(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】作業車両の動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240430BHJP
F16H 47/02 20060101ALI20240430BHJP
B60K 17/28 20060101ALI20240430BHJP
F16D 25/063 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16H57/04 N
F16H57/04 E
F16H47/02 A
B60K17/28 C
F16D25/063 Z
(21)【出願番号】P 2021043549
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小田島 俊介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-083488(JP,A)
【文献】実開平04-063852(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 47/02
B60K 17/28
F16D 25/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動される油圧ポンプに接続され、第1回転軸線の周りに回転可能に設けられた第1シャフトと、
前記第1回転軸線の周りに回転可能で、パワーテイクオフシャフトを回動させるように構成される第2シャフトと、
前記第1回転軸線に実質的に平行で、前記第1回転軸線より鉛直方向下方に設けられた第2回転軸線の周りに回転可能であり、前記第2回転軸線において対向して配置された第1回転部と第2回転部とを有し、前記第1回転部は前記第2回転部と接続可能および前記第2回転部から分離可能なクラッチと、
前記第1シャフトの回転を前記第1回転部に伝達するように構成される第1回転伝達機構と、
前記第2回転部の回転を前記第2シャフトに伝達するように構成される第2回転伝達機構と、
前記油圧ポンプによって駆動される油圧モータによって回動されるように構成される第4シャフトと、
作業車両の走行装置に接続され、前記第2回転軸線に沿って延び、前記第2回転軸線の周りに回転可能な第5シャフトと、
前記第4シャフトの回転を回転速度を変更して第5シャフトに伝達する変速機構と、
前記第2シャフト上に設けられ、前記第2シャフトとともに前記第1回転軸線とともに回転可能な第1PTO駆動ギヤと、
前記第1PTO駆動ギヤと係合し、前記第2回転軸線の周りに回転可能な第3ギヤ部と、前記第3ギヤ部とともに前記第2回転軸線の周りに回転可能な第4ギヤ部とを有し、前記第5シャフトに対して前記第2回転軸線の周りに回転可能に前記第5シャフトに支持されるギヤ組立体と、
パワーテイクオフシャフトと、
前記パワーテイクオフシャフトとともに回転可能に前記パワーテイクオフシャフトに支持され、前記第4ギヤ部と係合する第2PTO駆動ギヤと、
を備える、
作業車両の動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1シャフト、前記第2シャフト、前記クラッチ、前記第1回転伝達機構、及び、前記第2回転伝達機構を収容し、潤滑油を貯留可能なトランスミッションケースをさらに備える、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記クラッチは油圧クラッチである、
請求項
2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第2回転軸線に沿って延びる第3シャフトをさらに備え、
前記クラッチは、前記第3シャフトによって回転可能に支持され、
前記クラッチは、油室を定義するシリンダとピストンとを有し、
前記第3シャフトは、前記第2回転軸線に沿って延びる第1油路を有し、
前記第1油路を介して作動油を前記油室に供給可能である、
請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記トランスミッションケースは、前記第3シャフトを回転可能に支持する支持部材を含み、
前記支持部材は、前記第1油路と接続可能な第2油路を有し、
前記第1油路及び前記第2油路を介して前記作動油を前記油室に供給可能である、
請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記変速機構は、
前記第4シャフトに設けられ、第4シャフトとともに回転可能な第1ミドルギヤと、
前記第4シャフトに設けられ、第4シャフトとともに回転可能であって、前記第1ミドルギヤよりも歯数が少ない第1ローギヤと、
前記第4シャフトに設けられ、第4シャフトとともに回転可能であって、前記第1ミドルギヤよりも歯数が多い第1ハイギヤと
、
