(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】駐車場データの作成方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20240430BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20240430BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G08G1/01 D
G08G1/14 A
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2021111141
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中村 草
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-105051(JP,A)
【文献】特開2007-305026(JP,A)
【文献】特開2016-181041(JP,A)
【文献】特開2005-284699(JP,A)
【文献】特開平11-161703(JP,A)
【文献】特開2016-071751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場データの作成方法であって、
駐車場に備えられる少なくとも第1出口及び第2出口を特定し、
前記駐車場からみて第1方位にある第1エリアを特定し、
前記駐車場の第1出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第1走行軌跡を取得し、
前記駐車場の第2出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第2走行軌跡を取得し、
前記駐車場外第1走行軌跡と前記駐車場外第2走行軌跡を統計処理して、前記第1出口と前記第1方位との間及び前記第2出口と前記第1方位との間の相関を特定する出口-方位相関データを作成する、
駐車場データの作成方法。
【請求項2】
前記相関は、前記第1出口から前記第1エリアに到達した車両の数と、前記第2出口から前記第1エリアに到達した車両の数との関係である、
請求項1に記載の作成方法。
【請求項3】
前記相関は、前記第1出口から前記第1エリアに到達するまでに要した車両の時間の統計量と、前記第2出口から前記第1エリアに到達するまでに要した車両の時間の統計量との関係である、
請求項1に記載の作成方法。
【請求項4】
目的地が設定された対象車両が駐車場内に存在することを確認し、
駐車場からみた前記目的地の方位を特定し、
請求項1に記載の出口-方位相関データより、駐車場の出口と前記方位との間の相関を読み出し、
読み出した結果を処理して前記出口に重みをつける、ナビゲーション方法。
【請求項5】
少なくとも第1出口及び第2出口を備える駐車場の駐車場データの作成装置であって、
前記駐車場の第1出口から退場して第1方位にある第1エリアに到達した車両の駐車場外第1走行軌跡を形成し、前記駐車場の第2出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第2走行軌跡を形成する駐車場外車両軌跡形成部と、
前記駐車場外第1走行軌跡と前記駐車場外第2走行軌跡を統計処理して、前記第1出口と前記第1方位との間及び前記第2出口と前記第1方位との間の相関を特定する出口-方位相関データを作成する統計処理部と、
を備えてなる駐車場データの作成装置。
【請求項6】
駐車場外車両軌跡形成部及び統計処理部を備え、少なくとも第1出口及び第2出口を備える駐車場の駐車場データの作成装置を構成するコンピュータを動作させるコンピュータ用プログラムであって、
前記駐車場外車両軌跡形成部に、前記駐車場の第1出口から退場して第1方位にある第1エリアに到達した車両の駐車場外第1走行軌跡を形成させ、前記駐車場の第2出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第2走行軌跡を形成させ、
前記統計処理部に、前記駐車場外第1走行軌跡と前記駐車場外第2走行軌跡を統計処理させて、前記第1出口と前記第1方位との間及び前記第2出口と前記第1方位との間の相関を特定させる、コンピュータ用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は駐車場データの作成方法及び駐車場データの作成装置に関する。更には、駐車場データの作成装置を動作させるコンピュータプログラムに関する。
