、雄端子との電気的接続信頼性の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る雌端子を示す斜視図である。
【
図2】前記雌端子の一部を切り欠いて示す斜視断面図である。
【
図6】前記雌端子を製造する製造方法を説明するための図であって、前記雌端子の展開状態を示す図である。
【
図7】前記雌端子に接続される雄端子を示す斜視図である。
【
図8】前記雌端子の筒状部内に前記雄端子のタブ部が挿入された状態を示す断面図である。
【
図9】
図8中のIII-III線に沿う断面図である。
【
図10】前記雄端子の要部を示す図であって、前記雄端子とは別の形態を示す斜視図である。
【
図11】前記雌端子の筒状部内に前記雄端子のタブ部が挿入された状態を示す断面図である。
【
図12】前記雌端子の筒状部内において、主弾性片に異物が接触して外力が加わる様子を示す断面図である。
【
図13】前記雌端子の筒状部内において、側方弾性片に異物が接触して外力が加わる様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を
図1~13に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る雌端子1を示す斜視図である。
【0011】
雌端子1は、導電性部材から構成され、
図1、7に示すように、雄端子10(
図7に示す)のタブ部11が挿入される角筒状の雌電気接触部2と、(不図示の)電線が接続される雌電線接続部3と、を備える。即ち、雌端子1の雌電気接触部2に、雄端子10のタブ部11が挿入されて、これらの雌端子1と雄端子10は、電気的かつ機械的に接続される。本実施形態では、雌電気接触部2の軸方向をY方向とし、Y方向に直交する2方向をそれぞれX方向及びZ方向とする。Y方向を長手方向と記し、長手方向のうち一方を「前方」と記し、他方を「後方」と記す場合がある。また、X方向を幅方向と記し、Z向を上下方向と記し、上下方向のうち一方を「上方」と記し、他方を「下方」と記す場合がある。
【0012】
雌電気接触部2は、
図1~5に示すように、請求項中の筒状部に相当する雌箱部21と、該雌箱部21の内部に設けられた3本(複数)の弾性片22R、23、22Lと、を備える。
【0013】
雌箱部21は、
図1~5に示すように、Y方向を延在方向(長手方向)とする四角筒状に形成されている。この雌箱部21は、
図1~3に示すように、請求項中の一つの壁に相当する底壁210と、該底壁210の上方に対向する上壁211(
図1、3に示す)と、幅方向Xに対向する一対の側壁212R、212Lと、を備える。
図2は、雌端子1の雌箱部21の一部を切り欠いて示す斜視断面図である。
【0014】
底壁210には、
図2~5に示すように、一対の過大変位防止片24、24と、一対の設置片25、25と、が設けられている。一対の過大変位防止片24、24は、底壁210の一部がコ字状に切り欠かれ、上方に折り起されて形成されたものであり、幅方向Xに並んで設けられている。
図4、5に示すように、各過大変位防止片24の上縁24uは、底壁210の上面210uより上方に位置している。即ち、各過大変位防止片24は、底壁210から突出して設けられている。この過大変位防止片24は、底壁210の長手方向Yの略中央部に位置して、幅方向Xに並んで設けられている。また、各過大変位防止片24は、
図4、5に示すように、(後述する)支持片232と上下方向Zに重なる位置に設けられている。過大変位防止片24が設けられていることにより、(後述する)弾性片22R、23、22Lに過大な外力が加わったとしても、支持片232が過大変位防止片24に当接することにより、弾性片22R、23、22Lの弾性変形限界を超える変形が阻止されるようになっている。
【0015】
一対の設置片25、25は、底壁210の一部がコ字状に切り欠かれて形成されたものであり、
図3に示すように、幅方向Xに並んで設けられている。
図4、5に示すように、各設置片25の下縁25dは、底壁210の下面210dより下方に位置している。