前記第2回転軸線の周りに前記第5シャフトに対して回転可能に前記第5シャフトに支持され、前記第1ローギヤと前記第1ミドルギヤと前記第1ハイギヤとのうちの1つのギヤと係合する第1フリーギヤと、
前記第2回転軸線の周りに前記第5シャフトに対して回転可能に前記第5シャフトに支持され、前記第1フリーギヤと係合する前記1つのギヤ以外の前記第1ローギヤと前記第1ミドルギヤと前記第1ハイギヤとのうちの別の1つのギヤと係合する第2フリーギヤと、
前記第2回転軸線の周りに前記第5シャフトとともに回転可能に前記第5シャフトに支持され、前記第2回転軸線に沿って前記第5シャフト上を摺動可能な摺動ギヤと、
を備え、
前記第5シャフトは、
前記第2回転軸線に沿って延びる第1雄スプラインと、
前記第1雄スプラインの前記第2回転軸線に沿う一端と隣接し、前記第1フリーギヤを回転可能に支持する第1支持部と、
前記第2回転軸線に沿って前記第1雄スプラインの前記一端と反対の、前記第1雄スプラインの他端と隣接し、前記第2フリーギヤを回転可能に支持する第2支持部と、
を有し、
前記第1フリーギヤは、
前記第1支持部に面する第1内周面と、
前記第2回転軸線に対する径方向における前記第1内周面の反対側において、前記1つのギヤと係合する第1ギヤ部と、
前記第1内周面の前記反対側において前記第1雄スプラインと実質的に同一形状であって、前記第2回転軸線に沿う方向において前記第1ギヤ部よりも前記
第1雄スプライ
ンの前記一端に近い第2雄スプラインと、
を有し、
前記第2フリーギヤは、
前記第2支持部に面する第2内周面と、
前記径方向における前記第2内周面の反対側において、前記別の1つのギヤと係合する第2ギヤ部と、
前記第2内周面の前記反対側において前記第1雄スプラインと実質的に同一形状であって、前記第2回転軸線に沿う前記方向において前記第2ギヤ部よりも前記
第1雄スプライ
ンの前記他端に近い第3雄スプラインと、
を有し、
前記摺動ギヤは、
前記第5シャフトに面し、前記第1雄スプライン、前記第2雄スプライン、及び、前記第3雄スプラインと嵌合可能な雌スプラインと、
前記径方向において前記雌スプラインと反対側に設けられ、前記第1フリーギヤと係合する前記1つのギヤ及び前記第2フリーギヤと係合する前記別の1つのギヤ以外の前記第1ローギヤと前記第1ミドルギヤと前記第1ハイギヤとのうちの残りのギヤと係合可能な第3ギヤ部と、
を有し、
前記第3ギヤ部が前記残りのギヤと係合するとき、前記雌スプラインは前記第1雄スプラインのみと係合し、
前記雌スプラインが前記第1雄スプラインと前記第2雄スプラインとの両方と係合するとき、前記第3ギヤ部が前記残りのギヤと係合せず、
前記雌スプラインが前記第1雄スプラインと前記第3雄スプラインとの両方と係合するとき、前記第3ギヤ部が前記残りのギヤと係合しない、
請求項4または5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1フリーギヤは、前記第1ローギヤと係合し、
前記第2フリーギヤは、前記第1ハイギヤと係合し、
前記摺動ギヤは、前記第1ミドルギヤと係合可能である、
請求項6に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記第5シャフトは、前記第2回転軸線に沿って前記第3シャフトから離間する、
請求項6または7に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記第4シャフトと前記パワーテイクオフシャフトとは、第3回転軸線の周りに回転可能であり、前記第4シャフトは、前記第3回転軸線に沿って前記パワーテイクオフシャフトから離間する、
請求項6から8のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記第1回転軸線より下方に設けられた、前記エンジンの出力部に接続される入力シャフトと、
回転を前記第1シャフトに伝達するように構成される第3回転伝達機構と、
をさらに備える、
請求項1から
9のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記エンジンと前記第3回転伝達機構との間にはクラッチが設けられない、
請求項
10に記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記第3回転伝達機構は、前記入力シャフトに接続されるミッション入力ギヤを有し、
前記
ミッション入力ギヤは、前記第1回転軸線の下方で且つ前記第1回転軸線に対して平行な回転軸の周りに回転可能である、
請求項
10または
11に記載の動力伝達装置。
【請求項13】
前記クラッチは湿式クラッチである、
請求項1から
12のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項14】
前輪の差動装置に接続される前輪駆動シャフトと、
前記第5シャフトの回転を前記前輪駆動シャフトに伝達するように構成されるギヤユニットと、
をさらに備え、
前記ギヤユニットは、
前記第5シャフトに取り付けられ、前記第5シャフトとともに回転するように構成される第1前輪駆動ギヤと、
