(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】部品供給方法及び部品取り出し装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
H05K13/02 C
(21)【出願番号】P 2021027358
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 真一
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-035637(JP,A)
【文献】特開2002-314289(JP,A)
【文献】特開2016-157899(JP,A)
【文献】特開平11-097889(JP,A)
【文献】特開平05-110288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品吸引開口が穿孔された部品収納用のポケットがテープ送り方向に配列されたキャリアテープと、前記ポケットの上面開口を封止するカバーテープとを含む部品収納テープを、前記カバーテープを前記キャリアテープから剥離するテープ剥離位置と、前記ポケットから吸着ノズルで部品を取り出す部品吸着位置とを順次通過するように間欠的に送り出し、
前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間であって、前記ポケットの上面開口から前記部品が露呈する領域において前記キャリアテープに負圧を作用させ、前記部品吸引開口を通して前記ポケット内の部品を前記負圧で拘束する、部品供給方法
において、
前記送り出しの対象となった対象部品収納テープが、前記部品吸引開口を備えているか否かを判定し、
前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えていない場合には、前記キャリアテープに負圧を作用させず、
前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えている場合には、当該対象部品収納テープによる部品供給期間中、前記キャリアテープに常時負圧を作用させる、部品供給方法。
【請求項2】
部品吸引開口が穿孔された部品収納用のポケットがテープ送り方向に配列されたキャリアテープと、前記ポケットの上面開口を封止するカバーテープとを含む部品収納テープを、予め定められたテープ剥離位置と、部品吸着位置とを順次通過するように間欠的に送り出すテープ送り出し機構と、
前記テープ剥離位置において、前記カバーテープを前記キャリアテープから剥離するテープ剥離機構と、
前記部品吸着位置において、前記ポケットから部品を取り出す吸着ノズルと、
前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間であって、前記ポケットの上面開口から前記部品が露呈する領域に配置され、前記部品吸引開口を通して前記ポケット内の部品を負圧で拘束する負圧吸引機構と、
を備える部品取り出し装置
において、
前記負圧吸引機構の動作を制御する制御部と、
前記テープ送り出し機構が送り出し対象とする対象部品収納テープが、前記部品吸引開口を備えているか否かの情報を取得する取得部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えていない場合には、前記負圧吸引機構の動作を休止させ、
前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えている場合には、当該対象部品収納テープによる部品供給期間中、前記負圧吸引機構を常時動作させる、部品取り出し装置。
【請求項3】
請求項2に記載の部品取り出し装置において、
前記吸着ノズルは、負圧で部品を吸着して当該部品を取り出すノズルであり、
前記負圧吸引機構が前記部品の拘束のために発生する負圧は、前記吸着ノズルが部品を正常に吸着する際の部品吸着負圧よりも低い負圧である、部品取り出し装置。
【請求項4】
請求項3に記載の部品取り出し装置において、
前記負圧吸引機構が前記部品の拘束のために発生する負圧は、前記部品吸着負圧の半分以下の負圧である、部品取り出し装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の部品取り出し装置において、
前記部品吸引開口は、前記ポケットの底面に穿孔され、
負圧吸引機構は、
前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間における、前記キャリアテープの走行路の下面に開口部を有する吸引室と、
前記吸引室の空気を吸引して前記開口部に負圧を発生させる吸引装置と、を備える部品取り出し装置。
【請求項6】
請求項5に記載の部品取り出し装置において、
前記テープ送り出し機構が、前記部品吸引開口を備えた部品収納テープを前記部品吸着位置に向けて間欠的に送り出している部品供給期間中、
前記吸引装置は、前記吸引室の前記開口部に常時負圧を発生する、部品取り出し装置。
【請求項7】
請求項5に記載の部品取り出し装置において、
前記吸引室の前記開口部が、複数の小孔又はスリットを備えたプレート、若しくは、多孔質プレートによって形成されている、部品取り出し装置。
【請求項8】
請求項5に記載の部品取り出し装置において、
前記テープ送り出し機構、前記テープ剥離機構及び前記吸引室は、リールに巻回された部品収納テープを前記部品吸着位置に送り出すテープフィーダに装備され、
前記吸引装置は、前記テープフィーダ内に組み込まれたエアポンプを含む、部品取り出し装置。
【請求項9】
請求項5に記載の部品取り出し装置において、
前記テープ送り出し機構、前記テープ剥離機構及び前記吸引室は、リールに巻回された部品収納テープを前記部品吸着位置に送り出すテープフィーダに装備され、
前記吸着ノズルは、基板に部品を実装する表面実装機に装備され、
前記表面実装機は、前記吸着ノズルに部品吸着用の負圧を与える負圧発生部を備え、
前記吸引装置は、前記負圧発生部が生成する負圧を利用する、部品取り出し装置。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項に記載の部品取り出し装置において、
前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間における、前記キャリアテープの走行路の上面の一部を覆うように配置されるカバー部材をさらに備え、