【0016】
上壁211には、
図3、5に示すように、一対の側壁212R、212Lのうち、一方の側壁212Lから延設され折り曲げられた重ね壁213が設けられている。また、
図3に示すように、上壁211には、打ち出しにより成形された一対の接触リブ26、26が設けられている。各接触リブ26は、
図3、5に示すように、底壁210に向けて凸となるように形成されているとともに、長手方向Yに延在して設けられている。一対の接触リブ26、26は、幅方向Xに間隔をあけて並んで設けられている。
【0017】
3本の弾性片22R、23、22Lは、
図2に示すように、それぞれ、雌箱部21における底壁210の前端210fに連続する部分(
図6中の符号R1が示す部分)が湾曲状に折り返されて形成されたものである。以下では、湾曲状に折り返された部分R1(
図6参照)を「湾曲状折り返し部20f」と記す場合がある。3本の弾性片22R、23、22Lは、
図4、5に示すように、湾曲状折り返し部20fを基端(湾曲状折り返し部と同一符号20fを付与する)とし、自由端20bが後方に向かうにしたがって上壁211に近づくように傾斜した片持ち梁状に形成されている。即ち、3本の弾性片22R、23、22Lは、自由端20bが底壁210(一つの壁)の内面に対向して延びる片持ち梁状に形成されている。このような各弾性片22R、23、22Lに外力が加わった場合に、各弾性片22R、23、22Lは、湾曲状折り返し部20fを支点とするようにして弾性変形し、弾性変形に伴って復元力(反力)が生じるようになっている。
【0018】
3本の弾性片22R、23、22Lは、
図3に示すように、幅方向Xに並んで設けられているとともに、長手方向Yの寸法が略同じ寸法となるように形成されている。3本の弾性片22R、23、22Lのうち、幅方向Xの中央に位置する弾性片を「主弾性片23」と記し、主弾性片23の幅方向Xの両側の弾性片を「側方弾性片22R(22L)」と記す。
図3に示すように、主弾性片23の幅方向Xの寸法L1(幅寸法)は、側方弾性片22R(22L)の幅方向Xの寸法L2(幅寸法)より大きい寸法(主弾性片23の幅寸法L1>側方弾性片22R(22L)の幅寸法L2)となるように形成されている。これにより、主弾性片23の強度は、側方弾性片22R(22L)の強度より大きい強度(主弾性片23の強度>側方弾性片22R(22L)の強度)となり、主弾性片23の反力は、側方弾性片22R(22L)の反力より大きい反力(主弾性片23の反力>側方弾性片22R(22L)の反力)となっている。
【0019】
主弾性片23は、
図2、4に示すように、基端20fが底壁210の前端210fに連続する湾曲状折り返し部20fを含んで構成された片持ち梁状の主弾性片本体230と、該主弾性片本体230に連続する部分(
図6中の符号R2が示す部分)が折れ曲がって形成された折り曲げ部231と、該折り曲げ部231に連続して主弾性片本体230の底壁210側の面に重なって設けられた支持片232と、打ち出しにより成形された主接点233と、を備える。
【0020】
支持片232は、
図2に示すように、幅方向Xの両側に延出して、(後述する)側方弾性片22R(22L)の下方において、側方弾性片22R(22L)と底壁210との間に位置している。この支持片232は、主弾性片23や(後述する)側方弾性片22R(22L)が自然状態である際に、側方弾性片22R(22L)に接触、または、近接して設けられている。
【0021】
主接点233は、
図2に示すように、打ち出しにより成形されたものであり、上壁211に向けて凸になるように形成されている。主接点233は、長手方向Yに延在して設けられている。
【0022】
側方弾性片22R(22L)は、
図2、5に示すように、基端20fが底壁210の前端210fに連続する湾曲状折り返し部20fを含んで構成された片持ち梁状の側方弾性片本体221と、打ち出しにより成形された側方接点222と、を備える。
【0023】
側方接点222は、