前記パワーテイクオフシャフトに対して回動可能に前記パワーテイクオフシャフトに支持される第2ギヤ組立体と、
前記前輪駆動シャフトとともに回転可能な第2前輪駆動ギヤと、
を備え、
前記第2ギヤ組立体は、
前記第1前輪駆動ギヤと係合する第5ギヤ部と、
第2前輪駆動ギヤ75と係合する第6ギヤ部と、
を有し、
前記第6ギヤ部は、前記第5ギヤ部と一体的に回転する、
請求項1から13のいずれかに記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジンの出力軸に接続された油圧ポンプの回転軸に接続されるクラッチを含む、作業車両の動力伝達装置を記述している。当該クラッチの一端は油圧ポンプの回転軸に接続され、当該クラッチの他端はパワーテイクオフ(PTO)シャフトに接続される。当該クラッチが係合されると、油圧ポンプの回転軸の駆動力がPTOシャフトに伝達される。当該クラッチをPTOクラッチと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PTOクラッチの耐久性を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る動力伝達装置は、第1シャフトと、第2シャフトと、クラッチと、第1回転伝達機構と、第2回転伝達機構とを備える。第1シャフトは、エンジンによって駆動される油圧ポンプの第1回転軸線の周りに回転可能に設けられる。第2シャフトは、第1回転軸線の周りに回転可能で、パワーテイク軸を回動させる。クラッチは、第1回転軸線に実質的に平行で、第1回転軸線より鉛直方向下方に設けられた第3回転軸線の周りに回転可能である。クラッチは、第3回転軸線において対向して配置された第1回転部と第2回転部とを有する。第1回転部は、第2回転部と接続可能および第2回転部と分離可能である。第1回転伝達機構は、第1シャフトの回転を第1回転部に伝達するように構成される。第2回転伝達機構は、第2回転部の回転を第2シャフトに伝達するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本願に開示される構成は、例えば、PTOクラッチを潤滑油に浸しやすくするため、PTOクラッチの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、ハウジングの前半部分の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の動力取り出し機構及び変速機構の付近の拡大図である。
【
図4】
図4は、
図3の切断面線IV-IV’によって切断された断面図である。
【
図7】
図7は、ハウジングの後半部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<実施形態>
<全体構成>
【0009】
図1は、作業車両の一例であるトラクタ1の側面図である。トラクタ1は、前フレーム2Aと、後フレーム2Bと、前輪3Aと、後輪3Bと、エンジン4と、ハウジング5と、運転席(driver's compartment)6と、PTOシャフト7と、リフトアーム8とを備えている。前フレーム2Aは、エンジン4と前輪3Aとを支持する。エンジン4は、トラクタ1の前後方向に延びるクランクシャフト4Sを含む。
図1では、クランクシャフト4Sの回転軸を一点鎖線で示している。後フレーム2Bは、後輪3Bが接続される後車軸3S及び後車軸ケース3C、並びに、運転席6を支持する。ハウジング5は、後フレーム2Bに取り付けられる。PTOシャフト7及びリフトアーム8には、図示しないロータリ耕転装置などの作業装置が取り付けられる。ハウジング5は、前ケース部5Aと、中間ケース部5Bと、後ケース部5Cとを含む。このうち、潤滑油を貯留可能な前ケース部5Aの後半分の領域と、中間ケース部5Bと、後ケース部5Cとを含む部分をトランスミッションケース5Tと呼んでもよい。
【0010】
前ケース部5Aは、入力シャフト11及び静油圧式無段変速機構16を収容する。入力シャフト11及び静油圧式無段変速機構16については後述する。中間ケース部5Bは、PTOシャフト7への動力取り出し機構20、及び、トラクタ1の速度段を切り替える変速機構50を収容する。動力取り出し機構20及び変速機構50の詳細については後述する。後ケース部5Cは、変速機構50による変速後の動力を左右の後輪3Bに伝達する後輪3Bの差動装置3BD、変速機構50による変速後の動力から前輪駆動用の動力を取り出すギヤユニット70、リフトアーム8を駆動するリフトシリンダ(図示せず)、及び、PTOシャフト7などを収容する。入力シャフト11と動力取り出し機構20と変速機構50と中間ケース部5Bとを含む構成を動力伝達装置10と呼ぶ。
【0011】