前記負圧吸引機構は、前記カバー部材で覆われていない領域において、前記ポケット内の部品を負圧で拘束する、部品取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品吸着位置へ部品収納テープに収納された部品を供給する部品供給方法、及び前記部品吸着位置において部品を取り出す部品取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品を基板に実装する表面実装機は、部品収納テープに収納された部品を部品吸着位置に送り出すテープフィーダと、前記部品吸着位置において前記部品収納テープから部品を取り出す吸着ノズルとを含む。前記部品収納テープは、部品収納用のポケットがテープ送り方向に配列されたキャリアテープと、前記ポケットの上面開口を封止するカバーテープとを含む。前記カバーテープは、前記部品吸着位置の手前で前記キャリアテープから剥がされ、部品が前記ポケットの上面開口から露呈した状態とされる。
【0003】
前記カバーテープが剥がされると、前記ポケット内の部品の姿勢が不安定になる場合がある。例えば、前記カバーテープ剥離後の前記キャリアテープの間欠送りにおいて、その送り動作から送り停止時に、部品が前記ポケット内から浮き上がるような挙動を為し、異常な姿勢に至ることがある。この場合、前記吸着ノズルによる部品の吸引に異常が発生することが多い。この問題に鑑み、特許文献1には、キャリアテープの下方からポケット内の部品に磁力を作用させて、部品の姿勢を安定させる技術が開示されている。また、特許文献2には、バルクフィーダにおいて部品吸着位置の直下に負圧吸引開口を設け、部品姿勢を負圧で安定させる技術が開示されている。
【0004】
ところで、近年、前記部品収納テープとして、前記ポケットの底面に部品吸引開口を備えたテープが採用されるケースが増えている。前記部品吸引開口は、部品の前記ポケットへの封入時に、当該部品吸引開口を通してポケット内の部品にエア吸引力を作用させ、部品姿勢を安定させるための開口である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-212193号公報
【文献】特開2001-230591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、吸着ノズルでの部品吸引を阻害しない一方で部品姿勢安定を図ることができるような適正磁力を、部品種ごとに調整するという煩わしい作業が必要となる。また、当該方法は、非磁性体の部品や、チップコイルや磁気部品等の磁力を嫌う部品の場合には適用できないという問題がある。特許文献2の方法をテープフィーダに適用して部品吸着位置の直下で部品を負圧吸引しても、前記部品吸着位置よりも上流のカバーテープの剥離位置付近で既に部品姿勢が乱れていた場合は、部品姿勢安定の効果が期待できない。なお、部品姿勢が乱れないよう、部品収納テープの送り速度を遅くすることも考えられるが、この場合生産タクトが低下する不具合が生じる。
【0007】
本発明は、部品収納テープに収納された部品を、安定姿勢で部品吸着位置へ供給することができる部品供給方法、及び前記部品吸着位置において安定姿勢の部品を取り出すことができる部品取り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る部品供給方法は、部品吸引開口が穿孔された部品収納用のポケットがテープ送り方向に配列されたキャリアテープと、前記ポケットの上面開口を封止するカバーテープとを含む部品収納テープを、前記カバーテープを前記キャリアテープから剥離するテープ剥離位置と、前記ポケットから吸着ノズルで部品を取り出す部品吸着位置とを順次通過するように間欠的に送り出し、前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間であって、前記ポケットの上面開口から前記部品が露呈する領域において前記キャリアテープに負圧を作用させ、前記部品吸引開口を通して前記ポケット内の部品を前記負圧で拘束する、部品供給方法において、前記送り出しの対象となった対象部品収納テープが、前記部品吸引開口を備えているか否かを判定し、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えていない場合には、前記キャリアテープに負圧を作用させず、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えている場合には、当該対象部品収納テープによる部品供給期間中、前記キャリアテープに常時負圧を作用させる。
【0009】
本発明の他の局面に係る部品取り出し装置は、部品吸引開口が穿孔された部品収納用のポケットがテープ送り方向に配列されたキャリアテープと、前記ポケットの上面開口を封止するカバーテープとを含む部品収納テープを、予め定められたテープ剥離位置と、部品吸着位置とを順次通過するように間欠的に送り出すテープ送り出し機構と、前記テープ剥離位置において、前記カバーテープを前記キャリアテープから剥離するテープ剥離機構と、前記部品吸着位置において、前記ポケットから部品を取り出す吸着ノズルと、前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間であって、前記ポケットの上面開口から前記部品が露呈する領域に配置され、前記部品吸引開口を通して前記ポケット内の部品を負圧で拘束する負圧吸引機構と、を備える部品取り出し装置において、前記負圧吸引機構の動作を制御する制御部と、前記テープ送り出し機構が送り出し対象とする対象部品収納テープが、前記部品吸引開口を備えているか否かの情報を取得する取得部と、をさらに備え、前記制御部は、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えていない場合には、前記負圧吸引機構の動作を休止させ、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えている場合には、当該対象部品収納テープによる部品供給期間中、前記負圧吸引機構を常時動作させる。
【0010】
上記の部品供給方法又は部品取り出し装置によれば、部品収納テープに具備されている部品吸引開口を利用して、ポケット内の部品に負圧を作用させ、当該部品の姿勢を安定させることができる。しかも、ポケット内の部品への負圧の作用は、スポット的なものではなく、テープ剥離位置と部品吸着位置との間における前記ポケットの上面開口から前記部品が露呈する領域について為される。このため、カバーテープがキャリアテープから剥離された後、キャリアテープの間欠送り時、並びに、部品吸着位置での吸着ノズルによる部品吸着時において、継続的にポケット内の部品の姿勢を安定させることができる。従って、良好な姿勢で部品を吸着ノズルに吸着させることができる。
【0011】
上記の部品取り出し装置において、前記吸着ノズルは、負圧で部品を吸着して部品を取り出すノズルであり、前記負圧吸引機構が前記部品の拘束のために発生する負圧は、前記吸着ノズルが部品を正常に吸着する際の部品吸着負圧よりも低い負圧であることが望ましい。
【0012】
この部品取り出し装置によれば、吸着ノズルによる部品吸着負圧が、負圧吸引機構がポケット内の部品に作用させる負圧に勝る。従って、前記吸着ノズルによる部品の取り出しが、部品の姿勢安定用の負圧によって阻害されない。