図2に示すように、打ち出しにより成形されたものであり、上壁211に向けて凸になるように形成されている。側方接点222は、長手方向Yに延在して設けられている。
【0024】
雌電線接続部3は、
図1~5に示すように、雌電気接触部2の底壁210の後方側に連続する芯線加締め部31と、該芯線加締め部31の後方側に連続する被覆加締め部32と、を備える。
【0025】
芯線加締め部31は、
図1~5に示すように、加締め前の状態で、上方かつ幅方向Xの外側に向けて延びて形成された一対の芯線加締め片311、311を有して構成されている。一対の芯線加締め片311、311により、(不図示の)電線の被覆部が皮剥ぎされた芯線が加締められることにより、(不図示の)電線の芯線が芯線加締め部31に電気的に接続される。
【0026】
被覆加締め部32は、
図1~5に示すように、加締め前の状態で、上方かつ幅方向Xの外側に向けて延びて形成された一対の被覆加締め片321、321を有して構成されている。一対の被覆加締め片321、321により、(不図示の)電線の被覆部が加締められることにより、(不図示の)電線が被覆加締め部32に機械的に接続されて、雌端子1の電線に対する保持力が確保される。
【0027】
次に、雌端子1を形成する方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、雌端子1の展開状態を示す図である。まず、導電性の板材に打抜き加工を施して、所定形状部1Tを形成する。
【0028】
雌電気接触部2を形成する際には、所定形状部1Tの所定位置に打ち出し加工を施して、一対の接触リブ26、26と、主接点233と、一対の側方接点222、222と、が形成される。また、底壁210の一部を折り曲げて、一対の過大変位防止片24、24が形成される。また、底壁210の前端210fに連続する部分R1を湾曲状に折り返して湾曲状折り返し部20fが形成され、主弾性片本体230に連続する部分R2を折り返して折り曲げ部231が形成される。これにより支持片232が形成される。このようにして支持片232を有する主弾性片23と、一対の側方弾性片22R、22Lと、が形成される。
【0029】
続いて、一対の側壁212R、212Lのうち一方の側壁212Rと上壁211との境界部k2を折り曲げ、側壁212Lと重ね壁213との境界部k3を折り曲げて、底壁210と一対の側壁212R、212Lとの境界部k1、k1を折り曲げる。これにより、一対の設置片25、25が形成されて、雌電気接触部2を形成する。また、雌電線接続部3を形成する場合には、所定形状部1Tの所定位置に曲げ加工を施して、一対の芯線加締め片311、311と、一対の被覆加締め片321、321と、が形成されて、雌電線接続部3を形成する。これにより雌端子1が形成される。
【0030】
次に、雌端子1に接続される雄端子10について、
図7を参照して説明する。
【0031】
雄端子10は、導電性部材から構成され、
図7に示すように、雌端子1の雌電気接触部2に挿入される平板状のタブ部11と、該タブ部11の後方に連続する四角筒状の雄箱部12と、(不図示の)電線が接続される雄電線接続部13と、を備える。
【0032】
タブ部11は、導電性の板材を平板状に折り曲げて形成されている。このタブ部11は、幅寸法が略一定となるように形成されているとともに、主弾性片23と、一対の側方弾性片22R、22Lを同時に押圧可能な幅寸法を有して構成されている。このタブ部11は、
図8に示すように、雌端子1の雌電気接触部2に挿入された際に、上面11uが雌電気接触部2の接触リブ26に接触し、底面11dが、主接点233および一対の側方接点222、222に接触して、主弾性片23および一対の側方弾性片22R、22Lを押圧可能な厚みを有して構成されている。
【0033】
雄電線接続部13は、
図7に示すように、雄箱部12の底壁120の後方側に連続する芯線加締め部131と、該芯線加締め部131の後方側に連続する被覆加締め部132と、を備える。芯線加締め部131に、(不図示の)電線の芯線は加締めにより電気的に接続され、被覆加締め部132に、(不図示の)電線の被覆部は加締めにより機械的に接続される。