なお、本願に係る実施形態において、トラクタ1の前後方向(前方向/後方向)とは、運転席6のシート6Aに着座したオペレータから見て前後方向(前方向/後方向)を意味する。トラクタ1の左方向、右方向、幅方向とは、当該オペレータから見てそれぞれ、左方向、右方向、左右方向を意味する。トラクタ1の上方向、下方向、高さ方向とは、当該オペレータから見て上方向、下方向、高さ方向を意味する。トラクタ1の前後/左右(幅)/上下(高さ)方向とは、それぞれ、当該オペレータから見た前後/左右(幅)/上下(高さ)方向と一致するものとする。
【0012】
図2は、エンジン4の出力部4Pに接続される動力伝達装置10の入力シャフト11を通り、トラクタ1の上下方向に延伸する切断面によってハウジング5を切断した断面図である。具体的には、出力部4Pとは、クランクシャフト4Sに接続されるフライホイールである。なお、フライホイールは、トルクコンバータなど、クランクシャフト4Sと入力シャフト11との間に配置される別の動力伝達機構に置き換わってもよい。
図2では、ハウジング5の外部の部品については図示を省略している。
図2において、入力シャフトは、入力シャフト11の中心軸がクランクシャフト4Sの回転軸と同軸となるように、クランクシャフト4Sに接続される。このため、入力シャフト11は、トラクタ1の前後方向に延びる。本実施形態では、入力シャフト11の中心軸を第4回転軸線Ax4と呼ぶ。第4回転軸線Ax4は、トラクタ1の前後方向に延びる。入力シャフト11は、第4回転軸線Ax4の周りを回転可能である。入力シャフト11の駆動力は、第3回転伝達機構13に伝達される。エンジン4と第3回転伝達機構13との間にはクラッチが設けられない。
【0013】
動力伝達装置10は、第3回転伝達機構13を備える。第3回転伝達機構13は、ミッション入力ギヤ14と第1シャフト接続ギヤ15とを含む。ミッション入力ギヤ14は、入力シャフト11に接続され、第4回転軸線Ax4の周りに回転可能である。動力取り出し機構20は、第1シャフト21と、第1回転伝達機構22と、クラッチ30と、第2回転伝達機構25と、第2シャフト28と、第3シャフト29とを備える。トランスミッションケース5Tは、第1シャフト21、第2シャフト28、クラッチ30、第1回転伝達機構22、及び、第2回転伝達機構25を収容する。
【0014】
第1シャフト21は、トラクタ1の前後方向に延びる。第1シャフト21は、第1回転軸線Ax1の周りを回転可能である。つまり、第1回転軸線Ax1は、トラクタ1の前後方向に延び、第4回転軸線Ax4と実質的に平行である。第1回転軸線Ax1は、第4回転軸線Ax4よりも上方に位置する。鉛直方向から見て第1回転軸線Ax1は第4回転軸線Ax4と概ね重畳するように配置されているが、第1回転軸線Ax1は第4回転軸線Ax4に対してトラクタ1の幅方向においてわずかにずれていてもよい。第1シャフト21は、前ケース部5Aに支持される複数の軸受B1、B2と、中間ケース部5Bに支持されるニードルベアリングNB1によって回転自在に支持される。第1シャフト21の一端には第1シャフト接続ギヤ15が取り付けられる。第1シャフト接続ギヤ15は第1シャフト21と一体となって第1回転軸線Ax1の周りに回転する。第1回転軸線Ax1に沿う軸方向Dxにおける第1シャフト21の上記一端と反対側の他端には、第1回転伝達機構22が取り付けられる。
【0015】
静油圧式無段変速機構16は、油圧ポンプ17と油圧モータ18とを含む。静油圧式無段変速機構16は、油圧ポンプ17の斜板の角度を変更することによって変速比を変更することが可能である。第1シャフト21の上記一端と上記他端との間の中間部には、油圧ポンプ17が接続される。油圧ポンプ17は、第1シャフト21によって第1回転軸線Ax1の周りに回動されるように構成される。油圧ポンプ17は、エンジン4、即ち、第1シャフト21の回転によって駆動され、圧油を図示しない油路によって油圧モータ18に出力する。油圧モータ18は、このように油圧ポンプ17によって駆動され、第4シャフト39を回転させる。第4シャフト39の詳細は後述する。
【0016】
上述する第1回転伝達機構22は、ボス付きギヤ23とボス付きギヤ24とを含む。ボス付きギヤ23は、ボス部23Aとギヤ部23Bとを含む。ボス部23Aとギヤ部23Bとは一体に形成されている。ボス部23Aは、ボス付きギヤ23が第1シャフト21と一体に第1回転軸線Ax1の周りに回転するように、第1シャフト21に接続される。例えば、第1シャフト21の外周面が雄スプラインを有しており、ボス部23Aの内周面が当該雄スプラインと係合可能な雌スプラインを有していてもよい。あるいは、ボス部23Aはネジなどによって第1シャフト21に固定されてもよい。ボス部23Aの外周面は、軸受B3と接続する。ボス付きギヤ23は、軸受B3を介して中間ケース部5Bに支持される。ギヤ部23Bの外周面にははすば歯車が形成されており、ギヤ部の23Bの内周面はニードルベアリングNB2が取り付けられている。
【0017】
図3は、
図2の動力取り出し機構20及び変速機構50の付近の拡大図である。
図2及び