【0013】
この場合、前記負圧吸引機構が前記部品の拘束のために発生する負圧は、前記部品吸着負圧の半分以下の負圧であることが望ましい。この態様によれば、姿勢安定用の負圧を前記部品吸着負圧に対して十分に低くすることができ、より前記吸着ノズルによる部品の取り出しに影響を与えないようにすることができる。
【0014】
上記の部品取り出し装置において、前記部品吸引開口は、前記ポケットの底面に穿孔され、負圧吸引機構は、前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間における、前記キャリアテープの走行路の下面に開口部を有する吸引室と、前記吸引室の空気を吸引して前記開口部に負圧を発生させる吸引装置と、を備えることが望ましい。
【0015】
この部品取り出し装置によれば、キャリアテープの走行路の下面側から、ポケット内の部品に負圧を作用させる。つまり、キャリアテープの走行路の下面に、吸引室を配置するだけで、負圧吸引機構を構成することができる。このため、汎用されているテープフィーダの基本構成を変えることなく、負圧吸引機構を組み込むことができる。
【0016】
上記の部品取り出し装置において、前記テープ送り出し機構が、前記部品吸引開口を備えた部品収納テープを前記部品吸着位置に向けて間欠的に送り出している部品供給期間中、前記吸引装置は、前記吸引室の前記開口部に常時負圧を発生することが望ましい。
【0017】
一般的な負圧吸引機構は、負圧吸引のオン-オフの切り替えの応答性は良好ではない。一方、部品収納テープによる部品供給タクトは、一般に非常に速い。従って、上記の態様の通り、部品供給期間中は常時負圧を発生させることで、ポケット内の部品の拘束漏れが発生しないようにすることができる。
【0018】
上記の部品取り出し装置において、前記吸引室の前記開口部が、複数の小孔又はスリットを備えたプレート、若しくは、多孔質プレートによって形成されていることが望ましい。
【0019】
この部品取り出し装置によれば、開口部にはプレートが存在することから、キャリアテープの下面のガイド性を損なわれない。また、小孔又はスリット、多孔質体をすることで、前記開口部の開口度が規制され、負圧を作用させる際のエアリークを抑制できる。
【0020】
上記の部品取り出し装置において、前記テープ送り出し機構、前記テープ剥離機構及び前記吸引室は、リールに巻回された部品収納テープを前記部品吸着位置に送り出すテープフィーダに装備され、前記吸引装置は、前記テープフィーダ内に組み込まれたエアポンプを含むことが望ましい。
【0021】
この部品取り出し装置によれば、テープフィーダをいずれの表面実装機に装着した場合でも、ポケット内の部品の姿勢を安定させる効果を発揮させ得る。
【0022】
上記の部品取り出し装置において、前記テープ送り出し機構、前記テープ剥離機構及び前記吸引室は、リールに巻回された部品収納テープを前記部品吸着位置に送り出すテープフィーダに装備され、前記吸着ノズルは、基板に部品を実装する表面実装機に装備され、前記表面実装機は、前記吸着ノズルに部品吸着用の負圧を与える負圧発生部を備え、前記吸引装置は、前記負圧発生部が生成する負圧を利用することが望ましい。
【0023】
この部品取り出し装置によれば、表面実装機が備えている吸着ノズル用の負圧発生部を利用するので、部品姿勢の安定化のために新たに負圧発生部を装備する必要がない。
【0024】
上記の部品取り出し装置において、前記テープ剥離位置と前記部品吸着位置との間における、前記キャリアテープの走行路の上面の一部を覆うように配置されるカバー部材をさらに備え、前記負圧吸引機構は、前記カバー部材で覆われていない領域において、前記ポケット内の部品を負圧で拘束することが望ましい。
【0025】
この部品取り出し装置によれば、カバー部材によりポケットの上面開口が覆われるので、ポケット内の部品の姿勢乱れを抑制できる。そして、前記カバー部材で覆われていない領域では、負圧によって部品の姿勢乱れが抑制される。
【0026】
上記の部品取り出し装置において、前記負圧吸引機構の動作を制御する制御部と、前記テープ送り出し機構が送り出し対象とする対象部品収納テープが、前記部品吸引開口を備えているか否かの情報を取得する取得部と、をさらに備え、前記制御部は、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えていない場合には、前記負圧吸引機構の動作を休止させ、前記対象部品収納テープが前記部品吸引開口を備えている場合には、当該対象部品収納テープによる部品供給期間中、前記負圧吸引機構を常時動作させることが望ましい。
【0027】
この部品取り出し装置によれば、部品吸引開口を備えていない部品収納テープがテープ送り出し機構の送り出し対象となった場合に、無用に負圧吸引機構が動作することを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、部品収納テープに収納された部品を、安定姿勢で部品吸着位置へ供給することができる部品供給方法、及び前記部品吸着位置において安定姿勢の部品を取り出すことができる部品取り出し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の部品取り出し装置の一例である表面実装機の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の部品取り出し装置を構成するテープフィーダの側断面図である。
【
図3】
図3は、前記テープフィーダの要部斜視図である。
【
図4】
図4は、部品吸引開口付きの部品収納テープの斜視図である。
【
図5】
図5は、前記テープフィーダの負圧吸引機構及びフィーダコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、前記表面実装機と前記テープフィーダとの関係を示す模式図である。
【
図7】
図7(A)~(C)は、比較例に係る部品供給方法を示す、テープフィーダのテープ剥離位置及び部品吸着位置の上面図及び側断面図である。
【
図8】
図8(A)~(C)は、比較例に係る部品供給方法を示す、テープフィーダのテープ剥離位置及び部品吸着位置の上面図及び側断面図である。
【
図9】
図9(A)~(C)は、本発明の実施形態に係る部品供給方法を示す、テープフィーダのテープ剥離位置及び部品吸着位置の上面図及び側断面図である。
【
図10】
図10(A)~(C)は、本発明の実施形態に係る部品供給方法を示す、テープフィーダのテープ剥離位置及び部品吸着位置の上面図及び側断面図である。
【
図11】