また、得られた駐車場データを利用するナビゲーション方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
郊外型の大規模商業施設には広大な駐車場が付設されている。
かかる駐車場には複数の入口/出口が備えられる。広大な駐車場では、そのマップデータを準備してナビゲーション装置に反映させ、駐車中の車両に対しその駐車位置から出口までの経路を案内させることが提案されている。
かかるナビゲーション装置の中には、駐車場の各出口から目的地までの経路コストを演算して、最も低いコストとなる出口を選択するものがある(特許文献1、2)。
その他、本願発明に関連する技術を開示する特許文献3、4も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-105051号公報
【文献】特開2005-207933号公報
【文献】特開2005-284699号公報
【文献】特再公表WO2018/101264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そもそも、駐車場への入退場に際し、利用者は任意に入口や出口を選択することができる。そこで、幹線道路と駐車場との位置関係や、駐車場の入口/出口付近における道路の混雑程度、更には出口での右折規制などの関係から、利用者は入場/退場が便利な入口/出口を経験的に見出して、これを選択する傾向にある。
かかる利用者の経験の基づいた入口/出口選択の傾向は駐車場内でのナビゲーション装置の案内に反映されてこなかった。
【0005】
駐車場を利用する車両のうちの一定数は都市などの一つエリア(第1エリア)からのものである。ここに、ある一つの出口が当該第1エリアの方向に向いていたとしても、その出口から退場することが第1エリアへの最適帰路選択とならない場合がある。例えば、第1エリアと反対方向の出口が幹線道路に続いており、その幹線道路を利用して第1エリアへ向かうと、遠回りにはなるものの、信号の数や渋滞が少ないなど、ドライバにかかるストレスが小さくなる場合である。
【0006】
ここに、各出口から第1エリアまでの経路計算を行ったとき、前者の出口を選択したときにそのコストが最小になると、従来のナビゲーション装置では駐車中のドライバへ、駐車場内において駐車位置から当該前者の出口までの経路を案内し、当該出口からの退場を推奨することとなる。
しかしながら、第1エリアの利用者による後者の出口の実利用が多いという傾向があるとき、従来のナビゲーション方法、即ち出口を出発地として第1エリアを目的地としたときのコスト計算に基づくナビゲーション方法では最適な出口を案内できないことがわかる。
このことを敷衍すると、駐車場からみて、第1エリアの存在する方位(第1方位)にあるすべての目的地に該当する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の課題の少なくとも一つを解決すべくなされたものであり、その第1局面は次のように規定される。即ち、
駐車場データの作成方法であって、
駐車場に備えられる少なくとも第1入口、第1出口及び第2出口を特定し、
前記駐車場を利用した車両の、該駐車場における走行軌跡を取得し、
前記第1入口から入場して前記第1出口から退場した車両の駐車場内第1―1走行軌跡と前記第1入口から入場して前記第2出口から退場した車両の駐車場内第1-2走行軌跡とを統計処理して、前記第1入口と前記第1出口との間及び前記第1入口と前記第2出口との間の相関を特定する、入口-出口相関データを作成する、
駐車場データの作成方法。
【0008】
このように規定される第1局面に規定の駐車場データの作成方法によれば、駐車場内における車両の走行軌跡を統計処理することで、第1入口から入場した車両にとって好適な出口を特定可能となる。
駐車場を普段使いしている、いわゆる地元のドライバであればナビゲーション装置による出口の推奨は不要である。他方、広大な駐車場の利用に不慣れなドライバにとっては地元のドライバの行動傾向(出口の選択傾向)がわかれば、退場後の帰路においてスムーズな運転が期待できる。
【0009】
第1局面に規定の駐車場データの作成方法より作成された駐車場データでは、「前記第1入口から入場して前記第1出口から退場した車両の駐車場内第1-1走行軌跡と前記第1入口から入場して前記第2出口から退場した車両の駐車場内第1-2走行軌跡とを統計処理して、前記第1入口と前記第1出口との間及び前記第1入口と前記第2出口との間の相関を特定」しているので、いわゆる地元のドライバの出口選択傾向が反映されている。よって、このような駐車場データをナビゲーション装置に反映させれば、広大な駐車場の利用に不慣れなドライバに対しても好適な出口を案内できる。