図3を参照すると、ボス付きギヤ24は、ギヤ部24Aとボス部24Bとを含む。ボス部24Bとは一体に形成されている。ボス付きギヤ24の内周面はニードルベアリングNB3が取り付けられており、ボス付きギヤ24は、ニードルベアリングNB3を介して第3シャフト29に対して回転自在に支持される。ギヤ部24Aにはボス付きギヤ23のギヤ部23Bが接続され、ボス部24Bにはクラッチ30が接続される。クラッチ30は、第3シャフト29によって回転可能に支持される。第3シャフト29は、第1回転軸線Ax1に実質的に平行で、第1回転軸線Ax1より鉛直方向下方に設けられた第2回転軸線Ax2に沿って延びる。したがって、クラッチ30は、第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。なお、前後方向に見て、第2回転軸線Ax2は、第1回転軸線Ax1からわずかに左右方向にずれている(
図4を参照)。
【0018】
クラッチ30は、油圧クラッチである。クラッチ30は、シリンダ31、ピストン34、第1回転部36、第2回転部37、及び、ばね38を含む。第1回転部36及び第2回転部37は、第2回転軸線Ax2において対向して配置されたクラッチディスクである。第1回転部36は第2回転部37と接続可能および第2回転部37から分離可能である。第1回転部36は、ボス付きギヤ24のボス部24Bと係合する。例えば、ボス部24Bは軸方向Dxに延びる雄スプラインを有し、第1回転部36は当該雄スプラインと係合可能な雌スプラインを有し、雄スプラインと雌スプラインとが係合することによってボス部24Bの回転が第1回転部36に伝達される。このため、第1回転伝達機構22は、第1シャフト21の回転を第1回転部36に伝達することができる。ばね38は、第2回転部37が第1回転部36から軸方向Dxに離間するようにピストン34を軸方向Dxに押し付ける。
【0019】
シリンダ31とピストン34とは油室OCを定義する。第3シャフト29は、その内部に油路HP1、HP2を有し、その外周に溝G1を有している。シリンダ31は、油路HP3を有している。
図4は、
図3の切断面線IV-IV’によって切断された断面図である。
図3を参照すると、油路HP1は、第2回転軸線Ax2に沿って軸方向Dxに延びる。油路HP2は、第2回転軸線Ax2に対して垂直に、即ち、径方向に延びる。油路HP3も、第2回転軸線Ax2に対して垂直に、即ち、径方向に延びる。なお、油路HP1のことを第1油路と呼んでもよい。
【0020】
図2及び
図3を参照すると、中間ケース部5Bは、第3シャフト29を回転可能に支持する支持部材5BSを含む。第3シャフト29は、軸受B4を介して支持部材5BSに支持される。さらに、第3シャフト29は、軸受B5を介して中間ケース部5Bの別の部分に支持される。
図5は、支持部材5BSを前面から見た図である。
図4と
図5を参照すると、支持部材5BSは油路HP1と接続可能な油路HP4、HP5を有する。油路HP4は左右方向に延び、油路HP5は上下方向に延びる。油路HP5には、油室OCに作動油を供給し、油室OCから作動油を排出するための作動油制御装置19に接続されている。したがって、油路HP1~HP5を介して作動油を油室OCに供給可能である。作動油制御装置19は、アキュムレータや切換弁を含む。油室OCに作動油を供給するとき、切換弁はアキュムレータと油室OCとを接続する。油室OCから作動油を排出するとき、切換弁はオイルパンへの排出油路と油室OCとを接続する。油室OCに作動油が供給されると、ピストン34は、ばね38の圧力に抗して第2回転部37の方に移動し、第2回転部37を第1回転部36に押し付ける。
【0021】
図6は、クラッチ30の外郭を示す図である。クラッチ30は、シリンダ31の外郭から延伸された延伸部32を有する。第2回転部37は、その外周に延伸部32と係合する凸部を有している。さらに、
図3に示されるように、クラッチ30は、第3シャフト29と係合するためのスプライン33をさらに有している。このため、ピストン34によって第2回転部37が第1回転部36に押し付けられると、ボス付きギヤ24の回転が、第1回転部36、第2回転部37、延伸部32、シリンダ31、及び、スプライン33を介して第3シャフト29に伝達される。このため、ボス付きギヤ24は、第3シャフト29と一体となって回転する。
【0022】
オイルパンへの排出油路と油室OCとが接続されると、ばね38の押圧力により、ピストン34が第1回転部36から離れるように移動し、第2回転部37が第1回転部36から離間する。その結果、第1回転部36の回転が第2回転部37に伝達しない。上述のように、ボス付きギヤ24は、ニードルベアリングNB3を介して第3シャフト29に対して回転自在に支持されているため、ボス付きギヤ24は、第3シャフト29に対して独立して回転する。
【0023】