図11は、テープフィーダの負圧吸引機構の制御例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、前記表面実装機と前記テープフィーダとの関係の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る部品供給方法及び部品取り出し装置が、電子部品を基板に実装する表面実装機に適用される例を示す。表面実装機は、部品収納テープにより各種の部品の供給を受け、その部品を部品収納テープから取り出してプリント基板に実装する装置である。表面実装機に限らず、本発明の部品供給方法及び部品取り出し装置は、部品収納テープにて部品が供給される各種装置に適用することができる。
【0031】
[表面実装機の全体構造]
図1は、表面実装機1(部品取り出し装置)の概略構成を示す上面図である。表面実装機1は、各種の電子部品を基板Pに実装してなる実装基板を生産する装置である。
図1(及び後出の
図2、
図3)には、XYZの方向表示が付されている。以下の説明において、X方向を基板Pの移動方向である左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向という場合がある。
【0032】
表面実装機1は、ベース部10と、このベース部10の上面に組付けられた基板搬送部2、部品供給部3及びヘッドユニット4を含む。ヘッドユニット4には、基板認識カメラ5が搭載されている。ベース部10は、剛性を有するフレーム部材の組立体からなる。
【0033】
基板搬送部2は、電子部品が実装される基板Pを搬送する。基板搬送部2は、ベース部10上において、基板Pを左右方向へ搬送する一対のコンベア21、22を有している。コンベア21、22は、基板Pを右側から表面実装機1の機内に搬入し、所定の作業位置(
図1に示す基板Pの位置)まで左方へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、電子部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア21、22は基板Pを左側へ搬送し、表面実装機1の機外へ搬出する。
【0034】
部品供給部3は、基板Pへ実装される電子部品を供給する。部品供給部3は、基板搬送部2の前後方向に各々配置されている。各部品供給部3は、左右方向に配列された複数のテープフィーダ31を備えている。各テープフィーダ31は、各種の電子部品を所定間隔で保持した部品収納テープ6(
図4)が巻回されたリール66(
図6)を保持している。テープフィーダ31は、リール66から部品収納テープ6を間欠的に繰り出し、フィーダ先端の部品吸着位置に電子部品を供給する。テープフィーダ31及び部品収納テープ6の構造については、後記で詳述する。
【0035】
ヘッドユニット4は、部品供給部3から電子部品を取り出し、これを基板Pに実装する。ヘッドユニット4は、ベース部10の上空にXY方向に移動可能に配置され、前記部品吸着位置においてテープフィーダ31から電子部品を取り出し、前記作業位置において前記電子部品を基板Pの所定位置に実装する。ベース部10の上方には、X方向に延びる支持ビーム23が架設されている。ヘッドユニット4は、支持ビーム23に固定されたX軸固定レール24に対して移動可能に支持されている。
【0036】
支持ビーム23は、Y方向に延びるY軸固定レール25に支持され、このY軸固定レール25に沿ってY方向に移動可能である。X軸固定レール24に対して、X軸サーボモータ26及びボールねじ軸27が配置されている。Y軸固定レール25に対して、Y軸サーボモータ28及びボールねじ軸29が配置されている。ヘッドユニット4は、X軸サーボモータ26によるボールねじ軸27の回転駆動によってX方向に移動し、Y軸サーボモータ28によるボールねじ軸29の回転駆動によってY方向に移動する。
【0037】
ヘッドユニット4には、部品を保持して搬送するための複数の実装用ヘッド4Hが搭載されている。各ヘッド4Hは、その下端に装着された吸着ノズル42を含む。各ヘッド4Hは、ヘッドユニット4に対して昇降及びノズル中心軸(R軸)回りの回転が可能とされている。吸着ノズル42は、部品収納テープ6から電子部品を負圧で吸着して取り出し、これを基板Pの表面に搭載することが可能である。
【0038】
ベース部10にはマルチカメラ11が組み込まれている。マルチカメラ11は、ベース部10の上方を撮像視野とするカメラである。マルチカメラ11の主たる役目は、吸着ノズル42による当該電子部品の吸着状態を画像認識するために、吸着ノズル42に吸着された電子部品を下面側から撮像することにある。
【0039】
基板認識カメラ5は、ヘッドユニット4の左側に固定的に搭載されている。基板認識カメラ5は、コンベア21、22により前記作業位置に搬入された基板Pの表面に付設されている各種マークを撮像する。
図1では、前記マークの一例として、矩形の基板Pの対角線上に付設された一対のフィデューシャルマークFMを示している。フィデューシャルマークFMは、搬入された基板Pの前記作業位置の原点座標に対する位置ズレ量を検知するためのマークである。
【0040】
[テープフィーダ及び部品収納テープの詳細]
図2は、一つのテープフィーダ31の側断面図、
図3は、テープフィーダ31の要部斜視図である。
図4は、部品収納テープ6の斜視図である。
図2及び
図3中の矢印Dfは、表面実装機1の本体へのテープフィーダ31の装着方向を示している。テープフィーダ31は、ヘッド4Hの吸着ノズル42が部品を取り出す位置へ、部品収納テープ6に収容された部品Cを供給する装置である。部品Cは、例えば抵抗、トランジスタ、コンデンサ等のチップ状の電子部品、集積回路(IC)である。
【0041】
先ず、
図4を参照して、部品収納テープ6について説明する。部品収納テープ6は、部品Cを保持するキャリアテープ61と、キャリアテープ61の上面に貼着されたカバーテープ62とからなる。本実施形態では、合成樹脂製のキャリアテープ61及びカバーテープ62が用いられる例を示す。紙製のテープは安価であるが、紙粉が発生する問題が有る。このため、近年のスマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器用の基板に搭載される極小部品の供給キャリアとして、合成樹脂製の部品収納テープ6が用いられるケースが多くなっている。
【0042】
キャリアテープ61は、部品収納用のポケット63と、後述するスプロケット342との係合用の係合孔64とを備える。ポケット63及び係合孔64は、それぞれテープ送り方向Fに等ピッチで一列に配列されている。ポケット63は、キャリアテープ61を厚み方向に窪ませた上面開口の矩形凹部であり、部品Cを収容する空間を区画している。係合孔64は、キャリアテープ61を厚み方向に貫通する円形孔である。
【0043】
カバーテープ62は、テープ送り方向Fに長手のフィルムシートからなる。カバーテープ62は、ポケット63の上面開口を封止するように、キャリアテープ61の上面に貼着されている。吸着ノズル42にて部品Cを取り出す部品吸着位置の上流側で、カバーテープ62はキャリアテープ61から剥離される。
【0044】