【0034】
このような雄端子10と雌端子1とを電気的に接続する際には、
図8、9に示すように、雄端子10のタブ部11の先端11fを、雌端子1の雌電気接触部2の前端2fに近付けて挿入する。挿入が進んで、タブ部11の先端11fが、雌電気接触部2の一対の接触リブ26、26に接触する。さらに挿入が進んで、タブ部11の上面11uが雌電気接触部2の接触リブ26に接触し、底面11dが、主接点233および一対の側方接点222、222に接触して、主弾性片23および側方弾性片22R(22L)を押圧する。即ち、主弾性片23および一対の側方弾性片22R、22Lは、タブ部11により押圧されて、弾性変形する。この際、主弾性片23の弾性変形量と、一対の側方弾性片22R、22Lの各弾性変形量は、略等しい変形量(主弾性片23の弾性変形量=各側方弾性片22R(22L)の弾性変形量)となっていて、主弾性片23の支持片232は、側方弾性片22R(22L)の自由端20bの下方に接触または近接している。主弾性片23および側方弾性片22R(22L)が弾性変形することによる反力により、タブ部11を、雌電気接触部2の上壁211側に押し付ける。これにより、雄端子10と雌端子1とが電気的に接続される。
【0035】
次に、
図10に示すように、雄端子10Aのタブ部11Aに、打ち出し加工が施されて形成された凸条14が設けられた場合について説明する。
図10では、雄端子10Aのタブ部11Aのみを示し、雄箱部12および雄電線接続部13は省略されている。
【0036】
タブ部11Aが、雌端子1の雌電気接触部2に挿入されることにより、
図11に示すように、上面11uが雌電気接触部2の接触リブ26に接触し、凸条14の底面14dが主接点233に接触して主弾性片23を押圧し、凸条14がない部分(タブ部11Aの底面11d)が各側方接点222に接触して各側方弾性片22R(22L)を押圧する。即ち、主弾性片23および一対の側方弾性片22R、22Lは、タブ部11Aにより押圧されて、弾性変形する。この際、主弾性片23の弾性変形量は、一対の側方弾性片22R、22Lの各弾性変形量より、大きい変形量(主弾性片23の弾性変形量>各側方弾性片22R(22L)の弾性変形量)となり、主弾性片23は、大きい反力を有して、タブ部11Aを雌電気接触部2の上壁211側に押し付ける。この状態では、主弾性片23の支持片232は、側方弾性片22R(22L)の自由端20bの下方側に離間している。これにより、雄端子10Aと雌端子1とが電気的に接続される。
【0037】
続いて、雌端子1の雌電気接触部2に、例えば工具等の棒状または板状の異物Vが侵入した場合について、
図12、13を参照して説明する。
図12は、雌端子1の雌箱部21内において、主弾性片23に異物Vが接触して外力Fが加わる様子を示す断面図である。
図13は、雌端子1の雌箱部21内において、側方弾性片22R(22L)に異物Vが接触して外力Fが加わる様子を示す断面図である。
【0038】
図12に示すように、例えば異物V等の侵入により、主弾性片23のみに外力Fが加わった際には、主弾性片本体230が押されて弾性変形し、主弾性片本体230とともに支持片232が変位する。ここで、主弾性片23に過大な外力Fが加わったとしても、主弾性片23の強度が、側方弾性片22R(22L)の強度より大きい強度となるように構成されていることによって、主弾性片23が大きい反力を有して塑性変形を起こすことが抑制される。また、主弾性片23にそれ以上の外力Fが加わった場合には、支持片232が過大変位防止片24に当接することにより、主弾性片23におけるそれ以上の変位が阻止される。よって、主弾性片23の過大な弾性変形が防止されて、主弾性片23が塑性変形を起こすことが防止される。
【0039】
また、