【0010】
統計処理の対象となる走行軌跡はプローブカーの車両走行データを解析することにより得られる。
走行軌跡を統計処理して特定される「前記第1入口と前記第1出口との間及び前記第1入口と前記第2出口との間の相関」には、「前記第1入口から入場して前記第1出口から退場した車両数と前記第1入口から入場して前記第2出口から退場した車両数の比」を用いることができる(第2局面)。車両の数を統計処理の対象とすることで、統計処理演算にかかる負担を小さくできる。
【0011】
この発明の第3局面は次のように規定される。即ち、
第1又は第2局面に規定の駐車場データの作成方法において、
前記駐車場からみて第1方位にある第1エリアを特定し、
前記駐車場の第1出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第1―1走行軌跡を取得し、
前記駐車場の第2出口から退場して前記第1エリアに到達した車両の駐車場外第2―1走行軌跡を取得し、
前記駐車場外第1―1走行軌跡と前記駐車場外第2―1走行軌跡とを統計処理して、前記第1出口と前記第1エリアとの間及び前記第2出口と前記第1エリアとの間の相関を特定する出口-方位相関データを作成する。
【0012】
このように規定される第3局面の駐車場データの作成方法によれば、例えば駐車場からみて第1エリアが第1方位に存在するものとし、第1出口から退場して第1エリアに到達した車両の走行軌跡(駐車場外第1―1走行軌跡)と第2出口から退場して第1エリアに到達した車両の走行軌跡(駐車場外第2―1走行軌跡)とが統計処理される。統計処理の結果、第1出口と第1エリアとの間及び第2出口と第1エリアとの間の相関が特定される。かかる相関は、第1出口と第1方位との間及び第2出口と第1方位との間の相関に敷衍することができる。
ナビゲーション装置で設定する目的地が第1エリアと同方位にあったとき、駐車場の各出口から同目的地へのアクセスの難易度は、各出口から第1エリアへのアクセスの難易度に等しいと推定されるからである。
ここに、第1及び第2の局面で規定した入口-出口相関データと組み合わせれば、いわゆる地元ドライバの出口選択傾向がより反映されることとなる。
【0013】
第3局面で規定される出口-方位相関データはこれ自体を独立して、即ち、第1及び第2局面で規定した入口-出口相関データとは独立して、作成することができる(第4局面)。
ここに、統計処理される駐車場外第1―1走行軌跡と駐車場外第2―1走行軌跡として、それぞれ第1出口から第1エリアに到達した車両数と、第2出口から前記第1エリアに到達した車両数とを採用することができる(第5局面)。車両数を統計処理対象とすることで統計処理の演算にかかる負荷を小さくできるからである。
【0014】
同様の観点から、第1出口と第1エリアとの間及び第2出口と第1エリアとの間の相関を特定するために統計処理される駐車場外第1―1走行軌跡と駐車場外第2―1走行軌跡として、それぞれ第1出口から第1エリアに到達するまでに要した車両の時間の統計量と、第2出口から第1エリアに到達するまでに要した車両の時間の統計量と、を採用することができる(第6局面)。ここに、時間の統計量として、各出口から第1エリアに到達するまでに要した時間(到達時間)の平均や、到達時間の振れ幅などを用いることができる。
【0015】
この発明の第7局面は第1局面を実行して得られた入口-出口相関データを利用するナビゲーション方法を提案する。即ち、
目的地が設定された対象車両が駐車場内に存在することを確認し、
前記対象車両の走行データに基づき前記対象車両が前記駐車場に入場した前記第1入口を特定し、
請求項1に記載の入口-出口相関データより、前記第1入口に対する第1出口及び第2出口の相関を読み出し、
読み出した結果を処理して前記第1出口と前記第2出口に重みをつける、ナビゲーション方法。
【0016】
このように規定される第7局面のナビゲーション方法によれば、第1入口から入場した対象車両に対して、第1局面で特定された入口-出口相関データに基づいて、第1出口と第2出口に重みが付けて案内可能となる。即ち、第1入口から入場したプローブカーが第1出口から退場する傾向が、第1入口から入場したプローブカーが第2出口から退場する傾向より大きいとき、第1出口が推奨出口として案内される。
第3、第4……とより多くの出口が存在するときは、出口の推奨順位を表示することも可能である。
【0017】
この発明の第8局面は第4局面を実行して得られた駐車場データを利用するナビゲーション方法を提案する。即ち、
目的地が設定された対象車両が駐車場内に存在することを確認し、
駐車場からみた前記目的地の方位を特定し、