各ポケット63の底面には、部品吸引開口65が穿孔されている。部品吸引開口65は、ポケット63の底面においてキャリアテープ61を厚み方向に貫通する円形孔である。部品吸引開口65は、部品収納テープ6の製造時において、部品Cの姿勢をポケット63で安定させるために、当該部品Cを負圧吸引するよう配置された開口である。部品収納テープ6は、キャリアテープ61のポケット63に部品Cを収納し、次いでポケット63の上面開口をカバーテープ62にて封止することで製造される。この際、部品吸引開口65を通して部品Cに負圧を作用させることで、部品Cはポケット63に吸い付いた状態となる。従って、部品Cがポケット63内で転動したり、ポケット63から飛び出したりする不具合を防止することができる。
【0045】
続いて、
図2及び
図3を参照して、テープフィーダ31について説明する。テープフィーダ31は、フィーダ本体32と、このフィーダ本体32に搭載されたクランプ33、テープ送り出し機構34、テープ剥離部材35(テープ剥離機構)、テープ引き取り機構36及び廃テープ収容部37とを備えている。
【0046】
フィーダ本体32は、テープフィーダ31のフレームの構成する部材である。フィーダ本体32は、例えばアルミダイキャスト製であり、平面視においてY方向(前後方向)に細長くかつX方向に扁平な形状を有している。フィーダ本体32の内部には、前後方向に延びるテープ走行路32Tが形成されている。テープ走行路32Tは、部品収納テープ6の走行路であり、フィーダ本体32の後端下部から前端上部に向かって先上がりに延在している。テープ走行路32Tの底面は、部品収納テープ6のガイド面32Gであり、フィーダ本体32の後端から前端の上面に至っている。フィーダ本体32の後部に配置されたリール66(
図6)から引き出された部品収納テープ6は、ガイド面32Gに沿ってフィーダ本体32の前端上面に案内される。
【0047】
クランプ33は、フィーダ本体32の下面側に配置されている。テープフィーダ31は、部品供給部3(
図1)に具備されている図略のフィーダ取り付け台に、矢印Df方向に装着される。クランプ33は、前記フィーダ取り付け台に対してテープフィーダ31を係合及びその解除を為すための部材である。
【0048】
テープ送り出し機構34は、テープ走行路32Tに沿って部品収納テープ6を、予め定められたテープ剥離位置P1と部品吸着位置P2とを順次通過するように、テープ送り方向Fに間欠的に送り出す機構である。テープ剥離位置P1は、カバーテープ62をキャリアテープ61から剥離する位置である。部品吸着位置P2は、キャリアテープ61のポケット63から、吸着ノズル42で部品Cを取り出す位置である。
【0049】
テープ送り出し機構34は、フィーダ本体32の前端側に配置され、送り出しモータ341、スプロケット342及び伝達ギア343を備える。送り出しモータ341は、部品収納テープ6を送り出す駆動力を発生するモータである。スプロケット342は、外周面に等ピッチで配列された多数の係合歯を有する円板状部材である。前記係合歯は、キャリアテープ61の係合孔64に係合される。伝達ギア343は、送り出しモータ341の回転駆動力をスプロケット342に伝達する。スプロケット342が送り出しモータ341により回転駆動されると、部品吸着位置P2に向けて部品収納テープ6がテープ送り方向Fに送り出される。
【0050】
テープ剥離部材35は、フィーダ本体32の前側上部において、テープ走行路32Tのガイド面32Gを上方から覆うように配置されている。部品収納テープ6は、テープ剥離部材35とガイド面32Gとの間に案内されている。テープ剥離部材35は、テープ剥離位置P1において、カバーテープ62をキャリアテープ61から剥離するためのスリット351(テープ剥離機構)を有している。
【0051】
カバーテープ62は、スリット351の後縁部で後方に折り返され、次述のテープ引き取り機構36に引き取られる。この動作により、キャリアテープ61からカバーテープ62が引き剥がされ、ポケット63の上面開口が開放され、部品Cが露呈する。従って、テープ剥離位置P1よりもテープ送り方向Fの下流側に位置する部品吸着位置P2において、吸着ノズル42によるポケット63からの部品Cの取り出しが可能となる。
【0052】
テープ引き取り機構36は、キャリアテープ61からカバーテープ62を剥ぎ取るための引き取り力をカバーテープ62に与える機構であって、フィーダ本体32の前後方向中央付近に配置されている。テープ引き取り機構36は、前記引き取り力の発生源となる引き取りモータ361と、カバーテープ62をニップする引き取りローラ362及びピンチローラ363と、引き取りモータ361の駆動力を引き取りローラ362に伝達する伝達ギア364とを含む。
【0053】
廃テープ収容部37は、フィーダ本体32の後部に配置され、キャリアテープ61から剥離され、テープ引き取り機構36により引き取られたカバーテープ62を貯留する空間である。廃テープ収容部37に回収されたカバーテープ62は、フィーダ本体32の後端面に設けられた廃棄扉371を開けて取り出すことが可能である。
【0054】
[負圧吸引機構について]
以上説明した構成は、従前の汎用テープフィーダも備えている構成である。これに加え、本実施形態のテープフィーダ31は、キャリアテープ61の部品吸引開口65(
図4)を通してポケット63内の部品Cを負圧で拘束する負圧吸引機構7を備えている。
図5は、フィーダ本体32の前端上部の模式図であって、負圧吸引機構7の概略構成と、この負圧吸引機構7を制御する機能を有するフィーダコントローラ38の機能構成とを示す図である。
【0055】
負圧吸引機構7は、テープ剥離位置P1と部品吸着位置P2との間であって、ポケット63の上面開口から部品Cが露呈する領域において、キャリアテープ61に負圧を作用させる機構である。本実施形態において、前記部品Cが露呈する領域は、テープ剥離位置P1の下流側であってテープ剥離部材35にてガイド面32Gの上方が覆われていない領域である。
【0056】
テープ剥離部材35は、テープ剥離位置P1となるスリット351の下流側に、部品収納テープ6を案内するガイド面32Gの上面を覆うように配置されるカバー部材352を備えている。カバー部材352が存在する領域では、たとえカバーテープ62が剥離されていても、ポケット63の上面開口はカバー部材352で覆われる。このため、部品Cのポケット63内での遊動は規制される。カバー部材352を部品吸着位置P2まで延在させることは、ポケット63内の部品Cの視認性の確保、吸着ノズル42との干渉回避の観点から困難である。このため、部品吸着位置P2の直上流側には、カバー部材352で覆われていない領域、つまり、ポケット63の部品Cが外部に露出する露出領域が生じる。負圧吸引機構7は、前記露出領域において、ポケット63の部品吸引開口65を利用して、ポケット63の部品Cを負圧で拘束する。
【0057】