図13に示すように、例えば異物V等の侵入により、側方弾性片22R(22L)のみに外力Fが加わった際には、側方弾性片本体221により支持片232が押されて、支持片232とともに主弾性片本体230が弾性変形する。即ち、支持片232が設けられていることにより、側方弾性片22R(22L)のみに外力Fが加わったとしても、支持片232を介して、側方弾性片22R(22L)とともに主弾性片本体230が弾性変形する。ここで、側方弾性片22R(22L)は、主弾性片23に比して強度は小さいものの、側方弾性片22R(22L)に単独で外力Fが加わった場合に、側方弾性片22R(22L)は、主弾性片23と共に弾性変形することで外力Fが分散されるから、側方弾性片22R(22L)が塑性変形を起こすことが抑制される。また、側方弾性片22R(22L)にそれ以上の外力Fが加わった場合には、支持片232が過大変位防止片24に当接することにより、側方弾性片22R(22L)におけるそれ以上の変位が阻止される。よって、側方弾性片22R(22L)の過大な弾性変形が防止されて、側方弾性片22R(22L)が塑性変形を起こすことが防止される。
【0040】
上述した実施形態によれば、例えば異物V等の侵入により、側方弾性片22R(22L)に単独で外力が加わった場合に、支持片232が設けられていることにより、側方弾性片22R(22L)は、主弾性片23と共に弾性変形することで外力が分散されるから、側方弾性片22R(22L)が塑性変形を起こすことを抑制できる。これにより、側方弾性片22R(22L)のバネ性が失われることが抑制され、雄端子10との電気的接続信頼性の低下が防止される。
【0041】
また、主弾性片23の幅寸法L1は、側方弾性片22R(22L)の幅寸法L2より大きくなるように形成されている(主弾性片23の幅寸法L1>側方弾性片22R(22L)の幅寸法L2)。これにより、主弾性片23の強度は、側方弾性片22R(22L)の強度より大きい強度(主弾性片23の強度>側方弾性片22R(22L)の強度)となっている。主弾性片23の強度が、側方弾性片22R(22L)の強度より大きい強度となるように構成されていることによって、例えば異物V等の侵入により、主弾性片23のみに外力が加わったとしても、主弾性片23が塑性変形を起こすことを抑制できる。
【0042】
また、強度が小さい側方弾性片22R(22L)に単独で外力が加わった場合に、側方弾性片22R(22L)は、主弾性片23と共に弾性変形することにより、側方弾性片22R(22L)が塑性変形を起こすことを抑制できる。したがって、例えば異物V等の侵入により、主弾性片23のみに外力が加わったとしても、側方弾性片22R(22L)のみに外力が加わったとしても、側方弾性片22R(22L)が塑性変形を起こすことを抑制できる。これにより、各弾性片22R、23、22Lのバネ性が失われることが抑制され、雄端子10との電気的接続信頼性の低下が防止される。
【0043】
また、雌箱部21(箱状部)には、底壁210(一つの壁)から突出し、各弾性片22R、23、22Lが変位した際に、支持片232に当接可能な位置にある過大変位防止片24が設けられている。これにより、各弾性片22R、23、22Lに過大な外力Fが加わった場合に、支持片232が過大変位防止片24に当接することにより、各弾性片22R、23、22Lにおけるそれ以上の変位が阻止される。よって、主弾性片23のみに外力が加わった場合でも、側方弾性片22R(22L)のみに外力が加わった場合でも、主弾性片23と側方弾性片22R(22L)の過大変位を防止して、各弾性片22R、23、22Lが塑性変形を起こすことを抑制できる。これにより、各弾性片22R、23、22Lのバネ性が失われることが抑制され、雄端子10との電気的接続信頼性の低下が防止される。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 雌端子
10、10A 雄端子
11、11A タブ部
20f 基端
20b 自由端
21 雌箱部(筒状部)
22R(22L) 側方弾性片
23 主弾性片
24 過大変位防止片
210 底壁(筒状部の一つの壁)
232 支持片
L1 主弾性片の幅寸法
L2 側方弾性片の幅寸法
矢印X 幅方向
矢印Y 長手方向(筒状部の軸方向)