第2回転伝達機構25は、ギヤ26とギヤ27とを含む。ギヤ26の内周面は、第3シャフト29と係合するスプライン26Sを含む。このため、ギヤ26は、第3シャフト29と一体となって第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。ギヤ27は、第2シャフト28と一体形成されている。このため、ギヤ27は、第2シャフト28と一体となって回転可能である。このため、第3シャフト29の回転が第2シャフト28に伝達される。なお、ギヤ27は、第2シャフト28と別体であってもよい。第2シャフト28は、ニードルベアリングNB2、軸受B6、B7、B8によって支持される。軸受B6は、中間ケース部5Bによって支持される。軸受B7、B8は、後ケース部5Cによって支持される(
図7参照)。第2シャフト28は、第1シャフト21と同軸となるように配置される。したがって、第2シャフト28は、第1回転軸線Ax1に対して回転可能である。以上の構成によって、第2回転伝達機構25は、第2回転部37の回転を第2シャフト28に伝達することができる。
【0024】
図7は、ハウジング5の後半部分の断面図である。
図7に示されるように、第2シャフト28は、後ケース部5Cまで延びる。動力取り出し機構20は、第4回転伝達機構40をさらに備える。第2シャフト28は、第4回転伝達機構40を介してPTOシャフト7へ接続される。つまり、第2シャフト28は、PTOシャフト7を回動させるように構成される。第4回転伝達機構40は、第1PTO駆動ギヤ41と、第1ギヤ組立体42と、第2PTO駆動ギヤ45とを備える。第1PTO駆動ギヤ41は、第2シャフト28上に設けられる。第1PTO駆動ギヤ41は、第2シャフト28とともに第1回転軸線Ax1とともに回転可能である。より具体的には、第1PTO駆動ギヤ41は、第2シャフト28と一体形成されている。ただし、第1PTO駆動ギヤ41は、第2シャフト28と別体であってもよい。
【0025】
第1ギヤ組立体42は、ニードルベアリングNB4、NB5を介して第5シャフト51に支持される。第5シャフト51は、第3シャフト29と同軸となるように配置されている。したがって、第5シャフト51は、第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。このため、第1ギヤ組立体42は、第5シャフト51に対して第2回転軸線Ax2の周りに回転可能に第5シャフト51に支持される。第5シャフト51の詳細は後述する。第1ギヤ組立体42は、第3ギヤ部43と第4ギヤ部44とを有する。第3ギヤ部43は、第1PTO駆動ギヤ41と係合し、第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。第4ギヤ部44は、第3ギヤ部43とともに第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。第3ギヤ部43と第4ギヤ部44とは一体成形されている。第2PTO駆動ギヤ45は、その内周面にPTOシャフト7と係合するためのスプライン45Sを有している。第2PTO駆動ギヤ45は、PTOシャフト7とともに回転可能にPTOシャフト7に支持され、第4ギヤ部44と係合する。
【0026】
つぎに、前輪3Aと後輪3Bとを駆動する走行系の動力伝達経路について説明する。
図2を参照すると、動力伝達装置10は、静油圧式無段変速機構16と、第4シャフト39と、変速機構50とを含む。第4シャフト39は、油圧モータ18によって回動されるように構成される。第4シャフト39は、軸受B9、B10、B11及びニードルベアリングNB6によって支持される。軸受B9は、前ケース部5Aによって支持される。軸受B10、B11及びニードルベアリングNB6は、中間ケース部5Bによって支持される。第4シャフト39は、第1回転軸線Ax1と実質的に平行な第3回転軸線Ax3の周りを回転可能である。第3回転軸線Ax3は、第1回転軸線Ax1より鉛直方向下方に設けられる。なお、
図4に示されるように、前後方向に見て、第3回転軸線Ax3は、第1回転軸線Ax1からわずかに左右方向にずれている。
図7に示されるように、第4シャフト39とPTOシャフト7とは、第3回転軸線Ax3の周りに回転可能である。第4シャフト39は、第3回転軸線Ax3に沿ってPTOシャフト7から離間する。
【0027】
図2、
図3、及び、
図7を参照すると、変速機構50は、第1ミドルギヤ54、第1ローギヤ55、第1ハイギヤ56、第5シャフト51、第1フリーギヤ57、第2フリーギヤ60、及び、摺動ギヤ63を備える。第1ミドルギヤ54は、第4シャフト39に設けられ、第4シャフト39とともに回転可能である。第1ローギヤ55は、第4シャフト39に設けられ、第4シャフト39とともに回転可能である。第1ローギヤ55の歯数は、第1ミドルギヤ54の歯数より少ない。第1ハイギヤ56は、第4シャフト39に設けられ、第4シャフト39とともに回転可能である。第1ハイギヤ56の歯数は、第1ミドルギヤ54の歯数よりも多い。より具体的には、第1ミドルギヤ54、第1ローギヤ55、及び、第1ハイギヤ56は、第4シャフト39と一体形成されている。ただし、第1ミドルギヤ54、第1ローギヤ55、及び、第1ハイギヤ56は、第4シャフト39と別体であってもよい。
【0028】