負圧吸引機構7は、吸引空間71Aを区画する吸引室71と、吸引室71の空気を吸引して吸引空間71Aを負圧化する吸引力を発生するエアポンプ72(吸引装置)とを含む。吸引室71は、テープ走行路32Tのガイド面32G(走行路の下面)に開口する上面開口部71Hを有し、ガイド面32Gの下方に窪んだ形状を備えている。上面開口部71Hの前後幅は、前記露出領域の前後幅に略等しい。詳しくは、上面開口部71Hは、カバー部材352の前端縁353の直下から、部品吸着位置P2のやや下流位置まで開口している。もちろん、上面開口部71Hの上流端は、前端縁353の直下位置から若干前後方向にずれていても良い。
【0058】
上面開口部71Hには、開口プレート73が嵌め込まれている。開口プレート73は、多数の吸引口74(複数の小孔)を備えた平板からなり、テープ走行路32Tのガイド面32Gと面一となるように、上面開口部71Hに取り付けられている。吸引口74は、前後方向又はX方向に延びる複数のスリットであっても良い。或いは、開口プレート73に代えて、スポンジ部材や織布・不織布のような多孔質プレート、若しくは、金属線網やパンチングプレート等のメッシュプレート等を用いても良い。開口プレート73の取り付けにより、上面開口部71Hを設けても、キャリアテープ61の下面のガイド性が損なわれない。また、開口プレート73によって上面開口部71Hの開口度が規制されるので、負圧を作用させる際のエアリークを抑制できる。
【0059】
エアポンプ72は、排気力を発生可能な小型ポンプであり、テープフィーダ31内に組み込まれている。吸引室71には、吸引空間71Aの空気を排気するための負圧吸引経路75の上流端が接続されている。エアポンプ72は、負圧吸引経路75の下流側に組み入れられている。エアポンプ72としては、汎用の電磁式エアポンプや直流式エアポンプを用いることができる。エアポンプ72が動作すると、吸引空間71Aが負圧化される。
【0060】
吸引空間71Aが負圧化されると、
図5に矢印で示すような、吸引口74を通過する吸引流Afが生じる。キャリアテープ61がテープ送り方向Fに間欠的に送られる際、吸引口74とポケット63の部品吸引開口65との位置が合うと、ポケット63内から吸引空間71Aに向かう吸引流Afが生じることになる。このため、ポケット63内の部品Cは、吸引流Afによって当該ポケット63の底面に吸着された状態となる。従って、前記露出領域における部品Cの送り動作時、並びに、部品Cの取り出し時に、部品Cの遊動を規制することができる。
【0061】
テープフィーダ31には、当該テープフィーダ31の各部の動作を制御するフィーダコントローラ38が搭載されている。フィーダコントローラ38は、機能的に、テープ送り制御部381、ポンプ制御部382(制御部)及びデータ取得部383(取得部)を備えている。
【0062】
テープ送り制御部381は、テープフィーダ31に装備されている送り出しモータ341及び引き取りモータ361を制御し、部品収納テープ6の送り動作を制御する。ポンプ制御部382は、エアポンプ72の動作を制御する。ポンプ制御部382は、エアポンプ72のON-OFF動作、並びに、負圧の発生力を制御する。
【0063】
データ取得部383は、テープフィーダ31に装着され送り出し対象とされる対象部品収納テープ6に関わる各種の情報であるテープ属性情報D1を取得する。テープ属性情報D1は、対象部品収納テープ6の種別、収容されている部品Cの品種やサイズのほか、そのキャリアテープ61のポケット63に部品吸引開口65が備えられているか否かを示す情報も含む。
【0064】
テープ属性情報D1に基づき、対象部品収納テープ6が部品吸引開口65を具備しないテープであることが知見された場合、ポンプ制御部382はエアポンプ72の動作を休止させる。一方、部品吸引開口65を具備する対象部品収納テープ6である場合、当該対象部品収納テープ6による部品供給中、ポンプ制御部382はエアポンプ72を所定の負圧発生力にて常時動作させる。つまり、吸引室71の上面開口部71Hに、常時負圧を発生する状態が形成される。一般的なエアポンプ72は、負圧吸引のON-OFFの切り替えの応答性は良好ではない。一方、部品収納テープ6による部品供給タクトは、一般に非常に速い。従って、部品供給期間中は常時負圧を発生させることで、ポケット63内の部品Cの拘束漏れを抑止することができる。
【0065】
図6は、表面実装機1の本体とテープフィーダ31との関係を示す模式図である。テープフィーダ31は、表面実装機1の部品供給部3(
図1)に装着され、リール66に巻回された部品収納テープ6を送り出す。表面実装機1は、
図1に示した基板搬送部2、ヘッドユニット4、X軸サーボモータ26及びY軸サーボモータ28などの動作を制御するメインコントローラ12を備える。テープフィーダ31の部品供給部3への装着により、フィーダコントローラ38はメインコントローラ12に電気的に接続され、当該メインコントローラ12の制御対象となる。
【0066】
[比較例の部品供給方法]
続いて、テープフィーダ31による部品供給方法について説明する。まず、上述の負圧吸引機構7を用いない、比較例に係る部品供給方法を、
図7(A)~(C)及び
図8(A)~(C)について説明する。これらの図は各々、テープフィーダ31のテープ剥離位置P1及び部品吸着位置P2の上面図及び側断面図のペアを、部品供給の進捗毎に示している。
【0067】
図7(A)を参照して、スプロケット342の係合歯に部品収納テープ6の係合孔64が係合され、ポケット63の配列ピッチに相当する単位送り出し量にて、部品収納テープ6はテープ送り方向Fに間欠送りされる。カバーテープ62は、テープ剥離位置P1に配置されたスリット351を通してテープ送り方向Fと逆方向に折り返され、キャリアテープ61から剥離されている。ポケット63には、部品吸引開口65が穿孔されている。しかし、負圧吸引機構7を用いない比較例では、部品供給時には何らの用を為さない。
【0068】
部品Cが露呈するテープ剥離位置P1と部品吸着位置P2との間の長さは、本実施形態ではおよそポケット63の配列ピッチの2ピッチ分である。そのうち、テープ剥離位置P1から約1ピッチ分の長さ分だけ、キャリアテープ61の上面がカバー部材352によって覆われている。この設定は、後述する
図9及び
図10に示す実施例でも同じである。
【0069】
図7(A)は、1ピッチの部品収納テープ6の送り出し動作が開始される直前の状態を示している。以下の説明では、部品吸着位置P2において次回の取り出し対象となる対象部品Ctに注目する。対象部品Ctは、テープ剥離位置P1から1ピッチ分だけ下流に送り出されており、ポケット63の上面開口から露呈している部品である。但し、
図7(A)の状態では、カバー部材352の前端縁353よりも上流に位置しているので、その上面開口は実質的に塞がれている。このため、ポケット63内での対象部品Ctの遊動は規制されている。
【0070】