請求項4に記載の出口-方位相関データより、駐車場の出口と前記方位との間の相関を読み出し、
読み出した結果を処理して前記出口に重みをつける、ナビゲーション方法。
【0018】
このように規定される第8局面のナビゲーション方法によれば、駐車場内に駐車中のドライバが特定の方位にある目的地と設定したとき、第4局面で特定した出口-方位相関データに基づいて、駐車場の出口に重みを付けて案内することができる。
【0019】
この発明の第9局面は次のように規定される。即ち、
目的地が設定された対象車両が駐車場内に存在することを確認し、
前記対象車両の走行データに基づき該対象車両が前記駐車場に入場した入口を特定し、
請求項1に記載の入口-出口相関データより、特定された前記入口に対する駐車場の各出口の相関を読み出し、
前記入口に対する相関関係が所定の閾値を超える出口のみを選択し、
駐車場からみた前記目的地の方位を特定し、
請求項4に記載の出口-方位相関データより、選択された前記出口と前記方位との間の相関を読み出し、
読み出した結果を処理して選択された出口に重みをつける、ナビゲーション方法。
【0020】
この第9局面に規定されたナビゲーション方法によれば、特定の方位にある目的地を設定した駐車中の車両のドライバに対して、より適切な出口を案内できる。
即ち、当該車両が入場した入口に基づき、入口-出口相関データを参照して、その相関が所定の閾値を超える出口のみを選択する。ここに、入場した入口に対してその相関が所定の閾値以下の出口は、当該入口から入場した車両がほとんど退場していない出口を指す。例えば、入場した駐車場から物理的に分離し駐車場の出口がこれに該当する。
このように退場することができない出口を予め排除し、換言すれば入口-出口相関データに保存されている相関が所定の閾値以上の出口のみを対象として、第4局面で特定された出口-方位相関データよりその出口と目的地のある第1方位との相関を読み出し、出口に重み付けをして案内する。これにより、目的地へ向かうのに適した出口を選択して案内可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態の駐車場データの作成方法が適用される駐車場の出入口、及び第1方位に存在する第1エリアとの関係を示す模式図である。
【
図2】
図2はこの発明の実施形態の駐車場データの作成装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は同じく実施形態の駐車場データを利用するナビゲーション装置の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は実施形態の駐車場データの作成装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は実施形態のナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は実施形態の駐車場データの作成装置を動作させるコンピュータ装置の機能ブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、この発明の実施形態の駐車場データの作成装置1によるデータ作成の対象となる駐車場を説明する。
図1において、駐車場は第1駐車場P1と第2駐車場P2とからなり、両者は分離されている。即ち、第1駐車場P1に駐車した車両は第2駐車場P2へ入場できない。
第1駐車場P1には第1入口/第1出口No.1、第2入口/第2出口No.2、第3入口/第3出口No.3が備えられる。ここに、第2入口/第2出口No.2は幹線道路Rに直結しており、第3入口/出口No.3は、第1エリアAの存在する第1方位側に開いている。
第2駐車場P2には第4入口/出口No.4が備えられる。
【0023】
図1では、第1エリアと第1方位の関係のみを図示しているが、他のエリア(第nエリア)と他の方位(第n方位)についても同様の関係にある。ここで採用する第nエリアは都市などの人口集中エリアとし、そこからの来場する車両(プローブカーとなる)の数が単位期間あたりに所定数以上のものとすることが好ましい。第1方位と第n方位とが重ならないように第nエリアを選択するこが好ましい。
【0024】
図1の例では、車両v1は、第1入口No.1から入場して第1出口No.1から退場した駐車場内走行軌跡(駐車場内第1-1走行軌跡)をもつ。車両v2は第1入口No.1から入場して
第2出口No.2から退場した駐車場内走行軌跡(駐車場内第1-2走行軌跡)を持つ。車両v3は第1入口No.1から入場して
第3出口No.3から退場した駐車場内走行軌跡(駐車場内第1-3走行軌跡)を持つ。
車両v4は