第5シャフト51は、第2回転軸線Ax2に沿って延び、作業車両(トラクタ1)の走行装置(前輪3A、後輪3B)に接続される。より具体的には、
図7に示すように、第5シャフト51は、後輪3Bの差動装置3BDに接続される。また、第5シャフト51は、ギヤユニット70を介して、前輪3Aの差動装置3AD(
図1参照)に接続される。ギヤユニット70は、第5シャフト51の末端に取り付けられた第1前輪駆動ギヤ71、PTOシャフト7に支持される第2ギヤ組立体72、第2前輪駆動ギヤ75、及び、前輪駆動シャフト76を含む。第1前輪駆動ギヤ71は、第5シャフト51とともに第2回転軸線Ax2の周りに回転可能である。第2ギヤ組立体72は、ニードルベアリングNB7を介してPTOシャフト7に支持され、第3回転軸線Ax3の周りにPTOシャフト7に対して回転可能である。第2ギヤ組立体72は、第1前輪駆動ギヤ71と係合する第5ギヤ部73と、第2前輪駆動ギヤ75と係合する第6ギヤ部74とを有する。第5ギヤ部73と第6ギヤ部74とは一体成形されているが、それらは別体であってもよい。第2前輪駆動ギヤ75は、前輪駆動シャフト76とともに回転可能である。
【0029】
図2及び
図3に示されるように、第5シャフト51は、第2回転軸線Ax2に沿って第3シャフト29から離間する。第5シャフト51は、第1雄スプライン51Sと、第1支持部52と、第2支持部53とを有する。第1雄スプライン51Sは、第2回転軸線Ax2に沿って延びる雄スプラインである。第1支持部52は、第1雄スプライン51Sの第2回転軸線Ax2に沿う一端と隣接し、第1フリーギヤ57を回転可能に支持する。第2支持部53は、第2回転軸線Ax2に沿って第1雄スプライン51Sの一端と反対の、第1雄スプライン51Sの他端と隣接し、第2フリーギヤ60を回転可能に支持する。
【0030】
第1フリーギヤ57は、第2回転軸線Ax2の周りに第5シャフト51に対して回転可能に第5シャフト51に支持される。第1フリーギヤ57は、第1ローギヤ55と第1ミドルギヤ54と第1ハイギヤ56とのうちの1つのギヤと係合する。具体的には、第1フリーギヤ57は、第1ローギヤ55と係合する。第1フリーギヤ57は、第1内周面57ISと、第1ギヤ部58と、第2雄スプライン59とを有する。第1内周面57ISと、第1ギヤ部58と、第2雄スプライン59とは一体成形されているが、これらは互いに結合していれば一体成形されていなくてもよい。第1内周面57ISは、第1支持部52に面する。具体的には、第1内周面57ISは、ニードルベアリングNB8を介して第1支持部52と接続する。第1ギヤ部58は、第2回転軸線Ax2に対する径方向における第1内周面57ISの反対側において、第1ローギヤ55と係合する。なお、第1ギヤ部58は、第1ミドルギヤ54または第1ハイギヤ56と係合してもよい。第2雄スプライン59は、第1内周面57ISの反対側において第1雄スプライン51Sと実質的に同一形状を有する雄スプラインである。第2雄スプライン59は、第2回転軸線Ax2に沿う方向において第1ギヤ部58よりも第1雄スプライン51Sの上記一端に近い。
【0031】
第2フリーギヤ60は、第2回転軸線Ax2の周りに第5シャフト51に対して回転可能に第5シャフト51に支持される。第2フリーギヤ60は、第1フリーギヤ57と係合する上記1つのギヤ以外の第1ローギヤ55と第1ミドルギヤ54と第1ハイギヤ56とのうちの別の1つのギヤと係合する。具体的には、第2フリーギヤ60は、第1ハイギヤ56と係合する。第2フリーギヤ60は、第2内周面60ISと、第2ギヤ部61と、第3雄スプライン62とを有する。第2内周面60ISと、第2ギヤ部61と、第3雄スプライン62とは一体成形されているが、これらは互いに結合していれば一体成形されていなくてもよい。第2内周面60ISは、第2支持部53に面する。具体的には、第2内周面60ISは、ニードルベアリングNB9を介して第1支持部52と接続する。第2ギヤ部61は、上記径方向における第2内周面60ISの反対側において、上記別の1つのギヤと係合する。第3雄スプライン62は、第2内周面60ISの反対側において第1雄スプライン51Sと実質的に同一形状を有する雄スプラインである。第3雄スプライン62は、第2回転軸線Ax2に沿う方向において第2ギヤ部61よりも第1雄スプライン51Sの上記他端に近い。
【0032】
摺動ギヤ63は、第2回転軸線Ax2の周りに第5シャフト51とともに回転可能に第5シャフト51に支持される。摺動ギヤ63は、第2回転軸線Ax2に沿って第5シャフト51上を摺動可能である。具体的には、摺動ギヤ63は、シフトフォーク66によって第2回転軸線Ax2に沿う方向に動かされる。摺動ギヤ63は、雌スプライン64と、第3ギヤ部65とを有する。雌スプライン64は、第5シャフト51に面し、第1雄スプライン51S、第2雄スプライン59、及び、第3雄スプライン62と嵌合可能である。第3ギヤ部65は、径方向において雌スプライン64と反対側に設けられ、第1フリーギヤ57と係合する上記1つのギヤ及び第2フリーギヤ60と係合する上記別の1つのギヤ以外の第1ローギヤ55と第1ミドルギヤ54と第1ハイギヤ56とのうちの残りのギヤと係合可能である。