図7(B)は、1ピッチ分の部品収納テープ6の送り出しが開始され、対象部品Ctが前端縁353よりも下流に位置した状態を示している。もはやカバー部材352による規制はなく、対象部品Ctはポケット63の上面開口から露呈する。また、部品吸引開口65を通した負圧拘束力も、対象部品Ctには作用しない。このため、キャリアテープ61の移動開始時における急加速に伴う衝撃等により、対象部品Ctが遊動し、ポケット63内での姿勢が変化することがある。
図7(B)では、対象部品Ctの前方がポケット63の底面から浮き上がり、その上部がポケット63の上面開口から飛び出している様子を例示している。
【0071】
図7(C)は、部品収納テープ6の送り出しが継続され、対象部品Ctが部品吸着位置P2の近くまで送られた状態を示している。ここでは、対象部品Ctが前上がりで全体的に浮き上がり、その上半分程度がポケット63の上面開口から飛び出している様子を例示している。このような対象部品Ctの姿勢は一例であるが、露呈した対象部品Ctを送り出す際には、当該対象部品Ctの姿勢が不安定になりがちとなる。
【0072】
図8(A)は、1ピッチ分の部品収納テープ6の送り出しが完了し、部品吸着位置P2で対象部品Ctが停止した状態を示している。キャリアテープ61の移動停止時における急減速に伴う衝撃等で、やはり対象部品Ctが遊動し、その姿勢が不安定となる。
図8(A)では、
図7(C)の状態とは逆に、対象部品Ctが後ろ上がりで全体的に浮き上がっている様子を例示している。
【0073】
図8(B)は、吸着ノズル42が下降し、対象部品Ctを吸着する吸着動作が行われている状態を示している。対象部品Ctは、ポケット63の底面上に平置されておらず、姿勢が乱れている。このため、吸着ノズル42に対する対象部品Ctの対向姿勢も乱れてしまうことになる。
【0074】
図8(C)は、吸着ノズル42が上昇し、部品吸着位置P2において対象部品Ctがポケット63から取り出されている状態を示している。姿勢が乱れた対象部品Ctに対して吸着動作が行われたことから、吸着ノズル42への対象部品Ctの吸着姿勢も乱れている。このような吸引姿勢では、対象部品Ctの落下や吸着ミスが発生することがある。或いは、吸着ノズル42で部品吸着を継続できたとしても、マルチカメラ11による吸着状態検査でNG評価が下されて対象部品Ctを無駄にしたり、基板Pへの搭載不良を出したりする不具合が生じる。
【0075】
[実施形態に係る部品供給方法]
次に、上述の負圧吸引機構7を用いる、本発明の実施形態に係る部品供給方法を、
図9(A)~(C)及び
図10(A)~(C)について説明する。上述の比較例と同様に、これらの図は各々、テープフィーダ31のテープ剥離位置P1及び部品吸着位置P2の上面図及び側断面図のペアを、部品供給の進捗毎に示している。
図9(A)~
図10(C)の進捗ステージは、比較例の
図7(A)~
図8(C)と同じである。
【0076】
図9(A)を参照して、
図7(A)に基づき説明した比較例と相違する点は、対象部品Ctがポケット63の上面開口から露呈する露出領域に負圧吸引機構7が配置されている点である。負圧吸引機構7は、前記露出領域おいてキャリアテープ61に負圧を作用させ、部品吸引開口65を通してポケット63内の対象部品Ctを負圧で拘束する機能を果たす。ここでは吸引室71が、つまりキャリアテープ61に負圧を作用させ得る領域が、テープ剥離位置P1の下流であってカバー部材352の前端縁353のやや上流の位置から、部品吸着位置P2のやや下流側まで延在している例を示している。
【0077】
図9(A)は、1ピッチの部品収納テープ6の送り出し動作が開始される直前の状態を示している。対象部品Ctは、カバーテープ62が剥がされてポケット63の上面開口から露呈しているものの、カバー部材352で前記上面開口は実質的に塞がれている。さらに、吸引室71の配置領域に、対象部品Ctを収容するポケット63が到達している。つまり、吸引室71の負圧化に伴い、開口プレート73の吸引口74を通して吸引空間71Aへ向かうエア吸引力が発生している領域に、既に当該ポケット63が進入している。このため、ポケット63内の対象部品Ctは、部品吸引開口65を通して作用するエア吸引力によって、ポケット底面に吸着(拘束)された状態となっている。
【0078】
図9(B)は、1ピッチ分の部品収納テープ6の送り出しが開始され、対象部品Ctが前端縁353よりも下流に位置した状態を示している。カバー部材352によるポケット63の上面開口のカバーは外れた状態であるが、負圧吸引機構7による負圧拘束力が、対象部品Ctに作用している。このため、キャリアテープ61の移動開始時における急加速に伴う衝撃等が生じても、対象部品Ctは遊動せず、ポケット63内で安定した姿勢を保つことができる。つまり、対象部品Ctがポケット63の底面に平置された状態を維持することができる。
【0079】
図9(C)は、部品収納テープ6の送り出しが継続され、対象部品Ctが部品吸着位置P2の近くまで送られた状態を示している。ここでも、負圧吸引機構7の負圧拘束力によって、対象部品Ctはポケット63内で安定姿勢を保っている。
【0080】
図10(A)は、1ピッチ分の部品収納テープ6の送り出しが完了し、部品吸着位置P2で対象部品Ctが停止した状態を示している。この部品吸着位置P2でも、負圧吸引機構7の負圧拘束力が対象部品Ctに作用している。従って、キャリアテープ61の移動停止時における急減速に伴う衝撃等が発生しても、対象部品Ctは遊動せず、ポケット63内で安定した姿勢を保つ。
【0081】
図10(B)は、吸着ノズル42が下降し、対象部品Ctを吸着する吸着動作が行われている状態を示している。対象部品Ctは、前記負圧拘束力が作用していることもあり、ポケット63の底面上に平置されている。このため、吸着ノズル42に対する対象部品Ctの対向姿勢も正常である。なお、吸着ノズル42が対象部品Ctを吸着するための負圧は、負圧吸引機構7が発生する負圧よりも十分大きい負圧に設定される。
【0082】
図10(C)は、吸着ノズル42が上昇し、部品吸着位置P2において対象部品Ctがポケット63から取り出されている状態を示している。正常姿勢の対象部品Ctに対して吸着動作が行われたことから、吸着ノズル42への対象部品Ctの吸着姿勢も正常である。このため、吸着ノズル42からの対象部品Ctの落下や吸着ミスが発生せず、当該対象部品Ctを正常に基板Pへの搭載させることができる。
【0083】
[負圧による部品拘束動作のフロー]
図11は、フィーダコントローラ38(
図5)による、テープフィーダ31の負圧吸引機構7の制御例を示すフローチャートである。フィーダコントローラ38のデータ取得部383は、テープ送り出し機構34の送り出し対象となる対象部品収納テープ6、つまりテープフィーダ31に装着されたリール66(
図6)に巻回されている部品収納テープのテープ属性情報D1を取得する(ステップS1)。この取得は、例えばリール66に付記されたバーコード情報の光学読取やICタグとの無線通信、所定のデータベースとの交信により実行される。
【0084】