第4入口No.4から入場して
第4出口No.4から退場した駐車場内走行軌跡(駐車場内第4-4走行軌跡)を持つ。
なお、この明細書及び図面において、説明の簡易化のため「駐車場内走行軌跡」を『場内走行軌跡』と略することがある。同様に、「駐車場外走行軌跡」を『場外走行軌跡』と略することがある。
【0025】
車両の走行軌跡は、駐車場を利用した車両であって車両走行データを取得できるもの、いわゆるプローブカーの車両走行データを解析して得られる。
車両走行データとは、プローブカーから汎用的に得られるプローブデータ(位置情報、時間情報)の他、プローブカーの車両インナーデータも該当する。ここに、車両インナーデータとは、車両が備えるセンサ、コントロールユニットその他から出力される当該車両の各種状態に関するデータであって、当該車両に搭載されたネットワーク上でCAN(Controller Area Network)をはじめとした各種通信プロトコルにより伝送可能なデータをいう。この車両インナーデータには、走行速度データ、ブレーキ操作データ、ハンドルの切れ角データ、その他の情報が含まれる。
【0026】
図2はこの発明の実施形態の駐車場データの作成装置1の機能ブロック図である。
駐車場へ入場したプローブカーの車両走行データは、図示しない通信手段により、車両走行データ保存部3に集積される。
場内走行軌跡形成部11は、車両走行データ保存部3に保存されている車両走行データから、プローブカーが駐車場へ入場し、そして退場するまでの車両走行データを読み出し、駐車場内における走行軌跡(場内走行軌跡)を形成する。
第1入口から入場して第1出口から退場する場内走行軌跡をもつプローブカーの場内走行軌跡を場内第1-1走行軌跡として、場内走行軌跡保存部20の場内第1-1走行軌跡保存部に保存する。同様に、第1入口から入場して第2出口から退場する場内走行軌跡をもつプローブカーの場内走行軌跡を場内第1-2走行軌跡として、場内走行軌跡保存部20の場内第1-2走行軌跡保存部に保存する。
【0027】
同様に、第m入口から入場して第n出口から退場したプローブカーの走行軌跡は場内第m-n走行軌跡として場内走行軌跡保存部20の場内第m-n走行軌跡保存部に保存される。
場内走行軌跡形成部11が形成する場内走行軌跡はプローブカーが入場した入口と、同じく退場した出口とを特定できるものであればよい。従って、当該場内走行軌跡は少なくとも、プローブカーのID、入口を特定できる座標及び出口を特定できる座標を備えるものであればよい。
【0028】
場外走行軌跡形成部13は、車両走行データ保存部3に保存されている車両走行データから、プローブカーが駐車場の出口から退場した後の車両走行データを読み出し、駐車場外における走行軌跡(場外走行軌跡)を形成する。
退場した第1出口から、第1方位にある第1エリアまでのプローブカーの走行軌跡を場外第1-1走行軌跡として場外走行軌跡保存部30の場外第1-1走行軌跡保存部に保存する。同様に、第2出口から第1エリアまのでプローブカーの走行軌跡を場外第2-1走行軌跡として場外走行軌跡保存部30の場外第2-1走行軌跡保存部に保存する。
同様に、第s出口から退場して第tエリアまでのプローブカーの走行軌跡は場外第s―t走行軌跡として場外走行軌跡保存部30の場外第s-t走行軌跡保存部に保存される。
場外走行軌跡形成部13が形成する場外走行軌跡はプローブカーが退場した出口と、同じく第1エリアに到着したこととを特定できるものであればよい。従って、当該場外走行軌跡は少なくとも、プローブカーのID、出口を特定できる座標及び第1エリアに到着したことを特定できる座標を備えるものであればよい。
【0029】
統計処理部41は場内走行軌跡保存部20に保存されている場内走行軌跡に基づき、1つの入口を基準にして、その入口から入場したプローブカーが退場した出口を統計処理する。
例えば、場内第m-1走行軌跡保存部から場内第m―n走行軌跡保存部に保存されている各走行軌跡の数を比較する。これにより、第m入口から入場して第1出口から退場した車両の数、第m入口から入場して第2出口から退場した車両の数、……第m入口から入場して第n出口から退場した車両数が比較される。その結果、第m入口から入場した車両が退出した出口に重み付けとして順位を付すことができる。このように順位付けしたデータが第m入口についての入口-出口相関データとなり、入口-出口相関データ保存部51に保存される。
【0030】
上記において、場内走行軌跡の数の比較(即ち車両数の比較)は、期間を統一して行われる。例えば、所定の1週間を指定して、当該1週間に抽出された車両走行データに基づくものとする。