【0033】
具体的には、摺動ギヤ63は、第1ミドルギヤ54と係合可能である。第3ギヤ部65が上記残りのギヤ(第1ミドルギヤ54)と係合するとき、雌スプライン64は第1雄スプライン51Sのみと係合する。このとき、第4シャフト39の回転が、上記残りのギヤ、第3ギヤ部65、雌スプライン64、第1雄スプライン51Sを経由して、第5シャフト51に伝達される。雌スプライン64が第1雄スプライン51Sと第2雄スプライン59との両方と係合するとき、第3ギヤ部65が上記残りのギヤ(第1ミドルギヤ54)と係合しない。このとき、第4シャフト39の回転が、上記1つのギヤ、第1ギヤ部58、第2雄スプライン59、雌スプライン64、第1雄スプライン51Sを経由して、第5シャフト51に伝達される。雌スプライン64が第1雄スプライン51Sと第3雄スプライン62との両方と係合するとき、第3ギヤ部65が上記残りのギヤ(第1ミドルギヤ54)と係合しない。このとき、第4シャフト39の回転が、上記別の1つのギヤ、第2ギヤ部61、第3雄スプライン62、雌スプライン64、第1雄スプライン51Sを経由して、第5シャフト51に伝達される。
【0034】
トランスミッションケース5Tは、その内部に潤滑油を格納可能となるようにその外枠が封止されている。具体的には、
図2に示される前ケース部5Aは、隔壁5TWと蓋部5TCとを有し、入力シャフト11が貫通する蓋部5TCの貫通孔5THから潤滑油が流出しないように、第1シールS1が設けられている。また、
図7に示されるPTOシャフト7が貫通する後ケース部5Cの貫通孔7THから潤滑油が流出しないように第2シールS2が設けられている。隔壁5TW、蓋部5TC、第1シールS1、前ケース部5Aの外郭、中間ケース部5Bの外郭、後ケース部5Cの外郭、及び、第2シールS2によって囲まれた空間が封止される。したがって、トランスミッションケース5Tは、隔壁5TW、蓋部5TC、第1シールS1、前ケース部5Aの外郭、中間ケース部5Bの外郭、後ケース部5Cの外郭、及び、第2シールS2を含み、潤滑油を貯留可能である。クラッチ30は湿式クラッチであり、潤滑油は、クラッチ30の少なくとも一部を潤滑できるように、トランスミッションケース5Tに貯留されている。
<エンジン4の周辺部品>
【0035】
図8は、エンジン4の周辺の斜視図である。
図9は、エンジン4の周辺の左側面図である。
図10は、エンジン4の周辺の上面図である。
図11は、エンジン4に接続する部品の模式図である。
図8~11を参照すると、エンジン4のシリンダヘッド4Bには、ディーゼルパーティキュレートトラップ(DPT)83が接続され、それによって浄化されたエンジン4の排気は給気管84を介して吸気口85に送られる。吸気口85にはエアクリーナ86から送られてきた空気も送られ、エンジン4のクランクケース4Aに送られる。給気管84にはヒータが取り付けられ、給気管84の内部が凍結によって閉塞しないように、給気管84は構成されている。しかし、ヒータ等の故障によって給気管84が閉塞されると、エンジン4内部の内圧が上昇してしまう。バルブ81は、シリンダヘッド4Bの内圧が所定圧以上となった場合、エンジン4の内圧を下げるためにエンジン4内部の気体を排出するように構成されている。
【0036】
さらに、エンジン4のクランクケース4Aの側面(クランクシャフトの軸方向に対して側方)には、スイッチ82が取り付けられている。スイッチ82は、クランクケース4Aの内圧が所定圧を超えると、信号をトラクタ1の制御装置87に送るように構成されている。信号が制御装置47に送られると、制御装置87は、トラクタ1のコントロールパネルにアラームを表示させるように構成されている。
<実施形態の作用及び効果>
【0037】
本実施形態に係る動力伝達装置10は、エンジン4によって回転される第1シャフト21と、PTOシャフト7に接続される第2シャフト28との下方に、クラッチ30を設けられており、第1シャフト21の動力をクラッチ30に伝達する第1回転伝達機構22と、クラッチ30にかかった動力を第2シャフト28に伝達するための第2回転伝達機構25とを備える。このため、クラッチ30を潤滑するのが容易となる。
【0038】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0039】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0040】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0041】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0042】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0043】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。