データ取得部383が取得するテープ属性情報D1には、対象部品収納テープ6が、部品吸引開口65を備えているか否かの情報が含まれている。ポンプ制御部382は、テープ属性情報D1を参照し、対象部品収納テープ6が部品吸引開口65を備えているか否かを判定する(ステップS2)。
【0085】
部品吸引開口65を具備する場合(ステップS2でYES)、ポンプ制御部382は、対象部品収納テープ6に保持されている部品Cの、吸着ノズル42による部品吸着負圧(ノズル負圧)の情報を参照する(ステップS3)。内径が1.2mmサイズの吸着ノズル42の場合、ノズル負圧は概ね-400mmHg~-550mmHg程度である。その後、ポンプ制御部382は、エアポンプ72をONとし、吸引室71を負圧化する(ステップS4)。既述の通り、ポンプ制御部382は、部品吸引開口65を備えた対象部品収納テープ6を部品吸着位置P2に間欠的に送り出す部品供給期間中、エアポンプ72のON状態を継続し、開口プレート73の吸引口74に常時負圧を発生させる。
【0086】
エアポンプ72のONと同時に、ポンプ制御部382はエアポンプ72に発生させるポンプ負圧を設定する(ステップS5)。ポンプ負圧は、吸着ノズル42が部品を正常に吸着する際のノズル負圧よりも低い負圧に設定される。ポンプ負圧は、望ましくはノズル負圧の半分以下の負圧に設定される。例えばノズル負圧が上掲の例の範囲である場合、ポンプ負圧は-100mmHg~-200mmHg程度に設定されることが望ましい。ポンプ負圧が高すぎると、部品Cの拘束力が強くなりすぎて吸着ノズル42による部品Cの取り出しを阻害することがある。ポンプ負圧をノズル負圧の半分以下の値に設定すれば、ポンプ負圧による部品Cの拘束力を十分に低くすることができ、吸着ノズル42による部品Cの取り出しに影響を与えないようにすることができる。
【0087】
これに対し、対象部品収納テープ6が部品吸引開口65を具備していない場合(ステップS2でNO)、ポンプ制御部382はエアポンプ72の動作を休止させる(ステップS6)。これにより、部品吸引開口65を備えていない対象部品収納テープ6に対して、無用に負圧吸引機構7が動作することを防止できる。
【0088】
その後、テープフィーダ31に装着されている、対象部品収納テープ6が巻回されたリール66が取り替えられたか否かが確認される(ステップS7)。リール66の取り替えが行われた場合(ステップS7でYES)、新たな設定が必要となる場合があるので、ステップS1に戻って処理が繰り返される。リール66の取り替えが行われていない場合(ステップS7でNO)、ステップS4の「ポンプON」又はステップS6の「ポンプOFF」の状態が維持される。
【0089】
[変形例]
上記実施形態では、テープフィーダ31に負圧吸引機構7の負圧発生源としてのエアポンプ72を組み込む例を示した。負圧発生源として、表面実装機1の本体が具備している負圧発生源を利用しても良い。
【0090】
図12は、表面実装機1とテープフィーダ31との関係の変形例を示す模式図である。表面実装機1は、複数のシャフト41の下端にそれぞれ吸着ノズル42が装着されたヘッドユニット4と、吸着ノズル42に部品Cの吸着用の負圧を与える負圧発生部13とを備える。
図12に示す変形例では、テープフィーダ31にはエアポンプ72を装備させず、負圧発生部13が生成する負圧を利用して吸引室71を負圧化している。
【0091】
吸引室71からはフィーダ内経路751が延出している。一方、負圧発生部13からは実装機内経路752が引き出されている。フィーダ内経路751の終端と実装機内経路752の終端とが、カプラー753にて気密接続されている。この変形例によれば、表面実装機1が備えている吸着ノズル42用の負圧発生部13を利用するので、部品姿勢の安定化のために新たに負圧発生源(エアポンプ72)を、テープフィーダ31に装備する必要がない。
【0092】
図13は、
図12の変形例における負圧供給系統を示すブロック図である。負圧発生部13は、コンプレッサ131、フィルタレギュレータ132、電空レギュレータ133、電磁弁134及び真空エジェクタ135を含む。コンプレッサ131は圧縮空気を作り、フィルタレギュレータ132で前記圧縮空気の湿分が除去される。真空エジェクタ135は、前記圧縮空気を利用して負圧を生成する。電空レギュレータ133により負圧発生量がコントロールされ、電磁弁134により負圧発生のON-OFFが制御される。電空レギュレータ133及び電磁弁134の動作は、メインコントローラ12により制御される。フィーダ内経路751及び実装機内経路752の各上流端は、真空エジェクタ135に接続されている。フィーダ内経路751には、電磁弁等からなる開閉部754が介入されている。開閉部754を開又は閉操作することにより、テープフィーダ31の吸引室71を負圧化又はその解除が制御される。
【0093】
以上説明した実施形態及びその変形例の他、本発明は様々な変形実施形態を取ることができる。例えば、負圧吸引機構7の吸引室71を、テープ剥離位置P1から部品吸着位置P2の全長に亘って延在する長さに設定しても良い。また、開口プレート73を磁化する等して、部品Cに対して負圧拘束力に加えて、磁力によるアシスト拘束力を作用させる態様としても良い。
【0094】
以上説明した本発明に係る部品供給方法又は表面実装機1(テープフィーダ31)によれば、部品収納テープ6に具備されている部品吸引開口65を利用して、ポケット63内の部品Cに負圧を作用させる。これにより、当該部品Cのポケット63内での姿勢が安定する。しかも、ポケット63内の部品Cへの負圧の作用は、部品吸着位置P2のみといったスポット的なものではなく、テープ剥離位置P1と部品吸着位置P2との間におけるポケット63の上面開口から部品Cが露呈する領域について為される。このため、カバーテープ62がキャリアテープ61から剥離された後、キャリアテープ61の間欠送り時、並びに、部品吸着位置P2での吸着ノズル42による部品吸着時において、継続的にポケット63内の部品Cの姿勢を安定させることができる。従って、良好な姿勢で部品Cを吸着ノズル42に吸着させることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 表面実装機(部品取り出し装置)
13 負圧発生部(吸引装置)
31 テープフィーダ
32G ガイド面(キャリアテープの走行路の下面)
35 テープ剥離部材(テープ剥離機構)
351 スリット(テープ剥離機構)
352 カバー部材
38 フィーダコントローラ
382 ポンプ制御部(制御部)
383 データ取得部(取得部)
4 ヘッドユニット
42 吸着ノズル
6 部品収納テープ
61 キャリアテープ
62 カバーテープ
63 ポケット
65 部品吸引開口
66 リール
7 負圧吸引機構
71 吸引室
71H 上面開口部(開口部)
72 エアポンプ(吸引装置)
73 開口プレート
74 吸引口
C 部品
P1 テープ剥離位置
P2 部品吸着位置