車両走行データの抽出に特性、例えば時間帯、気候条件、季節や近郊のイベントの有無等を持たせることにより、当該特性に応じた入口-出口相関データが得られる。
【0031】
統計処理部43は場外走行軌跡保存部30に保存されている場外走行軌跡に基づき、1つのエリアを基準にして、そのエリアへ到着したプローブカーが退場した出口を統計処理する。
例えば、場外第1-t走行軌跡保存部から場外第s-t走行軌跡保存部に保存されている各場外走行軌跡の数を比較する。これにより、第1出口から退場して第tエリアに到着した車両数、第2出口から退場して第tエリアに到着した車両数、……第s出口から退場して第tエリアに到着した車両数が比較される。その結果、第tエリアに到着した車両が退場した出口に重み付けとして順位を付すことができる。このように順位付けしたデータが第tエリアについての出口-方位相関データとなり、出口-方位相関データ保存部53に保存される。
なお、駐車場からみて第tエリアは第t方位に存在するものとする。
【0032】
図3はこの発明の実施形態のナビゲーション装置2を示す。このナビゲーション装置2はナビゲーション用データ保存部60とナビゲーション実行部70とを備える。
既述の入口-出口相関データ保存部51に保存されていた入口-出口相関データは、ナビゲーション装置2においてそのナビゲーション用データ保存部60の駐車場データ保存部65に保存される(入口-出口相関データ保存部651)。同様に、出口-方位相関データ保存部53に保存されていた出口-方位相関データは駐車場データ保存部65の出口-方位相関データ保存部653に保存される。
駐車場データ保存部65の駐車場マップデータ保存部650には駐車場のマップデータが保存されており、駐車場内での案内を可能にする。
【0033】
ナビゲーション用データ保存部60の地図データ保存部61には全国の道路地図がノード及びリンクの形で保存されている。交通データ保存部63には道路の属性(制限速度、一方通行その他)が保存されている。
ナビゲーション実行部70の経路演算部71は、ナビゲーション用データ保存部60に保存されているデータを用いて目的地までの経路を演算する。当該演算において目的地は入力部75を介して指定され、その演算された経路は表示部77に表示される。GPSを備えた現在位置特定部73により走行している車両の現在位置が表示部77に、経路とともに、表示される。
【0034】
次に、駐車場データの作成装置1の動作を
図4のフローチャートに基づき説明をする。
ステップ1において、場内走行軌跡形成部11により、所定の期間を指定して、その間に駐車場に入場したプローブカーの車両走行データを、車両走行データ保存部3から抽出する。ステップ3において、抽出した車両走行データに基づき走行軌跡(場内走行軌跡)を形成し、それぞれ対応する場内走行軌跡保存部20に保存する。
図1の駐車場の例において、入口1に注目したとき、下記表1のように場内走行軌跡が形成され、それぞれ対応する場内走行軌跡保存部に保存される。
【表1】
【0035】
ステップ5では、場内走行軌跡保存部20に保存されている場内走行軌跡が統計処理部41に読み出されて統計処理され、その結果が入口-出口相関データとして、入口-出口相関データ保存部51に保存される。この例では、場内第1-1、1-2、1-3、1-4走行軌跡保存部に保存されている場内走行軌跡の数を比較する。表1の結果より、第1入口から入場したプローブカーにおいて60%が第1出口から退場し、同30%が第2出口から退場し、同10%が第3出口から退場していることがわかる(表2参照)。
【表2】
表2の結果が第1入口についての入口-出口相関データとなる。
第2~第4出口についても、上記と同様の処理が行われる。
【0036】
ステップ11において、場外走行軌跡形成部13により、所定の期間を指定して、その間に駐車場の各出口から退場して第1エリアに到着したにプローブカーの車両走行データを、車両走行データ保存部3から抽出する。ステップ13において、抽出した車両走行データに基づき走行軌跡(場外走行軌跡)を形成し、それぞれ対応する場内走行軌跡保存部20に保存する。
図1の駐車場の例では、第1方位に位置する第1エリアに注目したとき、下記表3のように場外走行軌跡が形成され、それぞれ対応する場外走行軌跡保存部に保存される。
【表3】
【0037】
ステップ15では、場外走行軌跡保存部30に保存されている場外走行軌跡が統計処理部43に読み出されて統計処理され、その結果が出口-方位相関データとして、出口-方位相関データ保存部53に保存される。この例では、場外第1-1、2-1、3-1、4-1走行軌跡保存部に保存されている場外走行軌跡の数を比較する。表3の結果より、駐車場を退出して第1エリアに到着したプローブカーにおいて、10%が第1出口から退場しており、同じく50%が第2出口から退場しており、同じく20%が第3出口から退場しており、同じく20%が第4出口から退場している(表4参照)。
【表4】
表4の結果は、第1エリアが属する第1方位と出口についての出口-方位相関データを示す。
【0038】
上記ステップ15では、各出口から第1エリアに到達した車両の数を統計処理の対象としていたが、各出口から第1エリアに到達するのに要した時間の統計量をもって、統計処理の対象とすることもできる。
このように統計処理される場外走行軌跡は、少なくともプローブカーのID、出口の出発時間及び第1エリアの到着時間を特定できるものであればよい。
【0039】
次に、実施形態のナビゲーション装置2の動作を
図5のフローチャートに基づいて説明をする、
最初に、駐車場に駐車しておりナビゲーションの対象となる車両(以下、対象車両)において目的地が入力されていることを確認する(ステップ20)。
ステップ20がYESのとき、対象車両の場内走行軌跡を作成する(ステップ22)。
ステップ23では、対象車両の場内走行軌跡をたどって、対象車両が入場した入口を特定する。この例では対象車両は第1入口から入場したものとする。
【0040】
ステップ25では、入口-出口相関データ保存部653から第1入口に関する入口-出口相関データを読み出す。例えば、その入口-出口相関データが表2に示すものであったとき、選択頻度を閾値として、これが30%以上の出口を選択する(ステップ27)。この場合、第1出口と第2出口とが選択される。選択頻度が30%未満である出口は、何らかの理由で使い勝手悪いと考えられるからである。
【0041】
ステップ29では、目的地の方位を特定する。目的地が第1方位にあるとき、表4の出口-方位相関データを読み出す(ステップ31)。表4の出口-方位相関データにおいて、ステップ27で選択された第1出口と第2出口の選択頻度が比較され、より選択頻度の高い第2出口が最適出口として特定される(ステップ33)。表4において第2出口と第4出口とは同じ選択頻度であるが、ステップ27において第4出口は選択されていない。
【0042】
ステップ35においてナビゲーション装置2は、駐車場内において、対象車両の駐車位置から第2出口までの経路を形成するとともに、第2出口から目的地までの経路を汎用的手法で演算し、ドライバへ提示する。
【0043】
図6に車両走行データ処理負荷軽減システムのハード構成を示す。
演算部300はCPU301、ROM303及びRAM305を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、場内走行軌跡形成部11、場外走行軌跡形成部13、統計処理部41、43として機能する。ROM303は、演算部300を制御する制御プログラム等が格納された不揮発性メモリである。RAM305は、キーボード等の入力装置330を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPU301に対してワーキングエリアを提供したりする。演算部300を制御する制御プログラムはROM303に限らずRAM305や第1、第2記憶装置340及び350に格納されていてもよい。出力装置320を介して各種の相関データをナビゲーション装置へ送出される。入力装置330を介して車両走行データを取得する条件などが入力される。
【0044】
第1記憶装置340は場内走行軌跡保存部20、場外走行軌跡保存部30、入口-出口相関データ保存部51及び出口-方位相関データ保存部53として機能する。
第2記憶装置350は車両走行データ保存部3として機能する。
第1、第2記憶装置はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
【0045】
データを一時的に保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
通信インターフェース360を介して、プローブカーの車両走行データを受け入れることができる。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス370で連結されている。
形成された場内走行軌跡は、入口を基準に場内第m-n走行軌跡保存部に保存される。
【0046】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 作成装置
11 場内走行軌跡形成部
13 場外走行軌跡形成部
20 場内走行軌跡保存部
30 場外走行軌跡保存部
41、43 統計処理部
51 入口-出口相関データ保存部
53 出口-方位相関データ保存部
P1,P2 駐車場